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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
A61M25/06 512
A61M25/06 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021556149
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042277
(87)【国際公開番号】W WO2021095808
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019206199
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176455(JP,A)
【文献】特開2002-028246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと、
前記カテーテルを保持するカテーテルハブと、
前記カテーテルに挿通された内針と、
前記カテーテル及び前記カテーテルハブの移動をユーザが操作するためのカテーテル操作部材と、
前記カテーテルハブ内に挿入されて嵌合することで当該カテーテルハブと共に移動可能であり、処置対象に穿刺した前記内針の針先よりも進出して当該内針の誤刺防止機能を発動するセーフティ部材とを備えるカテーテル組立体であって、
前記カテーテル操作部材は、前記セーフティ部材が挿通される挿通空間を有する筒部と、前記筒部の軸方向に延在するスリットとを有し、
前記スリットは、前記筒部の側方から前記挿通空間に前記内針を通過可能とする一方で、前記挿通空間から前記筒部の側方への前記セーフティ部材の通過を不能とする
カテーテル組立体。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテル組立体において、
前記スリットの幅は、前記内針の直径よりも大きく、且つ前記セーフティ部材の幅よりも小さく形成される
カテーテル組立体。
【請求項3】
請求項1又は2記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテルハブは、弁部材が内部に挿入される構成であり、
前記セーフティ部材は、前記弁部材の弁孔に挿入され当該弁部材を介して前記カテーテルハブ内に嵌合される
カテーテル組立体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテル操作部材は、前記カテーテルハブを収容するハブ収容部を有し、ユーザの操作による前記ハブ収容部の移動に伴い前記カテーテルハブ及び前記セーフティ部材を追従させる構成であり、
さらに、前記カテーテルハブと前記セーフティ部材の嵌合の解除に基づき前記カテーテルハブから前記ハブ収容部を離脱可能とする
カテーテル組立体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテル及び前記内針は、相互に重ねた状態で所定のコーティング材に浸けられることで、前記コーティング材が前記カテーテルの表面及び前記内針の表面に塗布される
カテーテル組立体。
【請求項6】
請求項5記載のカテーテル組立体において、
前記コーティング材は、前記処置対象に対する前記カテーテルの挿入抵抗を低減する材料である
カテーテル組立体。
【請求項7】
請求項5又は6記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテル操作部材は、前記カテーテルハブよりも先端側に延在し前記ユーザに操作される操作部を有し、前記コーティング材の塗布後に前記カテーテルハブ及び前記セーフティ部材に挿入される
カテーテル組立体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記セーフティ部材が前記カテーテルハブ及び前記筒部に挿入される箇所、及び前記筒部は円筒状に形成されており、
前記筒部の内径は、挿通されている前記セーフティ部材の外径に対して余裕空間を持つ寸法に設定されている
カテーテル組立体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記筒部の軸方向に沿った長さは、前記カテーテル操作部材において前記カテーテルハブを収容するハブ収容部の軸方向に沿った長さの1/3以上に設定されている
カテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内針の誤刺を防止するセーフティ部材を有するカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液や輸血等の導入部を処置対象(患者)に形成する際には、特表2013-529111号公報に開示されているようなカテーテル組立体が使用される。このカテーテル組立体は、カテーテル(外針)に内針を挿通した多重管を有する。このカテーテル組立体の使用において、ユーザは、多重管を患者の体内に穿刺し、その後カテーテルを血管内に進入させ、さらにカテーテルから内針を抜去してカテーテルを留置する。
【0003】
また、特表2013-529111号公報に開示のカテーテル組立体は、カテーテル及びカテーテルハブを進退操作するためのカテーテル操作部材と、カテーテル操作部材の進退に追従して移動し、内針の針先を覆うことで内針の誤刺防止機能を発動するセーフティ部材とを有する。
【発明の概要】
【0004】
ところで、特表2013-529111号公報に開示されているようなセーフティ部材を有するカテーテル組立体は、カテーテルハブ又はカテーテル操作部材にセーフティ部材を係合させることで、セーフティ部材を追従させ、誤刺防止機能の発動に伴い係合を解除させるように構成される。このため、カテーテル組立体は、カテーテル、カテーテルハブ、内針、セーフティ部材、カテーテル操作部材同士の係合構造が複雑になり易く、各部材同士の組立作業に手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記のカテーテル組立体の技術に関連するものであり、各部材の組立が簡易化し作業効率を大幅に向上させることができるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様は、カテーテルと、前記カテーテルを保持するカテーテルハブと、前記カテーテルに挿通された内針と、前記カテーテル及び前記カテーテルハブの移動をユーザが操作するためのカテーテル操作部材と、前記カテーテルハブ内に挿入されて嵌合することで当該カテーテルハブと共に移動可能であり、処置対象に穿刺した前記内針の針先よりも進出して当該内針の誤刺防止機能を発動するセーフティ部材とを備えるカテーテル組立体であって、前記カテーテル操作部材は、前記セーフティ部材が挿通される挿通空間を有する筒部と、前記筒部の軸方向に延在するスリットとを有し、前記スリットは、前記筒部の側方から前記挿通空間に前記内針を通過可能とする一方で、前記挿通空間から前記筒部の側方への前記セーフティ部材の通過を不能とする。
【0007】
上記のカテーテル組立体は、各部材の組立が簡易化し作業効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
図2】カテーテル組立体の分解斜視図である。
図3図3Aは、カテーテル組立体の使用時の手順を示す第1動作図である。図3Bは、カテーテル組立体の使用時の手順を示す第2動作図である。
図4図4Aは、カテーテル組立体の使用時の手順を示す第3動作図である。図4Bは、カテーテル組立体の使用時の手順を示す第4動作図である。
図5】カテーテル組立体の側面断面図である。
図6図6Aは、内針を支持する内針ハブを下側から見た斜視図である。図6Bは、内針を支持する内針ハブの正面図である。
図7図7Aは、セーフティ部材を下側からみた斜視図である。図7Bは、カバー体が内針を覆った状態を示す斜視図である。
図8】カテーテルハブ及びカバー体にカテーテル操作部材を組み付けた状態を下側から見た斜視図である。
図9】上グリップを下側から見た斜視図である。
図10】下グリップを示す斜視図である。
図11】内針ハブと下グリップの固定を説明する説明図である。
図12図5のXII-XII線断面図である。
図13図13Aは、下グリップ及び下支え部材の組立前の状態を示す斜視図である。図13Bは、下グリップ及び下支え部材の組立状態を示す斜視図である。
