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  • 特許-遮光遮熱複合シートおよび繊維製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】遮光遮熱複合シートおよび繊維製品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20240904BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021551457
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2020037444
(87)【国際公開番号】W WO2021066103
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2019181594
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中屋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 達郎
(72)【発明者】
【氏名】西原 正勝
(72)【発明者】
【氏名】澤田 行二
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185440(WO,A1)
【文献】特開2007-325757(JP,A)
【文献】実開昭57-116430(JP,U)
【文献】特開2001-121639(JP,A)
【文献】特開2008-115488(JP,A)
【文献】特開2013-031929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00-201/00
A42B 1/00- 1/248
A45B 1/00- 27/02
A41D 13/00- 13/12,
20/00,
31/00- 31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛と、
カーボンブラックを4質量%以上40質量%以下の割合で含有する少なくとも1層の合成樹脂フィルムと、
酸化チタンを30質量%以上60質量%以下の割合で含有し、前記繊維布帛と前記合成樹脂フィルムとを接合する合成樹脂接着剤と、を備え
前記繊維布帛の表面の明度(L値)は、前記合成樹脂フィルムを接合していない前記繊維布帛単体の明度(L値)の95%以上である遮光遮熱複合シート。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムは、ポリウレタン樹脂からなり、厚みが10μm以上30μm以下である請求項1に記載の遮光遮熱複合シート。
【請求項3】
前記合成樹脂接着剤のドライ塗工量は、30g/m以上60g/m以下である請求項1または2に記載の遮光遮熱複合シート。
【請求項4】
JIS L1055 A法による遮光性が、99.9%以上である請求項1~のいずれか一つに記載の遮光遮熱複合シート。
【請求項5】
JUPA基準の7.7.7遮熱指数が、40以上である請求項1~のいずれか一つに記載の遮光遮熱複合シート。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一つに記載の遮光遮熱複合シートを使用する繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光遮熱複合シートおよび繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化やオゾン層破壊に伴い、夏場の酷暑による熱中症の増加、太陽光に含まれる有害な紫外線(UV-B)の生態系への影響、および皮膚ガンや免疫機能の低下という人体への影響が問題視されており、これらの問題を解決するため、日傘やテント天幕などの日除け素材について、遮光性および遮熱性向上の要望が高まっている。
従来、日傘等の日除け用の繊維製品として、黒色に染色された高密度織物繊維布帛が用いられてきたが、太陽光に含まれる紫外線、可視光線および赤外線を十分に遮断することができないという課題があった。
【0003】
このため、傘布の表面に紫外線遮断および熱遮断の機能を持つ酸化チタンや黒色顔料等の機能剤を含む樹脂をコーティングした素材が用いられるようになってきている(特許文献1および特許文献2参照)。また、表面側を明色の樹脂シートとし、暗色の樹脂シートと積層することにより、表面側から通過した太陽光が地表で反射して傘布の裏面に入射した光を吸収する素材も提案されている(特許文献3参照)。更に、繊維布帛に、酸化チタンを所定の割合で含有する合成樹脂フィルムと、カーボンブラックを所定の割合含有する合成樹脂フィルムとを接着剤によりラミネートした日除け用多層シートも提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-325757号公報
