(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】編組機、巻線機又は螺旋形成装置、及び、その運転方法
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20240904BHJP
D07B 1/04 20060101ALI20240904BHJP
D04C 3/12 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
D07B1/06 Z
D07B1/04
D04C3/12
(21)【出願番号】P 2022504677
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2020068771
(87)【国際公開番号】W WO2021013500
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】102019211030.4
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599046737
【氏名又は名称】マシーネンファブリーク・ニーホフ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トマス・フォークナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ゴルゲルス
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ラーブ
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-066922(JP,A)
【文献】特開平04-185750(JP,A)
【文献】特開平07-133566(JP,A)
【文献】特開2009-046206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00 - 9/00
D04C 1/00 - 7/00
D04G 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1撚
線(6
)の周りで、少なくとも1つの撚線材料繊
維から成る少なくとも1つの撚線材料撚線(9、10)で編組、巻線形成、又は、螺旋形成を行うための編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法であって、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)が、少なくとも1つの位置において、回転しないように前記
第1撚線(6)に固定され、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)は、前記
第1撚線(6)の長手軸の周りに繰り返し巡らされ、前記
第1撚線(6)は、同時に、概ね前記
第1撚線の長手軸(5)の方向において、つねに同じ方向に動かされ、これによって、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)は、前記
第1撚線(6)の周りを巡らされた螺旋の形状を得る編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法において、
前記
第1撚線(6)の長手軸(5)に対して略垂直な前記
第1撚線(6)の横断面の直径(D)が測定され、測定された前記直径(D)に依存して、前記
第1撚線(6)の送り速度、及び/又は、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)が前記
第1撚線(6)の長手軸(5)の周りを移動する際の回転速度が、開ループ制御又は閉ループ制御され
、
前記第1撚線(6)の長手軸(5)の周りで少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)が完全に回転する際に前記第1撚線(6)が移動する区間として定義される、前記第1撚線(6)の相対的な送り速度(h)が、前記第1撚線(6)の横断面の測定された前記直径(D)に依存して、前記第1撚線(6)に関して径方向外側を向いた、前記第1撚線(6)の特定の部分において前記第1撚線(6)を覆っている全ての前記撚線材料撚線(9、10)の全表面の、前記部分における前記第1撚線(6)の表面に対する比であると定義される、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)による前記第1撚線(6)の被覆度(k)が、所定の値に概ね一致するように開ループ制御又は閉ループ制御されることを特徴とする編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法。
