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特許7549626新規な抗SIRPa抗体およびそれらの治療適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】新規な抗SIRPa抗体およびそれらの治療適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240904BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240904BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240904BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240904BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20240904BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240904BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240904BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P25/00
A61P7/00
A61P17/02
A61P11/00
A61P9/10
A61P3/04
A61P3/10
A61P37/06
G01N33/566
G01N33/574 A
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12Q1/06
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022112873
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2018550322の分割
【原出願日】2017-04-14
(65)【公開番号】P2022169504
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】62/322,707
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17305182.2
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518135870
【氏名又は名称】オーエスイー イムノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ポワリエ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】マリー,カロライン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンノーヴ,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ゴティエ,ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】セペニール,ヴィルジニー
(72)【発明者】
【氏名】ペンガム,サブリナ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525940(JP,A)
【文献】国際公開第2015/138600(WO,A2)
【文献】特開2004-357530(JP,A)
【文献】特表2019-520034(JP,A)
【文献】J. Biol. Chem., 2007, Vol. 282, No. 19, pp. 14567-14575
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 21/08
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
A61K 39/395
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 29/00
A61P 37/02
A61P 25/00
A61P 7/00
A61P 17/02
A61P 11/00
A61P 9/10
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 37/06
G01N 33/566
G01N 33/574
C12Q 1/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖可変ドメイン、および
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む、抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、
a)-HCDR1が、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
-HCDR2が、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
-HCDR3が、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
-LCDR1が、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
-LCDR2が、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、かつ
-LCDR3が、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、
抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
ヒトSIRPgに特異的に結合しない、請求項1に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
-配列番号24、配列番号25、および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、ならびに
-配列番号31、配列番号32、および配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項1または2に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
-配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、および
-配列番号25、および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン
を含む、請求項1または2に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
-配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
-配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
-配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
-配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
-配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
-配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
-配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
-配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
-配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
-配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
ヒト化モノクローナル抗体あるいはその抗原結合性フラグメントである、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
抗体軽鎖定常ドメインが、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
軽鎖定常ドメインが、配列番号35の配列からなる、請求項7に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項9】
抗体重鎖定常ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4重鎖定常ドメインに由来する、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項10】
前記抗体重鎖定常ドメインが、配列番号34の配列からなる、請求項9に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項11】
-配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
-配列番号44に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖
または、
-配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
-配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖
または、
-配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
-配列番号44に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖
または、
-配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
-配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖
を含む、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項12】
前記抗体あるいはその抗原結合性フラグメントがSIRPaアンタゴニストであり、ヒトSIRPaのヒトCD47への結合を阻害する、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項13】
ヒトT細胞、および/またはヒトCD3+T細胞に特異的に結合しない、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項14】
ヒトT細胞の増殖を阻害しない、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項15】
ヒトCD47のヒトSIRPgへの結合を阻害しない、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項16】
がん(特に炎症性がん、ならびに浸潤性骨髄系細胞、特に、浸潤MDSCおよび/またはTAM細胞を有するがん)、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(特にシュードモナスおよびCMV)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、ならびに移植片機能不全からなる群から選択される疾患に罹患しているヒト対象を治療するための、またはワクチン接種において使用するための医薬組成物であって、
SIRPαのアンタゴニストであり、ヒトSIRPαのヒトCD47への結合を阻害し、ヒトSIRPgには特異的に結合しない、治療有効量の抗ヒトSIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬品として使用するための、
請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメント。
【請求項18】
がん(特に、炎症性がん、ならびに浸潤骨髄系細胞、特に、浸潤MDSCおよび/またはTAM細胞を有するがん)、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック(sceptic shock)、慢性感染性疾患(特に、シュードモナスおよびCMV)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、ならびに移植片機能不全からなる群から選択される疾患の予防または治療において使用するため、またはワクチン接種において使用するための、
請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメント。
【請求項19】
前記抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントが、SIRPa陽性腫瘍を呈する患者に投与される、請求項17または18に記載の使用のための請求項1~15のいずれか一項記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは請求項16記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項21】
-請求項1~15のうちいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメント、ならびに
-少なくとも1つの第2の治療剤であって、化学療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤、細胞療法剤、抗生物質およびプロバイオティクスからなる群から選択される、第2の治療剤
を含む、組合せ製品。
【請求項22】
前記少なくとも1つの抗ヒトSIRPα抗体またはその抗原結合フラグメントおよび前記少なくとも1つの第2の治療剤が、医薬品として、同時、別個または逐次的に使用するためのものである、請求項21に記載の組合せ製品。
【請求項23】
前記第2の治療剤が、獲得免疫細胞のチェックポイント遮断剤もしくは活性化剤、抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4、抗CD137、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、および抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L、およびB細胞受容体アゴニストからなる群から選択される、請求項21または22に記載の組合せ製品。
【請求項24】
請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする、単離された核酸分子。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸分子および/または請求項25記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項27】
対象におけるSIRPa陽性細胞を、前記対象から事前に取得した生物学的サンプルから判定するためのインビトロでの方法であって、
i)請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントを使用して、前記対象から事前に取得した生物学的サンプルにおけるSIRPaの発現および/または発現レベルをインビトロで判定すること
を含む、方法。
【請求項28】
インビトロにおけるサンプル中のSIRPaの検出の方法であって、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントが、対象から事前に取得されたサンプルにおけるSIRPa+細胞の検出のために使用される、方法。
【請求項29】
SIRPaの発現の定量化が行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
診断試験または個別化された医薬またはコンパニオン診断試験における使用に好適な医薬品の製造における、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントの使用。
【請求項31】
請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントでの治療に対するがん対象の応答を予測する、インビトロまたはエキソビボでの方法であって、
- 請求項1~15のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントを用いて、対象から事前に取得された腫瘍サンプルにおけるSIRPaの発現レベルを判定すること、および
- SIRPaの発現レベルを、非応答対象集団におけるSIRPaの発現レベルを表す値と比較すること
を含み、
前記対象の前記腫瘍サンプルにおけるSIRPaのより高い発現レベルが、前記治療に応答すると予想される患者を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、SIRPgとCD47との間の相互作用に影響を及ぼすことなく、SIRPaとCD47との間の相互作用を特異的に減少させることができる、新規な抗SIRPa抗体を提供する。
【背景技術】
【0002】
獲得免疫の免疫チェックポイントを標的とすることは、多数のがんと闘うのに多大な治療効果を有することが示されているが、これは、限られた患者集団におけるものである。骨髄系細胞(マクロファージ、樹状細胞、MDSC、PMN)の免疫チェックポイントは、これらの細胞が、多くの固形腫瘍において最も豊富な免疫細胞型を代表し、芳しくない予後と関連することが多いにもかかわらず、研究が進んでいないままである。
【0003】
シグナル調節タンパク質アルファすなわちSIRPa(SIRPα、CD172a、またはSHPS-1とも表記される)は、単球、組織マクロファージのほとんどの下位集団、顆粒球、リンパ系組織における樹状細胞のサブセット、一部の骨髄前駆細胞、およびニューロンでは多様なレベルで発現され、脳のシナプスが豊富な領域、例えば、小脳および海馬の顆粒層においては顕著に高く発現する。SIRPaは、緊密に関連するSIRPタンパク質のSIRP対合受容体ファミリーのプロトタイプメンバーである。ヒトSIRPaをコードする遺伝子は、多形性遺伝子であり、いくつかのバリアントが、ヒト集団において説明されている。最も一般的なタンパク質バリアントは、SIRPa v1およびv2(受託番号NP_542970(P78324)およびCAA71403)である。ヒトSIRPにおける多形性は、表面に露出されるアミノ酸の変化をもたらすが、これは、CD47への結合には影響を及ぼさない。
【0004】
骨髄系細胞によって発現されるSIRPaと、偏在的受容体CD47との相互作用は、骨髄機能の調節に関与する、先天的な応答の重要な免疫チェックポイントである。SIRPaとCD47との相互作用は、大部分が説明されており、宿主細胞のファゴサイトーシスを阻害する下方調節シグナルを提供する。CD47は、ほとんどの健常細胞によって低いレベルで広く発現されるが、CD47はまた、一部のがん細胞において過剰発現される。したがって、CD47は、「食べてはいけない(don’t-eat-me)」シグナルとしての機能を果たす。CD47およびSIRPaはいずれも、多数の他の相互作用にも関与する。CD47-SIRPa相互作用の最も特徴的な生理学的機能のうちの1つは、造血細胞、特に、赤血球および血小板の恒常性におけるその役割である。CD47は、「食べてはいけない」シグナルの機能を果たし、そのため、マクロファージによる宿主細胞のファゴサイトーシスの重要な決定因子であり、がん細胞クリアランスにおけるCD47-SIRPa相互作用の寄与の可能性が、近年、熱心に調査されている。腫瘍におけるCD47受容体の豊富度が、患者の全生存期間と逆相関し、いくつかのがん種については良くない予後の要因となることが、示された。
【0005】
SIRPa/CD47経路は、現在では、マクロファージのファゴサイトーシスを増強するために、様々な医薬開発に供されている。実際には、感染細胞と同様に、がん細胞は、不明なタンパク質または異常なレベルの正常なタンパク質など、異常なカーゴ保有し、さらに、これらの細胞は、同時に免疫調節分子を過剰発現するによって、先天免疫制御機序を破壊することが多い。1つのそのような機序は、正常な細胞によって「自己」発現されるタンパク質であるCD47が関与することが明らかとなってきている。CD47は、SIRPaと相互作用し、「食べてはいけない」シグナルのファゴサイトーシス性マクロファージへの伝達をもたらし、これにより、標的細胞が影響を受けなくなる。がん細胞によるCD47の過剰発現により、がん細胞が治療用抗体でコーティングされた場合ですら、がん細胞はマクロファージに対して耐性となり、この過剰発現が、多数の固形がんおよび造血がんにおける芳しくない臨床予後と相関している。実験モデル、特に、免疫欠損マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて、CD47を標的とする薬剤によるCD47/SIRPa経路の遮断は、マクロファージよる腫瘍排除の促進ならびにがん細胞の播種および転移形成の減少に非常に有効であった。CD47を標的とする薬剤によるCD47/SIRPa経路の遮断は、マクロファージによる抗体依存性ファゴサイトーシスを増強させることによって、枯渇を行う治療用抗がん抗体、例えば、トラスツズマブ(抗Her2)、セツキシマブ(抗EGFR)、リツキシマブ(抗CD20)、およびアレムツズマブ(抗CD52)と協調することが説明されている。
【0006】
しかしながら、最近では、CD47を標的とする薬剤(抗CD47またはSIRPa-Fc)が、CD47の生理学的役割と関連する血液毒性(貧血または血小板減少症)を呈することが、示されている。
【0007】
さらに、CD47はまた、ヒトT細胞の表面に存在し、ヒト骨髄系細胞には存在しない、SIRPファミリーの別のメンバーであるSIRP-ガンマ(SIRPg、SIRPγ、CD172g、またはSIRPベータ2とも表記される)とも結合する。SIRPgは、およそ3500万年前の旧世界霊長類におけるSIRPb遺伝子の複製の結果生じたものであり、骨髄系細胞におけるSIRPaの発現とは対照的に、Tリンパ球に制限された様式で発現される。SIRPgは、マウスには存在しない。SIRPg-CD47の相互作用が、細胞と細胞との接着を媒介し、スーパー抗原依存性T細胞媒介性増殖を増強し、T細胞活性化を共刺激することが、示されている(Piccio et al,Blood,105:6,2005年)。
【0008】
SIRPaとSIRPgとの間の配列の高い類似性、特に、CD47と相互作用する領域における類似性に起因して、先行技術において開示されている抗SIRPa抗体は、SIRPgにも結合し、ヒトにおいて望ましくない作用、例えば、T細胞の増殖の阻害および免疫応答の減少を有する。抗CD47または非選択的な抗SIRPa抗体のそのような副作用は、公知の抗体の試験が、SIRPg遺伝子を保有しないマウスモデルにおいて行われており、したがって、そのような副作用が存在しなかったため、予測することができなかった。
【0009】
したがって、T細胞免疫応答に対して有害な影響を有することなく先天免疫細胞を標的とする安全な免疫療法、とりわけ、がんに対するもののための、新規かつ改善された薬剤、特に、抗体に対して、当該技術分野において著しい必要性が存在している。特に、SIRPg-CD47相互作用に影響を及ぼすことなく、SIRPa-CD47相互作用を阻害することに対する必要性が、存在する。本発明者らは、本明細書において開示される本発明により、大きな前進を遂げた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2008/068637号2
