(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】ナノ粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/029 20060101AFI20240904BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20240904BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20240904BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240904BHJP
C07F 7/18 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
C01B33/029
B01J19/08 K
B82Y30/00
B82Y40/00
C07F7/18 U
(21)【出願番号】P 2021555809
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020025692
(87)【国際公開番号】W WO2020205722
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-16
(32)【優先日】2019-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー、ジェームズ アレン
(72)【発明者】
【氏名】セラーノ、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィテカー、デイヴィッド ローレンス
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/194181(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/186540(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/191199(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/148843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B01J 19/08
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C07F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子組成物を調製するための方法であって、前記方法が、
低圧反応器内にナノ粒子エアロゾルを形成することであって、前記
ナノ粒子エアロゾルはガス中に同伴MX官能性ナノ粒子を含み、Mは独立して選択された第IV族元素であり、XはH及びハロゲン原子から独立して選択される官能基である、形成することと、
前記
ナノ粒子エアロゾルの前記MX官能性ナノ粒子を、前記低圧反応器と流体連通している捕捉流体中に収集することにより、前記ナノ粒子組成物を調製することと、を含み、
前記捕捉流体が、水と不混和性である25℃で5~200センチポアズの粘度を有する極性非プロトン性流体を含み、前記極性非プロトン性流体が、式R
2-[OCH
2CH
2]
4OR
3[式中、R
2及びR
3のそれぞれは、独立して選択されたC5~C8ヒドロカルビル基である]を有するテトラエチレングリコールジアルキルエーテルを含む、方法。
【請求項2】
前記捕捉流体が、官能化化合物を更に含み、前記官能化化合物が、前記極性非プロトン性流体と混和性であり、前記MX官能性ナノ粒子の前記官能基Xと反応する官能基Yを含み、前記方法が、前記官能化化合物の前記官能基Yと前記MX官能性ナノ粒子の前記官能基Xとを反応させて、官能化されたナノ粒子を得ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記官能化化合物が、式:
【化1】
を有する極性ペンダント前駆体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記官能化化合物が、極性ペンダント前駆体であり、Yに加えて少なくとも1つの官能基Zを更に含み、Zが親水性官能基に変換可能であり、前記方法が、前記官能基Zを親水性官能基に変換するステップを更に含み、親水性官能基に変換可能な前記少なくとも1つの官能基Zが、エステル官能基、酸ハロゲン化物官能基、アミド官能基、アセタール官能基、ケタール官能基、ニトリル官能基、シリルエーテル官能基、エポキシド官能基、ジスルフィド官能基、エチレン性不飽和基、オキサゾリン官能基、無水物官能基、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能化化合物が、Yと異なる親水性官能基を更に含み、カルボン酸官能基、アルコール官能基、ヒドロキシ官能基、アジド官能基、シリルエーテル官能基、エーテル官能基、ホスホネート官能基、スルホネート官能基、チオール官能基、アミン官能基、無水物官能基、アセタール官能基、ケタール官能基、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、前記ナノ粒子エアロゾルを形成することが、
10~500MHzの連続周波数及び5~1000Wの結合電力を有する事前に選択された無線周波数を、反応ガス入口及び開口部を画定する出口を有する前記低圧反応器内の反応ガス混合物に適用して、ガス中にMX官能性ナノ粒子を含む前記ナノ粒子エアロゾルを形成するのに十分な時間でプラズマを生成することを含み、
前記反応ガス混合物が、Mを含む第1の前駆体ガス、及び少なくとも1つの不活性ガスを含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記ナノ粒子エアロゾルを、前記低圧反応器から拡散ポンプ内に導入することと、
リザーバ内で前記捕捉流体を加熱して蒸気を形成し、前記蒸気を、ジェットアセンブリを通して送出することと、
ノズルを通して前記蒸気を前記拡散ポンプのチャンバ内に放出し、前記蒸気を凝縮させて、前記捕捉流体を含む凝縮液を形成することと、
前記凝縮液を前記リザーバに逆流させることと、
前記
ナノ粒子エアロゾルの前記MX官能性ナノ粒子を、前記捕捉流体を含む前記凝縮液中に捕捉することと、を更に含む、方法。
【請求項8】
前記
MX官能性ナノ粒子と前記捕捉流体とを分離して、分離されたナノ粒子を得ることを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離されたナノ粒子を、水及び双極性非プロトン性有機溶媒から選択される極性溶媒中に懸濁することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/827,025号の優先権及び全ての利益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、ナノ粒子を製造するための方法に関し、より具体的には、プラズマ反応器を用いて親水性ナノ粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノ粒子は当該技術分野において既知であり、様々なプロセスを介して調製することができる。ナノ粒子は、多くの場合、100ナノメートル未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子として定義される。ナノ粒子は、最初はナノ粒子よりも大きいバルク材料から、又はイオン及び/若しくは原子などのナノ粒子よりも小さい粒子からのいずれかで生成される。ナノ粒子は、ナノ粒子の元となるバルク材料又はより小さい粒子とは大きく異なる特性を有し得るという点で、特に稀有である。例えば、絶縁体又は半導体として機能するバルク材料は、ナノ粒子形態の場合、導電性又は光輝性(フォトルミネッセンス性)であり得る。
【0004】
ナノ粒子(直径100nm未満)の重要な特性は、励起波長で電磁放射線によって励起されると、可視光をフォトルミネッセンス発光することである。ナノ粒子は、オプトエレクトロニクス、診断、分析、及び化粧品など、様々な用途で使用することができる。ナノ粒子は、粒径と相関して変化する融点など、バルク材料とは異なる更なる物理的特性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノ粒子は、プラズマプロセスを介して生成することができる。例えば、ナノ粒子は、プラズマ反応器内で前駆体ガスから生成され得る。特定のプラズマプロセスでは、プラズマ反応器内で生成されたナノ粒子は、捕捉流体中に捕捉又は堆積される。様々な用途において、ナノ粒子は、捕捉流体中に分散した標的官能化化合物との更なる反応を起こすことがあり、この更なる反応には、表面官能化反応が含まれる。
【0006】
本開示は、ナノ粒子組成物を調製するための方法を提供する。本方法は、低圧反応器内にナノ粒子エアロゾルを形成することを含み、エアロゾルは、ガス中に同伴MX官能性ナノ粒子を含み、Mは独立して選択された第IV族元素であり、XはH及びハロゲン原子から独立して選択された官能基である。本方法は、エアロゾルのMX官能性ナノ粒子を捕捉流体中に収集することを更に含み、捕捉流体は、低圧反応器と流体連通している。捕捉流体は、水と不混和性である25℃で5~200センチポアズの粘度を有する極性非プロトン性流体を含む。捕捉流体は、極性非プロトン性流体と混和性の官能化化合物を更に含み、官能化化合物は、MX官能性ナノ粒子の官能基Xと反応する官能基Yを含む。
【0007】
本開示は、本方法に従って形成されたナノ粒子組成物を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の他の利点及び態様は、添付の図面に関連して考慮される場合、以下の詳細な説明を考慮して理解され得る。
【0009】
【
図1】
図1は、ナノ粒子を生成するための低圧短波パルスプラズマ反応器の一実施形態を示す。
【0010】
【
図2】
図2は、ナノ粒子を生成するための低圧パルスプラズマ反応器と、ナノ粒子を収集するための拡散ポンプと、を含むシステムの実施形態を示す。
【0011】
【
図3】
図3は、反応器を介して生成されたナノ粒子を収集するための拡散ポンプの一実施形態の概略図を示す。
【0012】
【
図4】
図4は、水に懸濁された不動態化親水性ケイ素ナノ粒子の調製における様々な段階を経て得られた、ケイ素ナノ粒子の光輝性発光スペクトルのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、ナノ粒子組成物を調製するための方法を提供する。本開示の方法は、以下により詳細に記載されるように、プラズマプロセスを介して生成されるナノ粒子を含むナノ粒子組成物の調製に特に好適である。
【0014】