【請求項2】
前記第1撚線(6)が、ケーブルであり、かつ/又は前記撚線材料繊維が、ワイヤであることを特徴とする、請求項1に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法。
【請求項3】
前記
第1撚線(6)の前記相対的な送り速度(h)を開ループ制御又は閉ループ制御するために、関係式
【数1】
が用いられ、式中、
hは、前記
第1撚線(6)の前記相対的な送り速度を、
Dは、前記
第1撚線(6)の長手軸(5)に対して略垂直な、前記
第1撚線(6)の横断面の直径を、
kは、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)による、前記
第1撚線(6)の被覆度を、
fは、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)における撚線材料繊維の数を、
dは、前記撚線材料繊維の長手軸に対して略垂直な、前記撚線材料繊維の横断面の直径を、
Xは、前記被覆度に関して考慮される前記撚線材料撚線(9、10)の数を表していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法。
【請求項4】
前記
第1撚線(6)の長手軸(5)に対して平行に、かつ、前記
第1撚線(6)の移動方向に反して延在する、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)が前記
第1撚線(6)に積み重なる点を通る半直線と、前記
第1撚線(6)に積み重なる少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)と、の間の角度として定義されている撚り角度(α)が、測定され、前記
第1撚線(6)の前記相対的な送り速度(h)の開ループ制御又は閉ループ制御のために用いられることを特徴とする、請求項2又は3に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法。
【請求項5】
前記撚り角度(α)を用いて、前記
第1撚線(6)の前記相対的な送り速度(h)を開ループ制御又は閉ループ制御するために、関係式
【数2】
が用いられ、式中、
αは、前記撚り角度を、
Dは、前記
第1撚線(6)の長手軸(5)に対して略垂直な、前記
第1撚線(6)の横断面の直径を、
kは、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)による、前記
第1撚線(6)の被覆度を、
fは、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)における撚線材料繊維の数を、
dは、前記撚線材料繊維の長手軸に対して略垂直な、前記撚線材料繊維の横断面の直径を、
Xは、前記被覆度に関して考慮される前記撚線材料撚線(9、10)の数を表していることを特徴とする、請求項4に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)の運転方法。
【請求項6】
第1撚線(6
)の周りで、少なくとも1つの撚線材料繊
維から成る少なくとも1つの撚線材料撚線(9、10)で編組、巻線形成又は螺旋形成するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法に従って運転されるように設定されると共に、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)を、前記
第1撚線(6)の長手軸(5)の周りに繰り返し巡らせ、前記
第1撚線(6)を同時に、概ね前記
第1撚線(6)の長手軸(5)の方向において、つねに同じ方向に動かすように設定された編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)において、
前記
第1撚線(6)の前記長手軸(5)に対して略垂直な前記
第1撚線(6)の横断面の直径(D)に関する測定装置(16)と、少なくとも1つの前記撚線材料撚線(9、10)が前記
第1撚線(6)の前記長手軸(5)の周りで完全に回転する際に前記
第1撚線(6)が移動する区間として定義される、前記
第1撚線(6)の相対的な送り速度(h)を、測定された前記直径(D)に依存して開ループ制御又は閉ループ制御するための開ループ制御装置又は閉ループ制御装置と、が設けられていることを特徴とする編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)。