【文献】特開2008-115488号公報
【文献】特開2011-56072号公報
【文献】国際公開第2014/185440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のコーティング素材では、樹脂のコーティング性を損なわないレベルに添加物の量を調整する必要があり膜厚も厚く出来ないため、完全に紫外線や赤外線をカットすることは難しく、十分な遮光性および遮熱性が得られていない。
【0006】
また、特許文献3のように単に裏面を暗色にしても、紫外線や赤外線を完全にカットすることができていないため、十分なクーリング効果は得られていない。
一方、特許文献4の日除け用多層シートは、遮光性やクーリング効果に優れている。しかしながら、近年、日傘等の遮光部材には、遮光性やクーリング効果といった機能性のみならず、色彩やデザイン性もさらに追及されているが、上記特許文献1~4では、使用する繊維布帛の色彩について何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、遮光性、遮熱性に優れるだけでなく、発色性に優れる遮光遮熱複合シートおよび繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る遮光遮熱複合シートは、繊維布帛と、カーボンブラックを4質量%以上40質量%以下の割合で含有する少なくとも1層の合成樹脂フィルムと、酸化チタンを30質量%以上60質量%以下の割合で含有し、前記繊維布帛と前記合成樹脂フィルムとを接合する合成樹脂接着剤と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る遮光遮熱複合シートは、上記発明において、前記繊維布帛の表面の明度(L値)は、前記合成樹脂フィルムを接合していない前記繊維布帛単体の明度(L値)の95%以上である。
【0010】
また、本発明に係る遮光遮熱複合シートは、上記発明において、前記合成樹脂フィルムは、ポリウレタン樹脂からなり、厚みが10μm以上30μm以下である。
【0011】
また、本発明に係る遮光遮熱複合シートは、上記発明において、前記合成樹脂接着剤のドライ塗工量は、30g/m以上60g/m以下である。
【0012】
また、本発明に係る遮光遮熱複合シートは、上記発明において、JIS L1055 A法による遮光性が、99.9%以上である。
【0013】
また、本発明に係る遮光遮熱複合シートは、上記発明において、JUPA基準の7.7.7遮熱指数が、40以上である。
【0014】
また、本発明の繊維製品は、上記のいずれか一つに記載の遮光遮熱複合シートを使用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る遮光遮熱複合シートおよび繊維製品は、高い遮光、遮熱性を有するとともに、明度に優れ、優れた発色性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る遮光遮熱複合シートの断面を示す図である。
図2図2は、従来技術に係る遮光遮熱複合シートの断面を示す図である。
図3図3は、従来技術に係る遮光遮熱複合シートの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面はあくまで模式的なものである。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る遮光遮熱複合シートの断面を示す図である。本発明に係る遮光遮熱複合シート1は、繊維布帛2と、カーボンブラックを4質量%以上40質量%以下の割合で含有する合成樹脂フィルム3と、酸化チタンを30質量%以上60質量%以下の割合で含有し、繊維布帛2と合成樹脂フィルム3とを接合する合成樹脂接着剤4と、を備える。合成樹脂フィルム3は、繊維布帛2の裏面2b側に合成樹脂接着剤4によって接合されている。繊維布帛2の表面2aが太陽光が照射される面である。図1に示す遮光遮熱複合シート1は、合成樹脂フィルム3を1層備えるものであるが、これに限定されるものではなく、2層以上の合成樹脂フィルムを備えるものであってもよい。
【0019】
繊維布帛2は、例えば、綿やシルクなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、合成繊維マルチフィラメントを製編もしくは製織した繊維布帛を用いることができる。本発明では、耐久性と加工性に優れる合成繊維マルチフィラメントを用いることが好ましい。
【0020】