【文献】欧州特許第1270725号明細書
【文献】米国特許第8536307号明細書
【文献】国際公開第2013/056352号2
【非特許文献】
【0011】
【文献】Piccio et al, Blood, 2005, Vol.105:6
【文献】Krehenbrink et al, J.mol.Biol., 2008, Vol.383:5
【文献】Skerra, Febs J., 2008, Vol.275:11
【文献】Schelhuber and Skerra, Biophys. Chem.,2002, Vol.96:2-3
【文献】Timmerman et al., J Mol Recognit., 2007, Vol.20, p.283-299
【文献】Gaseitsiwe et al., Clin. Vaccine Immunol., 2010年1月, Vol.17, p.168-175
【文献】Van de Water et al., Clinical Immunology and Immunopathology, 1997, Vol.85
【文献】Kishore et al., Surfactant poteins SP-A and SP-D: structure, function and receptors, Mol Immunol., 2006, Vol.43, p.1293-1315
【文献】Salfeld, nature biotechnology, 2007, Vol.25, No.12
【文献】Irani et al., Molecular Immunology, 2015, Vol.67, issue 2, part A
【文献】Antonia et al., Immuno-oncology combinations: a review of clinical experience and future prospects.Clin.Cancer Res.Off.J.Am.Assoc.Cancer Res.20,6258-6268,2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述の問題のすべてまたは一部を解決することを可能にする新規な薬剤、特に、抗体を提供することによって、この必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書において、本発明者らは、SIRPa-CD47相互作用をアンタゴナイズするが、SIRPgには特異的に結合せず、したがって、SIRPg-CD47相互作用には影響を及ぼさない、新規な抗SIRPa抗体、特に、ヒト化抗体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗体は、特に、以下の利点を有する:
- 本抗体は、SIRPaの限定的な発現に起因して血液毒性を回避する(ヒト赤血球(RBC)および血小板には結合しない)、
- 本抗体は、単剤療法において、腫瘍成長を低減させ、腫瘍微小環境を修飾する、
- 本抗体は、チェックポイント阻害剤および共刺激剤との相乗作用を呈する、
- 本抗体は、持続的かつ強力な抗腫瘍メモリーTリンパ球応答を誘導する、
- 本抗体は、SIRPa-CD47相互作用の選択的アンタゴニストであり、CD47/SIRPg相互作用を妨害しない、ヒトT細胞免疫応答を可能にする。予想外にも、本発明者らは、SIRPa配列とSIRPg配列との間の高い配列同一性にもかかわらず、そのような選択的抗体を提供する。
【0015】
これらの特徴に基づいて選択されるこれらの新規な抗体は、多数の治療適用、特に、炎症性がんおよび浸潤骨髄系細胞(特に、浸潤MDSCおよび/またはTAM細胞)を有するがんを含むがんの治療に、特に有望である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】ELISAアッセイによる抗SIRPa抗体の結合分析(ヒトSIRPa-Hisコーティングおよび抗ヒトカッパ検出)を示す図である。キメラ(◆)、HALA(□)、HFLA(*)、HFLB(+)、HEFLA(▲)、HEFLB(■)、SIRP29(△)、Kwar23(○)の固定化したSIRPa-HisのELISAによる評価。ロバ抗ヒト抗体を用いて顕色させ、TMB基質を使用して450nmでの比色分析によって明示した。ED50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を達成する、示される抗体の濃度である。
図1B】ELISAアッセイによる抗SIRPa抗体の結合分析(ヒトSIRPa-Hisコーティングおよび抗ヒトカッパ検出)を示す図である。HCLA(●)、HCLB(×)、HELA(◇)、HELB(-)の固定化したSIRPa-HisのELISAによる評価。ロバ抗ヒト抗体を用いて顕色させ、TMB基質を使用して450nmでの比色分析によって明示した。ED50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を達成する、示される抗体の濃度である。
図1C】ELISAアッセイによる抗SIRPa抗体の結合分析(ヒトSIRPa-Hisコーティングおよび抗ヒトカッパ検出)を示す図である。HALB(-)、HBLA(_)、HBLB(■)の固定化したSIRPa-HisのELISAによる評価。ロバ抗ヒト抗体を用いて顕色させ、TMB基質を使用して450nmでの比色分析によって明示した。ED50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を達成する、示される抗体の濃度である。
図1D】ELISAアッセイによる抗SIRPa抗体の結合分析(ヒトSIRPa-Hisコーティングおよび抗ヒトカッパ検出)を示す図である。m18D5クローン(■)(n=4)、SE5A5市販クローン(▲)(n=7)、6G10クローン(▽)(n=3)、および12D7クローン(□)(n=4)の結合を示す。
図2】ヒトSIRPa組換えタンパク質における抗SIRP抗体のBiacoreによる親和性分析を示す図である。SIRPa-His組換えタンパク質を、5μg/ml(500RU)でCM5チップに固定化し、示される抗体を、異なる濃度で添加した。値を、3分間の結合期間(ka)、続いて10分間の解離期間(kd)後に測定し、親和性定数(KD)を判定した。
図3A】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。キメラ(◆)、HALA(□)、HFLA(*)、HFLB(+)、HEFLA(▲)、HEFLB(■)、SIRP29(△)、Kwar23(○)のヒト単球v1/v1(ヒトFc受容体結合阻害性抗体で事前染色した)に対する細胞蛍光測定法による評価。PE標識したマウス抗ヒトFcモノクローナル抗体(mAb)を用いて、CantoIIサイトメーターで顕色させた。値は、染色された単球の割合に対応する。ED50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を達成する、示される抗体の濃度である。染色された単球v1/v1の割合に対応する。
図3B】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。キメラ(◆)、HALA(□)、HFLA(*)、HFLB(+)、HEFLA(▲)、HEFLB(■)、SIRP29(△)、Kwar23(○)のヒト単球v1/v1(ヒトFc受容体結合阻害性抗体で事前染色した)に対する細胞蛍光測定法による評価。PE標識したマウス抗ヒトFcモノクローナル抗体(mAb)を用いて、CantoIIサイトメーターで顕色させた。値は、染色された単球の割合に対応する。ED50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を達成する、示される抗体の濃度である。単球v1/v1の蛍光強度の平均(MFI)に対応する。
図3C】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。フローサイトメトリー(FACS)によるヒト単球におけるSIRPa抗体の結合研究を示す図である:様々な抗SIRPa抗体を、試験した:m18D5(■)(n=1)、SE7C2(▲)(n=2)、12D7(□)(n=2)、6G10(◆)(n=4)。用量応答に対する様々な抗体の平均蛍光強度(MFI)を表す。可能であった場合には、統計学的分析を行った。
図3D】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。フローサイトメトリー(FACS)によるヒト単球におけるSIRPa抗体の結合研究を示す図である:様々な抗SIRPa抗体を、試験した:m18D5(■)(n=1)、SE7C2(▲)(n=2)、12D7(□)(n=2)、6G10(◆)(n=4)。抗体用量応答に対する染色された単球の割合を表す。可能であった場合には、統計学的分析を行った。
図3E】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。抗hSIRPa抗体による集団におけるSIRPaバリアントの結合を示す図である:32人の志願者において、様々な抗hSIRPa抗体がSIRPaバリアントに結合する能力を、PE抗マウスIgGを用いてFACSによって測定した。すべてのクローンを、10μg/mlで試験した:m18D5(■)、12D7(▼)、6G10(◆)および市販の抗体SE5A5(□)、SE7C2(△)。ホモ接合体バリアント1志願者を表す(n=16)。
図3F】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。抗hSIRPa抗体による集団におけるSIRPaバリアントの結合を示す図である:32人の志願者において、様々な抗hSIRPa抗体がSIRPaバリアントに結合する能力を、PE抗マウスIgGを用いてFACSによって測定した。すべてのクローンを、10μg/mlで試験した:m18D5(■)、12D7(▼)、6G10(◆)および市販の抗体SE5A5(□)、SE7C2(△)。ホモ接合体バリアント2志願者を表す(n=8)。
図3G】ヒト単球(SIRPaホモ接合体バリアント1(v1/v1))における抗SIRPa抗体の結合分析を示す図である。抗hSIRPa抗体による集団におけるSIRPaバリアントの結合を示す図である:32人の志願者において、様々な抗hSIRPa抗体がSIRPaバリアントに結合する能力を、PE抗マウスIgGを用いてFACSによって測定した。すべてのクローンを、10μg/mlで試験した:m18D5(■)、12D7(▼)、6G10(◆)および市販の抗体SE5A5(□)、SE7C2(△)。ヘテロ接合体V1/V2志願者を表す(n=8)。
図4A】SIRPaに対する抗SIRPa抗体とCD47との競合を示す図である。一定濃度のビオチン化CD47-Fc(6μg/ml)とともにインキュベートした異なる濃度のキメラ(◆)、HFLA(*)、HFLB(+)、HEFLA(▲)、HEFLB(■)、SIRP29(△)、Kwar23(○)の固定化したSIRPa-HisのELISAによる評価。ストレプトアビジンペルオキシダーゼを用いて顕色させ、CD47分子を検出し、TMB基質を使用して450nmでの比色分析によって明示した。第2の実験の結果は、IC50値とともに示す。IC50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を阻害する、示される抗体の濃度である。
図4B】SIRPaに対する抗SIRPa抗体とCD47との競合を示す図である。ELISAによるSIRPa-CD47相互作用に対する抗SIRPa抗体のアンタゴニスト活性研究:様々な抗SIRPa抗体を、用量応答に対して試験した:m18D5クローン(■)(n=1)、市販の抗体SE5A5(▲)(n=2)、およびm12D7(□)(n=2)。この図は、抗hSIRPa抗体の用量応答の間にELISAによって測定されたCD47陽性SIRPa-CD47相互作用の割合を表す。
図5A】ヒト単球における抗SIRPa抗体とCD47との競合を示す図である。一定濃度のビオチン化CD47-Fc(10μg/ml)とともにインキュベートした異なる濃度のキメラ(◆)、HFLA(*)、HFLB(+)、HEFLA(▲)、HEFLB(■)のヒト単球(v1/v1)のサイトメトリーによる評価。フィコエリトリン-ストレプトアビジンを用いて顕色させ、CD47分子を検出し、CantoIIサイトメーターによって明示した。IC50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を阻害する、示される抗体の濃度である。陽性細胞の割合に対応する。
図5B】ヒト単球における抗SIRPa抗体とCD47との競合を示す図である。一定濃度のビオチン化CD47-Fc(10μg/ml)とともにインキュベートした異なる濃度のキメラ(◆)、HFLA(*)、HFLB(+)、HEFLA(▲)、HEFLB(■)のヒト単球(v1/v1)のサイトメトリーによる評価。フィコエリトリン-ストレプトアビジンを用いて顕色させ、CD47分子を検出し、CantoIIサイトメーターによって明示した。IC50は、このアッセイにおいて、シグナルの50%を阻害する、示される抗体の濃度である。蛍光強度の平均に対応する。
図5C】ヒト単球における抗SIRPa抗体とCD47との競合を示す図である。FACSによるSirpa-CD47相互作用に対する抗SIRPa抗体のアンタゴニスト活性研究:様々な抗SIRPa抗体を、用量応答に対して試験した:m18D5クローン(■)(n=1)、市販の抗体SE7C2(▲)(n=2)、およびm12D7(□)(n=2)。抗hSIRPa抗体との競合後にFACSによって測定されたCD47陽性細胞の割合を表す。
図6A】SP-Dリガンドとともに予備インキュベートしたかまたはそれなしでインキュベートした、ヒトSIRPa組換えタンパク質における抗SIRP抗体のBlitzによる親和性分析を示す図である。SIRPa-His組換えタンパク質を、10μg/mlでNINTAバイオセンサーに固定化し、SP-Dリガンドを、100μg/ml(飽和濃度)で添加した。次いで、抗SIRPa抗体を、20μg/mlで添加し、親和性値を、120秒間の結合期間(ka)、続いて120秒間の解離期間(kd)の後に推測して、親和性定数(KD)を判定した。
図6B】マウス18D5抗体とともに予備インキュベートしたヒトSIRPa組換えタンパク質における抗SIRP抗体のBlitzによる親和性分析を示す図である。SIRPa-His組換えタンパク質を、10μg/mlでNINTAバイオセンサーに固定化し、抗SIRPa抗体を、20μg/ml(飽和濃度)で添加した。次いで、SP-Dリガンドを、100μg/mlで添加し、親和性値を、120秒間の結合期間(ka)、続いて120秒間の解離期間(kd)の後に推測して、親和性定数(KD)を判定した。
図7A】ヒトSIRPb組換えタンパク質における抗SIRP抗体のBlitzによる親和性分析を示す図である。SIRPb-His組換えタンパク質を、NINTAバイオセンサーに固定化し、示される抗体を、20μg/mlで添加した。値を、120秒間の結合期間(ka)、続いて120秒間の解離期間(kd)の後に推測して、親和性定数(KD)を判定した。
図7B】抗SIRP抗体の結合分析を示す図である(ヒトSIRPb-Hisコーティングおよび抗ヒトカッパ検出)。HEFLB(■)、SIRP29(△)、Kwar23(○)、B4B6(◆)、およびIgG4抗体対照(■)の固定化したSIRPb-HisにおけるELISAによる評価。マウス抗体を用いて顕色させたB4B6を除き、ロバ抗ヒト抗体を用いて顕色させ、TMB基質を使用して450nmでの比色分析によって明示した。
図8A】ヒトSIRPg組換えタンパク質における抗SIRP抗体のBlitzによる親和性分析を示す図である。SIRPg-His組換えタンパク質を、NINTAバイオセンサーに固定化し、示される抗体を、10μg/mlで添加した。値を、120秒間の結合期間(ka)、続いて120秒間の解離期間(kd)の後に推測して、親和性定数(KD)を判定した。
図8B】SIRPgにおける抗SIRP抗体のELISAアッセイによる結合分析を示す図である(ヒトSIRPg-Hisコーティングおよび抗ヒトカッパ検出)。HEFLB(■)、SIRP29(△)、Kwar23(○)、LSB2-20(●)、およびIgG4抗体対照(■)の固定化したSIRPg-HisにおけるELISAによる評価。ロバ抗ヒト抗体を用いて顕色させ、TMB基質を使用して450nmでの比色分析によって明示した。
図9】抗SIRP抗体とともに予備インキュベートしたヒトSIRPg組換えタンパク質におけるCD47のBlitzによる親和性分析を示す図である。SIRPg-His組換えタンパク質を、10μg/mlでNINTAバイオセンサーに固定化し、示される抗体を、20μg/ml(飽和濃度)で添加した。次いで、CD47Fcを、100μg/mlで添加し、親和性値を、120秒間の結合期間(ka)、続いて120秒間の解離期間(kd)の後に推測して、親和性定数(KD)を判定した。
図10A】異なるモノクローナル抗体で染色し、二次抗IgG蛍光抗体で顕色させた後の、末梢ヒトCD3+T細胞におけるフローサイトメトリーによって測定した幾何平均蛍光強度を示す図である。
図10B】異なるモノクローナル抗体で染色し、二次抗IgG蛍光抗体で顕色させた後の、赤血球におけるフローサイトメトリーによって測定した幾何平均蛍光強度を示す図である。
図10C】異なるモノクローナル抗体で染色し、二次抗IgG蛍光抗体で顕色させた後の、血小板におけるフローサイトメトリーによって測定した幾何平均蛍光強度を示す図である。
図11】異なるモノクローナル抗体で染色した後の陽性末梢ヒトCD3+T細胞の割合を示す図である。表は、二連の実験における陽性細胞の%の値を示す。
図12A】健常志願者に由来する末梢血単核細胞から単離したヒトT細胞を、抗CD3+抗CD28ビーズで1:1の比で3日間刺激した図である。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図12B】健常志願者に由来する末梢血単核細胞から単離したヒトT細胞を、同種樹状細胞(DC)でT細胞5個:DC1個の比で5日間刺激した図である。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図12C】健常志願者に由来する末梢血単核細胞から単離したヒトT細胞を、抗CD3+抗CD28ビーズで1:1の比で3日間刺激した図である。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図12D】健常志願者に由来する末梢血単核細胞から単離したヒトT細胞を、同種樹状細胞(DC)でT細胞5個:DC1個の比で5日間刺激した図である。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図12E】健常志願者に由来する末梢血単核細胞から単離したヒトT細胞を、異なる濃度のツベルクリン未精製タンパク質誘導体(PPD)で5日間、刺激した図である。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図13】マウスCD8+T細胞を、ナイーブマウスの脾細胞から単離した図である。CD8 T細胞を、抗CD3+抗CD28ビーズで1:1の比で3日間刺激した。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図14】健常志願者の末梢血単核細胞から単離したヒトT細胞を、同種樹状細胞(DC)でT細胞5:DC1の比で5日間刺激した図である。抗体を、0日目に培養物に添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
図15A】マウス肝臓がんの直交異方性モデル(0日目に2.5.10^6個のHepa 1.6細胞を門脈を通じて注射)における、抗4-1-BBモノクローナル抗体(3H3クローン、100μg/注射)の2回の注射(4日目および8日目)または抗PDL-1(10F.9G2クローン、200μg/注射、4週間の間の処置)の注射(週2回)と組み合わせた、あるいはそれらと組み合わせていない抗SIRPa(P84クローン)の4週間にわたる週3回(300μg/注射)の腹腔内(i.p.)投与の抗腫瘍作用を示す図である。マウスは、すべての対照マウスの死亡に必要な時間の3倍生存した場合に、治癒したとみなした。
図15B】腫瘍浸潤細胞を、腫瘍接種の13日後に分析した図である。
図15C】腫瘍浸潤細胞および脾臓細胞を、腫瘍接種の13日後に分析した図である。
図15D】肝臓がんモデルにおいて抗SIRPa+抗4-1BB注射によって事前に治癒したマウスまたは抗4-1BBで処置したSIRPa変異体マウスを、脾臓におけるHepa 1.6細胞の注射(細胞2.5.10^6個/マウス)によって再攻撃した図である。腫瘍の発達を再攻撃マウスと比較するために、ナイーブマウスに、同じ経路で並行して注射した。その後、マウスを未処置のまま放置した。
図15E】肝臓がんモデルにおいて抗SIRPa+抗4-1BBによって事前に治癒したマウスを、脾臓におけるHepa 1.6細胞の注射(細胞2.5.10^6個/マウス)によって再攻撃し、脾臓を、再攻撃の30日後に摘出した図である。脾細胞およびT細胞性脾細胞を、単離した。ナイーブマウスに、ビヒクル、全脾細胞(10.10^6個/マウス)、または脾細胞から精製したT細胞(2.5.10^6個/マウス)を静脈内注射し、すべてに、脾臓におけるHepa1.6細胞の注射(細胞2.5.10^6個/マウス)の注射を受容させた。その後、マウスを未処置のまま放置し、すべての対照マウスの死亡に必要な時間の3倍生存した場合に、治癒したとみなした。
図16】肝臓がんモデルにおいて抗SIRPa+抗PDL1注射によって事前に治癒したマウスを、脾臓におけるHepa 1.6細胞の注射(細胞2.5.10^6個/マウス)によって再攻撃した図である。腫瘍の発達を再攻撃マウスと比較するために、ナイーブマウスに、同じ経路で並行して注射した。その後、マウスを未処置のまま放置した。
図17】マウス乳房癌腫の同所性モデル(0.25.10^6個の4T1細胞を乳腺に注射)における、抗SIRPa(P84クローン)の4週間にわたる週3回(200μg/注射)の腹腔内投与の抗腫瘍作用を示す図である。腫瘍の発達を、腫瘍の直径を測定することによって評価し、次の式に従って計算した:=(0.52*(d))^1.5。マウスは、倫理的ガイドラインに従って、腫瘍の発達がおよそ1000mmとなった場合に、安楽死させた。
図18】マウス乳房癌腫の直交異方性モデル(0.25.10^6個の4T1細胞を乳腺に注射)における、抗SIRPa(P84クローン)または対照モノクローナル抗体で、2週間にわたり週3回(200μg/注射)腹腔内処置したマウスの脾臓、腫瘍、およびリンパ節における免疫細胞の表現型分析を示す図である。免疫細胞分析を、腫瘍接種の2週間後に行った。
図19】抗SIRPa(P84クローン)、抗CD47(MIAP410クローン)、および無関係なアイソタイプ対照を、C57Bl/6マウスにおいて、12mg/kgで、0日目および2日目に腹腔内投与した図である。血液サンプルを、0日目および3日目に、EDTAを含有するチューブに採取し、血球数測定を、XS-800i血液分析装置(Sysmex)を用いて行った。ヘモグロビンのレベル(左)およびヘマトクリットの割合(右)を、3日目に評価した。破線は、各パラメーターについて、C57Bl/6マウスにおける正常範囲の値を表す。
