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特許7549593GLP-1ペプチドを噴霧乾燥するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】GLP-1ペプチドを噴霧乾燥するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20240904BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P3/10
A61P3/04
A61K9/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021552851
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020056744
(87)【国際公開番号】W WO2020187712
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】19163103.5
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァングスガード、オレ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、マレーネ、ホルスレフ
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513438(JP,A)
【文献】特表2008-533105(JP,A)
【文献】特許第7410952(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/038412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セマグルチドを含む供給溶液の噴霧乾燥のためのプロセスであって、前記プロセスが、溶媒中にセマグルチドを含む前記供給溶液を噴霧乾燥機に導入することと、霧化ガスおよび乾燥ガスを導入することと、を含み、前記噴霧乾燥機が、16~18%のクロムおよび10~14%のニッケルを含む内側表面を有する前記乾燥ガス用のガスヒーターを含み、前記供給溶液の溶媒が、エタノールを含み、霧化ガスおよび乾燥ガスが、窒素であることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記内側表面が0.001cm~10cmの深さを有することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記供給溶液が49~60%(w/w)水性エタノール中の0.5~2.5%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記乾燥ガスが再循環されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスによって得られたセマグルチドを医薬組成物に製剤化する工程をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セマグルチドなどのGLP-1ペプチドを含む供給溶液の噴霧乾燥の分野に関する。より詳細には、本発明は、改善された純度が得られるセマグルチドを含む供給溶液の噴霧乾燥のためのプロセス、該プロセスによって得られるセマグルチド、および医薬におけるその使用に関する。
【0002】
原体および医薬品を製造するとき、加工中および保存時のタンパク質およびペプチドの安定性が最重要である。原体の噴霧乾燥中、不純物が、溶媒と原体との間の反応に起因して発生し得る。乾燥プロセス中に発生する不純物が可能な限り少なく、可能な限り高い薬物安定性および薬物純度が得られる、原体の噴霧乾燥プロセスを得ることが非常に望まれる。
【0003】
先行技術から、アミノ基および特定のアミノ酸が、アセトアルデヒドの結合に使用され得ること、およびアセトアルデヒドが、様々なタンパク質と反応して安定および不安定な産物の両方を形成することができることが知られている。不安定な産物は、容易に可逆的であるが、安定な産物は、様々な処理に対するそれらの耐性を特徴とする本質的に不可逆的な産物である。さらに、先行技術から、金属種によって触媒されるアセトアルデヒドへの非酸化エタノール脱水素の事例が存在することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの態様では、本発明は、セマグルチドを含む供給溶液の噴霧乾燥のためのプロセスに関し、プロセスが、溶媒中にセマグルチドを含む供給溶液を噴霧乾燥機に導入することと、霧化ガスおよび乾燥ガスを導入することと、を含み、噴霧乾燥機が鉄および18.5%未満のクロムを含む内側表面を有する乾燥ガス用のガスヒーターを含むことを特徴とする。
【0005】
いくつかの態様では、本発明は、本発明のプロセスによって取得可能な産物、および産物の使用に関する。
【0006】
本発明者らは、セマグルチドを含む供給溶液の噴霧乾燥のためのプロセスを第1のユニットから第2のユニットに移動させたときに、増加した不純物発生量を観察した。ユニットの変更は、生産量を増加する必要性によって促進されていて、両方のユニットは、噴霧乾燥の標準ユニットである。不純物は、アセトアルデヒドと反応した産物に対応する、増加したモル重量を有することを特徴とした。不純物の原因が何であるかは明らかではなかったが、広範な調査および検討の後、ガス入口温度と噴霧乾燥された産物中の遊離アセトアルデヒドのレベルとの間に有意な相関が存在していたことが明らかになっており、噴霧乾燥された産物中の遊離アセトアルデヒドは、次いで、産物と反応し得る。さらに、増加した不純物発生量は、ガスヒーター材料によって引き起こされたと思われたが、これは、ガスヒーター材料と同一の材料上にエタノールスパイクした窒素を通過させることが、ガス温度に依存して、エタノール脱水素を示したためである。本発明者らは、噴霧乾燥プロセスでインコロイ800製のガスヒーターを適用するときと比較して、噴霧乾燥プロセスでステンレス鋼316製のガスヒーターを適用するときに、より少ない不純物量が発生することを観察した。本発明は、生産規模に依存していないようである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、噴霧乾燥プロセスでインコロイ800またはステンレス鋼316製のガスヒーターを使用するときのアセトアルデヒド含有量(ppm)を示す。
