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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】蓄電制御システムおよび蓄電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20240904BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240904BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240904BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
H02J7/00 B
H02J13/00 301A
H01M10/48 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021508857
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008133
(87)【国際公開番号】W WO2020195524
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019054984
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 善之
(72)【発明者】
【氏名】森 治也
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087375(WO,A1)
【文献】特開2014-055896(JP,A)
【文献】特開2009-296837(JP,A)
【文献】特開2015-225723(JP,A)
【文献】特開2001-102092(JP,A)
【文献】特開2015-211480(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
H02J 13/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
G01R 31/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電システムに含まれる蓄電池それぞれについて、蓄電池の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する監視部と、
前記監視部の監視結果に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行うことにより、前記蓄電池の充放電に伴う劣化によって前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値が所定の値に変化する時期を制御する充放電制御部と、
を備え
前記複数の蓄電システムに含まれる蓄電池には、蓄電池の性能、蓄電池の製造者、及び蓄電池の劣化状態の少なくとも何れかが異なる蓄電池が混在しており、
前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値は、前記所定の値に変化すべき分散された時期に設定されており、
前記充放電制御部は、
前記蓄電池の何れかの劣化の時期が、想定される劣化の時期とは異なる場合、前記蓄電池の充放電における充電量に関する制御として、前記所定の指標値が変化して前記所定の値に近づいた蓄電池の充電量についての上限値を下げる制御および下限値を上げる制御のいずれか又は双方を行う、又は
前記蓄電池の何れかの劣化の時期が、想定される劣化の時期とは異なる場合、前記蓄電池の充放電における充放電速度に関する制御として、前記所定の指標値が変化して前記所定の値に近づいた蓄電池の充電速度を下げる制御および放電速度を下げる制御のいずれか又は双方を行うことによって、前記蓄電システムに含まれる蓄電池それぞれの、前記所定の指標値が前記所定の値に変化する時期を分散させる、
蓄電制御システム。
【請求項2】
前記所定の指標値は、前記蓄電池における、現在の蓄電容量の初期の蓄電容量からの変化量を示す値を少なくとも含む、
請求項1に記載の蓄電制御システム。
【請求項3】
前記所定の指標値は、前記蓄電池への充電電力量の積算値、前記蓄電池への放電電力量の積算値、前記蓄電池の充電量の増加分の積算値、および前記蓄電池の充電量の減少分の積算値のいずれか、またはその組み合わせに基づいて算出される値を少なくとも含む、
請求項1又は2に記載の蓄電制御システム。
【請求項4】
前記所定の指標値は、前記蓄電池が高温状態となった累積時間を少なくとも含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【請求項5】
前記監視部は、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行うために前記蓄電池に接続されたパワーコンディショナが高温状態となった累積時間を更に監視し、該パワーコンディショナが高温状態となった累積時間に基づいて、前記パワーコンディショナが含む電解コンデンサの交換時期を予測する、
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【請求項6】
前記監視部は、前記所定の指標値の監視を所定の周期で行い、
前記充放電制御部は、前記所定の周期で監視が行われる都度、該監視結果に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行う、
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【請求項7】
前記充放電制御部は、
前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を実行したことに伴う前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値の変化の実績に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御のための機械学習を行い、
前記機械学習の結果に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を継続する、
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【請求項8】
前記蓄電制御システムは、前記監視部を備えた第1装置と、前記第1装置と異なる場所に設置されると共に前記充放電制御部を備えた第2装置とを、備え、
前記第1装置が備える監視部は、前記監視結果に基づいて、前記充放電制御部の制御に関する制御設定を生成し、該生成した制御設定を前記第2装置が備える充放電制御部に対して送信し、
