(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】カラー画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20240904BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G03G15/01 Y
G03G21/00 510
(21)【出願番号】P 2022091074
(22)【出願日】2022-06-03
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】矢口 和嵩
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214864(JP,A)
【文献】特開2003-207973(JP,A)
【文献】特開2006-072116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
複数の色のトナーを使用して前記像担持体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段が前記像担持体に形成した検査画
像を検出する検出手段
であって、前記検査画像は、前記複数の色それぞれについて同じ色の第1パターン及び第2パターンのペアを含み、前記ペアの前記第1パターン及び前記第2パターンは、互いに同一の形状を有するパターンであって、かつ、前記像担持体の搬送方向及び前記搬送方向とは直交する幅方向とは異なる方向に伸びる直線パターンである、前記検出手段と、
前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき色ずれ量を取得する取得手段と、
前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき
前記ペアの前記第1パターンと前記第2パターンとの前記搬送方向における距離を取得し、前記距離が所定範囲内ではない場合、前記検査画像に接した前記像担持体の表面反射率に局所的な異常が有ると判定する判定手段と、
を備え
、
前記画像形成手段は、前記ペアの前記第1パターンと前記第2パターンを、前記搬送方向の異なる位置に形成し、かつ、前記搬送方向において前記ペアの前記第1パターンと前記第2パターンとの間に他のペアの前記第1パターンも前記第2パターンも形成しない、画像形成装置。
【請求項2】
前記検査画像は、前記搬送方向に沿って前記像担持体に順に形成される複数のパターンセットを含み、
前記複数のパターンセットそれぞれは、前記第1パターン及び前記第2パターンの
前記ペアを含み、
前記
判定手段は、前記複数のパターンセットそれぞれの前記ペアについて、前記距離が前記所定範囲内であるか否かを判定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数のパターンセットそれぞれは、前記複数の色それぞれについて、前記ペアを含み、
前記
判定手段は、前記複数のパターンセットそれぞれの前記複数の色それぞれの前記ペアについて、前記距離が前記所定範囲内であるか否かを判定し、
前記取得手段は、前記距離が前記所定範囲内ではないペアを含むパターンセットの前記検出手段による検出結果を、前記色ずれ量の取得に使用しない、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記像担持体に向けて光を射出する発光手段と、
前記発光手段が射出し、前記搬送方向とは直交する幅方向における前記像担持体の所定位置で正反射した反射光を受光する様に構成された受光素子と、
を備え、
前記第1パターン及び前記第2パターンは、前記像担持体の前記所定位置に形成される、請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを使用するカラー画像形成装置における色ずれ補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の色のトナーを使用して画像を形成するカラー画像形成装置(以下、単に、画像形成装置と表記する。)は、形成する画像の品質を保つために色ずれ補正制御を行う。具体的には、画像形成装置は、中間転写ベルト等の像担持体に色ずれ量を検出するための検査画像を形成し、反射型の光学センサを用いて検査画像を検出することで色ずれ量を判定・取得する。そして、画像形成装置は、取得した色ずれ量に基づき色ずれを低減する様に、画像形成条件、例えば、画像形成のタイミング等を補正する。ここで、像担持体にキズがあると、検査画像の誤検出が生じて色ずれ量の取得精度が低下し得る。このため、特許文献1は、像担持体のキズによる検査画像の誤検出を回避する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検査画像がキズと接する様に像担持体に形成された場合、特許文献1の構成ではキズの存在を検出できず、かつ、キズの影響により検査画像の形成位置を誤検出し、よって、色ずれ量の取得精度が低下する。また、中間転写ベルト等の像担持体では、その反射率が局所的に変動する箇所が製造上の理由により生じ得る。特許文献1の構成では、この反射率の変動箇所と検査画像が接している場合にも反射率の変動により検査画像の形成位置を誤検出し、よって、色ずれ量の取得精度が低下し得る。
【0005】
本発明は、色ずれ量の取得精度の低下を抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、画像形成装置は、像担持体と、複数の色のトナーを使用して前記像担持体に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段が前記像担持体に形成した検査画像を検出する検出手段であって、前記検査画像は、前記複数の色それぞれについて同じ色の第1パターン及び第2パターンのペアを含み、前記ペアの前記第1パターン及び前記第2パターンは、互いに同一の形状を有するパターンであって、かつ、前記像担持体の搬送方向及び前記搬送方向とは直交する幅方向とは異なる方向に伸びる直線パターンである、前記検出手段と、前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき色ずれ量を取得する取得手段と、前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき前記ペアの前記第1パターンと前記第2パターンとの前記搬送方向における距離を取得し、前記距離が所定範囲内ではない場合、前記検査画像に接した前記像担持体の表面反射率に局所的な異常が有ると判定する判定手段と、を備え、前記画像形成手段は、前記ペアの前記第1パターンと前記第2パターンを、前記搬送方向の異なる位置に形成し、かつ、前記搬送方向において前記ペアの前記第1パターンと前記第2パターンとの間に他のペアの前記第1パターンも前記第2パターンも形成しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、色ずれ量の取得精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による、画像形成装置の概略的な構成図。