図2図2は、噴霧乾燥プロセスでインコロイ800またはステンレス鋼316製のガスヒーターを使用するときのアセトアルデヒド含有量(ppm)の関数として、噴霧乾燥中に発生した不純物量(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、セマグルチドを含む供給溶液の噴霧乾燥のためのプロセスに関し、プロセスが、溶媒中にセマグルチドを含む供給溶液を噴霧乾燥機に導入することと、霧化ガスおよび乾燥ガスを導入することと、を含み、噴霧乾燥機が鉄および18.5%未満のクロムを含む内側表面を有する乾燥ガス用のガスヒーターを含むことを特徴とする。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のプロセスによって取得可能な産物、および産物の使用に関する。
【0010】
噴霧乾燥は、多くの場合、原体および医薬品の製造工程として使用される。得られた産物の純度は、全体的な産物のコスト、および最終的な医薬品をその後に受容する対象者に対する安全性にとって重要である。
【0011】
ガスヒーター材料
異なる材料が、ガスヒーターに使用され得る。異なる材料は、異なる特性を有し、異なる目的に有用である。
【0012】
インコロイ800は、中程度の強度と、800℃を上回るなどの高温における酸化、浸炭、および硫化に対する良好な耐性を有する、鉄-ニッケル-クロム合金である。特に、化学プロセスにおける熱処理設備および熱交換器などの高温設備に有用であり、広く使用されている。インコロイ800は、鉄、30~35%のニッケル、および19~23%のクロム、ならびに他の成分を含む(Special Metals Corporation,2004(Sept 04),publication number SMC-046)。
【0013】
ステンレス鋼は、良好な耐食性および耐熱性を有する材料の非常に汎用性の高い群を説明するために使用される用語である。ステンレス鋼は、一般に、鉄および少なくとも10.5%のクロムを含むと考えられる。ステンレス鋼316は、鉄、16~18%のクロム、および10~14%のニッケル、ならびに他の成分を含む(Specification Sheet:Alloy 316/316L(UNS S31600,S31603)W.Nr.1.4401,1.4404,Sandmeyer Steel Company 06/2014)。
【0014】
噴霧乾燥のためのプロセス
本発明は、GLP-1ペプチドを含む供給溶液の噴霧乾燥プロセスに関する。一実施形態では、本発明は、GLP-1ペプチドセマグルチドを含む供給溶液を噴霧乾燥するためのプロセスに関し、該プロセスは、鉄および18.5%未満のクロムを含む内側表面を有する、ガスを乾燥するためのガスヒーターを含む。本明細書で使用される場合、「内側表面」という定義は、乾燥ガスと接触するガスヒーターの内側表面を指す。いくつかの実施形態では、内側表面は、0.001~50cm、代替的に0.01~30cm、代替的に0.1~10cmの深さを有し得る。いくつかの実施形態では、内側表面は、0.001~0.1cm、代替的に0.001~0.5cm、代替的に0.001~1cm、代替的に0.001~2cm、代替的に0.001~3cm、代替的に0.001~4cm、代替的に0.001~5cm、代替的に0.001~6cm、代替的に0.001~7cm、代替的に0.001~8cm、代替的に0.001~9cm、代替的に0.001~10cmの深さを有し得る。いくつかの実施形態では、乾燥ガス用のガスヒーター全体は、鉄および18.5%未満のクロムを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、内側表面は、1~18.5%のクロム、代替的に5~18.5%のクロム、代替的に10~18.5%のクロム、代替的に14~18.5%のクロム、代替的に16~18%のクロムを含む。本発明のいくつかの実施形態では、内側表面は、29%未満のニッケルを含む。いくつかの実施形態では、内側表面は、1~29%のニッケル、代替的に5~20%のニッケル、代替的に6~18%のニッケル、代替的に8~16%のニッケル、代替的に10~14%のニッケルを含む。本発明のいくつかの実施形態では、内側表面は、16~18%のクロムおよび10~14%のニッケルを含む。本発明のいくつかの実施形態では、内側表面は、アルミニウムを含まない。いくつかの実施形態では、内側表面は、チタンを含まない。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液は、溶媒中のGLP-1ペプチドの溶液を含む。本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液は、溶媒中のGLP-1ペプチドセマグルチドの溶液を含む。本発明のいくつかの実施形態では、溶媒は、水性エタノールなどの水性アルコール性溶媒であり、すなわち、水およびエタノールを含む。本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液は、水性エタノール中のセマグルチドから実質的に構成される。いくつかの実施形態では、水性エタノールは、40~75%(w/w)、代替的に45~70%(w/w)、代替的に49~60%(w/w)の濃度である。