図20】健常ドナーの血液から新しく単離したヒト血小板における、対照モノクローナル抗体(破線)と比較した、抗SIRPa(HEFLB、灰色)および抗CD47(B6H12、黒色)モノクローナル抗体のフローサイトメトリー分析を示す図(上)である。50μg/mlの対照モノクローナル抗体、抗SIRPa(HEFLB)、抗CD47(B6H12)、または凝集の阻害剤の陽性対照として抗インテグリンαIIbの存在下における、光学血小板凝集測定装置を使用したヒト血小板凝集測定を示す図(下)である。抗体は、非活性化およびADP活性化血小板において評価した。
図21A】同種CD4+T細胞を、1:1の比で、新しい卵巣がん腹水から抽出したCD14+骨髄系細胞とともに、10μg/mlの対照抗体(白色)、抗SIRPa HEFLB(黒色)、または抗CD47モノクローナル抗体(灰色)の存在下で培養した図である。増殖を、H-チミジン組込みによって5日目に測定した。
図21B】同種CD4+T細胞を、1:1の比で凍結した卵巣がん腹水から抽出したCD14+骨髄系細胞とともに、10μg/mlの対照抗体(白色)、抗SIRPa HEFLB(黒色)、または抗CD47モノクローナル抗体(灰色)の存在下で培養した図である。増殖を、H-チミジン組込みによって5日目に測定した。
図21C】同種T細胞を、5:1の比で同種樹状細胞および異なる比の卵巣がん腹水から単離したCD14+骨髄系細胞とともに、図21Aのように10μg/mlの抗体の存在下において、培養した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
SIRPa抗体(エピトープを有する)
一態様において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0018】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、関連する技術分野の当業者に広く理解されているものと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書、実施例、および特許請求の範囲において用いられるある特定の用語および語句の意味を、適宜提供する。
【0020】
本明細書において使用されるとき、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または組換え抗体を含む。
【0021】
本明細書において使用されるとき、「モノクローナル抗体」は、共通の重鎖および共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体の抗体分子の調製物を指し、対照的に、「ポリクローナル」抗体は、異なるアミノ酸配列の抗体の混合物を含む調製物を指すことが意図される。モノクローナル抗体は、ファージ、細菌、酵母、またはリボソームディスプレイなどのいくつかの公知の技術によって、ならびにハイブリドーマ由来抗体によって例証される古典的な方法によって、生成することができる。したがって、「モノクローナル」という用語は、1つの核酸クローンに由来するすべての抗体を指して使用される。
【0022】
本発明の抗体は、組換え抗体を含む。本明細書において使用されるとき、「組換え抗体」という用語は、組換え手段によって産生、発現、生成、または単離された抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを使用して発現された抗体;組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子に起因してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体;または特定の免疫グロブリン遺伝子配列(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列)を他のDNA配列とアセンブルする任意の他の手段で産生、発現、生成、もしくは単離された抗体を指す。組換え抗体には、例えば、キメラ抗体およびヒト化抗体が含まれる。
【0023】
本明細書において使用されるとき、「キメラ抗体」は、哺乳動物種、例えば、マウスの生殖系列に由来する可変ドメインの配列が、別の哺乳動物種、例えば、ヒトの生殖系列に由来する定常ドメインの配列にグラフトされている、抗体を指す。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「ヒト化抗体」は、ヒトフレームワーク配列に、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖系列に由来するCDR配列がグラフトされている、抗体を指す。
【0025】
本明細書において使用されるとき、「抗体の抗原結合性フラグメント」は、可能であればその天然の形態で、SIRPaに対する抗原結合能力を呈する、抗体の一部、すなわち、本発明の抗体の構造の一部分に対応する分子を意味し、そのようなフラグメントは、特に、対応する4本鎖抗体の抗原結合特異性と比較すると、前記抗原に対して同じかまたは実質的に同じ抗原結合特異性を呈する。有利なことには、抗原結合性フラグメントは、対応する4本鎖抗体と類似の結合親和性を有する。しかしながら、対応する4本鎖抗体と比べて低減された抗原結合親和性を有する抗原結合性フラグメントもまた、本発明の範囲内に包含される。抗原結合能力は、抗体と標的フラグメントとの間の親和性を測定することによって、判定することができる。これらの抗原結合性フラグメントはまた、抗体の「機能性フラグメント」とも表記され得る。
【0026】
抗体の抗原結合性フラグメントは、抗原、すなわち、SIRPaの細胞外ドメインに対する認識部位を包含し、それによって抗原認識特異性を定める、CDR(相補性決定領域)と表記される超可変ドメインまたはその部分を含むフラグメントである。
【0027】
4本鎖免疫グロブリンのそれぞれの軽鎖および重鎖可変ドメイン(それぞれ、VLおよびVH)は、それぞれ、VL-CDR1(またはLCDR1)、VL-CDR2(またはLCDR2)、VL-CDR3(またはLCDR3)、およびVH-CDR1(またはHCDR1)、VH-CDR2(またはHCDR2)、VH-CDR3(またはHCDR3)と表記される、3つのCDRを有する。
【0028】
当業者であれば、記載されるこの点に関して、参照番号付けシステム、KABATの番号付けシステムへの参照、またはIMGT「真珠の首飾り(collier de perle)」アルゴリズムの適用によるものを含む、標準的な定義を参照して、抗体の様々な領域/ドメインの位置を決定することができる。この点で、本発明の配列の定義に関して、領域/ドメインの境界設定が、1つの参照システムと別のものとでは変動し得ることに留意されたい。したがって、本発明において定義される領域/ドメインは、抗体の可変ドメインの全長配列内の関係する配列の長さまたは位置付けに、およそ±10%の変動性を示す配列を包含する。
【0029】
4本鎖免疫グロブリンの構造に基づくと、抗原結合性フラグメントは、したがって、利用可能なデータベースおよび先行技術における抗体の配列との比較によって、特に、これらの配列における機能性ドメインの位置の比較によって、定義することができるが、フレームワークの位置および定常ドメインは、様々な抗体クラス、特に、IgG、特に、哺乳動物IgGに関して、十分に定義されていることに留意されたい。そのような比較はまた、抗体の3次元構造のデータ関連付けを伴う。
【0030】
本発明の特定の実施形態を例示する目的で、抗体のCDRを含む可変ドメインを含む抗体の抗原結合性フラグメントは、Fv、dsFv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2を包含する。Fvフラグメントは、抗体のVLおよびVHドメインが疎水性相互作用によって一緒に結合されたものからなり、dsFvフラグメントでは、VH:VLヘテロ二量体が、ジスルフィド結合によって安定化されており、scFvフラグメントでは、VLおよびVHドメインが、可動性ペプチドリンカーによって互いに接続されて、それによって一本鎖タンパク質を形成している。Fabフラグメントは、抗体のパパイン消化によって得ることができる単量体フラグメントであり、これらは、L鎖全体、およびH鎖のVH-CH1フラグメントが、ジスルフィド結合によって一緒に結合されたものを含む。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジジスルフィドよりも下の部分における抗体のペプシン消化によって産生され得、これは、2つのFab’フラグメント、および免疫グロブリン分子のヒンジ領域の一部分を追加として含む。Fab’フラグメントは、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合を切断することによって、F(ab’)2フラグメントから得ることができる。F(ab’)2フラグメントは、二価である、すなわち、このフラグメントは、天然の免疫グロブリン分子と同様に、2つの抗原結合性部位を含むが、一方で、Fv(Fabの可変部分を構成するVHVL二量体)、dsFv、scFv、Fab、およびFab’フラグメントは、一価である、すなわち、これらのフラグメントは、単一の抗原結合性部位を含む。本発明のこれらの基本的な抗原結合性フラグメントを一緒に組み合わせて、多価抗原結合性フラグメント、例えば、ダイアボディ、トリボディ、またはテトラボディを得ることができる。これらの多価抗原結合性フラグメントもまた、本発明の一部である。
【0031】
本明細書において使用されるとき、「二重特異性」抗体という用語は、第1の抗原に特異的な少なくとも1つの領域(例えば、第1の抗体の可変領域に由来する)および第2の抗原に特異的な少なくとも1つの第2の領域(例えば、第2の抗体の可変領域に由来する)を有することにより、2つの異なる抗原を認識する抗体を指す。二重特異性抗体は、2つの標的抗原に結合し、したがって、多重特異性抗体の一種である。2つ以上の異なる抗原を認識する多重特異性抗体は、組換えDNA方法によって産生され得るか、または任意の便宜的な方法によって化学的に産生された抗体を含むがこれらに限定されない。二重特異性抗体は、2つの異なる抗原を認識することができる、すべての抗体もしくは抗体のコンジュゲート、または抗体の多量体形態を含む。二重特異性抗体は、その二価特徴を保持することができるように還元および改良されている抗体、ならびにそれぞれの抗原に対して複数の抗原認識部位を有することができるように、化学的に結合されている抗体、例えば、BiME(二重特異性マクロファージ増強抗体)、BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー)、DART(二重親和性リターゲティング)、DNL(ドック-アンド-ロック)、DVD-Ig(二重可変ドメイン免疫グロブリン)、HAS(ヒト血清アルブミン)、kih(ノブ・イントゥ-・ホール)を含む。
【0032】
したがって、本発明の二重特異性抗体は、SIRPaおよび第2の抗原を対象とする。
【0033】
一実施形態において、本発明は、二重特異性である、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0034】
治療用抗体を開発するためのいくつかの研究により、抗体の特性を最適化するようにFc領域を操作することがもたらされ、それらを必要とする薬理学的活性により適した分子の生成が可能となった。抗体のFc領域は、血清半減期およびエフェクター機能、例えば、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、および抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を媒介する。CH2ドメインとCH3ドメインとの間の境界部に位置するいくつかの変異、例えば、T250Q/M428LおよびM252Y/S254T/T256E+H433K/N434Fは、FcRnに対する結合親和性およびIgG1のインビボ半減期を増加させることが示されている。しかしながら、FcRn結合の増加と半減期の改善との間には直接的な関係が存在するとは限らない。治療用抗体の有効性を改善するための1つのアプローチは、その血清持続性を増加させることであり、それによって、より高い循環レベル、より低い投与頻度、および用量の低減が可能となる。Fc領域の操作は、抗体のエフェクター機能の低減または増加のいずれかのために所望され得る。細胞表面分子、特に、免疫細胞上のものを標的とする抗体については、エフェクター機能を抑止することが必要とされる。対照的に、腫瘍学上の使用が意図される抗体については、エフェクター機能を増加させることにより、治療活性を改善することができる。4つのヒトIgGアイソタイプは、活性型Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa)、阻害性FcγRIIb受容体、および補体第1成分(C1q)に、異なる親和性で結合し、極めて異なるエフェクター機能をもたらす。IgGのFcγRまたはC1qへの結合は、ヒンジ領域およびCH2ドメインに位置する残基に依存する。CH2ドメインの2つの領域は、FcγRおよびC1qの結合にとって極めて重要であり、IgG2およびIgG4において固有の配列を有する。
【0035】
本明細書において使用されるとき、「修飾抗体」は、抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む分子に対応し、前記モノクローナル抗体またはその機能性フラグメントは、機能性が異なる分子と結合する。本発明の修飾抗体は、化学的もしくは生物学的な基または分子、例えば、インビボでのプロテアーゼ切断に対する保護、抗体または機能性フラグメントの安定性および/または半減期の改善に好適な、PEGポリマーまたは別の保護基もしくは分子との、共有結合、グラフト、化学的結合を含む任意の好適な形態の結合の結果として得られる、融合キメラタンパク質またはコンジュゲートのいずれかであり得る。類似の技法、特に、化学的結合またはグラフトによるものを用いて、修飾抗体は、生物学的に活性な分子を用いて調製することができ、前記活性な分子は、例えば、毒素、特に、シュードモナス外毒素A、植物毒素リシンA鎖、またはサポリン毒素、特に、抗体または機能性フラグメントの標的をヒトの身体の特定の細胞または組織に定めるのに好適な治療上活性な成分、ベクター(特に、タンパク質ベクターを含む)から選択されるか、または修飾抗体は、特に、抗体のフラグメントが使用される場合に、標識またはリンカーと結合され得る。抗体またはその機能性フラグメントのPEG化は、特に、治療適用に関して、宿主への活性成分の送達条件を改善するため、特に関心の高い実施形態である。PEG化は、抗体または機能性フラグメントの認識部位の妨害を防止するように部位特異的であり得、これは、高分子量PEGを用いて行うことができる。PEG化は、抗体もしくは機能性フラグメントの配列に存在する遊離システイン残基を通じて、または抗体もしくは機能性フラグメントのアミノ酸配列における遊離システイン残基の付加を通じて、達成することができる。
【0036】
一実施形態において、本発明は、修飾されている、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0037】
本発明の巨大分子は、抗体およびそのフラグメントだけでなく、本明細書において抗原結合性抗体模倣体とも称される、抗体のものを模倣する抗原に結合する能力を有する、人工タンパク質、ペプチド、および任意の化合物も含む。そのようなタンパク質は、アフィチン(affitin)およびアンチカリン(anticalin)を含む。アフィチンは、抗原に選択的に結合する能力を有する人工タンパク質である。アフィチンは、DNA結合タンパク質Sac7dに構造的に由来し、古細菌ドメインに属する微生物であるスルホロブス・アシドカルダリウスにおいて見出される。Sac7dの結合表面のアミノ酸をランダム化することによって、例えば、Sac7dの結合面の11個の残基のランダムな置換に対応するバリアントを生成することによって、アフィチンライブラリーが生成され、得られたタンパク質ライブラリーを数回のリボソームディスプレイに供してもよい。親和性は、様々な標的、例えば、ペプチド、タンパク質、ウイルス、および細菌を対象とし得る。アフィチンは、抗体模倣体であり、バイオテクノロジーにおけるツールとして開発されている。アフィチンはまた、様々な酵素の特異的な阻害剤としても使用されている(Krehenbrinkら、J.mol.Biol.、383:5、2008年)。当業者であれば、当該技術分野において公知の方法、特に、国際公開第2008/068637号および上記に引用される刊行物に開示されるもの、特に、ファージディスプレイおよび/またはリボソームディスプレイライブラリーの生成、ならびに本明細書に開示される抗原を使用したそれらのスクリーニングを使用して、必要とされる結合特性を有するアンチカリンを容易に開発することができる。アンチカリンは、抗原、タンパク質または小分子のいずれかに結合することができる、人工タンパク質である。アンチカリンは、天然結合性タンパク質のファミリーであるヒトリポカリンに由来する抗体模倣体である。アンチカリンは、約8倍小さく、約180個のアミノ酸のサイズおよび約20kDaの質量を有する(Skerra、Febs J.、275:11、2008年)。特に、特定の結合特性を有するアンチカリンのスクリーニングおよび選択を可能にするアンチカリンファージディスプレイライブラリーが、生成されている。当業者であれば、当該技術分野において公知の方法、特に、欧州特許第1270725号明細書、米国特許第8536307号明細書(Schlehuber and Skerra、Biophys.Chem.、96:2~3、2002年)、および上記に引用された刊行物に開示されるもの、特に、ファージディスプレイおよび/またはリボソームディスプレイライブラリーの生成ならびに本明細書に開示される抗原を使用したそれらのスクリーニングを使用して、必要とされる結合特性を有するアフィチンを容易に開発することができる。アンチカリンおよびアフィチンは、いずれも、細菌発現系を含む多数の発現系において産生され得る。したがって、本発明は、アフィチン、アンチカリン、および本明細書に記載される抗体の特性、特に、SIRPaへの結合、SIRPaとCD47との間の相互作用の阻害、SIRPgに結合しないこと、T細胞に結合しないこと、T細胞の増殖を阻害しないこと、SIRPgとCD47との相互作用を阻害しないことに関する特性を有する他の同様の抗体模倣体を提供し、これらのすべてが、本発明の巨大分子として企図される。
【0038】
抗体またはそのフラグメントに関する本明細書に開示されるすべての実施形態は、しかるべき修正を加え、本発明の巨大分子、特に、抗原結合性抗体模倣体に変換される。
【0039】
本明細書において使用されるとき、「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原の一部を意味する。タンパク質抗原のエピトープは、立体構造エピトープおよび線形エピトープの2つのカテゴリーに分類され得る。立体構造エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続な部分に対応する。線形エピトープは、抗原からのアミノ酸の連続的な配列に対応する。
【0040】
本発明において、SIRPa内に存在するペプチドおよび抗SIRPa抗体によって結合されるペプチドは、これらの抗体によって特異的に認識されるエピトープを構成する。
【0041】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つのペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0042】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるペプチドに特異的に結合し、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのペプチドに結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0043】
一実施形態において、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0044】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号7(GRELIYNQKEGH)、配列番号8(KFRKGSPDDVE)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0045】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号7(GRELIYNQKEGH)、配列番号8(KFRKGSPDDVE)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)のペプチドに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0046】
一実施形態において、本発明は、配列番号1(SLIPVGP)、配列番号9(ARELIYNQKEGH)、配列番号10(KFRKGSPDTE)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0047】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号9(ARELIYNQKEGH)、配列番号10(KFRKGSPDTE)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)のペプチドに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0048】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号11(GRELIYN)、DVE、配列番号12(HTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0049】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号11(GRELIYN)、DVE、配列番号12(HTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)のペプチドに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0050】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号13(ARELIYN)、配列番号12(HTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのペプチドに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0051】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号1(SLIPVGP)、配列番号13(ARELIYN)、配列番号12(HTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)のペプチドに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0052】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、および配列番号13のペプチドは、線形エピトープに対応する。
【0053】