本方法は、低圧反応器内にナノ粒子エアロゾルを形成することを含み、エアロゾルは、ガス中に同伴MX官能性ナノ粒子を含み、Mは独立して選択された第IV族元素であり、XはH及びハロゲン原子から独立して選択された官能基である。本明細書で使用するとき、周期表の族の表記は、全般的にCAS又は旧IUPAC命名法に由来するが、但し、第IV族元素は、当該技術分野において容易に理解されるように現在のIUPACシステム下では第14族元素と称される。本方法は、エアロゾルのMX官能性ナノ粒子を捕捉流体中に収集することを更に含み、捕捉流体は、プラズマ反応器と流体連通している。捕捉流体は、水と不混和性である極性非プロトン性流体を含む。捕捉流体は、極性非プロトン性流体と混和性である官能化化合物を更に含み、官能化化合物は、MX官能性ナノ粒子の官能基Xと反応する官能基Yを含む。
【0015】
本開示の方法は、異なるプラズマ反応器を利用する様々なプラズマ反応器システムと組み合わせて利用することができる。具体的には、本開示の方法は、ナノ粒子エアロゾルを形成し、最終的に、MX官能性ナノ粒子を捕捉流体中に捕捉又は収集する任意のプラズマ反応器システム内で利用され得る。本発明の方法のための例示的なプラズマプロセスを以下に記載する。
【0016】
ナノ粒子を生成するために利用される特定のプラズマシステム及びプロセスに関係なく、プラズマシステムは、概ね前駆体ガスに依存する。前駆体ガスは、概ね、ナノ粒子の所望の組成に基づいて選択される。例えば、上述したように、ナノ粒子エアロゾルは、MX官能性ナノ粒子を含み、Mは独立して選択された第IV族元素である。
【0017】
これに向け、利用される前駆体ガスは、概ねMを含む。すなわち、前駆体ガスは、概ね、ケイ素、ゲルマニウム、及びスズ(第IV族元素である)のうちの少なくとも1つを含む。例えば、MX官能性ナノ粒子がSiX官能性ナノ粒子を含む場合、前駆体ガスは、概ねケイ素を含む。様々な実施形態において、前駆体ガスは、シラン、ジシラン、ハロゲン置換シラン、ハロゲン置換ジシラン、C1~C4アルキルシラン、C1~C4アルキルジシラン、及びこれらの混合物から選択され得る。本開示の一形態において、前駆体ガスは、シランなどのケイ素前駆体を含み、これは反応ガス混合物(代替的にガス混合物と呼ばれることもある)の0.1~2体積%を構成する。あるいは、ケイ素前駆体は、反応ガス混合物の0.1体積%~50体積%を構成し得る。概ね、前駆体ガスは、ナノ粒子の核形成に利用される反応性ガスを示し、反応ガス混合物は、後述されるようなガスを含み、ケイ素前駆体ガスを含むガス混合物又は反応ガス混合物を形成することができる。また、ガス混合物は、他の百分率のシランを含み得る。前駆体ガスは、追加的に又は代替的に、SiCl4、HSiCl3、及びH2SiCl2を含み得る。
【0018】
あるいは、MX官能性ナノ粒子がGeH官能性ナノ粒子を含む場合、前駆体ガスは、概ねゲルマニウムを含む。この実施形態において、前駆体ガスは、ゲルマン、ジゲルマン、ハロゲン置換ゲルマン、ハロゲン置換ジゲルマン、C1~C4アルキルゲルマン、C1~C4アルキルジゲルマン、及びこれらの混合物から選択され得る。ナノ粒子は、ケイ素及びゲルマニウムの両方、又は第IV族元素の他の混合物を、上記の前駆体ガスの組み合わせを含む前駆体ガスと共に含み得る。
【0019】
更に、有機金属前駆体分子も、前駆体ガスの中で又は前駆体ガスとして使用され得る。これらの分子には、第IV族金属及び独立して選択された有機基が含まれる。有機金属の第IV族の前駆体としては、有機ケイ素、有機ゲルマニウム、及び有機スズ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。第IV族前駆体のいくつかの例としては、アルキルゲルマニウム、アルキルシラン、アルキルスタンナン、クロロシラン、クロロゲルマニウム、クロロスタンナン、芳香族シラン、芳香族ゲルマニウム、及び芳香族スタンナンが挙げられるが、これらに限定されない。ケイ素前駆体の他の例としては、ジシラン(Si2H6)、四塩化ケイ素(SiCl4)、トリクロロシラン(HSiCl3)及びジクロロシラン(H2SiCl2)が挙げられるが、これらに限定されない。結晶性ケイ素ナノ粒子の形成に使用するための更に他の好適な前駆体分子としては、ジメチルシラン(H3C-SiH2-CH3)、テトラエチルシラン((CH3CH2)4Si)及びジフェニルシラン(Ph-SiH2-Ph)などの、アルキル及び芳香族シランが挙げられる。結晶性ゲルマニウムナノ粒子を形成するために使用され得るゲルマニウム前駆体分子の特定の例としては、テトラエチルゲルマン((CH3CH2)4Ge)及びジフェニルゲルマン(Ph-GeH2-Ph)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
前駆体ガスは、ガス混合物又は反応ガス混合物中で、第1の不活性ガスなどの他のガスと混合することができる。第1の不活性ガスの例としては、周期表の第18族から選択される元素、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及びこれらの様々な混合物からなる希ガスが挙げられる。あるいは、不活性ガスは、プラズマ反応器内に存在する任意の他の種内で反応しない任意のガスを含み得る。ガス混合物中に存在する場合、第1の不活性ガスは、反応ガス混合物の総体積に基づいて、1~99体積%の量で利用され得る。ガス混合物は、反応ガス混合物の総体積に基づいて、0.1~50体積%、あるいは1~50体積%の量で前駆体ガスを含み得る。
【0021】
これらの実施形態又は他の実施形態において、ナノ粒子は、ドーピングを受けて、ドープされたナノ粒子となり得る。例えば、ナノ粒子は、プラズマ中で気相ドーピングを受けてもよく、その場合、前駆体ガスは第1の前駆体ガスであり、第2の前駆体ガスが解離して、それらが核形成する際にナノ粒子中に組み込まれる。ナノ粒子は、同様に又は代替的に、ナノ粒子の生成の下流であるが、ナノ粒子が捕捉流体中に捕捉される前に、気相でドーピングを受けることができる。更に、捕捉流体がナノ粒子を収集するために使用される場合、ドープされたナノ粒子は、ドーパントが中に事前に投入されている捕捉流体中で生成されてもよく、その場合、ナノ粒子は捕捉流体中、in situでドープされる。ドープされたナノ粒子は、トリメチルシラン、ジシラン、及びトリシランを含むがこれらに限定されない有機ケイ素ガス又は液体と接触することによって、形成され得る。気相ドーパントとしては、BCl3、B2H6、PH3、GeH4、又はGeCl4が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0022】
特定の実施形態において、反応ガス混合物は、第2の前駆体ガスを更に含み、この第2の前駆体ガス自体は、反応ガス混合物の総体積に基づいて0.1~49.9体積%を構成し得る。第2の前駆体ガスは、BCl3、B2H6、PH3、GeH4、又はGeCl4を含み得る。また、第2の前駆体ガスは、炭素、ゲルマニウム、ホウ素、リン、又は窒素を含有する他のガスを含み得る。第1の前駆体ガスと第2の前駆体ガスとの組み合わせは、反応ガス混合物の総体積に基づいて、合わせて0.1~50体積%を構成し得る。
【0023】
本開示の別の形態において、反応ガス混合物は、水素ガスを更に含む。水素ガスは、反応ガス混合物の総体積に基づいて、1体積%~50体積%、あるいは1体積%~25体積%、あるいは1体積%~10体積%の量で存在し得る。しかし、反応ガス混合物が、他の百分率の水素ガスを含み得ることも、企図される。
【0024】
これらの実施形態又は他の実施形態において、ナノ粒子は、第IV族元素の合金、例えばケイ素合金を含み得る。形成され得るケイ素合金としては、炭化ケイ素、ケイ素ゲルマニウム、ケイ素ホウ素、ケイ素リン、及び窒化ケイ素が挙げられるが、これらに限定されない。ケイ素合金は、少なくとも1つの第1の前駆体ガスを第2の前駆体ガスと混合すること、又は異なる元素を含有する前駆体ガスを用いることによって形成されてもよい。しかし、合金化ナノ粒子を形成する他の方法も、同様に企図される。
【0025】
上記のように、MX官能性ナノ粒子のXは、H及びハロゲン原子から独立して選択された官能基を含む。前駆体ガス(又は反応ガス混合物中のガス)は、概ね、MX官能性ナノ粒子の所望の官能基に基づいて選択される。例えば、XがHである場合、反応ガス混合物は、概ね、水素ガス又はより低濃度のハロゲン化種(例えば、SiCl4、HSiCl3、BCl3、GeCl4など)を含む。対照的に、Xがハロゲン原子である場合、前駆体ガス(又は反応ガス混合物)はハロゲン化種(例えば、SiCl4、HSiCl3、BCl3、GeCl4など)を含む。これらの塩素化種のいずれも、塩素以外のハロゲン原子、例えば臭素、フッ素、又はヨウ素を含み得る。例えば、SiBr4は、所望の官能基Xに応じて、SiCl4と組み合わせて、又はSiCl4の代わりに利用され得る。更に、官能基Xがハロゲン原子である実施形態において、反応ガス混合物は、ハロゲンガスを更に含み得る。例えば、官能基XがClである実施形態において、塩素ガス(Cl2)を、別個の供給物として、又は前駆体ガスと共にのいずれかで、反応ガス混合物中で利用することができる。利用する場合のハロゲンガスの相対量は、選択された前駆体ガスなどの様々な要因に基づいて最適化することができる。例えば、前駆体ガスがハロゲン化種を含む場合、ハロゲン官能性ナノ粒子を調製するために必要なハロゲンガスの量は少なくなる場合がある。特定の実施形態において、ハロゲンガスは、反応ガス混合物の総体積の0超~25体積%、あるいは1体積%~25体積%、あるいは1体積%~10体積%の量で利用され得る。
【0026】
様々な実施形態において、プラズマ反応器は、プラズマシステムの構成要素である(代替的にプラズマ反応器システムと呼ばれる)。本発明の方法に特に好適なプラズマ反応器システムの具体的な実施形態を以下に記載する。以下に記載される具体的な実施形態は、MX官能性ナノ粒子を生成するのに好適な例示的なプラズマプロセスの単なる例であることを理解されたい。
【0027】
図1を参照すると、プラズマ反応器システム(代替的に超短波低圧プラズマ反応器システム又は低圧短波プラズマ反応器システムと呼ばれる)が20で示されている。この実施形態において、プラズマ反応器システム20は、反応ガス入口29を有するプラズマ発生チャンバ22(代替的にプラズマ反応器又は放電管と呼ばれることもある)と、それによって画定される開口部又はオリフィス31を有する出口30とを含む。粒子収集チャンバ26(代替的に堆積チャンバ又は真空粒子収集チャンバと呼ばれることもある)は、プラズマ発生チャンバ22と流体連通するように構成されている。粒子収集チャンバ26は、容器32内に捕捉流体27を収容する。容器32又は捕捉流体27は、撹拌されるように適合され得る(図示せず)。例えば、容器32は、回転可能な支持体(図示せず)上に位置付けられ得、又は攪拌機構を含み得る。許容可能な撹拌の企図された形態としては、攪拌、回転、反転、及び他の好適な方法が挙げられる。捕捉流体27の撹拌を使用して、捕捉流体27の表面を再生し、捕捉されたナノ粒子をオリフィス32の中心から遠ざける。捕捉流体中へのナノ粒子のより高い吸収速度が望まれる場合、より激しい形態の撹拌を使用することができる。例えば、このような激しい撹拌の方法の1つには、超音波処理が含まれ得る。典型的には、捕捉流体27は、プラズマ反応器システムの動作温度で液体である。また、プラズマ反応器システム5は、粒子収集チャンバ26及びプラズマ発生チャンバ22と流体連通する真空源28を含む。
