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特許7549636電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240904BHJP
【FI】
H02M7/48 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022192146
(22)【出願日】2022-11-30
(65)【公開番号】P2024079290
(43)【公開日】2024-06-11
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】野々山 和徳
(72)【発明者】
【氏名】今枝 智明
(72)【発明者】
【氏名】久保山 宗
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-102265(JP,A)
【文献】特開2012-016161(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115090(WO,A1)
【文献】特開2014-033565(JP,A)
【文献】特開2002-354827(JP,A)
【文献】特開2016-046926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている二次側に出力する電力変換回路と、
前記電力変換回路を制御する制御部と、を備え、
前記電力変換回路は、
前記一次側の正極及び負極の間に生成された直流電圧を変圧して、第1点と前記負極に接続される第2点との間に変圧された直流電圧を生成する変圧回路と、
前記第1点と中性点との間を接続する第1コンデンサと、
前記第2点と前記中性点との間を接続する第2コンデンサと、
少なくとも、前記第1点及び前記中性点の間の直流電圧と、前記中性点及び前記第2点の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換して出力する逆変換回路と、を有し、
前記制御部は、前記二次側への前記三相交流の出力を開始する前に、前記中性点が接地電位に接続された接地状態で、前記変圧回路による変圧動作を開始する、電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換回路は、
前記二次側において接地電位に接続されていない相に接続される第1端及び第2端と、
前記二次側において接地電位に接続された相に接続される第3端と、を更に有し、
前記逆変換回路は、
少なくとも、前記第1点及び前記中性点の間の直流電圧と、前記中性点及び前記第2点の間の直流電圧とを交流電圧に変換して、前記第1端及び前記第2端の間に出力するスイッチング回路と、
前記中性点と前記第3端とを前記スイッチング回路を介さずに接続する接続線と、を含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記スイッチング回路は、前記第3端に対する前記第1端の線間電圧と、前記第3端に対する前記第2端の線間電圧との間で、振幅が互いに等しく、位相差が60°となるように、前記第1端及び前記第2端の間に交流電圧を出力する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換回路は、
接地電位と前記正極との間を接続する第3コンデンサと、
接地電位と前記負極との間を接続する第4コンデンサと、を更に有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記中性点が接地電位に接続されていない非接地状態から、前記接地状態に切り替えた後に、前記変圧回路による変圧動作を開始する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記中性点が接地電位に接続されていない非接地状態から、前記接地状態に切り替えた後に、前記変圧回路による変圧動作を開始し、
前記電力変換回路は、
前記スイッチング回路と前記第1端との間を切断又は接続する第1解列リレーと、
前記スイッチング回路と前記第2端との間を切断又は接続する第2解列リレーと、
前記中性点と前記第3端との間を切断又は接続する第3解列リレーと、を更に有し、
前記制御部は、前記第1解列リレー及び前記第2解列リレーを開状態に維持したまま、前記第3解列リレーを開状態から閉状態に切り替えることで、前記非接地状態から前記接地状態に切り替える、請求項2又は3に記載の電力変換装置。
【請求項7】
接地電位に接続されている部材を更に備え、
前記電力変換回路は、前記中性点と前記部材との間を切断又は接続するスイッチを有し、
前記制御部は、前記スイッチを開状態から閉状態に切り替えることで、前記非接地状態から前記接地状態に切り替える、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電力変換回路は、前記正極及び前記負極それぞれと接地電位との間の絶縁抵抗を検出する検出回路を更に有し、
前記スイッチは、前記検出回路の接地電位に接続されている点と、前記中性点との間を接続する、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
太陽光の入射に応じて発電を行う太陽光発電装置と、
一次側である前記太陽光発電装置から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている二次側に出力する電力変換回路と、
前記電力変換回路を制御する制御部と、を備え、
前記電力変換回路は、
前記太陽光発電装置の正極及び負極の間に生成された直流電圧を変圧して、第1点と前記負極に接続される第2点との間に変圧された直流電圧を生成する変圧回路と、
前記第1点と中性点との間を接続する第1コンデンサと、
前記第2点と前記中性点との間を接続する第2コンデンサと、
少なくとも、前記第1点及び前記中性点の間の直流電圧と、前記中性点及び前記第2点の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換して出力する逆変換回路と、を有し、
前記制御部は、前記三相交流の出力を開始する前に、前記中性点が接地電位に接続された接地状態で、前記変圧回路による変圧動作を開始する、太陽光発電システム。
【請求項10】
逆変換回路と変圧回路とを有する電力変換回路を用いて、一次側から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている二次側に出力する出力工程と、
前記出力工程の前に、前記電力変換回路の動作を開始させる準備工程と、を含み、
前記出力工程は、
前記一次側の正極及び負極の間に生成された直流電圧を前記変圧回路により変圧して、第1点と前記負極に接続される第2点との間に変圧された直流電圧を生成することと、
少なくとも、前記第1点及び中性点の間の直流電圧と、前記中性点及び前記第2点の間の直流電圧とを、前記逆変換回路により三相交流電圧に変換して出力することと、を含み、
前記電力変換回路は、
前記第1点と前記中性点との間を接続する第1コンデンサと、
前記第2点と前記中性点との間を接続する第2コンデンサと、を更に有し、
前記準備工程は、前記中性点が接地電位に接続された接地状態で、前記変圧回路による変圧動作を開始することを含む、電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流入力部間に直列接続された複数のコンデンサと、複数のコンデンサ同士の接続部を三相3線式の系統電源の接地された相に接続し、接地されていない相と直流入力部との間をオン・オフする電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-102265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、三相交流の出力の安定化に有用な電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、一次側から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている二次側に出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御する制御部と、を備える。電力変換回路は、一次側の正極及び負極の間に生成された直流電圧を変圧して、第1点と負極に接続される第2点との間に変圧された直流電圧を生成する変圧回路と、第1点と中性点との間を接続する第1コンデンサと、第2点と中性点との間を接続する第2コンデンサと、少なくとも、第1点及び中性点の間の直流電圧と、中性点及び第2点の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換して出力する逆変換回路と、を有する。制御部は、二次側への三相交流の出力を開始する前に、中性点が接地電位に接続された接地状態で、変圧回路による変圧動作を開始する。
【0006】