前記第2装置が備える充放電制御部は、前記第1装置が備える監視部が送信した制御設定に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を継続する、
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【請求項9】
前記複数の蓄電システムは、再生可能エネルギーを利用して発電した電力で前記蓄電システムに含まれる蓄電池を充電する需要家の蓄電システムである、
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【請求項10】
蓄電制御システムが実行する蓄電制御方法であって、
複数の蓄電システムに含まれる蓄電池それぞれについて、蓄電池の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する監視工程と、
前記監視工程の監視結果に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行うことにより、前記蓄電池の充放電に伴う劣化によって前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値が所定の値に変化する時期を制御する充放電制御工程と、
を含み、
前記複数の蓄電システムに含まれる蓄電池には、蓄電池の性能、蓄電池の製造者、及び蓄電池の劣化状態の少なくとも何れかが異なる蓄電池が混在しており、
前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値は、前記所定の値に変化すべき分散された時期に設定されており、
前記充放電制御工程において、
前記蓄電池の何れかの劣化の時期が、想定される劣化の時期とは異なる場合、前記蓄電池の充放電における充電量に関する制御として、前記所定の指標値が変化して前記所定の値に近づいた蓄電池の充電量についての上限値を下げる制御および下限値を上げる制御のいずれか又は双方を行う、又は
前記蓄電池の何れかの劣化の時期が、想定される劣化の時期とは異なる場合、前記蓄電池の充放電における充放電速度に関する制御として、前記所定の指標値が変化して前記所定の値に近づいた蓄電池の充電速度を下げる制御および放電速度を下げる制御のいずれか又は双方を行うことによって、前記蓄電システムに含まれる蓄電池それぞれの、前記所定の指標値が前記所定の値に変化する時期を分散させる、
蓄電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電制御システムおよび蓄電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等を運営する事業者や、住宅で生活する一般需要者といったユーザに、蓄電システムが広く利用されている。蓄電システムを利用する方法としては、例えば、太陽光発電装置に代表されるような再生可能エネルギーを用いた発電装置と、蓄電システムとを接続し、消費しきれない発電電力の余剰分により蓄電池を充電する。あるいは、電力会社から供給される商用電力の料金が安価となる夜間等の時間帯に、この安価な商用電力により蓄電池を充電する。
【0003】
そして、発電量が不十分な時間帯、商用電力が高価な時間帯、あるいは停電発生時等に、蓄電池に充電していた電力を利用する。これより、事業者や一般需要者といったユーザは、商用電力の電力料金の支払総額を安くしたり、予め停電に備えたりすることが可能となる。
このような蓄電システムに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-189045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電池システムの蓄電池を構成する各セルは、充放電の繰り返しや経年に伴い劣化する。そのため、蓄電池の蓄電容量は、段々と目減りしていく。しかしながら、通常の蓄電システムでは、劣化した一部の蓄電池のセルだけを交換することは想定されていない。そのため、ユーザは、蓄電容量が目減りした状態のまま蓄電システムの使用を継続するか、あるいは既存の蓄電システムを丸ごと新たな蓄電システムに交換してメンテナンスをする必要がある。
【0006】
従って、例えば、蓄電池システムの運用期間中、常に一定以上の蓄電容量を確保する必要がある用途の場合、ユーザは、将来の劣化による蓄電容量の減少を考慮して、必要となる蓄電容量を割増して計算する必要がある。そして、この割増した蓄電容量に見合った分だけ蓄電池を設置する必要がある。この場合、蓄電システムの設置のための初期投資額が大きくなってしまう。
また、これを避けるために、ユーザが、割増する量を低く見積もって蓄電池を設置した場合は、運用期間中に早期に蓄電容量が不足してしまい、蓄電システムを早期に丸ごと交換する必要が生じるので、メンテナンス費用が大きくなる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。そして、その目的は、蓄電システムにおける運用コストを、より低減させることが可能な、蓄電制御システムおよび蓄電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄電制御システムは、複数の蓄電システムに含まれる蓄電池それぞれについて、蓄電池の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する監視部と、前記監視部の監視結果に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行うことにより、前記蓄電池の充放電に伴う劣化によって前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値が所定の値に変化する時期を制御する充放電制御部と、を備える。
【0009】
本発明に係る蓄電制御方法は、蓄電制御システムが実行する蓄電制御方法であって、複数の蓄電システムに含まれる蓄電池それぞれについて、蓄電池の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する監視工程と、前記監視工程の監視結果に基づいて、前記蓄電池の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行うことにより、前記蓄電池の充放電に伴う劣化によって前記蓄電池それぞれの前記所定の指標値が所定の値に変化する時期を制御する充放電制御工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電システムにおける運用コストを、より低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電制御システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る蓄電制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るクラウドサーバの構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る蓄電制御システムが実行する、動作処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。
