IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/58 20060101AFI20240904BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
A61K8/58
A61Q11/00
A61K8/34
A61K8/63
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021121505
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017313
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸井 学
(72)【発明者】
【氏名】横山 将史
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303188(JP,A)
【文献】特開2013-075858(JP,A)
【文献】特開2017-214347(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)(B)、及び(D)
(A)銅クロロフィリンナトリウム 0.003質量%以上0.01質量%以下
(B)エリスリトール 10質量%以上20質量%以下
(D)水 8質量%以上74.39質量%以下
を含有し、かつ
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が、500以上2000以下である口腔用組成物。
【請求項2】
さらに、グリチルレチン酸(C)を含有する請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(C)の含有量が、0.001質量%以上1質量%以下である請求項2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、銅クロロフィリンナトリウムは、口臭の予防又は改善効果を発揮することが期待される成分であることから、種々の口腔用組成物に用いられている。
例えば、特許文献1には、炭酸塩及び有機酸である発泡成分と、銅クロロフィリンナトリウムとを特定の配合比で含有する口腔用固形製剤が開示されており、口中での発泡により口臭防止効果を相乗的に高める試みがなされている。また、特許文献2には、ニトロイミダゾール誘導体及び銅クロロフィリンナトリウムを配合した口腔用組成物が開示されており、フゾバクテリウム・ヌクレイタムやバクテロイデス・ジンジバリスによる揮発性硫黄化合物(VSC)の産出を抑制することによって、口臭の抑制効果の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-236935号公報
【文献】特公平6-35376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)としては、具体的には、硫化水素、メチルメルカプタン、及びジメチルスルフィドが挙げられ、各々独特の臭いを発することで知られている。ここで本発明者らにより、これら揮発性硫黄化合物のなかでも、閾値が低く独特の「血生臭い」臭気を発する上、同様に閾値が低い揮発性硫黄化合物(VSC)であるジメチルスルフィドへも代謝され得るメチルメルカプタンの発生を抑制すると、特に歯ぐきからタンパク質が漏出する症状を有する口腔に対して、口臭を抑える満足感を高め得ることが判明した。
しかしながら、上記いずれの特許文献においても、メチルメルカプタンの発生抑制に着目しつつ口臭抑制を図ることに関しては、未だ検討の余地がある。
【0005】
すなわち、本発明は、揮発性硫黄化合物(VSC)のなかでも特にメチルメルカプタンの発生を長時間抑制することにより、優れた口臭抑制効果を発揮して口臭を抑える満足感の高い口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、種々検討したところ、特定量の銅クロロフィリンナトリウムとエリスリトールとを特定の質量比で含有することにより、揮発性硫黄化合物(VSC)の発生、特にメチルメルカプタンの発生を顕著に抑制して、口臭抑制効果の向上を図ることのできる口腔用組成物を見出した。
【0007】
したがって、本発明は、次の成分(A)、及び(B):
(A)銅クロロフィリンナトリウム 0.001質量%以上0.5質量%以下
(B)エリスリトール
を含有し、かつ
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が、500以上55000以下である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物によれば、口腔内における揮発性硫黄化合物(VSC)の発生、特にメチルメルカプタンの発生を顕著に抑制することができ、口臭による不快感を極めて効果的に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、銅クロロフィリンナトリウムを0.001質量%以上0.5質量%以下含有する。本発明の口腔用組成物では、後述する成分(B)のエリスリトールが成分(A)の銅クロロフィリンナトリウムと特定の質量比を有することにより、口腔内におけるメチルメルカプタンの発生を有効に低減して、口臭抑制効果を飛躍的に高めることができる。
【0010】
成分(A)の含有量は、口臭抑制効果を図る観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.001質量%以上であって、好ましくは0.003質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、金属味等の不快感を抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.5質量%以下であって、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.001質量%以上0.5質量%以下であって、好ましくは0.003~0.3質量%であり、より好ましくは0.005~0.1質量%である。
【0011】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、エリスリトールを含有する。かかる成分(B)は、上記成分(A)と相まって、口腔内におけるメチルメルカプタンの発生を有効に低減して口臭抑制効果を相乗的に高めることができる。
【0012】
成分(B)の含有量は、口臭抑制効果の向上を図る観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5~55質量%であり、より好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは20~45質量%である。
【0013】