【0028】
プラズマ発生チャンバ22は、可変無線周波数(RF)出力増幅器21に取り付けられた電極構成24を含む。また、プラズマ発生チャンバ22は、第2の電極構成25を含む。第2の電極構成25は、電極構成24に対して、接地されているか、DCバイアスされているか、プッシュプル式で動作しているかのいずれかである。電極構成24、25は、短波(HF)又は超短波(VHF)出力を反応ガス混合物に結合して、23で特定される領域内にプラズマのグロー放電を点火して持続させる(あるいは「プラズマを点火する」と表現され得る)ために使用される。次に、第1の反応性前駆体ガス(又は複数のガス)(代替的に反応ガス混合物と呼ばれることもある)の成分がプラズマ中で解離して、核形成してMX官能性ナノ粒子を形成する荷電原子を提供する。しかし、他の放電管22の構成が想到されており、本明細書に開示される方法を実施する際に使用され得る。
【0029】
図1の実施形態において、MX官能性ナノ粒子は、粒子収集チャンバ26内で捕捉流体27中に収集される。MX官能性ナノ粒子の直径を制御するために、プラズマ発生チャンバ22の出口30内の開口部31と捕捉流体27の表面との間の距離は、開口部31の直径の5~50倍(すなわち、開口部径の5~50倍)の範囲である。捕捉27の表面をプラズマ発生チャンバの出口に近づけすぎると、プラズマと捕捉流体27との望ましくない相互作用が生じることがある。逆に、捕捉流体27の表面を開口部から離しすぎると、粒子収集効率が低下する。収集距離は、出口の開口部径及びプラズマ発生チャンバと収集チャンバとの間の圧力降下に相関するため、許容可能な収集距離は、本明細書に記載される動作条件に基づいて、1cm~20cm、あるいは5cm~10cm、あるいは6cm~12cmである。
【0030】
プラズマ発生チャンバ22はまた、HF又はVHF RF電源(図示せず)を含む。出力は、任意的波形発生器によってトリガーされる可変周波数RF出力増幅器21を介して電源から供給され、領域23において短波パルスプラズマ(代替的に単にプラズマと呼ばれる)を発生させる。典型的には、無線周波数出力は、プラズマに容量結合され、リング電極、平行板、又はガス中のアノード/カソード設定を使用して容量結合プラズマ放電を生成する。あるいは、無線周波数出力は、誘導結合プラズマ(ICP)反応器配置において放電管22の周囲に配置されたRFコイルを使用して、プラズマに誘導結合され得る。
【0031】
また、プラズマ発生チャンバ22は、誘電体放電管(図示せず)を含み得る。典型的には、反応ガス混合物は、プラズマが発生される誘電体放電管に入る。
【0032】
反応ガス混合物から形成されるMX官能性ナノ粒子は、第1の反応性前駆体ガスの分子成分がプラズマ中で解離するにつれて核形成を開始する。
【0033】
様々な実施形態において、プラズマ発生チャンバ22は、石英を含むか、あるいは石英である。
【0034】
真空源28は、真空ポンプを含み得る。あるいは、真空源28は、機械式ポンプ、ターボ分子ポンプ、拡散ポンプ、又は極低温ポンプを含み得る。
【0035】
一実施形態において、プラズマ発生チャンバ22の電極構成24、25は、VHF無線周波数のバイアスを掛けた上流の多孔性電極板24が、板の孔が互いに整列された状態で下流の多孔性電極板25から分離される、フロースルーシャワーヘッド設計を含む。孔は、円形、矩形、又は任意の他の望ましい形状であってよい。あるいは、プラズマ発生チャンバ22は、VHF無線周波数電源に結合され、またチャンバ22内部の先端と接地リングとの間に可変距離を有する尖った先端を有する、電極24を含み得る。
【0036】
一実施形態において、HF又はVHF無線周波数電源は、10~500MHzの周波数範囲の事前に選択されたRFで動作して、ガス中にMX官能性ナノ粒子を含むナノ粒子エアロゾルを形成するのに十分な時間でプラズマを発生させる。別の実施形態において、事前に選択された無線周波数は、10~500MHz又は30mHz~150mHzの連続周波数であり、それぞれ5~1000W又は1W~200Wの結合電力に対応する。更に代替的に、事前に選択された無線周波数は、100~150mHzの連続周波数である。代替的実施形態において、尖った先端13は、プッシュプルモードで(位相から180°外れて)動作されるVHF無線周波数電動リング14から可変の距離に位置付けられ得る。更に別の代替的実施形態において、電極構成24、25は、VHF無線周波数電源に結合される誘導コイルを含み、その結果、無線周波数出力は、誘導コイルによって形成される電界によって反応ガス混合物に送達される。プラズマ発生チャンバ22の一部分は、1x10-7~500トール又は100ミリトール~10トールの範囲の真空レベルまで排気することができる。他の電極結合構成も、本明細書で開示される方法を用いた使用に関して企図される。
【0037】
図1に示される実施形態において、領域23内のプラズマは、例えば、AR Worldwide Model KAA2040、又はElectronics and Innovation Model 3200L、又はEM Power RF Systems,Inc.Model BBS2E3KUT等のRF出力増幅器を介して、開始される(代替的に点火されると呼ばれる)。増幅器は、0.15~150MHzの最大200ワットの電力を生成することが可能な任意的波形発生器(例えば、Tektronix AFG3252波形発生器)によって駆動(又はパルス化)され得る。いくつかの実施形態において、任意の機能が、パルス列、振幅変調、周波数変調、又は異なる波形を用いて出力増幅器を駆動することが可能であり得る。増幅器と反応ガス混合物との間の電力結合は、典型的には、RF出力の周波数が増大するのに伴い増大する。より短い短波で出力を駆動すると、電源と放電との間のより効果的な結合を可能にし得る。結合の増加は、電圧定在波比(VSWR)の減少として現れる場合がある。
【数1】
式中、pは、反射係数であり、
【数2】
式中、Zp及びZcは、それぞれプラズマ及びコイルのインピーダンスを表す。30MHz未満の周波数では、出力の僅か2~15%しかプラズマ放電に送達されない。これは、RF回路で高い反射波を生成する効果があり、加熱が増加し、電源の寿命が制限される。対照的に、より短い短波は、より多くの出力をプラズマ放電に送達することを可能にし、それによって、RF回路における反射波の量を低減する。
【0038】
一実施形態において、プラズマ放電の出力及び周波数は、MX官能性ナノ粒子の形成に最適な動作空間を作り出すように事前に選択される。典型的には、出力及び周波数の両方を調整することで、プラズマ放電に適切なイオン及び電子のエネルギー分布を作り、反応性前駆体ガスの分子が解離し、MX官能性ナノ粒子が核形成されるのを助ける。プラズマ放電の出力により、プラズマ放電内における個々の粒子の温度を制御する。プラズマ放電内における個々の粒子の温度を制御することにより、プラズマ放電内に形成されたナノ粒子の結晶化度を制御することができる。出力を高くすると結晶性粒子が得られ、出力が低いと非晶質粒子が生成される。出力及び周波数の両方を適切に制御することで、所望のサイズに応じてナノ粒子が大きくなりすぎることを防ぐ。
【0039】
図1に示されるプラズマ反応器システム20は、操作者が粒子核形成の滞留時間を直接管理し、それによってプラズマにおける粒径分布及び凝集速度を制御できるように、パルス化され得る。本システム20のパルス化機能は、プラズマ内での粒子滞留時間の制御された調整を可能にし、これは、MX官能性ナノ粒子のサイズに影響を与える。プラズマの「オン」時間を減少させることによって、核形成粒子は、凝集するためのより少ない時間を有し、またしたがって、MX官能性ナノ粒子のサイズは、平均して低減され得る(すなわち、ナノ粒子分布が、より小さい直径の粒径にシフトされ得る)。
【0040】
ナノ粒子合成位置と捕捉流体27の表面との間の距離は、典型的には、同伴ナノ粒子の望ましくない凝集を回避するために十分に短い。
【0041】
ナノ粒子のサイズ分布はまた、放電を通して当該少なくとも1つの前駆体ガス分子の滞留時間に関して、プラズマ滞留時間、VHF無線周波数低圧グロー放電の高イオンエネルギー/密度領域を制御することによっても制御することができる。典型的には、VHF無線周波数低圧グロー放電のプラズマ滞留時間がガス分子滞留時間に対して低くなるほど、一定である動作条件において、平均ナノ粒子直径は、小さくなる。動作条件は、放電駆動周波数、駆動振幅、放電管圧、チャンバ圧、プラズマ出力密度、前駆体質量流量率、及びプラズマ源電極からの収集距離によって規定されてもよい。しかし、他の動作条件も同様に企図される。例えば、VHF無線周波数低圧グロー放電のプラズマ滞留時間が、ガス分子滞留時間に対して増大すると、平均ナノ粒子直径は、y=y0-exp(-tr/C)の指数的増加モデルに従い、式中、yは、平均ナノ粒子直径であり、y0は、オフセットであり、trは、プラズマ滞留時間であり、Cは、定数である。粒径分布はまた、それ以外が一定である動作条件下では、プラズマ滞留時間が増大するのに伴い増大し得る。
【0042】
別の実施形態において、ナノ粒子の平均粒子直径(及び、ナノ粒子のサイズ分布)は、VHF無線周波数低圧グロー放電における少なくとも1つの前駆体ガスの質量流量率を制御することによって、制御され得る。例えば、前駆体ガス(又は、ガス類)の質量流量率がVHF無線周波数低圧プラズマ放電において増大すると、合成された平均ナノ粒子直径は、y=yo+exp(-MFR/C’)の指数的減衰モデルに従って減少することがあり、式中、yは、平均ナノ粒子直径であり、y0は、オフセットであり、MFRは、前駆体質量流量率であり、C’は、定数であり、一定である動作条件に関する。典型的な動作条件としては、放電駆動周波数、駆動振幅、放電管圧、チャンバ圧、プラズマ出力密度、プラズマを通るガス分子滞留時間、及びプラズマ源電極からの収集距離が挙げられ得る。合成された平均ナノ粒径分布はまた、y=yo+exp(-MFR/K)の形式の指数的減衰モデルとして減少してもよく、式中、yは、平均ナノ粒子直径であり、y0は、オフセットであり、MFRは、前駆体質量流量率であり、Kは、定数であり、一定である動作条件に関する。
【0043】
有利なことに、より高い周波数範囲でのプラズマ反応器システム20の動作、及びプラズマのパルス化は、プラズマ不安定性を用いて高いイオンエネルギー/密度を生成する従来の抑制された/フィラメント放電技術と同じ条件を提供するが、ユーザーが動作条件を制御して、様々な所定のサイズを有するMX官能性ナノ粒子を選択して生成ことができ、その特徴的な物理的特性、例えばフォトルミネセンスに影響を与えるという更なる利点がある。
【0044】
パルス注入の場合、MX官能性ナノ粒子の合成(代替的に堆積と呼ばれることもある)は、パルス超短波RFプラズマ、短波RFプラズマ、又は熱分解用のパルスレーザー等のパルスエネルギー源を用いて達成することができる。典型的には、VHF無線周波数は、1~50kHzの範囲の周波数でパルス化される。
【0045】
