(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】熱安定性が改善された吸収性コポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 63/08 20060101AFI20240904BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20240904BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20240904BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
C08G63/08
C08G63/64 ZBP
C08G63/85
C08L101/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168963
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2020162888の分割
【原出願日】2015-12-18
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516228958
【氏名又は名称】ポリ-メッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】グレイ ケネス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン マイケル アーロン
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-515640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0119848(US,A1)
【文献】特表2010-508923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の環状モノマーと第2の環状モノマーとの合計量(M)対開環重合触媒の合計量(C)のモル比(M/C)35000で調製された対応する脂肪族ポリエステルコポリマーに比べて遅延された熱分解開始温度を有する、熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマーであって、(1)少なくとも3軸を形成するアモルファスプレポリマーと、(2)前記アモルファスプレポリマーのそれぞれから出る結晶性末端グラフトとを有し、
(a)前記アモルファスプレポリマーが、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、又はこれらの組み合わせから選択される第1の環状モノマーを含むホモポリマー、コポリマー又はターポリマーから選択され、かつ複数のアルコール基を有する開始剤の存在下でかつ前記開環重合触媒の存在下において、調製されたものであり、
(b)前記アモルファスプレポリマーには、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、又はこれらの組み合わせから選択される第2の環状モノマーが、前記アモルファスプレポリマーの存在下でかつ前記開環重合触媒の存在下において、グラフト化されており、
前記熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマーが、窒素環境下20℃/分の速度で20℃~550℃における熱重量分析により分析した結果、342.2℃より高い熱分解開始温度を有することを特徴とする、熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー。
【請求項2】
第1の環状モノマーと第2の環状モノマーとの合計量(M)対開環重合触媒の合計量(C)のモル比(M/C)35000で調製された対応する脂肪族ポリエステルコポリマーに比べて遅延された熱分解開始温度を有する、熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマーであって、(1)少なくとも3軸を形成するアモルファスプレポリマーと、(2)前記アモルファスプレポリマーのそれぞれから出る結晶性末端グラフトとを有し、
(a)前記アモルファスプレポリマーが、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、又はこれらの組み合わせから選択される第1の環状モノマーを含むホモポリマー、コポリマー又はターポリマーから選択され、かつ複数のアルコール基を有する開始剤の存在下でかつ前記開環重合触媒の存在下において、調製されたものであり、
(b)前記アモルファスプレポリマーには、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、又はこれらの組み合わせから選択される第2の環状モノマーが、前記アモルファスプレポリマーの存在下でかつ前記開環重合触媒の存在下において、グラフト化されており、
前記熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマーが、窒素環境下20℃/分の速度で20℃~550℃における熱重量分析により分析した結果、342.2℃より高い熱分解開始温度を有することを特徴とする、熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項3】
窒素環境下20℃/分の速度で20℃~550℃における熱重量分析により分析した結果、357.1℃以上の熱分解開始温度を有する請求項
2に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項4】
アモルファスプレポリマー成分と、結晶性成分とを有する熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマーであって、
(a)前記アモルファスプレポリマー成分が、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、又はこれらの組み合わせから選択される第1の環状モノマーを含むホモポリマー、コポリマー又はターポリマーから選択され、かつ複数のアルコール基を有する開始剤の存在下でかつ開環重合触媒の存在下において、調製されたものであり、
(b)前記アモルファスプレポリマー成分には、グリコリド、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、又はこれらの組み合わせから選択される第2の環状モノマーが、前記アモルファスプレポリマー成分の存在下でかつ前記開環重合触媒の存在下において、グラフト化されて、前記結晶性成分を形成しており、
前記熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマーが、窒素環境下20℃/分の速度で20℃~550℃における熱重量分析により分析した結果、342.2℃より高い熱分解開始温度を有することを特徴とする、熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項5】
窒素環境下20℃/分の速度で20℃~550℃における熱重量分析により分析した結果、357.1℃以上の熱分解開始温度を有する請求項
4に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項6】
前記開始剤が、1-デカノール、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、1,3,4-トリヒドロキシ-2-ブタノン、及びグリセロール、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項7】
前記開環重合触媒が、第1スズオクトエート、Sn(Oct)
2、Sn(OTf)
2、ジブチルスズ(II)-2-エチルヘキサノエート(Bu
2Sn(Oct)
2)、及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)から選択される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項8】
前記結晶性末端グラフト又は前記結晶性成分が、第2の環状モノマーとして、少なくとも50モル%のグリコリドを含む、請求項
1~
7のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項9】
前記アモルファスプレポリマー又はアモルファスプレポリマー成分が、第1の環状モノマーとして、トリメチレンカーボネート(TMC)を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項10】
前記アモルファスプレポリマー又はアモルファスプレポリマー成分が、第1の環状モノマーとして、トリメチレンカーボネート及びイプシロン-カプロラクトンを含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項11】
前記結晶性末端グラフト又は結晶性成分が、少なくとも90モル%のグリコリドを含有する、請求項
1~
8のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【請求項12】
前記開環重合触媒が、第1スズオクトエートである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の熱安定性でかつ吸収性の脂肪族ポリエステルコポリマー又は熱安定性でかつ吸収性の脂肪族コポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性、分子量の一貫性、溶融押出後の固有粘度保持が含まれる特性が改善された吸収性コポリマー、並びに改善された吸収性コポリマーの製造方法に関する。本発明は、更に、制御された薬剤送達のために使用され得る吸収性繊維状構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー分野における以前の研究、例えばShalabyの米国特許第6,462,169号には、高グリコリド末端グラフトを含む多軸ブロックコポリエステルが開示されている。しかしながら、この開示から得られるポリマーは、熱安定性、分子量の一貫性、及び溶融押出後の固有粘度保持のような、本開示内容と比較して様々な特性を欠いている。更に、169号の開示から製造された繊維は、本開示内容のポリマーから製造された繊維によって示された強度と靱性を欠いている。更に、169号に開示されたポリマーは、180℃において固体状態で合成された多軸ブロック構造に限定されている。169号の開示内容のポリマーは、最初にプレポリマーを合成し、次に末端グラフト化して結晶化可能な末端セグメントを得ることを必要とする2工程で合成されている。末端セグメントは、反応内容物が固体になるまでプレポリマーをモノマーと180℃で反応させ、続いて同じ温度で2時間を超える固体状態で反応を続けることによって合成される。
【0003】