水性エタノールの濃度は、エタノールの含有量から定義され、すなわち、70%(w/w)水性エタノールは、70%重量のエタノールおよび30%重量の水から実質的になる。本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液中のセマグルチドの濃度は、0.1~10%(w/w)、代替的に0.2~5%(w/w)、代替的に0.3~3%(w/w)、代替的に0.5~2.5%(w/w)である。本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液は、40~75%(w/w)水性エタノール中の0.1~10%(w/w)セマグルチドを含む。本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液は、49~60%(w/w)水性エタノール中の0.5~2.5%(w/w)セマグルチドを含む。本発明のいくつかの実施形態では、供給溶液は、49~60%(w/w)水性エタノール中の0.5~2.5%(w/w)セマグルチドから実質的に構成される。本明細書で使用される場合、「供給溶液は、セマグルチドから実質的に構成される」とは、塩またはペプチド不純物などの、製造プロセスからの他の薬剤が存在し得、例えば、主成分がセマグルチドであり、賦形剤が追加されていないことを指す。本発明のいくつかの実施形態では、噴霧乾燥機に導入される供給溶液は、最終的なクロマトグラフィー製造工程から供給され、主固体成分としてセマグルチド(80~100%)を含むが、製造から持ち越される塩および不純物も含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、乾燥ガスは、窒素である。本発明のいくつかの実施形態では、乾燥ガスは、再循環される。本発明のいくつかの実施形態では、霧化ガスは、窒素である。本発明のいくつかの実施形態では、霧化ガス流量は、18~77kg/時間である。本発明のいくつかの実施形態では、出口温度は、57~79℃である。本発明のいくつかの実施形態では、入口温度は、100~162℃である。本発明のいくつかの実施形態では、供給流量は、24~56kg/時間である。本発明のいくつかの実施形態では、凝縮器温度は、-5~5℃である。本発明のいくつかの実施形態では、乾燥ガス流量は、1250~1550kg/時間である。本発明のいくつかの実施形態では、ノズルは、1.0mmの内径、および5~6.5mmの外径を有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、プロセスは、プロセスによって得られたセマグルチドを医薬組成物に製剤化する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体または液体医薬組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤である。
【0019】
セマグルチド
化合物セマグルチドは、国際公開第2006/097537号の実施例4に説明されるように調製され得る。セマグルチドはまた、N6,26-{18-[N-(17-カルボキシヘプタデカノイル)-L-γ-グルタミル]-10-オキソ-3,6,12,15-テトラオキサ-9,18-ジアザオクタデカノイル}-[8-(2-アミノ-2-プロパン酸),34-L-アルギニン]ヒトグルカゴン様ペプチド1(7~37)としても知られており、WHO Drug Information Vol.24,No.1,2010を参照されたい。
【0020】
いくつかの実施形態では、セマグルチドは、その完全または部分的にイオン化された形態で存在してもよく、例えば、1つ以上のカルボン酸基(-COOH)は、カルボキシレート基(-COO)に脱プロトン化されてもよく、および/または1つ以上のアミノ基(-NH)は、-NH 基にプロトン化されてもよい。いくつかの実施形態では、セマグルチドは、塩の形態である。
【0021】
医薬組成物
化合物セマグルチドは、医薬組成物の形態で投与され得る。医薬組成物は、0.01mg/ml~100mg/mlの濃度のセマグルチドを含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.01~50mg/mL、または0.01~20mg/mL、または0.01~10mg/mLのセマグルチドを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1~20mg/mLのセマグルチドを含む。
【0022】
本明細書に説明される医薬組成物は、例えば、緩衝系、防腐剤、張性剤、キレート剤、安定剤、および界面活性剤からなる群から選択される、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、緩衝液、等張剤および防腐剤からなる群から選択される1つ以上などの、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。様々な賦形剤を伴った薬学的に活性な成分の製剤は、当該技術分野で既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第19版(1995年)、および任意のそれ以降の版)を参照されたい。「賦形剤」という用語は、活性治療成分、例えば、本発明の化合物以外の任意の成分を幅広く指す。賦形剤は、不活性物質、非活性物質、および/または医薬的に活性でない物質であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、リン酸ナトリウム緩衝剤などのリン酸緩衝剤、例えば、リン酸二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プロピレングリコールなどの等張剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、フェノールなどの防腐剤を含む。