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))は、成分(A)と成分(B)による相乗効果を高め、口臭抑制効果の向上を図る観点から、500以上であって、好ましくは1000以上であり、より好ましくは1500以上であり、55000以下であって、好ましくは27500以下であり、より好ましくは14000以下である。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、さらにグリチルレチン酸(C)を含有するのが好ましい。これにより、グリチルレチン酸がもたらす歯垢形成抑制作用や抗炎症作用等を寄与させ、歯肉の健康を維持し、歯周疾患等自体を予防又は改善してVSCの発生を源から絶つことができ、特にメチルメルカプタンの発生を有効に抑制することができるため、本発明の口臭抑制効果を一層増強することが可能になると考えられる。
かかる成分(C)としては、α-グリチルレチン酸、β-グリチルレチン酸等が挙げられる。なかでも、β-グリチルレチン酸が好ましい。
【0015】
成分(C)の含有量は、歯周疾患等自体をも予防又は改善して、口臭抑制効果の増強を有効に図る観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、成分(C)の良好な溶解性又は分散性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.005~0.7質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0016】
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、成分(A)と成分(B)による相乗効果を高め、口臭抑制効果の飛躍的な向上を図る観点から、10以上であって、好ましくは50以上であり、より好ましくは150以上であり、55000以下であって、好ましくは27500以下であり、より好ましくは10000以下である。
【0017】
本発明の口腔用組成物は、好ましくは水(D)を含有する。これにより、上記各成分を良好に溶解又は分散させつつ、口腔内への適用後における口腔用組成物の拡散性も高め、優れた口臭抑制効果をもたらすことができる。
【0018】
成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下である。
さらに、本発明の口腔用組成物の形態がペースト状の練歯磨剤のような歯磨組成物である場合、成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1~65質量%であり、より好ましくは5~60質量%であり、さらに好ましくは8~50質量%である。また、本発明の口腔用組成物の形態が洗口剤、マウススプレー、液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合、成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは70~99質量%であり、より好ましくは75~99質量%であり、さらに好ましくは80~98質量%である。
【0019】
なお、本発明における成分(D)の水とは、口腔用組成物に直接配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。
また、成分(D)の含有量の測定方法は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することもできる。
【0020】
本発明の口腔用組成物は、さらにハイドロゲル粒子(E)を含有することができる。これにより、かかるハイドロゲル粒子を歯肉溝や歯周ポケット等の局所部位に侵入させ、侵入した成分(E)に各含有成分を追随させて局所部位の奥深くにまで到達させることが可能となり、口臭抑制効果の増強を効果的に図ることができる。
なお、「ハイドロゲル」とは、水を溶媒としてゲル形成剤を配合して形成された含水膨潤体であって、水に不溶なものをいう。
成分(E)に配合されるゲル形成剤としては、例えば、寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻抽出物;グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、カシアガム等の植物種子粘質物質;ペクチン、アラビノガラクタン等の植物果実粘質物;キサンタンガム、スクレログルカン、プルラン、デキストラン、ジュランガム、カードラン等の微生物産生粘質物;ゼラチン、アルブミン、カゼイン等の動物蛋白質;大豆蛋白質、小麦蛋白質等の植物蛋白質;微結晶セルロース等のセルロース及びその誘導体;澱粉、澱粉リン酸エステル、澱粉グリコール酸エステル等の澱粉及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、適度な破壊性を付与しつつ局所部位への侵入を容易にする観点から、κ-カラギーナン、寒天、及びジュランガムから選択される1種又は2種以上が好ましく、ことさら寒天が好ましい。
成分(E)中のゲル形成剤の含有量は、好ましくは0.25~5質量%であり、より好ましくは0.5~4.5質量%であり、さらに好ましくは1~4質量%である。
【0021】
なお、成分(E)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等の増粘性高分子;pH調整剤;薬効成分;着色剤;防腐剤;香料等を含有していてもよい。
【0022】
また、成分(E)の形状は、成分(E)の局所部位への侵入を容易にする観点から、曲面で構成された回転体の形状を有することが好ましい。ここで、「曲面で構成された回転体」とは、仮想軸及び連続的な曲線で構成された閉じた図を仮想軸で回転させたものをいう。
【0023】
成分(E)の平均粒径は、成分(E)を局所部位の奥深くまで侵入させて、これに各含有成分を追随的に到達させ、口臭抑制効果の増強を効果的に図る観点から、好ましくは50~500μmであり、より好ましくは100~400μmであり、さらに好ましくは140~290μmである。
【0024】
成分(E)の含有量は、成分(E)を局所部位の奥深くまで侵入させて、これに各含有成分を追随的に到達させ、口臭抑制効果の増強を効果的に図る観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。そして、成分(E)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2~15質量%であり、より好ましくは4~12質量%であり、さらに好ましくは5~10質量%である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、上記各成分を良好に溶解又は分散させつつ、口腔内への適用後における口腔用組成物の拡散性も高め、優れた口臭抑制効果を発揮させる観点から、アニオン界面活性剤(f1)、ノニオン界面活性剤(f2)、及び両性界面活性剤(f3)から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(F)を含有することができる。
【0026】
