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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240904BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240904BHJP
   H05H 1/24 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 645C
H01L21/304 651B
H01L21/304 643A
H01L21/304 647Z
H05H1/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021043586
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143191
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】西出 基
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-284332(JP,A)
【文献】特開2003-273079(JP,A)
【文献】特開2006-278748(JP,A)
【文献】特開2006-324691(JP,A)
【文献】特開2016-127119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部が基板を保持する保持工程と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を供給する液供給工程と、
プラズマ源を前記基板の前記主面に対向させ、前記基板の前記主面との間の間隔が第1間隔となるように配置するプラズマ源配置工程と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間の空間に第1流量で給気口からガスを供給する雰囲気置換工程と、
前記雰囲気置換工程の後に、前記プラズマ源と前記基板との間隔を、前記第1間隔よりも小さい第2間隔まで低減させる間隔低減工程と、
前記プラズマ源が、前記プラズマ源と前記基板との前記間隔が前記第2間隔となるように配置され、かつ、前記プラズマ源が点灯した状態において、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間の空間に前記第1流量よりも小さい第2流量でガスを供給する、もしくは、前記ガスの供給を停止するプラズマ処理工程と、
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記プラズマ源と前記基板との間の前記間隔が前記第2間隔に到達するまでに、前記ガスの流量を前記第2流量に低減させる流量低減工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記間隔低減工程において、前記プラズマ源が点灯した状態で、前記プラズマ源と前記基板との間の前記間隔を低減させる、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記雰囲気置換工程において、第1給気位置に位置する前記給気口から前記プラズマ源と前記基板との間の前記空間に前記ガスを供給し、
前記間隔低減工程において、前記給気口を前記第1給気位置よりも前記基板に近い第2給気位置に移動させる、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記プラズマ源と前記基板との間の前記空間に対して側方に位置する前記給気口から前記空間に前記ガスを供給する、基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記プラズマ源配置工程、前記雰囲気置換工程、前記間隔低減工程および前記プラズマ処理工程の一連の工程を繰り返す、基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記液供給工程、前記プラズマ源配置工程、前記雰囲気置換工程、前記間隔低減工程および前記プラズマ処理工程の一連の工程を繰り返す、基板処理方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記ガスは、希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれかを含む、基板処理方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第2間隔は3mm以下である、基板処理方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第1間隔は10mm以上である、基板処理方法。
【請求項11】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を供給するノズルと、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と対向する位置に設けられ、プラズマを発生させるプラズマ源と、
前記プラズマ源を前記基板保持部に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間にガスを供給するガス供給部と、
前記プラズマ源と前記基板との間隔が第1間隔となる状態で、前記ガス供給部に第1流量で前記ガスを供給させた後に、前記移動機構に、前記プラズマ源と前記基板との前記間隔を前記第1間隔よりも狭い第2間隔に低減させ、前記間隔が前記第2間隔となり、かつ、前記プラズマ源が点灯した状態において、前記ガス供給部に、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間の空間に前記第1流量よりも小さい第2流量でガスを供給させる、もしくは、前記ガスの供給を停止させる制御部と
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の主面に形成されたレジストを除去する基板処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板の主面に硫酸および過酸化水素水の混合液を供給する。硫酸および過酸化水素水が混合されることで、これらが反応してカロ酸が生成される。このカロ酸は効率的に基板のレジストを除去することができる。
【0003】
しかしながら、この処理では硫酸および過酸化水素水を供給し続ける必要があり、硫酸および過酸化水素水の消費量が大きい。環境負荷の低減のためには、硫酸の使用量の削減が求められており、薬液消費量の削減が要求されている。この薬液消費量を低減するために、従来から硫酸を回収して再利用している。しかしながら、硫酸および過酸化水素水を混合することにより、硫酸の濃度が低下するので、高い濃度で硫酸を回収することは難しい。
【0004】
そこで、大気圧プラズマによって酸素ラジカル等の活性種を発生させ、当該活性種を硫酸に作用させることにより、酸化力の高いカロ酸を生成することが考えられる。これによれば、カロ酸の生成に過酸化水素水を供給する必要がないので、より高い濃度で硫酸を回収することができる。なお、硫酸および過酸化水素水を供給する場合であっても、プラズマを用いることで、カロ酸を生成させるための過酸化水素水の必要量を低減させることができるので、プラズマを用いない場合に比べて、より高い濃度で硫酸を回収することができる。
【0005】
より具体的な基板処理装置の構成として、基板を保持しつつ基板を回転させる基板保持部と、回転中の基板の主面に処理液を供給するノズルと、基板の主面よりも上に配置したプラズマ源を設けることが考えられる。プラズマ源(例えば特許文献2)を点灯させることにより、プラズマ源の周囲にプラズマが発生する。プラズマが発生しているプラズマ発生空間を周囲のガスが通過すると、ガスはプラズマ反応により、各種のラジカル、励起種、イオンなどの活性種を生じる。これら活性種は、高いエネルギーを有するため反応性が高く、基板の主面上の処理液と活性種が接触することにより、処理液の反応速度が向上する。たとえば、活性種が基板の主面上で処理液に作用することで、処理能力の高い成分(例えばカロ酸)を生成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-88208号公報
【文献】特許2019-61759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、発明者の知見によると、プラズマ源は、基板および基板上の処理液に近接することが望ましい。活性種の多くは寿命が短いため、プラズマ源から処理液までの距離が数mmから数10mm程度以上となると活性種の効果が激減するためである。たとえば、特許文献2に示すようなプラズマ源を基板の上面に近接して対向して配置することで、活性種の寿命が尽きるまでに活性種を基板上の処理液に供給することが可能となる。
【0008】
ここで、プラズマ発生空間におけるガスは、活性種に変換されるなどにより組成が変化するため、新しいガスを補う必要がある。プラズマ源と基板を対向させる場合、プラズマ源と基板の間に、ガスを供給する。
【0009】