【請求項7】
前記第1撚線(6)が、ケーブルであり、かつ/又は前記撚線材料繊維が、ワイヤであることを特徴とする、請求項6に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の方法に従って運転され、さらに撚り角度(α)に関する測定装置を有しているように設定された、請求項6
又は7に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願DE102019211030.4の全ての内容が、参照によって本出願の構成要素となる。
【0002】
本発明は、編組機、巻線機又は螺旋形成装置と、その運転方法と、に関する。
【背景技術】
【0003】
編組機、特に回転式編組機は、加工されるべき撚線材料から、中空の編組ホースを製造するために用いられ得る。
【0004】
この際、撚線材料は、細長い、撚線形状の、好ましくは略任意の長さで使用できる材料であると理解される。撚線材料の撚線は、1つ又は複数の個々の撚線材料繊維から構成され得る。撚線材料繊維は、特にワイヤであってよいが、ワイヤに限定されるものではない。当該ワイヤは、鉄を含有することが可能であるが、好ましくは非鉄金属から、又は、織物繊維、炭素繊維若しくはその他の撚線形状の炭素材料から構成されている。従って、撚線材料繊維は、特に金属ワイヤ、糸又は合成樹脂繊維であってよい。撚線材料撚線に含まれる撚線材料繊維の数を、素線数(Fachung)と呼ぶ。例えば、個々の10のワイヤから成る撚線は、素線数10を有している。
【0005】
このような中空の編組ホースは、例えばステント又は血管インプラント等の、血管移植のための医療用の網状製品に用いられる。
【0006】
しかしまた、編組機は、同じく撚線形状の材料の周りを撚線材料で編組するために、例えばケーブルの周りを編組ワイヤで編組するためにも用いられ得る。この際、撚線形状の材料は、好ましくはその長手軸に対して略垂直な横断面を有しており、当該横断面は略円形である。
【0007】
本発明は、撚線形状の材料の周りを編組するという、編組機の上述の第2の利用に関している。
【0008】
このように製造された、周りを編組された撚線形状の材料の応用分野は、例えば、電磁場に対するシールドが設けられた電気ケーブル、機械的負荷に対する保護カバーが設けられたケーブル若しくはホース、又は、特に軽量構造で、質量の小さい部材を製造するための、炭素繊維若しくはその他の撚線形状の炭素材料が周りに編組されたモールドであり、当該モールドは、場合によっては、炭素材料が硬化した後で、再び取り外される。
【0009】
編組機の運転では、編み込まれるべき撚線材料の複数の撚線が、相反する方向において、周りを編組されるべき撚線形状の材料の周りに、特定の角度において巻き付けられ、この際、特定のパターンに従って交差され、これによって互いに織り合わされる一方で、撚線形状の材料はさらに動かされる。このような方法で、撚線形状の材料の表面には、所望の網状構造が形成される。好ましくは、周りを編組されるべき撚線形状の材料は、端面に周方向の溝を有する円盤、いわゆるキャプスタンに誘導され、キャプスタンによって、編組機から取り出される。
【0010】
上述の角度、いわゆる撚り角度は、撚線形状の材料の長手軸に対して平行に、かつ、撚線形状の材料の移動方向に反して延在する、撚線材料が撚線形状の材料に積み重なる点を通る半直線と、撚線形状の材料に積み重なる撚線材料と、の間の角度として定義されている。撚り角度は、例えば50°の値を有し得る。
【0011】
巻線機は、その機能からして、編組機に類似しているが、加工されるべき撚線材料の撚線が、互いに織り合わされるのではなく、互いの上に、又は、巻き付けられるべき撚線形状の材料の上に緩く配置されている、という違いを有している。巻線機は、巻き付けられるべき撚線形状の材料に、1つ又は複数の巻線層を載置することが可能である。
【0012】
巻線機は、例えば撚糸若しくはロープ、ホース若しくはケーブルのためのシールド、又は、圧力ホースのための補剛構造を製造するために用いられる。
【0013】
螺旋形成装置は、その機能からして、巻線機に概ね一致しているが、加工されるべき撚線材料は、好ましくは塑性変形可能であり、従って、巻き付けられるべき撚線形状の材料に巻き付ける際に、自立式の螺旋が形成される。螺旋形成装置は、例えば、ケーブルを銅線又は渦巻線の形状の柔らかい鋼線で被覆するために用いられる。
【0014】