成分(f1)のアニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル硫酸エステル塩;オレイン酸塩、ラウリン酸塩等の脂肪酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;アシルグルタミン酸塩、アシルサルコシン塩等のアシルアミノ酸塩;ラウリルメチルタウリン塩等のアシルタウリン塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、口臭抑制効果を一層高める観点から、アルキル硫酸エステル塩、アシルアミノ酸塩、及びアシルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましい。
【0027】
成分(f2)のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリド等のグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;モノステアリン酸デカグリセリド、モノミリスチン酸デカグリセリド等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;並びにポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、口臭抑制効果を一層高める観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0028】
成分(f3)の両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、口臭抑制効果を一層高める観点から、ヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン、及びアルキルスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
成分(F)の含有量は、口臭抑制効果の増強を効果的に図る観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
【0030】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、水酸化ナトリウム等のpH調整剤、香料、甘味料、色素等を含有することができる。
【0031】
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、良好な使用感を維持し、口臭抑制効果を有効に高める観点から、好ましくは7以上であり、より好ましくは7.5以上であり、さらに好ましくは7.8以上であり、よりさらに好ましくは8以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.5以下であり、さらに好ましくは9以下であり、よりさらに好ましくは8.5以下である。
【0032】
本発明の口腔用組成物の形態は、洗口剤、マウススプレー、液状歯磨剤等の液体口腔用組成物であってもよく、粉歯磨剤、練り歯磨剤等の歯磨剤組成物であってもよい。
【0033】
本発明の口腔用組成物は、血液や歯肉等の組織から浸出するタンパク質等から生じる口臭に対し、特に有効な除去効果を発揮することができる。したがって、歯ぐきについて「腫れ」、「出血」、「やせ」又は「歯ぐき下がり」の少なくともいずれかの悩みがある、歯周病や歯肉炎、歯槽膿漏等の、歯ぐきからタンパク質が漏出する症状を有する口腔内に、本発明の口腔用組成物を適用すると、顕著な効果を実感することが可能となる。このように本発明の口腔用組成物を用いる方法は、歯牙の口臭抑制方法として有用性が高い。
【実施例
【0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0035】
[実施例1~3、比較例1~4]
表1に記載の各成分を混合し、各口腔用組成物(25℃におけるpH=6.7~7.0)を調製した。
次いで、得られた口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって、硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、ジメチルスルフィド((CH32S)の発生量(ppm)、及びVSC総量(ppm)を測定し、得られた値を元に各成分のコントロールに対する相対比(%)(対コントロール各成分量)及びVSC総量のコントロールに対する相対比(%)(対コントロールVSC量)を算出した。
結果を表1に示す。
【0036】
《VSCの測定》
VSCの測定は、オーラルクロマ(登録商標)を用いて行った。
具体的には、安静時の唾液を採取して氷冷した後、これを1.5mL採取してガラスバイアルに投入した。次いで、かかるガラスバイアルに、得られた口腔用組成物(実施例1~3及び比較例1~3)を1.5mL添加し、ボルテックスを用いて10秒間撹拌した。その後、37℃で培養して、各口腔用組成物処理唾液を得た。また、口腔用組成物の代わりに水(比較例4)を添加して、コントロールとした。
次に、コントロールの気相部をオーラルクロマに0.5mL注入し、硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、及びジメチルスルフィド((CH32S)の発生量を1時間ごとに測定した。口腔用組成物の代わりに水(比較例4)を添加したコントロールにおいて、硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、及びジメチルスルフィド((CH32S)の発生量がオーラルクロマの測定限界値に達した時点での測定値を100とし、その時点での各口腔用組成物処理唾液の硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、及びジメチルスルフィド((CH32S)の発生量を算出して、各々の対コントロール量(%)を求めた。
また、硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、及びジメチルスルフィド((CH32S)の総量であるVSCについても、同様に求めた。
【0037】
【表1】
【0038】
[実施例4、比較例5]
表2に記載の各成分を混合し、各口腔用組成物を調製した。
なお、ハイドロゲル粒子(平均粒径50~500μm)は、表2の脚注に記載の成分を加熱混合して、これを気相中に噴霧することによって調製した。
次いで、得られた口腔用組成物を用い、90名の歯ぐきについて「腫れ」、「出血」、「やせ」又は「歯ぐき下がり」の少なくともいずれかの悩みがあるパネラーにより、28日間にわたって1日3回の歯磨きを行った後の口腔内における感触について、下記各項目(1)~(3)にしたがい官能評価した。
なお、各項目について、非常によい、よい、普通の3段階評価(無回答あり)とし、パネラー全人数中に占める各評価の人数割合(%)を算出した。
結果を表3に示す。
【0039】
(1)味及び香り
(2)口の中でのさっぱり感
(3)口臭の抑制
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】