ここで、プラズマ源と基板の距離が短い場合、両者の間の空間の圧力損失が高くなるため、供給されたガスがプラズマ源と基板との間に入りにくくなるという問題がある。よって、プラズマ源と基板との間の雰囲気を所望の雰囲気にするのに要する時間が長くなり、処理のスループットが長くなる。
【0010】
そこで、本願は、処理のスループットを高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
基板処理方法の第1の態様は、基板保持部が基板を保持する保持工程と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を供給する液供給工程と、プラズマ源を前記基板の前記主面に対向させ、前記基板の前記主面との間の間隔が第1間隔となるように配置するプラズマ源配置工程と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間の空間に第1流量で給気口からガスを供給する雰囲気置換工程と、前記雰囲気置換工程の後に、前記プラズマ源と前記基板との間隔を、前記第1間隔よりも小さい第2間隔まで低減させる間隔低減工程と、前記プラズマ源が、前記プラズマ源と前記基板との前記間隔が前記第2間隔となるように配置され、かつ、前記プラズマ源が点灯した状態において、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間の空間に前記第1流量よりも小さい第2流量でガスを供給する、もしくは、前記ガスの供給を停止するプラズマ処理工程と、を備える。
【0012】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記プラズマ源と前記基板との間の前記間隔が前記第2間隔に到達するまでに、前記ガスの流量を前記第2流量に低減させる流量低減工程をさらに備える。
【0013】
基板処理方法の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記間隔低減工程において、前記プラズマ源が点灯した状態で、前記プラズマ源と前記基板との間の前記間隔を低減させる。
【0014】
基板処理方法の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記雰囲気置換工程において、第1給気位置に位置する前記給気口から前記プラズマ源と前記基板との間の前記空間に前記ガスを供給し、前記間隔低減工程において、前記給気口を前記第1給気位置よりも前記基板に近い第2給気位置に移動させる。
【0015】
基板処理方法の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記プラズマ源と前記基板との間の前記空間に対して側方に位置する前記給気口から前記空間に前記ガスを供給する。
【0016】
基板処理方法の第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記プラズマ源配置工程、前記雰囲気置換工程、前記間隔低減工程および前記プラズマ処理工程の一連の工程を繰り返す。
【0017】
基板処理方法の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記液供給工程、前記プラズマ源配置工程、前記雰囲気置換工程、前記間隔低減工程および前記プラズマ処理工程の一連の工程を繰り返す。
【0018】
基板処理方法の第8の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記ガスは、希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれかを含む。
【0019】
基板処理方法の第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第2間隔は3mm以下である。
【0020】
基板処理方法の第10の態様は、第1から第9のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第1間隔は10mm以上である。
【0021】
基板処理装置の態様は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を供給するノズルと、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と対向する位置に設けられ、プラズマを発生させるプラズマ源と、前記プラズマ源を前記基板保持部に対して相対的に移動させる移動機構と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間にガスを供給するガス供給部と、前記プラズマ源と前記基板との間隔が第1間隔となる状態で、前記ガス供給部に第1流量で前記ガスを供給させた後に、前記移動機構に、前記プラズマ源と前記基板との前記間隔を前記第1間隔よりも狭い第2間隔に低減させ、前記間隔が前記第2間隔となり、かつ、前記プラズマ源が点灯した状態において、前記ガス供給部に、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と、前記プラズマ源との間の空間に前記第1流量よりも小さい第2流量でガスを供給させる、もしくは、前記ガスの供給を停止させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0022】
基板処理方法の第1の態様によれば、雰囲気置換工程においては、プラズマ源は、プラズマ処理位置よりも基板から遠い位置に位置するので、ガスがプラズマ源と基板との間に入りやすい。しかも、ガスの流量(第1流量)は大きいので、当該空間内のガスを新しいガスに効率的に置換することができる。つまり、当該空間の雰囲気をより短時間で所定の雰囲気に近づけることができる。したがって、処理のスループットを向上させることができる。
【0023】
一方で、プラズマ処理工程では、プラズマ源と基板との間の空間に雰囲気置換工程における第1流量よりも小さな第2流量でガスが供給される。もしくは、ガスの供給が停止する。これにより、プラズマ源と基板との間に生じるプラズマ発生空間において安定して活性種が発生する。また、プラズマ発生空間における気流の乱れも抑えられるため、基板上の処理液に供給される活性種の分布も安定する。また、処理液の液面の乱れも抑制される。したがって、プラズマ処理工程において、基板に対する処理をより均一に行うこともできる。
【0024】
基板処理方法の第2の態様によれば、プラズマ源と基板との間の間隔が第2間隔に到達するまでに、ガスの流量が小さい第2流量に低減されるため、プラズマ源と基板との間隔が第2間隔に到達した時点で東発生空間の気流の乱れは抑制されている。よって、プラズマ処理工程の初期から、プラズマ源が安定してプラズマを発生させることができる。したがって、プラズマ処理工程の初期から基板に対してより均一に処理を行うことができる。
【0025】
基板処理方法の第3の態様によれば、プラズマ処理工程に先立ち、間隔低減工程においてプラズマ源がプラズマを発生させているため、プラズマ源の点灯に要する立ち上がり時間の遅れに伴うプラズマ発生開始の遅れを低減できる。
【0026】
基板処理方法の第4の態様によれば、雰囲気置換工程では、基板からより遠い第1給気位置で給気口からガスが供給される。よって、ガスの第1流量が大きくても、基板の主面上の処理液の液面の揺らぎをさらに抑制することができる。
【0027】
基板処理方法の第5の態様によれば、ガスが基板の主面上の処理液の液面に沿って流れやすいので、液面の揺らぎをさらに抑制できる。
【0028】
基板処理方法の第6の態様によれば、基板の処理によってプラズマ源と基板との間の空間の雰囲気が書影の雰囲気から遠ざかったとしても、雰囲気置換工程により当該雰囲気を所定の雰囲気に戻すことができる。
【0029】
基板処理方法の第7の態様によれば、プラズマ処理工程の後に再び液供給工程を行うことで、プラズマ処理工程によって生じた基板上の残留物(溶解途中物)を処理液で流し去ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図3】第1から第3の実施の形態にかかる処理ユニット(基板処理装置)の構成の一例を概略的に示す図である。
図4】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図5】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】液供給工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図7】雰囲気置換工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図8】プラズマ処理工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図9】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図10】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すタイミングチャートである。