[システム構成]
図1は、本実施形態に係る蓄電制御システムSの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、蓄電制御システムSは、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、複数の蓄電池21、複数の蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30、蓄電制御装置40、電力系統51、需要家側配線52、クラウドサーバ60、外部サーバ70、および管理端末80を含む。なお、図中では「パワーコンディショナ」を「PCS」と表記する。
【0013】
また、図中では、複数の蓄電池21として、蓄電池21-1、蓄電池21-2、・・・、および蓄電池21-nを図示する。また、図中では、これら蓄電池21に対応して、蓄電池用パワーコンディショナ22-1、蓄電池用パワーコンディショナ22-2、および蓄電池用パワーコンディショナ22-nを図示する。ただし、以下では、これらを特に区別することなく説明する場合には、符号の末尾を省略して、「蓄電池21」および「蓄電池用パワーコンディショナ22」と呼んで説明をする。
【0014】
ここで、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、蓄電池21、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30、および蓄電制御装置40は、例えば、需要家の敷地内に設置して利用される。この需要家は、例えば、工場等を運営する事業者であってもよいし、住宅を利用する一般需要者であってもよい。
【0015】
この需要家の敷地内には、電力系統51と電力系統連系型で接続された需要家側配線52が敷設される。そして、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、蓄電池21、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30、および蓄電制御装置40は、この需要家側配線52のAC端に並列接続され、太陽光発電装置11が発電した発電電力あるいは電力系統51を介して電力会社から購入した購入電力の供給を受けて駆動する。
また、蓄電池21と、蓄電池用パワーコンディショナ22のそれぞれは、符号の末尾が共通する同士で組にされ、この組のそれぞれが蓄電システムとして機能する。そして、この蓄電システムは、太陽光発電装置11が発電した発電電力あるいは電力系統51を介して電力会社から購入した購入電力の供給を受けて蓄電を行う。
【0016】
クラウドサーバ60および外部サーバ70は、蓄電制御システムSの運営事業者により利用される。
管理端末80は、蓄電制御システムSの運営事業者あるいは需要家により利用される。
また、これら蓄電制御システムSに含まれる各機器は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。
【0017】
このような構成を有する蓄電制御システムSは、複数の蓄電システムに含まれる蓄電池21それぞれについて、蓄電池21の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する。また、蓄電制御システムSは、監視結果に基づいて、蓄電池21の充放電の制御(例えば、充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御)を行うことにより、蓄電池21の充放電に伴う劣化によって蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期(例えば、蓄電池21の劣化が進んで、蓄電池21を交換すべき時期)を制御する。
これにより、蓄電制御システムSは、以下に説明するような多くの効果を奏する。
【0018】
前提として、一般的な技術では、複数の蓄電システムにおいて、蓄電容量や劣化特性といった蓄電池の性能、蓄電池の製造者(すなわち、製造メーカ)、及び蓄電池の劣化状態の少なくとも何れかが異なる蓄電池を併設した場合に、各蓄電池に対して一律に充放電制御を行っていた。従って、一般的な技術では、このような性能等が異なる蓄電池を併設した場合に、各蓄電池の劣化を意図したように制御することが非常に困難であった。そのため、一般的な技術では、例えば、一部の蓄電池のみが早期に劣化する等の、意図しない劣化の仕方をしてしまう可能性があった。
しかしながら、蓄電制御システムSによれば、上述したように、複数の蓄電システムそれぞれの蓄電池21に対して監視結果に基づいて、それぞれの蓄電池21に対して適切な充放電制御を行う。これにより、蓄電池が意図しない劣化の仕方をしてしまうという一般的な技術の問題を解消し、複数の蓄電システムを適切に利用することができる、という効果を奏する。
【0019】
また、蓄電制御システムSによれば、このように複数の蓄電システムを適切に利用することができる。そのため、一般的な技術のように将来の劣化による蓄電容量の減少を考慮して蓄電容量を割増して計算せずとも、必要となる蓄電容量に見合った分だけ蓄電池を設置し、劣化した一部の蓄電システムのみを順次交換することができる。これにより、蓄電システムの設置のための初期投資額を小さくすることができる、という効果を奏する。
また、例えば、大容量の蓄電システムが劣化して必要な蓄電容量を確保できなくなった場合に、大容量の蓄電システムの交換を行わず、小容量の蓄電システムを増設するだけで容量を回復できるようにできる、という効果も奏する。
【0020】
更に、蓄電制御システムSによれば、上述したように、交換時期の制御を行うことができる。例えば、交換時期を分散させる制御をすることができる。これにより、複数の蓄電システムを一度に全て交換する必要が生じてしまい、一度に多額のメンテナンス費用が発生してしまうことを防止できる、という効果を奏する。また、全ての蓄電システムが同時に劣化して、蓄電容量が一度に不足するというリスクを抑制する、という効果も奏する。
すなわち、蓄電制御システムSによれば、蓄電システムにおける初期投資額やメンテナンス費用といった種々の運用コストをより低減させると共に、複数の蓄電システムをより適切に利用することが可能となる。