図14】グリップによりカバー体の移動を制限するセーフティ移動制限機構部を示す部分側面断面図である。
図15】カテーテル組立体の組立時の手順を示すフローチャートである。
図16】カテーテル組立体の組立手順を示す第1説明図である。
図17】カテーテル組立体の組立手順を示す第2説明図である。
図18】カテーテル組立体の組立手順を示す第3説明図である。
図19図19Aは、変形例に係るカテーテル組立体の分解状態を模式的に示す斜視図である。図19Bは、図19Aのカテーテル組立体の長手方向と直交する方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体10は、図1に示すように、処置対象(生体)に輸液、輸血又は採血等を行う際に用いられ、処置対象の体内にカテーテル12を挿入及び留置して体内と体外を導通させる。カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテル12(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等)を挿入可能とする。なお、カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルを挿入可能な構成でもよい。また、カテーテル組立体10は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルを挿入するものでもよい。
【0011】
図1及び図2に示すように、カテーテル組立体10は、使用前(穿刺前)の状態で、カテーテル12、内針14、カテーテルハブ20、内針ハブ30、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60を組み付けた内外針組立体16を備える。さらに、カテーテル組立体10は、内外針組立体16を収容すると共に、ユーザが把持するためのグリップ18(ハウジング)を備える。
【0012】
穿刺前状態の内外針組立体16は、カテーテル12及びカテーテルハブ20内を内針14が貫通し、内針14の針先15がカテーテル12の先端より突出した多重管11を形成している。カテーテルハブ20よりも基端側には、内針14が挿通されたセーフティ部材40が配置され、さらにセーフティ部材40の基端側に内針14を保持した内針ハブ30が配置される。カテーテル操作部材60は、カテーテル12、カテーテルハブ20、セーフティ部材40の上方に配置され、これらの部材を進退可能としている。グリップ18内には、多重管11の基端側部分を含む内外針組立体16が収容され、このグリップ18に対して内針ハブ30が固定されている。
【0013】
本実施形態に係るカテーテル組立体10の理解の容易化のため、先にカテーテル組立体10の使用時の動作について説明する。医師や看護師等のユーザは、使用時に、図3Aに示す穿刺前状態のカテーテル組立体10のグリップ18を把持して、カテーテル12及び内針14を患者(処置対象)の血管(静脈又は動脈)内に穿刺する。この穿刺状態を維持したまま、ユーザは、グリップ18(内針ハブ30を含む)に対しカテーテル操作部材60を相対的に進出させることで、カテーテル12及びカテーテルハブ20を進出させる。これによりカテーテル12が血管の奥に進入していく。またカテーテル操作部材60の進出初期時には、カテーテル12及びカテーテルハブ20の移動に伴ってセーフティ部材40も一体的に移動する。
【0014】
図3Bに示すように、上記の進出操作によって、カテーテル12及びカテーテルハブ20がグリップ18の先端から抜け出し、次にセーフティ部材40がグリップ18の先端から突出する。なおカテーテル操作部材60(カテーテル12、カテーテルハブ20)の進出操作時に、ユーザは、カテーテル操作部材60に対してグリップ18を相対的に後退する操作を行ってもよい。カテーテル操作部材60をさらに進出させるとセーフティ部材40の基端部がグリップ18の移動限界(進出位置)に移動する。この際、セーフティ部材40は、その先端がグリップ18から露出して内針14の先端よりも進出して内針14を覆うことで、誤刺防止機能を発動する。
【0015】
セーフティ部材40は、進出位置において、グリップ18から抜け出ずに先端方向及び基端方向への移動が停止した係止状態となる。これによりカテーテル12、カテーテルハブ20及びカテーテル操作部材60をさらに進出させると、セーフティ部材40がこれらの部材から離脱する。
【0016】
そして図4Aに示すように、カテーテル組立体10は、カテーテル操作部材60とセーフティ部材40が分離することで、カテーテル操作部材60とカテーテルハブ20の係合が解除可能となる。このため、カテーテル12及びカテーテルハブ20は、カテーテル操作部材60の下方から離脱される。
【0017】
図4Bに示すように、カテーテル12及びカテーテルハブ20は、カテーテル操作部材60から外れた形態となって、処置対象に留置される。留置前には、カテーテルハブ20の弁部材22が取り外されて、他の医療機器のコネクタ(不図示)が接続される。一方、内針14、内針ハブ30、セーフティ部材40及びグリップ18は一体化したままユーザにより適宜廃棄される。以下、上記動作を実施するカテーテル組立体10の各構成について、具体的に説明していく。
【0018】
図1図2及び図5に示すように、カテーテル組立体10のカテーテル12は、適度な可撓性を有する管体に構成されている。カテーテル12の内部には矢印A方向(軸方向)に貫通する内腔12aが設けられている。内腔12aは、内針14を収容可能且つ薬液や血液等を流通可能な直径に設定されている。カテーテル12の長さは、用途や諸条件等に応じて適宜設計可能であり、例えば14~500mm程度に設定され、好ましくは30~400mmの範囲内に設定され、より好ましくは76~200mmの範囲内に設定される。
【0019】
カテーテル12の構成材料は、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0020】
カテーテル12の外周面には、処置対象に対するカテーテル12の挿入抵抗(刺通抵抗)を低減するコーティング材13が塗布されている。例えば、コーティング材13は、カテーテル12の周方向全体、且つカテーテル12の先端から基端側(矢印A2側)に向かってカテーテル12の全長の2/3以上に塗布されていることが好ましい。また、コーティング材13は、カテーテル12の先端から露出されている内針14の針先15にも塗布されている。なお、コーティング材13は、カテーテル12の内腔12aを構成する内周面にも塗布されていてもよく、また内針14の外周面に塗布されていてもよい。
【0021】
コーティング材13を構成する材料は、カテーテル12の潤滑性を高めることが可能であれば特に限定されず、例えば摩擦抵抗を低減可能なシリコーンや無水マレイン酸系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、スルホベタイン系ポリマー等の材料を適用するとよい。また、カテーテル組立体10は、コーティング材13として親水性、撥水性、抗菌性又は抗血栓性を高める材料を適用することもできる。
【0022】
カテーテル12の基端部は、かしめ、融着、接着等の適宜の固着手段により、カテーテルハブ20内の先端部に固着される。カテーテルハブ20は、カテーテル12が処置対象の血管内に挿入された状態で処置対象の皮膚上に露出され、テープ等により貼り付けられてカテーテル12と共に留置される。
【0023】
カテーテルハブ20は、矢印A1側(先端方向)に向かって先細りとなる筒状に形成されている。カテーテルハブ20の基端側外周面には、径方向外側に突出するフランジ部21が連設されている。フランジ部21は、他の医療機器が螺合可能な螺旋状を呈している。また、カテーテルハブ20の内部には、カテーテル12の内腔12aに連通して薬液や血液を流通可能な内部空間20aが設けられる。内部空間20aの基端は、カテーテルハブ20の基端開口20a1に連通している。
【0024】
カテーテルハブ20の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート・ブチレン・スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
【0025】