本開示の一側面に係る太陽光発電システムは、太陽光の入射に応じて発電を行う太陽光発電装置と、一次側である太陽光発電装置から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている二次側に出力する電力変換回路と、電力変換回路を制御する制御部と、を備える。電力変換回路は、太陽光発電装置の正極及び負極の間に生成された直流電圧を変圧して、第1点と負極に接続される第2点との間に変圧された直流電圧を生成する変圧回路と、第1点と中性点との間を接続する第1コンデンサと、第2点と中性点との間を接続する第2コンデンサと、少なくとも、第1点及び中性点の間の直流電圧と、中性点及び第2点の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換して出力する逆変換回路と、を有する。制御部は、三相交流の出力を開始する前に、中性点が接地電位に接続された接地状態で、変圧回路による変圧動作を開始する。
【0007】
本開示の一側面に係る電力変換方法は、逆変換回路と変圧回路とを有する電力変換回路を用いて、一次側から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている二次側に出力する出力工程と、出力工程の前に、電力変換回路の動作を開始させる準備工程と、を含む。出力工程は、一次側の正極及び負極の間に生成された直流電圧を変圧回路により変圧して、第1点と負極に接続される第2点との間に変圧された直流電圧を生成することと、少なくとも、第1点及び中性点の間の直流電圧と、中性点及び第2点の間の直流電圧とを、逆変換回路により三相交流電圧に変換して出力することと、を含む。電力変換回路は、第1点と中性点との間を接続する第1コンデンサと、第2点と中性点との間を接続する第2コンデンサと、を更に有する。準備工程は、中性点が接地電位に接続された接地状態で、変圧回路による変圧動作を開始することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、三相交流の出力の安定化に有用な電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、太陽光発電システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、中性点を接地せずに出力を開始した場合の電圧変化の一例を示す図である。
図3図3(a)、図3(b)、及び図3(c)は、中性点を接地せずに出力を開始した場合の電圧変化の一例を示す回路図である。
図4図4は、中性点を接地して出力を開始した場合の電圧変化の一例を示す図である。
図5図5は、制御回路のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、制御回路が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、電力変換回路の一例を示す模式図である。
図8図8は、検出回路の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1には、太陽光発電システムの一例が模式的に示されている。図1に示される太陽光発電システム1は、太陽光の入射に応じて発生する直流を、電力系統4に対応する三相交流に変換し、電力系統4に出力するシステムである。電力系統4は、一般家庭及び工場等の需要家に交流電力を供給する系統である。電力系統4は、電力会社等により運営される商用の電力系統であってもよい。本開示では、電力系統4に対応する三相交流における3つの相それぞれを、「R相」、「S相」、及び「T相」と称する。電力系統4は、R相4Rと、S相4Sと、T相4Tとを有する。S相4Sは、接地電位V0に接続されており(接地されており)、R相4R及びT相4Tは、接地電位V0に接続されていない。
【0012】
太陽光発電システム1は、太陽光発電装置2と、電力変換装置8とを有する。太陽光発電装置2は、直流電源の一例であり、太陽光の入射に応じて発電を行う装置である。太陽光発電装置2は、太陽光の入射に応じて生成した直流を正極2P及び負極2Nの間に出力する。太陽光発電装置2は、太陽光の入射に応じた直流電圧を生成する太陽電池を含む。
【0013】
(電力変換装置)
電力変換装置8は、一次側から供給される直流を三相交流に変換して、二次側に出力する装置である。電力変換装置8は、例えば、直流電源である太陽光発電装置2(一次側)が生成した直流電力を三相交流電力に変換して、電力系統4(二次側)に出力する。電力変換装置8は、三相交流電力を電力系統4に出力する動作と、三相交流電力を電力系統4に出力せずに待機する動作とを交互に繰り返してもよい。例えば、電力変換装置8は、太陽光発電装置2が生成した直流電力が所定レベルよりも大きい期間において、三相交流電力を電力系統4に出力することを継続し、太陽光発電装置2が生成した直流電力が所定レベル以下である期間において、三相交流電力を電力系統4に出力せずに待機する。
【0014】
一例では、日の出時刻の前後において、電力変換装置8は、電力系統4に三相交流電力を出力しない待機状態から、電力系統4に三相交流電力を出力する動作状態に遷移する。日の入り時刻の前後において、電力変換装置8は、電力系統4に三相交流電力を出力する動作状態から、電力系統4に三相交流電力を出力しない待機状態に遷移する。電力変換装置8は、電力変換回路10と、制御回路100(制御部)とを有する。
【0015】
<電力変換回路>
電力変換回路10は、一次側から供給される直流を三相交流に変換して、二次側に出力する回路である。電力変換回路10は、例えば、一次側の直流電源である太陽光発電装置2から供給される直流電力を三相交流電力に変換して、二次側の電力系統4に出力する。電力変換回路10は、太陽光発電装置2から供給される直流電圧を変圧したうえで、変圧された直流電圧を三相交流電圧に変換する。電力変換回路10を形成する各種の回路部品は、電力変換装置8が備える筐体12に収容されている。筐体12(部材)は、接地端14を介して接地電位V0に接続されていてもよい。
【0016】
電力変換回路10は、入力端16Pと、入力端16Nとを含む。入力端16Pは、正極2Pに接続され、入力端16Nは、負極2Nに接続される。入力端16P及び入力端16Nの間には、太陽光発電装置2における正極2P及び負極2Nの間に生成される電圧が供給される。以下では、太陽光発電装置2における正極2P及び負極2Nの間に生成され、入力端16P及び入力端16Nの間に供給される電圧(直流電圧)を、「電圧V1」と表記する。正極2P及び入力端16Pは互いに同電位であり、負極2N及び入力端16Nは互いに同電位である。
【0017】
電力変換回路10は、変圧回路20と、第1点31と、第2点32とを含む。変圧回路20は、電圧V1を変圧して、第1点31及び第2点32の間に変圧された直流電圧を生成する回路である。以下では、変圧回路20を介して第1点31及び第2点32の間に出力される電圧(直流電圧)を、「電圧V2」と表記する。変圧回路20が変圧動作を行っている間、電圧V2の値は電圧V1の値よりも大きい値から小さい値までの間を変化し得る。変圧回路20が変圧動作を行っていない間、電圧V2の値は電圧V1の値と略一致する。
【0018】
変圧回路20は、電圧V1を変圧して、変圧された状態の電圧V2を出力可能であれば、どのように構成されていてもよい。変圧回路20は、変圧動作として昇圧動作を行う昇圧回路であってもよく、変圧動作として降圧動作を行う降圧回路であってもよい。変圧回路20は、昇圧動作及び降圧動作の双方を行うことが可能な昇降圧回路であってもよい。以下では、変圧回路20が昇圧回路である場合を例にして説明する。変圧回路20は、例えば、コンデンサ22、コイル24、ダイオード26、及びスイッチ素子28を含む昇圧チョッパ型の回路である。変圧回路20は、制御回路100の動作指示により、スイッチ素子28のオン状態及びオフ状態の切り替えが繰り返されることで、昇圧を行ってもよい。
【0019】
第1点31は、変圧回路20に含まれる回路要素を介して正極2P(入力端16P)に接続される。図1に示される例では、第1点31は、コイル24及びダイオード26を介して正極2Pに接続される。第2点32は、変圧回路20に含まれる回路要素を介さずに負極2N(入力端16N)に接続される。第2点32は、変圧回路20の動作有無によらずに、負極2Nと同電位(実質的に同じ電位)に維持される。
【0020】
電力変換回路10は、中性点33と、第1コンデンサ35と、第2コンデンサ36と、逆変換回路40とを含む。中性点33は、第1コンデンサ35を介して第1点31に接続される。すなわち、第1コンデンサ35は、第1点31と中性点33との間を接続する。中性点33は、第2コンデンサ36を介して第2点32に接続される。すなわち、第2コンデンサ36は、第2点32と中性点33との間を接続する。第1コンデンサ35の容量及び第2コンデンサ36の容量は、互いに略一致してもよい。この場合、第1点31及び中性点33の間と、中性点33及び第2点32の間とにおいて、電圧V2が分圧されて得られる電圧同士は、互いに略一致する。
【0021】