【0021】
次に、蓄電制御システムSに含まれる各機器について、より詳細に説明をする。
太陽光発電装置11は、太陽光の光エネルギーを、光起電力効果により電力に変換することによって発電を行う装置である。太陽光発電装置11は、例えば、太陽電池モジュールを直列につなげた太陽電池ストリングを1つの回線とし、それぞれの回線を接続箱に接続することにより、各太陽電池モジュールにより発電した直流電流を1つにまとめる。この1つにまとめられた直流電流は、接続箱内の逆流防止用のダイオードおよび開閉器等を介して、発電装置用パワーコンディショナ12に対して出力される。
【0022】
発電装置用パワーコンディショナ12は、太陽光発電装置11から出力される直流電流を、施設や住居等で一般に用いられる交流電流に変換するインバータを含む。発電装置用パワーコンディショナ12が変換した交流電流は、蓄電池用パワーコンディショナ22、負荷機器30および蓄電制御装置40に対して供給される。
【0023】
蓄電池21は、電力を蓄電する二次電池である。蓄電池用パワーコンディショナ22が蓄電池21に充電をすることにより、蓄電池21は電力を蓄電する。この蓄電池21に蓄電された電力によって、例えば、停電の際に負荷機器30を使用したり、昼間に発電された余剰電力を夜間に使用したりすることができる。また、単価の安い夜間電力を充電して昼間に使用することができる。なお、各蓄電池21は、それぞれが同じ種類の蓄電池であってもよいが、蓄電容量や劣化特性といった蓄電池の性能、蓄電池の製造者(すなわち、製造メーカ)、及び蓄電池の劣化状態の少なくとも何れかが異なる蓄電池であってもよい。すなわち、各蓄電池21として、このような性能等が異なる蓄電池が混在していてもよい。
【0024】
蓄電池用パワーコンディショナ22は、蓄電池21に蓄電された電力の直流電流を、住居等で一般に用いられる交流電流に変換するインバータを含む。蓄電池用パワーコンディショナ22が変換した交流電流は負荷機器30および蓄電制御装置40に対して供給される。
【0025】
負荷機器30は、太陽光発電装置11が発電した電力、および電力会社から購入(すなわち、買電)した電力によって稼働する複数の電気機器を含む。負荷機器30に含まれる電気機器は特に限定されず、例えば、工場で稼働する各種機械やエアコン、あるいは、冷蔵庫、テレビ、および電気給湯器(例えば、エコキュート)等の電気機器が負荷機器30に含まれる。
【0026】
蓄電制御装置40は、クラウドサーバ60が監視結果に基づいて決定した制御設定に基づいて、各蓄電池用パワーコンディショナ22を制御することにより、各蓄電池21の充放電を制御する。
【0027】
また、蓄電制御装置40は、蓄電システムや太陽光発電装置11の運用状態に関する各種の状態情報を収集する。蓄電制御装置40は、状態情報として、例えば、蓄電池用パワーコンディショナ22のそれぞれから、蓄電池21それぞれについての、蓄電池21の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を収集する。この所定の指標値は、例えば、現在の蓄電容量の初期の蓄電容量からの変化量を示すSOH(State of Health)の値、蓄電池21への充電電力量や放電電力量の積算値、蓄電池21の充電量の増加分や減少分を示す値であるSOC(state of charge)の積算値、および蓄電池21が高温状態となった累積時間の値、のいずれか、またはその組み合わせである。
【0028】
また、他にも例えば、蓄電制御装置40は、状態情報として、蓄電池用パワーコンディショナ22のそれぞれから、蓄電池用パワーコンディショナ22それぞれ自身の情報を収集する。例えば、蓄電池用パワーコンディショナ22が高温状態となった累積時間の値等を収集する。
【0029】
更に、他にも例えば、蓄電制御装置40は、状態情報として、発電装置用パワーコンディショナ12を介して、太陽光発電装置11の発電電力量の実績を収集する。また、蓄電制御装置40は、状態情報として、蓄電池21、負荷機器30、および蓄電制御装置40に供給される電力を監視することにより、電力消費量の実績を収集する。更に、蓄電制御装置40は、状態情報として、電力系統を監視することにより、購入電力量(すなわち、買電量)の実績を収集する。
蓄電制御装置40は、このようにして収集した状態情報を、クラウドサーバ60に対して送信する。
【0030】
クラウドサーバ60は、蓄電制御装置40から受信した状態情報に含まれる蓄電池21の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する。また、クラウドサーバ60は、監視結果に基づいて、蓄電池21の充放電の制御を行うことにより、蓄電池21の充放電に伴う劣化によって蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期(例えば、蓄電池21の劣化が進んで、蓄電池21を交換すべき時期)の制御を行う。本実施形態では、説明のための一例として、クラウドサーバ60は、蓄電池21の充放電における充電量又は充放電速度の少なくとも何れかに関する制御を行うことにより、蓄電池21の充放電に伴う劣化によって蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期(例えば、蓄電池21の劣化が進んで、蓄電池21を交換すべき時期)を分散させる制御を行う。
そのために、クラウドサーバ60は、監視結果に基づいて、このような蓄電池21の充放電の制御を実行するためのパラメータである制御設定を、蓄電制御装置40に対して送信する。蓄電制御装置40は、上述したように、この制御設定に基づいて、各蓄電池用パワーコンディショナ22を制御することにより、各蓄電池21の充放電を制御する。
【0031】
これにより、蓄電制御システムSは、所定の指標値が所定の値に変化する時期(例えば、蓄電池21の劣化が進んで、蓄電池21を交換すべき時期)を分散させることができ、上述したような、多くの効果を奏する。
なお、これら蓄電制御装置40およびクラウドサーバ60の更なる詳細については、図2および図3を参照して後述する。
【0032】
外部サーバ70は、クラウドサーバ60が制御設定を生成するための情報として、蓄電制御システムSに含まれる各機器の情報である機器情報を提供するサーバである。外部サーバ70は、太陽光発電装置11、発電装置用パワーコンディショナ12、蓄電池21、蓄電池用パワーコンディショナ22といった各機器の機器情報をクラウドサーバ60に対して送信する。機器情報は、例えば、各機器のスペック、各機器の価格、各機器の設置費用、各機器の増設費用、および各機器のメンテナンス費用等の情報である。また、外部サーバ70は、例えば、各機器の製造メーカや、メンテナンスを行う事業者のサーバにより実現される。あるいは、外部サーバ70は、蓄電制御システムSの運営事業者自身や、この運営事業者と提携するメンテナンス事業者等が運用するものであってもよい。