図11】第3の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法または数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0032】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸または面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0033】
<第1の実施の形態>
<基板処理システム100の全体構成>
図1は、プラズマ発生装置が適用される基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0034】
基板Wは例えば半導体基板であり、円板形状を有する。なお、基板Wには、半導体基板の他、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板および光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。また基板の形状も円板形状に限らず、例えば矩形の板状形状など種々の形状を採用できる。
【0035】
基板処理システム100はロードポート101とインデクサロボット110と主搬送ロボット120と複数の処理ユニット130と制御部90とを含む。
【0036】
複数のロードポート101は水平な一方向に沿って並んで配置される。各ロードポート101は、基板Wを基板処理システム100に搬出入するためのインターフェース部である。各ロードポート101には、複数の基板Wを収納したキャリアCが外部から搬入される。各ロードポート101は、搬入されたキャリアCを保持する。キャリアCとしては、例えば、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用される。
【0037】
インデクサロボット110は、各ロードポート101に保持されたキャリアCと、主搬送ロボット120との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。インデクサロボット110はロードポート101が並ぶ方向に沿って移動可能であり、各キャリアCと対面する位置で停止可能である。インデクサロボット110は、各キャリアCから基板Wを取り出す動作と、各キャリアCに基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。
【0038】
主搬送ロボット120は、インデクサロボット110と各処理ユニット130との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。主搬送ロボット120はインデクサロボット110から基板Wを受け取る動作と、インデクサロボット110に基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。また、主搬送ロボット120は各処理ユニット130に基板Wを搬入する動作と、各処理ユニット130から基板Wを搬出する動作とを行うことができる。
【0039】
基板処理システム100には、例えば12個の処理ユニット130が配置される。具体的には、鉛直方向に積層された3個の処理ユニット130を含むタワーの4つが、主搬送ロボット120の周囲を取り囲むようにして設けられる。図1では、3段に重ねられた処理ユニット130の1つが概略的に示されている。なお、基板処理システム100における処理ユニット130の数は、12個に限定されるものではなく、適宜に変更されてもよい。
【0040】
主搬送ロボット120は、4つのタワーによって囲まれるように設けられている。主搬送ロボット120は、インデクサロボット110から受け取る未処理の基板Wを各処理ユニット130内に搬入する。各処理ユニット130は基板Wを処理する。また、主搬送ロボット120は、各処理ユニット130から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット110に渡す。
【0041】
制御部90は、基板処理システム100の各構成要素の動作を制御する。図2は、制御部90の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶媒体92を有している。図2の具体例では、データ処理部91と記憶媒体92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体92は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)921および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶媒体921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90がプログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90の機能の一部または全部がハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0042】
制御部90は主制御部と複数のローカル制御部とを有していてもよい。主制御部は基板処理システム100の全体を統括し、ローカル制御部は処理ユニット130ごとに設けられる。ローカル制御部は主制御部と通信可能に設けられ、主制御部からの指示に基づいて処理ユニット130内の各種構成(後述)を制御する。主制御部およびローカル制御部の各々は、図2と同様に、データ処理部91および記憶媒体92を有していてもよい。
【0043】
<基板処理装置(処理ユニット130)>
図3は、処理ユニット(基板処理装置に相当)130の構成の一例を概略的に示す図である。なお、基板処理システム100に属する全ての処理ユニット130が図3に示された構成を有している必要はなく、少なくとも一つの処理ユニット130が当該構成を有していればよい。
【0044】
図3に例示される処理ユニット130は、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行う装置である。プラズマを用いた処理は特に制限される必要がないものの、例えば、有機物除去処理を含む。有機物除去処理とは、基板Wの主面に形成された有機物を除去する処理である。有機物は例えばレジストである。有機物がレジストである場合、有機物除去処理はレジスト除去処理であるともいえる。以下では、一例としてレジスト除去処理を採用して説明する。基板Wは例えば半導体基板であり、円板形状を有する。基板Wのサイズは特に制限されないものの、その直径は例えば約300mmである。
【0045】
処理ユニット130は基板保持部2とノズル3とガス供給部4とプラズマ源6と移動機構51,52とを含む。図3に例示されるように、処理ユニット130はチャンバ1を含んでいてもよい。チャンバ1は箱形の形状を有しており、その内部空間において基板Wに対する処理が行われる。チャンバ1の内部空間には、基板保持部2、ノズル3、ガス供給部4の給気口41a、プラズマ源6および移動機構51,52が設けられる。
【0046】
<基板保持部2>
基板保持部2はチャンバ1内に設けられており、基板Wを水平姿勢で保持する。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。図3の例では、基板保持部2はステージ21と複数のチャックピン22とを含んでいる。ステージ21は円板形状を有し、基板Wよりも鉛直下方に設けられる。ステージ21は、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。
【0047】
複数のチャックピン22はステージ21の上面に立設されている。複数のチャックピン22の各々は、基板Wの周縁に接触するチャック位置と、基板Wの周縁から離れた解除位置との間で変位可能に設けられる。複数のチャックピン22がそれぞれのチャック位置に移動すると、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。複数のチャックピン22がそれぞれの解除位置に移動すると、基板Wの保持が解除される。
【0048】
複数のチャックピン22を駆動する駆動部(不図示)は、例えばモータを含み、モータの駆動力によって複数のチャックピン22を変位させてもよい。あるいは、駆動部は、各チャックピン22に連結された第1固定磁石と、当該第1固定磁石に対して相対的に移動する第2可動磁石とを含み、第2可動磁石の位置により、複数のチャックピン22を変位させてもよい。当該駆動部は制御部90によって制御される。
【0049】
なお、基板保持部2は必ずしも複数のチャックピン22を有する必要はない。例えば、基板保持部2は基板Wの下面を吸引して基板Wを吸着してもよく、あるいは、静電方式により基板Wの下面を吸着してもよい。
【0050】