逆変換回路40は、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換する回路である。逆変換回路40は、これらの2つの直流電圧と、第1点31及び第2点32の間の直流電圧(電圧V2)とを三相交流電圧に変換してもよい。電力変換回路10は、出力端18Rと、出力端18Sと、出力端18Tとを含む。出力端18R(第1端)及び出力端18T(第2端)は、電力系統4において接地電位V0に接続されていないR相4R及びT相4Tにそれぞれ接続される。出力端18S(第3端)は、電力系統4において接地電位V0に接続されたS相4Sに接続される。
【0022】
逆変換回路40は、例えば、スイッチング回路42と、接続線44とを含む。スイッチング回路42は、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを交流電圧に変換して、出力端18R及び出力端18Tの間に出力する。スイッチング回路42は、第1点31及び中性点33の間と、中性点33及び第2点32の間とにおける2つの直流電圧を交流電圧に変換してもよい。スイッチング回路42は、第1点31及び中性点33の間と、中性点33及び第2点32の間と、第1点31及び第2点32の間とにおける3つの直流電圧を交流電圧に変換してもよい。
【0023】
スイッチング回路42は、3レベルのインバータ回路である。スイッチング回路42は、複数のスイッチ素子によって、第1点31、第2点32、中性点33、第1コンデンサ35、及び第2コンデンサ36を含む入力側と、出力端18R,18S,18Tを含む出力側との接続状態を変更する。スイッチング回路42は、上記接続状態を変更することにより、スイッチング回路42に一次側から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、交流電圧を出力側に出力する。
【0024】
スイッチング回路42が有する複数のスイッチ素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、又はパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。スイッチング回路42が有する複数のスイッチ素子それぞれでは、制御回路100からのゲート駆動信号に応じてオン状態及びオフ状態が切り替わる。接続線44は、中性点33と出力端18Sとをスイッチング回路42を介さずに接続する線である。接続線44には、上記入力側及び上記出力側の間の接続状態を変更するためのスイッチ素子が設けられていない。スイッチング回路42は、接続線44により中性点33が電力系統4のS相4Sに接続された状態が維持された状態で、第1点31、第2点32、及び中性点33のそれぞれと、電力系統4のR相4R及びT相4Tとの間を接続及び遮断することで、電力系統4に対応する三相交流を生成する。
【0025】
スイッチング回路42は、出力端18Sに対する出力端18Rの線間電圧Vrsと、出力端18Sに対する出力端18Tの線間電圧Vtsとの間で、振幅が互いに等しく、位相差が60°となるように、出力端18R及び出力端18Tの間に交流電圧を出力してもよい。すなわち、スイッチング回路42は、線間電圧Vrsの振幅が、線間電圧Vtsの振幅に等しく、線間電圧Vrsと線間電圧Vtsとの位相差が60°となる電圧指令に基づき交流電圧を生成する。この場合、電力系統4のR相4R、S相4S、及びT相4Tに対して、線間電圧Vrs,Vst,Vtrの互いの振幅の時間平均値が等しく、これらの線間電圧の位相が120°ずつ異なるように三相交流電圧が出力される。
【0026】
電力変換回路10は、解列リレー50Rと、解列リレー50Sと、解列リレー50Tとを有する。解列リレー50R,50S,50Tは、太陽光発電装置2及び電力変換回路10を、電力系統4から切り離すことが可能な開閉部材である。解列リレー50R,50S,50Tでは、制御回路100により、開状態と閉状態とが個別に切り替えられてもよい。
【0027】
解列リレー50R(第1解列リレー)は、スイッチング回路42と出力端18Rとの間を切断又は接続する。解列リレー50Rが開状態である場合に、スイッチング回路42と出力端18Rとの間が切断される(接続されていない状態となる)。解列リレー50Rが閉状態である場合に、スイッチング回路42と出力端18Rとの間が接続される。解列リレー50T(第2解列リレー)は、スイッチング回路42と出力端18Tとの間を切断又は接続する。解列リレー50Tが開状態である場合に、スイッチング回路42と出力端18Tとの間が切断される。解列リレー50Tが閉状態である場合に、スイッチング回路42と出力端18Tとの間が接続される。
【0028】
解列リレー50S(第3解列リレー)は、接続線44を介して中性点33に接続されている。解列リレー50Sは、中性点33と出力端18Sとの間を切断又は接続する。解列リレー50Sが開状態である場合に、中性点33と出力端18Sとの間が切断される。この場合、接地されたS相4Sに中性点33が接続されないので、中性点33は、接地電位V0に接続されていない状態となる。解列リレー50Sが閉状態である場合に、中性点33と出力端18Sとの間が接続される。この場合、S相4Sに中性点33が接続されるので、中性点33は、接地電位V0に接続された状態となる。
【0029】
解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの全てが閉状態(オン状態)である場合、電力変換装置8から電力系統4に三相交流電圧が出力可能な状態となる。解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの少なくとも1つが開状態(オフ状態)である場合、電力変換装置8から電力系統4に三相交流電圧が出力されない。電力変換装置8は、電力系統4に三相交流電圧を出力している間において、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの全てを閉状態に維持する。電力変換装置8は、電力系統4に三相交流電圧を出力せずに待機している間において、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの全てを開状態に維持する。
【0030】
出力端18R、出力端18S、及び出力端18Tと、電力系統4との間には、漏電ブレーカ6が設けられている。すなわち、太陽光発電システム1は、電力変換装置8と電力系統4との間に設けられた漏電ブレーカ6を備える。漏電ブレーカ6は、例えば、電流センサを含む。漏電ブレーカ6の電流センサは、逆変換回路40と電力系統4の各相(R相4R、S相4S、及びT相4T)との間に流れる電流の大きさを表す電気信号を出力する。漏電ブレーカ6は、例えば、電流センサから得られる電気信号から零相電流の大きさを求め、零相電流の大きさが所定の解列レベルを超えた場合に、電力変換装置8と電力系統4との間を遮断するように構成されてもよい。
【0031】
電力変換回路10は、コンデンサ94Pと、コンデンサ94Nとを有してもよい。コンデンサ94P(第3コンデンサ)は、正極2P(入力端16P)と接地電位V0との間を接続し、コンデンサ94N(第4コンデンサ)は、負極2N(入力端16N)と接地電位V0との間を接続する。コンデンサ94Pの一方の電極及びコンデンサ94Nの一方の電極それぞれは、電力変換装置8における接地電位V0に接続された部材(例えば、筐体12)に接続される。コンデンサ94P及びコンデンサ94Nが設けられることで、高周波のノイズ成分が除去され得る。コンデンサ94Pの容量、及びコンデンサ94Nの容量は、互いに略一致してもよい。
【0032】
太陽光発電装置2(太陽光発電装置2の太陽光パネル)と大地との間には、浮遊容量(寄生容量)が形成される。図1では、太陽光発電装置2の正極2Pと大地との間に形成される浮遊容量が「92P」で示され、太陽光発電装置2の負極2Nと大地との間に形成される浮遊容量が「92N」で示されている。大地の電位は、接地電位V0に等しい。浮遊容量92Pの大きさ、及び浮遊容量92Nの大きさは、天候等によって大きく変動する。浮遊容量92Pの大きさ、及び浮遊容量92Nの大きさは、互いに略一致する傾向がある。
【0033】
<制御回路>
制御回路100は、電力系統4に対応する三相交流を生成し、生成した三相交流を電力系統4に出力するように電力変換回路10を制御する回路である。制御回路100は、例えば、太陽光発電装置2で生成された直流を三相交流に変換して、電力系統4に出力するように電力変換回路10を制御する。制御回路100は、三相交流を出力させる際に、変圧回路20及び逆変換回路40を動作させる。制御回路100は、例えば、太陽光発電装置2が発電し得る最大電力に基づいて、電力系統4に対応した三相交流を生成するように逆変換回路40(スイッチング回路42)を制御する。なお、図1では、筐体12の外に制御回路100が描かれているが、制御回路100を構成する回路部品が、電力変換回路10を構成する回路部品と共に、筐体12内に配置されてもよい。
【0034】
制御回路100は、電力変換回路10の動作を、三相交流が出力されない待機状態から、三相交流が出力される出力状態に遷移させる際に(遷移させる直前に)、以下の準備制御を実行する。準備制御は、電力系統4への三相交流(例えば、三相交流電力)の出力を開始する前に、電力変換回路10の動作を開始させる制御である。具体的には、制御回路100は、中性点33が接地電位V0に接続された状態で、変圧回路20による昇圧動作(変圧動作)を開始するように準備制御を実行する。準備制御は、三相交流の出力が開始された直後において、突入電流が発生し、その突入電流に起因して漏電ブレーカ6がトリップするのを回避するために実行される。漏電ブレーカ6がトリップすると、三相交流の出力が一旦停止され、発電効率が低下し得る。