カテーテルハブ20には、基端開口20a1から内部空間20aの奥側(矢印A1側)に向かって弁部材22が挿入されている。弁部材22は、カテーテルハブ20に挿入される挿入部23と、カテーテルハブ20から露出される露出部24とを有する。挿入部23は、全体が弾性材料により構成され、矢印A1側に向かって先細りとなるテーパ状に形成されている。挿入部23の外周面は、カテーテルハブ20の内周面に面接触可能である。
【0026】
露出部24は、挿入部23の基端に連なり、この挿入部23に一体成形される弾性部24aと、弾性部24aの外側を環状に覆う硬質部24bとを有する円盤状に形成されている。露出部24の径方向外側は、カテーテルハブ20と弁部材22の組立状態で、フランジ部21と同程度突出している。挿入部23及び露出部24の軸心には、弾力的に開閉可能な弁孔25が設けられている。弁部材22は、穿刺前状態で、内針14及びセーフティ部材40の先端が弁孔25に挿入されて、弁孔25の内面とセーフティ部材40の外面が密着する。これにより弁部材22は、カテーテルハブ20とセーフティ部材40を嵌合状態とし、また内針14の穿刺時に血液の漏れを防止する。
【0027】
一方、カテーテル組立体10の内針14は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空状の管体に構成される。内針14の先端には鋭利な針先15が形成されている。内針14の内部には矢印A方向に沿って中空部14aが貫通形成され、この中空部14aは、針先15に設けられた先端開口14a1と、内針14の基端に設けられた基端開口14a2とに連通している。また、針先15から矢印A2側に多少離れた位置には、内針14の外部と中空部14aを連通する横孔14a3が設けられている。
【0028】
内針14の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、あるいは硬質樹脂、セラミックス等があげられる。内針14は、融着、接着、インサート成形等の適宜の固着手段により、内針ハブ30に強固に固着される。
【0029】
図2図5図6A及び図6Bに示すように、内針ハブ30は、グリップ18に固定されるグリップ固定部31と、グリップ固定部31から上方向(矢印C1側)に突出して内針14を直接保持する保持枠部32とを有する。グリップ固定部31は、グリップ18の収容空間18aに挿入される幅で、且つグリップ18の底壁91に沿うように幅方向中央部が下側に窪む断面円弧状に形成されている。グリップ固定部31の下面には、下方向に向かって短く突出し、グリップ18との間で取付機構33を構成する複数(本実施形態では3つ)の固定用凸部34が設けられている。
【0030】
複数の固定用凸部34には、グリップ固定部31の矢印A方向先端側に位置して幅方向に並ぶ一対の先端固定用凸部34aと、グリップ固定部31の矢印A方向中間に位置する中間固定用凸部34bとが含まれる。一対の先端固定用凸部34aは、略立方形状のブロックに形成される一方で、中間固定用凸部34bは、矢印A方向に長い略直方形状のブロックに形成される。
【0031】
また、保持枠部32は、矢印A方向に所定長さ延在して内針14を固着する筒状部35を先端側に有する。筒状部35は、内針14が挿入される孔部35aを軸心に有する。保持枠部32は、グリップ固定部31の上面から突出して矢印A方向に延在する複数の枠板36を介して筒状部35を支持している。各枠板36は、筒状部35を浮かせることで、後記の鈍針ハブ51がスライド可能な空間を形成している。また保持枠部32において筒状部35よりも基端側は、鈍針ハブ51のスライド範囲を規定する空間を構成している。
【0032】
図2図5図7A及び図7Bに示すように、セーフティ部材40は、カテーテルハブ20(弁部材22)に挿入及び嵌合されることで、移動過程のカテーテルハブ20に追従するように構成される。このセーフティ部材40は、進出に伴って内針14の外側を覆うカバー体41と、穿刺後に内針14の針先15から突出する鈍針50と、鈍針50を保持する鈍針ハブ51とを備える。
【0033】
カバー体41は、矢印A1側に位置する先端カバー部42と、先端カバー部42の上部に連結されて矢印A2側に向かって所定長さ延在する基端延在部43と、基端延在部43から幅方向外側に突出する一対の突出部44とを有する。また、基端延在部43の矢印A1側(先端カバー部42の連結箇所)には、鈍針ハブ51が係合する係合用突部45が設けられている。
【0034】
先端カバー部42は、内針14を収容可能な保護空間42aが貫通形成された円筒状に構成されている。先端カバー部42は、先端側が細い筒状に形成され、基端側が先端側よりも太い筒状に形成されている。先端カバー部42の先端側の外周面は、穿刺前状態において弁部材22に挿入及び密着されることで、弁部材22を含むカテーテルハブ20に摩擦嵌合される。また穿刺前状態において、先端カバー部42の基端は、内針ハブ30の保持枠部32の先端に対向している。そして、カバー体41は、グリップ18によりカバー体41の移動が規制された進出位置において、先端カバー部42の最先端よりも基端側に針先15が位置するように設計されている。
【0035】
基端延在部43は、先端カバー部42との連結箇所において上方向に突出する連結部43aと、連結部43aから基端側に延在し且つ連結部43aよりも若干幅広に形成された板部43bとを有する。連結部43aは、先端カバー部42を吊り下げることで、その高さ(矢印C方向)位置を規定する。また板部43bは、セーフティ部材40を上下方向や幅方向に変形させない剛性とする厚みを持っている。この板部43bは、穿刺前状態で、内針ハブ30(保持枠部32)の上部に沿ってグリップ18内の基端まで延在している。
【0036】
一対の突出部44は、基端延在部43よりも薄い板状に形成され、基端延在部43の矢印A方向中間部から基端までの間を延在している。各突出部44は、幅方向(矢印B方向)外側に向かって内針ハブ30(グリップ固定部31)よりも突出し、グリップ18の側壁77の近傍位置まで延在している(図12も参照)。各突出部44は、セーフティ部材40の移動においてグリップ18と協働して矢印A方向にガイドを行うガイド機構46を構成している。
【0037】
また、一対の突出部44のうち一方(矢印B1側)の突出部44には、矢印C2側に突出し、且つ矢印A方向に沿って延在する被ガイド突部47が設けられている。被ガイド突部47は、ガイド機構46の一部を構成し、グリップ18(下グリップ90)の矢印B1側の下部側壁92よりも内側に配置されることで、セーフティ部材40の幅方向のずれを防止する。
【0038】
さらに、矢印B1側の突出部44は、被ガイド突部47よりも矢印B1側(幅方向外側)、且つ当該突出部44の矢印A2側に被係止凸部48を有する。被係止凸部48は、セーフティ部材40が進出した進出位置においてグリップ18の係止部109に係止されることで、カバー体41の進出及び後退を制限するセーフティ移動制限機構部49の一方を構成する。この被係止凸部48については後に詳述する。
【0039】
セーフティ部材40の鈍針50は、カテーテル12や生体に対して内針14が穿刺不能となるように構成された棒部材(丸棒)であり、内針14の中空部14aに移動可能に収容される。鈍針50の先端は、内針14の針先15よりも鈍らな形状(例えば、研磨した平坦面)に形成され、穿刺前状態で、内針14の中空部14aにおける横孔14a3の基端近傍位置に配置されている。
【0040】
すなわち、鈍針50は、穿刺前状態で、カテーテル12及び内針14と共に多重管11を構成している。そして、セーフティ部材40の進出に伴って鈍針50の先端が針先15から露出される。鈍針50の太さは、内針14の中空部14aの直径よりも僅かに小径であるとよく、例えば外径が0.19mm~1.19mm程度の範囲に設定されるとよい。鈍針50を構成する材料は、充分な硬質性が得られれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti系合金のような超弾性合金、形状記憶合金、コバルト系合金、金、白金のような貴金属、タングステン系合金等の金属材料、又は所定硬度以上の樹脂材料があげられる。
【0041】
また、鈍針ハブ51は、鈍針50を固定及び保持し、カバー体41に係合することで内針14、内針ハブ30及びグリップ18に対して相対移動可能に構成される。この鈍針ハブ51の進退に追従して鈍針50が進退する。鈍針ハブ51は、鈍針50を保持する鈍針保持部52と、鈍針保持部52の基端から先端方向に延在するアーム部53とを有する。
【0042】