MX官能性ナノ粒子を捕捉流体27に移送する別の方法は、プラズマが点火される間、反応ガス混合物の投入をパルス化することである。例えば、MX官能性ナノ粒子を合成するため、第1の反応性前駆体ガスが存在するプラズマに、不活性ガスなどの放電を持続させるための少なくとも1つの他のガスを存在させて点火することができる。MX官能性ナノ粒子の合成は、質量流量制御装置を用いて第1の反応性前駆体ガスの流れを止めると停止する。MX官能性ナノ粒子の合成は、第1の反応性前駆体ガスの流れを再び開始すると継続される。これにより、MX官能性ナノ粒子のパルス化された流れが生成される。この技術は、捕捉流体27に衝突するMX官能性ナノ粒子の流束が捕捉流体27へのMX官能性ナノ粒子の吸収速度よりも大きい場合、捕捉流体27中のMX官能性ナノ粒子の濃度を高めるために使用することができる。また、MX官能性ナノ粒子は、プラズマを低イオンエネルギー状態に循環させることによって、又はプラズマをオフにすることによって、プラズマ反応器22から粒子収集チャンバ26に排出することもできる。
【0046】
別の実施形態において、MX官能性ナノ粒子は、プラズマ発生チャンバ22から、圧力差を生じさせる開口部又はオリフィス31を介して捕捉流体27を収容する粒子収集チャンバ26に移送される。プラズマ発生チャンバ22と粒子収集チャンバ26との間の圧力差は、様々な手段で制御できることが企図されている。一構成では、放電管22は、粒子収集チャンバ26の内径よりもはるかに小さい内径を有し、これにより、圧力降下が生じる。換言すれば、真空粒子収集チャンバ26の圧力は、反応チャンバ22の圧力よりも低い。様々な実施形態において、堆積チャンバの圧力は、1×10-5トール未満である(高真空ポンプ、すなわち、ターボ分子ポンプ、極低温ポンプ、又は拡散ポンプによって生成される)。圧力降下は、プラズマチャンバから流出する粒子の超音波ジェットを生成するのに十分である。超音波ジェットにより、気相での粒子間相互作用が最小限に抑えられ、これにより、ナノ粒子をガス流中で単分散に保つことができる。別の構成では、接地された物理的な開口部又はオリフィス31を、プラズマのデバイ長及びチャンバ22のサイズに基づいて、放電管22と、プラズマをオリフィス31の内側に部分的に存在させる収集チャンバ26との間に配置することができる。別の構成は、変動静電オリフィス31を用いることを含み、そこでは、開口部31を通して負荷電プラズマを押し進める正の集中的な荷電が発生する。
【0047】
ナノ粒子は、プラズマ発生チャンバ22内に配置されたプラズマから出る。ナノ粒子がケイ素ナノ粒子である場合の特定の実施形態において、ナノ粒子は、その表面上にSiHx(x<4)、ラジカル(ダングリングボンド)、及び/又はハロゲン種(放電管内に存在する場合)を有する。
【0048】
上記で最初に紹介されたように、
図1の実施形態において、プラズマ発生チャンバ22内で第1の反応性前駆体ガスの分子が解離すると、MX官能性ナノ粒子が形成され、気相に同伴される。ナノ粒子合成位置と捕捉流体27の表面との間の距離は、典型的には、MX官能性ナノ粒子が気相中に同伴されている間に望ましくない核形成又は官能化が起こらないように選択される。MX官能性ナノ粒子が気相中で相互作用する場合、多数の個別の小さなMX官能性ナノ粒子の凝集体が形成され、捕捉流体27に捕捉される。気相中で相互作用が起こりすぎると、MX官能性ナノ粒子が共に焼結して、より大きな平均直径を有するMX官能性ナノ粒子が形成されることがある。収集距離は、プラズマ発生チャンバ22の出口から捕捉流体27の表面までの距離として定義される。捕捉流体27は、プラズマ反応器システム20の代替的実施形態の説明に従って、以下で詳細に説明される。
【0049】
このプラズマプロセスを介してMX官能性ナノ粒子が生成されるこの特定の実施形態に関する更なる態様は、国際公開第2011/109299号(国際出願PCT/US第2011/026491号)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
図2を参照すると、プラズマ反応器システムの代替的実施形態が50で示されている。この実施形態において、MX官能性ナノ粒子は、反応器22と、反応器22と流体連通する拡散ポンプ120とを有するプラズマ反応器システム50で調製され、拡散ポンプ120はMX官能性ナノ粒子を収集するためのものである。様々なサイズ分布及び特性のMX官能性ナノ粒子は、ナノ粒子が反応器22(例えば、低圧プラズマ反応器)で生成されるガス中に同伴MX官能性ナノ粒子を含むナノ粒子エアロゾルを、反応器22と流体連通する拡散ポンプ120に導入し、エアロゾルのMX官能性ナノ粒子を、捕捉流体(図示せず)を含む凝縮液中に捕捉し、ナノ粒子を含む凝縮液をリザーバ107に収集することによって調製することができる。
図2の実施形態において、捕捉流体は、代替的に、拡散ポンプ流体と呼ばれ得るが、捕捉流体及び拡散ポンプ流体は、本明細書では全体的に「捕捉流体」と呼ばれ、本明細書にまとめて記載される。
【0051】
本実施形態に適した反応器の例は、国際公開第2010/027959号及び同第2011/109229号に記載されており、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。このような反応器は、低圧短波パルスプラズマ反応器であり得るが、これらに限定されない。例えば、
図2は、
図1の実施形態のプラズマ反応器22を示しているが、反応器22と流体連通する拡散ポンプ120を含んでいる。これに向け、既に全面的に上述されているこの特定のプラズマ反応器22に対する説明は、
図2の実施形態に関して本明細書では繰り返されない。
【0052】
図2の実施形態において、プラズマ反応器システム50は拡散ポンプ120を含む。したがって、MX官能性ナノ粒子は、拡散ポンプ120によって収集され得る。粒子収集チャンバ26は、プラズマ発生チャンバ22と流体連通し得る。拡散ポンプ120は、粒子収集チャンバ26及びプラズマ発生チャンバ22と流体連通し得る。本開示の他の形態において、プラズマ反応器システム50は、粒子収集チャンバ26を除外することができる。例えば、出口30は、拡散ポンプ120の入口103に結合されてもよく、又は、拡散ポンプ120は、プラズマ発生チャンバ22と実質的に直接流体連通し得る。
【0053】
図3は、
図2の実施形態のプラズマ反応器システム50に好適な例示的な拡散ポンプ120の断面概略図である。拡散ポンプ120は、入口103及び出口105を有するチャンバ101を含み得る。入口103は、5cm~140cmの直径を有し得、出口は1cm~21cmの直径を有し得る。チャンバ101の入口103は、反応器20の出口30と流体連通している。拡散ポンプ120は、例えば、65~65,000L/秒又は65,000L/秒超のポンピング速度を有し得る。
【0054】
拡散ポンプ120は、チャンバ101と流体連通しているリザーバ107を含む。リザーバ107は、捕捉流体を支持又は収容する。リザーバは、30mL~15Lの容積を有してもよい。拡散ポンプ中の捕捉流体の量は、30mL~15Lであり得る。拡散ポンプ120は、リザーバ107内の捕捉流体を気化させるための加熱器109を更に含み得る。加熱器109は、捕捉流体を加熱し、捕捉流体を気化させて、蒸気を形成する(例えば、液体から気相への相変化)。例えば、捕捉流体は、100~400℃又は180~250℃に加熱され得る。
【0055】
ジェットアセンブリ111は、リザーバ107と流体連通することができ、ジェットアセンブリ111は、気化した捕捉流体をチャンバ101に排出するためのノズル113を含むことができる。気化した捕捉流体は、ジェットアセンブリ111を通って流れて上昇し、ノズル113から放出される。気化した捕捉流体の流れは、
図3に矢印で示されている。気化した捕捉流体は凝縮し、リザーバ107に逆流する。例えば、ノズル113は、気化した捕捉流体をチャンバ101の壁に対して排出することができる。チャンバ101の壁は、水冷システムなどの冷却システム114で冷却することができる。チャンバ101の冷却された壁により、気化した捕捉流体を凝縮させることができる。次に、凝縮された捕捉流体は、重力の下で、チャンバ101の壁に沿って、また下に向かって流れ、リザーバ107に逆流することができる。捕捉流体は、拡散ポンプ120を通して連続的に循環させることができる。捕捉流体の流れにより、入口103に入ったガスは、入口103からチャンバ101の出口105に拡散する。真空源33は、出口105からのガスの除去を支援するために、チャンバ101の出口105と流体連通し得る。
【0056】
ガスがチャンバ101を通って流れるとき、ガス中の同伴MX官能性ナノ粒子は、捕捉流体によって吸収され、それによって、ガスからMX官能性ナノ粒子を収集することができる。例えば、MX官能性ナノ粒子の表面は、気化及び/又は凝縮された捕捉流体によって湿らされ得る。循環した捕捉流体の撹拌は、静止流体と比較して、MX官能性ナノ粒子の吸収速度を更に改善し得る。チャンバ101内の圧力は、1ミリトール未満であり得る。
【0057】
MX官能性ナノ粒子を有する捕捉流体は、拡散ポンプ120から除去することができる。例えば、MX官能性ナノ粒子を有する捕捉流体は、連続的に除去され、MX官能性ナノ粒子を実質的に含まない捕捉流体と交換され得る。
【0058】
有利なことに、拡散ポンプ120は、MX官能性ナノ粒子を収集するためだけでなく、反応器22及び収集チャンバ26を排気するためにも使用することができる。例えば、反応器22内の動作圧力は、低圧、例えば、大気圧未満、760トール未満、又は1~760トールであり得る。収集チャンバ26は、例えば、1~5ミリトールの範囲であり得るか、又は1×10-5トール未満の圧力を有し得る。同様に、他の動作圧も企図される。
【0059】
システム50はまた、拡散ポンプ120の出口105と流体連通している真空ポンプ又は真空源33を含み得る。真空源33は、拡散ポンプ120が適切に動作するように選択され得る。本開示の一形態において、真空源33は、真空ポンプ(例えば、補助ポンプ)を含む。真空源33は、機械的ポンプ、ターボ分子ポンプ、又は極低温ポンプを含んでもよい。しかし、他の真空源も同様に企図される。
【0060】
図2のシステム50を用いてMX官能性ナノ粒子を生成する方法の1つは、反応器22内にナノ粒子エアロゾルを形成することを含み得る。ナノ粒子エアロゾルは、ガス中にMX官能性ナノ粒子を含むことができ、また本方法は、ナノ粒子エアロゾルを反応器5から拡散ポンプ120に導入することを更に含む。この実施形態において、本方法はまた、リザーバ内107内で捕捉流体を加熱して蒸気を形成することと、ジェットアセンブリ111を通して蒸気を送出することと、ノズル113を通して蒸気を拡散ポンプ120のチャンバ101内に放出することと、蒸気を凝縮させて凝縮液を形成することと、凝縮液をリザーバ107に逆流させることと、を含み得る。本方法は、捕捉流体を含む凝縮液中に、MX官能性ナノ粒子エアロゾルのMX官能性ナノ粒子を捕捉することと、捕捉されたMX官能性ナノ粒子をリザーバ107内に収集することと、を更に含み得る。捕捉流体を含む凝縮液中にエアロゾルのMX官能性ナノ粒子を捕捉する操作は、捕捉流体中にエアロゾルのMX官能性ナノ粒子を収集する操作と同一であってもよい。本方法は、真空ポンプ33を用いて拡散ポンプ120からガスを除去することを更に含み得る。上記で説明し、