【0035】
ここで、準備制御の内容及び目的を説明するために、準備制御が実行されない場合に突入電流が発生するまでの過程について、図2及び図3を用いて説明する。図2には、期間T11、期間T12、及び期間T13からなる3つの期間での電圧V1及び電圧V2の変化が模式的に示されている。期間T11での各点での電位が図3(a)に示されており、期間T12での各点での電位が図3(b)に示されており、期間T13での各点での電位が図3(c)に示されている。
【0036】
図3(a)、図3(b)、及び図3(c)では、浮遊容量92P及びコンデンサ94Pが合成された容量が「90P」で示され、浮遊容量92N及びコンデンサ94Nが合成された容量が「90N」で示されている。また、容量90P、容量90N、及び接地電位V0の間の接続点が「93」で示されている。なお、図2及び図3に示されている電圧及び電位(これらの数値)は一例であり、接地電位V0は0Vに設定されている。初期状態(期間T11よりも前の期間)では、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tが全て開状態となっており、電力変換回路10と電力系統4との間は切り離されている。
【0037】
期間T11は、太陽光発電装置2での発電が開始され、変圧回路20による昇圧が実行されていない期間である。期間T11において、正極2P及び負極2Nの間に400Vの直流電圧が生成されていると仮定する。この場合、接地電位V0を基準に見ると、電圧V1では、正極2Pに接続される点の電位が+200Vであり、接続点93の電位が0Vであり、負極2Nに接続される点の電位が-200Vである(図3(a)も参照)。変圧回路20による昇圧動作が行われていないので、電圧V2では、第2点32の電位が-200Vであり、第1点31の電位が+200Vである。中性点33は接地されていない状態であるが、第1コンデンサ35及び第2コンデンサ36によって電圧V2が均等に分圧されるので、中性点33の電位は0Vである。
【0038】
期間T11の次の期間T12は、変圧回路20による昇圧が実行され、昇圧後の電圧V2が第1点31及び第2点32の間に生成されている期間である。変圧回路20により、電圧が1.5倍に上昇すると仮定すると、電圧V2の大きさは、600Vまで上昇する。電圧V1に関する各点の電位は、期間T11での電位と同じである(図3(b)も参照)。第2点32は、負極2Nと同電位であるので、電圧V2では、第2点32の電位が-200Vに維持される。電圧V2の大きさは600Vであるので、第1点31の電位は+400Vに変化する。また、中性点33は接地されていないので、中性点33の電位は、+100Vに変化する。
【0039】
期間T12の次の期間T13は、逆変換回路40(スイッチング回路42)での交流電圧への変換動作が行われ、また、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの全てが閉状態に切り替えられて、電力系統4へ三相交流が出力されている期間である。期間T12から期間T13に遷移する際には、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの全てが、略同一のタイミングで閉状態に切り替えられている。解列リレー50Sが閉状態に遷移することで、中性点33が、接続線44、出力端18S、及びS相4Sを介して、接地電位V0に接続される(図3(c)も参照)。
【0040】
中性点33が接地電位V0に接続されることにより、中性点33の電位は0Vに変化する。中性点33の電位が0Vに変化することに伴い、第1点31の電位が+300Vに変化し、第2点32の電位が-300Vに変化する。第2点32の電位が-300Vに変化するので、電圧V1では、負極2Nに接続される点の電位が-300Vに変化する。そして、正極2Pに接続される点の電位が+100Vに変化する。
【0041】
以上の例においては、期間T12から期間T13への遷移の過程において、容量90Pの両端における電圧、及び容量90Nの両端における電圧が変化する。この電圧の変化に伴って、又は、この過程において電圧が変化するように、中性点33、接地電位V0、容量90P、正極2P、負極2N、第2点32、及び第2コンデンサ36を含む閉回路による容量90Pの放電と、中性点33、接地電位V0、容量90N、第2点32、及び第2コンデンサ36を含む閉回路による容量90Nの充電とが行われる。容量90Pの放電と容量90Nの充電とが行われる際に、これらの閉回路において突入電流が流れる。なお、この突入電流の大きさは、容量90Nの大きさと、第2コンデンサ36の容量の大きさとにより定まる。容量90Pの放電と容量90Nの充電とが行われた結果、期間T13での電圧V2において、中性点33の電位が接地電位V0に移行する状態が生じる。
【0042】
制御回路100は、上述したような突入電流の発生を避けるために、上記準備制御を実行する。具体的には、制御回路100は、三相交流の出力を開始する前に、中性点33が接地電位V0に接続された状態で、変圧回路20による昇圧動作を開始する。図1に戻り、制御回路100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、出力開始判定部112と、変圧制御部114と、スイッチング制御部116と、リレー制御部118とを有してもよい。
【0043】
出力開始判定部112は、太陽光発電装置2及び電力変換装置8により、電力系統4への三相交流の出力を開始するか否かを判定する。出力開始判定部112は、所定の開始条件が満たされた場合に、三相交流の出力を開始すると判定してもよい。出力開始判定部112は、例えば、所定の計測周期で計測された正極2P及び負極2Nの間の電圧が、所定レベルを超えた状態が設定周期だけ継続した場合に、上記開始条件を満たすと判定してもよい。
【0044】
変圧制御部114は、電圧V1が昇圧され、昇圧された状態の電圧V2が出力されるように、変圧回路20を制御する。変圧制御部114は、中性点33が接地電位V0に接地された状態(以下、「接地状態」という。)で、変圧回路20による昇圧動作を開始するように、変圧回路20のスイッチ素子28のオン及びオフの切り替え動作を開始してもよい。変圧制御部114は、電力系統4への三相交流の出力が開始されて以降、昇圧動作を継続させるように変圧回路20を制御する。
【0045】
スイッチング制御部116は、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とが三相交流電圧に変換されるように逆変換回路40を制御する。スイッチング制御部116は、逆変換回路40のスイッチング回路42に含まれる複数のスイッチ素子それぞれのオン及びオフの切り替えを行う。スイッチング制御部116は、変圧回路20による昇圧が完了し、昇圧動作が継続されている状態で、逆変換回路40を制御してもよい。スイッチング制御部116は、電力系統4への三相交流の出力が開始されて以降、交流電圧への変換動作を継続させるように逆変換回路40を制御する。
【0046】
リレー制御部118は、開状態及び閉状態を切り替えるように、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tを個別に制御する。リレー制御部118は、例えば、出力開始判定部112によって三相交流の出力を開始すると判定された場合に、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態に維持したまま、解列リレー50Sを開状態から閉状態に切り替える。これにより、中性点33が、接続線44、出力端18S、及びS相4Sを介して接地電位V0に接続される。すなわち、電力変換回路10の状態が、中性点33が接地電位V0に接続されていない状態(以下、「非接地状態」という。)から、上記接地状態に切り替わる。
【0047】
リレー制御部118は、接地状態に切り替わり、変圧回路20及び逆変換回路40の動作が開始された後に、解列リレー50Sを閉状態に維持したまま、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態から閉状態に切り替える。これにより、電力変換回路10と電力系統4との間が切り離された状態が解消し、電力系統4に対して、逆変換回路40により変換された後の三相交流が出力される。
【0048】
以上のように、制御回路100は、上記準備制御において、中性点33が接地電位V0に接続されていない非接地状態から、中性点33が接地電位V0に接続された接地状態に切り替えた後に、変圧回路20による昇圧動作を開始してもよい。制御回路100は、例えば、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態に維持したまま、解列リレー50Sを開状態から閉状態に切り替えることで、上記非接地状態から接地状態に切り替える。制御回路100は、変圧回路20による昇圧動作、及び逆変換回路40による変換動作が開始され、変圧回路20による昇圧動作が完了した後に、解列リレー50Sを閉状態に維持したまま、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態から閉状態に切り替えることで、電力系統4への三相交流の出力を開始する。
