(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】バッテリーまたは他の電気装置システムにおける伝熱流体としてのポリマー-無機ナノ粒子組成物の使用
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20240904BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240904BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240904BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240904BHJP
【FI】
C09K5/10 E ZNM
C08F220/10
H01M10/613
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2022502804
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020069744
(87)【国際公開番号】W WO2021009115
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-22
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ネス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴィーバー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゲアハルト ハーゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー シュランツ
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ ダウト
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン メテハン トゥルハン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108424751(CN,A)
【文献】特表2016-503111(JP,A)
【文献】特表2007-514048(JP,A)
【文献】国際公開第2017/132122(WO,A1)
【文献】特開昭49-45909(JP,A)
【文献】特開2006-241443(JP,A)
【文献】特開2012-224834(JP,A)
【文献】特開2017-59660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C09K 5/00- 5/20
C10M101/00-177/00
H01M 10/52- 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーまたは他の電気装置システムにおける伝熱流体としてのポリマー-無機ナノ粒子組成物の使用であって、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物は、混合物をミリングすることによって得ることができ、前記混合物は、1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)と、1種以上のポリマー化合物(B)とを含み、
(A)前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)は、金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子、金属またはメタロイド窒化物ナノ粒子、金属またはメタロイド炭化物ナノ粒子、またはその混合物からなる群から選択され、かつ
(B)前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~35質量%の、以下のものからなるリストから選択される1種以上の官能性モノマー:
a1)アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、
a2)アルキル(メタ)アクリル酸のニトリルおよび他の含窒素アルキル(メタ)アクリレート、
a3)エーテルアルコールの(メタ)アクリレー
ト、
a5)含リン、含ホウ素および/または含ケイ素アルキル(メタ)アクリレート、
a6)複素環式アルキル(メタ)アクリレート、
a7)ハロゲン化ビニル、
a8)ビニルエステル、
a9)芳香族基を含有するビニルモノマー、
a10)複素環式ビニル化合物、
a11)ビニルエーテルおよびイソプレニルエーテル、
a12)メタクリル酸およびアクリル酸、
b)前記モノマー組成物の全質量を基準として、65~99質量%の、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子1~40個を含む、
かつ前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)の、前記の1種以上のポリマー化合物(B)に対する質量比が9:1~1:5であ
り、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物がさらに、ASTM D445による3cSt~30cStの40℃での動粘度、およびASTM D-93による110℃よりも高い引火点を有するベースフルード(C)を含む、前記使用。
【請求項2】
前記の1種以上のポリマー化合物(B)が、ポリメチルメタクリレート校正標準および溶離液としてテトラヒドロフランを用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより決定して、2000~150000g/mo
lの数平均分子量(M
n)を有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーb)が、
b1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~20質量%の、第1の成分b)として、式(I):
【化1】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、R
1は、炭素原子1~8
個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレート、
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、45~99質量%の、第2の成分b)として、式(II):
【化2】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、R
2は、炭素原子9~15
個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレート、
b3)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~30質量%の、第3の成分b)として、式(III):
【化3】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、R
3は、炭素原子16~40
個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレート
を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記モノマー組成物のモノマーa)およびb)の量が、前記モノマー組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)の、前記の1種以上のポリマー化合物(B)に対する質量比
が、9:1~1:
2である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
モノマー成分a)が、アミノアルキル(メタ)アクリレートa1)またはアミノアルキル(メタ)アクリルアミドa1)または含ケイ素アルキル(メタ)アクリレートa5)または複素環式アルキル(メタ)アクリレートa6)から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記モノマー成分a)が、N-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、またはオキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレートから選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記無機ナノ粒子化合物(A)が、二酸化チタン、酸化アルミニウム、またはその混合物から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物
が、ASTM D445によ
る3cSt~25cStの40℃での動粘度、およびASTM D-93による110℃よりも高い引火点を有するベースフルード(C)を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記ベースフルードが、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油、APIグループV基油、またはその混合物からなるリストから選択される、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物が、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、80~99.9質量%のベースフルード(C)および0.1~20質量%の(A)および(B
)を含む、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
(A)、(B)および(C)の量が、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる、請求項
1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
1種以上のナノ粒子(A)、1種以上のポリマー化合物(B)およ
び前記ベースフルード(C)を含む前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物が、超高圧技術によって製造される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記伝熱流体がさらに、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、流動点降下剤、抗乳化剤、乳化剤、腐食抑制剤、金属不動態化剤、さび止め剤、静電放電抑制剤、消泡剤、シール固定剤またはシール相溶剤、摩擦調整剤、染料またはその混合物からなる群から選択される、添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から11までおよび13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記電気装置システムが、電気電池、電動機、電気自動車トランスミッション、電気変圧器、電気キャパシタ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータおよびパワーエレクトロニクスからなる群から選択される、請求項1から14までのいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーまたは他の電気装置システムにおける伝熱流体としてのポリマー-無機ナノ粒子組成物の使用に関する。前記電気装置は、特に電気電池、電動機、電気自動車トランスミッション、電気変圧器、電気キャパシタ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータおよびパワーエレクトロニクス、例えば電力変換器であってよい。
【0002】
発明の背景