【
図3】一実施形態による、光学センサの制御構成図。
【
図5】一実施形態による、2つの色の相対的な色ずれ量の検出に使用する検査画像のV字型パターンを示す図。
【
図6】一実施形態による、像担持体のインプリント抜けにより直線パターンの形成位置の検出精度が劣化することの説明図。
【
図7】一実施形態による、像担持体のキズにより直線パターンの形成位置の検出精度が劣化することの説明図。
【
図8】一実施形態による色ずれ量の取得処理のフローチャート。
【
図9】一実施形態による、形成位置の検出精度の劣化を判定するために使用する2つの直線パターンのペアを示す図。
【
図10】一実施形態による、像担持体のインプリント抜けにより直線パターンの形成位置の検出精度が劣化することの説明図。
【
図11】一実施形態による色ずれ量の取得処理のフローチャート。
【
図12】一実施形態による、形成位置の検出精度の劣化を判定するために使用する2つの直線パターンのペアを示す図。
【
図13】一実施形態による、像担持体のインプリント抜けにより直線パターンの形成位置の誤検出が生じることの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による画像形成装置700の概略的な構成図である。
図1において、参照符号の末尾の文字Y、M、C、Kは、それぞれ、参照符号により示される部材が形成に係るトナー像の色が、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックであることを示している。なお、以下の説明において、色を区別する必要がない場合には、末尾の文字Y、M、C、Kを除いた参照符号を使用する。画像形成部705の感光体701は、画像形成時、図の時計回り方向に回転駆動される。帯電部702は、回転する感光体701の表面を一様な電位に帯電させる。露光部707は、各感光体701の表面を露光して、各感光体701に静電潜像を形成する。現像部703は、感光体701の静電潜像をトナーで現像することで、感光体701にトナー像を形成する。一次転写ローラ706は、像担持体である中間転写ベルト20に感光体701のトナー像を転写する。なお、画像形成時、中間転写ベルト20は、図の反時計回り方向に回転駆動される。各感光体701のトナー像を互いに重ねて中間転写ベルト20に転写することで、中間転写ベルト20にはフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト20のトナー像は、中間転写ベルト20の回転により二次転写ローラ711の対向位置に搬送される。
【0011】
カセット713内の記録材は、搬送ローラ714、715及び716により、搬送路709に沿って二次転写ローラ711の対向位置に搬送される。二次転写ローラ711は、中間転写ベルト20上のトナー像を記録材に転写する。トナー像が転写された記録材は、定着部717に搬送される。定着部717は、記録材を加熱・加圧して、トナー像を記録材に定着させる。記録材は、その後、排出ローラ720により画像形成装置700の外部に排出される。
【0012】
制御部500は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと呼ぶ。)501を備えており、画像形成装置700の全体を制御する。光学センサ30は、中間転写ベルト20に形成された、色ずれ量や濃度を検出するための検査画像を検出し、マイコン501に検出結果を出力する。マイコン501は、この検出結果に基づき色ずれ補正制御や濃度補正制御を行う。なお、中間転写ベルト20の表面の移動方向を、副走査方向又は搬送方向と呼び、副走査方向と直交する方向を主走査方向又は幅方向と呼ぶ。
【0013】
図2は、色ずれ補正制御に関する制御部500の機能ブロック図である。
図2のマイコン501内の各機能ブロックは、マイコン501が制御部500の記憶デバイス(図示せず)に格納された制御プログラムを実行することで実現される。色ずれ補正制御の実行時、画像制御部506は、検査画像の画像データをプリント制御部502に出力する。プリント制御部502は、検査画像の画像データを露光部707に出力すると共に、
図1の各部材を制御して中間転写ベルト20に検査画像を形成する。なお、検査画像の詳細については後述するが検査画像は複数のパターン画像(以下、単に、パターンと表記する。)を含む。プリント制御部502は、センサ制御部503を制御することで光学センサ30に中間転写ベルト20の検査画像を検出させる。光学センサ30による検査画像の検出結果を示す検出信号は、センサ制御回路50を介して、マイコン501の色ずれ検出部510に出力される。
【0014】
色ずれ検出部510の位置検出部511は、光学センサ30からの検出信号に基づき検査画像の各パターンの通過タイミングを検出し、これにより、検査画像の各パターンについて、搬送方向における中間転写ベルト20での形成位置を検出する。色ずれ量演算部512は、位置検出部511が検出した各パターンの形成位置に基づき色ずれ量を判定する。色ずれ検出部510は、判定した色ずれ量を色ずれ補正部505に出力する。色ずれ補正部505は、当該色ずれ量に基づきプリント制御部502で使用される制御パラメータの補正量を決定し、補正量をプリント制御部502に設定する。なお、制御パラメータは、主走査方向及び副走査方向における静電潜像の書き出しタイミングや、主走査方向における倍率等を含む。実際の画像形成において、プリント制御部502は、各制御パラメータの補正量に従い画像形成を制御する。これにより、色ずれを抑えた画像を形成することができる。
【0015】
異常判定部515は、検査画像に含まれる各パターンの形成位置に関して、その検出精度の劣化が生じているか否かを判定する。検査画像に含まれる各パターンの形成位置の検出精度の劣化が生じる原因の幾つかと、検出精度の劣化が生じている否かの判定方法等については後述する。
【0016】