図3の例では、基板保持部2は回転機構23をさらに含んでおり、回転軸線Q1のまわりで基板Wを回転させる。回転軸線Q1は基板Wの中心部を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。例えば回転機構23はシャフト24およびモータ25を含む。シャフト24の上端はステージ21の下面に連結され、ステージ21の下面から回転軸線Q1に沿って延在する。モータ25は制御部90によって制御される。モータ25はシャフト24を回転軸線Q1のまわりで回転させて、ステージ21および複数のチャックピン22を一体に回転させる。これにより、複数のチャックピン22によって保持された基板Wが回転軸線Q1のまわりで回転する。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0051】
なお、以下では、回転軸線Q1についての径方向および周方向を、それぞれ単に径方向および周方向と呼ぶ。
【0052】
<ノズル3>
ノズル3はチャンバ1内に設けられ、基板Wの主面への処理液の供給に用いられる。ノズル3は供給管31を介して処理液供給源34に接続される。つまり、供給管31の下流端がノズル3に接続され、供給管31の上流端が処理液供給源34に接続される。処理液供給源34は、例えば、処理液を貯留するタンク(不図示)を含み、供給管31に処理液を供給する。処理ユニット130において、基板W上のレジスト等の有機物を除去する場合、処理液としては、例えば、硫酸を用いる。その他、硫酸塩、ペルオキソ硫酸およびペルオキソ硫酸塩の少なくともいずれかを含む液、または、過酸化水素を含む液などの薬液を用いてもよい。また基板Wにおけるプラズマ処理の目的や、除去する対象に依っては、処理液としてSC1(過酸化水素水とアンモニアとの混合液)およびSC2(過酸化水素水と塩酸との混合液)などのいわゆる洗浄用薬液や、フッ酸、塩酸、リン酸などのエッチング用薬液を用いても良い。
【0053】
図3の例では、供給管31には、バルブ32および流量調整部33が介装されている。バルブ32は制御部90によって制御される。バルブ32が開くことにより、処理液供給源34からの処理液が供給管31を通じてノズル3に供給され、ノズル3の吐出口3aから吐出される。吐出口3aは例えばノズル3の下端面に形成される。流量調整部33は制御部90によって制御され、供給管31を流れる処理液の流量を調整する。流量調整部33は例えばマスフローコントローラである。
【0054】
<移動機構51>
図3の例では、ノズル3は移動機構51によって移動可能に設けられる。移動機構51は制御部90によって制御され、ノズル3をノズル処理位置とノズル待機位置との間で移動させる。ノズル処理位置とは、ノズル3が基板Wの主面(ここでは上面)に向けて処理液を吐出する位置である。ノズル処理位置は、例えば、基板Wよりも鉛直上方であって、基板Wの中心部と鉛直方向において対向する位置である(後述の図6も参照)。ノズル待機位置とは、ノズル3が基板Wの主面に向けて処理液を吐出しない位置であり、ノズル処理位置よりも基板Wから離れた位置である。ノズル待機位置は、基板Wの搬出入時において、ノズル3が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。具体的な一例として、ノズル待機位置は、基板Wの周縁よりも径方向外側の位置である。図3の例では、ノズル待機位置で停止するノズル3が示されている。
【0055】
移動機構51は、例えば、ボールねじ機構またはアーム旋回機構を有する。アーム旋回機構は、いずれも不図示のアームと支持柱とモータとを含む。アームは水平に延在する棒状形状を有し、アームの先端にはノズル3が連結され、アームの基端が支持柱に連結される。支持柱は鉛直方向に沿って延びており、その中心軸のまわりで回転可能に設けられる。モータが支持柱を回転させることにより、アームが旋回し、ノズル3が中心軸のまわりで周方向に沿って移動する。このノズル3の移動経路上にノズル処理位置とノズル待機位置とが位置するように、支持柱が設けられる。
【0056】
ノズル3がノズル処理位置に位置する状態(図6参照)において、基板保持部2が基板Wを回転させながらバルブ32が開くと、ノズル3から基板Wの上面に向かって処理液が吐出される。処理液は基板Wの上面に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面には処理液の液膜Fが形成される。基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じ、移動機構51がノズル3をノズル待機位置へと移動させる。
【0057】
<ガード5>
処理ユニット130には、基板Wの周縁から飛散する処理液を受け止めるガード5が設けられている。ガード5は、基板保持部2によって保持された基板Wを取り囲む筒状の形状を有している。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード5の内周面にあたり、内周面に沿って鉛直下方に流れる。処理液は、例えば、不図示の回収配管を流れて処理液供給源34のタンクに回収される。これによれば、処理液を再利用することができる。
【0058】
なお、図3では図示省略しているものの、処理ユニット130は、複数種類の処理液を基板Wに供給する構成を有していてもよい。例えば、ノズル3は複数の処理液供給源に接続されていてもよい。あるいは、処理ユニット130はノズル3とは別のノズルを含んでいてもよい。当該別のノズルは処理液供給源34とは別の処理液供給源に接続される。複数種類の処理液としては、例えば硫酸等の薬液の他、純水、オゾン水、炭酸水、および、イソプロピルアルコール等のリンス液を採用できる。ここでは、ノズル3が複数の処理液供給源に接続されており、複数種類の処理液を基板Wに個別に供給可能であるものとする。
【0059】
<プラズマ源6>
プラズマ源6はプラズマを発生させる装置であり、プラズマリアクタとも呼ばれ得る。プラズマ源6はチャンバ1内において、基板保持部2によって保持された基板Wの主面(例えば上面)と鉛直方向において対向する位置に設けられる。プラズマ源6は電源8に電気的に接続されており、電源8からの電力を受け取って周囲のガスをプラズマ化させる。ガスがプラズマ化することにより、光が生じる。ここでは、プラズマ源6がプラズマを発生させることをプラズマ源6が点灯する、ともいう。なお、ここでは一例として、プラズマ源6は大気圧下でプラズマを発生させる。ここでいう大気圧とは、例えば、標準気圧の80%以上、かつ、標準気圧の120%以下である。
【0060】
図4は、プラズマ源6の構成の一例を概略的に示す平面図である。図4の例では、プラズマ源6は第1電極部61と第2電極部62とを含んでいる。第1電極部61は複数の第1線状電極611と第1集合電極612とを含み、第2電極部62は複数の第2線状電極621と第2集合電極622とを含む。
【0061】
第1線状電極611は、水平な長手方向D1に沿って延在する棒状形状を有する。複数の第1線状電極611は、長手方向D1に直交する水平な配列方向D2において並んで設けられており、理想的には互いに平行に設けられる。
【0062】
第1集合電極612は複数の第1線状電極611の長手方向D1の一方側の端部(基端)どうしを連結する。図4の例では、第1集合電極612は、長手方向D1の一方側に膨らむ円弧状の平板形状を有している。
【0063】
第2線状電極621は、長手方向D1に沿って延在する棒状形状を有する。複数の第2線状電極621は配列方向D2において並んで設けられており、理想的には互いに平行に設けられる。第2線状電極621の各々は、平面視において、複数の第1線状電極611のうち互いに隣り合う二者の間に設けられている。図4の例では、平面視において、第1線状電極611および第2線状電極621は配列方向D2において交互に配列される。第1線状電極611の各々は第2線状電極621と鉛直方向において対向していない。
【0064】
第2集合電極622は複数の第2線状電極621の長手方向D1の他方側の端部(基端)どうしを連結する。図4の例では、第2集合電極622は、第1集合電極612とは反対側に膨らみ、かつ、第1集合電極612と略同径の円弧状の平板形状を有している。
【0065】
図4の例では、各第1線状電極611は第1誘電管64に覆われている。第1誘電管64は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。この第1誘電管64は、第1線状電極611を第1誘電管64の外側のプラズマから保護することができる。また図4の例では、各第2線状電極621は第2誘電管65に覆われている。第2誘電管65は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。この第2誘電管65は、第2線状電極621を第2誘電管65の外側のプラズマから保護することができる。
【0066】
図4の例では、プラズマ源6には仕切部材66が設けられている。仕切部材66は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。仕切部材66は例えば円板形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。第1電極部61および第1誘電管64は仕切部材66よりも鉛直下方に設けられ、第2電極部62および第2誘電管65は仕切部材66よりも鉛直上方に設けられている。
【0067】
<電源8>