【0024】
医薬組成物は、錠剤の形態とすることができる。医薬組成物は、0.01mg~100mgの量のセマグルチドを含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.01~50mg、代替的に0.01~20mg、代替的に0.01~10mgのセマグルチドを含む。医薬組成物は、溶液または懸濁液の形態とすることができる。医薬組成物は、舌下投与および/または経口投与に好適であってもよい。医薬組成物は、皮下投与に好適であってもよい。
【0025】
用途
本発明のプロセスにより取得可能な産物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と共に医薬組成物での使用を意図する。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、0.5%未満、代替的に0.4%未満、代替的に0.3%未満、代替的に0.2%未満の不純物を含むことを特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、皮下投与用である。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、舌下投与および/または経口投与用である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤の形態である。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、医薬で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、肥満および/または糖尿病の予防および/または治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、肥満の治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、糖尿病の治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病の予防および/または治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって取得可能な産物は、NASHの予防および/または治療で使用するためのものである。
【0027】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、肥満および/または糖尿病の予防および/または治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、肥満および/または糖尿病の治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、肥満の治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、糖尿病の治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病の予防および/または治療で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、NASHの予防および/または治療で使用するためのものである。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明は、肥満および/または糖尿病の予防および/または治療を必要とする対象者に、本発明のプロセスによって取得可能な産物の治療有効量を投与することによって、肥満および/または糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、肥満および/または糖尿病の治療を必要とする対象者に、本発明のプロセスによって取得可能な産物の治療有効量を投与することによって、肥満および/または糖尿病を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、肥満の治療を必要とする対象者に、本発明のプロセスによって取得可能な産物の治療有効量を投与することによって、肥満を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、糖尿病の治療を必要とする対象者に、本発明のプロセスによって取得可能な産物の治療有効量を投与することによって、糖尿病を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病の予防および/または治療を必要とする対象者に、本発明のプロセスによって取得可能な産物の治療有効量を投与することによって、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、NASHの予防および/または治療を必要とする対象者に、本発明のプロセスによって取得可能な産物の治療有効量を投与することによって、NASHを予防および/または治療する方法に関する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明は、肥満および/または糖尿病の予防および/または治療を必要とする対象者に、医薬組成物の治療有効量を投与することによって、肥満および/または糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、肥満および/または糖尿病の治療を必要とする対象者に、医薬組成物の治療有効量を投与することによって、肥満および/または糖尿病を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、肥満の治療を必要とする対象者に、医薬組成物の治療有効量を投与することによって、肥満を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、糖尿病の治療を必要とする対象者に、医薬組成物の治療有効量を投与することによって、糖尿病を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病の予防および/または治療を必要とする対象者に、医薬組成物の治療有効量を投与することによって、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病を予防および/または治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、NASHの予防および/または治療を必要とする対象者に、医薬組成物の治療有効量を投与することによって、NASHを予防および/または治療する方法に関する。