図3は、光学センサ30の制御構成を示している。光学センサ30の光源31は、中間転写ベルト20に向けて光を射出する。なお、光源31の発光は、マイコン501がセンサ制御回路50の駆動回路40を介して制御する。受光素子32は、光源31が射出した光の中間転写ベルト20での正反射光を受光する様に配置される。なお、受光素子32は、正反射光を主に受光するが、正反射光と同角度となる散乱反射光も受光する。受光素子33は、光源31が照射した光の中間転写ベルト20又はその上に形成された画像での散乱反射光を受光する様に配置される。なお、部材34は、光源31が射出する光や、受光素子32及び33が受光する光を絞り込むために設けられる。
【0017】
受光素子32及び33は、それぞれ、受光量に対応する電流をIV変換部51a及び51bに出力する。IV変換部51a及び51bは、それぞれ、入力電流を電圧に変換してゲイン調整アンプ部52a及び52bに出力する。ゲイン調整アンプ部52a及び52bは、入力電圧をそれぞれ増幅して、アナログの検出信号S1a及びS1bをコンパレータ53a及び53bに出力する。なお、ゲイン調整アンプ部52a及び52bにおけるゲインはマイコン501により設定される。
【0018】
コンパレータ53a及び53bは、閾値を用いて検出信号S1a及びS1bの2値化処理を行い、検出信号S2a及びS2bを生成する。検出信号S2a及びS2bは、マイコン501のインプットキャプチャ機能(不図示)を有する端子に入力される。マイコン501は、検出信号S2a及びS2bの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのタイミングにより検査画像の各パターンの通過タイミングを検出する。そして、この通過タイミングにより、搬送方向における各パターンの中間転写ベルト20上での形成位置(以下、単に、形成位置と表記する)を判定する。なお、受光素子32及び受光素子33が受光する反射光の中間転写ベルト20での主走査方向における反射位置は所定位置であり、以下では、それぞれ、センシング位置Pos_a及びセンシング位置Pos_bと表記する。
【0019】
図4は、検査画像を示している。なお、
図4の上下方向が搬送方向(副走査方向)に対応し、左右方向が幅方向(主走査方向)に対応する。光学センサ30は、中間転写ベルト20の幅方向における両端部付近に配置される。以下の説明においては、中間転写ベルト20の表面の移動方向に向かって左端側に配置された光学センサ30を光学センサ30Lと表記し、右端側に配置された光学センサ30を光学センサ30Rと表記する。なお、2つの光学センサ30L及び30Rを総称する場合には光学センサ30と表記する。また、光学センサ30Lのセンシング位置Pos_a及びPos_bをセンシング位置Pos_La及びPos_Lbと表記し、光学センサ30Rのセンシング位置Pos_a及びPos_bをセンシング位置Pos_Ra及びPos_Rbと表記する。
【0020】
光学センサ30Lは、センシング位置Pos_La及びPos_Lbを通過する検査画像の各パターンを検出する。同様に、光学センサ30Rは、センシング位置Pos_Ra及びPos_Rbを通過する検査画像の各パターンを検出する。以下では、センシング位置Pos_Laとセンシング位置Pos_Lbとを総称してセンシング位置(L)と表記し、センシング位置Pos_Raとセンシング位置Pos_Rbとを総称してセンシング位置(R)と表記する。センシング位置(L)には、パターンセット11L、12L、21L、22L、31L及び32Lが形成される。同様に、センシング位置(R)には、パターンセット11R、12R、21R、22R、31R及び32Rが形成される。
【0021】
各パターンセットは、V字状の複数の第1パターン又は逆V字状の複数の第2パターンを含む。具体的には、
図4において、パターンセット11L、11R、21L、21R、31L及び31Rは、同じ複数の第2パターン(逆V字状)を含む。また、
図4において、パターンセット12L、12R、22L、22R、32L及び32Rは、同じ複数の第1パターン(V字状)を含む。
図4において、パターンセット12Lに含まれる複数の第1パターンは、それぞれ、パターンセット11Lの複数の第2パターンそれぞれを幅方向に対して反転させた形状である。なお、以下の説明においては、第1パターン及び第2パターンを総称して"V字型パターン"と表記する。V字型パターンは、2つの直線パターンで構成され、各直線パターンは、1つの色で形成される。
【0022】
図4においては、各直線パターンには、各直線パターンを区別するための参照符号を付与している。直線パターンの参照符号の最初の文字Y、M、C及びKは、直線パターンの色が、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックであることを示している。参照符号の2番目の文字"a"は、センシング位置Pos_aに形成された直線パターンであることを示し、文字"b"は、センシング位置Pos_bに形成された直線パターンであることを示している。直線パターンの参照符号の3桁の数字の内の前2桁と最後の文字は、直線パターンが属するパターンセットの参照符号に対応する。例えば、パターンセット11Lの各直線パターンの参照符号は、"xx11xL"である。なお、文字"x"は、直線パターンに応じて異なる。直線パターンの参照符号の3桁の数字の内の最後の数字が"0"であることは、当該直線パターンで構成されるV字型パターンが1色のみで構成されていることを示す。一方、直線パターンの参照符号の3桁の数字の内の最後の数字が"1"であることは、当該直線パターンで構成されるV字型パターンが2色で構成されていることを示す。なお、センシング位置Pos_bに形成された直線パターンを検出する受光素子33は散乱反射光を受光する。このため、ブラックの直線パターンを受光素子33により検出できる様に、ブラックの直線パターンについては他の色、例えば、イエローの上に形成している。一例として、
図4の直線パターンKb110Lがこれに該当する。
【0023】
図5(A)は、パターンセット11Lを示している。第1色と第2色の2つの色の相対的な色ずれ量は、第1色のみで構成されるV字型パターンと、第2色のみで構成されるV字型パターンと、第1色及び第2色で構成されるV字型パターンと、から判定される。
図5(B)は、マゼンタに対するイエローの色ずれ量を判定するために使用する3個のV字型パターンを示している。
図5(C)は、シアンに対するマゼンタの色ずれ量を判定するために使用する3個のV字型パターンを示している。
図5(D)は、ブラックに対するシアンの色ずれ量を判定するために使用する3個のV字型パターンを示している。
【0024】
以下では、第1色をイエローとし、第2色をマゼンタとし、イエローに対するマゼンタの色ずれ量の算出方法について説明する。なお、検出信号S2a及びS2b(