プラズマ源6には、プラズマ用の電源8によって電圧が印加される。図4の例では、第1電極部61の第1集合電極612が配線81を介して電源8の第1出力端8aに電気的に接続され、第2電極部62の第2集合電極622が配線82を介して電源8の第2出力端8bに電気的に接続される。電源8は例えばインバータ回路等のスイッチング電源回路を有しており、第1電極部61と第2電極部62との間にプラズマ用の電圧を出力する。より具体的な一例として、電源8はプラズマ用の電圧として高周波電圧を第1電極部61と第2電極部62との間に出力する。電源8の出力は制御部90によって制御される。よって、プラズマ源6は制御部90によって制御されるといえる。
【0068】
電源8が第1電極部61と第2電極部62との間に電圧を出力することにより、第1線状電極611と第2線状電極621との間にプラズマ用の電界が生じる。当該電界に応じて、第1線状電極611および第2線状電極621の周囲のガスがプラズマ化する。逆に言えば、当該ガスがプラズマ化する程度の電圧が電源8によって第1電極部61と第2電極部62との間に印加される。当該電圧は、例えば、数十kVかつ数十kHz程度の高周波電圧である。
【0069】
上述のプラズマ源6によれば、水平な長手方向D1に沿って延在する第1線状電極611および第2線状電極621が水平な配列方向D2において交互に配列される。したがって、プラズマ源6は平面視において広い範囲でプラズマを発生させることができる。
【0070】
<遮断部材7>
図3を参照して、処理ユニット130には遮断部材7が設けられてもよい。遮断部材7はカバー部71と垂下部72とを含む。カバー部71はプラズマ源6よりも鉛直上方に設けられている。カバー部71は例えば円板形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。カバー部71の側面はプラズマ源6よりも径方向外側に位置している。垂下部72はカバー部71の周縁から鉛直下方に延在し、その先端部がプラズマ源6よりも鉛直下方に位置する。
【0071】
<移動機構52>
移動機構52は制御部90によって制御され、プラズマ源6を鉛直方向に沿って基板保持部2に対して相対的に移動させる。移動機構52は昇降機構であるともいえる。ここでは一例として、移動機構52は、制御信号により作動するモータ521と、モータ521の回転力を鉛直方向の移動に変換するカムと、カムに固設された棒状または板状の柱材とを含む。移動機構52の柱材はプラズマ源6に固定されており、モータ521を回転させることでプラズマ源6が鉛直方向に移動する。
【0072】
言い換えれば、プラズマ源6は遮断部材7に固定し、プラズマ源6および遮断部材7が一体に移動する構成としても良い。例えばプラズマ源6は不図示の連結部材によって遮断部材7に固定される。この場合、移動機構52は遮断部材7に固定されていてもよい。移動機構52がプラズマ源6および遮断部材7を一体に移動させる場合には、プラズマ源6および遮断部材7を互いに独立に移動させる2つの移動部材が設けられる場合に比べて、処理ユニット130の構成を簡易にでき、製造コストを低減させることができる。
【0073】
以下では、プラズマ源6および遮断部材7の位置を、代表的にプラズマ源6の位置で説明する。移動機構52は、プラズマ源6をプラズマ処理位置とプラズマ待機位置との間で往復移動させる。
【0074】
プラズマ処理位置とは、プラズマ源6によるプラズマを用いて基板Wを処理するときの位置である。プラズマ処理位置において、基板保持部2によって保持された基板Wとプラズマ源6との間の距離は例えば数mm程度(例えば3mm以下)である(後述の図8も参照)。
【0075】
プラズマ待機位置とは、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行わないときの位置であり、プラズマ処理位置よりも基板Wから離れた位置である。プラズマ待機位置は、基板Wの搬出入時において、プラズマ源6が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。具体的な一例として、プラズマ待機位置はプラズマ処理位置よりも鉛直上方の位置である。プラズマ待機位置において、基板保持部2によって保持された基板Wとプラズマ源6との間の距離は例えば数百mm程度(例えば150mm程度)である。図3の例では、プラズマ待機位置で停止するプラズマ源6が示されている。なお、移動機構52は、例えば、ボールねじ機構またはエアシリンダなどの移動機構を有していてもよい。
【0076】
<ガス供給部4>
ガス供給部4は制御部90によって制御され、基板保持部2によって保持された基板Wとプラズマ源6との間にガスを供給する。例えばガス供給部4は不活性ガスを供給する。不活性ガスはアルゴンガス等の希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれかを含む。この不活性ガスは、プラズマ源6によってプラズマ化し得る。
【0077】
ガス供給部4は不活性ガスに加えて処理ガスを供給してもよい。処理ガスとは、プラズマが処理ガスに作用することにより酸素ラジカル等の活性種を生成するガスであり、例えば、酸素を含む酸素含有ガスである。酸素含有ガスは、例えば、酸素ガス、オゾンガス、二酸化炭素ガス、空気、または、これらの少なくとも二つの混合ガスを含む。処理ガスを供給する場合、不活性ガスはキャリアガスとしても機能する。
【0078】
ガス供給部4は、ガスを吐出する給気口41aを有している。図3の例では、給気口41aはプラズマ源6と基板Wとの間の空間H1に対して径方向外側に位置している。この場合、給気口41aは空間H1の側方から空間H1に向けてガスを流出させる。図3の例では、複数の給気口41aが設けられている。複数の給気口41aは例えば空間H1に対して径方向外側において、周方向で等間隔に設けられる。
【0079】
図3の例では、給気口41aは給気管41の下流端に形成されており、給気管41の上流端はガス供給源44に接続される。図3の例では、給気管41は複数の分岐管411と共通管412とを含む。各分岐管411の下流端が給気口41aに相当し、各分岐管411の上流端は共通管412に接続される。共通管412の上流端はガス供給源44に接続される。ガス供給源44はガスを給気管41の上流端(具体的には、共通管412の上流端)に供給する。給気管41(具体的には、共通管412)にはバルブ42および流量調整部43が介装されている。バルブ42は制御部90によって制御される。バルブ42が開くことにより、ガス供給源44からのガスが給気管41を流れて各給気口41aから流出する。流量調整部43は制御部90によって制御され、給気管41を流れるガスの流量を調整する。流量調整部43は例えばマスフローコントローラである。
【0080】
なお、ガス供給部4が処理ガスおよび不活性ガスを供給する場合、ガス供給部4は処理ガスおよび不活性ガスの流量が個別に調整可能となるように構成されるとよい。
【0081】
図3の例では、給気管41は遮断部材7に取り付けられている。具体的な一例として、給気管11の下流部分は遮断部材7の垂下部72の先端部を径方向に貫通する。給気口41aは例えば垂下部72の内側面に形成される。
【0082】
垂下部72はカバー部71の周縁の全周に立設されていてもよく、あるいは、給気口41aを形成する周方向部分のみに設けられていてもよい。後者の場合、複数の垂下部72が周方向において間隔を空けて設けられる。
【0083】
給気管41が遮断部材7に取り付けられている場合、給気口41aは遮断部材7と一体で移動する。上述の例では、遮断部材7はプラズマ源6と一体で移動するので、移動機構52は、プラズマ源6、遮断部材7および給気口41aを一体で鉛直方向に沿って移動させる。
【0084】
<処理ユニットの動作例>
図5は、処理ユニット130の動作の一例を示すフローチャートである。まず、基板保持部2が基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。具体的には、主搬送ロボット120が未処理の基板Wを処理ユニット130に搬入し、基板保持部2は、搬入された基板Wを保持する。ここでは、基板Wの上面にレジストが形成されている。
【0085】
次に、基板Wの上面に処理液を供給する(ステップS2:液供給工程)。図6は、液供給工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。
【0086】
液供給工程において、まず、移動機構51がノズル3をノズル待機位置からノズル処理位置に移動させる。ここでは、ノズル処理位置は基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。そして、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1まわりで回転させ、バルブ32が開く。バルブ32が開くと、ノズル3から処理液が基板Wの上面の中心部に向けて吐出される。処理液は基板Wの上面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成される。
【0087】