観察された全ての機械において共通しているのは、運転の間に、少なくとも1つの撚線材料撚線が、撚線形状の材料の長手軸の周りに繰り返し巡らされ、撚線形状の材料が同時に、概ねその長手軸の方向において、つねに同じ方向において動かされるという点である。このような方法で、少なくとも1つの撚線材料撚線は、撚線形状の材料の周りに巡らされた螺旋の形状を得る。
【0015】
以下において、編み込まれるべき撚線材料としてのワイヤ、及び、周りを編組されるべき撚線形状の材料としてのケーブルのため、すなわち編組ワイヤで包囲されたケーブルを製造するための編組機を例として、本発明を記載する。しかしながら、これは限定ではなく、本発明は、任意の撚線形状の材料に任意の撚線材料で編組を行うための編組機、巻線機又は螺旋形成装置に用いられ得る。
【0016】
記載された種類の編組機は、先行技術から知られている。特許文献1からは、例えば、撚線形状の材料の周りを、有機材料又は非有機材料から成るワイヤ又はストラップの形状における糸状の撚線材料で、2つの平行な面において互いに対して回転するリールキャリアを用いて編組するための高速編組機が知られている。
【0017】
編組機を運転する際、周りを編組されるべき撚線形状の材料は、その性質において、製造時の欠陥又は不可避の許容差に基づいて、完全には均質でないという問題が生じる。特に、撚線形状の材料の直径は、その長手方向の延在部分を通して見て、変動している。この際、「直径」はつねに、撚線形状の材料の、その長手軸に対して略垂直な横断面の直径を意味している。
【0018】
撚線形状の材料の変動する直径から生じる問題は、同じく変動する、撚線材料による撚線形状の材料の被覆度である。
【0019】
被覆度(「被覆係数」とも呼ばれる)は、撚線形状の材料に関して径方向外側を向いた、撚線形状の材料の特定の部分において撚線形状の材料を覆っている全ての撚線材料撚線の全表面の、当該部分における撚線形状の材料の表面に対する比であると定義されている。この際、撚線材料撚線が、複数の撚線材料繊維から構成されている場合、個々の撚線材料繊維は間隔を有さずに隣り合って、撚線形状の材料に配置されるので、撚線材料撚線は、編組された状態において、撚線形状の材料の表面上に、特定の幅を有する「ストラップ」を形成する、と想定される。この際、当該ストラップの幅は、個々の撚線材料繊維の直径と乗じた、撚線材料撚線における撚線材料繊維の数、すなわち素線数に相当する。さらに、撚線材料撚線における全ての撚線材料繊維が、同じ直径を有する、特に同一であると想定される。
【0020】
このように定義された被覆度は、どれくらい多くの撚線材料撚線が、完成した製品において、すなわち周りを編組された撚線形状の材料において、特定の位置で、その表面上に平均して重なっているかを示している。
【0021】
場合によっては、被覆度に関して、編み込まれた撚線材料撚線の特定の部分のみが考慮されてもよい。例えば、編組機内では、一般的に、それぞれ同じ数のリールが、互いに逆方向に回転する。リールからは撚線形状の材料が繰り出される。被覆度に関しては、例えば両方の方向の内一方の方向において回転するリールのみ、すなわち全ての用いられるリースの半数のみ、及び、従って全ての編み込まれた撚線材料撚線の半数のみが考慮され得る。
【0022】
従って、被覆度が1ということは、周りを編組された撚線形状の材料において、個々の撚線材料撚線の螺旋が、全体としては(平均して)、撚線形状の材料の表面上に、隙間を伴わずに隣り合って位置していることを意味している。これに対して、被覆度が0.85ということは、周りを編組された撚線形状の材料において、個々の撚線材料撚線の螺旋の間に隙間が存在しており、当該隙間の幅は平均して撚線材料撚線の幅の0.15倍に相当する、ということを意味している。被覆度が1.15ということは、周りを編組された撚線形状の材料において、個々の撚線材料撚線の螺旋が、平均してその幅の0.15倍で重なっていることを意味している。
【0023】
完成すべき製品に関して、一般的に、所定の被覆度が定められており、当該被覆度は、要求される機械的、電気的若しくはその他の物理的特性に依存するか、又は、所望の製品の要求される外観、例えばそのシールド特性若しくは耐圧性等に依存する。製品の実際の被覆度が、所定の値よりも小さい値を有する場合、製品の要求される特性と、要求される製品の質と、が得られないということがあり得る。これに対して、製品の実際の被覆度が所定の値よりも高い値を有する場合、同様に質に関して問題が生じ得るが、しかしながら特に、製造に際して、必要であるよりも多くの撚線形状の材料が消費され、従って、製品の製造費用が必要以上に高くなる、ということも生じ得る。
【0024】