図3参照)に基づき検出した直線パターンの形成位置を、当該直線パターンの参照符号の前に文字"d"を付けて表現する。例えば、直線パターンYa110Lについて検出した形成位置をdYa110Lと表記する。
【0025】
センシング位置Pos_Laにおけるマゼンタに対するイエローの色ずれ量daYM11Lは、
daYM11L=dYa110L-dYb110L+dYb111L-dMa111L
として求められる。また、センシング位置Pos_Lbにおけるマゼンタに対するイエローの色ずれ量dbYM11Lは、
dbYM11L=dYb111L-dMa111L+dMa110L-dMb110L
として求められる。したがって、パターンセット11Lにおけるマゼンタに対するイエローの副走査方向の色ずれ量YMp11Lは、
YMp11L=(daYM11L+dbYM11L)/2
として求められる。さらに、パターンセット11Lにおけるマゼンタに対するイエローの主走査方向の色ずれ量YMs11Lは、
YMs11L=(daYM11L-dbYM11L)/2
として求められる。他の色の組み合わせについても同様である。また、センシング位置(L)での色ずれ量と、センシング位置(R)での色ずれ量との相対関係から副走査方向における傾きと主走査方向の倍率を求めることができる。
【0026】
この様に、本実施形態では、検出信号S2a及びS2bに基づき各直線パターンの形成位置を検出し、検出した形成位置に基づき色ずれ量を判定する。なお、中間転写ベルト20等の回転部材の回転周期にはムラが存在するため、各直線パターンの形成位置には、回転部材の回転周期ムラに起因するズレが生じる。このため、本実施形態では、
図4に示す様に、複数のパターンセットを中間転写ベルト20の搬送方向に沿って順に形成して、中間転写ベルト20の回転周期ムラによる影響を抑えている。つまり、各パターンセットから算出される色ずれ量の平均値を最終的な色ずれ量とすることで、回転周期ムラの影響を抑え、これにより精度良く色ずれ量を判定している。
【0027】
しかしながら、直線パターンの形成位置に接する領域における中間転写ベルト20の表面の反射率が、その他の領域とは極端に異なる場合、直線パターンの形成位置の検出精度が劣化し、実際の形成位置と検出される形成位置との差が大きくなる。以下の説明において、検出される形成位置の実際の形成位置からの誤差が所定値より大きい状態を、"形成位置の誤検出"と表記する。例えば、中間転写ベルト20の表面の反射率の局所的な変化は、所謂、"インプリント抜け"により生じる。具体的には、近年、従来のラッピング処方工程の簡略化と、中間転写ベルト20上の摩擦力の低減化と、耐久性の向上を目的として、中間転写ベルト20の表面上にミクロンピッチの溝形状を形成するナノインプリントベルトが提案されている。ナノインプリントベルトの型製造時に異物が付着すると、溝の形成が阻害され得る。その結果、異常に反射率が高くなるスポット部位(インプリント抜け)が中間転写ベルト20に発生する。また、中間転写ベルト20の表面にキズが存在し、このキズが直線パターンに接していた場合にも形成位置の誤検出が生じ得る。
【0028】
以下では、インプリント抜けにより形成位置の誤検出が生じる理由について説明する。インプリント抜けは中間転写ベルト20からの正反射光に影響を及ぼすため、センシング位置Pos_aに形成された直線パターンの検出に影響を及ぼす。
図6(A)は、センシング位置Pos_Laに形成されるパターンセット11Lの7つの直線パターンを示している。同色の2つの直線パターン間には色ずれが生じないため、同色の2つの直線パターン間の搬送方向における距離(以下、搬送方向における距離を単に"距離"と表記する。)は設計値に略等しい。
【0029】
なお、厳密には回転部材の回転周期ムラにより各直線パターンの形成位置にはズレが生じるため、同色の直線パターン間であっても、その距離には設計値からのズレが生じ得る。この設計値からのズレは、同色の2つの直線パターンの目標とする形成位置における回転周期の位相が近い程、小さくなる。したがって、本実施形態では、近接して形成される同じパターンセット内の2つの同色の直線パターンをペアとし、ペアの2つの直線パターン間の距離を判定する。そして、距離が設計値を基準とする所定範囲内であるか否かにより、インプリント抜けによる形成位置の誤検出が生じているか否かを判定する。なお、本実施形態では、
図6(A)に示す様に、各パターンセットは、マゼンタ、シアン及びブラックについては2つの直線パターン、つまり、1つのペアを含む。一方、各パターンセットは、イエローについては1つの直線パターンのみを含む。したがって、本実施形態では、イエローについて形成位置の誤検出が生じているか否かを判定するために、各パターンセットに1本のイエローの検査用パターンを追加する。
【0030】
図6(B)は、
図6(A)の直線パターンを光学センサ30が検出した際の検出信号S1a(
図3参照)の波形を示し、
図6(C)及び
図6(D)は、検出信号S1aを二値化した検出信号S2a(
図3参照)の波形を示している。検出信号S1aは、正反射光を主とする検出信号であり、直線パターンが光学センサ30の検出領域にある間、検出信号S1aの検出レベルは大きく低下する。
図6(C)及び
図6(D)に示す検出信号S2aは、
図6(B)の検出信号S1aを閾値電圧Vthで2値化処理したものであり、その波形エッジは、直線パターンのエッジに対応する。したがって、波形エッジの検出タイミングに基づき直線パターンの形成位置を判定することができる。
【0031】
ここで、
図6(A)に示す様に、直線パターンCa111Lに接する位置にインプリント抜け61が存在していたものとする。
図6(B)の破線61s1は、インプリント抜け61が存在していた場合の検出信号S1aを示している。
図6(C)及び
図6(D)の破線62s2は、インプリント抜け61が存在していた場合の検出信号S2aを示している。
【0032】
直線パターンCa111Lの検出位置dCA111Lは、直線パターンCa111Lの2つのエッジの検出タイミングに基づき判定される。
図6(C)の検出位置dCA111Lは、インプリント抜け61が存在していなかった場合、つまり、検出信号S2aが実線の通りである場合に求められる値である。一方、
図6(D)の検出位置dCA111L´は、インプリント抜け61が存在している場合、つまり、検出信号S2aが破線の様に変動した場合に求められる値である。
図6(C)及び
図6(D)から明らかな様に、インプリント抜け61が存在している場合、検出される直線パターンCa111Lの形成位置は、実際の形成位置とは異なることになり、この差が所定値以上であると、形成位置の誤検出となる。なお、検出される直線パターンCa111Lの形成位置が実際の形成位置とは異なるため、2つの直線パターンCa111LとCa110Lとの距離も設計値から変動する。なお、