基板W上に液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じて、処理液の供給が停止する。そして、移動機構51がノズル3をノズル処理位置からノズル待機位置へと移動させる。液膜Fの形成後には、基板保持部2は基板Wの回転を停止させてもよく、あるいは、基板Wの回転を継続してもよい。基板Wの回転を継続する場合、基板保持部2は液供給工程における回転速度より低い回転速度で基板Wを回転させるとよい。これにより、基板Wの周縁から流れ落ちる処理液の量を低減させることができ、液膜Fをより確実に維持することができる。言い換えれば、基板保持部2は液膜Fを維持できる程度の回転速度で基板Wを回転させればよい。より具体的な一例として、基板保持部2は基板Wの周縁から処理液が流れ落ちない程度の回転速度で基板Wを回転させる。このように処理液の供給を停止しつつ基板Wの上面に液膜Fを維持する処理は、パドル処理とも呼ばれる。
【0088】
次に、移動機構52がプラズマ源6をプラズマ待機位置から置換位置に一体に移動させた後に、基板保持部2によって保持された基板Wの上面とプラズマ源6との間にガスを供給する(ステップS3:雰囲気置換工程)。図7は、雰囲気置換工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。
【0089】
まず、移動機構52がプラズマ源6をプラズマ待機位置から置換位置に一体に移動させる(プラズマ源配置工程)。言い換えれば、移動機構52はプラズマ源6と基板Wとの間の間隔が第1間隔となるように、プラズマ源6を配置する。ここでは、移動機構52はプラズマ源6、遮断部材7および給気口41aを一体に移動させる。置換位置は、プラズマ待機位置とプラズマ処理位置との間の位置である。置換位置において、基板保持部2によって保持された基板Wとプラズマ源6との間の第1間隔は例えば10mm程度以上である。
【0090】
また雰囲気置換工程において、ガス供給部4がガスをプラズマ源6と基板Wとの間の空間H1に供給する。具体的には、バルブ42が開く。これにより、ガスが給気管41を流れて給気口41aから流出し、プラズマ源6と基板Wとの間の空間H1に供給される。ここでは一例として、アルゴンガス等の不活性ガスが供給される。このとき、流量調整部43はガスの流量が第1流量となるように不活性ガスの流量を調整する。第1流量は例えば数L(リットル)/min程度から100L/min程度までの値に設定される。置換効率を重視する場合、第1流量は数10L/min以上に設定される。基板上の処理液の乱れを抑制する場合、第1流量はたとえば5L/minから10L/minの範囲の値に設定される。図7の例では、給気口41aから流出するガスを模式的にブロック矢印で示している。
【0091】
以上のように、雰囲気置換工程においてガスがプラズマ源6と基板Wとの間の空間H1に供給されるので、空間H1の雰囲気を所定の雰囲気に近づけることができる。ここでいう所定の雰囲気を示す指標としては、例えば、不活性ガスの濃度(例えば体積濃度)を採用できる。この場合、所定の雰囲気とは、例えば、不活性ガスの濃度が所定の範囲内となるときの雰囲気である。
【0092】
この雰囲気置換工程において、電源8はプラズマ源6に電圧を出力しても構わない。この電圧の出力により、プラズマ源6は周囲のガスをプラズマ化させる。よって、プラズマ源6の直下のガス(例えば不活性ガス)もプラズマ化する。つまり、プラズマ源6が点灯する。このプラズマ化に伴って、種々の活性種が生成され得る。例えば、当該プラズマが空気に作用すると、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じ得る。図7の例では、プラズマおよび活性種が生じていることを模式的に破線の矢印で示している。
【0093】
雰囲気置換工程において、プラズマ源6は、プラズマ処理位置よりも基板Wから離れた置換位置に位置している。よって、プラズマ源6の近傍で生じたプラズマおよび活性種は基板Wの主面上の処理液の液膜Fに到達する前に失活する。逆に言えば、置換位置は、プラズマおよび活性種が基板Wの主面上の液膜Fに到達しない程度の位置に設定される。
【0094】
プラズマ源6と基板Wとの間の空間H1の雰囲気が所定の雰囲気に十分に近づくと、流量調整部43はガスの流量を第2流量に低減させる(ステップS4:流量低減工程)。第2流量は第1流量よりも小さく、例えば、10L/min程度以下に設定される。
【0095】
そして、移動機構52がプラズマ源6を置換位置からプラズマ処理位置に移動させる(ステップS5:間隔低減工程)。つまり、移動機構52は、プラズマ源6と基板Wとの間の間隔を第1間隔よりも小さい第2間隔まで低減させる。ここでは、移動機構52はプラズマ源6、遮断部材7および給気口41aを一体に移動させる。
【0096】
プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態においては、プラズマ源6の直下で発生した活性種は基板Wの上面の液膜Fに供給される(ステップS6:プラズマ処理工程)。図8は、プラズマ処理工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。
【0097】
プラズマ処理工程では、ガス供給部4は、より小さい第2流量でガス(例えばアルゴンガス等の不活性ガス)を空間H1に供給する。図8でも、給気口41aから流出したガスが模式的にブロック矢印で示されており、図7および図8では、ガスの流量の大小が模式的にブロック矢印の幅で示されている。
【0098】
プラズマ処理工程において、活性種が基板Wの上面の液膜Fに作用すると、処理液の処理性能が高まる。具体的な一例として、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを速やかに酸化除去することができる。
【0099】
上述の例では、プラズマ源6は平面視において広い範囲でプラズマを発生させることができるので、基板Wの上面に対して広い範囲で活性種を供給することができる。したがって、基板Wの上面のレジストをより均一に除去することができる。プラズマ源6は平面視において、基板Wの上面と同程度、もしくは、基板Wの上面よりも広い範囲でプラズマを発生させる程度のサイズを有しているとよい。
【0100】
基板Wの上面のレジストが十分に除去されると、移動機構52はプラズマ源6をプラズマ処理位置からプラズマ待機位置へ一体に移動させる。ここでは、移動機構52はプラズマ源6、遮断部材7および給気口41aを一体に移動させる。また、電源8がプラズマ源6への電力供給を停止し、バルブ42が閉じる。
【0101】
次に、処理ユニット130は基板Wの上面に対するリンス処理を行う(ステップS7:リンス工程)。具体的には、処理ユニット130はリンス液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面の処理液をリンス液に置換する。
【0102】
次に、処理ユニット130は基板Wに対する乾燥処理を行う(ステップS8:乾燥工程)。例えば基板保持部2が液供給工程よりも高い回転速度で基板Wを回転させることにより、基板Wを乾燥させる(いわゆるスピンドライ)。次に、主搬送ロボット120が処理済みの基板Wを処理ユニット130から搬出する。
【0103】
<処理ユニットの効果>
以上のように、処理ユニット130によれば、雰囲気置換工程において、プラズマ源6が基板Wから比較的に遠い置換位置で停止するので、空間H1は大きくなる。よって、ガスが空間H1に流入しやすい。しかも、比較的に大きな第1流量でガスがプラズマ源6と基板Wとの間の空間H1に供給される。よって、空間H1における短時間での雰囲気置換に資することができる。つまり、処理のスループットの向上に資する。
【0104】
また空間H1は広いので、比較的に大きな第1流量でガスを供給しても、基板Wの上面の液膜Fを波立たせにくい。言い換えれば、ガスによる液膜Fの液面の揺らぎを抑制することができる。よって、液膜Fを維持しやすい。つまり、液面の揺らぎに起因して処理液が基板Wの周縁から流下することを抑制できる。
【0105】
また上述の例では、給気管41が遮断部材7に連結されるので、給気口41aはプラズマ源6および遮断部材7と一体的に移動する。よって、雰囲気置換工程においては、給気口41aは基板Wから比較的遠い位置(以下、第1給気位置と呼ぶ)に位置する。第1給気位置は、プラズマ源6が置換位置に位置するときの給気口41aの位置である。第1給気位置は基板Wから比較的遠い位置であるので、給気口41aから流出したガスは基板Wの上面の液膜Fにあたりにくく、ガスによる液膜Fへの風圧を小さくすることができる。したがって、ガスによる液膜Fの液面の揺らぎをさらに抑制することができる。
【0106】
また上述の例では、雰囲気置換工程および間隔低減工程において、電源8がプラズマ源6に電圧を出力してプラズマを発生させている。これによれば、以下に説明するように、プラズマ処理工程において、基板Wに対する処理をより均一に行うことができる。
【0107】
さて、電圧をプラズマ源6に出力し始める初期では、プラズマ源6は安定してプラズマを発生させることができない場合がある。例えば、初期では、第1線状電極611と第2線状電極621との間のピッチのばらつき等の諸要因により、プラズマ源6の周囲で局所的にプラズマが発生し得る。つまり、平面視において、プラズマ源6の全体ではなく、一部のみの近傍でプラズマが発生する。よって、活性種も局所的に発生する。そして、時間の経過とともに、プラズマの発生領域が広がり、いずれ、プラズマ源6の周囲の全体でプラズマが発生する。つまり、プラズマ源6が全面点灯する。これにより、活性種もプラズマ源6の周囲の全体で発生する。以上のように、プラズマ源6の点灯に要する立ち上がり時間が必要となる。