更に、Shalabyの米国特許第6,498,229号には、固体状態で合成された高グリコリドブロックコポリマーが開示されている。229号に開示されたポリマーは、わずか一例のために限定されるものでなく、本開示内容の高グリコリドポリマーを合成するために使用されるものより多量の触媒で合成されている。詳しくは、229号のポリマーは、モノマー対触媒(M/C)比が60,000で合成されている。229号の開示内容から得られるポリマーは、より多くの触媒を使用して固体状態合成から形成されるだけなく、熱安定性、分子量の一貫性及び本開示内容に従って製造されたポリマーの溶融押出特性後の固有粘度保持を欠いている。
更にまた、229号の参考文献は、単一工程反応で合成されたポリマー組成物に限定されている。ポリマーは、また、グリコリド誘導反復単位の80モル%未満(及び20モル%を超える)を含有する。更にまた、229号における2工程合成法は、「かなり~不充分な再現性」を有する場合がある。しかしながら、予想外に、229号開示内容と対照的に、本開示内容のポリマーは、2工程法によって合成されているにもかかわらず適切な再現性を以上のものを示している。
更に、Shalabyの米国特許第6,342,065号には、2工程法によって固体状態で合成された高ラクチドブロックコポリマーが開示されている。しかしながら、065号の開示内容から得られるポリマーは、熱安定性、分子量の一貫性、溶融押出し後の固有粘度保持、及び本開示内容のポリマーの改善された繊維強度に欠けている。
更に、Zhao、米国特許第7,265,186号には、星型ブロックコポリマーとして親水性コアを有する多軸構築物が開示されている。これらのコアは加水分解的に分解可能でない。
【0004】
一方、米国特許第8,262,723号には、分岐/多軸ポリマーから製造された植込み可能な医療デバイスを開示している。Wangは分岐/多軸構築物を記載しているが、多軸ブロックは多軸ブロックの末端ブロックと同じ化学構造を有する第2の異なるポリマーと常に存在している。本開示内容は、第2のポリマーを有する多軸末端ブロックとプレポリマーを含む第2の相のブレンドを構成しない不連続相を提供する。本明細書に開示されている新規な組成物は、末端グラフトのブロック及び/又はプレポリマーのブロックから形成される異なる不連続相を形成する。本開示内容では、多軸が、多軸の末端ブロックと同一又は類似の組成を有する第2のポリマーと組み合わせて存在し得る場合、第2のポリマーの鎖長と重合度は、多軸の末端ブロックの鎖長と重合度の2倍である。更に、Wangは、本明細書に開示されているような可撓性結合セグメント(flexible linking segment)を開示していない。
Jakubowski、米国特許第8,569,421号には、複数の軸を有する多軸ポリマーが記載されている。しかしながら、これらの組成物は対称ではなく、意図的にポリマーアームに沿った特定の位置に分配された不飽和結合を有するように設計され、ポリマーはより酸化的に安定である。Jakubowski構築物は、生分解性/吸収性であることを意図していない。更に、それらは特に植込み可能な組成物に関するものでない。
Himes、米国特許第5,639,831号は、本開示とは異なる用途の多軸ブロックコポリマーに関する。更に、本開示のポリマーと同一の化学官能性と生体適合性を必要としていない。
従って、本発明の目的は、熱安定性、改善された分子量の一貫性、溶融押出後のより高い固有粘度保持を有する吸収性コポリマーを提供することであり、そのコポリマーから製造された繊維は強度増加を示している。
【発明の概要】
【0005】
上記の目的は、本発明によれば、第1の実施態様において、吸収性脂肪族ポリエステルコポリマーを準備することによって達成される。該コポリマーには、少なくとも3軸を有する多軸コアと、プレポリマーとが含まれる。少なくとも3軸はポリマー鎖を含んでいる。少なくとも1つの可撓性結合セグメントもある。更に、少なくとも1つのポリマー末端グラフトが少なくとも3軸のそれぞれに取り付けられており、末端グラフトは結晶化のできる少なくとも1つの環状モノマーから誘導された反復単位を含んでいる。
さらなる実施態様において、多軸コアは、結晶化可能なポリマー鎖セグメントを含んでいる。あるいは、多軸コアはアモルファス鎖セグメントを含んでいる。別の実施態様において、可撓性結合セグメントと結晶化可能な環状モノマーは、共通のモノマーを共有している。別の実施態様において、可撓性結合セグメントは、多軸コアと同一のプレポリマーと、少なくとも1つのポリマー末端グラフトと同一の結晶化可能な環状モノマーとから構成されている。
【0006】
更にまた、プレポリマーは、L,L-ラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド、置換グリコリド、パラジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、アルファ-アンゲリカラクトン、ガンマ-バレロラクトン、デルタ-バレロラクトン、又はこれらの組み合わせからなる群から形成されるホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであってもよい。更に、プレポリマーは、ε-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート又はこれらの2つの組み合わせから誘導されてもよい。更に、プレポリマーは、グリコリド、トリメチレンカーボネート又はこれらの2つの組み合わせから誘導されてもよい。さらなる実施態様において、コポリマーは、少なくとも3軸にグラフト化された結晶化可能な末端ブロックが含まれる少なくとも3軸を有する中央の結晶化可能なコアが含まれる少なくとも4つの異なったブロックを含んでいる。更に、少なくとも1つの結晶化可能な環状モノマーは、L,L-ラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド、置換グリコリド、パラジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、アルファ-アンゲリカラクトン、ガンマ-バレロラクトン、デルタ-バレロラクトン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。別の実施態様において、可撓性結合セグメントは、トリメチレンカーボネート、ε-カプロラクトン、又はこれらの2つの組み合わせから誘導され得る。更にまた、ポリエステルコポリマーは、吸収性バリア、ウェブ、メッシュ又はファブリックを含んでもよい。更には、コポリマーは、経編みメッシュに形成されてもよい。更にまた、コポリマーには、制御された薬剤送達のための吸収性ポリマー表面コーティングが含まれてもよい。
【0007】
別の実施態様において、吸収性脂肪族ポリエステルコポリマーを製造する方法が提供される。該方法には、モノマー、開始剤、及び触媒を反応器に充填し、モノマー対触媒の比は少なくとも25,000である工程が含まれる。開始剤は、開環重合を開始させることのできる少なくとも1つのヒドロキシル基を有していてもよい。モノマーには、少なくとも1つの環状モノマーが含まれてもよい。反応器を少なくとも100℃に加熱する。モノマーを撹拌して均質混合物プレポリマーを形成してもよく、プレポリマーの質量は10kDaより大きい。次に、複数のアモルファスプレポリマー軸及び各軸から出ている結晶性末端グラフトを有するコポリマーが形成されてもよい。
【0008】
さらなる実施態様において、触媒は第1スズオクトエートであってもよい。他の触媒には、Sn(Oct)2、Sn(OTf)2、ジブチルスズ(II)-2-エチルヘキサノエート(Bu2Sn(Oct)2)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)が含まれる。更に、開始剤は、ヒドロキシルをもった小分子、オリゴマー、ポリマー、更に無機塩、有機塩、又は上記の組み合わせからなる群から選択されてもよい。更に、開始剤は、1-デカノール、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、1,3,4-トリヒドロキシ-2-ブタノン、グリセロール又は上記の組み合わせからなる群から選択されてもよい。さらなる実施態様において、モノマーは、ラクチド、トリメチレンカーボネート及び/又はε-カプロラクトンから誘導されたコポリマー又はターポリマーであってもよい。なおさらなる実施態様において、モノマーは、グリコリド、トリメチレンカーボネート、及び/又はε-カプロラクトンから誘導されたコポリマー又はターポリマーであってもよい。別の実施態様において、モノマーは置換グリコリドであってもよい。さらなる実施態様において、触媒の第2の充填物を反応器に添加してもよい。さらなる実施態様において、2つの独立した温度設定を反応中に確立してもよい。
以下に、本発明を実施するように設計された構成を、本発明の他の特徴と共に記載する。本発明は、本発明の一例が示されている、下記の説明を読み取ることから及びその一部をなしている添付の図面によってより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のポリマーの熱重量分析(TGA)を示すグラフである。
【
図2】本開示内容の一実施態様を経編み3バー(a warp-knit 3-bar)構造の形態で示す図である。
【
図3】本開示内容の一実施態様をトリコット経編み2バー構造の形態で示す図である。
【
図4】本開示内容の一実施態様を経編み2バー「シャークスキン」構造の形態で示す図である。
【
図5】本開示内容の別の実施形態をハーフトリコットパターンの形態で示す図である。
【
図6A】半結晶性多軸ブロックコポリマーの完全に拡張された鎖描写を示す図である。
【
図6B】結晶化可能な末端グラフトを有するポリマーアモルファスアームを備えたアモルファス多軸コアを示す図である。
【
図7A】末端グラフトにプレポリマーを接続する可撓性リンカーのない多軸ブロックコポリマーを示す図である。
【
図7B】可撓性リンカープレポリマー及び末端グラフトによるポリマー構築物を示す図である。
【
図8】高触媒濃度でプレポリマーを使用した第2の充填物(charge)を混合し反応させた後の残りのプレポリマーを示す式である。
【
図9】GPC分析による不完全な混合/不均質性を示すデータである。
【
図10】
図8のポリマーの分析を示すデータである。
【
図12】複数のセグメントを含む多軸ブロックコポリマーの別の実施態様を示す図である。
【
図13】軸に沿った方向性の4アーム多軸コポリマーを示す図である。
【
図14】鎖が折り畳まれた結晶をもたらす例示的なアームのポリマー鎖の折り畳みを示す
図13の抜粋図である。
【0010】