これらの線形エピトープは、アレイに基づくオリゴペプチドスキャニング(オーバーラップペプチドスキャンまたはペプスキャン分析と称されることも多い)によって、本発明者らによって特定されている。この技法は、標的タンパク質のオーバーラップセグメントおよび非オーバーラップセグメント由来のオリゴペプチド配列のライブラリーを使用し、それらが目的の抗体に結合する能力を試験する。標的タンパク質の異なる部分に由来する非隣接ペプチド配列を組み合わせ、この組み合わせたペプチドに対して立体構造の剛性を強めることによって(例えば、CLIPS足場を使用することによって)(Timmermanら、2007、J Mol Recognit.、Sep-Oct;20(5):283~99)、不連続エピトープを、非常に高い信頼性および精度でマッピングすることができる(Gaseitsiweら、2010-Clin Vaccine Immunol.Jan;17(1):168~175)。HEFLBを含め、本発明の試験した抗体のすべてが、前記エピトープに特異的に結合する。
【0054】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)、配列番号71(RNNMDFSIRIGN)、および配列番号72(SPRDITLKW)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む立体構造エピトープに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0055】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)、配列番号71(RNNMDFSIRIGN)、および配列番号72(SPRDITLKW)のペプチドを含むかまたはそれからなる立体構造エピトープに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0056】
一実施形態において、本発明は、配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)および配列番号71(RNNMDFSIRIGN)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む立体構造エピトープに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0057】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)および配列番号71(RNNMDFSIRIGN)のペプチドを含むかまたはそれからなる立体構造エピトープに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0058】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号73(YNQK)および「SIR」からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む立体構造エピトープに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0059】
一実施形態において、本発明は、SIRPa内の配列番号73(YNQK)に記載されるアミノ酸配列のペプチドおよびSIRアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなる立体構造エピトープに特異的に結合する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0060】
配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、およびSIRPのペプチドは、立体構造エピトープに対応する。これらの立体構造エピトープは、本発明者らにより、当業者に周知のように、タンパク質分解保護手順(酵素消化:親和性クロマトグラフィーで固定化した抗体-抗原複合体のキモトリプシン、トリプシン)を使用し、続いて、質量分析法(MALDI-TOF/TOF)を行って、そのような目的のペプチドを検出し、シーケンシングすることによって、決定されている(Van de Waterら、Clinical Immunology and Immunopathology、1997、85巻)。使用した抗原は、ヒトSIRPa(受託番号NP_542970)であり、使用した本発明の抗体のうちの1つは、HEFLBバリアントであった。
【0061】
本発明による抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体は、天然のSIRPa内の立体構造配置の前記ペプチドを含むかまたはそれからなる前記立体構造エピトープに特異的に結合する。
【0062】
配列番号73(YNQK)に記載されるアミノ酸配列のペプチドは、受託番号NP_542970によって参照されるヒトSIRPaアミノ酸配列の80位~83位のアミノ酸からなるペプチドに対応する。
【0063】
SIRアミノ酸配列のペプチドであるSIRペプチドは、受託番号NP_542970によって参照されるヒトSIRPaアミノ酸配列の105位~107位のアミノ酸からなるペプチドに対応する。
【0064】
本明細書において使用されるとき、「SIRPa」という用語は、哺乳動物種に由来するSIRPaタンパク質、好ましくは、ヒトSIRPaを指す(例えば、受託番号NP_542970(P78324)およびCAA71403)。
【0065】
本明細書において使用されるとき、「抗SIRPa抗体」という用語は、SIRPa、特に、ヒトSIRPaに特異的に結合する抗体を指す。
【0066】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントとエピトープ(またはエピトープを含む領域)との間の特異的な結合は、抗体が、特定のタンパク質または抗原(本明細書では、SIRPa)上のエピトープ(エピトープを含む領域)に対して認識できる親和性を呈すること示す。「認識できる親和性」は、約10-9M(KD)以上の親和性での結合を含む。好ましくは、結合は、結合親和性が、10-9M~10-12M、任意選択で、10-9M~10-10M、特に、10-10Mである場合に、特異的と考えられる。結合ドメインが、標的と特異的に反応するかまたは標的に特異的に結合するかは、とりわけ、前記結合ドメインと標的タンパク質または抗原との反応を、前記結合ドメインと標的タンパク質以外のタンパク質または抗原との反応と比較することによって、容易に試験することができる。
【0067】
親和性は、当業者に周知の様々な方法によって、判定することができる。これらの方法には、Biacore分析、Blitz分析、およびスキャッチャードプロットが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
一実施形態において、本発明は、特に、Biacore分析によって、SIRPaに対して、10-9Mよりも低い、好ましくは10-10Mよりも低い、より好ましくは1.10-11Mよりも低いKD値を有する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0069】
一実施形態において、本発明は、SIRPaとCD47との間の相互作用を減少させる、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0070】
一実施形態において、本発明は、CD47のSIRPaへの結合、特に、ヒトCD47のヒトSIRPaへの結合を、部分的または完全に、特に、完全に阻害する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0071】
本発明のそのような抗体は、SIRPaに特異的に結合し、SIRPaとCD47との間の相互作用をアンタゴナイズする。
【0072】
特に、本発明の抗SIRPaアンタゴニスト抗体は、結合アッセイにおいて、陰性対照分子と比較した場合に、CD47のSIRPaへの結合を、少なくとも50%、60%、70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、または最も好ましくは100%低減または阻害することができる。
【0073】
特に、本発明の抗SIRPaアンタゴニスト抗体は、結合アッセイにおいて、陰性対照分子と比較した場合に、CD47のSIRPaへの結合を、50%~100%、好ましくは60%~90%、より好ましくは70%~80%低減または阻害することができる。
【0074】
競合的阻害によって抗体の特異性および親和性を判定するための方法は、当該技術分野において公知であり(例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1998年)、Colliganら、Current Protocols in Immunology、Green Publishing Assoc.、NY(1992;1993年)、Muller、Meth.Enzym.、92:589~601(1983年)を参照されたい)、以下の実施例に記載されている。
【0075】
これらの方法には、Biacore分析、Blitz分析、フローサイトメトリー、およびELISAアッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
一実施形態において、本発明は、ELISAによってCD47と抗SIRPa抗体との間における競合的SIRPa結合アッセイで判定した場合に、500ng/ml未満、特に、400ng/ml未満、300ng/ml未満、より特定には200ng/ml未満のIC50を有する、上記に定義される抗SIRPa抗体に関する。
【0077】
一実施形態において、本発明は、ヒト単球におけるCD47と抗SIRPa抗体との間の競合サイトメトリーアッセイによって判定した場合に、500ng/ml未満、特に、400ng/ml未満、300ng/ml未満、より特定には、200ng/ml未満、150ng/ml未満、さらにより特定には、100ng/ml未満のIC50を有する、上記に定義される抗SIRPa抗体に関する。
【0078】
一実施形態において、本発明は、SIRPg、好ましくはヒトSIRPgに特異的に結合しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0079】
本発明のそのような抗体は、SIRPgとCD47との間の相互作用に影響を及ぼさないか、またはそれを防止しない。
【0080】
本明細書において使用されるとき、「SIRPg」という用語は、哺乳動物種に由来するシグナル調節タンパク質ガンマ(SIRPガンマ、CD172g、またはSIRPベータ2とも表記される)、好ましくはヒトSIRPgに関する。
【0081】
本出願の実施例において使用されるヒトSIRPgタンパク質の参照配列は、受託番号Q9P1W8に関連する配列に対応する。
【0082】
一実施形態において、本発明は、SIRPgに対して、特に、Blitz分析によって、10-9Mよりも高い、好ましくは10-8Mよりも高い、より好ましくは10-7Mよりも高いKD値を有する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0083】
一実施形態において、CD47のSIRP-gへの結合を有意に阻害せず、アンタゴナイズせず、CD47のSIRPgへの結合と有意に競合しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0084】
このアンタゴニスト作用は、本出願の実施例に定義される方法を使用して、判定することができる。
【0085】
本発明において、抗体(またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体)が、BlitzによるSIRPg結合競合アッセイにおいて、増加を誘導しないか、またはCD47のKD値の1対数未満の増加を誘導する場合に、前記抗体(またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体)は、CD47のSIRPgへの結合をアンタゴナイズしないと考えることができる。
【0086】
一実施形態において、本発明は、T細胞、特に、CD3+T細胞に特異的に結合しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0087】
特に、本発明の抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体は、哺乳動物種に由来するT細胞、特に、ヒトT細胞に結合しない。
【0088】
特に、抗SIRPa抗体(またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体)は、健常ドナーに由来するPBMCから単離されたヒトT細胞の集団において、ヒトT細胞集団のうちの10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満が、前記SIRPa抗体(またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体)によって認識される場合、ヒトT細胞に特異的に結合しないと考えられる。
【0089】
この作用は、本出願の実施例に記載される方法によって測定することができる。
【0090】
一実施形態において、本発明は、好ましくは哺乳動物種に由来する、T細胞、特に、CD3+T細胞、より好ましくはヒトT細胞の増殖を有意に阻害しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0091】
特に、抗SIRPa抗体は、T細胞の増殖が、陰性対照と比較した場合に、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満低減される場合、T細胞の増殖を有意に阻害しないと考えられる。
【0092】
T細胞の増殖は、様々な方法によって判定することができる。例えば、T細胞の増殖は、本出願の実施例に記載されるように、H-チミジンの組込みによって測定することができる。
【0093】
一実施形態において、本発明は、界面活性タンパク質のSIRP-aへの結合を有意に阻害せず、アンタゴナイズせず、界面活性タンパク質のSIRPaへの結合と有意に競合しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0094】
本明細書において使用されるとき、「界面活性タンパク質」は、界面活性恒常性および肺の免疫性に有意に寄与する、コラーゲン含有C型(カルシウム依存性)レクチンである(考察については、Kishoreら、Surfactant proteins SP-A and SP-D:structure,function and receptors、Mol Immunol、43(9)、1293~315、2006年を参照されたい)。
【0095】
本明細書において使用されるとき、「界面活性タンパク質」は、哺乳動物種に由来する界面活性タンパク質、好ましくは、ヒト界面活性タンパク質を指す。
【0096】
一実施形態において、本発明は、ヒト界面活性タンパク質D(SP-D)のSIRPaへの結合を阻害しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0097】
一実施形態において、本発明は、ヒト界面活性タンパク質A(SP-A)のSIRPaへの結合を阻害しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0098】
一実施形態において、本発明は、界面活性タンパク質とSIRPaとの間の相互作用をアンタゴナイズしない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0099】
SIRPaと界面活性タンパク質との間の競合は、当業者に周知の方法を使用して、競合アッセイによって判定することができる。これらの方法には、Biacore分析、Blitz分析、およびELISAアッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明において、抗体(またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体)が、BlitzによるSIRPg結合競合アッセイにおいて、増加を誘導しないか、または界面活性タンパク質のKD値の1対数未満の増加を誘導する場合に、前記抗体(またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体)は、界面活性タンパク質のSIRPgへの結合をアンタゴナイズしないと考えることができる。
【0101】
一実施形態において、本発明は、SIRPbに弱く結合するか、またはSIRPbに特異的に結合しない、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0102】
本明細書において使用されるとき、「SIRPb」という用語は、哺乳動物種に由来するSIRPbタンパク質(SIRPβ、シグナル調節タンパク質ベータ-1、SIRP-ベータ-1、CD172抗原様ファミリーメンバーB、またはCD172bとも表記される)、好ましくは、ヒトSIRPbを指す。
【0103】
本出願の実施例において使用されるヒトSIRPbタンパク質の参照配列は、受託番号Q5TFQ8-1に関連する配列に対応する。
【0104】
一実施形態において、本発明は、特に、Blitz分析によって、SIRPbに対して、10-9Mよりも高い、好ましくは10-8Mよりも高いKDを有する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0105】
一実施形態において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号15(NIDPSDSDTHYNQKFKD)または配列番号16(NIDPSDSDTHYSPSFQG)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号17(GGTGTMAWFAY)、配列番号18(GGTGTLAWFAY)、配列番号19(GGTGTMAYFAY)、または配列番号20(GGTGTLAYFAY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR3が、配列番号23(FQGTHVPYT)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0106】
18D5/バリアントA/バリアントB
一実施形態において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号15(NIDPSDSDTHYNQKFKD)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号17(GGTGTMAWFAY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR3が、配列番号23(FQGTHVPYT)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0107】
バリアントC
一実施形態において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号16(NIDPSDSDTHYSPSFQG)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号17(GGTGTMAWFAY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR3が、配列番号23(FQGTHVPYT)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0108】
バリアントE
一実施形態において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号16(NIDPSDSDTHYSPSFQG)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号18(GGTGTLAWFAY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR3が、配列番号23(FQGTHVPYT)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0109】
バリアントF
一実施形態において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号16(NIDPSDSDTHYSPSFQG)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号19(GGTGTMAYFAY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR3が、配列番号23(FQGTHVPYT)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0110】
バリアントEF
一実施形態において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号16(NIDPSDSDTHYSPSFQG)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号20(GGTGTLAYFAY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
- LCDR3が、配列番号23(FQGTHVPYT)に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0111】
本発明の抗SIRPa抗体は、本明細書に提供されるヒト抗体のHCDR1および/もしくはHCDR2および/もしくはHCDR3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに/または本明細書に提供されるヒト抗体のLCDR1および/もしくはLCDR2および/もしくはLCDR3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有し得る。
【0112】
一実施形態において、本抗体は、提供されるヒト抗体のCDRのうちの1つまたは複数のアミノ酸配列バリアントを含み、このバリアントは、1つまたは複数の、CDR残基内もしくはそれに隣接するアミノ酸の挿入、および/またはCDR残基内もしくはそれに隣接する欠失、および/またはCDR残基の置換を含む(置換が、そのようなバリアントを生成するためのアミノ酸改変の好ましい種類である)。
【0113】
一実施形態において、本発明は、
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、および配列番号30から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、ならびに/または
- 配列番号31、配列番号32、および配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0114】
一実施形態において、本発明は、
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、重鎖可変ドメイン、ならびに
- 配列番号31、配列番号32、および配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、軽鎖可変ドメイン
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0115】
特定の可変ドメインの配列が、以下の表1に提供される。
【0116】
【表1】
【0117】
本発明において例証される抗体の可変ドメインの配列は、表2に示される配列の組合せから推測することができる。
【0118】
【表2】
【0119】
一実施形態において、配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変ドメインを含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0120】