図1に示されている実施形態において、MX官能性ナノ粒子は、捕捉流体中に直接収集される。しかし、直前に記載され、
図2及び3に示される実施形態において、捕捉流体は、拡散ポンプ120内で気化及び凝縮され、MX官能性ナノ粒子は、気化した捕捉流体が凝縮すると、最終的に捕捉流体中に捕捉又は収集される。
【0061】
ナノ粒子エアロゾルを調製するために利用される特定のプラズマ反応器とは無関係に、MX官能性ナノ粒子は、捕捉流体中、又は捕捉流体としても機能し得る拡散ポンプ流体中に収集される。
【0062】
上述したように、捕捉流体は、極性非プロトン性流体を含む。様々な実施形態の極性非プロトン性流体(代替的に本明細書では非プロトン性流体と呼ばれる場合もある)は、25℃で5cP~200センチポアズ(cP)の粘度を有する。粘度は、当該技術分野において理解されるように、Brookfield LV DV-E粘度計により、25℃で測定され得る。極性非プロトン性流体は、以下により詳細に記載されるように、ナノ粒子の溶媒又はビヒクルとして機能し得る。IUPACでは、「双極性非プロトン性溶媒」(本明細書で代替的に極性非プロトン性流体又は極性非プロトン性流体とも呼ばれる)を、約15を超える比較的高い比誘電率(又は誘電率)と、非常に大きい永久双極子モーメントを有し、強い水素結合を形成するために適切で不安定な水素原子を供与できない溶媒と定義している。極性非プロトン性溶媒は、典型的に、厳密には「非プロトン性」ではなく、むしろ親プロトン性(及び、最大限でも、弱いプロトン性)である。
【0063】
極性非プロトン性流体として使用するのに好適な極性非プロトン性流体の非限定的な例としては、アルキルカーボネート(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート)、エステル(例えば、エチルホルメート、メチルホルメート、メチルアセテート、及びエチルアセテート)、環状エーテル(例えば、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び2,5-ジメチルテトラヒドロフラン)、ラクトン(例えば、バレロラクトン、及びγ-ブチロラクトン)、脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル、及び1,2-ジメトキシエーテル)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、ジクロロメタン、N-メチルピロリドン、アルキル化アルキレングリコール(例えば、モノ-及びジ-アルキルポリアルキレングリコール、テトラ(エチレングリコール)ジヘキシルエーテル(DHTEG)などのテトラエチレングリコールジアルキルエーテルを含む)、N-メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレンカーボネート(PC)、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、並びにこれらの様々な混合物が挙げられる。
【0064】
具体的な実施形態において、極性非プロトン性流体は、式R2-[OCH2CH2]nOR3[式中、R2及びR3のそれぞれは独立して選択されたヒドロカルビル基であり、下付き文字nは>2である]を有するポリアルキレングリコールジアルキルエーテルを含むか、あるいはそれである。いくつかのこのような実施形態において、下付き文字nは4であり、そのため、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルは、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルである。これらの実施形態又は他の実施形態において、R2及びR3のそれぞれは、独立して選択されたC5~C8ヒドロカルビル基である。好適なC5~C8ヒドロカルビル基の例としては、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が挙げられる。いくつかのこのような実施形態において、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、ヘキシルである。特定の実施形態において、R2及びR3の両方がヘキシルであり、そのため、極性非プロトン性流体は、テトラエチレングリコールジヘキシルエーテルを含む。
【0065】
捕捉流体は、上記のように、極性非プロトン性流体を含む。捕捉流体は、MX官能性ナノ粒子の官能基Xと反応する官能基Yを含む化合物(代替的に官能化化合物又はペンダント前駆体と呼ばれる)を更に含む。捕捉流体は、概ね、MX官能性ナノ粒子が捕捉流体中に収集される時点で官能化化合物を含む。他の実施形態において、官能化化合物は、MX官能性ナノ粒子を収集した後に捕捉流体に添加される。
【0066】
極性非プロトン性流体を使用する利点の1つは、極性非プロトン性流体が、液体の水と不混和性の状態で、官能化化合物(極性/親水性ペンダント前駆体を含む)の溶解を可能にすることであり、これにより、メチル末端ポリエチレングリコール(PEG)などの両親媒性流体を使用して、可能な場合よりも大きな制御でナノ粒子の不動態化を行うことができる。したがって、様々な実施形態において、極性非プロトン性流体は、水と不混和性であり、官能化化合物と混和性である。更に、様々な実施形態において、極性非プロトン性流体は、非常に低い揮発性を有する。
【0067】
官能化化合物及び化合物の官能基Yの選択は、MX官能性ナノ粒子の官能基Xに基づく。例えば、特定の官能基は、水素と反応するがハロゲン原子とは反応しないのに対して他の官能基は、ハロゲン原子と反応するが水素とは反応しない。官能化化合物は、典型的には有機物である。すなわち、官能化化合物は、概ね炭素原子を含む。
【0068】
特定の実施形態において、MX官能性ナノ粒子の官能基XはHであり、この場合、MX官能性ナノ粒子は、MH官能性ナノ粒子と呼ばれることがある。これらの実施形態において、官能化化合物の官能基Yは、脂肪族炭素-炭素多重結合を含み、そのため、官能化化合物は、不飽和有機化合物として定義され得る。このような実施形態、すなわち、MH官能性ナノ粒子を伴い、官能化化合物の官能基Yが脂肪族炭素-炭素多重結合を含む(すなわち、不飽和有機化合物である)実施形態を、以下に記載する。
【0069】
脂肪族炭素-炭素多重結合は、二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)の場合がある。更に、不飽和有機化合物は、2つ以上の炭素-炭素多重結合を有し得、各炭素-炭素多重結合は、二重結合及び三重結合から独立して選択される。脂肪族炭素-炭素多重結合は、不飽和有機化合物の骨格内、不飽和有機化合物からのペンダント、又は不飽和有機化合物の末端位置に存在し得る。例えば、不飽和有機化合物は、直鎖状、分岐状、又は部分的に分岐状であり得、脂肪族炭素-炭素多重結合は、不飽和有機化合物の任意の位置に位置し得る。典型的には、不飽和有機化合物は脂肪族であるが、不飽和有機化合物は環状及び/又は芳香族部分を有し得る。但し、その条件は、炭素-炭素多重結合が、不飽和有機化合物の脂肪族部分に位置していること、すなわち、不飽和有機化合物の炭素-炭素多重結合が、例えばアリール基に存在していないことである。特定の実施形態において、脂肪族炭素-炭素多重結合は、不飽和有機化合物の末端位置に存在する。すなわち、不飽和有機化合物のアルファ炭素は、炭素-炭素多重結合の一部である。この実施形態は、概ね、後述する理由により、脂肪族炭素-炭素多重結合の立体障害を低減する。
【0070】
不飽和有機化合物は特に限定されず、本明細書の官能化化合物の説明及び使用に基づいて選択され得る。特定の実施形態において、不飽和有機化合物は、炭化水素化合物である。すなわち、炭素原子及び水素原子を含み、置換又は非置換であり得る。「置換されている」とは、不飽和有機化合物の1個以上の水素原子が、水素以外の原子(例えば、酸素、窒素などのヘテロ原子、又は塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子)で置き換えられ得ること、また、不飽和有機化合物の鎖中の1個以上の炭素原子が、炭素以外の原子で置き換えられ得ること、すなわち、不飽和有機化合物が、酸素、硫黄、窒素などの1個以上のヘテロ原子を鎖中に含み得ることを意味している。
【0071】
概ね、不飽和有機化合物は、その鎖中に少なくとも5個、あるいは少なくとも10個、あるいは少なくとも15個、あるいは少なくとも20個、あるいは少なくとも25個の炭素原子を含む。しかし、上述したように、不飽和有機化合物の鎖の少なくとも1個の炭素原子は、炭素以外の原子、例えばOで置換され得る。これに向け、不飽和化合物の鎖の炭素原子に対して上記の値もまた、不飽和化合物の鎖の任意のヘテロ原子も含む。例えば、様々な実施形態において、不飽和有機化合物は、例えば、不飽和有機化合物の炭化水素鎖中に、エステルを含み得る。このような実施形態において、不飽和有機化合物は、典型的には、≧C10エステルである。このようなエステルの具体例としては、アリルドデカノエート、ドデシル3-ブテノエート、プロピル10-ウンデセノエート、10-ウンデセニルアセテート、ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態において、MX官能性ナノ粒子の官能基Xは、独立して選択されたハロゲン原子である。これらの実施形態において、官能基Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)から独立して選択される。典型的には、Xがハロゲン原子の場合、XはClである。これらの実施形態において、捕捉流体の官能化化合物の官能基Yは、MX官能性ナノ粒子の官能基Xと反応する。すなわち、官能基Yはハロゲン原子と反応する。
【0073】