鈍針保持部52は、上下方向に所定高さを有するブロック状に構成され、その上部において鈍針50の基端側を固定している。鈍針保持部52は、穿刺前状態で、保持枠部32の筒状部35よりも基端側の空間に配置される。そのため、鈍針ハブ51は、内針ハブ30に対して進出し、鈍針保持部52の先端面が筒状部35の基端面に接触すると、以降の鈍針ハブ51の進出が阻止される。
【0043】
アーム部53は、鈍針保持部52から矢印A1側に所定長さ延在しており、延在部分全体が幅方向に弾性変形可能に構成されている。アーム部53の先端には、穿刺前状態でカバー体41の係合用突部45に係合する係合部54が設けられている。係合部54は、先端部に位置する傾斜部55と、傾斜部55よりもさらに矢印A1側に短く突出して傾斜部55との間で係合用突部45を挟み込むフック部56とにより構成される。
【0044】
傾斜部55は、矢印A1側且つ矢印B1側(幅方向内側)に向かって突出している。カバー体41の係合用突部45は、平面断面視で傾斜部55の傾斜に沿った三角形状に形成されており傾斜部55の傾斜にガイドされる。フック部56は、傾斜部55の連結箇所から矢印A1側に突出する板片56aと、板片56aの先端から矢印B1側に短く突出して傾斜部55との間で係合用突部45を囲う(引っ掛かる)凸部56bとを含む。フック部56の板片56aは、鈍針ハブ51の移動が制限された段階(鈍針保持部52が筒状部35に当接した段階)で、カバー体41が進出すると幅方向外側に弾性変形して、凸部56bと係合用突部45の引っ掛かりを解除する。
【0045】
なお、セーフティ部材40は、内針14の針先15の誤刺を防止できれば、上記の構成に限定されるものではない。例えば、セーフティ部材40は、鈍針50や鈍針ハブ51を備えずカバー体41のみで構成されてもよい。
【0046】
図2図5及び図8に示すように、カテーテル操作部材60は、ユーザの操作に基づきカテーテル12、カテーテルハブ20及びセーフティ部材40を進退させる部材である。カテーテル操作部材60は、グリップ18の長手方向(矢印A方向)に延在する操作板部61と、操作板部61の基端に連なりカテーテルハブ20を収容するハブ収容部62と、ハブ収容部62の基端に連なりセーフティ部材40を収容する操作部筒部63とを有する。
【0047】
操作板部61は、ユーザの指が当てられて進退操作がなされる部位である。操作板部61の上面には、複数のタブ64が設けられている。複数のタブ64のうち最も先端のタブ64aは、他のタブ64よりも突出することでカテーテル操作部材60をユーザの指により押し出し易くしている。また、操作板部61は、薄肉に形成されることで、多重管11から離れる方向に湾曲可能な可撓性を有する。操作板部61の一対の側縁61aは、穿刺前状態で、後記するグリップ18の一対のレール壁96、98上に配置される。操作板部61(カテーテル操作部材60)を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、カテーテルハブ20であげた材料を適宜選択し得る。
【0048】
操作板部61の先端には、矢印A1側に向かって矢印C1側に反った凹状ブロック65が設けられている。この凹状ブロック65の下面且つ幅方向中央には、穿刺状態でカテーテル12が配置される溝65aが設けられている。溝65aの幅は、カテーテル12の外径よりも若干広く形成されている。また操作板部61の下面には、カテーテル12に接触可能な複数のリブ66が設けられている。
【0049】
一方、カテーテル操作部材60のハブ収容部62は、弁部材22を含むカテーテルハブ20を収容する収容室62aを内側に有すると共に、この収容室62aの下方を開放した箱状に形成されている。ハブ収容部62は、グリップ18の側壁77よりも幅狭に形成され、カテーテル操作部材60の移動において側壁77により移動がガイドされる。ハブ収容部62の先端面には、カテーテルハブ20の直径よりも狭くカテーテル12(多重管11)のみを延出させる間隙62bが設けられている。
【0050】
操作部筒部63は、ハブ収容部62の基端面から基端方向に向かって所定長さ突出する円筒状に形成されている。この操作部筒部63の内側にはハブ収容部62の収容室62aに連通する挿通空間63aが設けられている。挿通空間63aは、操作部筒部63内を軸方向に貫通形成され、セーフティ部材40(カバー体41)の先端カバー部42が挿通される。また、操作部筒部63の外周面には、周方向に突出形成されて操作部筒部63を補強する円弧状リブ67が設けられている。
【0051】
挿通空間63aの内径は、セーフティ部材40(カバー体41の先端カバー部42)の外径Dよりも多少大きく、且つカテーテルハブ20や弁部材22の外径よりも小さく設定されている。このため、操作部筒部63は、挿通されている先端カバー部42の外径Dに対して余裕空間63a1(図12参照)を持つように構成される。これによりカテーテル操作部材60に対してセーフティ部材40が軸回りに回転自在となる。
【0052】
そして、操作部筒部63は、当該操作部筒部63の軸方向全長にわたって形成されたスリット63bを有する。すなわちスリット63bは、先端側において収容室62aに連通し、操作部筒部63の最基端まで直線状に延在している。このスリット63bは、操作部筒部63の側方から挿通空間63aに内針14を通過可能とする一方で、挿通空間63aから操作部筒部63の側方への先端カバー部42の通過を不能とする。
【0053】
具体的には、図8及び図12に示すように、スリット63bの幅Wは、断面円形状の内針14の外径φよりも大きな寸法に設定されている。その一方で、スリット63bの幅Wは、断面円形状の先端カバー部42の外径Dよりも小さな寸法に設定されている。従って、内針14の外径φ、セーフティ部材40(先端カバー部42の基端側)の外径D、スリット63bの幅Wの寸法は、φ<W<Dの関係となっている。なお、スリット63bの幅Wは、内針14の外径φよりも若干小さく形成され、スリット63bに内針14を通過させる際に操作部筒部63を弾性変形させる構成でもよい。
【0054】
また図5に示すように、操作部筒部63は、セーフティ部材40に対するカテーテル操作部材60の曲がりを抑制するために、軸方向に沿った長さをある程度持つように構成される。詳細には、操作部筒部63の軸方向長さLは、カテーテルハブ20を収容するハブ収容部62の軸方向長さの1/3以上に設定されることが好ましい。これによりカテーテル操作部材60の操作時に、カテーテル操作部材60とセーフティ部材40の直線性を良好に維持することができる。
【0055】
図1に戻り、カテーテル組立体10のグリップ18は、ユーザが持ち易い適宜の太さに形成され、矢印A方向に沿って所定長さ延在している。グリップ18内には、カテーテル12、カテーテルハブ20、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60が進退可能な収容空間18aが形成されている。収容空間18aは、グリップ18の先端開放部18bに連通し、カテーテル12、カテーテルハブ20、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60を送出可能としている。グリップ18は、矢印C方向(長手方向と直交する方向)に分割可能な上グリップ70(第1部材)と、下グリップ90(第2部材)とを相互に組み付けることで構成される。
【0056】
図1図2及び図9に示すように、上グリップ70は、天井壁71、一対の上部側壁72及び上部後壁73を有し、下方向に開放した凹形状(椀状)に形成されている。天井壁71は、矢印A方向中間部から基端にわたって上部を非露出とする被覆部71aを有する。被覆部71aは、断面視で円弧状に形成されている。被覆部71aの下面(内側)には、一対の上部側壁72よりも下方向に短く突出して、矢印A方向に延在する一対の突条部74が設けられている。一対の突条部74は、カバー体41の上方においてカバー体41(一対の突出部44)の上面に近接し、カバー体41の進退をガイドするガイド機構46の一部を構成する(図12も参照)。
【0057】
一方、天井壁71は、中間部よりも先端側において矢印B方向中央に操作部露出切り欠き75が形成されていることで一対(二又)の延出部76を有する。一対の上部側壁72及び一対の突条部74は、被覆部71aの基端から一対の延出部76の略先端にわたって(後記の上突片部78の基端まで)延在し、一対の延出部76を補強している。
【0058】