本発明の1つ以上の態様が特定の目的を満たすことができる一方で、1つ以上の他の態様が特定の他の目的を満たすことができることは、当業者には理解されるであろう。各々の目的は、全ての観点において、本発明の全ての態様に等しく適用されない場合がある。このように、上記の対象物は、本発明のいずれかの態様に関して代替物として見ることができる。本発明のこれらの及び他の対象物及び特徴は、以下の詳細な説明を添付図面及び実施例と併せて読むと、より完全に明らかになるであろう。しかしながら、本発明の前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、好適実施態様であり、本発明又は本発明の他の代替実施態様を限定するものではないことを理解されたい。特に、本発明は多くの特定の実施態様について本明細書に記載されているが、その説明は本発明の例示であり、本発明を限定するものとして構成されていないことが理解されよう。添付の特許請求の範囲によって記載されるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者には様々な修正及び適用が可能であろう。同様に、本発明の他の対象物、特徴、利点及び効果は、この概要及び以下に記載されるある種の実施態様から明らかであり、当業者には容易に明らかになるであろう。このような対象物、特徴、利点及び効果は、添付の例、データ、図面及びそこから導出される全ての合理的な推論と共に、単独又は本明細書に組み込まれた参考文献を考慮して、上記から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、図面に関して、本発明を更に詳細に記載する。特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語と科学用語は、本明細書に開示された主題が属する当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様の又は等価な任意の方法、デバイス、及び材料も本明細書に開示された主題の実施又は試験に使用することができるが、代表的な方法、デバイス、及び材料が本明細書に記載されている。
本開示内容は、熱安定性、分子量の一貫性、及び溶融押出後の固有粘度保持が含まれる特性が改善された吸収性脂肪族ポリエステルに関する。更に、そのポリマーから製造された繊維は、強度が増大することになる。一実施態様において、本開示内容の脂肪族ポリエステルには、ジブロック、トリブロック及びペンタブロックコポリマーのような線状結晶性ブロックコポリマーが含まれてもよく、アモルファスもしくは結晶性のいずれかであり得るプレポリマーから合成される。別の実施態様において、本開示内容の脂肪族ポリエステルには、線状の結晶性ランダム又はセグメント化コポリマーが含まれてもよく、いずれもプレポリマーなしで単一の反応工程で合成される。さらなる実施態様において、本開示内容の脂肪族ポリエステルには、多軸結晶性ブロックコポリマー(少なくとも3軸を有する)が含まれてもよく、アモルファスもしくは半結晶のいずれかであり得る3軸プレポリマーから合成されている。なおさらなる実施態様において、本開示内容の脂肪族ポリエステルには、多軸、結晶セグメント化又はランダムコポリマーが含まれてもよく、いずれもプレポリマーなしで単一の反応工程で合成されている。またさらなる実施態様において、ポリエステルは、グリコリド、ラクチド、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε-カプロラクトン、モルホリンジオン、及びこれらの混合物のような環状モノマーから合成されてもよい。なおさらなる実施態様において、ポリエステルは、開環重合を開始することのできる1個から少なくとも3個のヒドロキシル基を含有する開始剤化合物から合成されてもよい。さらなる実施態様において、ポリエステルは、少量の少なくとも1つの追加のモノマーを含有する高グリコリドコポリマーであってもよい。「高い」とは、ポリマーが少なくとも50モル%のグリコリド誘導反復単位、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上のグリコリド誘導反復単位を含んでもよい。グリコリドのモル含量の範囲も50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、及び90~100%の範囲を含む本開示内容によって想定される。
【0012】
好適実施態様において、高グリコリドコポリマーは、高結晶性の多軸ブロックコポリマーであってよく、ブロックコポリマーは2工程で合成されている。コポリマーは、3軸アモルファスプレポリマー及び3つのプレポリマーアームの各々の端部から出る高グリコリド結晶性末端グラフトを含有してもよい。なおさらなる好適実施態様において、高グリコリドコポリマーは、高結晶性の多軸ブロックコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーは3つのプレポリマーアームの各々の端部から出る3軸結晶性プレポリマー及び高グリコリド結晶性末端グラフトを含有している。なおまたさらなる好適実施態様において、高グリコリドコポリマーは、高結晶性の多軸セグメント化コポリマーであってもよく、セグメント化コポリマーはプレポリマーの合成を伴わない単一反応工程で合成されている。更に、セグメント化コポリマーはプレポリマーを欠いているので、ポリマー構造内に明確な「ブロック」は存在しない。さらなる実施態様において、ポリエステルは、少量の少なくとも1つの追加のモノマーを含む高ラクチドコポリマーであってもよい。「高い」とは、ポリマーが少なくとも50モル%のラクチド誘導反復単位、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上のラクチド誘導反復単位を含んでもよい。本開示内容によって、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、及び90~100%の範囲が含まれるラクチドのモル含量の範囲も想定される。
【0013】
なお更に好適実施態様において、高グリコリドコポリマーは、カプロラクトン及びトリメチレンカーボネートから結晶性プレポリマーの合成を必要とし、続いてプレポリマーをグリコリドとカプロラクトンで末端グラフト化して最終ブロックコポリマーを得る2工程プロセスで合成された高結晶性の多軸ブロックコポリマーであってもよい。この組成物は、4つの異なったブロック:3軸を備えた中央結晶性ブロックと、中央ブロックの3つの鎖末端のそれぞれから出ている3つの結晶性末端グラフトブロックとを含有する。
本開示内容の吸収性コポリマーは、固体状態において及び/又は溶融状態において行われる開環重合が含まれる方法によって形成され得る。好適方法において、本開示内容の吸収性コポリマーは溶融物で合成されてもよく、反応が合成されているコポリマーの融解温度より高い温度で行うことが必要である。他の好適方法において、本開示内容の吸収性コポリマーは、固体状態で合成されてもよく、又は反応生成物が撹拌するにはあまりに濃厚になりかつ/又は結晶し始めると反応を終わらせてもよい。溶融状態において及び8CV反応器のような大きい反応器において行われる開環重合(「ROP」)は、特に1キログラムより大きいバッチサイズが望ましい場合、本出願のコポリマーを形成するのに固体状態合成より優れている。
【0014】
一実施態様において、反応は、8CV反応器にモノマー及び開始剤を充填し、続いて窒素(g)下の系で反応器を100℃に加熱し、次に融解したモノマーと開始剤を撹拌して均質の混合物を生成し、最後に触媒を添加し、合成されているポリマーの融解温度より反応温度を上昇させることにより行われてもよい。反応器の内容物は「溶融物で」撹拌され、反応はポリマーへのモノマーの最大の変換まで引き起こされる。次に、最大変換に達したときに、融解したポリマーは反応器の底部から取り出される。この合成技術は、「溶融」技術と一般に呼ばれる。一方、固体状態の合成は、いずれか1つのバッチで合成することができるポリマー量を制限することになる。しかしながら、溶融状態でROPに適したより大きな反応器を利用することにより、ポリマーは、8CV反応器での7.5キログラムバッチで、又はより大きな反応器用の7.5キログラムよりもかなり多いより大きなスケールで製造されてもよい。これは、1リットルのケトルのようなより小さな反応容器で行われる固体反応と比較させている。反応用開始剤は、開環重合を開始させることのできる1~3個のヒドロキシル基を有する化合物が含まれてもよい。その例としては、1-デカノール、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、1,3,4-トリヒドロキシ-2-ブタノン及びグリセロール、又は上記の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一方、これらのROP反応に好ましい触媒はオクタン酸第一スズ(stannous octoate)である。しかしながら、当業者に既知の他の触媒を使ってもよい。本明細書に開示された方法から得られるポリマーは、構造が線状又は多軸のコポリマーであってもよく、それらはセグメント化又はブロックコポリマーのいずれかであってもよい。したがって、プレポリマーは、本開示内容のコポリマーの合成に使用されても使用されなくてもよい。
【0015】
図1は、本発明のポリマーの熱重量分析(TGA)を示すグラフである。半結晶性線状ブロックコポリマーを試験した。一例のためだけで限定することを意図するものではなく、プレポリマー及び半結晶性末端グラフトから誘導された中間ブロックを有するトリブロックコポリマーを試験した。一実施態様において、プレポリマーはTMC及びカプロラクトンを含み、末端グラフトはl-ラクチド及びTMCを含んだ。
図1が示すように、本開示内容において、触媒含量の減少によって熱安定性の増加が得られる。触媒量は、モノマーのモル数と触媒のモル数の比として記載され、触媒のモル数が分母であることから、より大きい比はより少ない触媒を意味する。
図1において、3本の曲線は、各々、異なる量の触媒を有するそれぞれ異なるポリマー組成を表している(グラフを左から右に見てM/Cが20,000、25,000、及び40,000)。更に、
図1が示すように、各々の組成物は、分解の開始に異なる温度を有する。従って、本開示内容のポリマーの熱安定性は、触媒の量が減少するのにつれて改善する。例えば、T3は最少量の触媒を有し、T2は次に少なく、T1は最も多いポリマーの触媒を有する。
窒素環境下20℃/分の速度で20℃~550℃に加熱する一定の方法を使用して熱重量分析(TGA)を行った。全ての試料を室温及び0.2トール未満の減圧で1週間乾燥させた。これらの一定の条件下で、熱安定性に対する残留モノマー含量及び触媒濃度の効果を分けた。4ロットの非最適化高ラクチドコポリマーをTGAで分析して、分解の開始温度を求めた。更に、35ロットの非最適化高ラクチドコポリマーを押出の前後で分析して、押出後の固有粘度(IV)保持を求めた。結果を以下の表1に示す。
【0016】
【0017】
一実施態様において、ラクチドベースのコポリマー(より特定の)反応が2つの独立した反応温度設定で行われ、高温でのみ低い転化率(転化率<92%未満)がもたらされ、低温でのみ過度の反応時間がもたらされる(>150時間)。溶融物の上下の2つの独立した反応温度の組み合わせによる全体の反応により、>92%の転化率及び<150時間の反応時間がもたらされる。第1の反応温度は溶融物より高く、反応は溶融状態で完了する。第2の反応温度は、固体状態で行われ、ポリマーが結晶化される。溶融物の上下の反応温度は、固体状態の反応温度よりも最低で5℃、好ましくは5~10℃、より好ましくは10~20℃、更により好ましくは>20℃だけ異ならなければならない。反応温度は、熱電対により浴温で測定した。これらの条件下で、ポリマーをバッチプロセスにおいて反応させ、反応容器の変化はない。容器タイプの変化は、水分の導入のような潜在的な汚染を与える。