【0108】
もしプラズマ処理工程において、電源8がプラズマ源6に電圧を出力し始めると、そのプラズマ処理工程の初期においては、不均一にプラズマおよび活性種が発生するので、活性種が基板Wの上面の液膜Fに不均一に供給される。よって、プラズマ処理工程の初期において、基板Wが不均一に処理される。また立ち上がり時間の分だけ、実質的なプラズマ処理の開始タイミングが遅れ、ひいては、プラズマ処理工程の終了タイミングが遅れてしまう。
【0109】
これに対して上述の例では、雰囲気置換工程において、電源8がプラズマ源6に電圧を出力させ始める。この雰囲気置換工程では、プラズマ源6は基板Wよりも遠い置換位置に位置しているので、プラズマ源6によって活性種が不均一に発生しても、活性種のほんどは基板Wの上面の液膜Fに到達する前に失活する。したがって、基板Wに対する不均一な処理を抑制または回避することができる。
【0110】
雰囲気置換工程の後には、流量調整部43がガスの流量を第2流量に低減させ(流量低減工程)、移動機構52がプラズマ源6を置換位置からプラズマ処理位置に移動させる(間隔低減工程)。プラズマ源6の移動により、空間H1の体積が低減しつつ、空間H1内のガスがプラズマ源6あるいは遮断部材7によって空間H1の側方から外部に押し出される。これにより、空間H1の雰囲気をさらに速やかに所定の雰囲気に近づけることができる。
【0111】
第2流量は例えば、1L/min以下の値に設定される。経験的には、平板上のプラズマ源6を基板Wに対向させて数mm程度の間隔に配置した状態において、第2流量を0.5L/min~1L/minとすることで、液膜Fの液面の揺らぎを抑制することができる。また、ガスの第2流量が小さいのでガスが空間内を比較的に低速で流れ、活性種が多く発生する。つまり、活性種の発生効率を向上させることができる。また、空間が狭くても、ガスがより低圧で供給されることにより、当該空間内で乱流が生じにくく、基板W上の処理液に供給される活性種の分布を均一化させることができる。要するに、安定して活性種が液膜Fへと供給される。したがって、基板Wをより均一に処理することができる。
【0112】
また上述の例では、間隔低減工程において、移動機構52はプラズマ源6がプラズマを発生させた状態(言い換えれば、プラズマ源6が点灯した状態)でプラズマ源6を置換位置からプラズマ処理位置に移動させている。これによれば、プラズマ源6がより均一にプラズマを発生させた状態でプラズマ処理工程を開始することができる。よって、プラズマ処理工程の初期から、基板Wの上面の液膜Fに対してより均一に活性種を供給することができ、基板Wをより均一に処理することができる。また、プラズマ源7の点灯に要する立ち上がり時間の遅れに伴うプラズマ処理の開始の遅れを低減できる。
【0113】
また上述の例では、間隔低減工程において、移動機構52は給気口41aを第1給気位置よりも基板Wに近い位置(以下、第2給気位置と呼ぶ)に移動させる。第2給気位置は基板Wの上面よりも鉛直上方の位置である。上述の例では、給気口41aはプラズマ源6および遮断部材7と一体に移動するので、第2給気位置は、プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置するときの給気口41aの位置である。第2給気位置が基板Wの上面に近いので、プラズマ源6と基板Wとの間の間隔が狭くなっても、より確実に給気口41aから空間H1にガスを供給することができる。
【0114】
また、給気口41aが第1給気位置よりも近い第2給気位置に移動するものの、第2流量を小さく設定することができるので、ガスによる液膜Fの液面の揺らぎを適切に抑制することができる。逆に言えば、第2流量は、プラズマ処理工程において、液膜Fの液面の揺らぎが許容量以下となる程度に設定される。
【0115】
また上述の例では、給気口41aは空間H1に対して側方(径方向外側)からガスを供給する。よって、ガスは液膜Fの液面に沿って流れやすく、液膜Fの液面の揺らぎをさらに抑制することができる。つまり、もしガスが液膜Fの液面に対して略垂直に流れる場合には、ガスが液膜Fに対してより高い風圧で押圧するので、液面の揺らぎを招きやすいところ、上述の例では、そのような液面の揺らぎを抑制することができる。
【0116】
なお、上述の例では、流量低減工程は間隔低減工程よりも前に行われるものの、必ずしもこれに限らない。例えば、流量低減工程は間隔低減工程と並行して行われてもよく、あるいは、プラズマ処理工程中に行われてもよい。例えば、プラズマ処理工程の初期において流量低減工程が行われてもよい。これによれば、ガスの流量を第2流量に低減させた以後に、上述の種々の効果を得ることができる。要するに、プラズマ処理工程の少なくとも一部の期間においてガスの流量が第2流量となっていればよい。当該期間において上述の種々の効果を得ることができる。
【0117】
また、第2流量はゼロに設定されてもよい。つまり、プラズマ処理工程においてガス供給部4はガスの供給を停止してもよい。
【0118】
<制御部90を主体とした説明>
なお、処理ユニット130の動作は制御部90によって制御されるので、制御部90を主体として説明すれば、要するに、制御部90は次のように動作すればよい。すなわち、制御部90は、プラズマ源6と基板Wとの間隔が第1間隔となる状態で、ガス供給部4に第1流量でガスを供給させた後に、移動機構52に、プラズマ源6と基板Wとの間隔を第1間隔よりも狭い第2間隔に低減させ、当該間隔が第2間隔となり、かつ、プラズマ源6が点灯した状態において、ガス供給部に、基板保持部2によって保持された基板Wの主面と、プラズマ源6との間の空間に第1流量よりも小さい第2流量でガスを供給させる、もしくは、ガスの供給を停止させる。
【0119】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態にかかる処理ユニット130の構成は、第1の実施の形態にかかる処理ユニと130の構成と同様である。ただし、第2の実施の形態にかかる処理ユニット130の動作は第1の実施の形態と相違する。
【0120】
図9は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット130の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS11からステップS16はそれぞれステップS1からステップS6と同様である。保持工程(ステップS11)からプラズマ処理工程(ステップS16)が実行されると、プラズマ処理工程において、基板Wに対するレジスト除去が進行する。
【0121】
一方で、プラズマ処理工程において、時間の経過とともに空間H1の雰囲気が所定の雰囲気から徐々に遠ざかる場合がある。例えば、活性種、処理液および基板Wのレジストの相互の化学反応によって、副生成物が発生して空間H1に進入したり、あるいは、活性種の元になるガス(例えば酸素ガス)の濃度が空間H1において低下したりし得る。特に、プラズマ処理工程における第2流量が小さく設定されることは、空間H1の雰囲気が所定の雰囲気から遠ざかりやすくなる一因となり得る。
【0122】
第2の実施の形態では、レジスト除去がある程度進行すると、制御部90はプラズマ源配置工程からプラズマ処理工程までの一連の工程を繰り返すかどうかを判断する(ステップS17:判断工程)。例えば、制御部90は、プラズマ源6がプラズマ処理位置に到達した時点からの経過時間が所定時間以上となったときに、判断工程を行う。制御部90は、判断工程として、例えば、一連の工程の実行回数が、予め設定された基準回数未満であるか否かを判断する。制御部90は実行回数が基準回数未満であるときに、繰り返しが必要であると判断し、実行回数が基準回数以上であるときに繰り返しは不要であると判断する。
【0123】
繰り返しが必要であると判断すると、制御部90は、まず、移動機構52がプラズマ源6をプラズマ処理位置から置換位置に移動させる(プラズマ源配置工程)。ここでは、移動機構52はプラズマ源6、遮断部材7および給気口41aを一体に移動させる。また、ガス供給部4は第2流量よりも大きな第1流量でガスを空間H1に供給する(雰囲気置換工程)。言い換えれば、流量調整部43はガスの流量を第2流量から第1流量に増加させる。流量調整部43は、移動機構52によるプラズマ源6の移動中にガスの流量を増加させ始めてもよく、あるいは、プラズマ源6が停止した以後にガスの流量を増加させ始めてもよい。
【0124】
図10は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット130の動作の一例を概略的に示すタイミングチャートである。図10の例では、プラズマ源6の位置およびガス供給部4によるガスの流量が示されている。図10の例では、繰り返しが必要であるとの判断に応答して、プラズマ源6がプラズマ処理位置から置換位置に移動しつつ、ガスが第2流量から第1流量に増加する。
【0125】
このように雰囲気置換工程によれば、プラズマ源6が置換位置に位置する状態において、ガス供給部4がより大きな第1流量でガスを空間H1に供給する。これにより、液膜Fの液面の揺らぎを抑制しつつ、空間H1の雰囲気を再び所定の雰囲気に近づけることができる。
【0126】