MX官能性ナノ粒子の官能基Xが独立して選択されたハロゲン原子である実施形態において、官能化化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソ-ブタノール、tert-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-デカノールなどのアルコール化合物;メタンチオール、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、n-ブタンチオール、sec-ブタンチオール、イソ-ブタンチオール、tert-ブタンチオール、n-ヘキサンチオール、n-オクタンチオール、n-デカンチオールなどのチオール化合物;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミンなどのアミン化合物;酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、安息香酸(benzanoic acid)などのカルボン酸化合物;硫化水素などの硫化物化合物;アセトアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、ヘキサンアミド、オクタンアミド、デカンアミド、ベンズアミドなどのアミド化合物;メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、エチルホスフィン、ジエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどの金属ハロゲン化物化合物;アセチレン、プロピン、ブタ-1-イン、ヘキサ-1-イン、オクタ-1-イン、フェニルアセチレンなどの末端アルキン化合物;有機金属化合物として、リチウムアミド、リチウムメチルアミド、リチウムジメチルアミド、ジイソプロピルアミドなどのアルカリ金属アミド化合物;リチウムメタンチオレート、ナトリウムメタンチオレート、カリウムメタンチオレート、リチウムエタンチオレート、ナトリウムエタンチオレート、カリウムエタンチオレート、リチウムフェニルチオレート、ナトリウムフェニルチオレート、カリウムフェニルチオレートなどの金属チオレート化合物;並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有機金属化合物の具体例としては、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシドなどの金属アルコキシド化合物;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミドなどのグリニャール試薬;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、塩化エチル亜鉛、臭化エチル亜鉛、塩化フェニル亜鉛、臭化フェニル亜鉛などの有機亜鉛試薬;リチウムジメチルクプラート、リチウムジエチルクプラート、リチウムジフェニルクプラートなどのギルマン試薬;メチルナトリウム、エチルナトリウム、フェニルナトリウムなどの有機ナトリウム試薬;メチルカリウム、エチルカリウム、フェニルカリウムなどの有機カリウム試薬;ヨウ化メチルカルシウム、ジフェニルカルシウム、ジベンジルカルシウムなどの有機カルシウム試薬;メチルリチウム、エチルリチウム、フェニルリチウムなどの有機リチウム試薬;並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
様々な実施形態において、官能化化合物の官能基Yは、MX官能性ナノ粒子のハロゲン原子Xと反応する求核官能基である。このような実施形態において、官能化化合物は、アルコール化合物、チオール化合物、シアネート化合物、アミン化合物、アジド化合物、ニトリル化合物、カルボン酸化合物、硫化物化合物、アミド化合物、ホスフィン化合物、金属ハロゲン化物化合物、末端アルキン化合物、有機金属化合物、アルカリ金属アミド化合物、金属チオレート化合物、又はこれらの組み合わせであり得る。官能化化合物が「アルコール化合物」、「チオール化合物」等であるという言及は、官能基Yを典型的に構成する特定の官能基(例えば、アルコール官能基及び/又はチオール官能基など)を含む官能化化合物を指すことが理解されよう。
【0075】
上記列挙の官能化化合物の具体例の各々は、ハロゲン原子と反応する官能基Yを含む。官能化化合物が不飽和有機化合物を含む実施形態のように、官能基Yは、化合物内の任意の位置に位置し得るが、典型的には末端であり、例えば、化合物のアルファ炭素に結合している。上記の官能化化合物の具体例のいくつかは、例えば配位子を含む錯体であり得る。官能化化合物がMX官能性ナノ粒子の官能基Xと反応する限り、官能化化合物に関して特に制限はない。
【0076】
官能基Y及びその他部分を含む官能化化合物の特定の部分に関する本明細書の説明は、官能化化合物が複数の独立して選択された官能基を含み得るように、代替的に又は組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
【0077】
捕捉流体は、概ね、少なくとも1:1、あるいは少なくとも1.2:1、あるいは少なくとも1.4:1の、MX官能性ナノ粒子中の官能基Y対MX結合のモル比を提供するのに十分な量の官能化化合物を含む。1.4:1よりもはるかに高いモル比は、有利に利用することができる。
【0078】
所望であれば、官能化化合物は、追加の官能基(すなわち、官能基Y以外の官能基、及び官能基Yに加えた官能基)を含み得る。例えば、特定の実施形態において、官能化化合物は、官能基Yに加えて少なくとも1つの官能基Zを更に含み、官能基Zは、親水性官能基に変換可能である。様々な実施形態において、官能化化合物は、親水性又は極性(すなわち、官能化化合物は親水性又は極性部分を含む)であり得、親水性官能基に変換可能な官能基Zを全く含まない。官能化化合物がZ基を含む場合、又は官能化化合物が親水性若しくは極性である場合、官能化化合物は、極性ペンダント前駆体又は親水性ペンダント前駆体と呼ばれることがあり、単語「前駆体」という語は、(特定の官能化化合物の性質に応じて)単語「ペンダント」のみ、又は語句「極性ペンダント」及び「親水性ペンダント」のいずれかをそれぞれ代替的に修飾すると理解され得る。
【0079】
官能基Zが変換可能であると言及する場合、単語「変換可能」は、官能基Zが化学反応を起こし、化学反応に供される前の官能基Z種よりも比較して高い親水性を有する親水性官能基を得ることができることを示すために使用されることを理解されたい。官能基Zは、特定の実施形態において、官能基Yに好適な上述の官能基のいくつかから選択され得るが、そのような実施形態において、官能基Zは、化合物中の官能基Yとは別個であり、官能基Yに加えられている。様々な実施形態において、官能基Zは、テトラフルオロアセテート(TFA)などの脱保護化合物と接触させて反応させることにより、親水性又は極性官能基に変換することができる。
【0080】
変換の具体例は脱保護反応であり、これは、当該技術分野において、他の反応性官能基から保護基を除去するものとして容易に理解される。例えば、特定の実施形態において、官能化化合物は、トリアルキルシリルエーテル基、ケタール基などの保護された官能基を含み、これは、この例では、アルコール又はジオールなどの、保護されていない官能基にそれぞれ容易に変換され得る。このような保護された官能基を利用して、本方法中の望ましくない反応を防止すること、官能化化合物の溶解性及び/又は反応性に影響を与えること、方法の反応生成物のいずれかの精製に影響を与えること、又はこれらの組み合わせをすることができる。
【0081】
親水性官能基の具体例としては、カルボン酸官能基、アルコール官能基、ヒドロキシ官能基、アジド官能基、シリルエーテル官能基、エーテル官能基、ホスホネート官能基、スルホネート官能基、チオール官能基、アミン官能基、無水物官能基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アミン官能基は、一級、二級、三級、又は環状であり得る。このような親水性官能基は、官能化化合物の鎖、例えば、鎖の炭素原子に直接結合してもよく、ヘテロ原子又は二価連結基を介して結合してもよい。様々な実施形態において、官能化化合物は、官能基Zに加えて、又は任意の官能基Zの非存在下で、Yとは異なる親水性官能基を含む。
【0082】
特定の実施形態において、官能化化合物は、上記の親水性官能基のいずれかなどの親水性官能基を含み得る。あるいは、官能化化合物は、親水性官能基に変換可能な少なくとも1つの官能基Zを含み得、そのため、少なくとも1つの官能基Zが親水性官能基に変換されるまで、官能化化合物は親水性官能基を含まない。
【0083】
親水性官能基に変換可能な少なくとも1つの官能基Zの具体例としては、エステル官能基(カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、及びホウ酸のエステルなどのオキソ酸のものを含む)、酸ハロゲン化物官能基、アミド官能基、ニトリル官能基、ジスルフィド官能基、エポキシド官能基、シリルエーテル官能基、脂肪族炭素-炭素多重結合に加えてエチレン性不飽和基、オキサゾリン官能基、及び無水物官能基が挙げられるが、これらに限定されない。オキソ酸のエステルは、任意のアルコールと、アルコールが脂肪族又は芳香族であり得る特定のオキソ酸との縮合から誘導され得る。少なくとも1つの官能基Zは、官能化化合物の置換基又は官能化化合物内の部分であり得る。例えば、官能化化合物がエステル官能基を含む場合、エステル官能基は、概ね、官能化化合物に結合した置換基とは対照的に、官能化化合物内の部分である。
【0084】
官能化化合物の少なくとも1つの官能基Zは、概ね、MX官能性ナノ粒子の官能基X並びに化合物の官能基Yに基づいて選択される。例えば、XがHである場合、XとYとを反応させると、Si-C結合が生じる。対照的に、Xが独立して選択されたハロゲン原子である場合、XをYと反応させると、SiC結合、Si-O-C結合、及び/又はSi-N-C結合が生じることがある。Si-O-C結合、及び/又はSi-N-C結合は加水分解することがあるため、親水性官能基を形成するための更なる反応は、概ね水性媒体中では行われない。これらの実施形態において、化合物は、ブトキシカルボニル基を更に含み得る。
【0085】
特定の実施形態において、官能化化合物は、ジグリセロールエーテル化合物を含むか、あるいは、ジグリセロールエーテル化合物である。いくつかのこのような実施形態において、ジグリセロールエーテル化合物は、以下の式:
【化1】
[式中、官能基Yは不飽和基を含み、官能基Zは保護されたアルコール基(すなわち、保護された親水性基)を含み、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基又はHである]を有する。当業者であれば、上記式中のアセタール/ケタール基が、酸性脱保護を介して1,2,ジオール官能基に変換され得るため、官能基Zを例示することもできることを理解するであろう。いくつかのこのような実施形態において、Yはアリル基であり、Zはトリメチルシリル(TMS)保護アルコールであり、各Rはメチルであり、そのため、ジグリセロールエーテル化合物は、以下の構造を有する。
【化2】
これは、本明細書では、O-TMSアリルエチレングリコールジグリセロールエーテルジメチルケタールと呼ばれることがある。
【0086】
捕捉流体は、ナノ粒子を捕捉するのに好適であり得る任意の化合物、成分、又は流体を含み得る。例えば、従来の捕捉流体に利用される従来の成分を捕捉液として利用することができる。捕捉流体の具体例としては、シリコーン流体(ポリジメチルシロキサン、フェニルメチル-ジメチルシクロシロキサン、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、及び/又はペンタフェニルトリメチルトリシロキサンなど)、炭化水素油(例えば、Diffoil Ultra 20又はPermavis 10)、フェニルエーテル、フッ素化ポリフェニルエーテル、イオン性流体、スルホキシド(例えば、無水メチルスルホキシド)、フルオロカーボン流体、及びこれらの様々な組み合わせが挙げられる。捕捉流体は、23±3℃で0.001~1Pa×s、0.005~0.5Pa×s、又は0.01~0.1Pa×sの動的粘度を有し得る。更に、流体は、1×10-4トール未満の蒸気圧を有し得る。いくつかの実施形態において、捕捉流体は、-20℃~150℃の範囲の温度及び1~5ミリトール(0.133Pa~0.665Pa)の範囲の圧力である。捕捉流体の表面上にフィルムを形成することなく、MX官能性ナノ粒子を捕捉流体中に注入又は捕捉流体によって吸収できるようにするには、低粘度の捕捉流体が必要である。いくつかの実施形態において、捕捉流体は、粒子収集チャンバ26内の圧力よりも低い蒸気圧を有する。