【0018】
別の実施態様において、プレポリマーのモノマー対触媒の比は、結晶性セグメントについて>50%のラクチドを有する第2のモノマー充填物を添加した後の全モノマー対触媒の比が25,000、より好ましくは>30,000、更により好ましくは>50,000、更により好ましくは>100,000のM/Cより高い場合まで充分高くなければならない。より低いM/C値により、プレポリマーと、本開示内容のブロックコポリマーの合成方法について記載されるように続いての反応工程における末端グラフト用に準備されるモノマーとの早期反応が生じる。
早期反応は、プレポリマー上に末端ブロック/末端グラフトポリマー鎖を形成する前に均質性に必要なプレポリマーの液体モノマー中への完全な溶解を妨げる。結果として生じた溶解性の変化は、プレポリマーの完全な溶解を妨げ、それ故、ブロックコポリマーと、第2の充填物中のモノマーと反応することができなかった残りの溶解していないプレポリマーとの混合物を含んでいる。この結果は、視覚による不均質性によって又は
図9にショルダーピークとして示されるようにGPC分析によって確認される。任意により、プレポリマーと第2の充填物との完全な溶解及び混合の後により多くの触媒が反応容器に添加されてもよく、M/Cの低下が生じる。重合中に触媒が2つ以上の工程で供給されるこれらのような反応では、M/Cが115K、125K、150K、175K、190K、200K、215Kよりも大きいことが必要である。プレポリマーは、任意に追加のモノマーと反応させて可撓性結合セグメントを形成し、続いて第3のモノマー又はモノマーの混合物と反応させて末端ブロックを形成してもよい。第2及び第3のグラフト化反応の両方において、ブロックコポリマーの各ポリマーアームについて一貫した重合度だけでなく、反応器中のバルク組成物のポリマー鎖について同じ程度の重合度を有することが望ましい。GPC分析については、プレポリマー及び末端グラフトブロックから構成されるブロックコポリマーと反応されないか又は部分的に反応されるプレポリマーのブレンドが本質的に存在する場合、マルチモーダル結果が見られる。プレポリマーは一貫性がなく;ある部分は反応し、ある部分はモノマーの第2の充填物と反応しない。これにより、異なるポリマーのブレンドされた組成物がもたらされ、これは所望のポリマー内に分配されるアモルファスポリマーでさえあり得る。
【0019】
開環重合に好ましい触媒には、スズ(II)2-エチルヘキサノエート及びジブチルスズオキシドのような有機スズ化合物が含まれるが、他の代替物も含まれる。更に、開環重合に適切な開始剤には、ヒドロキシルをもった小分子、オリゴマー、ポリマー、無機塩、有機塩も含まれる。開始剤は、平均モル質量が1モル当たり1000g未満、又は1モル当たり500g未満、又は1モル当たり300g未満の小分子の形態であってもよく、開始剤のモル質量は単一モノマーの平均モル質量に匹敵する(ラクトンやカーボネートのような環状モノマーの平均モル質量は、典型的には1モル当たり100グラムと200グラムの間の平均モル質量を有する)。いくつかの実施態様において、開始剤は、単一のヒドロキシル基又はアミン基、又は2つ以上のヒドロキシル基又はアミン基、又は1つ以上のヒドロキシル基と組み合わせた少なくとも1つのアミン基を含み、開始剤は、一官能性ヒドロキシルをもった又はアミンをもった化学種、又は2つ以上の反応基を有するポリオール又はポリアミン、又は1つ以上のヒドロキシル基及び1つ以上のアミノ基を含むヒドロキシル-アミノ化合物の形態であってもよい。本明細書に開示されている適切な開始剤の組み合わせは、同一の全化学組成の反復単位を依然として有するが異なる構成を有する異なるポリマーの混合物を合成する単一の反応で使用してもよい。
【0020】
いくつかの実施態様において、触媒は、ラクトン、カーボネート及びモルホリンジオンが含まれるがこれらに限定されない環状モノマーの開環重合のための開始剤として役に立ってもよい。適切なモノマーの非限定例としては、L,L-ラクチドやD,L-ラクチドのようなラクチド、グリコリド、置換グリコリド、パラ-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、アルファ-アンゲリカラクトン、ガンマ-バレロラクトン及びデルタ-バレロラクトンが挙げられる。いくつかの実施態様において使用するのに適した追加のモノマーには、5員及び7員の環状エステル、カーボネート及び任意に組み合わせて存在してもよいアミド(例えば、環状アミド-エステル、モルホリンジオンとしても知られる)が含まれる。
本開示内容において参照される置換グリコリドは、一方又は両方のメチレン(-CH2-)炭素にプロトン以外の側鎖基を示し得る。置換基の非限定例としては、以下:直鎖又は分枝鎖であってもよく、官能化されていてもよい少なくとも2個の炭素を有する飽和炭化水素が挙げられ;いくつかの官能基は開環重合に先立って保護を必要とし、続いて重合が完了すると脱保護を必要とし;他の官能基は重合反応を妨害せず、保護/脱保護を必要とせず;いくつかの望ましい官能基が重合に関与して、主ポリマー鎖軸の分岐のような二次反応を引き起こし、これにより、超分岐ポリマーのような独特なポリマー構造の形成を可能にすることができる。
【0021】
グリコリドを変性するのに適切な追加の置換基には、環についてのメチレン炭素から芳香族基を分離する少なくとも1つの炭素を有する芳香族基が含まれてもよい(反応性の著しい低下を防止するために芳香環と環についての反応部位との間の分離を生じさせるため)。他の有用な置換基には、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素が含まれてもよく、不飽和は炭化水素の末端に(すなわちビニル末端基)又は内部に位置してもよく、不飽和炭化水素は脂肪族又は芳香族であってもよい。更に、臭素やヨウ素のようなハロゲンが適切な置換基として使用されてもよく-これらは重合中又は重合後の二次反応のための良好な脱離基として作用してもよく、ハロゲン原子がポリマー鎖に沿って充分に高い濃度で存在する場合にはハロゲンが放射線不透過性を付与することができる場合がある。
【0022】
更に、上記の置換基は、グリコリド環について単一の置換基として存在していてもよく、又はそれらは様々な組み合わせで存在してもよい。例えば、それらは重複して見られ、同じ又は反対の(パラ)炭素で存在し得る。あるいは、2つの化学的に異なる置換基が同一環に存在してもよく、置換基が同一炭素又は異なる炭素について存在することができる。グリコリドについてのメチレン炭素はsp3ハイブリダイゼーションを示すので、メチレン炭素についての2つのプロトンの各々は、本明細書に開示されているように置換されてもよい。更に、同一炭素について同じ又は異なる置換基が見られてもよい。置換グリコリドのキラリティーは、環に沿った置換基の配置によって決定される。
別の実施態様において、プレポリマーは、第2の充填物に溶解するために、最低110℃、より好ましくは>115℃、より好ましくは>120℃、更により好ましくは>130℃に加熱されなければならない。
【0023】
さらなる実施態様において、グリコリドベースのコポリマーは、プレポリマーのモノマー対触媒の比が、第2のモノマー充填物を結晶性セグメントの>50%グリコリドで添加した後の全モノマー対触媒の比のM/Cが90,000より大きく、より好ましくは>100,000、更により好ましくは>150,000、更により好ましくは>200,000である場合まで充分に大きくなければならない。プレポリマーにおける高いモノマー対触媒比により、プレポリマーの第2の充填物への早期反応がもたらされ、それ故、溶解性が変化する。得られた溶解性の変化は、プレポリマーの完全な溶解、それ故、第2の充填物中のモノマーと反応させることができなかったブロックコポリマーと残りの溶解していないプレポリマーの混合物を有する不均質なポリマーを妨げる。この結果は、視覚による不均一性によって確認される。任意により、プレポリマーと第2の充填物との完全な溶解及び混合後の反応容器により多くの触媒が添加され、M/Cの低下が生じる。重合中に触媒が2つ以上の工程で供給されるこれらのような反応において、完全な溶解及び均質性を達成するためにM/CがXよりも大きいことが必要である。
別の実施態様において、プレポリマーの分子量は10kDaより大きくなければならず、より好ましくは>15kDa、更により好ましくは>20kDaでなければならない。
別の実施態様において、プレポリマーの分子量は、10kDaを超え、より好ましくは>15kDa、更により好ましくは>20kDa、更により好ましくは>30kDa、更により好ましくは>50kDa、更により好ましくは>60kDa(供給源を含む)でなければならない。プレポリマーの分子量はGPCにより求められる。
本開示内容のために合成された開発用ロットは、低触媒濃度を使用した。反応の温度と時間は、この変化を考慮するように修正された。より低い触媒濃度及び新しい反応条件のために、最適化高ラクチドコポリマーの転化率が低下し、残りのモノマー含量が増加すると予想された。各最適化ロットの反応条件を以下の表2に記載する。
【0024】
【0025】
以下の表3は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)による試験されたポリマーとモノマーの曲線の下の面積を比較するデータを示すものである。全ての最適化されたロットは、新しい反応条件下で高い残りのモノマー含量を有する。ロット2d~4dは、著しく高い残りのモノマー含量を有する。ロット2dは、2つの独立した温度設定で反応させることにより、1つを溶融状態で、1つを固体状態及び20℃の温度差で反応させることにより、改善された転化(ロット3d及び4d)が可能である。この結果を、ロット3d及び4dにおける残りモノマーの減少によって表3に記載する。
【0026】
【0027】
対照及び最適化ロットの脱揮発後の分子量及び残りのモノマー含量の結果を表4に示す。変更された脱揮発手順は、対照値の下の残りのモノマー含量を減少させ、最適化ロットにおける平均残りのモノマー含量は1質量%未満であった。高ラクチドブロックコポリマーを含み、SMC22として記載されたロット1dと4dは共に>2.4dL/gの本規格外のI.V.を有した。更に、触媒濃度が低下した最適化ロットの各々のPDIは減少した。
【0028】
【0029】
最適化ロットと対照ロットのメルトフローインデックス(MFI)結果を以下の表5に示す。MFIは、一般に初期押出設定を予測するために使用される。ポリマー分子量、残りのモノマー含量、水分含量、温度、圧力、及び触媒濃度が含まれる脂肪族ポリエステルの多くの特性がMFIに影響を及ぼす。実施された方法は、205℃の一定温度及び3800グラムの一定質量からなるものであった。最適化ロット2d~4dにおいて、触媒濃度及び乾燥条件は一定のままであった。