空間H1の雰囲気が再び所定の雰囲気に十分に近づくと、処理ユニット130は流量低減工程(ステップS14)および間隔低減工程(ステップS15)を経てプラズマ処理工程(ステップ16)を実行する。これにより、空間H1の雰囲気を再び所定の雰囲気とした状態で、基板Wの上面の液膜Fに活性種を供給することができる。
【0127】
そして、制御部90は、例えばプラズマ源6がプラズマ処理位置に到達した時点から所定時間が経過すると、再び判断工程(ステップS17)を行う。繰り返しが必要であると判断したきには、再びプラズマ配置工程からプラズマ処理工程までの一連の工程が行われる。図10の例では、2度の判断工程において繰り返しが必要と判断され、当該一連の工程が2回行われる。
【0128】
一方、判断工程(ステップS17)において、繰り返しが不要であると制御部90が判断すると、処理ユニット130はステップS7と同様にリンス処理を行い(ステップS18:リンス工程)、ステップS8と同様に乾燥処理を行う(ステップS19:乾燥工程)。
【0129】
以上のように、第2の実施の形態においては、処理ユニット130はプラズマ源配置工程、雰囲気置換工程、流量低減工程、間隔低減工程およびプラズマ処理工程の一連の工程を1回以上繰り返し実行する。これによれば、空間H1の雰囲気を繰り返し所定の雰囲気に戻しつつ、基板Wに対する処理(プラズマ処理工程)を行うことができる。したがって、プラズマ処理工程において、活性種を十分に発生させつつ、当該活性種を液膜Fに供給することができ、基板Wに対する処理をより速やかに行うことができる。
【0130】
<第3の実施の形態>
基板Wのレジストの除去はプラズマ処理工程において時間の経過とともに進行する。このレジストの除去途中のレジストの表面においては、レジストが部分的に剥離しやすくなったり、あるいは、レジストの表面から剥離した除去途中のレジストの欠片(残留物)が発生したりし得る。
【0131】
レジストのうち剥離しやすくなった部分またはレジストの残留物には、液体を衝突させることにより、物理的にレジストを剥離させたり、あるいは、残留物を基板Wの周縁から外側に流し去ったりすることができる。これによれば、処理液とレジストとの化学反応により、レジストの全てを酸化除去させる場合に比べて、より短時間でレジストを除去させることができる。
【0132】
そこで、第3の実施の形態では、除去途中のレジストに処理液を供給してレジストを速やかに除去することを企図する。
【0133】
第3の実施の形態にかかる処理ユニット130の構成は、第1および第2の実施の形態にかかる処理ユニと130の構成と同様である。ただし、第3の実施の形態にかかる処理ユニット130の動作は第1および第2の実施の形態と相違する。
【0134】
図11は、第3の実施の形態にかかる処理ユニット130の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS21からステップS26はそれぞれステップS1からステップS6と同様である。保持工程(ステップS21)からプラズマ処理工程(ステップS26)が実行されると、プラズマ処理工程において、基板Wに対するレジスト除去が進行する。
【0135】
レジスト除去がある程度進行すると、制御部90は液供給工程からプラズマ処理工程の一連の工程を繰り返すかどうかを判断する(ステップS27:判断工程)。例えば、制御部90は、プラズマ源6がプラズマ処理位置に到達した時点からの経過時間が所定時間以上となったときに、判断工程を行う。制御部90は、判断工程として、例えば、一連の工程の実行回数が、予め設定された基準回数未満であるか否かを判断する。制御部90は実行回数が基準回数未満であるときに、繰り返しが必要であると判断し、実行回数が基準回数以上であるときに繰り返しは不要であると判断する。
【0136】
繰り返しが必要であると判断すると、制御部90は液供給工程を再び実行する(ステップS22:液供給工程)。より具体的には、まず移動機構52がプラズマ源6をプラズマ処理位置からプラズマ待機位置に移動させる(プラズマ源配置工程)。ここでは、移動機構52はプラズマ源6、遮断部材7および給気口41aを一体に移動させる。次に、移動機構51がノズル3をノズル待機位置からノズル処理位置に移動させる。なお、移動機構52はプラズマ源6を必ずしもプラズマ待機位置まで移動させる必要はなく、ノズル3の移動を阻害しない位置に移動させればよい。例えば置換位置において、プラズマ源6および遮断部材7がノズル3の移動を阻害しなければ、移動機構52はプラズマ源6を置換位置に移動させてもよい。
【0137】
またこの液供給工程において、電源8はプラズマ源6に電圧を出力し続けてもよく、あるいは、電圧出力を中断してもよい。つまり、プラズマ源6はプラズマを発生し続けてもよく、プラズマの発生を中断させてもよい。また、ガス供給部4はガスの供給を中断してもよく、あるいは、ガスを空間H1に供給し続けてもよい。
【0138】
次に、ノズル3から基板Wの上面に処理液を供給する。具体的にはバルブ32が開く。また、基板保持部2は基板Wの回転速度を増加させる。つまり、基板保持部2は、プラズマ処理工程における基板Wの回転速度(ゼロを含む)よりも高い回転速度で、基板Wを回転させる。
【0139】
ノズル3から吐出された処理液は基板Wの上面の中央部に着液し、基板Wの上面を径方向外側に流れて基板Wの周縁から外側に飛散する。この処理液の流れにより、除去途中のレジストを部分的に剥離することができ、あるいは、レジストの残留物を基板Wの周縁から外側に流し去ることができる。また、液供給工程によって、基板Wの上面の古い処理液を新しい処理液に置換することができ、新しい処理液による液膜Fを形成することができる。
【0140】
充分な供給量で処理液を基板Wに供給すると、バルブ32が閉じ、移動機構51がノズル3をノズル待機位置に移動させる。
【0141】
次に、処理ユニット130は雰囲気置換工程(ステップS23)、流量低減工程(ステップS24)および間隔低減工程(ステップS25)を経てプラズマ処理工程(ステップS26)を実行する。これにより、空間H1の雰囲気を再び所定の雰囲気とした状態で、基板Wの上面の液膜Fに活性種を供給することができる。
【0142】
判断工程(ステップS27)において、繰り返しが不要であると制御部90が判断すると、処理ユニット130はステップS7と同様にリンス処理を行い(ステップS28:リンス工程)、ステップS8と同様に乾燥処理を行う(ステップS29:乾燥工程)。
【0143】
以上のように、第3の実施の形態においては、処理ユニット130は液供給工程、プラズマ源配置工程、雰囲気置換工程、流量低減工程、間隔低減工程およびプラズマ処理工程の一連の工程を1回以上繰り返し実行する。よって、プラズマ処理工程後の液供給工程において、処理液の物理的な流れによって、除去途中のレジストを部分的に剥離することができ、あるいは、レジストの残留物を基板Wの周縁から外側に流し去ることができる。よって、より短時間で基板Wの上面のレジストを除去することができる。
【0144】
また、再度の液供給工程によって、新しい処理液で基板Wの上面に液膜Fを形成することができ、雰囲気置換工程、流量低減工程および間隔低減工程によって、空間H1の雰囲気を再び所定の雰囲気とすることができる。したがって、その後のプラズマ処理工程において、活性種を十分に発生させつつ、当該活性種を清浄な液膜Fに供給することができる。これによっても、基板Wの処理を速やかに行うことができる。
【0145】
以上のように、処理ユニット(基板処理装置)130および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この処理ユニット130および基板処理方法がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0146】
例えば、プラズマ源6は図4に限らない。例えば、仕切部材66が設けられていなくてもよい。この場合、第1電極部61および第2電極部62は同一の平面上に設けられてもよい。また、仕切部材66が設けられていない場合には、ガスがプラズマ源6の第1誘電管64および第2誘電管65の間を鉛直方向に通過することができるので、給気口41aはプラズマ源6よりも鉛直上方において、プラズマ源6と鉛直方向に対向する位置に形成されてもよい。例えば給気口41aは遮断部材7のカバー部71の下面に形成されていてもよい。
【0147】
また、ガス供給部4は雰囲気置換工程からプラズマ処理工程において、適宜に処理ガスも供給してもよい。
【0148】
また、例えば、基板Wに対する処理は必ずしもレジスト除去処理に限らない。基板Wに対する処理として、活性種により処理液の処理能力を向上させることができる全ての処理を採用することができる。
【符号の説明】
【0149】
130 基板処理装置(処理ユニット)
2 基板保持部
3 ノズル
4 ガス供給部
41a 給気口
6 プラズマ源
52 移動機構
90 制御部
S1,S11,S21 保持工程(ステップ)
S2,S12,S22 液供給工程(ステップ)
S3,S13,S23 雰囲気置換工程(ステップ)
S4,S14,S24 流量低減工程(ステップ)
S5,S15,S25 間隔低減工程(ステップ)
S6,S16,S26 プラズマ処理工程(ステップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11