近年、エネルギー不足および環境への懸念が、科学技術の進歩への多大な影響を及ぼしてきた。環境意識の増大は、いわゆるグリーンテクノロジーにおける、殊に自動車工業における関心の高まりをもたらしている。再生可能エネルギー源を燃料とするエミッションフリー車、例えば純電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)および燃料電池電気自動車の需要は徐々に、より重要になってきており、かつ今後20年で抜本的に増大すると予想される。そのような車両用のエネルギーは、高い比エネルギー密度を有するバッテリーにおいて提供され、かつ貯蔵される。鉛-酸、亜鉛/ハロゲン、金属/空気、ナトリウム-ベータアルミナ、ニッケル金属水素物(Ni-MH)およびリチウムイオン(Li-ion)などの多様なバッテリーがEVおよびHEVに利用できる。
【0003】
電気自動車の性能を増大させるために、高い電流放電を有する大型バッテリーが必要とされる。そのサイズおよび電力出力のために、これらの大型バッテリーは、高電流レベルでの急速充放電サイクル中に大量の熱を発生する。したがって、バッテリーは、バッテリー機能不良を回避し、かつ前記バッテリーの寿命を増大させるために、冷却するかまたは熱を放散することにより熱管理しなければならない。
【0004】
さらに、前記バッテリーの性能は温度に依存する。それらのタイプに応じて、バッテリーは、特定の温度範囲内でのみ最適に機能する。そのため、適正な熱管理は、バッテリー性能を最適化することを可能にする。
【0005】
Naser Ali et al. Review article (2018): “A review on nanofluids: fabrication, stability and thermophysical properties”は、ナノ流体の開発に関し、かつナノ流体の安定性が、その製品の貯蔵寿命を、その熱物理的性質を維持しながら延長するので、ナノ流体の商業化において極めて重要な要素であることを指摘する。そのようなタイプの流体を使用する主な欠点が、ナノ流体の粘度の増大から引き起こされる配管系における圧力損失の上昇であることも示される。この文献には、主に親水性の伝熱流体が技術水準として記載されている。
【0006】
国際公開第2018/019783号(WO 2018/019783 A1)には、ポリマー-無機ナノ粒子組成物およびそれらの製造方法、ならびに流動点、摩擦および摩耗を低下させるための油潤滑剤配合物におけるその使用が開示されている。国際公開第2018/019783号は、伝熱流体を扱わない。
【0007】
米国特許出願公開第2017/009120号明細書(US 2017/009120 A1)は、すぐ使用できる伝熱流体と、伝熱システムにおける腐食を防止する方法とに関し、ここで、前記伝熱流体は、凝固点降下剤、水、またはその組合せ、カルボキシレート、無機ホスフェート、アゾール化合物、カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオン、および水溶性ポリマー、例えば水溶性アクリレートポリマーを含む。
【0008】
Kikuo Okuyama et al.(Ind. Eng. Chem. Res. 2008, 47, 2597-2604)には、ポリマー-ナノ粒子複合材料が記載されており、酸化チタンが、重合中のモノマー混合物中に存在し、かつ生じたポリメチルメタクリレート(PMMA)中に埋め込まれて、改善されたUV光吸収特性を有する中実TiO2-PMMA複合材料をもたらす。
【0009】
国際公開第2019/107722号(WO 2019/107722 A1)には、(i)非伝導性の油、(ii)シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および窒化ホウ素からなる群から選択される、熱伝導性無機粒子、および(iii)ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナまたはエーロゲルから選択される、無機沈殿防止剤を含む、熱放射性流体組成物が開示されている。前記伝熱流体中に良好に分散された無機ナノ粒子を維持するために、国際公開第2019/107722号は、前記熱放散流体の制御された粘度、無機沈殿防止剤と、前記無機沈殿防止剤よりも重い熱伝導性無機粒子との使用の組合せを有することを教示する。
【0010】
国際公開第2014/106556号(WO 2014/106556 A1)には、伝熱流体としてのポリアルキル(メタ)アクリレートの使用が開示されている。国際公開第2014/106556号における組成物は、全く無機ナノ粒子を含まない。前記ポリマーは、全く官能性モノマー単位を含まない。
【0011】
国際公開第2013/115925号(WO 2013/115925 A1)には、流動媒体と、電気絶縁性かつ熱伝導性であるナノ粒子を含むナノ粒子組成物とを含む、ナノコンポジット流体が開示されている。この文献には、前記ナノコンポジット流体の製造に関する具体的な例が全く示されていない。前記ナノコンポジット流体の安定性に関する詳細も示されておらず、対応する参考ベースフルードとの粘度および熱伝導率の比較も全く示されていない。
【0012】
しかしながら、ナノ粒子の安定な分散液の生成は難しい。未処理の無機ナノ粒子、例えばTiO2およびSiO2はたいてい、本来親水性であり、ひいては油または無極性環境中で不良な分散液を形成する。さらに、前記粒子の不良な分散および弱い力は、粒子を寄せ集めてアグロメレーションを引き起こす。これらのアグロメレートは、望ましなく、かつ前記配合物に有効でない沈降をまねく。
【0013】
したがって、本発明は、可動部を有する電気装置、例えば電動機、電気自動車トランスミッションにおける、または可動部を全く有していない電気装置、例えば電気電池、電気変圧器、電気キャパシタ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータまたはパワーエレクトロニクス、例えば電力変換器における伝熱のための新規な方法を提供することを目的とする。一般に、疎水性の誘電性流体は、金属部分と直接接触して電気絶縁を与えることができる場合に好ましい。なぜなら、それらが安全性の理由により電気的接触を防止するからである。したがって、本発明の課題は、疎水性媒体中のナノ粒子の安定性が増大した、改善された伝熱ナノ流体を提供することである。前記伝熱ナノ流体は、経時的に安定であるべきであり、かつ電気装置において使用される場合に、用途の規格、例えば長期間にわたってかつ異なる温度で改善された熱性能を満たす。
【0014】
発明の簡単な要約
本発明において、請求項1に定義される無機ナノ粒子とポリマーとを含むポリマー-無機ナノ粒子組成物が、バッテリーおよび他の電気装置用の伝熱流体として使用できることが驚くべきことに見出された。その挑戦は、前記伝熱流体中に含まれる前記ナノ粒子が高温で長期間にわたって良好に分散された状態を維持しながら、大きな伝熱性能を兼ね備えることであった。目標とした使用は、請求項1に定義される組成物を用いて達成された。
【0015】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、請求項1に定義される伝熱流体としてのポリマー-無機ナノ粒子組成物の使用に関する。本発明によるポリマー-無機ナノ粒子組成物は、電気装置、例えば電気電池、電動機、電気自動車トランスミッション、電気変圧器、電気キャパシタ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータまたはパワーエレクトロニクス、例えば電力変換器用の伝熱流体として有利に使用される。
【0016】
発明の詳細な説明
したがって、本発明は、バッテリーまたは他の電気装置システムにおける伝熱流体としてのポリマー-無機ナノ粒子組成物の使用に関するものであって、
前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物は、混合物をミリングすることにより得ることができ、前記混合物は、1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)と、1種以上のポリマー化合物(B)とを含み、
(A)前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物は、金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子、金属またはメタロイド窒化物ナノ粒子、金属またはメタロイド炭化物ナノ粒子、またはその混合物
からなる群から選択され、
かつ
(B)前記の1種以上のポリマー化合物は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~35質量%の、以下のものからなるリストから選択される、1種以上の官能性モノマー:
a1)アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、3-ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート、
a2)アルキル(メタ)アクリル酸のニトリルおよび他の含窒素(メタ)アクリレート、例えばN-(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N-(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシル-ケチミン、(メタ)アクリロイルアミドアセトニトリル、2-メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチル(メタ)アクリレート、
a3)エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、1-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシ-2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシ-2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシル化(メタ)アクリレート、1-エトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシ-2-エトキシ-2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とメトキシポリエチレングリコールとのエステル、
a4)オキシラニルアルキル(メタ)アクリレート、例えば2,3-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、10,11-エポキシウンデシル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、10,11-エポキシヘキサデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、
a5)含リン、含ホウ素および/または含ケイ素アルキル(メタ)アクリレート、例えば2-(ジメチル-ホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、2-(エチルホスフィト)プロピル(メタ)アクリレート、2-ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルメタクリロイルホスホネート、ジプロピルメタクリロイルホスフェート、2-(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ブチレンメタクリロイルエチルボレート、メチルジエトキシメタクリロイルエトキシシラン、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート、
a6)複素環式アルキル(メタ)アクリレート、例えば2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレートおよびN-メタクリロイルモルホリン、
a7)ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン、
a8)ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、
a9)芳香族基を含有するビニルモノマー、例えばスチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン、