これらの試料において、異なるMFI値は、ロット間の分子量及び残りのモノマー濃度の変動の産物であった。典型的には、溶融粘度はポリマーの分子量に直接関連すると予想される(溶融粘度は典型的には分子量の増加とともに増大する)。更に、残りのモノマー含量は、可塑剤として作用して溶融粘度を低下させることになる。ロット4dをロット3d及び2dと比較すると、ロット3d及び2dの分子量はロット4dよりも高いが、ロット3d及び2dの溶融粘度はMFI結果に従って低いことが明らかである。従って、ロット4dにおけるより低いモノマー含量は、モノマーの可塑化効果を減少させることによって溶融粘度を増加させるようである。概要として、溶融粘度は典型的には分子量の増加に伴って増大するが、ここでは、残りのモノマー含量又はその欠如により低分子量ポリマーの溶融粘度の増大がもたらされることが見られた。
【0030】
【0031】
分解の開始温度の結果を以下の表6に示す。各ポリマーを一定条件下で乾燥させた。ロット1dを4dと比較すると、ロット1dは、ロット4d(347.8℃)よりも低い分解開始温度(326.5℃)を有することが明らかである。両方のロットのポリマーは、同様の残りのモノマー含量を有したが、ロット4dはより少ない触媒を有し、ロット1dの25,000と比較して、40,000のモノマー対触媒比を有した。この実施例において、ロット4dの熱安定性の増加は、開始温度が21.3℃だけ上昇することによって示される。ロット4dを対照と比較すると、ロット4dは触媒及び残りのモノマーがかなり少なく、ロット4dの開始温度は対照と比較して28.1℃だけ上昇した。対照、ロット1d及びロット2dのTGAグラフを
図1に示す。熱安定性を高める効果は、曲線を右にシフトさせることによって支持され、それにより分解の開始温度を上昇させる。
【0032】
【0033】
【0034】
本開示内容によって複数の実施態様が可能である。例えば、
図6A及び6Bは、本開示内容の2つの実施態様示す図である。
図6Aは、半結晶性の多軸ブロックコポリマーの完全に拡張された鎖を示す図であり、末端グラフトセグメントと内部プレポリマー誘導セグメントの両方が結晶化可能である。
図6Aは、多軸ブロックコポリマー22及び半結晶性プレポリマー24の半結晶性末端グラフト20の一実施態様を示す図である。別の実施態様においては、
図6Bは、本開示内容の別の実施態様を示す図である。6Bは、3つのポリマーアモルファスアーム28を備えるアモルファス(結晶化のできない)多軸コア26を示す図であり、各々が結晶化可能な末端グラフト30を有する。
図7A及び
図7Bは、本開示内容のポリマー構築物の2つのさらなる別の実施態様を示す図である。7A及び7Bについては、図示されたプレポリマーはアモルファス又は結晶化可能であり得る。
図7Aは、末端グラフト36への可撓性リンカー接続プレポリマーなしで多軸ブロックコポリマー32を示す図である。クロスマーク38は、プレポリマー34と末端グラフト36との間の接合部を表すだけでなく、プレポリマー34のアーム40の完全に拡張された理論的立体構造を表すものである。
図7Bは、プレポリマー46から誘導されたブロック44とプレポリマー46から誘導されたコア50を有する末端グラフト48との間に可撓性リンカー42を有するポリマー構築物40を示し、コア50は結晶化可能であってもアモルファスであってもよい。末端グラフト48は、アモルファスであっても結晶化可能であってもよい。可撓性リンカー42は、最低10反復単位を有し、本明細書に記載されている他のモノマーと組み合わせてTMCから誘導されてもよい。
【0035】
図8は、グリコリド及びトリメチレンカーボネートから誘導されるコポリマーを形成する反復単位を示す化学構造である(
図11における要素11,12及び任意により13で表されるコポリマー)。
図8のポリマーの一実施形態の分析を
図10に示す。Xはグリコリド誘導反復単位を表し、Yはトリメチレンカーボネート誘導反復単位である。一実施態様において、化学構造のそれぞれのモル比はX + Y = 1.0であり、Xは約0.333であり、Yは約0.667である。図に示されるように、約33モル%及び67%(モル比)の反復単位は、それぞれグリコリド及びトリメチレンカーボネートから誘導される。
図8に示され
図11において大きなスケールで示されている省略されたポリマー構造は、バルクで合成されても溶液で合成されてもよく、反応は、開始剤及び触媒の存在下で、任意により溶液重合のための不活性有機溶媒と組み合わせて行われる。好適実施態様において、ポリマーはポリオール開始剤及び触媒としてのスズ(II)2-エチルヘキサノエートを使用する開環重合によりバルクで合成される。好ましくは、ポリオールは、3個以上の反応性ヒドロキシル基を有するので、重合により3つ以上の異なったポリマーアームを備えた星型構造を有するポリマーがもたらされ得る(ポリマーアーム又は鎖の正確な数は、開始剤によって表される反応性ヒドロキシル基の数に等しい)。ポリオールが対称性を示し、ヒドロキシル基が同一の又は非常に類似の反応速度を有することが望ましく、これは各ポリマーアームについて同様の鎖長が得られることを確実にするのに役立つ(
図11に示されるように)。トリエタノールアミンは、
図11にされている3アーム星型コポリマーを合成するのに適したポリオールの一例である。
【0036】
図11は、多軸ブロックコポリマー15の3アームの1つ11の末端ブロック14、ならびにプレポリマーセグメント12及び可撓性リンカー13を識別する図である。一実施態様において、末端ブロック14はグリコリド誘導反復単位から全体に形成されることが好ましいので、末端ブロックは他の星型ブロックコポリマーの末端ブロックと非常に結晶性の物理的架橋を形成し得る。対照的に、プレポリマー16は、プレポリマーセグメント12及び可撓性リンカー13から形成され得る。プレポリマー16は、エラストマーであることが意図され、最小限の結晶性又は好ましくは結晶性がないことを示さなければならない。可撓性結合セグメント13は、プレポリマーセグメント12を各アーム11についての末端ブロック14と共有結合してもよい。可撓性リンカー13は、全体にアモルファスであるポリ(トリメチレンカーボネート)の短い結合セグメントであることが好ましい。一方、アーム11及びプレポリマーセグメント12は、両方ともポリ(グリコリド・コ・トリメチレンカーボネート)であるが、一実施態様において、アーム11は、プレポリマーセグメント12よりも高い割合のグリコリド誘導反復単位を含有してもよい。グリコリドとトリメチレンカーボネートの反応速度の差のため(グリコリドがより速く反応する)、プレポリマーの化学組成は、末端ポリ(グリコリド)ブロックに達するまでポリマー鎖に沿って外側に移動するグリコリド含量が減少するはずである。したがって、合成が開始されると、全てのグリコリドが反応するまでグリコリドとトリメチレンカーボネートの両方が反応し、トリメチレンカーボネートのみが反応し続ける。
【0037】
反応の進行中にグリコリドの量が減少するのにつれて、プレポリマーセグメント12で表されるセグメントが合成され、かなりの量のトリメチレンカーボネートが残存する場合には、結合セグメント13は第1の反応工程において反応容器へのより多くのトリメチレンカーボネートの添加を必要とせずに形成し得る。この状況は、本開示内容によって好ましく教示されるように、プレポリマーがより少量の触媒の存在下で合成される場合に起こりやすく、ポリマー鎖に沿った組成のこの不一致は、モノマーの反応速度の差がより明らかであると低温で反応が行われる場合に見られやすい。
しかしながら、プレポリマー合成中により高い反応温度が使用される場合、より大きな程度のランダム化が起こり、グリコリドがより均一に分配される。次に、結合セグメント13によって示される可撓性結合セグメントを合成するために、追加のトリメチレンカーボネートが反応容器に添加され、第2の反応工程が行われることが必要になる。これらの2つの異なるシナリオのいずれかにおける最終反応工程は、グリコリドをプレポリマーにグラフトしかつ3つのポリマー鎖の全てに末端ブロックを形成させるためにグリコリドを反応容器に添加することを必要とする。この重合を成功させるためには、最小限の触媒(好ましくは150,000より多い全モノマー対触媒のモル比が必要であるが、より高いモノマー対触媒比、例えば200,000を使うことがより好ましい)を使用することが、特にプレポリマーが全ポリマーの30~45質量%(好ましくは35%)を占めることがある
図11の場合のように、最終ポリマー内のプレポリマーの割合を高くしようとする場合、及び最終反応工程がプレポリマーを溶融グリコリド中に完全に溶解した後に温度を上昇させて末端ブロックを合成する必要がある場合に必要である。2工程反応において、要素11,12及び13はプレポリマーと見なされる。3工程反応では、要素11及び12は反応速度の差に基づいてプレポリマーにおける異なる組成の2つの異なる領域を表す。両方の場合、2工程及び3工程の反応において、要素13は可撓性リンカーとみなされる。
【0038】
図12は、複数のセグメントを含む多軸ブロックコポリマー59の代替実施態様を示す図である。セグメント化プレポリマー61は、ランダム領域60及び移行部62から構成される。60及び62は、プレポリマー中の2つの異なる領域を示し、一実施態様においては、大部分のグリコリド単位が含有され(60)、移行部62は、少ないグリコリド反復単位が主により遅い反応速度から形成した場合に示している。可撓性リンカー64は、セグメント化プレポリマー61の合成後に別個の反応工程で形成されてもよい。末端グラフト66は、任意により高グリコリド又は高ラクチド末端ブロックであってもよい。
図13は、アーム82、84、86及び88を含む4つのアーム多軸コポリマー80を示す図である。4つのアーム82、84、86及び88の全ては、微細構造90を含んでいる。一実施態様において、アーム82は、4つのアームを有する多軸コポリマーの単一アームである。アーム82は、同じ組成92の多数の個々のアームから構成された垂直の向きの結晶ラメラであってもよい。アーム82及び86は結晶性であってもよく、84及び88はアモルファスであってもよい。82及び86ならびに84及び88は、可変の「幅」を有し得るので、アーム間に可変スペースがある。
図13における対向するアームの化学組成は、
図13と実質的に同じである。
図13は、2種類のポリマーアーム-アモルファス及び半結晶性からから構成される4アーム多軸星型ポリマーを示す図である。4つのアームは、コポリマー80の中心を通って延びる中心垂直軸94の周りに方向づけられている。
【0039】
図14は、鎖が折り畳まれた結晶をもたらす例示的なアーム96のポリマー鎖の折り畳みを示す
図13の抜粋図である。したがって、
図13の半結晶アーム82,84,86及び88は、
図14に示されるようにZ軸に平行又はほぼ平行に、及び結晶質ラメラ形態としてZ軸から外向きにレプテートしている。追加の4アーム星型ポリマーは、垂直に「積み重ね」、結晶成長に寄与している。ポリマー鎖の垂直組み込みにより、
図13に示されるように、Z軸に沿った結晶ドメインの垂直積み重ね及び成長がもたらされる。更に、アモルファスドメインは、Z軸から外側に伸びて結晶化ポリマー鎖に接続された鎖の組合せから形成し、鎖に沿って結晶性ラメラを出てアモルファス相と絡み合い、しばしば結晶性微細構造に再び入り、互いに結合したラメラ面上に「ループ」を形成し、2つの同様のアームの各々が同じ平面内に互いに対向して配置された組織化された構造を形成する。