【0033】
管理端末80は、クラウドサーバ60を管理するための端末である。蓄電制御システムSの運営事業者あるいは需要家は、管理端末80を利用することにより、クラウドサーバ60の記憶する、状態情報や、機器情報等を参照することができる。また、運営事業者あるいは需要家は、管理端末80を利用することにより、需要家が利用する各機器の設置に関する情報(例えば、設置されている各機器の機種や設置時期)や、電力会社との契約条件等の情報を、クラウドサーバ60に登録および更新することができる。更に、運営事業者あるいは需要家は、管理端末80を利用することにより、制御設定を決定する基準等の各種の設定を行うことができる。例えば、蓄電池21の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値が所定の値に変化すべき分散された時期の設定を行うことができる。
【0034】
ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、および携帯電話網の何れかまたはこれらを組み合わせたネットワークにより実現される。ネットワークNを介した各機器の間での通信は、任意の通信方式に準拠して行われてよく、その通信方式は特に限定されない。また、各機器の間での通信は、ネットワークNを介することなく機器同士で直接行われてもよい。例えば、蓄電制御装置40と、需要家側配線52に接続される他の各機器との通信は、図示を省略した信号線を用いて直接行われてもよい。
【0035】
以上、蓄電制御システムSに含まれる各機器について説明をした。なお、図中に示す構成は、あくまで一例でありこれに限定されない。例えば、図中では、蓄電システムを構成する各蓄電池21および各蓄電池用パワーコンディショナ22以外の、各機器を1台ずつ図示しているがこれは例示に過ぎず、蓄電制御システムSには、これら各機器が任意の台数含まれていてよい。
【0036】
また、図中において、発電装置用パワーコンディショナ12と蓄電池用パワーコンディショナ22とは、太陽光発電装置11と蓄電池21とに対応して、別体として設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、太陽光発電装置11と蓄電池21とに対応する1台のハイブリッド型パワーコンディショナで、発電装置用パワーコンディショナ12と蓄電池用パワーコンディショナ22とを実現するようにしてもよい。
【0037】
更に、図中において、蓄電池21と、蓄電池用パワーコンディショナ22のそれぞれは、符号の末尾が共通する同士で組にされ、このそれぞれの組が蓄電システムを構築しているが、これに限定されるものではない。例えば、或る製造メーカの一台の蓄電池用パワーコンディショナ22と、この或るメーカの複数の蓄電池21が、一対多の関係で組にされ、この組が蓄電システムを構築してもよい。
【0038】
更に、本実施形態では、再生可能エネルギーとして、太陽光を用いて発電を行う場合を想定するが、これも説明のための一例に過ぎない。本実施形態は、風力、水力、地熱、およびバイオマス等の、太陽光以外の再生可能エネルギーを用いて発電を行う場合にも適用することができる。
【0039】
[蓄電制御装置の構成]
次に、蓄電制御装置40の構成について、図2のブロック図を参照して説明をする。図2に示すように、蓄電制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、通信部44と、記憶部45と、入力部46と、表示部47と、を備えている。これら各部は、信号線によりバス接続されており、相互に信号を送受する。
【0040】
CPU41は、ROM42に記録されているプログラム、または、記憶部45からRAM43にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM43には、CPU41が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0041】
通信部44は、CPU41が、蓄電制御システムSに含まれる他の装置との間で通信を行うための通信制御を行う。
記憶部45は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、各種データを記憶する。
【0042】
入力部46は、各種ボタンおよびタッチパネル、またはマウスおよびキーボード等の外部入力装置で構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
表示部47は、液晶ディスプレイ等で構成され、CPU41が出力する画像データに対応する画像を表示する。
【0043】
また、蓄電制御装置40が本実施形態特有の動作処理を行う場合、図2に示すように、CPU41において、状態情報収集部411と、充放電制御部412とが機能する。
また、記憶部15の一領域には、状態情報記憶部451と、制御設定記憶部452とが設定される。
【0044】
状態情報記憶部451は、後述の状態情報収集部411が収集した、蓄電システムや太陽光発電装置11の運用状態に関する各種の状態情報を記憶する。
制御設定記憶部452は、クラウドサーバ60から受信した制御設定を記憶する。
【0045】
状態情報収集部411は、蓄電システムや太陽光発電装置11の運用状態に関する各種の状態情報を、蓄電池用パワーコンディショナ22や、発電装置用パワーコンディショナ12から収集する。状態情報は、図1を参照して上述した情報であり、例えば、蓄電池21の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値等である。
【0046】
なお、状態情報収集部411は、電力を計測する住居内の電力計、または電力会社の設置したスマートメータから状態情報を取得してもよい。また、状態情報収集部411は、HEMS(Home Energy Management System)に接続し、HEMSから状態情報を収集してもよい。更に、状態情報収集部411は、負荷機器30に含まれる電気機器から、ECHONET Lite(登録商標)等の規格に準拠した通信により、状態情報を収集してもよい。
【0047】
あるいは、状態情報収集部411が、例えば、固定コイルと可動コイルの組からなる電力計としての機能を更に備えていてもよい。そして、状態情報収集部411は、この電力計の機能によって状態情報収集部411自身が計測を実行することにより、状態情報を取得してもよい。
【0048】
状態情報収集部411は、収集した状態情報を、状態情報記憶部451に記憶させる。また、状態情報収集部411は、状態情報記憶部451に記憶させた状態情報を、蓄電制御システムや太陽光発電装置11の識別情報と紐付けた上で、所定の条件に基づいてクラウドサーバ60に対して送信する。例えば、状態情報収集部411は、状態情報を、所定の時間間隔でクラウドサーバ60に対して送信する。