一実施形態において、本発明は、
- 配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、ならびに
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、重鎖可変ドメイン、
好ましくは、
- 配列番号29および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、重鎖可変ドメイン、
より好ましくは、
- 配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、重鎖可変ドメインを含む、
上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0121】
一実施形態において、本発明は、
- 配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン、
または
- 配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、重鎖可変ドメイン、および
- 配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる、軽鎖可変ドメイン
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0122】
一実施形態において、本抗体または抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体は、重鎖可変ドメインの33位のアミノ酸W(W33)の置換を有さず、この位置は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30に関して特定され、かつ/または軽鎖可変ドメインの39位のアミノ酸Y(Y39)、55位のR(R55)、および/もしくは60位のF(F60)の置換を有さず、この位置は、配列番号31、配列番号32、または配列番号33に関して特定され、特に、重鎖可変ドメインのW33位、ならびに軽鎖可変ドメインのY39位、R55位、F60位の置換を有さない。
【0123】
本発明において、本抗体は、任意の重鎖および軽鎖定常ドメインを用いて産生することができる。
【0124】
一実施形態において、本発明の抗ヒトSIRPa抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であって、特に、抗体の軽鎖定常ドメインが、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来し、より特定には、軽鎖定常ドメインが、配列番号35の配列からなり、抗体の重鎖定常ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4(野生型または変異型)重鎖定常ドメイン、特に、ヒトIgG4重鎖定常ドメインに由来し、より特定には、抗体の重鎖定常ドメインが、配列番号34の配列からなる、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0125】
当業者には周知のように、重鎖定常ドメインのIgGアイソタイプの選択は、特定の機能が必要とされるかどうか、および好適なインビボ半減期の必要性を中心に行われる。例えば、がん細胞の選択的な根絶のために設計される抗体は、補体活性化を許容し、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性によるエフェクター媒介性細胞殺滅を許容する、活性型アイソタイプを必要とすることが典型的である。ヒトIgG1およびIgG3(半減期が短い)の両方のアイソタイプ、特に、ヒトIgG1アイソタイプ(野生型およびバリアント)が、これらの基準を満たす。特に、重鎖定常ドメインのIgGアイソタイプ(特に、ヒト野生型およびバリアントIgG1アイソタイプ)に応じて、本発明の抗ヒトSIRPa抗体は、CDC、ADCC、および/またはADCP機序によって、SIRPaを発現する細胞に対して細胞毒性となり得る(Salfeld、nature biotechnology、(英)25巻、12号、2007年、Iraniら、Molecular Immunology、67巻、issue 2、part A、2015年)。実際に、結晶性フラグメント(Fc)領域は、間接的なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)、および補体依存性細胞毒性(CDC)を媒介する様々な補助分子と相互作用する。
【0126】
【表3】
【0127】
一実施形態において、本発明は、
- 配列番号56のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号57のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号36のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号43のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号37のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号44のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号37のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号45のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号38のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号44のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号38のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号45のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号39のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号44のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号39のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号45のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号40のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号44のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号40のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号45のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号41のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号44のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号41のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号45のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号42のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号44のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖、
または
- 配列番号42のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる重鎖、および
- 配列番号45のアミノ酸配列を含むかもしくはそれからなる軽鎖
を含む、上記に定義される抗SIRPa抗体に関する。
【0128】
【表4】


【0129】
一実施形態において、本発明は、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)の非抑制性細胞への分化を誘導することができる、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0130】
一実施形態において、本発明は、前記非抑制性細胞が、IL6、IL12、およびTNFなどの炎症促進性サイトカインを分泌し、IL10およびTGFβなどの抗炎症性サイトカインを分泌しないかまたは低いレベルで分泌する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0131】
一実施形態において、本発明は、前記非抑制性細胞が、iNOSを発現する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する
【0132】
一実施形態において、本発明は、前記非抑制性細胞が、MHCクラスIIマーカーを発現せず、マーカーCD80-CD86を発現する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する
【0133】
一実施形態において、本発明は、前記非抑制性細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞の少なくとも1つのマーカーを発現する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0134】
一実施形態において、本発明は、前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、マクロファージのM2分極化を阻害することができ、かつ/または炎症促進性のM1型マクロファージを優先する、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0135】
本発明の抗体は、炎症促進性環境を誘導するために、マクロファージ分極化を修飾することができる、すなわち、本抗体は、M2型マクロファージによって提供される抗炎症性シグナルを阻害し、かつ/またはM1型マクロファージによって提供される炎症促進性シグナルを優先することができる。このアプローチにより、エフェクターT細胞の作用、特に、がん細胞の排除に好適な抗炎症性環境を再構築することが可能となる。
【0136】
SIRPa抗体
上記に定義される抗体について列挙された実施形態は、しかるべき修正を加え、本発明の他の態様で列挙された抗体に対して繰り返される。
【0137】
別の態様において、本発明は、SIRPa内の配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)、配列番号71(RNNMDFSIRIGN)、および配列番号72(SPRDITLKW)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む立体構造エピトープに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0138】
別の態様において、本発明は、SIRPa内の配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)、配列番号71(RNNMDFSIRIGN)、および配列番号72(SPRDITLKW)のペプチドを含むかまたはそれからなる立体構造エピトープに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0139】
別の態様において、本発明は、配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)および配列番号71(RNNMDFSIRIGN)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む立体構造エピトープに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0140】
別の態様において、本発明は、SIRPa内の配列番号70(ELIYNQKEGHFPR)および配列番号71(RNNMDFSIRIGN)のペプチドを含むかまたはそれからなる立体構造エピトープに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0141】
別の態様において、本発明は、配列番号73(YNQK)およびSIRからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む立体構造エピトープに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0142】
別の態様において、本発明は、SIRPa内の配列番号73(YNQK)およびSIRのペプチドを含むかまたはそれからなる立体構造エピトープに特異的に結合する、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0143】
別の態様において、本発明は、
a)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、重鎖、ならびに/または
b)LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、軽鎖
を含む、抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、
前記CDRは、
- HCDR1が、配列番号14(SYWVH)のアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなり、
- HCDR2が、配列番号15(NIDPSDSDTHYNQKFKD)または配列番号16(NIDPSDSDTHYSPSFQG)のアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなり、
- HCDR3が、配列番号17(GGTGTMAWFAY)、配列番号18(GGTGTLAWFAY)、配列番号19(GGTGTMAYFAY)、または配列番号20(GGTGTLAYFAY)のアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなり、
- LCDR1が、配列番号21(RSSQSLVHSYGNTYLY)のアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなり、
- LCDR2が、配列番号22(RVSNRFS)のアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなり、
- LCDR3、配列番号23(FQGTHVPYT)のアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなる
として定義される、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0144】
本発明はまた、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/またはT細胞に特異的に結合しない、および/またはT細胞の増殖を阻害しない、および/またはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0145】
適用
別の態様において、本発明は、医薬品として使用するための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
に関する。
【0146】
本発明はまた、治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
を投与することを含む、方法に関する。
【0147】
本発明はまた、医薬品の製造における、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
の使用に関する。
【0148】
別の態様において、本発明は、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療において使用するための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
に関する。
【0149】
本明細書において定義されるように、「単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある状態」は、炎症性がんおよび浸潤骨髄系細胞(特に、浸潤MDSCおよび/もしくはTAM細胞)を有するがんを含むがん、感染性疾患、外傷、自己免疫疾患(リウマチ性関節炎、1型糖尿病、ループス、乾癬など)、ワクチン接種、慢性炎症性疾患(クローン秒および潰瘍性大腸炎を含む、炎症性腸疾患など)、敗血症性ショック(sceptic shock)、慢性感染性疾患(シュードモナスおよびCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、または移植片機能不全に対応する。
【0150】
本発明はまた、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
を投与することを含む、方法に関する。
【0151】
本発明はまた、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療のための医薬品の製造における、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体
の使用に関する。
【0152】
一実施形態において、本発明は、炎症促進性マクロファージへのマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療において使用するための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0153】
実際に、SIRPaは、チェックポイント阻害剤として作用し、マクロファージ分極化に関与する。特に、SIRPaの遮断は、1型マクロファージ(M1炎症促進性マクロファージ=M(IFNg))と関連するマクロファージの炎症促進性機能を誘導し、腫瘍におけるマクロファージの抑制活性を阻害するが、これは、マクロファージの炎症促進性プロファイルは、2型マクロファージ(M2型高ファゴサイトーシス活性=M(IL4))により得られるためである。したがって、SIRPaのアンタゴニストは、M2表現型のマクロファージ分極化を阻害することができ、かつ/または炎症促進性M1型マクロファージを優先し、治療において使用することができる。
【0154】
本明細書において定義されるように、「炎症促進性マクロファージを優先するようにマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある状態」は、例えば、固形がん、液体がん、感染性疾患、外傷、自己免疫疾患、ワクチン接種、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、または慢性炎症性疾患に対応する。
【0155】
本発明はまた、炎症促進性マクロファージへのマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体を投与することを含む、方法に関する。
【0156】
一実施形態において、本発明はまた、炎症促進性マクロファージへのマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療のための医薬品の製造における、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体
の使用に関する。
【0157】
炎症促進性細胞を優先するようにマクロファージの分極化を修飾することは、多数の病理または状況において有用であり得る。上述のように、この修飾は、がんの文脈において、マクロファージの抗腫瘍活性を回復させ、かつ/またはM2型マクロファージの炎症促進活性を防止するために、特に有用である。過剰なM2型マクロファージ分極化に起因する不適切な免疫応答もまた、感染性疾患、線維症、ワクチン接種、外傷、および慢性炎症性疾患において生じる。
【0158】
したがって、特定の実施形態によると、抗SIRPa抗体は、肺がん、中皮腫がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、脳のがん、乳がん、結腸がん、肉腫、膵臓がん、頭頸部がん、腎臓がん、胸腺腫、神経膠腫、黒色腫、および血液がん、例えば、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、白血病、例えば、T細胞性およびB細胞性急性もしくは慢性リンパ球性白血病(ALLもしくはCLL)、または急性もしくは慢性骨髄性白血病(AMLもしくはCML)、ならびに骨髄腫からなる群から選択されるがんを有する個体を治療するために使用することができる。
【0159】
一実施形態において、本発明は、がん(特に、炎症性がん、ならびに浸潤骨髄系細胞、特に浸潤MDSCおよび/またはTAM細胞を有するがん)、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(シュードモナスまたはCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、ならびに移植片機能不全からなる群から選択される病理の治療において使用するための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体
に関する。
【0160】
一実施形態において、本発明は、がん(特に、炎症性がん、ならびに浸潤骨髄系細胞、特に、浸潤MDSCおよび/またはTAM細胞を有するがん)、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(シュードモナスまたはCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、ならびに移植片機能不全からなる群から選択される病理の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体
を投与することを含む、方法に関する。
【0161】
一実施形態において、本発明は、がん(特に、炎症性がん、ならびに浸潤骨髄系細胞、特に、浸潤MDSCおよび/またはTAM細胞を有するがん)、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(シュードモナスまたはCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、ならびに移植片機能不全からなる群から選択される病理の治療のための医薬品の製造における、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体
の使用に関する。
【0162】
一実施形態において、本発明は、上記に定義される使用のための、上記に定義される抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体であって、本発明の前記抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体が、SIRPa陽性腫瘍を呈する患者に投与される、抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0163】