図15は、非対称多軸コポリマー100を示す図である。図示された実施態様において、2つのアーム102及び104は組成が化学的に類似しているが、第3のアーム106は化学組成が異なる。アーム102は、プレポリマー112の1つのアームとして形成された内部アモルファスブロック108と、これに共有結合された外部半結晶ブロック110から構成されている。アーム102及び104以外の異なる反応工程で形成され得るアーム106は、第1の反応工程において形成され、続いて第2の反応工程が形成されて、アーム102及び104を形成し得る。あるいは、アーム106は初期反応工程の一部として形成されてもよく、アーム102、104及び106は組成が化学的に類似している。例えば、2工程反応を使って3アームアモルファスプレポリマーを形成してもよく、2つの保護されていないプレポリマーアーム上に末端結晶化可能ブロックを末端グラフトする開環重合を必要とする第2の反応工程前に、1つの末端ヒドロキシル基が表面で保護されてもよく、又は任意により表面に固定されてもよい。
【0040】
図16は、超分岐とみなされ得る個々のポリマー122を示す単一の微細構造120を示す図である。コア124は、中央位置128、本質的に又は実質的に微細構造120の中心で開始された方向づけられないアモルファスの不規則なポリマー鎖126によって形成され、ここでは、方向づけられないポリマー鎖126は外部の半結晶ブロック130に移行する。ブロック130は、鎖が折り畳まれた結晶構造を形成することによって、
図14に示されているように結晶化し得る。
図16の微細構造120は、鎖126の大きな空隙容積125を介してドラッグデリバリーシステムとして使用して、図示されていない生物活性剤を鎖126の構造内に分散させてもよい。コア124へ充填され得る生物活性剤のサイズ及び濃度は、生物活性剤によって占有され得る全体に利用可能な空隙容積に直接影響を及ぼすポリマー鎖126の数に左右される。外側シェル132は、半結晶ブロック130の鎖折り畳みにより、内部に分散された空隙125及び生物活性剤の保護層として働く強靭な保護シェルを形成する。生物活性剤は、シェル132が充分に分解してシェル132を通る生物活性剤の拡散のための充分な多孔性を可能にするまで、実質的に空隙125内に含まれてもよい。シェル132は、初期の生物活性放出を可能にし、続いてシェルが更に分解するのにつれて生物活性放出を増加するように設計されてもよい。空隙125の保護を与えるためにシェルにおける欠陥を避けることが好ましい。好適実施態様において、単一モノマーを使用して末端ブロック130を合成し、均一な結晶構造を可能にしてもよい。複数の微細構造120を一緒に使い、シェル132で互いに重なり合って、隣接する微細構造120間に結晶ドメインを形成してもよい。微細構造120は、フィルムに形成されてもよいし、個々の球体として使用して望ましいタイムスパンにわたって望ましい形態で生物活性剤の分散を可能にしてもよい。
【0041】
他の好適実施態様において、線状(一方向性及び二方向性)、多軸、星形、分岐状、グラフト、櫛状、刷毛状、円形及びこれらの組み合わせのような異なるポリマー構造を形成することが望ましい。しかしながら、コポリエステルの熱安定性を改善させることが必要であることから最小限の触媒を利用する同じ概念がなお必要であるので(第2/最終反応工程としてプレポリマーとモノマーとの均質混合を促進することに加えて)、極端又は顕著な分解を引き起こすことなくポリマーの融点より高い温度で処理され得る。
吸収性繊維は、当業者に知られているように溶融押出及びエレクトロスピニング技術を介して、本開示内容のポリマーから製造され得る。これらの繊維は、当業者に知られている方法を介して、バリア、ウェブ、メッシュ、又はファブリック(織布又は不織布)のような固体構築物に形成され得る。あるいは、部分的に吸収性の構築物は、吸収性ポリマー及びそれから誘導された繊維を、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリエチレンテレフタレートのような材料から誘導された非吸収性繊維と組み合わせることによって形成され得る。
【0042】
一実施態様において、メッシュは、経編み及び緯編みによって構成され得る。特定の編み込みパターンは、特定の医療用途の機械的強度要求に応じて選ばれ得る。繊維状構築物を形成するための異なる技術を独特な方法で組み合わせて、ハイブリッド構築物を作製することもできる。例えば、経編みメッシュにエレクトロスピニングして、エレクトロスパン面又は層を得ることができる。実際、本開示内容のポリマーは、本開示内容のポリマーから形成され得る、吸収性の、又は部分的に吸収性のメッシュ、パウチ、容器、バリア、支持構造などの様々な医療デバイスに組み込むための医療グレードのポリマーとして適している。
例えば、
図2は、経編み3バー構造が使われ得る本開示の一実施態様を示す図である。3バーパターンは、寸法及び機械的特性の向上、特に緯糸方向の安定性の向上について有利となり得る。更に、3バーパターンは、典型的には「より重い」ファブリックを生成する。一実施態様において、経編み3バー構造を使用して作製されたファブリックはシーリング用途に使われ得る。一実施態様において、バー1:1-0-0/0-1-1、バー2:2-3-2/1-0-1、バー3:1-0-1/1-2-1の3バー構成が使用され得る。
一方、
図3は、経編み2バー構造が使われ得る本開示内容の一実施態様を示す図である。一実施態様において、トリコット生地が製造されてもよい。トリコットは単純な構造で、短いアンダーラップの付いた軽量の生地を与える。一実施態様において、バー1:1-2/1-0及びバー2:1-0/1-2を含む2バー構成が使われ得る。
【0043】
図4は、「シャークスキン」として知られている別の経編み2バー構造を示す図である。シャークスキンは単純な2バー構造であるが、安定性の増加及び面積密度の増加がもたらされるより長い振り距離を有する。更に、シャークスキンパターンは収縮可能性の低下を示す。したがって、より剛直で安定した構造を与える。更に、シャークスキン構造の表面の質感は「粗い」ものであり、接着を生じることが望まれる医療用途に使用することができる。一実施態様において、2バー構造が使われてもよい、ここで、バー1:1-2-2/1-0-0及びバー2:1-0-1/3-4-3。
図5は、本開示内容で使われ得るハーフトリコットパターンを示す。ハーフトリコットパターンは面密度の低い構造をもたらし、それによって非常に軽い構造を与える。トリコットほど丈夫ではないが、製造が簡単であり、材料が少なくて済み、単純な構造である。一実施態様において、バー表記が1-2/1-0である構造が使われ得る。これは、ハーフトリコットパターンの一例であり、「1-2」は、位置1から位置2に1つの針に対して右から左に移動するときにガイドバーが重なることを意味する。「1-0」は、左から右に針に給糸することを意味する。
【0044】
図6A及び
図6Bは、アモルファスもしくは結晶化可能であってもよいプレポリマーと、更にプレポリマーから誘導されるポリマー軸と末端グラフト化末端ブロックとの間の可撓性結合セグメントを含む構造とを含む吸収性ブロックコポリマーの多軸構造を示す図である。適切な可撓性結合セグメントは、トリメチレンカーボネート及びイプシロン-カプロラクトンから、任意により組み合わせて誘導されてもよい。イプシロン-カプロラクトンが可撓性結合セグメントに選択される場合には、セグメントがアモルファスのままであり、鎖長がカプロラクトンの結晶化の閾値を超えないことを確実にする必要がある。一好適実施態様において、プレポリマーはグリコリド及びトリメチレンカーボネートから誘導され、アモルファスであり、可撓性結合セグメントはトリメチレンカーボネートから誘導され、末端グラフト化ブロックはグリコリドから誘導される。任意により、可撓性リンカーは、プレポリマーを形成する第1の重合反応の間に過剰のトリメチレンカーボネートが残ることを可能にする反応パラメーターの結果によって形成されるので、プレポリマーが形成後、残っているトリメチレンカーボネートが反応して可撓性リンカーを形成してもよい。リンカーを形成する第2の方法は、高温でプレポリマーを反応させてプレポリマーの無作為化及びプレポリマーの末端でのトリメチレンカーボネートの非セグメント化を確実にし、続いてより多くのトリメチレンカーボネートを反応容器に添加して結合セグメントを形成することである。グリコリドを反応容器に添加してトリメチレンカーボネートを完了まで反応させた後に末端グラフトブロックを形成する。この手順に従って製造したポリマーの特性を表8に示す。
【0045】
【0046】
いくつかの実施態様において、本開示内容の完全に又は部分的に吸収可能なバリア、ウェブ、メッシュ又はファブリックは、1種以上の生物活性剤又は治療剤だけでなく治療剤を送達する方法を更に含み得る。この方法は、メッシュ又はウェブが少なくとも1つのタイプのポリマー繊維及び1種以上の生物活性剤及び/又は治療剤を含んでいる治療部位にメッシュ又はウェブを適用する工程を含む。
いくつかの実施態様において、メッシュ又はウェブは、1種以上の生物活性剤及び/又は治療剤がコーティング全体に分散している、制御された薬剤送達のための吸収性ポリマー表面コーティングを含有し得る。あるいは、メッシュ又はウェブは、1種以上の生物活性剤及び/又は治療剤で含浸された繊維を含有してもよい(例えば、全体で援用されている米国特許第8,128,954号を参照されたい)。
【0047】
いくつかの実施態様において、ポリマー表面コーティングは、吸収性脂肪族ポリエステルの複数のコーティング又は層を有してもよく、コーティングをメッシュ表面に適用することができる。異なるコーティング層は、同一又は異なる生物活性剤及び/又は治療剤を含有してもよく、その薬剤は各層において同一又は異なる濃度で存在する。いくつかの実施態様において、コーティングは複数の層からなり、最内層から最外層への生物活性剤及び/又は治療剤の濃度勾配があるので、濃度は最内コーティング層で最も高く、最外コーティング層で最も低い。生物活性剤及び/又は治療剤は、コーティング層の各々の中に分散されていてもよく、又はそれらは層の一部にのみに分散されていてもよく、又はそれらは交互コーティング層に分散されていてもよいので交互層は生物活性剤及び/治療剤を欠いている。更に、最外層は、バースト放出効果の可能性を低減するために、生物活性剤及び/又は治療剤を完全に欠いていてもよい。勾配濃度設計が1種以上の生物活性剤及び/又は治療剤をコーティング層全体に分散させるために利用される場合、メッシュ表面に最も近い最内層からすべての層の最も外側である最外層まで減少する濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配は、メッシュの植込み後まもなくコーティングの表面から生物活性剤及び/又は治療剤の初期バースト放出を排除しないとしても減少させることを意図する。
【0048】