繊維布帛2に使用する合成マルチフィラメントとしては、例えば、ナイロン6やナイロン66に代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメンチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維や、ポリ乳酸繊維等の生分解性繊維等の合成繊維が好ましく用いられる。
【0021】
また、単繊維単位の断面形状としては、例えば、丸形、三角、八葉、扁平およびY型に代表される様々な異形断面糸も使用できる。さらに、種類の異なる、例えば粘度の異なるポリマーからなる芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合糸も使用することができる。
【0022】
また、繊維布帛2では、好ましくは仮撚加工糸を使用することができる。仮撚加工糸を用いて高密度に製織または製編することにより、仮撚加工糸の持つ糸条の捲縮の効果で、遮光性がより向上する。
【0023】
繊維布帛2に用いる糸繊度(総繊度)も、用途によって、適切な繊維布帛の目付け(平米あたりの重さ)になるように選定することができる。例えば、傘地であれば、好ましくは20デシテックス以上180デシテックス以下である。糸繊度(総繊度)が20デシテックスより細いと十分な強力や遮光性が得にくく、180デシテックスを超えると繊維布帛2が重くなる傾向を示す。糸繊度(総繊度)は、より好ましくは30デシテックス以上170デシテックス以下である。単繊維繊度としては、0.5デシテックス以上、8デシテックス以下が好ましい。マルチフィラメントのフィラメント数としては、6本~144本であることが好ましい。
【0024】
繊維布帛2が織物である場合、織物のカバーファクターは、遮光性を得るためには、1300以上2800以下であることが好ましい。より好ましくは1500以上2600以下である。
ここで言うカバーファクターは、次式で与えられるものである。
織物のカバーファクター=A×D 1/2+B×D 1/2
A:織物のタテ糸密度(本/2.54cm)
B:織物のヨコ糸密度(本/2.54cm)
:タテ糸の総繊度(dtex)
:ヨコ糸の総繊度(dtex)
【0025】
また、繊維布帛が編物である場合、編地としては、ウエル方向の1インチ(2.54cm)間のループの数とコース方向の1インチ間のループの数の積は、1000以上90000以下であることが好ましく、より好ましくは、2000以上8000以下である。
【0026】
織編物である繊維布帛2において、上記の密度(カバーファクターまたは1インチ四方のループ数)より小さいと、繊維布帛2として粗く、効果的な遮光性が得られ難く、これらの密度より大きいと、繊維布帛2が重くなる原因となる傾向を示す。
【0027】
合成樹脂フィルム3は、カーボンブラックを4質量%以上40質量%以下の割合で含有する。カーボンブラックを含有する合成樹脂フィルム3を備えることにより、遮光遮熱複合シート1の遮光性が向上するとともに、道路などで反射した反射光も吸収することができ、合成樹脂フィルム3側での太陽光の照射量をさらに低減することができ、遮熱性が向上する。カーボンブラックの含有量が4質量%未満の場合、十分な遮光性、遮熱性が得られない。また、カーボンブラックの含有量が40質量%より大きい場合、製膜性に劣り、破れ等の品質不良の原因となる。
【0028】
合成樹脂フィルム3を構成する合成樹脂としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、ニトリルイソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどから選ばれるゴム、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。合成樹脂フィルム3は、ポリウレタン樹脂から形成されることが好ましい。
【0029】
合成樹脂フィルム3には、必要に応じて、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤、軟化剤、帯電防止剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、および着色剤などの各種添加剤を添加することもできる。
【0030】
合成樹脂フィルム3の厚みは、用途によって適宜調整すれば良いが、一般的には、好ましくは10~30μmである。合成樹脂フィルム3の厚みが厚すぎると、製造コストが高くなり、合成樹脂フィルム3および遮光遮熱複合シート1全体の質量も大きくなるという問題点が生じる。一方、合成樹脂フィルム3が薄過ぎると十分な遮光性が得られない傾向を示す。
【0031】