一実施形態において、本発明は、ワクチン接種において使用するための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
に関する。
【0164】
一実施形態において、本発明は、対象のワクチン接種の方法であって、前記対象に、有効量の、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
を投与することを含む、方法に関する。
【0165】
一実施形態において、本発明は、ワクチンの製造のための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
の使用に関する。
【0166】
抑制性骨髄系細胞は、特に、幼児において、ワクチン接種の有効性を制限する。したがって、抗SIRPa/gは、抗SIRPaによって提供されるワクチン応答に対する利益を制限し、Tリンパ球がワクチン接種に応答することを防止するであろう。
【0167】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、好適な経路、例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)、または筋肉内(IM)で、対象に投与することができる。
【0168】
本抗体またはその抗原結合性フラグメントは、単独で、または別の治療剤、例えば、第2のヒトモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性フラグメントと組み合わせて、投与することができる。別の実施例において、本抗体は、治療用細胞組成物などと組み合わせて、別の薬剤、例えば、免疫抑制剤、赤血球新生刺激剤(ESA)と一緒に投与される。
【0169】
一実施形態において、本発明は、抗SIRPa抗体または抗原結合性フラグメントが、第2の治療剤と組み合わされる、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0170】
特に、本発明の抗SIRPa抗体は、臨床開発中またはすでに販売されている薬剤を用いて腫瘍免疫回避機序を克服するためのいくつかの他の可能性のある戦略と組み合わせることができる(Antonia et al.Immuno-oncology combinations:a review of clinical experience and future prospects.Clin.Cancer Res.Off.J.Am.Assoc.Cancer Res.20、6258-6268、2014年の表1を参照されたい):
1-例えば、抗CTLA4、抗PD1、または抗PD-L1分子を使用することによって、獲得免疫の阻害を逆転させること(T細胞チェックポイント経路を遮断すること)、
2-例えば、アゴニスト抗CD137(抗4-1BB)抗体またはCD137(4-1BB)リガンドを含むアゴニスト分子を使用して、CD137(4-1BB)を標的とすることによって、獲得免疫を切り替えること(アゴニスト分子、特に、抗体を使用して、T細胞共刺激受容体シグナル伝達を促進すること)、
3-先天免疫細胞の機能を改善すること、
4-例えば、ワクチンに基づく戦略によって、免疫系を活性化すること(免疫細胞のエフェクター機能を強化すること)。
【0171】
第2の治療剤の投与は、抗SIRPa抗体の投与と同時であってもよいし、そうでなくてもよい。第2の薬剤の性質に応じて、共投与は、「コンボ(combo)」としても知られる組合せ薬(製品)の形態で調製されてもよい。コンボは、2つ以上の活性な医薬成分を、固定用量で製造され、分配される単一の剤形で組み合わせたものを含む、固定用量の組合せである。しかしながら、用量レジメンおよび/または投与経路は、異なってもよい。
【0172】
好ましい実施形態において、この第2の治療剤は、化学療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤、細胞療法剤(CAR-T細胞など)、抗生物質およびプロバイオティクスからなる群から選択される。
【0173】
特に、本発明の文脈において有用な免疫療法剤は、治療用ワクチン(DNA、RNA、もしくはペプチドワクチン)、免疫チェックポイント遮断剤もしくは活性化剤、特に、獲得免疫細胞(TもしくはBリンパ球)のもの、またはイムノコンジュゲート、例えば、抗体-薬物コンジュゲートからなる群から選択される。
【0174】
本明細書において使用されるとき、「免疫療法剤」という用語は、特に、がんワクチンを、関心の高い生物学的現象から、ナイーブT細胞の数およびレパートリーを増加させるT細胞成長因子、樹状細胞(DC)の数を増加させる成長因子、DCおよび他の抗原提示細胞(APC)を活性化するアゴニスト、がんワクチンを許容および増加させるアジュバント、T細胞を活性化および刺激するアゴニスト、T細胞チェックポイント遮断の阻害剤、免疫T細胞の成長および生存を増加させるT細胞成長因子、がん細胞を阻害、遮断、もしくは中和する薬剤、ならびに免疫細胞由来の免疫抑制性サイトカインを含む、有効な治療剤にすることができる薬剤を指す。
【0175】
多数の免疫チェックポイント遮断剤または活性化剤が、当該技術分野において公知である。本発明の文脈において、有用であり得る獲得免疫細胞(BまたはTリンパ球)の免疫チェックポイント遮断剤または活性化剤の例は、抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4、抗CD137、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、および抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L、およびB細胞受容体アゴニスト、特に、抗PDL1、抗PD1、抗CD137である。
【0176】
前記免疫療法剤はまた、特に、抗Her2、抗EGFR、抗CD20、抗CD19、抗CD52からなる群から選択される、腫瘍抗原を標的とする抗体であり得る。
【0177】
本抗体は、約1ng/体重kg~約30mg/体重kg、またはそれ以上の有効用量で提供され得る。特定の実施形態において、投薬量は、1μg/kg~約20mg/kg、任意選択で10μg/kg~最大10mg/kg、または100μg/kg~最大5mg/kgの範囲であり得る。
【0178】
「有効用量」または「有効投薬量」または「有効量」という用語は、所望される作用を達成するかまたは少なくとも部分的に達成するのに十分な量として定義される。「有効用量」という用語は、すでに疾患を患っている患者において、疾患およびその併発症を治癒するかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量を包含することを意味する。この使用に有効な量または用量は、治療しようとする状態、送達される抗体コンストラクト、治療の状況および目的、疾患の重症度、これまでの治療法、患者の臨床病歴および治療剤に対する応答、投与の経路、患者のサイズ(体重、体表面、または器官サイズ)および/または患者の状態(年齢および全般的な健康状態)、ならびに患者自身の免疫系の全般的な状況に依存するであろう。適正な用量は、患者に1回または一連の投与で投与することができるように、さらには最適な治療作用を得るために、調節することができる。
【0179】
そのような目的での投薬は、必要に応じて、例えば、毎日、1週間に2回、1週間に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、または再発中に必要に応じて、繰り返され得る。
【0180】
一態様において、本発明はまた、診断試験、特に、個別化された医薬、より特定には、コンパニオン診断試験における使用のための、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
に関する。
【0181】
一実施形態において、本発明は、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合せず、T細胞に特異的に結合せず、T細胞の増殖を阻害せず、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
を使用する診断方法、特に、個別化された医薬、より特定には、コンパニオン診断試験における、診断の方法に関する。
【0182】
一実施形態において、本発明は、診断試験、特に、個別化された医薬、より特定には、コンパニオン診断試験における、診断試験のための医薬品の製造における、
- 上記に定義される抗SIRPa抗体もしくはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合性抗体模倣体、または
- CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、および/もしくはT細胞に特異的に結合しない、および/もしくはT細胞の増殖を阻害しない、および/もしくはCD47のSIRPgへの結合を阻害しない、
特に、CD47のSIRPaへの結合を阻害し、SIRPgに特異的に結合しない、T細胞に特異的に結合しない、T細胞の増殖を阻害しない、CD47のSIRPgへの結合を阻害しない、抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体
の使用に関する。
【0183】
一態様において、本発明はまた、インビトロまたはエキソビボにおける診断の方法、特に、個別化された医薬において、より特定には、コンパニオン診断において使用するのに好適な診断の方法であって、本発明の抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性模倣体は、対象から事前に取得されたサンプルにおけるSIRPa+細胞の検出、および任意選択でSIRPaの発現の定量化のために使用される、方法に関する。
【0184】
一態様において、本発明はまた、診断試験における使用、特に、個別化された医薬またはコンパニオン診断試験における使用に好適な医薬品の製造における、本発明の抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性模倣体の使用に関する。
【0185】
一態様において、本発明はまた、個体から事前に取得された生物学的サンプルにおけるSIRPaの発現および/または発現レベルの判定のための手段としての、少なくとも1つの本発明の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体の使用に関する。
【0186】
一態様において、本発明はまた、対象におけるSIRPa陽性細胞を、前記対象から事前に取得した生物学的サンプルから判定するためのインビトロまたはエキソビボでの方法であって、
i)本発明の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体を使用して、前記対象から事前に取得した生物学的サンプルにおけるSIRPaの発現および/または発現レベルをインビトロで判定すること
を含む、方法に関する。
【0187】
一態様において、本発明はまた、SIRPaが、対象、特に、がん対象における治療に対する応答を予測するバイオマーカーとして使用される方法における、本発明の少なくとも1つの抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体の使用、特に、インビトロまたはエキソビボでの使用に関する。
【0188】
一態様において、本発明はまた、治療、特に、本発明の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体での治療に対するがん対象の応答を予測する、インビトロまたはエキソビボでの方法であって、
- 特に、本発明の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体を用いて、対象から事前に取得された腫瘍サンプルにおけるSIRPaの発現レベルを判定すること、および
- SIRPaの発現レベルを、非応答対象集団におけるSIRPaの発現レベルを表す値と比較すること
を含み、
対象の腫瘍サンプルにおけるSIRPaのより高い発現レベルが、治療に応答すると予想される対象を示す、方法に関する。
【0189】
一態様において、本発明はまた、治療に対する対象の応答、特に、がんと診断された対象の応答を予測するバイオマーカーとして、SIRPaの存在を判定することを含む、対象から事前に取得されたサンプルにおけるSIRPa+細胞の存在をインビトロまたはエキソビボで判定する方法であって、
- 特に、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の抗ヒトSIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体を用いて、対象から事前に取得された腫瘍サンプルにおけるSIRPaの発現レベルを判定すること、および
- SIRPaの発現レベルを、非応答対象集団におけるSIRPaの発現レベルを表す値と比較すること
を含み、
対象の腫瘍サンプルにおけるSIRPaのより高い発現レベルが、治療に応答すると予想される患者を示す、方法に関する。
【0190】
組成物
別の態様において、本発明は、上記に定義される抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。
【0191】
本明細書において使用されるとき、「医薬組成物」は、対象または患者、例えば、哺乳動物、特に、ヒトに投与するのに好適な組成物を包含することを意味する。一般に、「医薬組成物」は、滅菌であり、通常、対象内で望ましくない応答を誘起し得る混入物質を含まない(例えば、医薬組成物中の化合物は、医薬品グレードである)。医薬組成物は、それを必要とする対象または患者に、経口、頬内、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、気管内などを含む、多数の異なる投与経路を介して投与するように設計され得る。
【0192】
本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容される担体」は、概して、安全で非毒性かつ生物学的にもそれ以外にも望ましくないことのない、医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントを包含し、獣医学上の使用ならびにヒト医薬上の使用に許容される賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントを含むことを意味する。「薬学的に許容される担体」は、本明細書において使用されるとき、1つおよび1つを上回るそのような賦形剤、希釈剤、担体、およびアジュバントをいずれも含む。
【0193】
特に、本発明は、活性成分として上記に定義される抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。
【0194】
組み合せ製品
別の態様において、本発明は、活性成分として、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体、および第2の治療剤を含み、前記活性成分が、別個、逐次、または組合せ療法のため、特に、組合せまたは逐次使用のために製剤化される、治療手段、特に、組合せ製品手段に関する。
【0195】
特に、本発明は、医薬品として、同時、別個、または逐次的に使用するための、上記に定義される抗SIRPa抗体またはその抗原結合性フラグメントまたは抗原結合性抗体模倣体および第2の治療剤を含む、組合せ製品に関する。
【0196】
一実施形態において、本発明は、第2の治療剤が、化学療法剤、放射線療法剤、細胞療法剤、免疫療法剤、抗生物質およびプロバイオティクスからなる群から選択される、上記に定義される組合せ製品に関する。
【0197】
一実施形態において、本発明は、前記免疫療法剤が、治療用ワクチン、免疫チェックポイント遮断剤または活性化剤、特に、獲得免疫細胞(TおよびBリンパ球)のもの、ならびに抗体-薬物コンジュゲートからなる群から選択される、上記に定義される組合せ製品に関する。
【0198】
一実施形態において、本発明は、獲得免疫細胞(TおよびBリンパ球)の前記免疫チェックポイント遮断剤または活性化剤が、抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4、抗CD137、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、および抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L、およびB細胞受容体アゴニストからなる群から選択される、特に、抗PDL1、抗PD1、および抗CD137からなる群から選択される、上記に定義される組合せ製品に関する。
【0199】
一実施形態において、前記免疫療法剤は、特に、抗Her2、抗EGFR、抗CD20、抗CD19、抗CD52からなる群から選択される、腫瘍抗原を標的とする抗体である。
【0200】
一態様において、本発明は、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療において、同時、別個、または逐次的に使用するための、上記に定義される組合せ製品に関する。
【0201】
一実施形態において、本発明は、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療を、それを必要とする対象におい行う方法であって、前記対象に、有効量の上記に定義される組合せ製品を同時、別個、または逐次的に投与することを含む、方法に関する。
【0202】
一実施形態において、本発明は、単球系骨髄由来サプレッサー細胞(Mo-MDSC)を非抑制性細胞に分化させることによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療のための医薬品の製造における、上記に定義される組合せ製品の使用に関する。
【0203】
一態様において、本発明は、炎症促進性マクロファージへのマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療において、同時、別個、または逐次的に使用するための、上記に定義される組合せ製品に関する。
【0204】
一実施形態において、本発明は、炎症促進性マクロファージへのマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の上記に定義される組合せ製品を同時、別個、または逐次的に投与することを含む、方法に関する。
【0205】
一実施形態において、本発明は、炎症促進性マクロファージへのマクロファージ分極化を修飾することによって改善または予防される傾向にある任意の状態の治療のための医薬品の製造における、上記に定義される組合せ製品の使用に関する。
【0206】
一態様において、本発明は、がん、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(シュードモナスもしくはCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、および移植片機能不全からなる群から選択される病理の治療において、同時、別個、もしくは逐次的に使用するため、またはワクチン接種において使用するための、上記に定義される組合せ製品に関する。
【0207】
一実施形態において、本発明は、がん、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(シュードモナスまたはCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、ならびに移植片機能不全からなる群から選択される病理の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の上記に定義される組合せ製品を同時、別個、または逐次的に投与することを含む、方法に関する。
【0208】
一実施形態において、本発明は、がん、感染性疾患、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、慢性感染性疾患(シュードモナスもしくはCMVによるものなど)、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、および移植片機能不全からなる群から選択される病理の治療のため、またはワクチン接種において使用するための医薬品の製造における、上記に定義される組合せ製品の使用に関する。
【0209】
核酸
別の態様において、本発明は、上記に定義される抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする、単離された核酸分子に関する。
【0210】
本明細書において使用されるとき、核酸分子は、二本鎖および一本鎖、直鎖および環状であり得る。核酸分子は、ベクターに含まれることが好ましく、ベクターは、宿主細胞に含まれることが好ましい。
【0211】
一実施形態において、本発明は、上記に定義される抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸分子であって、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、および配列番号69から選択される少なくとも1つの配列を含むかまたはそれからなる、核酸分子に関する。
【0212】
一実施形態において、本発明は、上記に定義される抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする、単離された核酸分子であって、
- 好ましくは、
- 配列番号58、配列番号59、もしくは配列番号60、
- 配列番号61もしくは配列番号62、および
- 配列番号63、配列番号64、配列番号65、もしくは配列番号66
を含む、前記抗体の重鎖可変ドメインをコードする配列、
ならびに/または
- 好ましくは、
- 配列番号67、
- 配列番号68、および
- 配列番号69
を含む、前記抗体の軽鎖可変ドメインをコードする配列
を含む、核酸分子に関する。
【0213】
【表5】
【0214】
特に、本発明は、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、および配列番号55から選択される配列を含むかまたはそれからなる核酸分子に関する。
【0215】
【表6】

【0216】
ベクター
別の態様において、本発明は、上記に定義される核酸分子を含む、ベクターに関する。
【0217】
本明細書において使用されるとき、「ベクター」は、遺伝子材料を細胞に移入させるための輸送手段として使用される核酸分子である。「ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルス、コスミド、および人工染色体を包含する。一般に、操作されたベクターは、複製起点、多重クローニング部位、および選択可能なマーカーを含む。ベクター自体は、一般には、インサート(導入遺伝子)およびベクターの「骨格」としての機能を果たすより大きな配列を含む、ヌクレオチド配列、広くはDNA配列である。近代的ベクターは、導入遺伝子インサートおよび骨格以外に、追加の特性:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、レポーター遺伝子、標的化配列、タンパク質精製タグを包含し得る。特に、発現ベクター(発現コンストラクト)と称されるベクターは、標的細胞における導入遺伝子の発現のためのものであり、制御配列を有することが一般的である。
【0218】
宿主細胞
別の態様において、本発明は、上記に定義されるベクターを含む単離された宿主細胞に関する。