a10)複素環式ビニル化合物、例えば2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール類および水素化ビニルチアゾール類、ビニルオキサゾール類および水素化ビニルオキサゾール類、
a11)ビニルおよびイソプレニルエーテル、
a12)メタクリル酸およびアクリル酸、
b)前記モノマー組成物の全質量を基準として、65~99質量%の、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子1~40個を含む、
かつ前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)の、前記の1種以上のポリマー化合物(B)に対する質量比は、9:1~1:5である。
【0017】
好ましい実施態様によれば、前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)の、前記の1種以上のポリマー化合物(B)に対する質量比は、好ましくは9:1~1:2、より好ましくは5:1~1:1、最も好ましくは3:1~1:1である。
【0018】
別の好ましい実施態様によれば、a)およびb)の量は、前記モノマー組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる。
【0019】
本明細書において用いられる「1種以上」は、列挙された成分の少なくとも1種が、または1種を上回って、開示されたように使用されてよいことを意味する。
【0020】
本明細書において用いられる「他の電気装置システム」は、電気装置、例えば電気電池、電動機、電気自動車トランスミッション、電気変圧器、電気キャパシタ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータまたはパワーエレクトロニクス、例えば電力変換器を意味する。
【0021】
上記で定義された使用は、バッテリーまたは他の電気装置システムにおいて使用される伝熱流体における伝熱および熱伝導率を高める方法も意味し、ここで、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物は、混合物をミリングすることにより得ることができ、前記混合物は、上記でおよび本明細書を通じておよび請求項1~15に定義されるように、1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)と1種以上のポリマー化合物(B)とを含む。
【0022】
本発明による伝熱ナノ流体は、本明細書の実験の部に実証されるように、疎水性媒体中のナノ粒子の増大した安定性を示す。
【0023】
本発明によれば、前記伝熱流体がさらに、ASTM D-445による3cSt~30cSt、より好ましくは3cSt~25cStの40℃での動粘度、およびASTM D-93による110℃よりも高い引火点を有するベースフルード(C)を含むことが好ましい。
【0024】
有利には、バッテリーまたは金属可動部を有する他の電気装置システムにおける伝熱流体として使用される前記ナノ粒子組成物が、伝熱および熱伝導率を高めるだけではなく、良好なトライボロジー特性も提供することが観察されている。前記流体は、例えば電気自動車トランスミッションにおいて、ならびに古典的な内燃機関変速機、特に手動変速機、自動化された手動変速機、自動変速機、無段変速機およびライトデューティーおよびヘビーデューティー用途におけるデュアルクラッチトランスミッションにおいて必要とされる良好なトライボロジー特性を有する潤滑剤として使用することもできる。付加的な、良好なトライボロジー特性は、高い負荷容量を含み、同時に銅を腐食せず、これは驚くべきことであり、かつ現在、技術水準の化学を用いることによっては達成されない。これらの2つの特性は、現在の技術水準の化学を用いることに互いに矛盾する。なぜなら、高い負荷容量のためには、硫黄含有添加剤が必要であるのに対し、それらの硫黄含有添加剤は、硫化銅の形成による銅の腐食増大をまねくからである。前記流体と銅線、回路板および電気コネクタとの直接接触が起こる箇所の銅腐食を回避することは、殊にEV用途の要件である。本発明の組成物を用いて、銅腐食をまねく成分を用いることなく、負荷容量を高めることができる。実験の部は、銅腐食を回避しながら、負荷容量へのこれらの付加的な有益な効果を説明する。
【0025】
したがって、前記ナノ粒子組成物がバッテリーまたは金属可動部を有する他の電気装置システムにおいて伝熱流体として使用される場合の好ましい実施態様において、本発明は、伝熱および熱伝導率を高め、かつ高い負荷容量を改善し、同時にバッテリーまたは金属可動部を有する他の電気装置システムにおいて使用される伝熱流体における銅腐食を回避する方法に関する。
【0026】
無機ナノ粒子化合物(A)
本発明によれば、前記無機ナノ粒子化合物(本明細書において「粒子」または「ナノ粒子」とも呼ばれる)は、1~500nm、好ましくは2~250nmおよびより好ましくは5~100nmである(透過型電子顕微鏡法、TEMを用いて決定される)少なくとも1つの寸法を有する微視的な粒子である。この粒子は、個々の性質のものであってよいかまたはアグリゲーションおよび/またはアグロメレーションされた構造において存在していてよい。後者において、その一次粒子のサイズは、少なくとも1つの寸法において上記のサイズの間にある。前記のアグリゲーション/アグロメレーションされた構造のサイズは、50~100000nm、好ましくは100~10000nmおよびより好ましくは100~3000nmであってよい(静的光散乱技術、d50 SLSを用いて決定される)。
【0027】
上記の寸法は、説明のためのみに提供され、かつ本開示を限定することを意図するものではない。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、前記無機ナノ粒子は、ケイ素、セリウム、チタン、アルミニウム、銅、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の酸化物、窒化物または炭化物である。好ましい金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子は、SiO2、CeO2、TiO2、Al2O3、CuO、CaO、MgO、Fe2O3、Fe3O4、ZnO、またはその混合物である。より好ましくは前記無機ナノ粒子は、TiO2またはAl2O3である。
【0029】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記無機ナノ粒子は、ホウ素またはアルミニウムの窒化物、好ましくはhBNまたはAlNから選択される。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、前記ナノ粒子は、上記の構造の混合物から選択される。
【0031】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記ナノ粒子は、TiO2、Al2O3またはその混合物から選択される。
【0032】
ポリマー(B)
本発明のポリマーは、結晶性または半結晶性ポリマーではなく、無定形ポリマーである。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、2000~150000g/mol、より好ましくは5000~100000g/mol、よりいっそう好ましくは5000~80000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0034】
本発明において、前記ポリマーの数平均平均分子量は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)校正標準および溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)(流量:1mL/min、注入体積:100μL)を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定された。
【0035】
好ましくは、前記モノマー成分a)およびb)を含むモノマー組成物を用いて製造される前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~30質量%、より好ましくは4~30質量%の、成分a)として前記の1種以上の官能性モノマー、および
b)前記モノマー組成物の全質量を基準として、70~99質量%、より好ましくは70~96質量%の、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子1~40個を含む。
【0036】
好ましい実施態様において、前記モノマー組成物のモノマーa)およびb)の質量含有率は、前記モノマー組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる。
【0037】
官能性モノマーa)
すでに上記で定義されたように、本発明による1種以上の官能性モノマーa)は、以下のものからなるリストから選択される:
a1)アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、
a2)アルキル(メタ)アクリル酸のニトリルおよび他の含窒素アルキル(メタ)アクリレート、
a3)エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、
a4)オキシラニルアルキル(メタ)アクリレート、
a5)含リン、含ホウ素および/または含ケイ素アルキル(メタ)アクリレート、
a6)複素環式アルキル(メタ)アクリレート、
a7)ハロゲン化ビニル、
a8)ビニルエステル、
a9)芳香族基を含有するビニルモノマー、
a10)複素環式ビニル化合物、
a11)ビニルおよびイソプレニルエーテル、
a12)メタクリル酸およびアクリル酸。
【0038】
好ましくは、前記官能性モノマーa)は、アミノアルキル(メタ)アクリレートa1)またはアミノアルキル(メタ)アクリルアミドa1)または含ケイ素アルキル(メタ)アクリレートa5)または複素環式アルキル(メタ)アクリレートa6)から、より好ましくは、アミノアルキル(メタ)アクリレートa1)またはアミノアルキル(メタ)アクリルアミドa1)または複素環式アルキル(メタ)アクリレートa6)から選択される。
【0039】
よりいっそう好ましくは、前記官能性モノマーa)は、N-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、またはオキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレートから、最も好ましくはN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、またはオキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレートから、選択される。
【0040】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーb)
用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸とメタクリル酸との混合物をいい、その際にメタクリル酸が好ましい。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルまたはアクリル酸およびメタクリル酸のエステルの混合物をいい、その際にメタクリル酸のエステルが好ましい。
【0041】
用語「C1~40アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と炭素原子1~40個を有する直鎖、環状または分岐状のアルコールとのエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0042】
本発明によれば、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の任意の成分b)において、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子1~40個を含むことが好ましい。
【0043】
本発明によれば、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーb)は、
b1)式(I):