合成樹脂接着剤4は、酸化チタンを30質量%以上60質量%以下の割合で含有し、繊維布帛2と合成樹脂フィルム3とを接合する。合成樹脂接着剤4に酸化チタンを配合することにより、遮光性、遮熱性が向上するとともに、繊維布帛2の表面の明度(L値)が保持でき、発色性に優れる遮光遮熱複合シート1を得ることができる。酸化チタンの含有量が30質量%未満である場合、遮光性、遮熱性が得られず、繊維布帛2の発色性も低下する。また、酸化チタンの含有量が60質量%より大きい場合、繊維布帛2と合成樹脂フィルム3との剥離強度が低下する。なお、合成樹脂接着剤には、酸化チタンのほかに、太陽光反射効果を有するアルミニウムなどの金属微粒子やアルミナなどを添加しても良い。
【0032】
合成樹脂接着剤4を構成する合成樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂など公知のバインダー樹脂を使用することができる。
【0033】
合成樹脂接着剤4のドライ塗工量は、30g/m以上60g/m以下であることが好ましい。合成樹脂接着剤4のドライ塗工量が30g/m未満の場合、剥離強度が低下するとともに、十分な遮光性、遮熱性が得られず、繊維布帛の発色性も低下するおそれがある。合成樹脂接着剤4のドライ塗工量が60g/mより大きい場合、遮光遮熱複合シート1全体の質量が大きくなる。
【0034】
本発明に係る遮光遮熱複合シート1は、合成樹脂フィルム3上に合成樹脂接着剤4を所定量塗布し、合成樹脂接着剤4を塗付した側に繊維布帛2を積層した後、ラミネート機を用いて積層一体化することにより製造することができる。なお、合成樹脂接着剤4は繊維布帛2上に塗工してもよい。遮光遮熱複合シート1は、積層一体化により繊維布帛2の繊維間に、酸化チタンを含有する合成樹脂接着剤が入り込むため、繊維布帛2の発色性の低下を効果的に低減しうる。
【0035】
図2および図3は、従来技術に係る遮光遮熱複合シートの断面を示す図である。図2に示す遮光遮熱複合シート1Aは、繊維布帛2と、酸化チタンを含有する合成樹脂フィルム3Aと、繊維布帛2と合成樹脂フィルム3Aとを接合する、酸化チタンを含有しない透明な合成樹脂接着剤4Aと、を備えている。図3に示す遮光遮熱複合シート1Bは、繊維布帛2と、カーボンブラックを含有する合成樹脂フィルム3B-1と、酸化チタンを含有する合成樹脂フィルム3B-2と、繊維布帛2と合成樹脂フィルム3B-1、3B-2とを接合する、酸化チタンを含有しない透明な合成樹脂接着剤4Bと、を備えている。
【0036】
図2および図3に示すように、従来技術に係る遮熱遮光シート1A、遮光遮熱複合シート1Bでは、繊維布帛2と、合成樹脂フィルム3A、または合成樹脂フィルム3B-1、3B-2とを、酸化チタンを含有しない透明な合成樹脂接着剤4A、または合成樹脂接着剤4Bでラミネート接合している。
【0037】
遮熱遮光シート1A、遮光遮熱複合シート1Bは、酸化チタンを含有する合成樹脂フィルム3Aまたは合成樹脂フィルム3B-2を備えることにより、高い遮光性、遮熱性を有している。しかしながら、繊維布帛2と、酸化チタンを含有する合成樹脂フィルム3A、または合成樹脂フィルム3B-2との間に、透明な合成樹脂接着剤4Aが存在するため、繊維布帛2の表面2a側の明度が低下してしまう。
【0038】
これに対し、本発明に係る遮光遮熱複合シート1は、繊維布帛2と、合成樹脂フィルム3とを、酸化チタンを含有する白色な合成樹脂接着剤4で接合するため、繊維布帛2の表面2aの明度の低下を抑制することができる。
【0039】
また、本発明に係る遮光遮熱複合シート1は、合成樹脂接着剤4に酸化チタンを含有するため、酸化チタンを含有する合成樹脂フィルムを設けることなく、遮光性および遮熱性を向上でき、製造工程およびコストを削減することができる。さらに、合成樹脂フィルムの削減により、遮光遮熱複合シート1の質量も低減することができる。
【0040】
本発明に係る遮光遮熱複合シート1は、繊維布帛2の表面2aの明度(L値)が、合成樹脂フィルム3を接合していない繊維布帛2単体の明度(L値)の95%以上である。繊維布帛2の表面2aの明度(L値)が、繊維布帛2単体の明度(L値)の95%以上であることにより、発色性に優れた遮光遮熱複合シート1を得ることができる。
【0041】
遮光遮熱複合シート1は、JIS L1055 A法による遮光性が、99.9%以上であることが好ましい。JIS L1055 A法による遮光性が、99.9%以上であることにより、遮光性に優れた遮光遮熱シート1を得ることができる。
【0042】
また、遮光遮熱複合シート1は、JUPA基準の7.7.7遮熱指数が、40以上であることが好ましい。JUPA基準の7.7.7遮熱指数が、40以上であることにより、遮熱性に優れた遮光遮熱複合シート1を得ることができる。
【0043】
本発明に係る遮光遮熱複合シート1は、遮光性、遮熱性が高く、発色性にも優れるため、日傘、テント天幕、カーテン、スポーツウエア、アウトドア用ウエア、作業着、帽子、日除けシート等の繊維製品に使用することができる。