【0049】
図4を用いて、上記準備制御を実行する場合での電圧V1及び電圧V2の変化について説明する。図4では、期間T21、期間T22、期間T23、及び期間T24からなる4つの期間での電圧V1及び電圧V2の変化が模式的に示されている。期間T21は、期間T11に対応しており、期間T21の前の初期状態では、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tの全てが開状態となっており、電力変換回路10と電力系統4との間は切り離されている。
【0050】
期間T21では、期間T11と同様に、電圧V1及び電圧V2が生成されている。期間T21の次の期間T22において、3つの解列リレーのうちの解列リレー50Sのみが開状態から閉状態に切り替えられている。これにより、中性点33が接地電位V0に接続される。期間T21において中性点33の電位は0Vであり、変圧回路20による昇圧動作が行われていないので、期間T22において、電圧V2に関する各点での電位は変化しない。
【0051】
期間T22の次の期間T23では、変圧回路20による昇圧動作が開始されて、電圧V2の大きさが400Vから600Vまで上昇する。期間T23における昇圧後の電圧V2では、期間T22において既に中性点33が接地電位V0に接続されているので、中性点33の電位は0Vに維持される。そして、第1点31の電位は+300Vに変化し、第2点32の電位は-300Vに変化する。期間T12での昇圧された電圧V2においては、中性点33の電位が接地電位V0からずれている状態であるの対して、期間T23での昇圧された電圧V2では、中性点33の電位が接地電位V0と同電位となっている。
【0052】
電圧V1に関して、第2点32の電位が-300Vに変化するのに伴い、負極2Nに接続される点の電位が、-300Vに変化し、正極2Pに接続される点の電位が+100Vに変化する。
【0053】
期間T23の次の期間T24では、解列リレー50Sが閉状態に維持されたまま、解列リレー50R及び解列リレー50Tが開状態から閉状態に切り替えられることで、電力系統4への三相交流の出力が開始される。期間T23から期間T24へ遷移する過程において、中性点33が既に接地電位V0に接続されているので、電圧V1に関する各点及び電圧V2に関する各点それぞれにおいて電位の変化が生じない。これにより、電力系統4への三相交流の出力を開始した直後において、第2コンデンサ36の両端の電圧、及び、浮遊容量92Nを含む容量90Nの両端の電圧の変化に起因した突入電流が発生し難い。
【0054】
図5は、制御回路100のハードウェア構成を例示するブロック図である。図5に示されるように、制御回路100は、例えば、1以上のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、スイッチング制御回路195とを有する。
【0055】
ストレージ193は、フラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性の記憶媒体を含む。ストレージ193は、中性点33が接地電位V0に接続された接地状態で、変圧回路20による昇圧動作を開始するように電力変換回路10を制御することを制御回路100に実行させるためのプログラムを記憶している。ストレージ193は、例えば、上述した各機能モジュールを制御回路100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0056】
メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラムと、当該プログラムの実行過程で生成されるデータとを一時的に記憶する。1以上のプロセッサ191は、メモリ192が記憶するプログラムを実行することで、各機能モジュールとして制御回路100を機能させる。入出力ポート194は、1以上のプロセッサ191からの指令に応じて、変圧回路20、解列リレー50R,50S,50T、及び逆変換回路40等の間で電気信号の入出力を行う。スイッチング制御回路195は、1以上のプロセッサ191からの指令に応じて、スイッチング回路42における複数のスイッチ素子のオン状態及びオフ状態を切り替える。以上のハードウェア構成は一例であり、適宜変更可能である。例えば、各機能モジュールの少なくともいずれかが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の回路素子により構成されていてもよい。
【0057】
[電力変換方法]
続いて、電力変換装置8を用いて実行される電力変換方法について説明する。この電力変換方法は、出力工程と、準備工程とを含む。出力工程は、電力変換装置8が三相交流を出力するように動作している期間に対応し、準備工程は、電力変換装置8が三相交流を出力せずに待機している期間から、三相交流を出力する期間に遷移させるための期間に対応する。出力工程は、逆変換回路40を有する電力変換回路10を用いて、直流電源である太陽光発電装置2から供給される直流を三相交流に変換して、S相4Sが接地電位V0に接続されている電力系統4に出力する工程である。準備工程は、上記出力工程の前に、電力変換回路10の動作を開始させる工程である。
【0058】
出力工程は、太陽光発電装置2の正極2P及び負極2Nの間に生成された直流電圧を変圧回路20により変圧して、第1点31と第2点32との間に変圧された直流電圧を生成することを含む。出力工程は、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを、逆変換回路40により三相交流電圧に変換して出力することを更に含む。準備工程は、中性点33が接地電位V0に接続された接地状態で、変圧回路20による変圧動作を開始することを含む。準備工程では、変圧回路20による変圧動作が完了している状態で、逆変換回路40による変換動作が行われることで、電力系統4への三相交流(例えば、三相交流電力)の出力が開始されてもよい。以下、電力変換方法の一例として、制御回路100が実行する処理を説明する。
【0059】
図6は、制御回路100が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。この一連の処理では、電力変換装置8が三相交流を出力していない待機状態において、制御回路100が、最初にステップS11を実行する。ステップS11では、例えば、出力開始判定部112が、出力開始の条件が満たされるまで待機する。出力開始の条件は、予め定められていてもよく、例えば、出力開始判定部112は、太陽光発電装置2が生成する直流電圧が、ある期間において連続して所定レベルを超えた場合に、出力開始の条件を満たすと判定する。また、出力開始判定部112は、太陽光発電装置2が生成する直流電圧が、ある期間において連続して所定レベルを超えていない場合には、出力開始の条件を満たさないと判定する。
【0060】
次に、制御回路100は、ステップS12を実行する。ステップS12では、例えば、リレー制御部118が、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態に維持したまま、解列リレー50Sを開状態から閉状態に切り替える。これにより、中性点33が、接地電位V0に接続されて、非接地状態から接地状態に切り替えられる。
【0061】
次に、制御回路100は、ステップS13,S14を実行する。ステップS13では、例えば、変圧制御部114が、変圧回路20による昇圧動作を開始する。変圧制御部114は、例えば、変圧回路20に対する電圧指令をゼロから設定電圧まで所定の上昇速度で上昇させる。これにより、電圧V2の値が設定電圧まで上昇する。ステップS14では、例えば、変圧制御部114が、電圧指令の値が設定電圧に上昇したか否かを判定する。変圧制御部114は、電圧V2が設定電圧に上昇したか否かを判定してもよい。
【0062】
ステップS14において、電圧指令又は電圧V2が設定電圧に上昇したと判定された場合に、制御回路100は、ステップS15,S16を実行する。ステップS15では、例えば、スイッチング制御部116が、逆変換回路40による逆変換動作(三相交流を生成するためのスイッチング動作)を開始する。これにより、電力変換回路10から、三相交流が出力可能な状態となる。ステップS16では、例えば、リレー制御部118が、解列リレー50Sを閉状態に維持したまま、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態から閉状態に切り替える。これにより、電力変換回路10によって生成された三相交流が、電力系統4に出力される。
【0063】
次に、制御回路100は、ステップS17を実行する。ステップS17では、例えば、制御回路100が、出力停止の条件が満たされるまで待機する。言い換えると、出力停止の条件が満たされるまで、制御回路100は、電力系統4への三相交流の出力を継続するように電力変換回路10を制御する。漏電ブレーカ6は、電力系統4への三相交流の出力が継続されている間において、電力変換回路10の二次側に流れる零相電流の大きさが、解列レベルを超えた場合に、電力系統4への三相交流の出力を停止するように動作してもよい。