また、一対の上部側壁72は、天井壁71の側辺から下方向に突出することで、下グリップ90の下部側壁92と共にグリップ18の側壁77を構成する。矢印B1側の上部側壁72は、各穿刺前状態において、カバー体41の被係止凸部48を内側に収容して被係止凸部48を非露出とする。また、各上部側壁72の先端側には、ユーザの把持をガイドする複数の上部窪み72aが形成されている。
【0059】
上グリップ70の操作部露出切り欠き75は、一対の突条部74間により構成され、収容空間18aに連通している。操作部露出切り欠き75は、カテーテル操作部材60のタブ64を進退可能に露出させる。操作部露出切り欠き75は、先端において開放し、カテーテル操作部材60(タブ64)の進出及びグリップ18からの離脱を可能としている。
【0060】
一対の延出部76は、操作部露出切り欠き75の両サイドを、被覆部71aから矢印A1側に向かって徐々に低くなるように延在している。一対の延出部76の各先端部には、略平坦状を呈すると共に、一対の上部側壁72よりも幅方向外側に突出する上突片部78が形成されている。一対の上突片部78の下面には、上グリップ70と下グリップ90の固定機構79の一部である先端固定用フック80がそれぞれ設けられている。一対の先端固定用フック80は、下方向に短く突出し、幅方向内側に突出する爪を突出端(下端)に備える。
【0061】
また、矢印B1側の上突片部78(以下、第1上突片部78aという)の下面には、上部側壁72と同じ程度下方向に突出するブロック突部81が形成されている。ブロック突部81は、後述する下グリップ90のセーフティ移動制限機構部49(空間部110)の幅方向外側を部分的に覆い、進出位置に移動したセーフティ部材40の被係止凸部48を概ね非露出とする。さらに、第1上突片部78aのブロック突部81よりも矢印A1側の側面には、位置決め切り欠き82が設けられている。一方、矢印B2側の上突片部78(以下、第2上突片部78bという)の下面には、後記の下支え部材120を軸支するための上軸受穴83が設けられている。また第2上突片部78bの矢印B2側の側面にも位置決め切り欠き82が設けられている。
【0062】
上グリップ70の上部後壁73は、矢印C2側に向かって一対の上部側壁72よりも短く突出し、その先端面に一対の突条部74が連結されている。この上部後壁73の下面には、固定機構79の一部を構成する基端固定用フック84が設けられると共に、基端固定用フック84の近傍位置(矢印A2側且つ矢印B1側)に固定用突起85が突出形成されている。基端固定用フック84は、下方向に短く突出し、矢印A1側に突出する爪を突出端(下端)に備える。
【0063】
図2図5及び図10に示すように、下グリップ90は、底壁91、一対の下部側壁92及び下部後壁93を有し、上方向に開放した凹形状(椀状)に形成されている。底壁91の矢印A1側の所定範囲は、幅方向中央が下側に窪む円弧状に形成され、カテーテルハブ20の進退をガイドするガイド面91aとなっている。また底壁91の矢印A2側の所定範囲は、ガイド面91aと同形状であるものの当該ガイド面91aよりも低く形成され、内針ハブ30が装着される被装着部91bとなっている。
【0064】
図11に示すように、被装着部91bには、内針ハブ30の固定用凸部34を嵌合可能な複数(本実施形態では3つ)の装着孔94が設けられている。具体的には複数の装着孔94は、被装着部91bの先端側において幅方向に2つ並ぶ一対の先端装着孔94aと、一対の先端装着孔94aから基端方向に所定間隔離間した位置に設けられる中間装着孔94bとを含む。一対の先端装着孔94aは、矢印B方向に若干長い長方形状に形成され、中間装着孔94bは、矢印A方向に長い長孔に形成されている。
【0065】
すなわち、内針ハブ30と下グリップ90の装着では、内針ハブ30を下グリップ90の底壁91に向けて移動する(単純に矢印C2側に入れ込む)。これにより、一対の先端固定用凸部34aを一対の先端装着孔94aに挿入すると共に、中間固定用凸部34bを中間装着孔94bに挿入して、各固定用凸部34と各装着孔94がそれぞれ強固に嵌合する。
【0066】
図2図10及び図12に示すように、下グリップ90の一対の下部側壁92は、底壁91の側辺から上方向(矢印C1側)に突出すると共に、矢印A方向の略全体にわたって延在している。各下部側壁92の先端側には、上部窪み72aに連なりユーザの把持をガイドする複数の下部窪み92aが形成されている。
【0067】
矢印B2側の下部側壁92は、下部が厚壁95に構成される一方で、厚壁95の上部且つ内側(矢印B1側)に厚壁95に連なるレール壁96を有する。つまり下部側壁92の上部且つ矢印B2側には、段差が形成されており、この段差部分には、組立状態でレール壁96の側面に密着するように上グリップ70の上部側壁72が配置される。
【0068】
矢印B1側の下部側壁92は、下部が厚壁95に構成される一方で、厚壁95の上部が2段の段差に構成されている。具体的には、厚壁95の上端において矢印B1側が最も低く形成され、その内側(幅方向中央部から矢印B2側)に短く突出した突壁97を有し、さらに突壁97の上端且つ矢印B2側において短く突出したレール壁98を有する。矢印B1側におけるレール壁98の高さは、矢印B2側におけるレール壁96の高さと同一である。厚壁95と突壁97とで構成される段差部分には、組立状態で上グリップ70の上部側壁72が配置される。
【0069】
突壁97とレール壁98とで構成される段差部分は、組立状態でカバー体41の被係止凸部48が配置される。すなわち、上グリップ70の上部側壁72とレール壁98との間には、被係止凸部48が摺動可能な被係止凸部用ガイド空間99a(セーフティガイド空間99の一部)が形成される。
【0070】
セーフティ部材40をガイドするガイド機構46は、上グリップ70の一対の上部側壁72と一対の突条部74、下グリップ90の一対のレール壁96、98により構成される。つまり、上グリップ70と下グリップ90の組立状態で、一対の突条部74とレール壁96、98の上下間には、セーフティ部材40の突出部44をガイドするセーフティガイド空間99が形成される。セーフティ部材40は、ガイド機構46の構築状態で、被ガイド突部47と被係止凸部48の間の隙間に下グリップ90の矢印B1側のレール壁98を配置させる。また上記したように、一対のレール壁96、98上には、カテーテル操作部材60の操作板部61の側縁61aが配置されてカテーテル操作部材60の進退もガイド可能となっている(図12中では、操作板部61を2点鎖線で示している)。換言すれば本実施形態において、セーフティガイド空間99は操作部材ガイド空間100を共有している。
【0071】
セーフティガイド空間99は、下グリップ90に対して上グリップ70が離間している状態で上方が開放され、下グリップ90に上グリップ70を固定した状態で閉塞される。その一方で、カテーテル操作部材60の一対の側縁61aは、セーフティ部材40の一対の突出部44の幅よりも狭い幅に形成され、一対のレール壁96、98上に配置される。このため操作部材ガイド空間100は、後記の下支え部材120によりセーフティガイド空間99よりも幅狭に設定され、グリップ18の先端(先端開放部18b)において開放しており、カテーテル操作部材60を送出可能としている。
【0072】
図13A及び図13Bに示すように、下グリップ90の先端には、一対の下部側壁92から幅方向外側に突出する一対の突体101が設けられている。一対の突体101は、矢印C方向に沿って充分な厚みを有しており、その上面はレール壁96、98の上端よりも若干高い位置にある。一対の突体101は、上グリップ70と下グリップ90との固定を行う固定機構79、及び下支え部材120を配置する配置機構102を構成する。
【0073】
矢印B1側の突体101(以下、第1突体103という)は、下部側壁92の上部から矢印B1側に突出している。第1突体103には、固定機構79の一部である第1固定孔103aが厚さ方向に貫通形成されている。第1固定孔103aには、組立時に、第1上突片部78aの先端固定用フック80が挿入されることで、爪が突体101の下端面に引っ掛かる。また、第1突体103の矢印B1側には、上方向に短く突出する位置決め突起104が設けられ、この位置決め突起104は第1上突片部78aの位置決め切り欠き82に挿入される。
【0074】