しかしながら、先行技術に係る編組機の場合、撚線形状の材料の周りを編組する際に、撚線形状の材料の直径の変化を考慮する可能性は存在しない。先行技術に係る編組機の場合、特に周りを編組される撚線形状の材料の被覆度が、所定の被覆度から逸脱することは、甘受されねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明の課題は、撚線形状の材料の直径の変化が考慮され得るような、編組機、巻線機又は螺旋形成装置の運転方法と、対応する編組機、巻線機又は螺旋形成装置と、について記載することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本課題は、請求項1に記載の、編組機、巻線機又は螺旋形成装置の運転方法と、請求項6に記載の編組機、巻線機又は螺旋形成装置と、によって解決される。本発明の有利なさらなる発展形態は、従属請求項に含まれている。
【0028】
撚線形状の材料、特にケーブルの周りで、少なくとも1つの撚線材料繊維、特に少なくとも1つのワイヤから成る少なくとも1つの撚線材料撚線で編組、巻線形成、又は、螺旋形成を行うための編組機、巻線機又は螺旋形成装置の、本発明に係る運転方法では、少なくとも1つの撚線材料撚線が、少なくとも1つの位置において、回転しないように撚線形状の材料に固定される。次に、少なくとも1つの撚線材料撚線は、撚線形状の材料の長手軸の周りに繰り返し巡らされ、撚線形状の材料は、同時に、概ねその長手軸の方向において、つねに同じ方向に動いている。このような方法で、少なくとも1つの撚線材料撚線は、撚線形状の材料の周りを巡らされた螺旋の形状を得る。
【0029】
本発明によると、撚線形状の材料の横断面の直径は、その長手軸に対して略垂直に測定される。測定された直径に依存して、撚線形状の材料の送り速度、及び/又は、少なくとも1つの撚線材料撚線が撚線形状の材料の長手軸の周りを移動する際の回転速度が、開ループ制御又は閉ループ制御される。この際、撚線形状の材料の送り速度は、撚線形状の材料が概ねその長手軸の方向において、つねに同じ方向に動く際の速度である。
【0030】
撚線形状の材料の送り速度と、少なくとも1つの撚線材料撚線の回転速度と、は、編組機の最適な動作パラメータであることが明らかになっており、動作パラメータの開ループ制御又は閉ループ制御によって、撚線形状の材料の直径の変化が適切に考慮され得る。
【0031】
例えば、撚線材料撚線を個々に回転させる際に、撚線形状の材料の直径が拡大する場合、より長い撚線材料が利用可能でなければならない。これは、撚線材料が繰り出されるリールもより速く回転しなければならないということを意味している。これは、撚線材料のリールからの繰り出し速度が大きすぎて、撚線材料が切れる可能性がある場合に、問題につながり得る。この場合、本発明は、撚線形状の材料の送り速度及び/又は少なくとも1つの撚線材料撚線の回転速度を、撚線材料の切断の危険が回避される程度に減少させることができる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、撚線形状の材料の相対的な送り速度は、撚線形状の材料の横断面の測定された直径に依存して、少なくとも1つの撚線材料撚線による撚線形状の材料の被覆度が、所定の値に概ね一致するように開ループ制御又は閉ループ制御される。これによって、製造されるべき製品に対する所定の質的な要求を満たすことが可能であり、同時に、必要以上の撚線材料は、もはや消費されない。
【0033】
この際、撚線形状の材料の相対的な送り速度は、撚線形状の材料が、撚線形状の材料の長手軸の周りで少なくとも1つの撚線材料撚線が完全に回転する際に移動する区間として定義されている。当該区間は、ピッチ又は撚りピッチとも呼ばれる。
【0034】
少なくとも1つの撚線材料撚線による撚線形状の材料の被覆度は、以上においてすでに定義された。
【0035】
従って、本発明の当該実施形態では、編組機の両方の駆動速度は、互いに独立して開ループ制御又は閉ループ制御されるのではなく、互いに関連してのみ開ループ制御又は閉ループ制御され、これによって、撚線形状の材料の特定の相対的な送り速度が得られる。これは例えば、両方の駆動速度が、特定の所定の値になるように開ループ制御又は閉ループ制御され、その比が所望の相対速度をもたらすことによって起こり得る。この際、両方の駆動速度の所定の値は、好ましくは、両方の駆動速度のいずれもが、それぞれの許容最高速度を超過しないように選択される。しかしまた、所望の相対速度は、両方の駆動速度の内一方の駆動速度の現在値が維持され、他方の駆動速度の値が、両方の駆動速度の比が所望の相対速度をもたらすまで変更されることによっても得られる。
【0036】
本発明の当該実施形態は、被覆度が、まさに上述の相対速度及び撚線形状の材料の直径(及び複数の一定のファクタ)によって表現されるという観察に基づいている。