【0064】
出力停止の条件は、予め定められていてもよく、例えば、制御回路100は、太陽光発電装置2が生成する直流電圧が、ある期間において連続して所定レベルを下回った場合に、出力停止の条件を満たすと判定する。また、制御回路100は、太陽光発電装置2が生成する直流電圧が、ある期間において連続して所定レベルを下回っていない場合には、出力停止の条件を満たさないと判定する。
【0065】
次に、制御回路100は、ステップS18を実行する。ステップS18では、例えば、リレー制御部118が、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tを閉状態から開状態に切り替える。また、変圧制御部114が変圧回路20による昇圧動作を停止し、スイッチング制御部116が逆変換回路40による三相交流への変換動作を停止する。これにより、電力変換装置8の動作が、三相交流を出力せずに待機する状態に移行する。
【0066】
[変形例]
以上に説明した太陽光発電システム1、電力変換装置8、及び電力変換方法それぞれは一例であり、適宜変更可能である。
【0067】
図6に示される一連の処理において、制御回路100は、1つのステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御回路100は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。
【0068】
上記準備制御において、非接地状態から接地状態に切り替える方法は、解列リレー50Sを利用した方法に限らない。図7には、電力変換回路の別の例が示されている。図7に示される電力変換回路10Aは、少なくとも検出回路60を更に備える点において、図1に示される電力変換回路10と異なる。検出回路60は、正極2P及び負極2Nそれぞれと接地電位V0との間の絶縁抵抗を検出する回路である。検出回路60は、例えば、変圧回路20による昇圧動作が行われる前に、上記絶縁抵抗を検出する。検出回路60は、接地電位V0を使用して、上記絶縁抵抗を検出可能であれば、どのように構成されてもよい。検出回路60は、絶縁抵抗を検出することで、正極2P及び負極2Nのそれぞれにおいて絶縁異常が生じたことを検出可能であればよい。
【0069】
検出回路60は、例えば、第1スイッチ61と、抵抗66Pと、接続点67と、接続点68と、第2スイッチ62と、第3スイッチ63と、抵抗66Nと、電圧検出部69と、を有する。第1スイッチ61と抵抗66Pとは、互いに直列に接続されており、第1点31と接続点67との間を接続する。接続点68は、筐体12(接地電位V0に接続された部材)を介して接地電位V0に接続されている。第2スイッチ62は、接続点67と接続点68との間を接続する。すなわち、接続点67は、第2スイッチ62が閉状態であるときに接地電位V0に接続される。接続点67が接地電位V0に接続されることで、検出回路60における絶縁抵抗の検出に際して接地電位V0が使用される。
【0070】
第3スイッチ63と抵抗66Nとは、互いに直列に接続されており、接続点67と第2点32との間を接続する。電圧検出部69は、接続点67と第2点32との間の電圧に応じた電気信号(接続点67と第2点32との間の電圧に比例した大きさを示す情報)を生成することで、接続点67と第2点32との間の電圧を検出する。電圧検出部69は、例えば、2つの抵抗からなる直列回路と、その直列回路に含まれる1つの抵抗の両端の電圧を増幅する増幅器とを含み、その直列回路が、第3スイッチ63及び抵抗66Nに対して並列に接続されている。この場合、接続点67と第2点32との間の電圧が上記直列回路に含まれる2つの抵抗の比に応じて分圧され、分圧された電圧が増幅器により増幅されて電圧検出部69から出力される。
【0071】
電力変換回路10Aは、接続点68と中性点33との間を接続するスイッチを備える。接続点68と中性点33との間を接続するスイッチを、検出回路60に含まれる3つのスイッチと明確に区別するために「第4スイッチ74」と称する。第4スイッチ74には、抵抗75が直列に接続されており、第4スイッチ74及び抵抗75は、接続点68と中性点33との間を接続する。第4スイッチ74は、抵抗75を介して接続点68に接続されてもよい。接続点68は筐体12に接続されているので、第4スイッチ74は、中性点33と、接地電位V0に接続された筐体12との間を切断又は接続する。第1スイッチ61、第2スイッチ62、第3スイッチ63、及び第4スイッチ74それぞれの開閉状態は、制御回路100からの指示に基づいて切り替えられる。
【0072】
第4スイッチ74(スイッチ)は、中性点33の接続状態を、中性点33が接地電位V0に接続されていない非接地状態から、中性点33が接地電位V0に接続された接地状態に切り替える機能を有する。第4スイッチ74が閉状態である場合、中性点33と筐体12との間が接続され、第4スイッチ74が開状態である場合、中性点33と筐体12との間が切断される。第4スイッチ74は、上記の切り替え機能に加えて、第1スイッチ61、第2スイッチ62、及び第3スイッチ63の動作を確認するセルフチェックに用いられてもよい。
【0073】
制御回路100は、絶縁抵抗監視部122を有してもよい。絶縁抵抗監視部122は、検出回路60により絶縁抵抗に応じた検出値を取得する。絶縁抵抗監視部122は、第1スイッチ61、第2スイッチ62、及び第3スイッチ63それぞれの開閉状態を切り替えて、電圧検出部69によって生成された電気信号を取得することで、絶縁抵抗に応じた検出値を取得してもよい。絶縁抵抗監視部122は、三相交流を出力していない期間において、変圧回路20による昇圧動作が開始される前に、検出回路60から絶縁抵抗を検出することで、第1点31の絶縁状態と、第2点32の絶縁状態とを検出してもよい。これにより、正極2P及び負極2Nそれぞれの絶縁状態が検出される。
【0074】
図8には、検出回路60の動作、及び第4スイッチ74の役割を説明するための回路図が示されている。図8において、第1点31と大地(接地電位V0)との間の絶縁抵抗が「98P」で示されており、第2点32と大地(接地電位V0)との間の絶縁抵抗が「98N」で示されている。正側及び負側の両方において絶縁破壊が起きていない正常時では、絶縁抵抗98P及び絶縁抵抗98Nの抵抗値は非常に大きいが、絶縁破壊が起きた場合には、絶縁抵抗98P及び絶縁抵抗98Nの抵抗値は正常時に比べて小さくなる。抵抗66P及び抵抗66Nそれぞれの抵抗値は、絶縁破壊が起きていない正常時の絶縁抵抗に対して十分に小さく、絶縁破壊が起きた場合の絶縁抵抗に対しては十分に大きな値に選定され、例えば、数百kオームに選定される。
【0075】
絶縁抵抗監視部122は、絶縁抵抗98P及び絶縁抵抗98Nを検出する際に、第1スイッチ61、第2スイッチ62、及び第3スイッチ63をオン状態(閉状態)にする。これにより、抵抗66P及び絶縁抵抗98Pが並列接続された正側並列抵抗と、抵抗66N及び絶縁抵抗98Nが並列接続された負側並列抵抗とが形成される。正側及び負側の両方において絶縁破壊が起きていない正常時では、絶縁抵抗に対して抵抗66P及び抵抗66Nの抵抗値は十分に小さいので、正側並列抵抗の抵抗値は、抵抗66Pの抵抗値に略一致し、負側並列抵抗の抵抗値は、抵抗66Nの抵抗値に略一致する。正常時において電圧検出部69で検出される電圧を「電圧Vno」とすると、電圧Vnoは、電圧V2を抵抗66P及び抵抗66Nで分圧して、負側並列抵抗の両端に生成される電圧に応じた値となる。電圧Vnoは、予め計測されたうえで制御回路100に記憶されていてもよい。
【0076】
正側で絶縁破壊が起こると、絶縁抵抗98Pが抵抗66Pの抵抗値に対して十分に小さくなり、正側並列抵抗の抵抗値が、絶縁抵抗98Pに略一致する。その結果、正側での絶縁破壊時において電圧検出部69で検出される電圧を「電圧Vfp」とすると、電圧Vfpは、電圧V2を絶縁抵抗98Pと抵抗66Nとで分圧し、負側並列抵抗の両端に生成される電圧に応じた値となる。絶縁抵抗98Pが抵抗66Pの抵抗値に対して十分に小さいことから、電圧Vfpは、電圧Vnoよりも大きくなるため、正側での絶縁破壊(すなわち、絶縁異常時の絶縁抵抗98P)を検出できる。正側での絶縁破壊時の絶縁抵抗98Pの大きさは、電圧Vfpと電圧V2との比から計算することが可能である。
【0077】
負側で絶縁破壊が起こると、絶縁抵抗98Nが抵抗66Nに対して十分小さくなり、負側並列抵抗の抵抗値が、絶縁抵抗98Nに略一致する。その結果、負側での絶縁破壊時において電圧検出部69で検出される電圧を「電圧Vfn」とすると、電圧Vfnは、電圧V2を抵抗66Pと絶縁抵抗98Nとで分圧し、負側並列抵抗の両端に生成される電圧に応じた値となる。絶縁抵抗98Nが抵抗66Nに対して十分に小さいことから、電圧Vfnは、電圧Vnoよりも小さくなるため、負側での絶縁破壊(すなわち、絶縁異常時の絶縁抵抗98N)を検出できる。負側での絶縁破壊時の絶縁抵抗98Nの大きさは、電圧Vfnと電圧V2との比から計算することが可能である。以上のように、接続点67が接続点68を介して接地電位V0に接続されることで、絶縁異常の検出と、絶縁異常時の絶縁抵抗の測定とを行うことができる。