【実施例
【0044】
以下に本発明の実施例および比較例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。評価項目、評価方法および使用材料は下記に示すとおりである。
【0045】
(1)明度(L値)
試料について、画像分光測色機(KURABO COLOR-7x、倉敷紡績(株)製)を使用し、D65光源を用いて繊維布帛2の表面2aの明度(L値)を測定した。明度の評価は、合成樹脂フィルム3を接合していない繊維布帛2単体(基布)の明度(L値)を測定し、基布に対する明度(L値)のパーセンテージを算出することにより行った。なお、測定は、繊維布帛2を、白色、赤色、黄色、緑色、クリーム色、および水色とした場合の各色で行っている。
(2)遮光率(%)
JIS L1055 A法(2003年版)に準拠して測定した。
(3)遮熱指数
JUPA基準の7.7.7遮熱指数に準拠して測定した。
【0046】
(実施例1)
合成樹脂フィルムは、一般的な乾式の製造方法により製造した。具体的には、エステル系ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミドに溶解させ、カーボンブラックをポリウレタン樹脂とカーボンブラックとの合計量に対し、6質量%となる割合で配合し、ポリウレタン樹脂組成物とした。ポリウレタン樹脂組成物を離型紙にコーティングして、120℃で乾燥して溶剤を揮発させ、溶剤の揮発後、離型紙から剥してポリウレタン樹脂からなる黒色の合成樹脂フィルムを作製した。この合成樹脂フィルムの厚みは、13μmであった。
【0047】
続いて、エステル系ポリウレタン樹脂接着剤に、酸化チタンを、ポリウレタン樹脂接着剤と酸化チタンとの合計量に対し、35質量%となる割合で添加し、均一に分散するまで混合し、白色の合成樹脂接着剤を得た。得られた合成樹脂接着剤を、合成樹脂フィルムにドライ塗工量で45g/mとなるように塗工し、120℃で乾燥して溶剤を揮発させ、溶剤の揮発後、ポリエステル仮撚リップタフタ(テトロン30d、東レ(株)製)の繊維布帛を貼り合わせて、ラミネート機で積層一体化して遮光遮熱複合シートを作製した。遮光遮熱複合シートは、繊維布帛の各色についてそれぞれ作製した。作製した遮光遮熱複合シートの明度(L値)、遮光性、遮熱指数を測定した結果について表1に示す。
【0048】
(比較例1)
実施例1で使用した黒色の合成樹脂フィルムを、酸化チタンを配合しないポリウレタン樹脂接着剤で繊維布帛に接合した以外は、実施例1と同様にして遮光遮熱複合シートを作製した。遮光遮熱複合シートは、繊維布帛の各色についてそれぞれ作製した。作製した遮光遮熱複合シートの明度(L値)、遮光性、遮熱指数を測定した結果について表1に示す。
【0049】
(比較例2)
ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミドに溶解させ、酸化チタンをポリウレタン樹脂と酸化チタンとの合計量に対し、20質量%となる割合で配合し、ポリウレタン樹脂組成物とした。ポリウレタン樹脂組成物を実施例1で使用した離型紙から剥す前の黒色の合成樹脂フィルム上にコーティングして、120℃で乾燥して溶剤を揮発させ、溶剤の揮発後、離型紙から剥して黒色層上に白色層が積層された、ポリウレタン樹脂からなる合成樹脂フィルムを作製した。この合成樹脂フィルムの厚みは、白色合成樹脂フィルム層および黒色合成樹脂フィルム層の合計で25μmであった。
【0050】
続いて、酸化チタンを配合しないポリウレタン樹脂接着剤を使用し、繊維布帛に前記合成樹脂フィルムの白色面を対面させて貼り合わせた以外は実施例1と同様にして遮光遮熱複合シートを作製した。遮光遮熱複合シートは、繊維布帛の各色についてそれぞれ作製した。作製した遮光遮熱複合シートの明度(L値)、遮光性、遮熱指数を測定した結果について表1に示す。
【0051】
(比較例3)
比較例2で使用した白色の合成樹脂フィルム中の酸化チタンの含有量を40質量%とした以外は、比較例2と同様にして遮光遮熱複合シートを作製した。遮光遮熱複合シートは、繊維布帛の各色についてそれぞれ作製した。作製した遮光遮熱複合シートの明度(L値)、遮光性、遮熱指数を測定した結果について表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、白色の合成樹脂接着剤を使用する本発明の遮光遮熱複合シートは、透明の合成樹脂接着剤を使用する比較例1~3に比べ、各色での繊維布帛の明度の低下が抑制され、発色性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
1、1A、1B 遮光遮熱複合シート
2 繊維布帛
3、3A、3B-1、3B-2 合成樹脂フィルム
4 合成樹脂接着剤
図1
図2
図3