【0219】
本明細書において使用されるとき、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体コンストラクトをコードするベクター、外因性核酸分子、およびポリヌクレオチドのレシピエント;ならびに/または抗体コンストラクト自体のレシピエントであり得るかまたはそうである、任意の個々の細胞または細胞培養物を含むことが意図される。細胞へのそれぞれの材料の導入は、形質転換、トランスフェクションなどの手段を用いて行うことができる。「宿主細胞」という用語はまた、単一の細胞の子孫または潜在的な子孫を含むことが意図される。好適な宿主細胞には、原核生物細胞または真核生物細胞が含まれ、さらに、細菌、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、および動物細胞、例えば、昆虫細胞および哺乳動物細胞、例えば、マウス、ラット、ウサギ、マカク、またはヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
キット
別の態様において、本発明は、
- 上記に定義される抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、
- 前記抗体もしくは抗原結合部をコードする核酸分子、
- 前記核酸分子を含むベクター、および/または
- 前記ベクターを含む細胞
を含むキットに関する。
【0221】
便宜上、本発明の抗体は、キット、すなわち、試薬を組み合わせてパッケージングしたものにおいて、提供され得る。
【0222】
本発明の文脈において、「キット」という用語は、2つ以上の構成要素(そのうちの1つは、本発明の抗体もしくはその抗原結合部、核酸分子、ベクター、または細胞に対応する)が、容器、受容器、またはその他に一緒にパッケージングされていることを意味する。キットは、したがって、ある特定の目的を達成するのに十分な製品および/または用具のセットとして記載され得、これは、単一のユニットとして販売され得る。
【0223】
キットは、投与に適切な投薬量の本発明の抗体コンストラクトを含む、任意の適切な形状、サイズ、および材料の1つ以上の受容器(バイアル、アンプル、容器、シリンジ、ボトル、バッグなど)を含み得る。キットは、さらに、使用法(例えば、リーフレットまたは使用説明書の形態)、本発明の抗体コンストラクトを投与するための手段、例えば、シリンジ、ポンプ、注入器など、本発明の抗体コンストラクトを再構築するための手段、および/または本発明の抗体コンストラクトを希釈するための手段を含んでいてもよい。
【0224】
一実施形態において、本発明は、単回投与単位のための上記定義されるキットに関する。本発明のキットはまた、乾燥/凍結乾燥抗体コンストラクトを含む第1の受容器および水溶性製剤を含む第2の受容器を含んでもよい。本発明のある特定の実施形態において、単一チャンバおよび複数チャンバの事前充填シリンジ(例えば、液体シリンジおよび凍結乾燥シリンジ)を含むキットが、提供される。
【0225】
抗原
一態様において、本発明は、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列を含むかまたはそれからなるポリペプチド、特に、抗原に関する。
【0226】
一実施形態において、本発明は、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列を含むかまたはそれからなり、最大300個のアミノ酸のサイズを有する、ポリペプチド、特に、抗原に関する。
【0227】
一実施形態において、本発明のポリペプチドは、50~300個、好ましくは、100~250個のアミノ酸のサイズを有する。
【0228】
一実施形態において、本発明のポリペプチドは、最大50個、100個、150個、200個、250個、または300個のアミノ酸のサイズを有する。
【0229】
一実施形態において、本発明は、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列、および配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、または配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなるヒトSIRPaの少なくとも1つのエピトープ配列を含むかまたはそれからなるポリペプチド、特に、抗原に関する。
【0230】
一実施形態において、本発明は、配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列を含むかまたはそれからなる、ポリペプチド、特に、抗原に関する。
【0231】
一実施形態において、本発明は、配列番号70、配列番号71、および配列番号72からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含むかまたはそれからなり、最大300個のアミノ酸の配列からなる、ポリペプチド、特に、抗原に関する。
【0232】
一実施形態において、本発明は、配列番号73(YNQK)に記載されるアミノ酸配列のペプチドおよび/またはSIRPa内のSIRアミノ酸配列のペプチドを含むかまたはそれからなり、最大300個のアミノ酸の配列からなる、ポリペプチド、特に、抗原に関する。
【0233】
抗体を製造する方法
一態様において、本発明はまた、抗体、特に、本発明の抗体を製造する方法であって、非ヒト動物、特に、非ヒト哺乳動物を、上記に定義される少なくとも1つの抗原に対して免疫化するステップ、および特に、得られた血清を前記免疫化した非ヒト動物から採取して、前記抗原を対象とする抗体を得るステップを含む、方法に関する。
【0234】
特に、本発明はまた、抗体を製造する方法であって、非ヒト動物を、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列を含むかまたはそれからなる抗原に対して、免疫化すること、および特に、結果として得られる血清を前記免疫化した非ヒト動物から採取して、前記抗原を対象とする抗体を得ることを含む、方法に関する。
【0235】
特に、本発明はまた、抗体を製造する方法であって、非ヒト動物を、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列、および配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、または配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなる群から選択されるヒトSIRPaの少なくとも1つのエピトープ配列を含むかまたはそれからなる抗原に対して、免疫化すること、ならびに特に、結果として得られる血清を前記免疫化した非ヒト動物から採取して、前記抗原を対象とする抗体を得ることを含む、方法に関する。
【0236】
特に、本発明はまた、抗体を製造する方法であって、非ヒト動物を、配列番号1(SLIPVGP)、配列番号2(G/ARELIYNQKEGH)、配列番号3(KFRKGSPD[DV]/[T]E)、配列番号4(QHTVSFTCESHGFSPRDITLKWF)、配列番号5(ICEVAHVTLQG)、および配列番号6(YPQRLQLTWLE)からなるヒトSIRPaのエピトープ配列を含むかまたはそれからなる抗原に対して、免疫化すること、ならびに特に、結果として得られる血清を前記免疫化した非ヒト動物から採取して、前記抗原を対象とする抗体を得ることを含む、方法に関する。
【0237】
抗体を選択する方法
一態様において、本発明は、本発明の抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体を選択する方法であって、以下の:
a.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、SIRPa、特に、上記に定義される抗原に結合する能力を試験するステップ(例えば、実施例1、2、および3に記載される方法によって)、
b.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、SIRPbに結合する能力を試験するステップ(例えば、実施例7および8に記載される方法によって)、
c.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、SIRPgに結合する能力を試験するステップ(例えば、実施例9および10に記載される方法によって)、
d.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、ヒトCD47のヒトSIRPaへの結合を阻害する能力を試験するステップ(例えば、実施例4および5に記載される方法によって)、
e.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、T細胞に結合する能力を試験するステップ(例えば、実施例12に記載される方法によって)、
f.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、T細胞増殖を阻害する能力を試験するステップ(例えば、実施例13に記載される方法によって)、
g.抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体が、ヒトCD47のヒトSIRPgへの結合を阻害する能力を試験するステップ(例えば、実施例11に記載される方法によって)
を含み、
任意選択で、以下の:
- SIRPa、特に、上記に定義される抗原に特異的に結合し、CD47のSIRPaへの結合を有意に阻害し、ヒトSIRPgに特異的に結合しない、および/またはヒトT細胞に特異的に結合しない、および/またはヒトT細胞の増殖を有意に阻害しない、および/またはヒトCD47のヒトSIRPgへの結合を有意に阻害しない、より特定には、SIRPa、特に、上記に定義される抗原に特異的に結合し、CD47のSIRPaへの結合を有意に阻害し、ヒトSIRPgに特異的に結合しない、ヒトT細胞に特異的に結合しない、ヒトT細胞の増殖を有意に阻害しない、ヒトCD47のヒトSIRPgへの結合を有意に阻害しない、抗体、そのような抗体の抗原結合性フラグメント、または模倣体を選択するステップ
を含む、方法に関する。
【0238】
本発明の抗体を選択する方法は、有利なことに、本発明による抗体を製造する方法に対して、さらに行うことができる。
【0239】
以下の図面および実施例は、当業者に、本発明を作製および使用する方法の詳細な開示および説明を提供するために示され、本発明者らが本発明と考えるものの範囲を制限するように意図されるものではなく、以下の実験が行われたすべての実験であるまたはこれらの実験しか行われていないことを示すことを意図するものでもない。本発明は、その具体的な実施形態を参照して説明されているが、様々な変更がなされ得ること、ならびに同等物が本発明の本来の趣旨および範囲を逸脱することなく代用され得ることが、当業者であれば理解される。加えて、多数の修正形が、本発明の目的、趣旨、および範囲に対して、特定の状況、材料、問題の組成物、プロセス、1または複数のプロセスステップに適合するように作製され得る。すべてのそのような修正形は、本明細書に添付される特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【実施例
【0240】
以下の実施例において、抗体「18D5」(または「m18D5」)は、マウス抗体18D5に対応し、「キメラ」抗体は、キメラマウス/ヒト18D5抗体に対応し、抗体「HALA、HALB、HBLA、HBLB、HCLA、HCLB、HELA、HELB、HFLA、HFLB、HEFLA、およびHEFLB」は、特定のヒト化18D5バリアントに対応する。抗体6G10および12D7は、本出願者に属し、これらの抗体は、m18D5と同じ方法によって得られたものであり、対照として使用される。これらの対照抗体は、IgG2aマウスモノクローナル抗ヒトSIRPa抗体である。
【0241】
加えて、市販の抗体を、比較に使用した。第1の抗体は、SE7C2という名称の抗SIRPa抗体(Santa Cruz sc-23863)であり、第2の抗体は、SIRPα/βの両方を認識することができる、SE5A5という名称の抗体であり(BioLegend BLE323802)、第3の抗体は、Kwar23という名称の抗ヒトSIRPa抗体である(Creative Biolabs)。PCT出願の国際公開第2013/056352号に記載されているUniversity of Torontoから入手したSIRP29という名称の抗ヒトSIRPa抗体もまた、比較に使用した。
【実施例1】
【0242】
ELISAによるSIRPaに対する抗SIRPa抗体の結合分析
方法:抗SIRPa抗体の結合活性を、ELISAによって評価した。キメラ抗体、ヒト化抗体、SIRP29、およびKwar23を用いたELISAアッセイについては、組換えhSIRPa(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11612-H08H)を、炭酸緩衝液(pH9.2)において0.5μg/mlでプラスチックに固定化し、精製した抗体を添加して、結合を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、ペルオキシダーゼ標識したロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、USA;参照番号709-035-149)を添加し、従来的な方法によって顕色を行った。
【0243】
マウス抗体を用いたELISAアッセイについては、組換えhSIRPa(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号10975-H08H)を、炭酸緩衝液(pH9.2)において0.5μg/mlでプラスチックに固定化し、精製した抗体を添加して、結合を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスFc鎖(Jackson Immunoresearch、USA;参照番号115-036-071)を添加し、従来的な方法によって顕色を行った。
【0244】
結果:図1A、1B、および1Cに示されるように、ELISAによって測定した場合に、SIRPaに対する様々な抗SIRPa抗体の結合活性は、第1の実験において、キメラ抗体については2.9ng/ml、HALAについては3.9ng/ml、HFLAについては5.1ng/ml、HFLBについては4.0ng/ml、HEFLAについては7.1ng/ml、HEFLBについては4.4ng/ml、第2の実験において、キメラ抗体については4.06ng/ml、HCLAについては5.60ng/ml、HCLBについては5.59ng/ml、HELAについては4.61ng/ml、HELBについては4.13ng/ml、第3の実験において、キメラ抗体については2.74ng/ml、HALBについては2.53ng/ml、HBLAについては2.68ng/ml、HBLBについては2.95ng/mlの有効濃度(EC50)を示した。これらの結果は、試験した本発明の抗体が、ELISAによって、他の公知の抗SIRPa抗体SIRP29(3.7ng/ml)およびKwar23(3.3ng/ml)と比較して、良好なSIRPa結合剤であることを示す。これらの結果は、SIRPaがプラスチックウェルにコーティングされている場合に、本発明のすべての抗体によって認識されるエピトープが、アクセス可能であることを示す。
【0245】
図1Dに示されるように、ELISAによって測定した場合に、SIRPaに対する様々な抗SIRPa抗体の結合活性は、SE5A5については0.16nM(24ng/ml)、およびクローンm18D5については0.06nM(9ng/ml)の有効用量(ED50)を示した。クローン6G10および12D7は、ELISAアッセイによって、SIRPaへの結合が確認されなかった。これらの結果は、クローンm18D5が、ELISAによって、市販の抗体と比較して、良好なSIRPa結合剤であることを示し、このクローンによって認識されるエピトープが、SIRPaがプラスチックウェルにコーティングされている場合に、クローン6G10および12D7と比較して、アクセス可能であることを示す。
【実施例2】
【0246】
SIRPaに対する抗SIRPa抗体のBiosensorによる親和性測定
方法:組換えhSIRPa(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11612-H08H)を、5μg/ml(500RU)でCM5センサーチップ(GeHealthcare、France)に固定化し、異なる濃度の抗体を、40μl/分の流速で、適用した。分析は、BIAcore 3000(Biacore、GeHealthcare)を用いて行った。値を、3分間の結合期間(ka)、続いて10分間の解離期間(kd)後に測定し、親和性定数(KD)を判定した。
【0247】
結果:図2に示されるように、本発明の抗体は、SIRPaに対する強力な親和性(KD)(1.93e-10M~3.67e-10M)を有し、これは、公知の抗SIRPa抗体SIRP29およびKwar23の親和性と同等であり、市販の抗SIRPa抗体SE7C2およびSE5A5の親和性よりも優れている。
【実施例3】
【0248】
細胞蛍光測定法によるヒト単球におけるSIRPa結合アッセイ
方法:ヒト単球における抗SIRPa抗体の結合を測定するために、ヒトFc受容体結合阻害剤(BD pharmingen、USA;参照番号564220)を、まず、室温で30分間添加して、ヒト単球上のヒトFc受容体をブロッキングして、バックグラウンドを低減させた。次いで、抗体を、4℃で30分間インキュベートし、洗浄した後、4℃で30分間、PE標識した抗ヒトIgG Fc(Biolegend、USA;参照番号409303)で染色した。マウス抗体については、PE標識した抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch;参照番号715-116-151)を使用した。サンプルを、BD LSRIIまたはCanto II細胞蛍光測定装置で分析した。
【0249】
結果:図3に示されるように、結果は、ヒト単球における本発明の抗SIRPa抗体の強力な結合、公知の抗SIRPa抗体Kwar23、SE7C2、およびSE5A5を上回る結合剤結合(MFI(中央値蛍光強度)で測定される)を示す。
【実施例4】
【0250】
アンタゴニストELISAアッセイによるCD47と抗SIRPa抗体との間の競合分析
方法:競合ELISAアッセイについて、組換えhSIRPa(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11612-H08H)を、炭酸緩衝液(pH9.2)において0.5μg/mlでプラスチックに固定化した。キメラ抗体については、ヒト化抗体、SIRP29、およびKwar23、精製された抗体(異なる濃度)を、6μg/mlの最終濃度(固定濃度)のビオチン化ヒトCD47Fc(AcroBiosystems interchim、France;参照番号CD7-H82F6)と混合して、37℃で2時間、競合的結合を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、ペルオキシダーゼ標識したストレプトアビジン(Vector laboratoring; USA;参照番号SA-5004)を添加して、ビオチン-CD47Fcの結合を検出し、従来的な方法によって顕色を行った。
【0251】
マウス抗体については、精製した抗体(異なる濃度)を、0.04μg/mlのCD47Fc(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号12283-H02H)と混合して、37℃で2時間、競合的結合を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、ペルオキシダーゼ標識したロバ抗ヒトFc鎖(Jackson Immunoresearch、USA;参照番号709-035-149)を添加し、CD47Fcの結合を検出し、従来的な方法によって顕色を行った。
【0252】
結果:図4に示されるように、本発明の抗体は、SIRPa-CD47の相互作用に対するアンタゴニスト活性を有する。特に、キメラ抗体HFLA、HFLB、HEFLA、およびHEFLBは、SIRP29および市販の抗SIRPa抗体SE5A5のアンタゴニスト活性と比較して、優れたアンタゴニスト活性を有することが、観察される。
【実施例5】
【0253】
アンタゴニスト細胞蛍光測定法アッセイによるヒト単球におけるCD47とヒト化抗SIRPa抗体との間の競合分析
方法:ヒト単球におけるCD47とヒト抗SIRPa抗体との間の競合を測定するために、精製された抗体を、4℃で15分間、単球に添加した後、5μg/mlの最終濃度のビオチン化ヒトCD47Fc(AcroBiosystems interchim、France;参照番号CD7-H82F6)と混合し、4℃で30分間インキュベートして、競合的な結合抗体を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、PE標識したストレプトアビジン(BDBiosciences、USA;参照番号554061)を、4℃で15分間添加して、ビオチン-CD47Fcの結合を検出し、BD LSRIIまたはCanto II細胞蛍光測定装置で分析した。
【0254】
ヒト単球におけるCD47とマウス抗hSIRPa抗体との間の競合を測定するために、精製された抗体を、4℃で15分間、単球に添加した後、5μg/mlの最終濃度のCD47Fc(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号12283-H02H)と混合し、4℃で15分間インキュベートして、競合する結合抗体を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、FITC標識した抗ヒトFc(Beckman Coulter;参照番号IM1627)を、4℃で15分間添加して、CD47Fcの結合を検出し、BD LSRIIまたはCanto II細胞蛍光測定装置で分析した。
【0255】
結果:図5に示されるように、本発明の抗体は、ヒト単球においてSIRPa-CD47相互作用に対するアンタゴニスト活性を有する。
【実施例6】
【0256】
Blitz方法によるSP-Dとの競合
方法:本方法は、Blitz(Forte Bio、USA;参照番号C22-2 No 61010-1)を用いて行った。
条件A:SIRPa+抗SIRPa抗体+界面活性タンパク質D(SP-D)。第1のステップにおいて、SIRPa(His)組換えタンパク質(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11612-H08H)を、ヒスチジンテールによって、10μg/mlで30秒間、Ni-NTAバイオセンサー(Forte Bio、USA;参照番号18-0029)に固定化した。第2のステップにおいて、抗SIRPa抗体を、20μg/mL(飽和濃度)で120秒間添加した。次いで、ヒトSP-D(R et D Systems、USA;参照番号1920-SP-050)を、抗SIRPa抗体との競合下において、100μg/mLで120秒間結合させた。SP-Dの解離を、動態緩衝液中で、120秒間行った。データの分析を、Blitz pro 1.2ソフトウェアを用いて行い、それによって、結合定数(ka)および解離定数(kd)を計算し、親和性定数KD(ka/kd)を判定した。
【0257】