図6(C)において、2つの直線パターンCa111LとCa110Lとの距離は、dCA111LとdCA110Lとの差分である。
【0033】
図7(A)は、直線パターンCa111Lと接する位置にキズ71が生じていた場合を示している。
図7(B)は、検出信号S1aを示し、破線71s1は、キズ71が生じていた場合を示している。
図7(C)は、検出信号S2aを示し、破線71s2は、キズ71が生じていた場合を示している。
図7(C)から明らかな様に、キズ71によりインプリント抜けの場合と同様に、直線パターンCa111LとCa110Lとの距離が設計値から変動する。なお、直線パターンの幅によりキズやインプリント抜け等の影響を受けているか否かを判定することもできる。
【0034】
図8は、本実施形態による色ずれ補正制御において、色ずれ量を取得する処理のフローチャートである。色ずれ補正制御の開始により、制御部500は、S10において中間転写ベルト20に検査画像を形成し、光学センサ30を用いて検査画像の各直線パターンの形成位置を検出する。制御部500は、S11において、ペアの2つの直線パターン間の距離を求める。なお、上述した様に、ペアの2つの直線パターンは、同じパターンセット内の同じ色の2つの直線パターンである。制御部500は、S12において、ペアの直線パターン間の距離が所定範囲内であるかを判定する。所定範囲は、ペアの2つの直線パターン間の距離の設計値に基づき決定され、制御部500に予め格納される。ペアの直線パターン間の距離に所定範囲外のものがない場合、制御部500は、S13において、各パターンセットの色ずれに基づき全体の色ずれ量を判定する。
【0035】
一方、S12において、ペアの直線パターン間の距離に所定範囲外のものがある場合、制御部500は、S14において、
図8の処理の繰り返し回数が所定回数Nに達しているか否かを判定する。所定回数Nに達していない場合、制御部500は、S10から処理を繰り返す。一方、所定回数Nに達している場合、制御部500は、S15において、距離が所定範囲外であるペアを含むパターンセットを除外し、残りのパターンセットの色ずれ量に基づき全体の色ずれ量を判定する。例えば、
図4に示す検査画像の内、パターンセット11Lが除外されたものとする。この場合、制御部500は、センシング位置(L)側の主走査方向及び副走査方向の各色の色ずれ量を、5つのパターンセット21L、31L、12L、22L及び32Lの平均で求める。なお、制御部500は、センシング位置(R)側の主走査方向及び副走査方向の各色ずれ量については、6つのパターンセット11R、21R、31R、12R、22R及び32Rの平均で求める。そして、制御部500は、センシング位置(L)での色ずれ量と、センシング位置(R)での色ずれ量との相対関係から、副走査方向の書き出し位置及び傾きと、主走査方向の書き出し位置及び倍率を求める。
【0036】
以上、本実施形態によると、色ずれ量を算出するためのパターンセット内の同色の2つの直線パターンの搬送方向における距離を設計値と比較することで形成位置の誤検出が生じているか否かを判定する。そして、形成位置の誤検出が生じたパターンセットを除外して色ずれ量を判定する。この構成により、色ずれ量の取得精度の劣化を抑えることができる。
【0037】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、形成位置の誤検出の発生を検知するため、センシング位置Pos_Laの直線パターンと、当該直線パターンと副走査方向における位置が略同じであり、かつ、色が同じであるセンシング位置Pos_Raの直線パターンと、を使用する。同色の直線パターン間には色ずれが生じないため、副走査方向において略同じ位置に形成されていれば、回転周期ムラによる画像形成位置のずれの影響は小さくなる。
【0038】
図9は、
図4に示す検査画像から、センシング位置Pos_La及びPos_Raに形成されるイエローの直線パターンを抜き出して表示したものである。センシング位置Pos_Laとセンシング位置Pos_Raにおいて、副走査方向における位置が略同じ2つの直線パターンが1つのペアを形成する。例えば、パターンセット11Lの直線パターンYa110Lと、パターンセット11Rの直線パターンYa110Rが1つのペアを構成する。より詳しくは、センシング位置(L)の1つの第1パターンセットは、センシング位置(R)の1つの第2パターンセットに対応付けられる。センシング位置(L)の1つの第1パターンセットに対応付けられる1つの第2パターンセットは、センシング位置(R)の複数の第2パターンセットの内、当該第1パターンセットとの搬送方向の距離が最も小さい第2パターンセットである。そして、第1パターンセットの1つの直線パターンと、当該第1パターンセットに対応する第2パターンセットの同色の直線パターンとが1つのペアを構成する。したがって、
図9では、計6つのペアが存在する。
図9のdY11_LaRa、dY21_LaRa、dY31_LaRa、dY12_LaRa、dY22_LaRa及びdY32_LaRaは、それぞれ、各ペアの2つの直線パターンの副走査方向における形成位置の距離である。
【0039】
図10(A)は、
図9の直線パターンYa110Lと直線パターンYa110Rのペアを示している。
図10(B)及び
図10(C)は、直線パターンYa110Lが光学センサ30Lの検出領域を通過した際の検出信号S1a及び検出信号S2aを示している。なお、直線パターンYa110Rが光学センサ30Rの検出領域を通過した際の検出信号S1a及び検出信号S2aも同様である。
図10(A)に示す様に、直線パターンYa110Lに接する位置にインプリント抜け62が生じていると、インプリント抜け62の影響により検出信号S1aは、破線62s1に様に変化し、検出信号S2aは、破線62s2の様に変化する。したがって、第一実施形態で説明したのと同様に、検出される直線パターンYa110Lの形成位置が実際の形成位置からズレ、よって、直線パターンYa110Lと直線パターンYa110Rとの距離dY11_LaRaにも誤差が生じる。なお、直線パターンに隣接してキズがある場合も同様である。
【0040】