【化1】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、R
1は、炭素原子1~8個、好ましくは炭素原子1~5個、およびより好ましくは炭素原子1~4個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味し、前記モノマー組成物の全質量を基準としている]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレート、
b2)式(II):
【化2】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、R
2は、炭素原子9~15個、好ましくは炭素原子12~15個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレート、
b3)式(III):
【化3】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、R
3は、炭素原子16~40個、好ましくは炭素原子16~30個、およびより好ましくは炭素原子16~22個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレート
を含むことが好ましい。
【0044】
用語「C1~8アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子1~8個を有する直鎖または分岐状のアルコールとのエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0045】
本発明によれば、前記の式(I)による1種以上のモノマー、すなわち前記C1~8アルキル(メタ)アクリレートのそれぞれが独立して、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-tert-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートおよび3-イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されていてよく、最も好ましい前記の式(II)によるモノマーは、メチルメタクリレートである。
【0046】
特に好ましいC1~8アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレートおよびn-ブチル(メタ)アクリレートであり、メチルメタクリレートおよびn-ブチルメタクリレートが殊に好ましい。
【0047】
用語「C9~15アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子9~15個を有する直鎖または分岐状のアルコールとのエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0048】
本発明によれば、前記の式(II)による1種以上のモノマー、すなわち前記C9~15アルキル(メタ)アクリレートのそれぞれが独立して、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、環置換基を有するシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群から選択されていてもよい。
【0049】
特に好ましいC9~15アルキル(メタ)アクリレートは、線状C12~14アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステル(C12~14アルキル(メタ)アクリレート - ラウリルメタクリレート-LMA)または線状C12~15アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステル(C12~15アルキル(メタ)アクリレート - ドデシルペンタデシルメタクリレート - DPMA)である。
【0050】
用語「C16~40アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子16~40個を有する直鎖または分岐状のアルコールとのエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0051】
本発明によれば、前記の式(III)による1種以上のモノマー、すなわち前記C16~40アルキル(メタ)アクリレートのそれぞれが独立して、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、エイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、2,4,5-トリ-t-ブチル-3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、および2,3,4,5-テトラ-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択されていてもよい。
【0052】
好ましいモノマー組成物
本発明の好ましい態様によれば、前記の1種以上のポリマー化合物(B)が、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができることが好ましい:
a)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~35質量%、より好ましくは1~30質量%、よりいっそう好ましくは4~30質量%の、成分a)として前記の1種以上の官能性モノマー、および
b1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~20質量%、より好ましくは0~15質量%の、第1の成分b)として、式(I)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子1~8個、好ましくは炭素原子1~5個、およびより好ましくは炭素原子1~4個を含む、および
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、45~99質量%、より好ましくは50~96質量%の、第2の成分b)として、式(II)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子9~15個、好ましくは炭素原子12~15個を含む、および、
b3)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~30質量%、より好ましくは0~20質量%の、第3の成分b)として、式(III)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子16~40個、好ましくは炭素原子16~30個、およびより好ましくは炭素原子16~22個を含む、
ここで、前記モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計して100質量%になる。
【0053】
本発明の別の好ましい実施態様において、請求項1に定義される1種以上のポリマー化合物(B)が、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができることが好ましい:
a)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~35質量%、より好ましくは1~30質量%、よりいっそう好ましくは4~30質量%の、a)として、アミノアルキル(メタ)アクリレートa1)またはアミノアルキル(メタ)アクリルアミドa1)または含ケイ素アルキル(メタ)アクリレートa5)または複素環式アルキル(メタ)アクリレートa6)、および
b1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~20質量%の、第1の成分b)として、式(I)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子1~8個、好ましくは炭素原子1~5個、およびより好ましくは炭素原子1~4個を含む、および
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、45~99質量%、より好ましくは50~96質量%の、第2の成分b)として、式(II)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子9~15個、好ましくは炭素原子12~15個を含む、および
b3)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~30質量%、より好ましくは0~20質量%の、第3の成分b)として、式(III)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ここで、前記の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基のそれぞれが独立して、線状、環状または分岐状であり、かつ炭素原子16~40個、好ましくは炭素原子16~30個、およびより好ましくは炭素原子16~22個を含む、
ここで、前記モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計して100質量%になる。
【0054】
本発明の別の特に好ましい実施態様において、前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~10質量%、より好ましくは1~5質量%の、成分a)として、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、最も好ましくはN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、および
b1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~15質量%、より好ましくは0~10質量%の、第1の成分b)として、式(I)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはメチルメタクリレート、および
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、80~99質量%、より好ましくは90~99質量%の、第2の成分b)として、式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレートまたはドデシルペンタデシルメタクリレート、
ここで、前記モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計して100質量%になる。
【0055】
本発明の別の特に好ましい実施態様において、前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、10~35質量%、より好ましくは20~35質量%の、成分a)として、アミノアルキル(メタ)アクリレート、最も好ましくは2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、および
b1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~10質量%、より好ましくは0~5質量%の、第1の成分b)として、式(I)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはメチルメタクリレートおよび/またはブチルメタクリレート、および
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、45~80質量%、より好ましくは45~55質量%の、第2の成分b)として、式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレートまたはドデシルペンタデシルメタクリレート、
b3)前記モノマー組成物の全質量を基準として、10~30質量%、より好ましくは10~20質量%の、第3の成分b)として、式(III)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはステアリルエイコシルメタクリレート、
ここで、前記モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計して100質量%になる。
【0056】
本発明の別の特に好ましい実施態様において、前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a5)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~20質量%、より好ましくは5~15質量%の、成分a)として、含ケイ素アルキル(メタ)アクリレート、最も好ましくは3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、および
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、80~99質量%、より好ましくは85~95質量%の、第2の成分b)として、式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレート、
ここで、前記モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計して100質量%になる。
【0057】
本発明の別の特に好ましい実施態様において、前記の1種以上のポリマー化合物(B)は、以下のものを含むモノマー組成物を重合することにより得ることができる:
a6)前記モノマー組成物の全質量を基準として、1~15質量%、より好ましくは1~10質量%の、成分a)として、複素環式(メタ)アクリレート、最も好ましくはオキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート、および
b1)前記モノマー組成物の全質量を基準として、0~20質量%、より好ましくは10~20質量%の、第1の成分b)として、式(I)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはメチルメタクリレート、および
b2)前記モノマー組成物の全質量を基準として、65~99質量%、より好ましくは70~89質量%の、第2の成分b)として、式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレート、
ここで、前記モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計して100質量%になる。
【0058】
前記ポリマー化合物(B)の製造
本発明によれば、上記のポリマーは、
(x)上記で記載されたようなモノマー組成物を用意する工程、および
(y)前記モノマー組成物においてラジカル重合を開始する工程
を含む方法に従って、製造することができる。
【0059】
標準のフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版に詳述されている。一般に、重合開始剤および任意に連鎖移動剤がこのために使用される。
【0060】
前記重合は、標準圧力、減圧または高めた圧力下で実施することができる。その重合温度も決定的ではない。しかしながら、一般に、-20~200℃、好ましくは50~150℃およびより好ましくは80~130℃の範囲内である。
【0061】
前記重合工程(y)は、油中に希釈してまたは希釈せずに実施されてよい。希釈が実施される場合には、前記反応混合物の全質量に対して、前記モノマー組成物の量、すなわちモノマーの全量は、好ましくは20~90質量%、より好ましくは40~80質量%、最も好ましくは50~70質量%である。
【0062】
好ましくは、前記モノマー混合物を希釈するのに使用される油は、APIグループI、II、III、IVまたはV油、またはその混合物である。好ましくは、グループIII油またはその混合物は、前記モノマー混合物を希釈するのに使用される。
【0063】
好ましくは、工程(y)は、ラジカル開始剤の添加を含む。
【0064】
適したラジカル開始剤は、例えば、アゾ開始剤、例えばアゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレートおよびビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0065】
好ましくは、前記ラジカル開始剤は、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオクトエート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシピバレートおよびtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートからなる群から選択される。特に好ましい開始剤は、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオクトエートおよびtert-ブチルペルオキシピバレートである。
【0066】
好ましくは、前記モノマー混合物の全質量に対するラジカル開始剤の全量は、0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、最も好ましくは0.1~2質量%である。
【0067】
ラジカル開始剤の全量が、単一工程において添加されてよく、または前記ラジカル開始剤が、前記重合反応の経過につれて幾つかの工程において添加されてもよい。好ましくは、前記ラジカル開始剤は、幾つかの工程において添加される。例えば、前記ラジカル開始剤の一部分が、ラジカル重合を開始させるために添加されてよく、かつ前記ラジカル開始剤の第2の部分が、最初の配量の0.5~3.5時間後に添加されてもよい。
【0068】
好ましくは、工程(y)も連鎖移動剤の添加を含む。適した連鎖移動剤は、殊に油溶性メルカプタン、例えばn-ドデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレートまたは2-メルカプトエタノール、さもなければテルペンの種類からの連鎖移動剤、例えばテルピノレンである。特に好ましいのは、n-ドデシルメルカプタンおよび2-エチルヘキシルチオグリコレートの添加である。
【0069】
前記モノマー組成物を最初の部分および第2の部分に分割し、かつ前記ラジカル開始剤の一部を前記の最初の部分に添加して、その中で前記重合反応だけを開始することも可能である。ついで、前記ラジカル開始剤の第2の部分は、前記モノマー組成物の第2の部分に添加され、ついでこれが0.5~5時間、好ましくは1.5~4時間、より好ましくは2~3.5時間の過程にわたって、前記重合反応混合物に添加される。前記の第2のモノマー混合物の添加後に、前記ラジカル開始剤の第3の部分は、上記に記載されるように前記重合反応に添加されてよい。
【0070】
好ましくは、前記ラジカル重合の全反応時間は、2~10時間、より好ましくは3~9時間である。
【0071】
前記ラジカル重合の完了後に、得られたポリマーは、好ましくは、上記油で所望の粘度にさらに希釈される。好ましくは、前記ポリマーは、ポリマー5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、最も好ましくは20~40質量%の濃度に希釈される。
【0072】
本発明のポリマー-無機ナノ粒子組成物
本発明の好ましい実施態様によれば、本明細書において定義される前記の1種以上のナノ粒子(A)と、前記の1種以上のポリマー化合物(B)とを含むポリマー-無機ナノ粒子組成物は、ASTM D-445による3cSt~30cSt、より好ましくは3cSt~25cStの40℃での動粘度およびASTM D-93による110℃よりも高い引火点を有するベースフルード(C)をさらに含んでいてよい。
【0073】
前記ベースフルード(C)は、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII、APIグループIV基油およびAPIグループV基油またはその組合せからなるリストから選択される基油であってよい。
【0074】
前記基油は、アメリカ石油協会(API)により指定されるように定義することもできる(“Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”の2008年4月版、節1.3 副見出し1.3.“Base Stock Categories”参照)。
【0075】
APIは現在、潤滑剤ベースストックの5つのグループを定義する(API 1509, Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、2011年9月)。グループI、IIおよびIIIは、それらが含有する飽和分および硫黄の量と、それらの粘度指数とにより分類される鉱油であり、グループIVは、ポリアルファオレフィンであり、かつグループVは、例えばエステル油を含めた、その他全てである。以下の表は、これらのAPI分類を説明する。
【0076】
第1表 - 潤滑剤ベースストックのAPI定義
【表1】
【0077】
好ましい実施態様において、ASTM D-445による3cSt~30cSt、より好ましくは3cSt~25cStの40℃での動粘度およびASTM D-93による110℃よりも高い引火点を有する前記ベースフルード(C)は、ポリアルファオレフィン、テトラブタン、APIグループIII基油またはその混合物、好ましくは、テトラブタンまたはAPIグループIII基油、またはその混合物から選択される。
【0078】
前記ベースフルード(C)は、フッ化化合物、例えばポリヘキサフルオロプロピレンオキシド、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)、ペルフルオロアルキルエーテル(PFAE)、ペルフルオロポリアルキルエーテル(PFPAE)、ハイドロフルオロエーテル、またはその混合物であってよい。
【0079】
前記ベースフルード(C)がAPIグループV基油から選択される場合には、シリコーン油、ナフテン、ポリアルキレングリコール、リンを含有する酸の液状エステルを含む合成油、またはその混合物からなる群から好ましくは選択される。
【0080】
前記ベースフルード(C)は、上記で列挙されたあらゆる基油の混合物であってもよい。
【0081】
伝熱流体としての使用のための前記ナノ粒子組成物が、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、80~99.9質量%のベースフルード(C)および0.1~20質量%の(A)および(B)、より好ましくは85~99.9質量%のベースフルード(C)および0.1~15質量%の(A)および(B)、最も好ましくは88~99.5質量%のベースフルード(C)および0.5~12質量%の(A)および(B)を含むことが好ましい。別の好ましい実施態様において、(A)、(B)および(C)の量は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる。
【0082】
前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物を製造する方法の好ましい実施態様において、1種以上の無機ナノ粒子(A)と、前記の1種以上のポリマー化合物(B)と、任意に前記ベースフルード(C)との混合物は、出力10~1000W、好ましくは50~800Wおよびより好ましくは100~500Wを有する超音波装置を用いてミリングされる。好ましくは、前記組成物は、1~240分間、より好ましくは10~180分間およびよりいっそう好ましくは30~150分間ミリングされて、安定なポリマー-無機ナノ粒子組成物を達成する。
【0083】
別の好ましい実施態様において、1種以上の無機ナノ粒子(A)と、前記の1種以上のポリマー化合物(B)と、任意に前記ベースフルード(C)との混合物は、超高圧技術(例えばジェットミル装置Sugino Ultimaizer HJP- 25050)を用いてミリングされる。この混合物の少なくとも2つの流れは、ポンプ、好ましくは高圧ポンプによって1つのノズル(直径0.25mm)を介してそれぞれ、反応器ハウジングにより囲まれた粉砕室中の衝突点上へスプレーされ、これは、前記粉砕室は、前記混合物でフラッディングされ、かつ最終的にミリングされた混合物は、前記粉砕室中への前記の連続的な流れの超過圧力により前記粉砕室から除去されることにより特徴付けられる。前記ポンプ圧力は、100~4000bar、好ましくは400~3000bar、より好ましくは1000~2500barである。