いくつかの実施態様において、コーティングポリマーは高分子量のカプロラクトンベースのコポリマーであり、カプロラクトン誘導反復単位が全組成中の反復単位の50%を超えて構成し、残りの反復単位はL-ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、及びパラ-ジオキサノンから選択されるモノマーから誘導することができる。複数のコーティング層がメッシュ又はウェブ上の表面コーティングを構成する場合、各層は同一又は異なるカプロラクトンベースのコポリマーから形成されてもよい。異なるコーティング層の疎水特性を調節することが望ましい場合、異なるコポリマーが使用される。より高いカプロラクトン含量を有するコポリマーは、より少ないカプロラクトン含量を有するコポリマーよりも疎水性である。いくつかの実施態様において、異なるコーティング層において組成勾配を有することが望ましい。例えば、最内層は、90モル%のカプロラクトン、続いて隣接する外側層において80%、70%及び60%であるコポリマーから形成されてもよく、カプロラクトン含量(及び疎水性特性)が最内層から最外層に向かって90%から60%に減少する。本発明のコーティングポリマーは、カプロラクトンとトリメチレンカーボネートのコポリマーである。
【0049】
さらなる実施態様において、プレポリマーは、DSCによって測定されるように<75J/g、好ましくは<70J/g、より好ましくは<65J/g、更により好ましくは<55J/g、更により好ましくは<45J/g、更により好ましくは<35J/gの融解熱を有する半結晶性脂肪族ポリエステルコポリマーを含んでもよい。プレポリマーは、グリコリド、ラクチド、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、モルホリンジオン、及びこれらの混合物のような環状モノマーを含んでもよい。プレポリマーの融点は、DSCで測定されるように<170℃、より好ましくは<150℃、更により好ましくは<120℃、更により好ましくは<100℃であってもよい。得られたプレポリマーは、結晶性末端グラフトの前に可撓性リンカーと反応させてもよい。可撓性リンカーは、最低10反復単位、より好ましくは>20、更により好ましくは>30反復単位、更により好ましくは>40を含んでいる。可撓性リンカーは、グリコリド、ラクチド、パラ-ジオキサノン、ε-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、モルホリンジオン、及びこれらの混合物のような環状モノマーが含まれる組成物とアモルファスセグメントを含んでもよい。結晶性末端グラフトは、少量の少なくとも1つの追加のモノマーを含有する高ラクチドコポリマーであってもよい。「高い」とは、ポリマーが少なくとも50モル%のラクチド誘導反復単位、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上のラクチド誘導反復単位を含有してもよいことを意味する。
ラクチドのモル含量の範囲も50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、及び90~100%の範囲が含まれる本開示内容の範囲内として想定される。更に、結晶性末端グラフトは、少なくとも50モル%のグリコリド誘導反復単位、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上のグリコリド誘導反復単位を含んでもよい。(
図12を参照されたい)グリコリドのモル含量の範囲もまた、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、及び90~100%の範囲が含まれる本開示内容の範囲内として想定される。(
図12を参照されたい)ポリマー全体は、線状又は多軸である開始剤を含んでもよい。
【0050】
さらなる実施態様において、第2のポリマーを、本開示内容の改善されたブロックコポリマーと組み合わせるか又はブレンドしてもよい。第2のポリマーは、ブロックコポリマーを含む組成物により高い強度を与える補強添加剤であってもよい。これは、ブロックコポリマー内に存在するプレポリマーの量がポリマー全体の25質量%を超える場合、特に適し、プレポリマーが50%に近づく場合にはなおさらである。追加のポリマーは、所望の機械的強度を与えるのに必要な程度まで結晶化することができないブロックコポリマーを、添加剤の存在下で実際に結晶化させることができる。これにより、ブレンドされた組成物のより高い程度の結晶化度又は結晶化度パーセントがもたらされる。更に、補強ポリマーは、ブロックコポリマーの単一の末端ブロックの鎖長の約2倍の鎖長を有してもよい。追加の補強ポリマーは、線状又は多軸であってもよい本明細書に開示されるブロックコポリマーの2つ以上の末端ブロックの間に物理的な絡み合いを形成することによってブロックコポリマーを強化しないのでより短い鎖長を有しなくてもよい。補強ポリマーは、同じ理論化学組成を有してもよく、それ故、ブロックコポリマーの末端ブロックを形成する反復単位と同一モノマーから誘導されてもよい。末端ブロックの重合には、プレポリマーもしくは可撓性結合セグメントのいずれかを形成する反応からの残りのモノマーが含まれてもよい。
【0051】
メッシュ構築物に表面コーティングを適用することは、特定の濃度で1種以上の治療剤と混合されたポリマーの液体溶液を使用した浸漬コーティング又はスプレーコーティング技術によって達成することができる。あるいは、液体溶液は、治療剤を含まないポリマーを含有してもよい。混合及び溶解は、カプロラクトンベースのコーティングポリマーを共通の有機溶媒及び特定量の治療剤と組み合わせることによって達成することができる。これにより、浸漬コーティング又はスプレーコーティングによってメッシュ表面に適用することができる特定の濃度の治療剤を有する溶液が得られる。複数のコーティング層を形成するために、異なる溶液をメッシュ表面に順次適用することができる。各溶液は異なる濃度の1種以上の治療剤を含有することができるので、濃度勾配を表面コーティング全体につくることができ、かつ/又は各溶液が異なる疎水性特性のポリマーを含有することができる。
代替の実施態様において、治療剤を含有する生体適合性ポリマー組成物は、治療剤の耐熱性によっては、冷間加工法又は熱間加工法によって調製することができる。熱により不活性化されやすい治療剤については、冷間加工法が好ましい。概要としては、メッシュ又はウェブのポリマー成分、主成分、副成分又はその両方は、治療剤の非存在下で完全に溶融され得る。溶融した組成物を室温以下に冷却して、組成物中のポリマーの結晶化を遅延させる。ある種の実施態様において、冷却は毎分約10℃の速度で行われる。次に、治療剤を室温以下で溶融組成物に添加し、組成物と徹底的に混合して均質ブレンドを生成する。材料の種類によっては、溶液ベースの混合手順を使ってもよい。
【0052】
代替の実施態様において、本開示内容のバリア、メッシュ又はウェブは、構築物全体とは対照的に、メッシュ又はウェブの1つ以上の特定の部分に適用される生物活性剤及び/又は治療剤を有してもよい。ある種の実施態様の範囲内で、メッシュ又はウェブは、1種以上の生物活性剤で又は所望の時間枠にわたって1種以上の生物活性剤を放出する組成物で浸漬被覆もしくは噴霧被覆することができる。更に他の実施態様において、繊維自体が生物活性剤を放出するように構成されてもよい(例えば、全体で援用されている米国特許第8128954号を参照されたい)。
治療剤には、線維症誘発剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗癒着剤、骨形成促進剤、石灰化促進剤、抗菌剤、抗生物質、免疫抑制剤、免疫賦活剤、防腐剤、麻酔剤、抗酸化剤、細胞/組織成長促進因子、リポ多糖錯化剤、抗瘢痕剤、抗新生物剤、抗がん剤、及びECM組み込みを支持する薬剤が含まれてもよい。
【0053】
線維症誘発剤の例としては、タルク粉末、金属ベリリウム及びその酸化物、銅、絹、シリカ、結晶質ケイ酸塩、タルク、石英粉及びエタノール;フィブロネクチン、コラーゲン、フィブリン、又はフィブリノーゲンから選択される細胞外マトリックス成分;ポリリジン、ポリ(エチレン・コ・ビニルアセテート)、キトサン、N-カルボキシブチルキトサン、及びRGDタンパク質からなる群から選択されるポリマー;塩化ビニル又は塩化ビニルのポリマー;シアノアクリレート及び架橋ポリ(エチレングリコール)-メチル化コラーゲンからなる群から選択される接着剤;炎症性サイトカイン(例えば、TGFベータ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFアルファ、NGF、GM-CSF、IGF-a、IL-1、IL-1-β、IL-8、IL-6、及び成長ホルモン);結合組織成長因子(CTGF);骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6又はBMP-7);レプチン、及びブレオマイシン又はこれらの類似体もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。任意により、デバイスは、細胞増殖を刺激する増殖剤を更に含んでいてもよい。増殖剤の例としては、デキサメタゾン、イソトレチノイン(13-シスレチノイン酸)、17-e-エストラジオール、エストラジオール、1-a-25ジヒドロキシビタミンD3、ジエチルスチベステロール、シクロスポリンA、L-NAME、オールトランスレチノイン酸(ATRA)、及びこれらの類似体及び誘導体を含んでもよい(米国特許出願公開第2006/0240063号を参照されたい、これは全体で援用されている)。
【0054】
抗真菌剤の例としては、ポリエン抗真菌剤、アゾール抗真菌剤、及びエキノカンジンが挙げられるが、これらに限定されない。
抗菌剤及び抗生物質の例としては、エリスロマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン及びマイトマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
抗炎症剤の例としては、ケトロラク、ナプロキセン、ジクロフェナクナトリウム及びフルルビプロフェンのような非ステロイド系抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されない。
抗癒着剤の例としては、タルク粉末、金属ベリリウム及びその酸化物、銅、絹、シリカ、結晶質ケイ酸塩、タルク、石英粉及びエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
骨形成又は石灰化促進剤の例としては、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、生物活性ガラス、骨形態形成タンパク質(BMP)、例えばBMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、及びBMP-7が挙げられるが、これらに限定されない。
免疫抑制剤の例としては、グルココルチコイド、アルキル化剤、代謝拮抗剤、及びシクロスポリン及びタクロリムスのようなイムノフィリンに作用する薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