【0030】
別段の記載がない限り、範囲は、その終点を含む。いくつかの実施形態では、「1つ(a)」という用語は、「1つ以上」を意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に別段示されない限り、単数形で提示される用語は、複数の状況も含む。本明細書では、「約」という用語は、言及される値の±10%を意味し、その値を含む。
【0031】
本発明の非限定的な実施形態
以下は、本発明の非限定的な実施形態である。
【0032】
1.セマグルチドを含む供給溶液の噴霧乾燥のためのプロセスであって、該プロセスが、溶媒中にセマグルチドを含む供給溶液を噴霧乾燥機に導入することと、霧化ガスおよび乾燥ガスを導入することと、を含み、噴霧乾燥機が鉄および18.5%未満のクロムを含む内側表面を有する乾燥ガス用のガスヒーターを含むことを特徴とする、プロセス。
2.内側表面が1~18.5%のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1に記載のプロセス。
3.内側表面が5~18.5%のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1または2に記載のプロセス。
4.内側表面が10~18.5%のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセス。
5.内側表面が14~18.5%のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセス。
6.内側表面が16~18%のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1~5のいずれか1つに記載のプロセス。
7.内側表面が29%未満のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセス。
8.内側表面が1~29%のニッケルを含むことを特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセス。
9.内側表面が5~20%のニッケルを含むことを特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載のプロセス。
10.内側表面が6~18%のニッケルを含むことを特徴とする、実施形態1~9のいずれか1つに記載のプロセス。
11.内側表面が8~16%のニッケルを含むことを特徴とする、実施形態1~10のいずれか1つに記載のプロセス。
12.内側表面が10~14%のニッケルを含むことを特徴とする、実施形態1~11のいずれか1つに記載のプロセス。
13.内側表面が16~18%のクロムおよび10~14%のニッケルを含むことを特徴とする、実施形態1~12のいずれか1つに記載のプロセス。
14.内側表面がアルミニウムを含まないことを特徴とする、実施形態1~13のいずれか1つに記載のプロセス。
15.内側表面がチタンを含まないことを特徴とする、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
16.内側表面が0.001cm~10cmの深さを有することを特徴とする、実施形態1~15のいずれか1つに記載のプロセス。
17.乾燥ガス用のガスヒーター全体が鉄および18.5%未満のクロムを含むことを特徴とする、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセス。
18.供給溶液が溶媒中のセマグルチドから実質的に構成されることを特徴とする、実施形態1~17のいずれか1つに記載のプロセス。
19.供給溶液溶媒が有機アルコール性溶媒を含むことを特徴とする、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセス。
20.供給溶液溶媒がエタノールを含むことを特徴とする、実施形態1~19のいずれか1つに記載のプロセス。
21.供給溶液が、水性エタノールを含むことを特徴とする、実施形態1~20のいずれか1つに記載のプロセス。
22.供給溶液溶媒が40~75%(w/w)水性エタノールであることを特徴とする、実施形態1~21のいずれか1つに記載のプロセス。
23.供給溶液溶媒が45~70%(w/w)水性エタノールであることを特徴とする、実施形態1~22のいずれか1つに記載のプロセス。
24.供給溶液溶媒が49~60%(w/w)水性エタノールであることを特徴とする、実施形態1~23のいずれか1つに記載のプロセス。
25.供給溶液が0.1~10%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、実施形態1~24のいずれか1つに記載のプロセス。
26.供給溶液が0.2~5%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、実施形態1~25のいずれか1つに記載のプロセス。