【0087】
捕捉流体は、材料取り扱い及び保管媒体として使用されてもよいことが企図される。一実施形態において、捕捉流体は、ナノ粒子が収集される時、ナノ粒子が捕捉流体に吸収及び分散され、その結果、捕捉流体中にナノ粒子の分散液又は懸濁液が形成されることを可能にするように選択される。
【0088】
様々な実施形態において、捕捉流体は、捕捉流体の総重量に基づいて、0超~100重量%、あるいは0超~50重量%、あるいは1~40重量%、あるいは2~30重量%、あるいは5~15重量%の量の官能化化合物を含む。様々な実施形態において、官能化化合物の濃度は、捕捉流体に対して測定して0.01重量%~10重量%である。捕捉流体の残部は、上記の成分又は捕捉流体のいずれかを含み得るが、極性非プロトン性流体も含む。
【0089】
特定の実施形態において、本方法は、MX官能性ナノ粒子を捕捉流体の官能化化合物と反応させて、任意選択により組成物中に官能化されたナノ粒子を形成することを更に含む。
【0090】
MX官能性ナノ粒子及び官能性化合物は、既知の方法で互いに反応させることができる。XがHである場合、この反応は、概ね付加反応と呼ばれる。MH官能性ナノ粒子がSiH官能性ナノ粒子を含む場合に行われる付加反応では、上記の不飽和有機化合物の炭素-炭素多重結合が、SiH官能性ナノ粒子との付加反応を起こす。SiH官能性ナノ粒子の場合、この付加反応はヒドロシリル化と呼ばれ、GeH官能性ナノ粒子の場合、この付加反応はヒドロゲルミル化と呼ばれ、SnH官能性ナノ粒子の場合、この付加反応はヒドロスタンニル化と呼ばれる。あるいは、Xが独立して選択されたハロゲン原子である場合、MX官能性ナノ粒子と官能化化合物との間の反応は、概ね、使用される官能化化合物に基づいて分類される。
【0091】
特定の実施形態において、特にXがHであり、官能化化合物が不飽和有機化合物を含む場合、MX官能性ナノ粒子と不飽和有機化合物との反応は、捕捉流体中のMH官能性ナノ粒子の懸濁液をUV線で照射することを含む。例えば、MH官能性ナノ粒子と不飽和有機化合物との反応は、光開始され得る。MH官能性ナノ粒子と不飽和有機化合物との反応が、捕捉流体中のMH官能性ナノ粒子の懸濁液を放射線で照射することを含む場合、放射線は、典型的には、10~400nm、あるいは280~320nmの波長を有する電磁放射線である。
【0092】
放射線に代えて、又は放射線に加えて、MX官能性ナノ粒子と官能化化合物との反応は、MX官能性ナノ粒子の懸濁液及び捕捉流体を、第1の温度まで又は第1の温度で、第1の期間加熱することを含み得る。MX官能性ナノ粒子を化合物と反応させるために熱を利用する場合、第1の温度は、典型的には50~250℃であり、第1の期間は5~500分である。
【0093】
あるいは、更に、MX官能性ナノ粒子は、一旦捕捉流体中に収集されると、官能化化合物と反応することがあり、そのため、反応条件(例えば、照射又は熱)は利用も適用もされない。しかし、熱又は照射は概ね、MX官能性ナノ粒子と官能化化合物との間の反応を改善する。MX官能性ナノ粒子の官能化は、フォトルミネセンス及び光輝性強度など、得られるナノ粒子組成物の物理的特性を改善することができる。
【0094】
所望であれば、MX官能性ナノ粒子を官能化化合物と反応させる操作中に、触媒又は光触媒を利用することができる。このような触媒は、所望の反応機構に基づいて当該技術分野において周知であり、例えば、XがHである場合、ヒドロシリル化に好適な任意の触媒を利用することができ、これは、典型的には、貴金属、例えば白金に基づくものである。しかし、MX官能性ナノ粒子を官能化化合物と反応させる操作には、触媒又は光触媒は必須ではない。
【0095】
官能化化合物が、親水性官能基に変換可能な少なくとも1つの官能基Zを含む場合、本方法は、官能基Zを親水性官能基に変換するステップを更に含み得る。化合物の官能基Zは、MX官能性ナノ粒子を官能化化合物と反応させる前、反応中、及び/又は反応後に、親水性官能基に変換され得る。典型的には、官能化化合物の官能基Zは、MX官能性ナノ粒子と官能化化合物とを反応させた後、親水性官能基に変換される。
【0096】
官能化化合物の官能基Zは、既知の方法を介して親水性官能基に変換され得る。様々な実施形態において、官能化化合物の官能基Zを親水性官能基に変換することは、官能基Zを加水分解することを含む。
【0097】
様々な実施形態において、官能化化合物の官能基Zは、酸性又は塩基性処理によって親水性官能基に変換され得る。これらの実施形態において、利用される酸又は塩基は、概ね、酸又は塩基が捕捉流体と混和性であるように選択される。更に、酸は、典型的には、例えば真空によって、又は溶媒で洗浄することによって、捕捉流体から除去することができるように選択される。これに向け、酸は、トリフルオロ酢酸、フッ化水素酸、及びこれらの組み合わせから選択され得る。酸は、水性形態で様々な濃度で利用することができる。
【0098】
具体的な一実施形態において、MX官能性ナノ粒子は、捕捉流体中に収集され、MX官能性ナノ粒子及び官能化化合物は、捕捉流体中で反応する。MX官能性ナノ粒子と官能化化合物とを反応させた後、官能化化合物から形成された置換基を有するナノ粒子が得られる。官能化化合物が、親水性官能基に変換可能な官能基Zを更に含む場合、官能基Zは、ナノ粒子の置換基中に存在する。これに向け、官能化化合物が、親水性官能基に変換可能な官能基Zを更に含む場合、本方法は、官能基Zを親水性基に変換することを更に含み得る。水性酸は、捕捉流体中に配置されて、任意選択により水性酸を含む捕捉流体の還流温度で、官能基Zを親水性官能基に変換することができる。官能基Zを親水性官能基に変換した後、ナノ粒子の置換基は親水性官能基を含む。
【0099】
様々な実施形態において、本方法は、ナノ粒子と捕捉流体とを分離して、分離されたナノ粒子を形成することを更に含む。例えば、ナノ粒子及び捕捉流体は、遠心分離及び/又はデカントによって分離され、分離されたナノ粒子を得ることができる。分離されたナノ粒子は、溶媒(例えば、トルエン又はヘキサン)中の懸濁液によって更に洗浄し、続いて遠心分離及び/又はデカントによって溶媒から繰り返し分離することができる。分離されたナノ粒子は、最終的に、例えば真空下で乾燥させて、乾燥した固体を形成し得る。様々な実施形態において、分離されたナノ粒子は固体である。この実施形態において、分離されたナノ粒子は自立しており、溶液又は懸濁液中のものではない。分離されたナノ粒子は、様々な最終用途及び用途に利用できる。
【0100】
更に、化合物が、親水性官能基に変換可能な官能基Zを含み、本方法が官能基を親水性官能基に変換することを更に含む場合、分離されたナノ粒子は、有利には極性溶媒中に懸濁され得、これは大きな利点を提供する。例えば、本方法は、分離されたナノ粒子を、水溶液などの極性溶媒中に、任意選択により(例えば、解離した重炭酸ナトリウムからの)イオンと共に懸濁させることを更に含み得る。極性溶媒は、水及び双極性非プロトン性有機溶媒から選択され得る。
【0101】
MX官能性ナノ粒子を官能化化合物と反応させた後、置換基を有するナノ粒子が得られる。これは典型的には、有機物であり、官能化化合物から形成される。例えば、官能化化合物は、概ね、ナノ粒子に、例えば配位子又は置換基として共有結合している。ナノ粒子は、概ね、MX官能性ではなくなっているため、ナノ粒子は溶液又は懸濁液中での安定性が向上する。捕捉流体中にナノ粒子を含む懸濁液は、概ねナノ粒子組成物と呼ばれる。本開示はまた、本方法に従って形成されたナノ粒子組成物を提供する。
【0102】
MX官能性ナノ粒子及びナノ粒子組成物は、上記の方法のいずれかによって調製することができる。様々な組成物のいずれかが、ナノ粒子又はMX官能性ナノ粒子、例えば、化粧品組成物を含み得、又は、組成物は、キャリア流体中に分散したナノ粒子若しくはMX官能性ナノ粒子を含み得る。プラズマプロセスで利用される前駆体ガス及び分子に応じて、様々な組成のナノ粒子を生成することができる。以下の説明は、概ねナノ粒子に言及しており、これは、MX官能性ナノ粒子、並びにMX官能性ナノ粒子と官能化化合物とを反応させることによって形成されるナノ粒子組成物のナノ粒子の両方に適用可能である。
【0103】
ナノ粒子は、量子閉じ込め効果により、多数の稀有な電子的、磁気的、触媒的、物理的、光電子的、及び光学的特性を示し得る。例えば、多くの半導体ナノ粒子は、同様の組成の巨視的材料におけるフォトルミネセンス効果よりも著しく大きいフォトルミネセンス効果を示す。
【0104】
ナノ粒子の直径は、以下の等式から計算することができる。
【数3】
【0105】
Proot,et.al.Appl.Phys.Lett.,61,1948(1992);Delerue,et.al.Phys.Rev.B.,48,11024(1993);and Ledoux,et al.Phys.Rev.B、62,15942(2000)に記載されているように、式中、hはプランク定数、cは光の速度、Egはケイ素のバルクバンドギャップである。
【0106】
MX官能性ナノ粒子及びナノ粒子は、独立して、50未満、20未満、10未満、又は5nm未満の最大寸法又は平均最大寸法を有し得る。任意選択により、ナノ粒子は、0.1nmを超える最大寸法を含む。更に、ナノ粒子の最大寸法又は平均最大寸法は、1~50、2~50、2~20、2~10、又は2.2~4.7nmであり得る。ナノ粒子の最大寸法は、透過型電子顕微鏡(TEM)等の様々な方法で測定することができる。例えば、当該技術分野において理解されるように、粒径分布は、数百の異なるナノ粒子のTEM画像分析を介して算出されることが多い。様々な実施形態において、ナノ粒子は、量子ドット、典型的にはケイ素量子ドットを含み得る。量子ドットは、3つの空間次元の全てに閉じ込められた励起子を有し、個々の結晶を含み得る。すなわち、各量子ドットは単結晶である。
【0107】