【0084】
別の好ましい実施態様によれば、1種以上の無機ナノ粒子(A)と、1種以上のポリマー化合物(B)と、任意に前記ベースフルード(C)とを含むポリマー-無機ナノ粒子組成物は、ボールミルプロセスによってミリングされる。好ましくは、前記ボールミルプロセスは、エネルギー0.1~10kWh/kg、好ましくは1~5kWh/kg、より好ましくは1.5~3kWh/kgを前記混合物中へ導入することを含む。
【0085】
別の好ましい実施態様において、ポリマー-無機ナノ粒子組成物、殊に上記で記載されるポリマー-無機ナノ粒子組成物を製造する方法は、
(i)本明細書において定義される1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)を用意する工程、
(ii)本明細書において定義される1種以上のポリマー化合物(B)を用意する工程、
(iii)好ましくは、本明細書において定義されるベースフルード(C)を用意する工程、
(iv)少なくとも前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)および前記の1種以上のポリマー化合物(B)を組み合わせて混合物を得る、好ましくは少なくとも前記の1種以上の無機ナノ粒子化合物(A)、前記の1種以上のポリマー化合物(B)および前記ベースフルード(C)を組み合わせて、混合物を得る工程、および
(v)前記混合物をミリングする工程
を含む。
【0086】
本発明によれば、前記ミリング工程(v)は、動的光散乱技術(DLS)を用いて測定される前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の粒度分布の生じる変化により定義される。
【0087】
工程(v)に記載される本発明によるミリング技術は、ディソルバー、ローター-ステーター装置、均質化、高圧均質化、高せん断混合、超音波、ボールミリングまたは超高圧技術(ジェットミル)またはその組合せであってよい。実際、アグロメレートの粒度は、これらのミリング技術を用いて減少される。
【0088】
最も好ましい実施態様は、前記混合物を超高圧技術(ジェットミル)によってミリングすることである。
【0089】
本発明による伝熱流体は、成分(D)として、以下に議論されるような、分散剤、消泡剤、シール固定剤またはシール相溶剤、清浄剤、酸化防止剤、金属不動態化剤、さび止め剤、静電放電抑制剤、抗乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、腐食抑制剤、摩擦調整剤、染料およびそれらの混合物からなる群から選択されるさらなる添加剤を含有していてもよい。
【0090】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ酸化PIBSIを含めたポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI)、およびN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
【0091】
分散剤(ホウ酸化分散剤を含む)は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、0~10質量%の量で好ましくは使用される。
【0092】
適した消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油またはフルオロアルキルエーテルである。
【0093】
前記消泡剤は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、0.005~0.5質量%の量で好ましくは使用される。
【0094】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド、サリチレート、チオホスホネート、殊にチオピロホスホネート、チオホスホネートおよびホスホネート、スルホネートおよびカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、殊にカルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有していてよい。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基性の形で使用されてよい。
【0095】
清浄剤は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、0.2~5質量%の量で好ましくは使用される。
【0096】
適した酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤を含む。
【0097】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N′-ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4′-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2′-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む。これらのうち、殊に好ましいのは、ビスフェノール系酸化防止剤およびエステル基含有フェノール系酸化防止剤である。
【0098】
前記アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4′-ジブチルジフェニルアミン、4,4′-ジペンチルジフェニルアミン、4,4′-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4′-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4′-ジオクチルジフェニルアミン、4,4′-ジノニルジフェニルアミン、ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン、ナフチルアミン類、具体的にはα-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミンおよびさらにアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、例えばブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、ノニルフェニル-α-ナフチルアミンを含む。これらのうち、ジフェニルアミン類は、その抗酸化効果の見地から、ナフチルアミン類よりも好ましい。
【0099】
適した酸化防止剤は、さらに、硫黄およびリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰)、有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、キサンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸、複素環式硫黄/窒素化合物、殊にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、有機リン化合物、例えばトリアリールおよびトリアルキルホスフィット、有機銅化合物および過塩基性カルシウムおよびマグネシウムをベースとするフェノキシドおよびサリチレートからなる群から選択されてよい。
【0100】
酸化防止剤は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、0~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%の量で使用される。
【0101】
前記流動点降下剤は、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレンを含む。好ましいのは、5000~200000g/molの質量平均分子量(Mw)を有するポリメタクリレートである。
【0102】
前記流動点降下剤の量は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、好ましくは0.1~5質量%である。
【0103】
好ましい耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えば亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジ-C3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTP)、亜鉛ホスフェート、亜鉛ジチオカルバメート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ポリスルフィド、リン含有化合物、例えばホスフィット、ホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩または金属塩、硫黄およびリン含有耐摩耗剤、例えばチオホスフィット、チオホスフェート、チオホスホネート、それらの化合物のアミン塩または金属塩を含む。
【0104】
前記耐摩耗剤は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、0~3質量%、好ましくは0.1~2質量%の量で存在していてよい。
【0105】
好ましい摩擦調整剤は、機械的に活性な化合物、例えば二硫化モリブデン、グラファイト(フッ化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド、吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド、摩擦化学反応による層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸エステル、ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、官能化ポリ(メタ)アクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィンおよび有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)およびそれらとZnDTPとの組合せ、銅含有有機化合物を含んでいてよい。
【0106】
上記で列挙した化合物の一部は、複数の機能を満足しうる。例えば、ZnDTPは、主として耐摩耗性添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食抑制剤(ここでは:金属不動態化剤/不活性化剤)の特徴も有する。
【0107】
上記で詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001、R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0108】
好ましくは、前記の1種以上の添加剤(D)の全濃度は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、20質量%まで、より好ましくは0.05%~15質量%である。
【0109】
好ましくは、成分(A)~(D)の量は、前記ポリマー-無機ナノ粒子組成物の全質量を基準として、合計して100質量%になる。
【0110】
実験の部
本発明は、以下に、例および比較例を参照して詳細にさらに説明されるが、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【0111】
省略形
C1AMA C1-アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート;MMA)
C4AMA C4-アルキルメタクリレート(n-ブチルメタクリレート;BMA)
C12~14AMA C12~14-アルキルメタクリレート(ラウリルメタクリレート;LMA)
C12~15AMA C12~15-アルキルメタクリレート(ドデシルペンタデシルメタクリレート;DPMA)
DMAEMA ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPMA N-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