矢印B2側の突体101は、下部側壁92の上下において矢印B2側に突出し(以下、矢印C1側を第2突体上ブロック105といい、矢印C2側を第2突体下ブロック106という)、その間に下支え部材120が回転移動可能な移動用空間107を有する。第2突体上ブロック105の先端側には、下支え部材120を回転可能に支持する軸受切り欠き105aが設けられている。軸受切り欠き105aは、平面視で、矢印B1側に開放したU字状に形成され、内側の収容空間18aに連通している。軸受切り欠き105aの上端部は、下側部分よりも大径の段差状に形成されており、後記の下支え部材120の一対の小突起123がこの段差部分に配置される。また、第2突体上ブロック105の基端側には、固定機構79の一部である第2固定孔105bが厚さ方向に貫通形成され、さらに矢印B2側には、第2上突片部78bの位置決め切り欠き82に挿入される位置決め突起104が設けられている。
【0075】
第2突体下ブロック106は、下支え部材120の配置機構102を構成するために、第2突体上ブロック105の先端側に対向する範囲に設けられる。第2突体下ブロック106の上面には、下支え部材120を軸支する下軸受穴108が設けられている。
【0076】
下支え部材120は、グリップ18の配置機構102により回転自在に取り付けられ、穿刺前状態において、カテーテル操作部材60の下側を延在するカテーテル12(多重管11)を下支えする部品である。また、下支え部材120は、カテーテル操作部材60の移動においてハブ収容部62の壁が接触することで回転し、収容空間18aからカテーテル操作部材60を送出可能とする。
【0077】
この下支え部材120は、矢印C方向に延在する軸部121と、軸部121の軸心と直交方向に突出する支持本体部122とを有する。軸部121の上部には、レール壁96の上端に連なるガイド平面121a及びガイド平面121aを有する一対の小突起123が設けられている。ガイド平面121aには、穿刺前状態で、カテーテル操作部材60の側縁61aが近接し、下支え部材120の回転を規制する。
【0078】
支持本体部122は、平面視で、軸部121の連結部分近傍が幅狭で、連結部分近傍から離れるに従って幅広となっている。支持本体部122の上面は、軸部121から突出方向に向かって平坦状(底壁91に平行)に構成され、また突出端において下方向に傾斜している。突出端の基端側には上面に沿った傾斜突部122aが突出形成されている。
【0079】
このように構成された下支え部材120は、支持本体部122を矢印B1側に向けた姿勢で下グリップ90の上から軸受切り欠き105aに沿って挿入される。この際、支持本体部122の連結部分近傍が軸受切り欠き105aの収容空間18a側の開放部分を通過することで、下支え部材120は、軸受切り欠き105a及び下軸受穴108にスムーズに挿入される。上グリップ70と下グリップ90を装着した際に、下グリップ90に支持された軸部121の上端が上グリップ70の上軸受穴83に配置される。
【0080】
そして穿刺前状態では、カテーテル操作部材60の側縁61aがガイド平面121aに存在することで、支持本体部122の回転が規制されてカテーテル12を支持可能に待機する。これにより、支持本体部122は、カテーテル12を下支えして、カテーテル12の撓みを抑制する。カテーテル操作部材60がグリップ18から抜け出す際に、下支え部材120は、ガイド平面121aから側縁61aが抜けることで回転可能となり、カテーテル操作部材60及びセーフティ部材40の送出を許容する。
【0081】
また図14に示すように、下グリップ90の矢印B1側の下部側壁92には、セーフティ部材40(カバー体41)の移動を制限するセーフティ移動制限機構部49の他方である係止部109が設けられている。係止部109は、下部側壁92を上側から切り欠いた空間部110と、被係止凸部48の進出方向に対向する進出制限部111と、被係止凸部48の後退を規制する後退制限部112とを有する。空間部110は、セーフティガイド空間99の先端に連通している。
【0082】
進出制限部111は、空間部110の上側(矢印C1側)から矢印A2側に向かって突出し、幅方向外側に形成された第1突体103と連なっている。そして、進出制限部111の矢印A2側の突出端が被係止凸部48の進出を制限する進出制限面111aに形成されている。進出制限面111aは、矢印C方向に沿って平坦状に構成されている。
【0083】
後退制限部112は、空間部110内を矢印A2側に延在する弾性アーム部113と、弾性アーム部113の突出端から矢印C1側且つ矢印A1側に傾斜して折り返した返し部114とを有する。弾性アーム部113は、矢印C方向に弾性変形可能であり、進出中の被係止凸部48が返し部114に接触した際に弾性変形し、被係止凸部48が矢印A1側に移動すると弾性復元する。
【0084】
返し部114は、レール壁98の上端と同じ高さ位置まで突出している。返し部114は、矢印C1側に向かって矢印A1側に傾斜した後退制限面114aを、返しの内側(進出制限面111aの対向側)に有する。係止部109は、進出制限面111aと後退制限面114aとの間を被係止凸部48の進出位置としている。
【0085】
また、返し部114の外側の上端部は、矢印C1側に向かって矢印A1側に傾斜することで被係止凸部48の乗り越えを容易化する案内面114bとなっている。さらに、返し部114は、後退制限面114aの矢印B2側から矢印A1側に突出する薄壁114cが設けられている。薄壁114cは、その幅方向位置が矢印B1側のレール壁98と同じ位置にあり、その内側面によってカバー体41の被ガイド突部47をガイドし、また被係止凸部48の矢印B2側へのズレを防止する。
【0086】
ここで、セーフティ部材40の被係止凸部48は、突出部44から矢印B1側に短く突出すると共に、先端面48a、上面48b、下面48c及び基端面48dを有する立体形状に形成されている。先端面48aは、矢印C方向に対し平行に形成されており、上面48bは矢印A方向に対し平行に形成されている。一方、下面48cは、先端面48aの下端から矢印A2側に向かって矢印C2側に傾斜しており、被係止凸部48が返し部114を乗り越える際に、返し部114の案内面114bに案内される面となっている。基端面48dは、上面48bから矢印C2側に向かって矢印A2側に傾斜しており、進出位置に被係止凸部48が移動した際に、後退制限面114aと同じ傾斜方向になって対向する。これにより、セーフティ部材40に後退の力がかかった際に、被係止凸部48の基端面48dと後退制限面114aが積極的に引っ掛かり合い、セーフティ部材40の後退を規制する。
【0087】
図10に戻り、下グリップ90の下部後壁93は、レール壁96、98よりも矢印C1側に突出すると共に、矢印A2側に突出する基端フランジ115を有する。基端フランジ115には、厚さ方向に沿って第3固定孔115aが貫通形成されている。第3固定孔115aは、矢印B方向に長く形成され、基端固定用フック84及び固定用突起85をまとめて挿入可能としている。
【0088】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下このカテーテル組立体10の組立について説明する。
【0089】
カテーテル組立体10は、図15に示す手順に沿って各部材を組み立てていく。概略的には、内外針組立体16を先に組み立てた後に、この内外針組立体16を下グリップ90に配置し、さらに上グリップ70を内外針組立体16及び下グリップ90に装着する。
【0090】
内外針組立体16の組立では、まずセーフティ部材40を内針14に組み込む工程を行う(ステップS1)。この場合、図16に示すように、内針14と内針ハブ30を予め固定した部品、鈍針50と鈍針ハブ51を予め固定した部品、及びカバー体41を用意する。そして、内針ハブ30の基端から鈍針50の先端を挿入していき、内針14の中空部14aに沿って鈍針50を進出させていく。鈍針ハブ51のアーム部53は、内針ハブ30の保持枠部32内の空間を通して保持枠部32の先端側に導かれ、また鈍針ハブ51の鈍針保持部52は、保持枠部32内の筒状部35の基端に対向する位置に配置される。
【0091】
そして、カバー体41の先端カバー部42(保護空間42a)の基端から、内針14の先端を挿入していく。先端カバー部42は、基端側が太い筒状で保護空間42aも広くなっているので、内針14の針先15を容易に進入可能とする。内針14に沿ってカバー体41を基端方向に移動し、カバー体41の係合用突部45が内針ハブ30内を通過した鈍針ハブ51のアーム部53の先端に至ると、係合用突部45と係合部54を係合させてセーフティ部材40として一体化させる。すなわち、この段階ではセーフティ部材40の先端から内針14が露出してセーフティ保有組立体130となる。