【0037】
以下において、この関係が数学的に導出される。この際、
hは、撚線形状の材料の相対的な送り速度を、
Dは、撚線形状の材料の直径を、
kは、被覆度を、
fは、1つの撚線材料撚線における撚線材料繊維の数(素線数)を、
dは、撚線材料繊維の直径を、
Xは、被覆度に関して考慮されるべき撚線材料撚線の数を、
bは、撚線材料撚線によって形成された「ストラップ」の幅を、
Sは、撚線材料撚線の、撚線形状の材料の表面上で回転を形成する部分の長さを表している。
【0038】
図1では、撚線形状の材料7の表面の、撚線形状の材料9の周りで撚線材料撚線が回転する際に撚線形状の材料がさらに移動する区間に対応する長さを有する部分への「繰り出し」が観察される。すなわち、高さh、幅π・D及び面積h・πDを有する、撚線形状の材料の表面の長方形の繰り出し部分(
図1では強く縁取りされている)である。
【0039】
この撚線形状の材料の長方形の繰り出し部分に、編組機の運転中、撚線材料撚線9によって形成された「ストラップ」の部分の、幅S及び高さb並びに面積b・Sを有する、同じく長方形の面が巻き付けられる。この際、撚線材料撚線9の長方形の面は、撚線形状の材料の長方形の繰り出し部分に正確に載置されるものではなく、両方の長方形の面は互いに部分的に重なっている。しかしながら、この重複は相殺されるので、被覆度を決定する比は、両方の長方形の面の表面積の比にまさに一致する。
【0040】
撚線材料撚線9の長方形の面の幅Sは、撚線形状の材料7の長方形の繰り出し部分の対角線を形成しており、すなわち、ピタゴラスの定理によると、以下の数式が有効である:
【数1】
【0041】
図1では、撚線材料撚線9によって形成されたストラップの幅bは、連続する回転でストラップが隙間なく互いに接続されるような、すなわち
図1における被覆度がk=1になるような大きさに選択されている。
【0042】
上述したように、撚線材料撚線によって形成されたストラップの幅bは、各撚線材料繊維の直径と乗じた(
図1を参照)、撚線材料撚線内の撚線材料繊維の数に一致しており、すなわちb=f・dである。
【0043】
被覆度は、考慮されるべき撚線材料撚線の数Xと乗じた、両方の上述の長方形の面の比として生じる。すなわち、
【数2】
【0044】
この方程式をhについて解くと、以下の数式が得られる:
【数3】
【0045】
又は、さらなる変換によって、以下の数式が得られる:
【数4】
【0046】
従って、本発明の特に好ましい実施形態では、撚線形状の材料の相対的な送り速度の開ループ制御又は閉ループ制御のために、挙げたばかりの関係式が用いられる。この際、測定された直径Dと、所定の被覆度kと、定数f、X及びdと、が分かっており、これらから、撚線形状の材料の相対的な送り速度hが算出され、編組機の開ループ制御又は閉ループ制御に関する目標値として用いられ得る。このような方法で、直径Dの測定に際する、及び、相対的な送り速度hの開ループ制御又は閉ループ制御に際するエラーは別として、完成した製品が所定の被覆度kを有することが保証されている。
【0047】
上述のhに関する2番目の表現からさらに認識されることに、hはDが増大すると厳密に単調減少する、すなわち、Dが大きくなるとhは小さくなり、Dが小さくなるとhは大きくなる。
【0048】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、付加的に、すでに定義した撚り角度が測定され、撚線形状の材料の相対的な送り速度の開ループ制御又は閉ループ制御のために用いられる。この際、撚線形状の材料の相対的な送り速度の開ループ制御又は閉ループ制御は、撚り角度に関する目標値が決定され、撚り角度を同時に測定する場合に、相対的な送り速度を変更することによって、撚り角度が、その目標値に達するまで同様に変更されるように行われ得る。
【0049】
以下において、αは撚り角度を表している。
図1から明らかであるように、以下の数式が有効である:
【数5】
【0050】
【0051】
従って、本発明の特に好ましい実施形態では、撚線形状の材料の相対的な送り速度の開ループ制御又は閉ループ制御のために、挙げたばかりの関係式が用いられる。この際、測定された直径Dと、所定の被覆度kと、定数f、X及びdと、が分かっており、これらから、撚り角度αが算出され、編組機の開ループ制御又は閉ループ制御のための目標値として用いられ得る。このような方法で、直径Dの測定に際する、及び、撚り角度αを用いた相対的な送り速度hの開ループ制御又は閉ループ制御に際するエラーは別として、完成した製品が所定の被覆度kを有することが保証されている。
【0052】