様々な実施形態において、ナノ粒子は、UV光への曝露によって励起されるとき、光輝性であり得る。ナノ粒子の平均直径に応じて、ナノ粒子は、可視スペクトル内の波長のいずれにおいてフォトルミネッセンス発光してもよく、また視覚的に赤色、橙色、緑色、青色、紫色、又は可視スペクトル内の任意の他の色であるように見えることがある。例えば、ナノ粒子が5nm未満の平均直径を有する場合、可視フォトルミネセンスが観察され得、ナノ粒子が10nm未満の平均直径を有する場合、近赤外(IR)ルミネッセンスが観察され得る。本開示の一形態において、ナノ粒子は、365nmの励起波長にて少なくとも1x106の光輝性強度を有する。光輝性強度は、450WのXe励起源、励起モノクロメータ、サンプルホルダ、エッジバンドフィルタ(400nm)、発光モノクロメータ、及びケイ素検出器光電子増倍管を伴う、Fluorolog3分光蛍光光度計(Horiba(Edison,NJ)から市販されている)を用いて測定されてもよい。光輝性強度を測定するために、励起及び発光スリット幅は、2nmに設定し、また積分時間は、0.1秒に設定する。これらの実施形態又は他の実施形態において、ケイ素ナノ粒子は、HR400分光計(Ocean Optics(Dunedin,Florida)から市販されている)で積分球に結合された1000ミクロンの光ファイバーを介して、及び>10%の入射光子の吸収を伴う分光計で測定した際に、395nmの励起波長にて少なくとも4%の量子効率を有し得る。量子効率は、サンプルを、積分球内に配置し、Ocean Optics LEDドライバによって駆動される395nmLEDを介してサンプルを励起することによって算出した。システムは、積分球からの絶対放射照度を測定するための既知の照明源を用いて較正した。次に、量子効率を、ナノ粒子によって発光された総光子のナノ粒子によって吸収された総光子に対する比によって算出した。更に、これらの実施形態又は他の実施形態において、ナノ粒子は、270~500nmの励起波長で20~250の半値幅発光極大を有し得る。
【0108】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、ケイ素ナノ粒子のフォトルミネセンスは、ケイ素ナノ粒子の直径が励起半径よりも小さいときに発生する量子閉じ込め効果により生じ、その結果、バンドギャップ湾曲(すなわち、ギャップの増加)が生じると考えられている。ナノ粒子のバンドギャップエネルギーは、ナノ粒子の直径と相関して変化する。ケイ素はバルクでは間接バンドギャップ半導体であるが、直径5nm未満のケイ素ナノ粒子は、直接バンドギャップ材料に匹敵し、これは励起子の界面トラップによって可能となる。
【0109】
更に、光輝性強度及びルミネッセント量子効率の両方は、特にナノ粒子がナノ粒子の表面を不動態化するために空気に曝されたときに、時間の経過と共に増加し続け得る。本開示の別の形態において、ナノ粒子の発光極大波長は、不動態化される(例えば、酸素に曝される)と、時間の経過と共により短い波長にシフトする(すなわち、発光スペクトルのブルーシフト)。ナノ粒子のルミネッセント量子効率は、不動態化時に200%~2500%増加し得る。しかし、他のルミネッセント量子効率の増大も、同様に企図される。光輝性強度は、不動態化の時間範囲、及び流体中に懸濁しているナノ粒子の濃度に応じて、400から4500%に増加し得る。しかし、他の光輝性強度の増大も、同様に企図される。ナノ粒子から発光される光の波長スペクトルは、ナノ粒子の不動態化に伴ってブルーシフトする。本開示の一形態において、不動態化の持続時間に応じて、ナノ粒子サイズの約1nmの減少に対応して、発光極大波長は、100nmブルーシフトする。しかし、他の発光極大波長シフトも、同様に企図される。不動態化の代替手段には、ケイ素ナノ粒子をアンモニアなどの窒素含有ガスと接触させて、ケイ素ナノ粒子上に表面層を形成することが含まれ、該表面層は窒化物を含む。
【0110】
本開示の組成物及び方法を示す以下の実施例は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものではない。
【0111】
実施例1:MX官能性ナノ粒子の調製
【0112】
超短波(VHF)低圧プラズマシステムからケイ素ナノ粒子を合成する。超高純度の前駆体ガス(Ar、H2、SiH4、及びCl2)を、質量流量制御装置を介して、特定の比及び圧力で石英放電管(反応チャンバ)に導入する。石英放電管内の典型的な圧力は、1~5トールである。
【0113】
次いで、超短波のプラズマ放電(100~150MHz)を介してガスを解離させ、プラズマを点火させる。VHFを選択して、プラズマ結合を最大化すると同時に、クラスA無線周波数増幅器に正弦波信号を提供する波形発生器の駆動振幅を最小化する。
【0114】
ケイ素原子を合体、核形成、成長させ、プラズマ放電中にケイ素ナノ結晶(代替的にケイ素ナノ粒子と呼ばれる)を形成する。プラズマ放電の出力により、個々のケイ素ナノ結晶の温度を制御して、ケイ素ナノ結晶の結晶化度の制御を可能にする。出力を高くすると、結晶性ケイ素ナノ結晶が得られ、出力を低くすると、非晶質ケイ素ナノ結晶が生成される。
【0115】
プラズマ放電内のケイ素原子の濃度及びケイ素原子の滞留時間(プラズマ滞留時間)により、ケイ素ナノ粒子のサイズが制御される。ケイ素ナノ粒子は、石英放電管の底部に位置するオリフィス(石英プラズマチャンバと呼ばれる)を介してプラズマ放電から離れると、成長しなくなる。
【0116】
ケイ素ナノ粒子は、ナノ粒子の表面上にSiHx(x<4)、ラジカル(ダングリングボンド)、及び/又はハロゲン種(石英放電管内に存在する場合)を伴って、プラズマ放電から出る。ケイ素ナノ粒子は、大きな圧力降下によって駆動されるオリフィスを通って堆積チャンバ内に出る。堆積チャンバの圧力は、1x10-5トール未満(高真空ポンプ、例えば、ターボ分子ポンプ、極低温ポンプ、又は拡散ポンプによって生成される)である。大きな圧力降下により、プラズマチャンバから流出する粒子の超音波ジェットを発生させる。超音波ジェットにより、ガス同伴ケイ素ナノ粒子間のあらゆる相互作用を最小限に抑え、ケイ素ナノ粒子をガス流中で単分散に保つ。
【0117】
撹拌された捕捉流体(0.2Pa・s未満の粘度を有する低粘度の液体)を、カップ内に配置し使用して、堆積チャンバ内の低圧(1×10-5トール未満)でケイ素ナノ粒子を捕捉する。捕捉流体の表面の位置を、十分なオリフィスの距離内に位置させ、ガスの超音波ジェット中に確実に分散したケイ素ナノ粒子の状態を維持した後、捕捉流体中に堆積する。捕捉流体は粘度が低く、捕捉流体の表面上にフィルムを形成することなく、ケイ素ナノ粒子を捕捉流体中に堆積又は注入することができる。捕捉流体の撹拌を使用して、捕捉流体の表面を再生し、捕捉流体中に堆積されたケイ素ナノ粒子をオリフィスの中心から遠ざける。
【0118】
捕捉流体及びその中に分散したケイ素ナノ粒子を、温湿度オーブン(典型的には60℃及び相対湿度85%)に24時間入れて、拡散が制限された酸化物(SiOx、x>2)で粒子の表面を不動態化する。この不動態化により、発光スペクトルをブルーシフトさせ、光輝性強度を増加させる。
【0119】
ケイ素ナノ粒子が捕捉流体中に堆積される(すなわち、捕捉流体によって吸収される)と、捕捉流体と、捕捉流体中に分散したケイ素ナノ粒子(すなわち、サンプル)とを堆積チャンバから取り出し、フォトルミネセンススペクトルを測定する。この測定を、450ワットのキセノン源を備えたHoriba FL3分光蛍光光度計を使用して行う。励起モノクロメータを、スリット幅2nmで365nmに設定する。400nmのエッジフィルタを、サンプルの下流の発光モノクロメータへのビーム経路内に配置する。
【0120】
サンプル(すなわち、捕捉流体中に分散しケイ素ナノ粒子)を、経路長1cmのキュベット(石英又はメチルアクリレートのいずれかを含む)内に配置する。フォトルミネセンススペクトル(代替的に発光スペクトルとも呼ばれる)を、励起ビームに対して直角に(又は、サンプルが十分に透明でなく、直角に測定できない場合は、22.5°の角度で正面から)測定する。
【0121】
発光モノクロメータのスリット幅は2nmで、1波長当たり0.1秒の積分時間で実行し、1nm毎に測定を行う。スペクトルを、発光検出器の量子収率に対して補正する。
【0122】
実施例2:極性非プロトン性流体(テトラエチレングリコールジアルキルエーテル)の合成
【0123】
氷上でTHF中のテトラエチレングリコールの溶液に、50重量%のNaOH水溶液を添加する。2.5倍モル量の臭化アルキルを、連続撹拌しながら溶液に滴下して混合物を形成し、次いで、12~24時間かけて室温まで昇温させる。次いで、ジエチルエーテルを混合物に添加し、混合物を相分離する。有機層を、NaClの1M水溶液の数アリコートで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させる。次いで、乾燥した有機層を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮して、揮発性物質を除去し、粗生成物混合物を得て、次いで、これを高真空蒸留装置で分画して、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルを含む精製反応生成物を単離する。
【0124】
実施例3:官能化化合物として極性ペンダント前駆体を使用したケイ素ナノ粒子の官能化
【0125】
MX官能性ナノ粒子は、実施例1の手順に従って調製され、持続時間は30分であり、捕捉流体は捕捉流体1である。MX官能性ナノ粒子を、上記の方法に従って、30分間の持続時間にわたって調製する。MX官能性ナノ粒子の懸濁液を1時間超音波処理する。混合物を160℃に2時間加熱し(熱処理)、ヒドロシリル化を促進し、官能化されたナノ粒子を得る。混合物を冷却し、上記の条件に従って、湿度チャンバで強制的にエージングする(すなわち、不動態化する)。官能化されたナノ粒子をヘキサンで3回洗浄することによって、捕捉流体の大部分を除去する。次いで、官能化されたナノ粒子を0.1mLのトリフルオロ酢酸(TFA)と接触させ、サンプル管内で25時間撹拌する。透析用遠心分離器を使用して、官能化されたナノ粒子から液体を除去し、続いて遠心分離(すなわち、水抽出)を使用して、脱イオン水で2~3回洗浄する。官能化されたナノ粒子(固体)を、水に再懸濁する。
【0126】
捕捉流体1は、極性非プロトン性流体1中の官能化化合物1の10重量%混合物である。
【0127】
官能化化合物1は、以下の式を有するジグリセロールエーテル化合物である:
【化3】
【0128】
極性非プロトン性流体1は、上記実施例2に従って調製されたDHTEGを含む捕捉流体である。
【0129】
堆積直後にMX官能性ナノ粒子を捕捉流体1に懸濁させ、水に再懸濁させた官能化されたナノ粒子のフォトルミネセンスエミッタンスを測定すると、MX官能性ナノ粒子は、本明細書に記載の官能化プロセスに供された結果、発光するフォトルミネセンスがブルーシフト(橙色/赤色から黄色に)している。
【0130】
図4は、本実施例の官能化プロセスにおける様々なステップに続くナノ粒子のフォトルミネセンススペクトルのプロットを示す。すなわち、
図4は、堆積直後(捕捉後のベースライン)、ヒドロシリル化(熱処理)後、不動態化(湿度チャンバでのエージング)後、及び水への再懸濁(水抽出)後の、ナノ粒子のフォトルミネセンススペクトルをプロットしている。
図4にプロットされたスペクトルから分かるように、ナノ粒子を、最初に不動態化し、次に水抽出した結果として、フォトルミネセンスがブルーシフトしている。
【0131】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。本明細書で様々な実施形態の具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けることができる。
【0132】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠とされる任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けることができる。