第一実施形態では、主走査方向における同じセンシング位置に形成された2つの直線パターンをペアとし、ペアの2つの直線パターンの副走査方向における距離と設計値とを比較することで形成位置の誤検出が生じているか否かを判定していた。しかしながら、本実施形態では、ペアを構成する2つの直線パターンを検出する光学センサ30が異なる。光学センサ30L及び光学センサ30Rの個体ばらつきや、画像形成装置700への設置位置・方向等のばらつきにより、各光学センサ30が検出する直線パターンの形成位置に誤差が無い場合でも、求められる距離は設計値から乖離し得る。つまり、本実施形態では、第一実施形態の様に、2つの直線パターンの副走査方向における距離と設計値とを比較することで形成位置の誤検出が生じているか否かを判定することは困難である。このため、本実施形態では、同じ形状のペアついて求めた距離の平均値を基準値とし、各ペアの距離を基準値と比較することで、形成位置の誤検出が生じているか否かを判定する。なお、同じ形状のペアとは、同じ色の複数のペアの内、2つの直線パターンの内の一方の第1直線パターンの形状が同じであり、かつ、他方の第2直線パターンの形状が同じであるペアを意味する。
【0041】
具体的には、
図9に示す様に、Ya110L及びYa110Rのペアと、Ya210L及びYa210Rのペアと、Ya310L及びYa310Rのペアの2つの直線パターンの形状はそれぞれ同じである。したがって、dY11_LaRaと、dY21_LaRaと、dY31_LaRaの平均値を基準値dY1LRaveとして求める。そして、Ya110L及びYa110Rのペアの距離と基準値との差分値である乖離量を、|dY11_LaRa-dY1LRave|として求める。Ya210L及びYa210Rのペアと、Ya310L及びYa310Rのペアについても同様に乖離量を求める。そして、乖離量が所定値よりも大きい場合、形成位置の誤検出が生じていると判定する。
【0042】
また、
図9に示す様に、Ya120L及びYa120Rのペアと、Ya220L及びYa220Rのペアと、Ya320L及びYa320Rのペアの2つの直線パターンの形状は同じである。したがって、dY12_LaRaと、dY22_LaRaと、dY32_LaRaの平均値を基準値dY2LRaveとして求める。そして、Ya120L及びYa120Rのペアの乖離量を、|dY12_LaRa-dY2LRave|として求める。Ya220L及びYa220Rのペアと、Ya320L及びYa320Rのペアについても同様に乖離量を求める。そして、乖離量が所定値よりも大きい場合、形成位置の誤検出が生じていると判定する。
【0043】
図11は、本実施形態による色ずれ補正制御において、色ずれ量を取得する処理のフローチャートである。色ずれ補正制御の開始により、制御部500は、S20において中間転写ベルト20に検査画像を形成し、光学センサ30を用いて検査画像の各直線パターンの形成位置を検出する。制御部500は、S21において、ペアの2つの直線パターン間の距離を求める。制御部500は、S22において、同種ペアの距離の平均値を求めて基準値とし、S23で、各ペアの距離の基準値からの乖離量を求める。なお、同種ペアとは、ペアに含まれる2つの直線パターンの色及び形状が同じペアを意味する。制御部500は、S24において、乖離量が所定値内であるかを判定する。所定値は、制御部500に予め格納される。乖離量に所定値外のものがない場合、制御部500は、S25において、各パターンセットの色ずれ量に基づき全体の色ずれ量を判定する。
【0044】
一方、S24において、乖離量に所定値外のものがある場合、制御部500は、S26において、
図11の処理の繰り返し回数が所定回数Nに達しているか否かを判定する。所定回数Nに達していない場合、制御部500は、S20から処理を繰り返す。一方、所定回数Nに達している場合、制御部500は、S27において、乖離量が所定値外となったペアの直線パターンを含むパターンセットを除外し、残りのパターンセットの色ずれ量に基づき全体の色ずれ量を判定する。例えば、
図9に示す直線パターンYa110LとYa110Rのペアの乖離量が所定値外である場合、パターンセット11L及び11Rは、全体の色ずれ量の判定に使用されない。
【0045】
なお、本実施形態では、1つのペアに含まれる2つの直線パターンの形状は同じであったが、1つのペアに含まれる2つの直線パターンの形状は同じでなくても良い。具体的には、Ya110L及びYa110Rのペアの2つの直線パターンは、
図5に示す様に、共に、右に向かう程、上に向かう形状の直線であった。しかしながら、右に向かう程、上に向かう形状の直線パターンと、右に向かう程、下に向かう形状の直線パターンと、を1つのペアとすることもできる。また、第一実施形態では、パターンセットに含まれるイエローの直線パターンが1本であるため、検査用にイエローの直線パターンを1本だけ追加していた。しかしながら、本実施形態では、検査用の直線パターンを追加する必要はない。
【0046】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態及び第二実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、V字型パターンを構成する同色の2つの直線パターンをペアとし、ペア内の2つの直線パターン間の形成位置の副走査方向における距離に基づき形成位置の誤検出が生じているか否かを判定する。
【0047】
上述した様に、中間転写ベルト20におけるインプリント抜け又はキズは、中間転写ベルト20からの正反射光に影響を及ぼすため、センシング位置Pos_aからの正反射光を受光する受光素子32の検出波形に異常を生じさせる。一方、中間転写ベルト20におけるインプリント抜け又はキズは、センシング位置Pos_bからの錯乱反射光を受光する受光素子33の検出波形にはそれ程影響を与えない。このため、本実施形態では、V字型パターンを構成する同色の2つの直線パターン間の副走査方向における距離に基づき形成位置の誤検出が生じているか否かを判定する。同色の直線パターン間には色ずれが存在しないため、V字型パターンを構成する同色の2つの直線パターンの中間転写ベルト20の回転周期ムラによる形成位置のズレは小さい。但し、第二実施形態と同様に、2つの異なる受光素子32及び受光素子33により形成位置の距離を求めるため、設計値と比較するのではなく、複数の距離の平均値に対する乖離量で形成位置の誤検出が生じているか否かを判定する。
【0048】
図12は、
図4に示す検査画像からイエローの直線パターンのみで構成されるV字型パターンを抜き出して表示したものである。
図12には、V字型パターンそれぞれについて、一方の直線パターンと他方の直線パターンとの副走査方向における距離を"d"で始まる記号で表している。
【0049】
図13(A)は、直線パターンYa110Lと直線パターンYb110Lで構成されるV字型パターンを示している。
図13(B)及び