本発明はさらに、撚線形状の材料、特にケーブルの周りで、少なくとも1つの撚線材料繊維、特に少なくとも1つのワイヤから成る少なくとも1つの撚線材料撚線で編組、巻線形成又は螺旋形成を行うための本発明に係る方法に従って運転されるように設定されると共に、少なくとも1つの撚線材料撚線を、撚線形状の材料の長手軸の周りに繰り返し巡らせ、撚線形状の材料を同時に、概ねその長手軸の方向において、つねに同じ方向に動かすように設定された編組機、巻線機又は螺旋形成装置に関する。
【0053】
本発明に係る編組機、巻線機又は螺旋形成装置は、撚線形状の材料の長手軸に対して略垂直な撚線形状の材料の横断面の直径に関する測定装置と、少なくとも1つの撚線材料撚線が撚線形状の材料の長手軸の周りで完全に回転する際に撚線形状の材料が移動する区間として定義される、撚線形状の材料の相対的な送り速度を、測定された直径に依存して開ループ制御又は閉ループ制御するための開ループ制御装置又は閉ループ制御装置と、を有している。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明に係る編組機、巻線機又は螺旋形成装置は、撚り角度を用いて、撚線形状の材料の相対的な送り速度を開ループ制御又は閉ループ制御するための本発明に係る方法に従って運転されるように設定されており、このために、さらに撚り角度に関する測定装置を有している。
【0055】
本発明のさらなる利点、特徴及び応用可能性は、図面に関連した以下の説明から明らかになる。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】撚線形状の材料の表面の、長方形の「繰り出し部分」の概略図である。
【
図2】考察される種類の編組機の構造を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
【0058】
図2は、概略的な図面を用いて、本発明に係る編組機1の機能原理を示している。
【0059】
編組機1は、例えば8個、12個又は16個の上側編組リール2を有しており、上側編組リール2に、それぞれ上側糸9(いわゆる横糸)が巻き取られている。上側糸9は、特に織り編用糸、ワイヤ、又は、複数の当該織り編用糸若しくはワイヤから成る束であってよい。上側編組リール2は、リールキャリア(図示せず)に取り付けられており、上側編組リール2は、互いに離れて、下側リール台4に取り付けられたリングギアの歯車(どちらも図示せず)上で回転し、全てが同じ方向に、例えば反時計回りに回転する(上方で回転する矢印17によって示唆されている)。
【0060】
加えて、編組機1は、例えば同じく8個、12個又は16個の下側編組リール3を有しており、下側編組リール3に、それぞれ下側糸(いわゆる縦糸)が巻き取られている。この際、下側編組リール3の数は、好ましくは上側編組リール2の数と同じである。下側糸10は、好ましくは上側糸9と同じ糸である。下側編組リール3は、共通の下側リール台4に取り付けられており、下側編組リール3は、上側編組リール2とは反対の方向に、例えば時計回りに回転する(下方で回転する矢印18によって示唆されている)。
【0061】
軸の周りに、上側編組リール2と下側編組リール3とがそれぞれ共に、相反する方向において回転する際の当該軸は、いわゆる編組軸5と一致する。編組軸5に沿って、ここでは未だシールドされていないケーブル6が、下から編組機1に導入され、編組機1の上端で、再び編組機1から排出される。
【0062】
上側編組リール2から出る上側糸9と、下側編組リール3から出る下側糸10と、は、共に編組軸5上の編組点8において合流し、シールドされていないケーブル6の周りを編組し、ケーブル6は、これに続いて、編組機1の上端において、編組機1から、(図示されていない)キャプスタンによって、シールドされたケーブル7として排出される。
【0063】
上側糸9と下側糸10とが、編組点8で交差し、これによって絡み合わされるように、下側編組リール3と共に、上側糸9が上側編組リール2と共に編組軸5の周りに回転するのとは反対の方向に回転する下側糸10は、1つ又は複数の隣り合う上側編組リール2の上側に、及び、1つ又は複数の隣り合う上側編組リール2の下側を通るように、例えばそれぞれ2つの隣り合う上側編組リール2の上側又は下側を交互に誘導される。下側糸10それぞれは、垂直方向のスリットにおいて上下に動く際、上側の内側ハウジング19に入り込む。
【0064】