Oxa オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート
MEMO 3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート
CTA 連鎖移動剤
f分岐 分岐度[mol%]
Mn 数平均分子量
Mw 質量平均分子量
PDI 多分散指数、Mw/Mnにより計算される分子量分布
NB3020 Nexbase(登録商標)3020、7.7cStのKV40(ASTM D-445)および150℃超の引火点(ASTM D-93)を有するNesteからのグループIII基油
NB3043 Nexbase(登録商標)3043、20cStのKV40(ASTM D-445)および220℃超の引火点(ASTM D-92)を有するNesteからのグループIII基油
テトラブタン 4.2cStのKV40(ASTM D-445)および124℃の引火点(ASTM D-93)を有するテトラブタン(分岐状C16およびC20飽和炭化水素異性体)
PAO 合成ポリアルファオレフィン、5.2cStのKV40(ASTM D-445)および130℃の引火点(ASTM D-93)を有するグループIV基油
Al2O3 1 ヒュームドAl2O3(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子
Al2O3 2 ヒュームドAl2O3(ISO 9277による表面積:55~75m2/g)粒子
TiO2 1 ヒュームドTiO2(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子
TiO2 2 ヒュームドTiO2(ISO 9277による表面積:75~105m2/g)粒子
【0112】
本発明によるポリマー化合物(B)の製造
上記で記載されるように、前記ポリマーの数平均平均分子量(Mn)を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)校正標準を用いて校正されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として使用する。
【0113】
ポリマー化合物(B)としての例ポリマー1(P1):本発明によるアミン含有コポリマーの製造
NB3043 200g、n-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA) 11.34g、ラウリルメタクリレート(C12~14AMA)272.21g、n-ドデシルメルカプタン(n-DDM)5.53g、2-エチルヘキシルチオグリコレート(TGEH)5.53gを、2リットルの4つ口丸底フラスコ中へ装入した。この反応混合物を、C形撹拌棒を用いて撹拌し、窒素で不活性にし、かつ90℃に加熱した。前記反応混合物が前記設定値温度に達すると、t-ブチルペルオクトエート2.83gを、2時間にわたってこの反応器中へ供給した。2時間後に、前記混合物を100℃まで加熱し、前記設定値に達した後に、t-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート1.42gおよびtert-ブチルペルオキシピバレート1.13gを1時間以内に供給した。残存モノマーを、ガスクロマトグラフィーにより測定して、良好なモノマー転化を確実にした。得られたポリマーは、6500g/molの数平均分子量Mnを有する(PMMA標準)。
【0114】
ポリマー化合物(B)としての例ポリマー2(P2) - 本発明によるオキサゾリジニル含有コポリマーの製造
製造はポリマー1と同じ。得られた最終ポリマーは、9400g/molの数平均分子量Mnを有する(PMMA標準)。
【0115】
ポリマー化合物(B)としての例ポリマー3(P3) - 本発明によるアミン含有コポリマーの製造
製造はポリマー1と同じ。得られた最終ポリマーは、29000g/molの数平均分子量Mnを有する(PMMA標準)。
【0116】
ポリマー化合物(B)としての例ポリマー4(P4) - 本発明によるアミン含有コポリマーの製造
製造はポリマー1と同じ。得られた最終ポリマーは、65000g/molの数平均分子量Mnを有する(PMMA標準)。
【0117】
ポリマー化合物(B)としての例ポリマー5(P5) - 本発明によるアミン含有コポリマーの製造
製造はポリマー1と同じ。重合設定値温度は、この場合に90および100℃の代わりに80℃である。得られた最終ポリマーは、15000g/molの数平均分子量Mnを有する(PMMA標準)。
【0118】
ポリマー化合物(B)としての例ポリマー6(P6) - 本発明による含ケイ素コポリマーの製造
製造はポリマー1と同じ。得られた最終ポリマーは、7100g/molの数平均分子量Mnを有する(PMMA標準)。
【0119】
例P1、P2、P3、P4、P5およびP6について、前記モノマー成分は合計して100%になる。開始剤および連鎖移動剤の量は、モノマーの全量に対して与えられる。以下の第2表は、前記ポリマーP1、P2、P3、P4、P5およびP6を製造するためのモノマー組成物および出発物質、ならびにその最終的な特性決定を示す。
【表2】
【0120】
本発明によるポリマー-無機ナノ粒子組成物の製造
分散液IE1:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子10gを、P2 5gを含む合成PAO 85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、219nmのd99値を示す。
【0121】
分散液IE2:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子10gを、P1 5gを含むNB3020 85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、205nmのd99値を示す。
【0122】
分散液IE3:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子10gを、P1 5gを含むNB3020 85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、182nmのd99値を示す。
【0123】
分散液IE4:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子10gを、P3 5gを含むテトラブタン85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、172nmのd99値を示す。
【0124】
分散液IE5:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子10gを、P1 5gを含むテトラブタン85g中の溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、189nmのd99値を示す。
【0125】
分散液IE6:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子10gを、P1 5gを含むテトラブタン85g溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、244nmのd99値を示す。
【0126】
分散液IE7:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子10gを、P3 5gを含むテトラブタン85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、266nmのd99値を示す。
【0127】
分散液IE8:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子10gを、P1 5gを含むNB3020油85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、234nmのd99値を示す。
【0128】
分散液IE9:
ヒュームドAl2O3 2(ISO 9277による表面積:55~75m2/g)粒子10gを、P1 5gを含むNB3020 85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、219nmのd99値を示す。
【0129】
分散液IE10:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子10gを、P4 5gを含むNB3020 85gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれミリングする。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、246nmのd99値を示す。
【0130】
分散液IE11:
最初に、予備分散液を製造する。ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)20.0kgを、P5 6kgを含むNB3043 54kgの混合物中へ、従来のディソルバー装置を用いて添加する。この分散液を、前記ディソルバー内で、前記ディソルバーディスクを約20m/sの回転速度で30分間保持して、処理した。この予備分散液を、超高圧技術(ジェットミル装置Sugino Ultimaizer HJP-25050)を用いて加工する。前記予備分散液を、前記ジェットミル装置を用いて2500barの圧力下におき、2回加工する。最後に、前記分散液を、NB3043を用いてTiO2 1 15質量%の固形分に希釈する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、225nmのd99値を示す。
【0131】
分散液IE12:
最初に、予備分散液を製造する。ヒュームドTiO2 2(ISO 9277による表面積:75~105m2/g)5.0kgを、P6 2kgを含むNB3043 43.0kgの混合物中へ、従来のディソルバー装置を用いて添加した。この分散液を、前記ディソルバー内で、前記ディソルバーディスクを約20m/sの回転速度で30分間保持して、処理した。この予備分散液を、超高圧技術(ジェットミル装置Sugino Ultimaizer HJP-25050)を用いて加工する。前記予備分散液を、前記ジェットミル装置を用いて1400barの圧力下におき、2回加工する。その後、この方法を、2500barの圧力で繰り返した。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、234nmのd99値を示す。
【0132】
分散液IE13:
最初に、予備分散液を製造する。ヒュームドTiO2 2(ISO 9277による表面積:75~105m2/g)20.0kgを、P5 7kgを含むNB3043 53kgの混合物中へ、従来のディソルバー装置を用いて添加する。この分散液を、前記ディソルバー内で、前記ディソルバーディスクを約20m/sの回転速度で30分間保持して、処理した。この予備分散液を、超高圧技術(ジェットミル装置Sugino Ultimaizer HJP-25050)を用いて加工する。前記予備分散液を、前記ジェットミル装置を用いて2500barの圧力下におき、2回加工する。最後に、前記分散液を、NB3043を用いてTiO2 2 15質量%の固形分に希釈する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、183nmのd99値を示す。
【0133】
比較例の製造
分散液CE1:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子1gを、NB3043油18gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれ処理する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、1927nmのd99値を示す。
【0134】
分散液CE2:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子1gを、テトラブタン18gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれ処理する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、1850nmのd99値を示す。