図13(D)は、直線パターンYa110Lが光学センサ30Lの検出領域を通過した際の受光素子32の検出信号S1a及び検出信号S2aを示している。同様に、
図13(C)及び
図13(E)は、直線パターンYb110Lが光学センサ30Lの検出領域を通過した際の受光素子33の検出信号S1b及び検出信号S2bを示している。なお、直線パターンYb110Lが光学センサ30Lの検出領域にある間、受光素子33が受光する散乱反射光は増加する。制御部500は、直線パターンYa110Lが光学センサ30Lの検出領域を通過した際の受光素子32からの検出信号S2aの2つのエッジの中間を直線パターンYa110Lの形成位置と判定する。同様に、制御部500は、直線パターンYb110Lが光学センサ30Lの検出領域を通過した際の受光素子33からの検出信号S2bの2つのエッジの中間を直線パターンYb110Lの形成位置と判定する。
図13(A)に示す様に、直線パターンYa111Lに接する位置にインプリント抜け63が生じていると、インプリント抜け63の影響により受光素子32の検出信号S1aは、破線63s1の様に変化し、検出信号S2aは、破線63s2の様に変化する。したがって、第一実施形態で説明したのと同様に、検出する直線パターンYa110Lの形成位置が実際の形成位置からズレ、よって、直線パターンYa110Lと直線パターンYb110Lの距離dY11_LaLbにも誤差が生じる。なお、直線パターンに隣接してキズがある場合も同様である。
【0050】
上述した様に、本実施形態でも、第二実施形態と同様に、同種ペアそれぞれの距離の平均値を基準値とし、基準値に対する乖離量を求める。なお、本実施形態において、1つのペアとは、1つのV字型パターンを構成する同じ色の2つの直線パターンである。また、同種ペアは、同じ光学センサ30で検出され、かつ、V字の向きが同じとなる同じ色のペアである。例えば、光学センサ30Lで検出する、直線パターンYa110Lを含むV字型パターンと、直線パターンYa210Lを含むV字型パターンと、直線パターンYa310Lを含むV字型パターンは、同種ペアである。同様に、光学センサ30Lで検出する、直線パターンYa120Lを含むV字型パターンと、直線パターンYa220Lを含むV字型パターンと、直線パターンYa320Lを含むV字型パターンは、同種ペアである。直線パターンYa110Lを含むV字型パターンと、直線パターンYa120Lを含むV字型パターンは、V字の向きが異なるため、同種ペアではない。
【0051】
図12に示す距離で述べると、光学センサ30Lが検出するV字型パターンの距離の1つの基準値dY1LLaveは、dY11_LaLbと、dY21_LaLbと、dY31_LaLbとの平均値である。また、光学センサ30Lが検出するV字型パターンの距離の他の1つの基準値dY2LLaveは、dY12_LaLbと、dY22_LaLbと、dY32_LaLbとの平均値である。さらに、光学センサ30Rが検出するV字型パターンの距離の1つの基準値dY1RRaveは、dY11_RaRbと、dY21_RaRbと、dY31_RaRbとの平均値である。さらに、光学センサ30Rが検出するV字型パターンの距離の他の1つの基準値dY2RRaveは、dY12_RaRbと、dY22_RaRbと、dY32_RaRbとの平均値である。したがって、例えば、直線パターンYa110Lと直線パターンYb110Lとで構成されるV字型パターンの乖離量は、基準値dY1LLaveと、dY11_LaLbとの差分である。
【0052】
本実施形態による色ずれ量を取得する処理のフローチャートは、第二実施形態と基本的には同様である。但し、
図11のペアの2つの直線パターンは、V字型パターンを構成する同色の2つの直線パターンとなる。
【0053】
なお、本実施形態でも、第一実施形態の様に、検査用の直線パターンを追加する必要はない。
【0054】
<その他>
なお、上記各実施形態では、形成位置の誤検出が生じているパターンセットを除外して色ずれ量を取得していた。しかしながら、形成位置の誤検出が生じると、色ずれ量の取得シーケンスの全体を無効とし、全体の色ずれ量を取得することなく処理を終了する構成とすることもできる。なお、この場合には、中間転写ベルト20の異常をユーザに通知して交換を促す構成とし得る。さらに、上記各実施形態では、形成位置の誤検出が生じた場合、形成位置の誤検出が検出されたペアの直線パターンの色に拘わらず、誤検出が検出されたペアを含むパターンセットの全体を除外して色ずれ量を取得していた。しかしながら、形成位置の誤検出が生じたペアの直線パターンの色についての色ずれ量を除外し、当該ペアを含むパターンセットの他の色の色ずれ量を除外することなく全体の色ずれ量を取得する構成とし得る。さらに、
図8及び
図11の処理における繰り返し回数Nは0であっても良い。つまり、形成位置の誤検出を検出すると、直ちに、S15やS27の処理を実行する構成とし得る。
【0055】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0056】
本開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
像担持体と、
複数の色のトナーを使用して前記像担持体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段が前記像担持体に形成した検査画像を検出する検出手段と、
前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき色ずれ量を取得する取得手段と、
を備え、
前記検査画像は、前記像担持体の搬送方向の異なる位置に形成された同じ色の第1パターン及び第2パターンを含み、
前記取得手段は、前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき前記第1パターンと前記第2パターンとの前記搬送方向における距離を取得し、前記距離が所定範囲内ではない場合、前記像担持体の異常を通知する、或いは、前記距離が前記所定範囲内ではない前記第1パターン及び前記第2パターンの前記検出手段による検出結果を前記色ずれ量の取得に使用しない、画像形成装置。
(構成2)
前記検査画像は、前記搬送方向に沿って前記像担持体に順に形成される複数のパターンセットを含み、
前記複数のパターンセットそれぞれは、前記第1パターン及び前記第2パターンのペアを含み、
前記取得手段は、前記複数のパターンセットそれぞれの前記ペアについて、前記距離が前記所定範囲内であるか否かを判定する、構成1に記載の画像形成装置。
(構成3)
前記複数のパターンセットそれぞれは、前記複数の色それぞれについて、前記ペアを含み、