【0049】
なお、状態情報のクラウドサーバ60への送信は、このように状態情報収集部411により行われてもよいが、これに限らない。例えば、蓄電制御装置40以外の各機器(蓄電制御システムや太陽光発電装置11等)から、状態情報収集部411を介することなく、直接クラウドサーバ60に対して状態情報が送信されてもよい。
【0050】
充放電制御部412は、クラウドサーバ60から設定情報を受信することにより、設定情報を取得する。この制御設定は、上述したようにクラウドサーバ60が監視結果に基づいて決定した制御設定である。そして、充放電制御部412は、取得した設定情報を制御設定記憶部452に記憶させる。
また、充放電制御部412は、制御設定記憶部452が記憶する制御設定に基づいて、蓄電システムに含まれる蓄電池用パワーコンディショナ22を制御することにより、蓄電池21の充放電の制御を行う。
【0051】
[クラウドサーバ60の構成]
次に、クラウドサーバ60の構成について、図3のブロック図を参照して説明をする。図3に示すように、クラウドサーバ60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、通信部64と、記憶部65と、入力部66と、表示部67と、を備えている。これら各部は、信号線によりバス接続されており、相互に信号を送受する。
【0052】
ここで、これら各部のハードウェアとしての機能は、上述の蓄電制御装置40が備える、符号のみが異なる同名の各部のハードウェアとしての機能と同等である。従って、重複する説明を省略する。
【0053】
また、クラウドサーバ60が本実施形態特有の動作処理を行う場合、図3に示すように、CPU61において、情報取得部611と、監視部612とが機能する。
また、記憶部65の一領域には、状態情報記憶部651と、機器情報記憶部652とが設定される。
【0054】
状態情報記憶部651は、後述の情報取得部611が、蓄電制御装置40から取得した各種の状態情報や、管理端末80から取得した、需要家が利用する各機器の設置に関する情報や、電力会社との契約条件等の情報を記憶する。
【0055】
機器情報記憶部652は、後述の情報取得部611が、外部サーバ70から取得した機器情報を記憶する。機器情報は、図1を参照して上述した情報であり、例えば、各機器のスペック、各機器の価格、各機器の設置費用、各機器の増設費用、および各機器のメンテナンス費用等の情報である。
【0056】
情報取得部611は、上述の状態情報記憶部651が記憶する状態情報や、上述の機器情報記憶部652が記憶する機器情報を取得する。具体的に、情報取得部611は、蓄電制御装置40や、外部サーバ70とネットワークNを介した通信を行うことにより、これらの情報を取得する。情報取得部611は、取得した状態情報や、機器情報を、それぞれ状態情報記憶部651や機器情報記憶部652に記憶させる。
【0057】
監視部612は、情報取得部611が取得して、状態情報記憶部651記憶させた、状態情報に含まれる蓄電池21の劣化度合いと相関関係にある所定の指標値を監視する。また、監視部612は、監視結果に基づいて、蓄電池21の充放電の制御を行うことにより、蓄電池21の充放電に伴う劣化によって蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期(例えば、蓄電池21の劣化が進んで、蓄電池21を交換すべき時期)を分散させる。そのために、監視部612は、監視結果に基づいて、このような蓄電池21の充放電の制御を実行するためのパラメータである制御設定を決定し、決定した制御設定を蓄電制御装置40に対して送信する。
【0058】
ここで、監視部612による制御設定の決定方法について説明する。監視部612は、上述のように所定の指標値が所定の値に変化する時期を分散させる。そのために、ユーザは、例えば、管理端末80から、所定の指標値が所定の値に変化すべき分散された時期の設定を行う。また、管理端末80から、所定の指標値としてどのような値を用いるのかの設定や、所定の値をいくつとするのか等の設定を行う。そして、監視部612は、この設定した時期や所定の指標値や所定の値に基づいて、制御設定を決定する。
【0059】
設定の一例として、所定の指標値として、現在の蓄電容量の初期の蓄電容量からの変化量を示すSOHの値を用いるように設定する。ここで、SOHの値が低下するほど、蓄電池21が劣化していることを示すので、この場合の所定の値は、SOHの初期値よりも小さな値に設定される。
【0060】
あるいは、所定の指標値として、蓄電池21への充電電力量や放電電力量の積算値、蓄電池21の充電量の増加分や減少分を示す値であるSOCの積算値、および蓄電池21が高温状態となった累積時間の値、のいずれか、またはその組み合わせを用いるように設定する。ここで、これら、蓄電池21への充電電力量や放電電力量の積算値、蓄電池21の充電量の増加分や減少分を示す値であるSOCの積算値、および蓄電池21が高温状態となった累積時間の値が上昇するほど、蓄電池21が劣化していることを示すので、この場合の所定の値は、これらの値の初期値よりも大きな値に設定される。
【0061】
なお、この場合に、監視部612は、これら所定の指標値を算出するために、上述の機器情報記憶部652が記憶する機器情報を適宜用いる。例えば、SOHを算出するために、機器情報に含まれる蓄電池21の初期の蓄電容量や充電特性等の情報を適宜用いる。
【0062】
そして、監視部612は、何れかの蓄電池21において想定よりも早く劣化が進んだことにより、これら所定の指標値が変化して所定の値に近づき、設定された所定の時期よりも早く所定の値になってしまうような場合には、この蓄電池21の劣化が遅くなるように充放電の制御を行うように制御設定を決定する。例えば、この蓄電池21の劣化が遅くなるように、充放電における充電量に関する制御として、この蓄電池21の充電量についての上限値を下げる制御および下限値を上げる制御のいずれか又は双方を行うように制御設定を決定する。あるいは、この蓄電池21の劣化が遅くなるように、充放電の制御として、この蓄電池21の充放電における充放電速度に関する制御として、この蓄電池21の充電速度を下げる制御および放電速度を下げる制御のいずれか又は双方を行うように制御設定を決定する。
【0063】
また、他にも、監視部612は、何れかの蓄電池21において想定よりも劣化が進まないことにより、これら所定の指標値が変化して所定の値に近づく速度が遅く、設定された所定の時期よりも遅く蓄電池21が所定の値になるような場合には、この蓄電池21の劣化が早くなるように、上述の充放電の制御と逆の制御を行うように制御設定を決定する。