条件B:SIRPa+界面活性タンパク質D(SP-D)+抗SIRPa抗体。第1のステップにおいて、Sirp-a(His)組換えタンパク質(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11612-H08H)を、ヒスチジンテールによって、10μg/mlで30秒間、Ni-NTAバイオセンサー(Forte Bio、USA;参照番号18-0029)に固定化した。第2のステップにおいて、ヒトSP-D(R et D Systems、USA;参照番号1920-SP-050)を、100μg/mLで120秒間添加した。次いで、抗SIRPa抗体を、20μg/mL(飽和濃度)で120秒間結合させた。抗SIRPa抗体の解離を、動態緩衝液中で、120秒間行った。分析データを、Blitz pro 1.2ソフトウェアを用いて作製し、それによって、結合定数(ka)および解離定数(kd)を計算し、親和性定数KD(ka/kd)を判定した。
【0258】
結果:図6に示されるように、抗SIRPa抗体18D5の結合は、SP-DのSIRPaへの結合を遮断せず、SP-Dの結合は、18D5のSIRPaへの結合を遮断しない。したがって、本発明の抗体は、SIRPaとSP-Dとの間の相互作用を阻害しない。
【実施例7】
【0259】
Blitz法によるSIRPbに対する抗SIRPa抗体の親和性
方法:本方法は、Blitz(Forte Bio、USA;参照番号C22-2 No 61010-1)を用いて行った。組換えhSIRPb-His(Antibodies-online、USA;参照番号ABIN3077231)を、ヒスチジンテールによって、10μg/mlで30秒間、Ni-NTAバイオセンサー(Forte Bio、USA;参照番号18-0029)に固定化した。次いで、抗SIRPa抗体を、20μg/mLで120秒間結合させた。抗SIRPa抗体の解離を、動態緩衝液中で、120秒間行った。データの分析を、Blitz pro 1.2ソフトウェアを用いて行い、それによって、結合定数(ka)および解離定数(kd)を計算し、親和性定数KD(ka/kd)を判定した。
【0260】
結果:図7Aに示されるように、本発明の抗体は、SIRPbに対して、SIRPaと比較して低い親和性を有する。特に、キメラ抗体、HFLA、HFLB、HEFLA、HEFLBは、SIRPbに対して、SIRP29およびKwar23と比較して、低減された親和性を有することに留意されたい。
【実施例8】
【0261】
ELISAによるSIRPbに対する抗SIRP抗体の結合
方法:活性ELISAアッセイについては、組換えhSIRPb-His(Antibodies-online、USA;参照番号ABIN1466557)を、炭酸緩衝液(pH9.2)において1μg/mlでプラスチックに固定化し、精製した抗体を添加して、結合を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、ペルオキシダーゼ標識したロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、USA;参照番号709-035-149)を添加し、従来的な方法によって顕色を行った。
【0262】
結果:図7Bに示されるように、抗SIRPa抗体は、SIRPbに対して低い親和性を有する。顕色は、B4B6(マウス抗体を用いて顕色を行った)を除くすべての抗体について、ロバ抗ヒト抗体を用いて行ったことを示す必要があり、これにより、抗SIRPb抗体B4B6について得られたシグナルが、抗SIRPa抗体について得られたシグナルよりも低いことを示すことが説明され得る。
【実施例9】
【0263】
Blitz法によるSIRPgに対する抗SIRPa抗体の親和性分析
方法:本方法は、Blitz(Forte Bio、USA;参照番号C22-2 No 61010-1)を用いて行った。組換えhSIRPg-His(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11828-H08H)を、ヒスチジンテールによって、10μg/mlで30秒間、Ni-NTAバイオセンサー(Forte Bio、USA;参照番号18-0029)に固定化した。次いで、抗SIRPa抗体を、20μg/mLで120秒間結合させた。抗SIRPa抗体の解離を、動態緩衝液中で、120秒間行った。データの分析を、Blitz pro 1.2ソフトウェアを用いて行い、それによって、結合定数(ka)および解離定数(kd)を計算し、親和性定数KD(ka/kd)を判定した。
【0264】
結果:図8Aに示されるように、本発明の抗SIRPa抗体は、SIRPgに対して、低い親和性を有する。この親和性は、公知の抗SIRPa抗体SIRP29およびKwar23の親和性よりもわずかに弱い。しかしながら、動態特性は、抗SIRPa抗体、SIRP29、およびKwar23の間で異なり、抗SIRPa抗体については、SIRP29およびKwar23と比較して、解離速度定数(Kd)が高い。特に、HFLBは、SIRPgに対して最も低い親和性を有し、KD値は1.036e-7Mであり、これは、SIRP29およびKwar23のKD値と比較して、2対数分の差に等しい。
【実施例10】
【0265】
ELISAによるSIRPgに対する抗SIRP抗体の結合
方法:活性ELISAアッセイについて、hSIRPg-His(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11828-H08H)を、炭酸緩衝液(pH9.2)において1μg/mlでプラスチックに固定化し、精製された抗体を添加して、結合を測定した。インキュベーションおよび洗浄の後に、ペルオキシダーゼ標識したロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、USA;参照番号709-035-149)を添加し、従来的な方法によって顕色を行った。
【0266】
結果:図8Bに示されるように、抗SIRPa抗体HEFLBは、SIRPgに結合しないが、公知の抗SIRPa抗体SIRP29およびKwar23は、SIRPgへの有意な結合を示す。
【実施例11】
【0267】
Blitz法によるSIRPgについてのCD47との競合:SIRPg+抗SIRPa抗体+CD47
方法:本方法は、Blitz(Forte Bio、USA;参照番号C22-2 No 61010-1)を用いて行った。第1のステップにおいて、hSIRPg-His(Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号11828-H08H)を、ヒスチジンテールによって、10μg/mlで30秒間、Ni-NTAバイオセンサー(Forte Bio、USA;参照番号18-0029)に固定化した。第2のステップにおいて、抗SIRPa抗体を、20μg/mL(飽和濃度)で120秒間添加した。次いで、ヒトCD47Fc((Sino Biologicals、Beijing、China;参照番号12283-H02H)を、抗SIRPa抗体との競合下において、100μg/mLで120秒間結合させた。CD47Fcの解離を、動態緩衝液中で、120秒間行った。分析データを、Blitz pro 1.2ソフトウェアを用いて作製し、それによって、結合定数(ka)および解離定数(kd)を計算し、親和性定数KD(ka/kd)を判定した。
【0268】
結果:図9に示されるように、本発明の抗SIRPa HEFLBは、CD47のSIRPgへの結合と競合しない。対照的に、他の公知の抗体SIRP29、特に、kwar23は、CD47のSIRPgへの結合と競合する。
【実施例12】
【0269】
フローサイトメトリーによる血液細胞への結合
方法:ヒト血液細胞における抗SIRPa抗体の結合を分析するための実験を、実施した。CD3陽性Tリンパ球、赤血球、および血小板を、健常志願者から得られた精製血液から抽出した。細胞を、次いで、4℃で30分間、10マイクログラム/mlのそれぞれの試験抗体で染色し、洗浄した後、4℃でさらに30分間、二次蛍光抗IgG抗体で染色した。洗浄した後、細胞を、CANTO II(BD Bioscience)フローサイトメーターで分析した。
【0270】
結果:図10に示されるように、T細胞、赤血球、および血小板は、CD47に関して陽性であり、CD47は、偏在的に発現されており、これらを、B6H12抗体で染色した。SIRP29およびKwar23抗体は、LSB2.20(特異的抗SIRPγ抗体)と同様に、SIRPγを発現することが知られているT細胞に結合する。しかしながら、抗SIRPaヒト化18D5抗体は、T細胞に結合しない(同じ結果が、試験した4つの異なる18D5ヒト化バリアントで得られた)。赤血球および血小板は、SIRPaを発現せず、したがって、ヒト化18D5抗体および他の抗SIRPa抗体による顕色が行われなかった。この結果は、公知の抗SIRPa抗体と比較して、生細胞におけるSIRPaに対するヒト化18D5抗体の特異性を示す。
【0271】
図11に示されるように、T細胞は、ヒト化18D5抗体によって染色されず(同じ結果が、試験した5つの異なる18D5ヒト化バリアントで観察された)、キメラ18D5でも染色されないが(データは示されない)、70%を上回るT細胞が、SIRP29およびKwar23によって染色される。
【実施例13】
【0272】
ヒトCD3+T細胞の増殖
方法:hPBMC細胞を、健常志願者のバフィーコートから単離した。CD4またはCD8 T細胞を、AutoMACS(Miltenyi)を使用して陽性選択によって選択し、丸底96ウェルプレートに播種した(細胞50000個/ウェル)。抗CD3/抗CD28でコーティングしたマイクロビーズ(LifeTechnologies)で3日間(T細胞1個に対してビーズ1個の比)、またはインビトロで生成した同種成熟樹状細胞で5日間(mDC1個に対してT細胞5個)、または異なる濃度のツベルクリン未精製タンパク質誘導体(PPD)で5日間のいずれかによって、増殖シグナルを得た。SIRPa/CD47経路を標的とする抗体を、飽和濃度(10μg/mL)で、増殖試験の開始から添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
【0273】
結果:図12に示されるように、抗SIRPa抗体HALAおよびHEFLBバリアントは、T細胞を抗CD3+抗CD28ビーズ(A)(C)または同種樹状細胞(B)(D)またはPPD(E)で刺激した場合に、T細胞増殖を阻害しないが、一方で、抗SIRPa Kwar23は、T細胞を同種樹状細胞で刺激した場合に、T増殖を阻害する。予測したとおり、抗CD47抗体および抗SIRPg抗体は、T細胞増殖の阻害剤である。
【実施例14】
【0274】
マウスCD8+T細胞の増殖
方法:脾細胞を、ナイーブマウスから単離した。CD8 T細胞を、AutoMACS(Miltenyi)を使用して陽性選択によって選択し、丸底96ウェルプレートに播種した(細胞50000個/ウェル)。抗CD3/抗CD28でコーティングしたマイクロビーズ(LifeTechnologies)で3日間(T細胞1個に対してビーズ1個の比)によって、増殖シグナルを得た。SIRPa/CD47経路を標的とするマウス抗SIRPa抗体(P84)および抗CD47抗体(MIAP310)を、飽和濃度(10μg/mL)で、増殖試験の開始から添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
【0275】
結果:図13に示されるように、マウスT細胞の増殖に対して抗SIRPaまたは抗CD47抗体の阻害は存在しない。この結果は、マウスが、SIRPg遺伝子を発現しないという事実によって説明される。したがって、マウスは、SIRPgに結合しない特異的抗SIRPa抗体のインビボでの作用を予測するためのモデルとして使用することができる。対照的に、抗CD47抗体または非選択的抗SIRPa抗体のインビボ前臨床効果、特に、獲得免疫およびメモリーTリンパ球の生成に関するものは、ヒト状況を予測するものではない。
【実施例15】
【0276】
ヒトT細胞の増殖
方法:hPBMC細胞を、健常志願者のバフィーコートから単離した。CD4またはCD8 T細胞を、AutoMACS(Miltenyi)を使用して陽性選択によって選択し、丸底96ウェルプレートに播種した(細胞50000個/ウェル)。抗CD3/抗CD28でコーティングしたマイクロビーズ(LifeTechnologies)で3日間(T細胞1個に対してビーズ1個の比)、またはインビトロで生成した同種成熟樹状細胞で5日間(mDC1個に対してT細胞5個)のいずれかによって、増殖シグナルを得た。抗体を、飽和濃度(抗CD47抗体および抗SIRPa抗体については5μg/mL、ならびに抗PD-1/PD-L1抗体および組換え4-1BBLについては2.5μg/mL)で、増殖試験の開始から添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
【0277】
結果:図14に示されるように、抗PD-1/PD-L1抗体および組換え4-1BBLは、ヒトT細胞の増殖に対してブースト作用を有するが、一方で、抗CD47は、ヒトT細胞の増殖に対して負の作用を有する。特に、抗CD47抗体は、抗PD-1/PD-L1または4-1BBアゴニスト剤のヒトT細胞免疫刺激効果を防止する。抗SIRPa HEFLBは、T細胞の増殖に対して有意な影響を有さない。
【実施例16】
【0278】
マウスにおける抗腫瘍作用
方法:マウスに、キシラジン/ケタミンのカクテルで麻酔を行った。開腹後に、腫瘍Hepa 1.6細胞を、PBSにおいて、門脈を通じて注射した(細胞2.5.10個/100μL)。処置を、腫瘍注射の4日後に開始した。アゴニスト抗4-1BBモノクローナル抗体(3H3)を、PBS中のHepa 1.6細胞(肝細胞癌腫細胞、HCC)の腹腔内注射(100μg/注射)後に、4日目および8日目において2回注射した。抗PDL1モノクローナル抗体を、4週間にわたり週2回、PBS中において腹腔内注射した(200μg/注射)。アンタゴニスト抗SIRPa抗体(P84)を、4週間にわたり週3回、PBS中において腹腔内注射した(300μg/注射)。
【0279】
抗腫瘍応答を、腫瘍接種の13日後に、HCCの同所性モデルにおいて評価した。この時点で、腫瘍に浸潤したかまたは全身に浸潤した免疫細胞の表現型決定を行うために、腫瘍および脾臓を、採取した。浸潤免疫細胞である脾細胞および肝臓の非実質細胞(NPC)を、フローサイトメトリー取得のために4つの異なる混合物で染色した。
【0280】
結果:図15Aに示されるように、抗SIRPa抗体単独は、ある割合のマウス(28%)において生存を有意に延長させた。抗4-1BB抗体または抗PDL1抗体との組合せで、抗SIRPa抗体は、処置の中止後でさえも、非常に高い応答率のマウス生存を可能にする。
【0281】
図15Bに示されるように、抗SIRPaと共刺激剤(例えば、抗4-1BB)またはT細胞チェックポイント阻害剤(例えば、抗PDL1)との組合せは、制御性および免疫抑制性免疫細胞(Treg、Mo-MDSC)を減少させ、抗4-1BBとの組合せでは、同時に、エフェクターメモリーCD8+T細胞の蓄積を増加させることによって、腫瘍微小環境を修飾する。Mo-MDSCは、Ly6Cの高い発現を特徴とし、CD11b陽性およびMHCクラスII陰性の集団においてLy6Gは発現されない。
【0282】
図15Cに示されるように、抗SIRPaと、共刺激剤(例えば、抗4-1BB)またはT細胞チェックポイント阻害剤(例えば、抗PDL1)との組合せは、未成熟およびナイーブB細胞の頻度を減少させ、同時にメモリー細胞および形質芽細胞の蓄積を増加させることによって、腫瘍微小環境および末梢、脾臓における細胞組成を修飾する。同様に、細胞溶解性(CD27陰性)NK細胞の蓄積が、抗SIRPaと抗41BBまたは抗PDL1との組合せによって、腫瘍および末梢に誘導される。
【0283】
合わせると、抗SIRPaは、腫瘍および末梢免疫性、特に、腫瘍の排除および長期保護に寄与する獲得免疫細胞(T細胞、Treg、B細胞)および先天免疫細胞(MDSC、マクロファージ、NK細胞)を修飾する。
【実施例17】
【0284】
事前に治癒したマウスにおける抗腫瘍効果
方法:肝臓がんモデルにおいて抗SIRPa+抗4-1BB注射によって事前に治癒したマウスまたは抗4-1BBで処置したSIRPa変異体マウスを、脾臓におけるHepa 1.6細胞の注射(細胞2.5.10^6個/マウス)によって再攻撃した。マウスに、空気中3%のイソフルランで麻酔を行った。マウスの側腹部を切開し、脾臓を単離した後、腫瘍性Hepa 1.6細胞を、PBS中において脾臓に注射した(細胞2.5.10個/50μL)。腫瘍の発達を再攻撃マウスと比較するために、ナイーブマウスに、同じ経路で並行して注射した。
【0285】
結果:図15Dに示されるように、すべての治癒マウスが、再攻撃された場合に生存し、対照的に、すべてのナイーブマウスは死亡した。この結果は、メモリーT細胞が、抗SIRPa療法下またはSIRPaシグナルの不在下(SIRPa変異体マウス)において誘導され、依然として、治癒マウスにおいて長期間持続することを示す。
【実施例18】
【0286】
事前に治癒したマウスから採取したT細胞脾細胞または全脾細胞の抗腫瘍作用
方法:抗SIRPa+抗4-1BBにより再攻撃された治癒マウスを、安楽死させ、脾臓を採取した。赤血球溶解後に、脾細胞を抽出し、CD3陽性T細胞を、AutoMACSによって脾細胞の一部から単離した。麻酔の後に、マウスに、T細胞性脾細胞(細胞2.5.10個/100μL)または全脾細胞(細胞10.10個/100μL)または賦形剤単独(PBS)のいずれかを、静脈内注射した。すべてのマウスに、前述のように門脈を通じてHepa 1.6細胞を受容させた(細胞2.5.10個/100μL)。
【0287】
結果:図15Eに示されるように、治癒マウスから採取した脾細胞および単離Tリンパ球は、マウスの生存に高い肯定的な効果を有する。この結果は、メモリーT細胞が、肝臓がんの治療後に、治癒マウスの脾細胞に存在しており、長期間の獲得免疫記憶を担うことを示す。
【実施例19】
【0288】
事前に治癒したマウスにおける抗腫瘍作用
方法:肝臓がんモデルにおいて抗SIRPa+抗PDL-1注射によって事前に治癒したマウスを、脾臓におけるHepa 1.6細胞の注射によって再攻撃した(細胞2.5.10^6個/マウス)。マウスに、空気中3%のイソフルランで麻酔を行った。マウスの側腹部を切開し、脾臓を単離した後、腫瘍性Hepa 1.6細胞を、PBS中において脾臓に注射した(細胞2.5.10個/50μL)。腫瘍の発達を再攻撃マウスと比較するために、ナイーブマウスに、同じ経路で並行して注射した。
【0289】
結果:図16に示されるように、すべての治癒マウスが、再攻撃された場合に生存し、対照的に、すべてのナイーブマウスは死亡した。この結果は、メモリーT細胞が、治癒マウスにおいて依然として存在することを示唆する。この結果は、メモリーT細胞が、抗SIRPa療法下において誘導され、依然として、治癒マウスにおいて長期間持続することを示す。
【実施例20】
【0290】
乳房癌腫モデルにおける腫瘍の成長の作用
方法:マウスに、空気中3%のイソフルランで麻酔を行った。マウスの腹部を剃毛し、4T1細胞を、50μLのPBS中において、インスリンシリンジ(30ゲージ)を用いて乳腺に注射した。アンタゴニスト抗SIRPa抗体(P84)または対照抗体を、4週間にわたり週3回、PBS中において腹腔内注射した(200μg/注射)。
【0291】
結果:図17に示されるように、抗SIRPa抗体は、乳房癌腫モデルの腫瘍成長を、対照抗体と比較して、有意に低減する(p<0.01)。
【0292】
図18は、接種2週間後における免疫細胞分析を示す。抗SIRPaは、腫瘍および末梢(脾臓)の両方において、骨髄系細胞および非骨髄系細胞(T細胞およびNK細胞)に対する肯定的な作用を有し、Tregの劇的な減少およびメモリーT細胞の蓄積がある。
【実施例21】
【0293】
ヘモグロビンの濃度およびヘマトクリットに対するSIRPa抗体の作用
方法:抗SIRPa(P84クローン)、抗CD47(MIAP410クローン)、および無関係なアイソタイプ対照を、C57Bl/6マウスにおいて、12mg/kgで、0日目および2日目に腹腔内投与した。血液サンプルを、0日目および3日目に、EDTAを含有するチューブに採取し、血球数測定を、XS-800i血液分析装置(Sysmex)を用いて行った。ヘモグロビンのレベル(左)およびヘマトクリットの割合(右)を、3日目に評価した。
【0294】
結果:図19に示されるように、抗SIRPa抗体は、ヘモグロビンの濃度およびヘマトクリットに毒性作用を有さない。対照的に、抗CD47抗体は、ヘモグロビンの濃度およびヘマトクリットの減少を誘導し、男性においてフェーズ1中に貧血が観察されたことと一致する。
【実施例22】
【0295】
血小板凝集
方法:血液を、健常なドナー志願者から、クエン酸ナトリウムで緩衝したVacuette採血チューブ(Greiner Bio-One)に採取した。多血小板血漿(PRP)および少血小板血漿(PPP)を、それぞれ、200gで10分間および3500gで15分間の遠心分離によって得た。作業するPRPを、3.10個の血小板.L-1に調節した。阻害アッセイ:モノクローナル抗体を、PRPとともに予備インキュベートし、最終濃度40または50μg.mL-1の試験抗体にした。撹拌なしで3分後に、血小板凝集を、ADP 5μMの添加により開始した。凝集は、37℃で、継続的に撹拌しながら、標準的な光学血小板凝集測定装置(TA-8V Thrombo-Aggregometer、SD Innovation SAS、Frouard、France)を使用して、サンプルを通る光の透過を測定することによって、判定した。PPPの透過を、100%に設定した。凝集を、合計5分間、撹拌しながら記録した。誘導アッセイ:血小板凝集を、モノクローナル抗体の添加によって直接的に開始した(50μg.mL-1)。凝集を、合計最大10分間、撹拌しながら記録した。
【0296】
結果:図20に示されるように、抗CD47抗体とは対照的に、抗SIRPa抗体は、ヒト赤血球または血小板に結合しない。結果として、抗CD47は、インビトロでヒト血小板凝集を誘導するが、抗SIRPa抗体は、誘導しない。同様に、抗SIRPa抗体は、可逆的ADP誘導性ヒト血小板凝集を妨害するが、抗インテグリンアルファ2bは、それを完全に抑止する。
【実施例23】
【0297】
卵巣がん腹水に由来するSIRPa遮断性CD14+細胞による同種T細胞の増殖
方法:同種CD4 T細胞を、AutoMACS(Miltenyi)を使用して、健常志願者のバフィーコートのhPBMCから、陽性選択によって単離した。CD4を、丸底96ウェルプレートに播種した(細胞50000個/ウェル)。CD14+細胞を、卵巣がん患者の腹水から、同じ方法によって単離した。CD14+細胞を、同種CD4 T細胞とともに、1:1の比で5日間播種した。一部の条件下において、ヒトLPS成熟同種単球由来樹状細胞(moDC)を、1:5の比で添加して、T細胞を刺激し、腹水から精製した異なる比のCD14+MDSCの免疫抑制作用を分析した。SIRPa/CD47経路を標的とする抗体を、飽和濃度(10μg/mL)で、増殖試験の開始から添加した。増殖を、培養終了前12時間の間、H-チミジンの組込みによって測定した。
【0298】
結果:図21Aおよび21Bに示されるように、卵巣がん腹水から精製した新しいおよび凍結ヒト骨髄系細胞(TAM)は、低刺激性同種ヒトTリンパ球である。抗CD47抗体とは対照的に、抗SIRPa抗体は、骨髄系細胞の性質を修飾し、ヒトT細胞活性化および増殖を可能にする。
【0299】
図21Cに示されるように、卵巣がん腹水から精製したヒト骨髄系細胞(MDSC)は、T細胞に対する骨髄系細胞の比1:1および2:1で、同種moDCによって誘導されるヒトT細胞増殖を抑制することができる。抗CD47抗体とは対照的に、抗SIRPa抗体は、ヒトMDSCによって誘導される免疫抑制を強化しない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
【配列表】
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