前記取得手段は、前記複数のパターンセットそれぞれの前記複数の色それぞれの前記ペアについて、前記距離が前記所定範囲内であるか否かを判定し、前記距離が前記所定範囲内ではないペアを含むパターンセットの前記検出手段による検出結果を、前記色ずれ量の取得に使用しない、構成2に記載の画像形成装置。
(構成4)
前記検出手段は、前記像担持体に向けて光を射出する発光手段と、
前記発光手段が射出し、前記搬送方向とは直交する幅方向における前記像担持体の所定位置で正反射した反射光を受光する様に構成された受光素子と、
を備え、
前記第1パターン及び前記第2パターンは、前記像担持体の前記所定位置に形成される、構成1から3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成5)
前記第1パターン及び前記第2パターンは、前記搬送方向及び前記搬送方向とは直交する幅方向それぞれとは異なる方向の直線パターンである、構成1から4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成6)
像担持体と、
複数の色のトナーを使用して前記像担持体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段が前記像担持体に形成した検査画像を検出する検出手段と、
前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき色ずれ量を取得する取得手段と、
を備え、
前記検査画像は、複数のペアを含み、
前記複数のペアのそれぞれは、前記像担持体の搬送方向とは直交する幅方向において異なる位置に形成された同じ色の第1パターン及び第2パターンを含み、
前記取得手段は、前記検出手段による前記検査画像の検出結果に基づき、前記複数のペアそれぞれについて、前記第1パターンと前記第2パターンの前記搬送方向における距離を取得し、前記複数のペアそれぞれについて取得した前記距離に基づき基準値を取得し、前記複数のペアそれぞれについて、前記距離と前記基準値との差分値を取得し、前記複数のペアそれぞれについて取得した前記差分値に所定値より大きいものがある場合、前記像担持体の異常を通知する、或いは、前記複数のペアの内の前記差分値が前記所定値より大きいペアの前記第1パターン及び前記第2パターンの前記検出手段による検出結果を前記色ずれ量の取得に使用しない、画像形成装置。
(構成7)
前記複数のペアそれぞれの前記第1パターンの形状は同じであり、前記複数のペアそれぞれの前記第2パターンの形状は同じである、構成6に記載の画像形成装置。
(構成8)
前記検査画像は、前記搬送方向に沿って前記像担持体に順に形成される複数の第1パターンセットと、前記幅方向において前記複数の第1パターンセットとは異なる位置において、前記搬送方向に沿って前記像担持体に順に形成される複数の第2パターンセットと、を含み、
前記検出手段は、前記複数の第1パターンセットを検出する第1検出手段と、前記複数の第2パターンセットを検出する第2検出手段と、を含み、
ペアの前記第1パターンは、前記複数の第1パターンセットの内の1つの第1パターンセットに含まれ、当該ペアの前記第2パターンは、前記複数の第2パターンセットの内の当該1つの第1パターンセットに対応する第2パターンセットに含まれる、構成6又は7に記載の画像形成装置。
(構成9)
前記第1パターンセットに対応する前記第2パターンセットは、前記複数の第2パターンセットの内、当該第1パターンセットとの前記搬送方向における距離が最も小さい前記第2パターンセットである、構成8に記載の画像形成装置。
(構成10)
前記検査画像は、前記複数の色それぞれについて、前記複数のペアを含み、
前記取得手段は、前記複数の色それぞれについて前記基準値を取得して前記差分値が前記所定値より大きいペアが有るかを判定し、前記差分値が前記所定値より大きい前記ペアの前記第1パターン及び前記第2パターンを含む前記第1パターンセット及び前記第2パターンセットの前記検出手段による検出結果を、前記色ずれ量の取得に使用しない、構成8又は9に記載の画像形成装置。
(構成11)
前記第1検出手段は、前記像担持体に向けて光を射出する第1発光手段と、前記第1発光手段が射出し、前記幅方向における前記像担持体の第1所定位置で正反射した反射光を受光する様に構成された第1受光素子と、を備え、
前記第2検出手段は、前記像担持体に向けて光を射出する第2発光手段と、前記第2発光手段が射出し、前記幅方向における前記像担持体の第2所定位置で正反射した反射光を受光する様に構成された第2受光素子と、を備え、
前記ペアの前記第1パターンは、前記像担持体の前記第1所定位置に形成され、前記ペアの前記第2パターンは、前記像担持体の前記第2所定位置に形成される、構成8から10のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成12)
前記第1パターン及び前記第2パターンは、前記搬送方向及び前記幅方向それぞれとは異なる方向の直線パターンである、構成6から11のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成13)
前記検査画像は、前記搬送方向に沿って前記像担持体に順に形成される複数のパターンセットを含み、
前記複数のパターンセットそれぞれは前記ペアを含み、
前記ペアの前記第1パターン及び前記第2パターンは、V字型のパターンを構成する、構成6又は7に記載の画像形成装置。
(構成14)
前記複数のパターンセットそれぞれは、前記複数の色それぞれについて、前記ペアを含み、
前記取得手段は、前記複数の色それぞれについて前記基準値を取得して前記差分値が前記所定値より大きいペアが有るかを判定し、前記差分値が前記所定値より大きい前記ペアを含むパターンセットの前記検出手段による検出結果を、前記色ずれ量の取得に使用しない、構成13に記載の画像形成装置。
(構成15)
前記検出手段は、前記像担持体に向けて光を射出する発光手段と、前記発光手段が射出し、前記幅方向における前記像担持体の第1所定位置で正反射した反射光を受光する様に構成された第1受光素子と、前記発光手段が射出し、前記幅方向における前記像担持体の第2所定位置で散乱反射した反射光を受光する様に構成された第2受光素子と、を備え、
前記ペアの前記第1パターンは、前記像担持体の前記第1所定位置に形成され、前記ペアの前記第2パターンは、前記像担持体の前記第2所定位置に形成される、構成13又は14に記載の画像形成装置。
【0057】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0058】
20:中間転写ベルト、705Y、705M、705C、705K:画像形成部、30:光学センサ、500:制御部