【0092】
次に、カテーテル12とカテーテルハブ20(弁部材22を含む)を予め固定した部品(留置体)を、上記の内針14及びセーフティ部材40からなるセーフティ保有組立体130に組み込む工程を行う(ステップS2)。図17に示すように、カテーテルハブ20に弁部材22を挿入した状態で、弁部材22の弁孔25に対し基端側から内針14の先端を挿入していく。この際、弁部材22は、カバー体41の先端カバー部42がまだ挿入されていないので弁孔25が開放し易くなっている。従って、弁部材22は、内針14の突き刺さりが抑止されつつ、内針14の外周面上を円滑に移動する。
【0093】
そして、カテーテルハブ20の軸方向(基端方向)への移動を継続することで、カテーテルハブ20を先端カバー部42の外周面に一旦装着する。この状態では、弁部材22を介してカテーテルハブ20と先端カバー部42が嵌合する。そして、カテーテルハブ20よりも先端では、カテーテル12の先端から内針14の針先15が突出した多重管11が形成される。
【0094】
上記の多重管11の形成状態で、図15に示すように、カテーテル12及び内針14をコーティング材13に浸ける(ディップする)工程を行う(ステップS3)。このディッピングでは、コーティング材13を図示しない貯留槽に貯留しておき、セーフティ保有組立体130を基端に有する状態の多重管11の先端を下方に向けて、貯留液の上方から下方に進入させる。そして、カテーテルハブ20が浸からない位置で一定時間待機し、その後に多重管11を上方に引き上げる。これにより、カテーテル12の表面及び針先15にコーティング材13が塗布される。またディッピング時は、カテーテル操作部材60が装着されていない状態なので、カテーテル操作部材60にコーティング材13が塗布されることがない。
【0095】
コーティング材13の形成後に、カテーテル操作部材60を組み込む工程を行う(ステップS4)。この工程では、ディッピングのために嵌合していたカテーテルハブ20とセーフティ部材40を分離させる。すなわち図17に示すように、カテーテルハブ20をセーフティ部材40(セーフティ保有組立体130)に対して軸方向(先端方向)に相対移動させる。これによりカテーテルハブ20の弁部材22よりも基端で、先端カバー部42よりも先端に内針14が露出する。
【0096】
この弁部材22の基端とセーフティ部材40の先端との間に内針14が露出している状態で、カテーテル操作部材60を側方から装着する。ここで、カテーテル操作部材60の操作部筒部63に形成されたスリット63bの幅Wは、内針14の外径φよりも大きいため、スリット63bを介して操作部筒部63の挿通空間63aに内針14をスムーズに入れることができる。またカテーテル操作部材60のハブ収容部62は下方が開放されていることで、内針14が挿通されたままカテーテルハブ20(弁部材22を含む)を収容室62aに簡単に入れることができる。
【0097】
そして、カテーテル操作部材60にカテーテルハブ20(弁部材22を含む)が収容された状態で、カテーテルハブ20及びカテーテル操作部材60を基端方向に移動させる。これにより、セーフティ部材40の先端が弁部材22の弁孔25に再挿入される。そして、カテーテル操作部材60の操作部筒部63の基端がセーフティ部材40の先端カバー部42と基端延在部43の連結部43aの先端に達した段階では、セーフティ部材40が弁部材22に強く嵌合した状態となる。これにより、カテーテル12、カテーテルハブ20、内針14、内針ハブ30、セーフティ部材40、カテーテル操作部材60が組み立てられた内外針組立体16が構築される。
【0098】
その後、組立では、先に組み立てた内外針組立体16を下グリップ90に配置する工程を行う(ステップS5)。この際、下グリップ90は、上記した組立方法(図13A及び図13B参照)により下支え部材120を装着した状態としておく。図18に示すように組立では、この下グリップ90の上方の開放部分から下側(矢印C2側)に向かって内外針組立体16を挿入し、内針ハブ30の複数の固定用凸部34を下グリップ90の複数の装着孔94にそれぞれ挿入及び嵌合させる(図11も参照)。これにより内外針組立体16が下グリップ90に係合する。
【0099】
ここで、上グリップ70と下グリップ90との間に形成されるセーフティガイド空間99(空間部110)、操作部材ガイド空間100は、下グリップ90から上グリップ70が離間した状態で開放している。このため、下グリップ90に対する内外針組立体16の矢印C2側に向かう挿入により、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60を容易に配置することができる。
【0100】
最後に、組立では、内外針組立体16が係合した下グリップ90に対して上グリップ70を装着する工程を行う(ステップS6)。つまり下グリップ90の上方から下側(矢印C2側)に向かって上グリップ70を近づけて、上グリップ70の第1及び第2上突片部78a、78bの先端固定用フック80を下グリップ90の第1及び第2固定孔103a、105bに挿入し第1突体103及び第2突体上ブロック105に引っ掛ける。また上グリップ70の基端固定用フック84及び固定用突起85を下グリップ90の第3固定孔115aに挿入し、基端固定用フック84を基端フランジ115に引っ掛ける。このように上グリップ70及び下グリップ90は、先端においてカテーテル操作部材60を間に挟んだ2箇所と、基端の1箇所とを相互に固定することで、グリップ18として強固に一体化した状態となる。
【0101】
カテーテル組立体10は、上グリップ70と下グリップ90の固定によって組立が終了して穿刺前状態となる。この状態でセーフティ部材40の一対の突出部44(被係止凸部48)が配置されるセーフティガイド空間99(空間部110)は、上グリップ70及び下グリップ90の矢印A方向に閉塞されて一対の突出部44を離脱不能とする。また、内外針組立体16は、内針ハブ30がグリップ18に固定されているため内針14が移動不能となる一方で、カテーテル12、カテーテルハブ20、セーフティ部材40、カテーテル操作部材60が内針14と相対的に進退可能となっている。
【0102】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、内針ハブ30と下グリップ90を固定する取付機構33は、上記に限定されず、種々の構成(接着構造、フックによる固定構造等)をとり得る。また、上グリップ70と下グリップ90を固定する固定機構79も、上記に限定されず、種々の構成(接着構造、嵌合構造等)をとり得る。
【0103】
〔変形例〕
図19A及び図19Bに示す変形例に係るカテーテル組立体10Aは、セーフティ部材40Aの移動をガイド及び制限する構造を、カテーテル操作部材60Aの操作部分が配置される箇所とは異なる方向に設けた点で、上記のカテーテル組立体10と異なる。なお、以降の説明において、上記の実施形態と同じ構成又は同じ機能を有する要素には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0104】
具体的には、カテーテル組立体10Aのグリップ18Aは、上グリップ140と下グリップ150に分割可能であるが、上グリップ140は、天井壁71を備えると共に、矢印A2側に後ブロック体141を備え、側壁を備えない構成となっている。
【0105】
下グリップ150は、底壁91及び一対の側壁77を備える一方で、矢印A2側に後壁を備えない構成となっている。また下グリップ150は、セーフティ部材40Aの被係止凸部48Aをガイドするガイド長孔151(セーフティガイド空間99)を底壁91に備える。ガイド長孔151は、下グリップ150単体では先端が閉塞されている一方で基端が開放している。このガイド長孔151の基端開放部は、下グリップ150に上グリップ140を装着することに伴い後ブロック体141により閉塞される。
【0106】
上グリップ140と下グリップ150の組立状態では、上グリップ140の天井壁71と、下グリップ150の各側壁77との間に、操作部材ガイド空間100がそれぞれ形成される。一対の操作部材ガイド空間100には、カテーテル操作部材60Aの一対のウイング68(操作部分)が各々配置される。カテーテル操作部材60Aは、カテーテルハブ20又はセーフティ部材40Aに係合され、ユーザにより一対のウイング68の操作に基づき、カテーテル12、カテーテルハブ20及びセーフティ部材40Aを進退させることができる。