下側糸10は、編組レバー11の端部でロールを通って走行し、「近づいて行っている」上側リール2の通過前に、編組レバー11によって、交互に持ち上げられるか、又は、押し下げられ、これによって、上側編組リール2の上側か、又は、上側編組リール2の下側を通るように誘導される。このために、下側糸10それぞれに、専用の編組レバー11が配設されており、編組レバー11は、それぞれ回り継手12の周りに回転可能であり、回り継手12は、下側リール台4に接続されたホルダ13に固定されている。
【0065】
各編組レバー11は、ロッド14を通じて制御可能であり、ロッド14の上端は、編組レバー11と回転可能に接続されており、ロッド14の下端は、カム制御15の固定された、周方向のカム軌道内を動いている。カム制御15のカム軌道の波形によって、ロッド14の上下する変位運動と、これに伴って、編組レバー11の所望の上下の旋回運動と、がもたらされ、旋回運動は、上側編組リール2の動きと同期されている。しかしながら、編組レバー11は、代替的に、カム制御15のカム軌道内で直接誘導されてもよい。
【0066】
編組軸5に沿った任意の、ケーブル6が依然として編組されておらず、従ってシールドされていない位置に、直径測定装置16が配置されており、直径測定装置16は、編組軸5に対して略垂直なケーブル6の横断面の直径を測定する。この際、直径の測定は連続的に行われるが、特定の頻度で周期的に行ってもよい。
【0067】
直径の測定は、適切な測定手段を用いて、好ましくは機械的に、例えば弾性によって支持された、外側から2つの反対側の面においてケーブル6に弾性によって押し付けられる2つのロールを用いて行われる。両方のロールの間隔、従ってケーブル6の直径は、例えば両方のロールが離れるように押される際のバネ張力を通じて、又は、光学的若しくはその他の測定変位センサによって決定され得る。さらに好ましくは、直径の測定は、例えばレーザセンサを用いて純粋に光学的な手段でも行われ得るが、代替的に、途切れないケーブル6を連続して撮影し、そのカメラ画像が評価されるカメラを用いても行われ得る。
【0068】
付加的に、編組機1は、撚り角度αに関する(図示されていない)測定装置も有し得る。
【0069】
本発明に係る方法は、好ましくは制御ソフトウェアの形式で、編組機1の制御装置に保存されている。編組機1の操作者は、運転の開始時に、被覆度kに関する目標値を制御部に入力する。ケーブル6の直径Dも、目標値として制御部に入力され得る。代替的に、測定された直径Dも、制御部に受容され得る。
【0070】
ここから、好ましくは上述の数学的関係式を通じて、ケーブル6の相対的な送り速度hに関する目標値hSollが、すなわち上側編組リール2又は下側編組リール3が編組軸5の周りで完全に回転する際にケーブル6がさらに移動する区間が算出される。目標値hSollから、上側編組リール2又は下側編組リール3が編組軸5の周りで回転する際の回転速度に関する目標値vSoll,1と、編組され、シールドされたケーブル7の排出速度に関する目標値vSoll,2と、が決定される。このために、好ましくはまずvSoll,1が、最大許容回転速度に設定され、次にvSoll,2=hSoll・vSoll,1と設定され、従って、hSoll=vSoll,2/vSoll,1が有効である。vSoll,2が最大許容排出速度を超過する場合、vSoll,1もvSoll,2も、vSoll,2も許容範囲になるまで、同じ比で低下させられる。
【0071】
vSoll,1及びvSoll,2に関してこのように決定された値は、編組リール2、3の回転速度又は排出速度に関するそれぞれの制御部に、目標値として供給される。各制御部は、回転速度又は排出速度がvSoll,1又はvSoll,2の値になるように、開ループ制御又は閉ループ制御を行う。このような方法で、編組されたケーブル7が、概ね所定の被覆度kを有することが保証されている。
【0072】
編組機1が、撚り角度αに関する測定装置を有する場合、好ましくは上述の数学的関係式を通じて、撚り角度αに関する目標値αSollが算出され得る。例えば編組されたケーブル7の排出速度が一定である場合、撚り角度αが目標値αSollに至るまで、編組リール2、3の回転速度が変更されると同時に、撚り角度αが測定され得る。このような方法でも、編組されたケーブル7が、概ね所定の被覆度kを有することが保証されている。
【符号の説明】
【0073】
1 編組機
2 上側編組リール
3 下側編組リール
4 下側リール台
5 編組軸
6 シールドされていないケーブル
7 シールドされたケーブル
8 編組点
9 上側糸(横糸)
10 下側糸(縦糸)
11 編組レバー
12 編組レバーの回り継手
13 編組レバーのホルダ
14 編組レバーを制御するためのロッド
15 編組レバーのためのカム制御
16 直径測定装置
17 上側編組リールの回転方向
18 下側編組リールの回転方向
19 上側の内側ハウジング
20 下側の内側ハウジング