【0135】
分散液CE3:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子0.46gを、テトラブタン18gの溶液中へ添加し、同時にこの混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれ処理する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、1867nmのd99値を示す。
【0136】
分散液CE4:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子2gを、オレイルアルコール1gと混合する。テトラブタン16gの添加後に、この混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれ処理する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、1457nmのd99値を示す。
【0137】
分散液CE5:
ヒュームドTiO2 1(ISO 9277による表面積:35~65m2/g)粒子2gを、Triton X-100 1gと混合する。NB3020 16gの添加後に、この混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で30分間、それぞれ処理する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、1,608nmのd99値を示す。
【0138】
分散液CE6:
ヒュームドAl2O3 1(ISO 9277による表面積:85~115m2/g)粒子1gを、オレイルアルコール0.5gと混合する。テトラブタン16gの添加後に、この混合物を、超音波(超音波プロセッサUP400S、400W、24kHz、Tiソノトロードを用いる)で60分間、それぞれ処理する。その粒度分布(動的光散乱装置、Horiba Ltd.(日本)製LA-950を用いてTegosoft DEC油中で測定される)は、1635nmのd99値を示す。
【0139】
動的光散乱(DLS)
前記粒度分布を、Horiba Ltd.製の動的光散乱装置LB-500を用いてTegosoft DEC油中で測定した。
【0140】
動的光散乱(DLS)は、懸濁液中の小さい粒子または溶液中のポリマーの粒度分布プロファイルを決定するのに使用することができる、物理学における技術である。この装置は、3nm~約6μmの範囲内の分散された材料(例えば無機ナノ粒子またはポリマー球)の粒度を測定するのに使用することができる。前記測定は、その媒体内の前記粒子のブラウン運動および液体材料と固体材料との屈折率における差による入射レーザー光の散乱に基づいている。
【0141】
生じる値は、前記粒子の対応する球の流体力学直径である。値d50、d90およびd99は、前記粒子の粒度分布内にある前記粒子の50%、90%または99%が下回る流体力学直径を記載するので、議論のための共通の基準である。これらの値が低ければ低いほど、前記粒子分散はより良好になる。これらの値を監視することは、前記粒子分散液安定性についての手がかりを与えうる。前記値がおびただしく増大する場合には、前記粒子は十分に安定化されず、かつ経時的にアグロメレーションおよび沈降する傾向を有して、安定性の欠如の結果となりうる。前記媒体の粘度に応じて、500nm未満のd99値(例えばNexbase基油について)は、前記粒子が経時的に静止して留まるので、安定な分散液のための指標であると言える。
【0142】
動的粘度
前記動的粘度を、前記回転粘度法およびシングルギャップシリンダーCC 27を用いるAnton PaarからのPhysica MCR 300を用いて測定した。
【0143】
前記粘度計のモーターは、固定されたカップ内のボブを駆動する。前記ボブの回転速度をプリセットし、かつ前記測定ボブを回転するのに必要とされる特定のモータートルクを発生させる。このトルクは、試験される物質の粘性力に打ち勝たなければならず、したがってその粘度の尺度である。
データは、100s-1のせん断速度および23℃で測定される。
【0144】
目視外観/安定性
安定性試験を、各試料について、少量の濃縮物を前記無機ナノ粒子の1質量%および0.1質量%溶液、すなわち粒子の質量%に希釈することにより実施した。この希釈物を、前記濃縮物を50mLガラスビーカー中で室温で1時間ブレンドすることにより製造した。各希釈物を、5mLガラスバイアル中に入れ、室温で放置した。前記バイアルを、ブレンド後、その後1週および4週後に、沈降の徴候についてチェックした。前記沈降を5つのカテゴリーに分類した:沈降なし(粒子が前記バイアルの底部で沈降しない)、少しの沈降(一部の粒子が前記バイアルの底部に沈降し始める)、中程度の沈降(前記バイアルの底部に薄層)、ほぼ完全な沈降(ほぼ全ての粒子が沈降しており、かつ上澄み液が澄明になっている)。
【0145】
経時的な沈降は、あらゆる種類の粒子を含有する分散液についての明らかな安定性の判断である。経時的に、前記粒子は、前記バイアルの底に沈降する。これは、一般に、それらのサイズ、質量および前記ベースフルードの粘度に依存している。安定な分散液は、前記粒子が、前記媒体中に均質に分散され、かつ公知の機構により安定化されるという事実により特徴付けられる。
【0146】
したがって、前記分散液中のナノ粒子の安定性は、ナノ流体の伝熱特性の明らかな前提条件である。以下に提供される本発明による例は、技術水準の伝熱ナノ流体に比較して、長期間にわたって異なる安定性試験および良好な熱伝導率と共に、より高い安定性を示す(第3および4表参照)。したがって、以下の安定性試験は、達成するのが通常より容易である室温でだけでなく、約100℃の最高温度を有する電動機を冷却する用途をシミュレートするより高温およびより長期間(例えば100℃で16h、第5および6表参照)でも実施した。
【0147】
比較例1~3(比較1~3)は、ベースフルード中のあらゆる種類の界面活性剤または添加剤で化学的に変性されていない無機ナノ粒子の単純な混合物である。比較例4~6(比較4~6)は、米国特許第8850803号明細書(US8850803 B2)からの特許の例である。
【0148】
【0149】
【0150】
100℃での安定性試験(粘度の変化)
第4表の対応する分散液を取り、かつ前記分散液中のナノ粒子1質量%、5質量%および10質量%濃度(第5表参照)に希釈した。これらの試料の動的粘度および熱伝導率を測定した。アリコートを、ガラスバイアル中へ充填し、かつ乾燥器中で100℃で16h(一晩)貯蔵した。前記分散液を室温に冷却した後に、その動的粘度および熱伝導率を再び測定した。
【0151】
前記の100℃での貯蔵中に、粒子と流動媒体との間の動的プロセスは、より高い運動エネルギーにより高められ、このことは、前記分散液中のナノ粒子の再アグロメレーションおよびまたは沈殿をまねきうる。したがって、10%を超える粘度の増加は、前記分散液の安定性が満たされないことを意味する。
【0152】
以下に第5表に示されるように、本発明の発明者は、伝熱流体のための与えられた要件下で良好な熱伝導率だけでなく、良好な安定性も有する伝熱流体としての使用のためのナノ粒子分散液を製造することができた。
【0153】
対照的に、前記比較例は、室温でさえ、1日間の貯蔵後にそれらの不安定性のために測定することができなかった。したがって、約100℃の最高温度を有する電動機を冷却する用途をシミュレートする高めた温度での安定性試験(例えば100℃で16h)はまさに不可能であった。
【0154】
【0155】
LAMBDA装置、Flucon GmbHによる熱伝導率の決定
前記熱伝導率の決定は、熱線法により実施される。前記LAMBDAの熱線は、その熱源としておよびトランスデューサーとして同時に利用される。温度を上昇させるために、前記熱線を一定の測定電流にかけ、その周囲媒体は温まるので、前記熱線の抵抗は、前記周囲媒体の熱粘度に従って変化する。したがって、前記熱線における電圧の変化は、前記周囲媒体中で行われている温度の変化を示す。その測定範囲は10~2000mW/m・Kである。
【0156】
データを、前記測定装置のPT 100白金温度計によって金属ブロックサーモスタット中で40℃および100℃で温度調節した後に測定する。これらの温度は、重要な用途に有意義であるので、選択される。
【0157】
以下の第6表に示されるように、伝熱流体としての本発明によるポリマー-無機ナノ粒子組成物の使用は、前記分散液中の前記無機ナノ粒子の安定性が第4表に示されるように経時的に保持されるだけではなく、本発明のポリマー-無機ナノ粒子組成物が、伝熱流体として使用される場合に技術水準の伝熱基油の参考に比較して改善される熱伝導率も提供するので、有利である。さらに、第5表に示されるように、無機ナノ粒子の添加は、粘度変化に大きな影響を及ぼさず、このことは予測されず、かつ有利である。
【0158】
【0159】
上記の実験の部に示されるように、前記比較分散液が、前記安定性基準試験すら満たさないので、伝熱ナノ流体として使用することができないと結論することができる。
【0160】
対照的に、金属またはメタロイド酸化物ナノ粒子、金属またはメタロイド窒化物ナノ粒子、金属またはメタロイド炭化物ナノ粒子、またはその混合物を含む本発明のポリマー-無機ナノ粒子組成物が、伝熱流体として用途に近い条件(100℃で16h)で長期間にわたって、分散液安定性(粘度)および熱伝導率性能を失うことなく安定であることが実証された。
【0161】
負荷容量試験:
前記分散液IE13を取り、NB 3043中に前記分散液中のナノ粒子0.5質量%濃度に希釈した(IE13-0.5)。
FZGスカッフィング試験をDIN ISO 14635-2に従って90℃(A10/16.6R/90)で前記分散液IE13-0.5を用いて実施した。合格負荷ステージ12において、物理的外観の全面積合計0mm2およびピニオン歯車減量6mgおよびホイール減量12mg、全部で18mgの減量が生じた。この試験における最も高い合格負荷ステージは12である。したがって、本発明による無機ナノ粒子組成物が、優れた負荷容量性能を提供することができることを示すことができる。不合格負荷ステージが高いことは、前記歯車をその寿命にわたって損傷から保護するのに必要とされる。典型的なトランスミッションシステムは、8~10の不合格負荷ステージ(FLS)を有する。しかしながら、このことは、硫黄含有添加剤を用いた場合にのみ達成することができ、その際には、エージングの問題ならびに高い銅腐食をまねく。合格負荷ステージは、21700回の暴露後にDIN ISO 14635-2に従って前記歯車の歯を損傷することなく達成される。グループIII基油NB 3043単独は、この試験における4のFLSを有する。
【0162】
Cu腐食試験:
銅腐食データを、ASTM D130に従って160℃で前記分散液IE13-0.5を用いて集めた:
160℃で3h:結果 1b
160℃で72h:結果 1b
160℃で168h:結果 1b
銅板が前記油中に規定時間および温度にわたって浸漬される。前記試験後に、前記銅板は、特定の色変化を示す。前記色変化は、前記銅腐食と直接相関している。前記銅腐食を、1a~4cの前記板の異なる色を示す表に従って分類する。1bの値は、銅腐食が確認されないわずかな曇りを示す。
【0163】
フィルタラビリティ試験:
前記分散液IE13-0.5のフィルタラビリティを、潤滑油、例えば変速機油のフィルタラビリティを示す、Scaniaフィルター試験STD 4263、2009-04法に従って試験した。そのFIおよびFII値が高ければ高いほど、前記フィルタラビリティはより良好になる。前記FII値が90を上回る場合には、この方法による試験は、首尾よく合格している。この方法によるフィルタラビリティ試験において、前記分散液IE13-0.5は、96.4%のFI値および91.5%のFII値を有していた。
【0164】
前記FZGスカッフィング試験および前記銅腐食試験は、本発明による組成物の利点を示す。変速機油において全く銅腐食を有することなく優れた負荷容量を有することは予測されなかった。
【0165】
明確にするために、以下の第7表は、前記FZGスカッフィング、銅腐食およびScaniaフィルター試験において前記分散液IE13-0.5を用いて得られた結果を要約する。
【0166】