【0107】
カテーテル組立体10Aの内外針組立体16Aは、カテーテル12、カテーテルハブ20、内針14、内針ハブ30、セーフティ部材40A、カテーテル操作部材60Aを組み付けて構成される。内針ハブ30は、内針14の基端を固定すると共に、取付機構33を構成する下グリップ150の基端側の装着部(不図示)に固定される。セーフティ部材40Aは、内針14が挿通される筒部の基端部に上記の被係止凸部48Aを備える。被係止凸部48Aは、矢印C2側に向かって所定長さ突出し、その突出端がガイド長孔151よりも幅広に構成されている。従って、被係止凸部48A(セーフティ部材40A)は、組立状態で、ガイド長孔151からの抜けが防止される。
【0108】
ガイド長孔151は、下グリップ150の長手方向(矢印A方向)に沿って延在し、その先端の閉塞部152が下グリップ150の先端付近に達している。ガイド長孔151の閉塞部152よりも若干基端側には、被係止凸部48Aの進出した進出位置において被係止凸部48A(セーフティ部材40A)の移動を制限する係止部153(セーフティ移動制限機構部49の一部)が設けられている。
【0109】
係止部153は、ガイド長孔151の先端の閉塞部152と、ガイド長孔151を幅方向内側に狭める凸状部154(返し片部)とによって構成される。凸状部154は、被係止凸部48Aの矢印A1側の進出時に弾性変形して被係止凸部48Aを進出位置に移動させる一方で、進出位置に移動した被係止凸部48Aが矢印A2側に後退することを規制する。これにより、セーフティ部材40Aは、カテーテルハブ20と共にグリップ18Aから露出され進出位置において内針14の針先15を覆った状態で移動が規制されることになり、内針14の誤刺を良好に防止することができる。
【0110】
以上のカテーテル組立体10Aは、カテーテル操作部材60Aの一対のウイング68を、上グリップ140と下グリップ150の境界(操作部材ガイド空間100)に配置して移動可能とする。よって、カテーテル操作部材60Aのグリップ18Aからの送出が簡易化する。またセーフティ部材40Aのセーフティ移動制限機構部49が操作部材ガイド空間100と共有していないことで、グリップ18Aの先端部の構成を簡素化させ、進出位置におけるセーフティ部材40Aの進退をより強固に制限することが可能となる。
【0111】
上記の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
【0112】
本発明の一態様は、カテーテル12と、カテーテル12を保持するカテーテルハブ20と、カテーテル12に挿通された内針14と、カテーテル12及びカテーテルハブ20の移動をユーザが操作するためのカテーテル操作部材60と、カテーテルハブ20内に挿入されて嵌合することで当該カテーテルハブ20と共に移動可能であり、処置対象に穿刺した内針14の針先15よりも進出して当該内針14の誤刺防止機能を発動するセーフティ部材40とを備えるカテーテル組立体10であって、カテーテル操作部材60は、セーフティ部材40が挿通される挿通空間63aを有する筒部(操作部筒部63)と、筒部の軸方向に延在するスリット63bとを有し、スリット63bは、筒部の側方から挿通空間63aに内針14を通過可能とする一方で、挿通空間63aから筒部の側方へのセーフティ部材40の通過を不能とする。
【0113】
上記のカテーテル組立体10は、カテーテルハブ20内にセーフティ部材40が挿入及び嵌合する構成であることで、カテーテルハブ20及びセーフティ部材40への内針14の挿通形態で、カテーテルハブ20とセーフティ部材40が軸方向に嵌合可能となる。しかも、カテーテル操作部材60は、筒部(操作部筒部63)及びスリット63bを有し、このスリット63bが内針14を通過可能とする一方で、セーフティ部材40の通過を不能としている。これにより、カテーテルハブ20に内針14を挿通してセーフティ部材40の先端に近づけた状態で、スリット63bを介してカテーテル操作部材60を内針14の側方から装着することができる。さらに、セーフティ部材40に筒部を向かわせて、筒部を挿通したセーフティ部材40をカテーテルハブ20内に挿入することが可能となる。従って、カテーテルハブ20、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60同士の組立が簡易化し、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0114】
また、スリット63bの幅Wは、内針14の直径(外径φ)よりも大きく、且つセーフティ部材40の幅(外径D)よりも小さく形成される。これにより、カテーテル組立体10は、簡単な構成によって、スリット63bに対して内針14を通過させることができ、またセーフティ部材40がスリット63bを通過することを防止してカテーテル操作部材60とセーフティ部材40の組立状態を維持することができる。
【0115】
また、カテーテルハブ20は、弁部材22が内部に挿入される構成であり、セーフティ部材40は、弁部材22の弁孔25に挿入され当該弁部材22を介してカテーテルハブ20内に嵌合される。これにより、カテーテル組立体10は、弁部材22を介してカテーテルハブ20にセーフティ部材40を適度な嵌合力で保持させることができる。
【0116】
また、カテーテル操作部材60は、カテーテルハブ20を収容するハブ収容部62を有し、ユーザの操作によるハブ収容部62の移動に伴いカテーテルハブ20及びセーフティ部材40を追従させる構成であり、さらに、カテーテルハブ20とセーフティ部材40の嵌合の解除に基づきカテーテルハブ20からハブ収容部62を離脱可能とする。これにより、カテーテル組立体10は、カテーテルハブ20とセーフティ部材40の嵌合の解除時に、カテーテル操作部材60からカテーテルハブ20を容易に離脱させることができる。
【0117】
また、カテーテル12及び内針14は、相互に重ねた状態で所定のコーティング材13に浸けられることで、コーティング材13が表面に塗布される。これによりカテーテル組立体10の製造時には、カテーテル12及び内針14を重ねた状態でコーティング材13に浸けることができるため、製造工程が簡素化し、作業効率を一層向上させることが可能となる。
【0118】
また、コーティング材13は、処置対象に対するカテーテル12の挿入抵抗を低減する材料である。これにより、カテーテル12及び内針14を重ねた多重管11にコーティング材13が塗布されていることで、処置対象に対するカテーテル12の挿入が円滑化する。
【0119】
また、カテーテル操作部材60は、カテーテルハブ20よりも先端側に延在しユーザに操作される操作部(操作板部61)を有し、コーティング材13の塗布後にカテーテルハブ20及びセーフティ部材40に挿入される。これにより、カテーテル組立体10の製造時には、カテーテル操作部材60がない状態で、コーティング材13を多重管11に塗布することが可能となり、組立がより一層簡易化し、また製造コストを低減することができる。
【0120】
また、セーフティ部材40がカテーテルハブ20及び筒部(操作部筒部63)に挿入される箇所、及び筒部は円筒状に形成されており、筒部の内径は、挿通されているセーフティ部材40の外径に対して余裕空間63a1を持つ寸法に設定されている。これにより、カテーテル組立体10は、カテーテル操作部材60の筒部にセーフティ部材40を挿通してカテーテルハブ20に当該セーフティ部材40を挿入させる際に、セーフティ部材40をスムーズに入れていくことができる。しかも、セーフティ部材40と、カテーテル操作部材60の筒部とが円筒状に形成されている構成では、カテーテルハブ20にセーフティ部材40を挿入させる際に相対回転させることができ、挿入及び嵌合を安定的に行うことが可能となる。
【0121】
また、筒部(操作部筒部63)の軸方向に沿った長さLは、カテーテル操作部材60においてカテーテルハブ20を収容するハブ収容部62の軸方向に沿った長さの1/3以上に設定されている。これにより、カテーテル組立体10は、カテーテル操作部材60の筒部とセーフティ部材40が重なり合っている距離が長くなり、カテーテル操作部材60の操作時にセーフティ部材40に対するカテーテル操作部材60の曲がりが抑制される。従って、カテーテル操作部材60は、セーフティ部材40をスムーズに移動させることができる。
図1
図2
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