免疫刺激剤の例としては、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、トール様受容体(TLR)アゴニスト、サイトカイン受容体アゴニスト、CD40アゴニスト、Fc受容体アゴニスト、CpG含有免疫刺激核酸、補体受容体アゴニスト、又はアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。
防腐剤の例としては、クロルヘキシジン及びヨウ化チベゾニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
抗酸化剤の例としては、抗酸化ビタミン、カロチノイド、及びフラボノイドが挙げられるが、これらに限定されない。
麻酔剤の例としては、リドカイン、メピバカイン、ピロカイン、ブピバカイン、プリロカイン及びエチドカインが挙げられるが、これらに限定されない。
細胞成長促進因子の例としては、表皮増殖因子、ヒト血小板由来tgf-b、内皮細胞増殖因子、胸腺細胞活性化因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞増殖因子、フィブロネクチン又はラミニンが挙げられるが、これらに限定されない。
リポ多糖類錯化剤の例としては、ポリミキシンが挙げられるが、これに限定されない。
過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル及び過酸化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
抗新生物剤/抗がん剤の例としては、パクリタキセル、カルボプラチン、ミコナゾール、レフルナミド、及びシプロフロキサシンが挙げられるが、これらに限定されない。
抗瘢痕剤の例としては、タキサンのような細胞周期阻害剤、セロリムス又はバイオリムスのような免疫調節剤が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、paras.64~363、我々一同の米国特許出願公開第2005/0149158号(これは本明細書に全体で援用されている)も参照されたい)。
ECM組込みを支持する薬剤の例としては、ゲンタマイシンが挙げられるが、これに限定されない。
ある種の治療形態において、同一ポリマー組成物中の物質/薬剤の組み合わせは、最適な効果を得るために有効であることができることが認識される。したがって、例えば、抗菌剤及び抗炎症剤を単一のコポリマーに組み合わせて、両方の有効性を与えてもよい。
本明細書の開示内容は、射出成形品、フィルム、非多孔質フィルム、薬剤送達媒体、微粒子マイクロ/ナノ薬剤送達媒体、メッシュ、不織物品、編物、織物、外科用メッシュ、体内管腔用生体吸収性ステント、3-D印刷物、薬剤コーティング、一時的植込み剤及びこれらの構成要素、及びその場で形成する医療用品と関連して使用され得る。
【0057】
特に明記しない限り、本明細書中で使用される用語及び句及びその変形は、他に明白に述べられていない限り、限定するのではなく、無制限として解釈されるべきである。同様に、接続詞「及び」に結合された項目のグループは、それらの項目の各々及びすべてがグループに存在することを必要とするものとして読まれるべきではなく、特に明記しない限り、「及び/又は」と読みとられるべきである。同様に、接続詞「又は」に結合された項目のグループは、そのグループ間の相互排他性を必要とするものとして読まれるべきではなく、そうでないと明記されていない限り「及び/又は」として読まれるべきである。
更に、本開示内容の項目、要素、又は構成要素は、単数形で記載又は請求されてもよいが、単数形への限定が明示されない限り、複数形がその範囲内にあると考えられる。「1つ以上」、「少なくとも」、「しかしこれに限定されない」又は他の同様の句のような広範な語句の存在は、場合によってはより狭い例が、そのような広範なフレーズが存在しなくてもよい場合に意図されるか又は必要とされることを意味するものとは読まれない。
本主題は、特定の例示的な実施形態及びその方法に関して詳細に記載されてきたが、当業者は、上記の理解を達成すると、そのような実施態様の変更、変形及び等価物を容易にもたらし得ることを理解するであろう。したがって、本開示内容の範囲は、限定ではなく一例としてあり、主題の開示内容は、本明細書に開示された教示を使用して当業者に容易
に明らかであるように本主題に対するそのような変更、変形及び/又は追加を含むことを排除しない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕プレポリマーが含まれる、少なくとも3軸を有する多軸コアであって、その少なくとも3軸がポリマー鎖を含んでいる、前記多軸コアと、
少なくとも1つの可撓性結合セグメントと、
結晶化のできる少なくとも1つの環状モノマーから誘導された反復単位を含む少なくとも1つのポリマー末端グラフトであって、その少なくとも1つのポリマー末端グラフトが少なくとも3軸の各々に取り付けられている、前記少なくとも1つのポリマー末端グラフトと、
を含むことを特徴とする吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔2〕前記多軸コアが、結晶化可能なポリマー鎖セグメントを含む、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔3〕前記多軸コアが、アモルファス鎖セグメントを含む、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔4〕前記可撓性結合セグメントと、前記結晶化可能な環状モノマーとが。共通のモノマーを共有している、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔5〕前記可撓性結合セグメントが、前記多軸コアと同一のプレポリマー及び少なくとも1つのポリマー末端グラフトと同一の結晶化可能な環状モノマーから構成される、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔6〕前記プレポリマーが、L,L-ラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド、置換グリコリド、パラ-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、アルファ-アンジェリカラクトン、ガンマ-バレロラクトン、及びデルタ-バレロラクトン、又はこれらの組み合わせからなる群から形成されるホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであってもよい、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔7〕前記プレポリマーが、イプシロン-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、又はこれらの2つの組み合わせから誘導される、前記〔6〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔8〕前記プレポリマーが、グリコリド、トリメチレンカーボネート又はこれらの2つの組み合わせから誘導される、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔9〕前記コポリマーが、少なくとも3軸にグラフトされた結晶化可能な末端ブロックを含む少なくとも3軸を有する中央の結晶化可能なコアを含む少なくとも4つの異なったブロックを含む、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔10〕前記少なくとも1つの結晶化可能な環状モノマーが、L,L-ラクチド及びD,L-ラクチド、グリコリド、置換グリコリド、パラ-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、トリメチレンカーボネート、イプシロン-カプロラクトン、アルファ-アンジェリカラクトン、ガンマ-バレロラクトン及びデルタ-バレロラクトン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔11〕前記可撓性結合セグメントが、トリメチレンカーボネート、ε-カプロラクトン、又はこれらの2つの組み合わせから誘導されてもよい、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔12〕吸収性バリア、ウェブ、メッシュ又はファブリックを更に含んでいる、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔13〕前記コポリマーが、経編みメッシュに形成される、前記〔12〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔14〕制御された薬剤送達のための吸収性ポリマー表面コーティングを更に含む、前記〔1〕に記載の吸収性脂肪族ポリエステルコポリマー。
〔15〕吸収性脂肪族ポリエステルコポリマーの製造方法であって、
反応器にモノマー、開始剤及び触媒を充填する工程であって、モノマー対触媒比が少なくとも25,000であり、
前記開始剤が、開環重合を開始させることのできる少なくとも1つのヒドロキシル基を有し、
前記モノマーが、少なくとも1つの環状モノマーを含む、工程、
前記反応器を少なくとも100℃に加熱する工程、
前記モノマー、開始剤及び触媒を撹拌して均質混合物プレポリマーを形成する工程であって、前記プレポリマーの質量が、10kDaより大きい、工程、及び
複数のアモルファスプレポリマー軸及び各軸から出ている結晶性末端グラフトを有するコポリマーを形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
〔16〕触媒が、オクタン酸第一スズである、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記開始剤が、ヒドロキシルを有する小分子、オリゴマー、ポリマー、及び無機塩並びに有機塩、又は上記の組み合わせからなる群から選択される、前記〔15〕に記載の方法。
〔18〕前記開始剤が、1-デカノール、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、1,3,4-トリヒドロキシ-2-ブタノン、グリセロール又は上記の組み合わせからなる群から選択される、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記モノマーが、ラクチド、トリメチレンカーボネート、及び/又はε-カプロラクトンから誘導されたコポリマー又はターポリマーである、前記〔15〕に記載の方法。
〔20〕前記モノマーが、グリコリド、トリメチレンカーボネート及び/又はε-カプロラクトンから誘導されたコポリマー又はターポリマーである、前記〔15〕に記載の方法。
〔21〕前記モノマーが、置換グリコリドである、前記〔15〕に記載の方法。
〔22〕触媒の第2の充填物が、反応器に添加される、前記〔15〕に記載の方法。
〔23〕反応中に2つの独立した温度設定が確立される、前記〔15〕に記載の方法。