【0078】
制御回路100は、絶縁抵抗98P及び絶縁抵抗98Nそれぞれの大きさを検出する前に、第4スイッチ74を利用して、第1スイッチ61、第2スイッチ62、及び第3スイッチ63が正常に動作するか否かを確認するセルフチェックを行ってもよい。スイッチが正常に動作するか否かを確認することには、OFF指令又はON指令に対して、指令どおりに動作するか否かを確認することが含まれる。制御回路100は、例えば、各スイッチに対して所定のパターンに従って指令を行った状態で、電圧Vaの大きさを表す電気信号を検出することで、正常に動作するか否かを判定する。確認項目、指令のパターンに応じたスイッチの状態、及び、電圧Vaの検出結果の一例が、下記の表1に示されている。
【0079】
【表1】
【0080】
表1において、「S1」は第1スイッチ61であり、「S2」は第2スイッチ62である。また、「S3」は第3スイッチ63であり、「S4」は第4スイッチ74である。表1中のON及びOFFの組合せは、各スイッチへの指令と、正常時の各スイッチの状態とを表しており、「( )」は異常状態であることを表す。また、表1の「検出(Va)」は、各スイッチのON及びOFFの組合せに応じた電圧Va(第2点32と接続点67との間の電圧)の検出値であり、「正常」は各スイッチが正常である場合の検出値を表し、「異常」は検査対象のスイッチが異常である場合の検出値を表す。「V2」は、電圧V2の値であり、「V3」については後述する。表1において、「Fail Opened」は、ON指令を行ったが、実際のスイッチがOFF状態となる開放故障を表し、「Fail Closed」は、OFF指令を行ったが、実際のスイッチがON状態となる短絡故障を表す。なお、OFF指令は、スイッチに信号を送信しないことにより行われてもよい。
【0081】
例えば、第2スイッチ62が開放故障であるか否かを確認する場合(S2 Fail Opened)について説明する。この場合、制御回路100は、第1スイッチ61に対してOFF指令を行い、第2スイッチ62、第3スイッチ63、及び第4スイッチ74に対してON指令を行う。第2スイッチ62が正常に動作してON状態となれば、電圧Vaの値として、V3が検出される。V3は、V2/2を、抵抗75と、絶縁抵抗98N、抵抗66N、及び電圧検出部69の直列抵抗からなる並列回路の合成抵抗との比に応じて分圧することで得られる電圧値となる。一方、第2スイッチ62が開放故障であれば、電圧Vaの値として0が検出される。
【0082】
また、第2スイッチ62が短絡故障であるか否かを確認する場合(S2 Fail Closed)について説明する。この場合、制御回路100は、第1スイッチ61及び第2スイッチ62に対してOFF指令を行い、第3スイッチ63及び第4スイッチ74に対してON指令を行う。第2スイッチ62が正常に動作してOFF状態となれば、電圧Vaの値として0が検出される。一方、第2スイッチ62が短絡故障であれば、電圧Vaの値としてV3が検出される。以上のようにして、第4スイッチ74を利用して、第2スイッチ62の動作が正常か否かの確認を行うことができる。なお、第1スイッチ61及び第3スイッチ63の動作チェックも、正常時の電圧Vaの値が検出されるか否かを判定すること実行される。
【0083】
検出回路60及び第4スイッチ74を有する電力変換装置8においても、図6に示される一連の処理と同様の処理が実行されてもよい。この場合、制御回路100は、ステップS12において、第4スイッチ74を開状態から閉状態に切り替える。そして、解列リレー50R、解列リレー50S、及び解列リレー50Tは、開状態に維持される。第4スイッチ74が閉状態に切り替わることにより、中性点33が接地電位V0に接続される。このように、制御回路100は、上記準備制御において、第4スイッチ74を開状態から閉状態に切り替えることにより、非接地状態から接地状態に切り替える。
【0084】
第4スイッチ74を用いた各スイッチの動作チェックが行われなくてもよい。また、検出回路60が設けられていない電力変換回路10において、中性点33と筐体12との間を接続する第4スイッチ74が設けられてもよい。すなわち、中性点33を接地電位V0に接続するための専用のスイッチ(他の用途に用いられないスイッチ)が設けられてもよい。この場合、中性点33と接地電位V0との間に抵抗75が設けられなくてもよい。電力変換回路10Aが用いられる種々の例において、電力変換装置8は、解列リレー50R,50S,50Tの開閉状態の切り替えが個別に実行できずに、これら3つの解列リレーの開閉状態を一斉に切り替える回路構成を有してもよい。
【0085】
上述の種々の例では、非接地状態から接地状態に切り替えられているが、中性点33と接地電位V0との間を接続する接続線が設けられ、その接続線には、スイッチ等が設けられていなくてもよい。例えば、この接続線が、電力変換回路10に追加で設けられてもよく、電力変換回路10Aにおいて、第4スイッチ74及び抵抗75を含む線に代えて又は追加して設けられてもよい。この場合、制御回路100は、接地状態への切り替えを行うことなく、接地状態で変圧回路20による昇圧動作を開始することで、上記準備制御を実行する。
【0086】
変圧回路20は、降圧チョッパ型の回路で構成される降圧回路であってもよく、昇降圧チョッパ型の回路で構成される昇降圧回路であってもよい。変圧回路20が降圧動作を行う場合において、図2及び図3を用いて説明したように、仮に中性点33が接地されていない状態で降圧動作が行われ、その後に中性点33が接地される場合を想定する。この場合、期間T12から期間T13へ遷移すると(図3(b)の状態から図3(c)の状態に遷移すると)、電圧V1に関して、負極2Nに接続される点の電位が-200Vよりも高くなり、正極2Pに接続される点の電位が+200Vよりも高くなる。すなわち、容量90Pの両端における電圧、及び容量90Nの両端における電圧が変化する。その結果、降圧動作を行う場合での想定においても突入電流が発生する。一方、中性点33が接地された状態で降圧動作が開始されることで、突入電流の発生が回避される。
【0087】
太陽光発電システム1は、電力系統4には電力を出力しない状態で、太陽光発電装置2の太陽光パネルが設置された需要家(工場等)において電力を消費する負荷(以下、「自家消費負荷」という。)に対して三相交流を出力してもよい。自家消費負荷は電力系統4と並列に、解列リレー50R,50S,50Tの出力側に接続される。太陽光発電システム1は、電力系統4に対応する三相交流電圧を自家消費負荷に出力することにより、自家消費負荷に三相交流電力を供給してもよい。太陽光発電システム1が自家消費負荷に三相交流電力を供給する場合でも、電力系統4には三相交流(三相交流電圧)が出力されてもよい。このように、電力変換回路10,10Aの二次側は、電力系統4と自家消費負荷とを含んでもよい。
【0088】
自家消費負荷への配電系統は、非接地のもの又は1相が接地されたものがある。自家消費負荷は、いずれの相も接地電位V0に接続されていない非接地のものであってもよい。電力系統4と自家消費負荷とを含む二次側では、少なくとも電力系統4において、1つの相であるS相4Sが接地電位V0に接続されている。そのため、自家消費負荷が無い場合と同様、解列リレー50R,50S,50Tが開放した状態(開状態)で、変圧回路20が変圧動作を開始すると、中性点33の電位が接地電位V0からずれた状態となり、3つの解列リレーを閉じると突入電流が発生する。したがって、自家消費負荷が無い場合と同様、解列リレー50S又は第4スイッチ74を用いて、非接地状態から接地状態に切り替えてから変圧回路20の変圧動作を開始することにより、突入電流の発生を抑制できる。
【0089】
自家消費負荷の配電系統の1相が接地されている場合は、接地されている相を中性点33に接続された出力端18Sに接続する。これにより、電力変換回路10の二次側は、自家消費負荷が接続されていない場合と同様の回路となる。したがって、解列リレー50S又は第4スイッチ74を用いて、非接地状態から接地状態に切り替えてから変圧回路20の変圧動作を開始することにより、突入電流の発生を抑制できる。
【0090】
以上のとおり、本開示の実施形態及び変形例に係る太陽光発電システム、電力変換装置、及び電力変換方法は、自家消費負荷の有無にかかわらず適用可能である。
【0091】
電力変換装置8が適用される直流電源は太陽光発電装置2に限られず、発電した電力を直流で出力する限りいかなる電源であってもよい。以上に説明した種々の例のいずれかの例において、他の例で説明した事項の少なくとも一部が適用されてもよい。
【0092】
[本開示のまとめ]
本開示は、以下の[1]~[10]に記載の構成を含む。
【0093】