【0064】
そして、監視部612は、このようにして決定した制御設定を、蓄電制御装置40に対して送信する。蓄電制御装置40の充放電制御部412は、上述したように、この制御設定に基づいて、各蓄電池用パワーコンディショナ22を制御することにより、各蓄電池21の充放電を制御する。
【0065】
このようにして制御設定を決定し、これに基づいた充放電の制御を行うことにより、所定の指標値が所定の値に変化する時期を分散させることができる。なお、このような監視部612による監視や制御設定の決定は、所定の周期で行うようにしてもよい。そして、充放電制御部412は、このように所定の周期で制御設定が決定される都度、この監視結果に基づいた制御設定に基づいて、各蓄電池用パワーコンディショナ22を制御することにより、各蓄電池21の充放電を制御するようにしてもよい。
【0066】
また、監視部612は、何れかの蓄電池21において、設定された所定の時期となり、所定の指標値が、所定の値まで低下した場合には、劣化したことにより交換時期が到来した蓄電池21が存在する旨を、蓄電制御装置40や管理端末80に送信するようにしてもよい。これにより、蓄電制御装置40や管理端末80を利用するユーザは、劣化したことにより交換時期が到来した蓄電池21を把握することができる。
【0067】
また、他にも、例えば、監視部612は、状態情報に含まれる、蓄電池用パワーコンディショナ22が高温状態となった累積時間の値に基づいて、蓄電池用パワーコンディショナ22内の高温状態で劣化する部品(例えば、電解コンデンサ)の交換時期を予測するようにしてもよい。そして、監視部612は、この予測した電解コンデンサ等の交換時期を、蓄電制御装置40や管理端末80に送信するようにしてもよい。これにより、蓄電制御装置40や管理端末80を利用するユーザは、交換時期が到来した電解コンデンサが存在することを把握することができる。
【0068】
[動作処理]
以上、蓄電制御装置40およびクラウドサーバ60の構成について詳細に説明をした。次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態が実行する動作処理の流れについて説明する。なお、外部サーバ70による、クラウドサーバ60に対しての機器情報の送信や、管理端末80によるクラウドサーバ60に対しての設定の管理等は、図4のフローチャートに示す処理と並行して適宜実行される。
【0069】
ステップS11において、状態情報収集部411は、状態情報を収集する。
ステップS12において、状態情報収集部411は、ステップS11にて収集した状態情報を、クラウドサーバ60に対して送信する。この状態情報は、情報取得部611により取得される。
【0070】
ステップS13において、監視部612は、情報取得部611により取得された状態情報を監視する。
ステップS14において、監視部612は、上述のように所定の指標値の変化等に基づいて設定情報を変更するか否かを判定する。設定情報を変更すると判定した場合は、ステップS14においてYesと判定され、処理はステップS15に進む。一方で、設定情報を変更しない判定した場合は、ステップS14においてNoと判定され、処理はステップS16に進む。
【0071】
ステップS15において、監視部612は、ステップS14の判定結果に基づいて設定情報を生成し、生成した設定情報を、蓄電制御装置40に対して送信する。この設定情報は充放電制御部412により取得される。
【0072】
ステップS16において、監視部612は、制御設定記憶部452に記憶されている既存の設定情報またはステップS15にて取得した設定情報に基づいて、蓄電システムに含まれる蓄電池用パワーコンディショナ22を制御することにより、蓄電池21の充放電の制御を行う。
【0073】
ステップS17において、監視部612は、設定された所定の時期となり、劣化したことにより交換時期が到来した蓄電池21が存在するか否かを判定する。交換時期が到来した蓄電池21が存在する場合は、ステップS17においてYesと判定され、処理はステップS18に進む。一方で、交換時期が到来した蓄電池21が存在しない場合は、ステップS17においてNoと判定され、処理はステップS11に戻る。そして、上述の処理が繰り返される。
【0074】
ステップS18において、監視部612は、劣化したことにより交換時期が到来した蓄電池21が存在する旨を、蓄電制御装置40や管理端末80に送信する。これにより、蓄電制御装置40や管理端末80を利用するユーザは、劣化したことにより交換時期が到来した蓄電池21を把握することができる。このステップS17およびステップS18において、例えば、上述した電解コンデンサ等の交換時期も、蓄電制御装置40や管理端末80に送信するようにしてもよい。
【0075】
以上説明した動作処理により、上述した、蓄電システムにおける初期投資額やメンテナンス費用といった種々の運用コストをより低減させると共に、複数の蓄電システムをより適切に利用することが可能となる、という効果を奏することができる。
【0076】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略および置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態およびその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲および要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、本発明の実施形態を以下の変形例のように変形してもよい。
【0077】
<第1変形例>
上述の実施形態では、状態情報の監視結果に基づいて制御設定を決定するための基準として、蓄電制御装置40や管理端末80を利用するユーザが設定した所定の値等を用いていた。これに限らず、状態情報の監視結果に基づいて制御設定を決定するための基準を機械学習により設定するようにしてもよい。この場合、クラウドサーバ60は、上述のようにして蓄電池21の充放電の制御を実行したことに伴う蓄電池21それぞれの所定の指標値の変化の実績に基づいて、蓄電池21の充放電の制御をより適切に行うための機械学習を行う。
【0078】
この機械学習の手法は特に限定されず、任意の手法を採用することができる。例えば、蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期を分散させることに成功した際の、制御設定を教師データとして、例えば、ディープラーニングなどの一般的な教師あり(または半教師あり)機械学習アルゴリズムを利用して機械学習を行うようにしてもよい。
そして、監視部612は、この機械学習により作成された学習モデルに基づいて、制御設定を決定する。これにより、機械学習の結果に基づいて、蓄電池21の充放電の制御を継続することができる。