27.供給溶液が0.3~3%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、実施形態1~26のいずれか1つに記載のプロセス。
28.供給溶液が0.5~2.5%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、実施形態1~27のいずれか1つに記載のプロセス。
29.供給溶液が40~75%(w/w)水性エタノール中の0.1~10%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、実施形態1~28のいずれか1つに記載のプロセス。
30.供給溶液が49~60%(w/w)水性エタノール中の0.5~2.5%(w/w)セマグルチドを含むことを特徴とする、実施形態1~29のいずれか1つに記載のプロセス。
31.供給溶液が49~60%(w/w)水性エタノール中の0.5~2.5%(w/w)セマグルチドから実質的に構成されることを特徴とする、実施形態1~30のいずれか1つに記載のプロセス。
32.乾燥ガスが窒素であることを特徴とする、実施形態1~31のいずれか1つに記載のプロセス。
33.乾燥ガスが再循環されることを特徴とする、実施形態1~32のいずれか1つに記載のプロセス。
34.霧化ガスが窒素であることを特徴とする、実施形態1~33のいずれか1つに記載のプロセス。
35.18~77kg/時間の霧化ガス流量を有することを特徴とする、実施形態1~34のいずれか1つに記載のプロセス。
36.57~79℃の出口温度を有することを特徴とする、実施形態1~35のいずれか1つに記載のプロセス。
37.100~162℃の入口温度を有することを特徴とする、実施形態1~36のいずれか1つに記載のプロセス。
38.24~56kg/時間の供給流量を有することを特徴とする、実施形態1~37のいずれか1つに記載のプロセス。
39.-5~5℃の凝縮器温度を有することを特徴とする、実施形態1~38のいずれか1つに記載のプロセス。
40.1250~1550kg/時間の乾燥ガス流量を有することを特徴とする、実施形態1~39のいずれか1つに記載のプロセス。
41.1.0mmの内径および5~6.5mmの外径を有するノズルを有することを特徴とする、実施形態1~40のいずれか1つに記載のプロセス。
42.プロセスによって得られたセマグルチドを医薬組成物に製剤化する工程をさらに含む、実施形態1~41のいずれか1つに記載のプロセス。
43.医薬組成物が、固体または液体医薬組成物である、実施形態42に記載のプロセス。
44.医薬組成物が、錠剤である、実施形態42に記載のプロセス。
45.実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能である産物。
46.0.5%未満、代替的に0.4%未満、代替的に0.3%未満、代替的に0.2%未満の不純物を含むことを特徴とする、実施形態45に記載の産物。
47.治療有効量の実施形態45または46に記載の産物を含む、医薬組成物。
48.1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、実施形態47に記載の医薬組成物。
49.舌下投与および/または経口投与に好適である、実施形態47または48に記載の医薬組成物。
50.皮下投与に好適である、実施形態47~49のいずれか1つに記載の医薬組成物。
51.錠剤の形態である、実施形態47~50のいずれか1つに記載の医薬組成物。
52.医薬で使用するための、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
53.肥満および/または糖尿病の予防および/または治療で使用するための、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
54.肥満および/または糖尿病の治療で使用するための、実施形態45もしくは46のいずれか1つに記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
55.肥満の治療で使用するための、実施形態45もしくは46のいずれか1つに記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
56.糖尿病の治療で使用するための、実施形態45もしくは46のいずれか1つに記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
57.過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病の予防および/または治療で使用するための、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
58.NASHの予防および/または治療で使用するための、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
59.肥満および/または糖尿病の予防および/または治療を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能な産物、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することによって、肥満および/または糖尿病を予防および/または治療する方法。
60.肥満および/または糖尿病の治療を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能な産物、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することによって、肥満および/または糖尿病を治療する方法。
61.肥満の治療を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能な産物、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することによって、肥満を治療する方法。