[1]一次側(直流電源)から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相(S相4S)が接地電位V0に接続されている二次側に出力する電力変換回路10,10Aと、電力変換回路10,10Aを制御する制御回路100と、を備え、電力変換回路10,10Aは、一次側の正極2P及び負極2Nの間に生成された直流電圧を変圧して、第1点31と負極2Nに接続される第2点32との間に変圧された直流電圧を生成する変圧回路20と、第1点31と中性点33との間を接続する第1コンデンサ35と、第2点32と中性点33との間を接続する第2コンデンサ36と、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換して出力する逆変換回路40と、を有し、制御回路100は、二次側への三相交流の出力を開始する前に、中性点33が接地電位V0に接続された接地状態で、変圧回路20による変圧動作を開始する、電力変換装置8。
この電力変換装置8では、三相交流を出力する前の準備段階において、中性点33が接地されてから、変圧回路20による変圧動作が開始される。これにより、三相交流の出力を開始した直後において、出力開始前での第1点31及び第2点32の間の上記電圧V2と、出力開始後の電圧V2との間で、電位の差分が生じない。そのため、浮遊容量を介した閉回路を流れる突入電流が生じ難い。その結果、出力開始直後において漏電ブレーカ6がトリップして発電が停止してしまう可能性を低減できる。従って、上記電力変換装置8は、三相交流の出力の安定化に有用である。
【0094】
[2]電力変換回路10,10Aは、二次側において接地電位V0に接続されていない相(R相4R及びT相4T)に接続される出力端18R及び出力端18Tと、二次側において接地電位V0に接続された相(S相4S)に接続される出力端18Sと、を更に有し、逆変換回路40は、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを交流電圧に変換して、出力端18R及び出力端18Tの間に出力するスイッチング回路42と、中性点33と出力端18Sとをスイッチング回路42を介さずに接続する接続線44と、を含む、上記[1]に記載の電力変換装置8。
仮に、中性点33を接地せずに二次側への出力を開始すると、中性点33が、接続線44、出力端18S、及びS相4Sを介して、接地電位V0に強制的に接続される。この場合、二次側への出力開始の前後において、上記電圧V2における電位の変化に起因して、突入電流が発生し得る。これに対して、上記構成では、二次側に出力端18Rと出力端18Tとの間の交流電圧を二次側に出力する前の準備段階において、中性点33が接地された状態で、変圧回路20による変圧動作が開始される。これにより、上記電圧V2における電位の変化が低減され、突入電流に起因した三相交流の出力停止が発生する可能性を低減できる。
【0095】
[3]スイッチング回路42は、出力端18Sに対する出力端18Rの線間電圧Vrsと、出力端18Sに対する出力端18Tの線間電圧Vtsとの間で、振幅が互いに等しく、位相差が60°となるように、出力端18R及び出力端18Tの間に交流電圧を出力する、上記[2]に記載の電力変換装置8。
この場合、接地されたS相4Sに対応するスイッチ素子が設けられなくても、系統に接続しやすいスイッチング回路を簡素に実現できる。
【0096】
[4]電力変換回路10は、接地電位V0と正極2Pとの間を接続するコンデンサ94P(第3コンデンサ)と、接地電位V0と負極2Nとの間を接続するコンデンサ94N(第4コンデンサ)と、を更に有する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の電力変換装置8。
この場合、浮遊容量に加えて、コンデンサ94P及びコンデンサ94Nにも起因して、上記電圧V2における電位の変化が生じ得る。そのため、上記構成では、三相交流の出力を開始する前に、中性点33が接地された状態で変圧動作を開始することが、より有益である。
【0097】
[5]制御回路100は、中性点33が接地電位V0に接続されていない非接地状態から、接地状態に切り替えた後に、変圧回路20による変圧動作を開始する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の電力変換装置8。
この場合、三相交流を出力していない待機期間において、中性点33と接地電位V0との間の絶縁が維持されやすく、電力変換装置8を簡素化できる。そのため、電力変換装置8の簡素化と三相交流の出力の安定化との両立に有用である。
【0098】
[6]制御回路100は、中性点33が接地電位V0に接続されていない非接地状態から、接地状態に切り替えた後に、変圧回路20による変圧動作を開始し、電力変換回路10は、スイッチング回路42と出力端18R(第1端)との間を切断又は接続する解列リレー50R(第1解列リレー)と、スイッチング回路42と出力端18T(第2端)との間を切断又は接続する解列リレー50T(第2解列リレー)と、中性点33と出力端18S(第3端)との間を切断又は接続する解列リレー50S(第3解列リレー)と、を更に有し、制御回路100は、解列リレー50R及び解列リレー50Tを開状態に維持したまま、解列リレー50Sを開状態から閉状態に切り替えることで、非接地状態から接地状態に切り替える、上記[2]又は[3]に記載の電力変換装置8。
この場合、中性点33を接地させるための回路を追加で設ける必要がないので、電力変換装置8の簡素化に有用である。
【0099】
[7]接地電位V0に接続されている筐体12(部材)を更に備え、電力変換回路10Aは、中性点33と筐体12との間を切断又は接続する第4スイッチ74を有し、制御回路100は、第4スイッチ74を開状態から閉状態に切り替えることで、非接地状態から接地状態に切り替える、上記[5]に記載の電力変換装置8。
この場合、二次側との間で切断及び接続を切り替える開閉機器において、各相に対応する機器を個別に動作させる必要がないので、開閉機器又はそれを制御するための構成の簡素化に有用である。
【0100】
[8]電力変換回路10Aは、正極2P及び負極2Nそれぞれと接地電位V0との間の絶縁抵抗を検出する検出回路60を更に有し、第4スイッチ74は、検出回路60の接地電位V0に接続されている接続点68と、中性点33との間を接続する、上記[7]に記載の電力変換装置8。
この場合、絶縁抵抗を検出するという別の目的で設けられた回路の一部を利用して、中性点33を接地するための回路を設けることができる。そのため、三相交流を出力する前に中性点33を接地させるように動作する電力変換装置8の簡素化に有用である。
【0101】
[9]太陽光の入射に応じて発電を行う太陽光発電装置2と、一次側である太陽光発電装置2から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相(S相4S)が接地電位V0に接続されている二次側に出力する電力変換回路10,10Aと、電力変換回路10,10Aを制御する制御回路100と、を備え、電力変換回路10,10Aは、太陽光発電装置2の正極2P及び負極2Nの間に生成された直流電圧を変圧して、第1点31と負極2Nに接続される第2点32との間に変圧された直流電圧を生成する変圧回路20と、第1点31と中性点33との間を接続する第1コンデンサ35と、第2点32と中性点33との間を接続する第2コンデンサ36と、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを三相交流電圧に変換して出力する逆変換回路40と、を有し、制御回路100は、三相交流の出力を開始する前に、中性点33が接地電位に接続された接地状態で、変圧回路20による変圧動作を開始する、太陽光発電システム1。
この太陽光発電システム1では、上記電力変換装置8と同様に、三相交流の出力の安定化に有用である。
【0102】
[10]逆変換回路40と変圧回路20とを有する電力変換回路10,10Aを用いて、一次側(直流電源)から供給される直流を三相交流に変換して、1つの相が接地電位に接続されている系統に出力する出力工程と、出力工程の前に、電力変換回路10,10Aの動作を開始させる準備工程と、を含み、出力工程は、一次側の正極2P及び負極2Nの間に生成された直流電圧を変圧回路20により変圧して、第1点31と負極2Nに接続される第2点32との間に変圧された直流電圧を生成することと、少なくとも、第1点31及び中性点33の間の直流電圧と、中性点33及び第2点32の間の直流電圧とを、逆変換回路40により三相交流電圧に変換して出力することと、を含み、電力変換回路10,10Aは、第1点31と中性点33との間を接続する第1コンデンサ35と、第2点32と中性点33との間を接続する第2コンデンサ36と、を更に有し、準備工程は、中性点33が接地電位V0に接続された接地状態で、変圧回路20による変圧動作を開始することを含む、電力変換方法。
この電力変換方法では、上記電力変換装置8と同様に、三相交流の出力の安定化に有用である。
【符号の説明】
【0103】
1…太陽光発電システム、2…太陽光発電装置、2P…正極、2N…負極、4…電力系統、V0…接地電位、6…漏電ブレーカ、8…電力変換装置、10,10A…電力変換回路、18R,18S,18T…出力端、20…変圧回路、31…第1点、32…第2点、33…中性点、35…第1コンデンサ、36…第2コンデンサ、40…逆変換回路、42…スイッチング回路、44…接続線、50R,50S,50T…解列リレー、60…検出回路、74…第4スイッチ(スイッチ),94P,94N…コンデンサ、100…制御回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8