【0079】
<第2変形例>
上述した実施形態では、蓄電制御装置40にて測定等を行うことにより収集された状態情報の実績値を監視し、この実績値の監視に基づいた制御設定の決定を行っていた。これに限らず、例えば、将来の状態情報を予測し、この予測した将来の状態情報に基づいて、将来の制御設定の決定を行うようにしてもよい。この場合、例えば、監視部612は、過去の状態情報の実績値の推移に基づいて、将来の状態情報を予測する。あるいは、監視部612は、蓄電制御装置40や管理端末80を利用するユーザが設定した、負荷機器30の稼働スケジュール(例えば、工場の操業スケジュール)等に基づいて、将来の状態情報を予測する。
【0080】
そして、監視部612は、この予測した将来の状態情報に基づいて、将来の制御設定の決定を行う。これにより、蓄電池21の実際の劣化に先立って、蓄電池21の充放電の制御を行うことが可能となる。
【0081】
<第3変形例>
上述した実施形態では、クラウドサーバ60を設け、クラウドサーバ60にて、状態情報の監視や、この監視に基づいた制御設定の生成を行っていた。これに限らず、クラウドサーバ60のこれらの機能の一部または全部を蓄電制御装置40に実装するようにしてもよい。
また、上述した第1変形例や第2変形例と、第3変形例とを組み合わせ、機械学習を行う機能や将来の状態情報を予測する機能の一部または全部を蓄電制御装置40に実装するようにしてもよい。
【0082】
<第4変形例>
上述した実施形態では、需要家の敷地内には、電力系統51と電力系統連系型で接続された需要家側配線52が敷設されていた。また、太陽光発電装置11と、発電装置用パワーコンディショナ12が設置されていた。そして、蓄電システムは、太陽光発電装置11が発電した発電電力あるいは電力系統51を介して電力会社から購入した購入電力の供給を受けて蓄電を行っていた。これに限らず、太陽光発電装置11が発電した発電電力か、電力系統51を介して電力会社から購入した購入電力かのいずれかからのみ蓄電を行うよいにしてもよい。
【0083】
この場合、太陽光発電装置11と、発電装置用パワーコンディショナ12を省略するようにしてもよい。あるいは、需要家側配線52が、電力系統51と接続されていなくてもよい。すなわち、電力系統51や、太陽光発電装置11等の再生可能エネルギーによる発電装置のいずれかが存在していれば、上述した本実施形態を実現することができる。
【0084】
<第5変形例>
上述した実施形態では、蓄電池の充放電の制御を行うことにより、蓄電池21の充放電に伴う劣化によって蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期(例えば、蓄電池21の劣化が進んで、蓄電池21を交換すべき時期)を分散させる制御をしていた。
【0085】
これに限らず、時期の制御として、分散させる制御以外の制御を行うようにしてもよい。例えば、蓄電池21それぞれの所定の指標値が所定の値に変化する時期を意図的に同時期になるようにしてもよい。あるいは、例えば、蓄電池21を複数のグループに分け、何れかのグループに含まれた蓄電池21についてのみ所定の指標値が所定の値に変化する時期を意図的に同時期になるようにしてもよい。
すなわち、蓄電制御システムSの運営事業者あるいは需要家等の要求に応じて、分散以外の形で任意に時期を制御するようにしてもよい。
【0086】
<他の変形例>
上述の第1変形例から第4変形例として例示したように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、上述の実施形態では、クラウドサーバ等の装置により実施形態を実現したが、特にこれに限定されず、情報処理機能を有する電子機器一般で実現することができる。
【0087】
また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
換言すると、図2および図3に図示した機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が蓄電制御システムSに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図2および図3の例に限定されない。
【0088】
例えば、本実施形態に含まれる機能的構成を、演算処理を実行するプロセッサによって実現することができ、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサおよびマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0089】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークまたは記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0090】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されることによりユーザに提供されてもよく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供されてもよい。装置本体とは別に配布される記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini Disc)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている図2のROM42および図3のROM62、または図2の記憶部45および図3の記憶部65に含まれるハードディスク等で構成される。
【0091】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置および複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【符号の説明】
【0092】
11 太陽光発電装置
12 発電装置用パワーコンディショナ
21、21-1、21-2、・・・、21-n 蓄電池
22、22-1、22-2、・・・、22-n 蓄電池用パワーコンディショナ
30 負荷機器
40 蓄電制御装置
41、61 CPU
42、62 ROM
43、63 RAM
44、64 通信部
45、65 記憶部
46、66 入力部
47、67 表示部
51 電力系統
52 需要家側配線
60 クラウドサーバ
70 外部サーバ
80 管理端末
411 状態情報収集部
412 充放電制御部
451 状態情報記憶部
452 制御設定記憶部
611 情報取得部
612 監視部
651 状態情報記憶部
652 機器情報記憶部
S 蓄電制御システム
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4