62.糖尿病の治療を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能な産物、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することによって、糖尿病を治療する方法。
63.過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病の予防および/または治療を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能な産物、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することによって、過体重、肥満、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、および/または1型糖尿病を予防および/または治療する方法。
64.NASHの予防および/または治療を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~44のいずれか1つに記載のプロセスによって取得可能な産物、実施形態45もしくは46に記載の産物、または実施形態47~51のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することによって、NASHを予防および/または治療する方法。
【実施例
【0033】
一般的な方法
噴霧乾燥実験を、1mmの内径および5~6.5mmの外径を有する2流体ノズルを使用して、PSD4製造スケールの噴霧乾燥機上で実施した。霧化ガスは、窒素であり、乾燥ガスは、窒素であった。乾燥ガスを、-5~5℃の凝縮ユニットを介して再循環させ、次いで、インコロイ800またはステンレス鋼316のいずれかで作製された内側表面を有するガスヒーターを使用して加熱した。
【0034】
供給溶液の調製:
供給溶液を、1)前の製造工程から水/エタノール溶液中にセマグルチドとして受容したか、または2)セマグルチドを含む粉末を噴霧乾燥し、処理前に適切な水/エタノール組成物中に再溶解させた。試験したセマグルチド濃度は、7.8~24g/lの範囲内であり、溶媒系のエタノール重量パーセンテージは、試験時に49~60%の範囲内であった。
【0035】
噴霧乾燥プロセス:
安定化に使用した溶媒は、セマグルチド含有溶液の水/エタノール組成物(49~60%(w/w)エタノール)と一致した。
【0036】
バッチ開始前に、噴霧乾燥機を、乾燥ガス流、出口温度、供給流、霧化ガス流、および凝縮器温度について必要とされる設定値(以下の表1から事前定義される)で溶媒を用いて安定させ、入口温度を、必要な出口温度を得るように調整した。
【表1】
【0037】
安定したパラメータが達成されると、安定化溶媒からセマグルチド供給溶液に切り替えて、噴霧乾燥プロセスを開始した。産物を、事前定義された間隔でフィルターバッグブローバックを伴うフィルターバッグスリーブを使用して、または主粉末分離技術としてサイクロンを使用して収集した。噴霧乾燥運転の終了時に、ユニットをシャットダウンするか、または後続バッチに対して安定化する前に、セマグルチド供給溶液から安定化溶媒に切り替えた。
【0038】
実施例1:異なる加熱材料を使用してセマグルチドを噴霧乾燥する
目的:この実験の目的は、不純物発生の原因、および不純物発生を防止するための手段を識別することであった。
【0039】
データ解析:
表2、図1および図2に提示されたデータを、SAS JMP(登録商標)ソフトウェアバージョン12.2を使用して標準的な最小二乗解析を使用して解析した。噴霧乾燥された粉末中のアセトアルデヒドのレベルを応答としてモデル化すると、ガスヒーター材料および入口温度によって正に影響され、供給流によって負に影響された。不純物の増加を応答としてモデル化すると、噴霧乾燥された粉末中のアセトアルデヒドレベルおよび入口温度の両方によって正に影響されたが、2つのパラメータ間の相互相関は、逆重畳されない。
【表2】
【0040】
表2および図1の結果は、ステンレス鋼316製のガスヒーターを含む第1のユニットで噴霧乾燥プロセスを実施することが、少量のアセトアルデヒドを発生させることを示す。インコロイ800製のガスヒーターを含む第2のユニットで噴霧乾燥プロセスを実施したとき、増加した量のアセトアルデヒドが発生する。第2のユニット内のインコロイ800ガスヒーター材料をステンレス鋼316と置換したとき、少量のアセトアルデヒドが発生する。これは、噴霧乾燥プロセスにステンレス鋼316製のガスヒーターを適用することが、インコロイ800製のガスヒーターを適用することと比較して、減少した量のアセトアルデヒドを発生させることを示す。
【0041】
表2および図2の結果は、問題がまだ識別されていないため、第1のユニットについて不純物レベルが測定されなかったことを示す。インコロイ800製のガスヒーターを含む第2のユニットで噴霧乾燥プロセスを実施したとき、大量の不純物が発生した。第2のユニット内のインコロイ800ガスヒーター材料をステンレス鋼316と置換したとき、少量の不純物が発生した。これは、噴霧乾燥プロセスにステンレス鋼316製のガスヒーターを適用することが、インコロイ800製のガスヒーターを適用することと比較して、減少した量の不純物を発生させることを示す。図2は、発生したアセトアルデヒドと発生した不純物との間の相関を示す。
【0042】
本発明のある特定の特徴が本明細書に例示および記載されているが、ここで、多くの修正、置換、変更、および同等物が当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるこうしたすべての修正および変更を網羅することを意図していることが理解されるべきである。
図1
図2