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特許7549652ポリエステル樹脂混合物およびこれから形成された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂混合物およびこれから形成された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240904BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20240904BHJP
   C08G 63/668 20060101ALI20240904BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C08L67/02 ZAB
C08G63/183
C08G63/668
B09B5/00 Q
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022520239
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 KR2020006929
(87)【国際公開番号】W WO2021066284
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121670
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨジン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525965(JP,A)
【文献】特表2015-518916(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101320(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/236111(WO,A1)
【文献】特表2020-524738(JP,A)
【文献】特表2016-518513(JP,A)
【文献】特開2012-144737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08G 63/00-63/91
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート、および
ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂は、全体のジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分を0.1~15モル%含み、
前記ポリエステル樹脂は、下記数式1を満たす、ポリエステル樹脂混合物:
【数1】
上記数式1中、Xは、250℃の温度および窒素雰囲気下でプレート-プレートレオメーターを用いて0.5rad/sで測定した前記ポリエステル樹脂の複素粘度であり、Yは、上述した方法で500rad/sで測定した前記ポリエステル樹脂の複素粘度であり、Zは、150℃のオルトクロロフェノールに0.12重量%の濃度でポリエステル樹脂を溶解させて35℃で測定した前記ポリエステル樹脂の固有粘度である。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレートは、バージンポリエチレンテレフタレート、リサイクルポリエチレンテレフタレートまたはこれらの混合物である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項3】
前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、固有粘度が0.6~0.8dl/gである、請求項2に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項4】
前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、95モル%以上のテレフタル酸から誘導された酸部分および95モル%以上のエチレングリコールから誘導されたジオール部分を含む、請求項2に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂は、全体のジオール部分に対してエチレングリコール以外の共単量体から誘導されたジオール部分が5~19モル%である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂は、前記共単量体から誘導されたジオール部分としてシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分をさらに含む、請求項5に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂は、全体のジオール部分に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を0.1~15モル%含む、請求項6に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂は、3個以上の官能基を有する分枝化剤から誘導された残基を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂は、前記3個以上の官能基を有する分枝化剤から誘導された残基を全体のジオール部分100重量部に対して0.01~15重量部で含む、請求項8に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂は、180℃で100分間結晶化させた後、測定した融点が210~245℃である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂混合物の融点が220℃~250℃である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂混合物から得られた厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが5%以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項13】
請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物から形成された、成形品。
【請求項14】
前記成形品は、押出吹込成形工法によって形成される、請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂混合物およびこれから形成された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋汚染の約70%を占める廃プラスチックは近来、深刻な社会問題で台頭し、そのため、各国は使い捨てプラスチックの使用を規制すると同時に廃プラスチックのリサイクルを図っている。現在、廃プラスチックは廃プラスチックを収去、粉砕および洗浄した後溶融押出して再ペレット化した後、これを原料として使用してリサイクルされている。しかし、廃プラスチック中の異物によって良好な品質の製品を提供することが非常に難しい。したがって、廃プラスチックから良好な品質のプラスチック製品を生産するための研究が切実に要求される実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4771204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加工性に優れたポリエステル樹脂混合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート、およびジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、下記数式1を満たすポリエステル樹脂混合物が提供される。
【0006】
【数1】
【0007】
上記数式1中、Xは、250℃の温度および窒素雰囲気下でプレート-プレートレオメーターを用いて0.5rad/sで測定した前記ポリエステル樹脂の複素粘度であり、Yは、上述した方法で500rad/sで測定した前記ポリエステル樹脂の複素粘度であり、Zは、150℃のオルトクロロフェノールに0.12重量%の濃度でポリエステル樹脂を溶解させて35℃で測定した前記ポリエステル樹脂の固有粘度である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、バージンポリエチレンテレフタレートだけでなく、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても優れた加工性を示し、特に、押出吹込成形工法によって高品質の成形品を提供することができ、これを用いた後再びリサイクルを可能にするため、最近注目されていている持続的に使用可能なプラスチックの提供に有用であると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリエステル樹脂混合物などについて説明する。
【0010】
本明細書で特に明記しない限り、専門用語は単に特定の実施例を説明するために使用され、本発明を限定しようとする意図ではない。そして、特に明示していない限り、単数形は複数形をも含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート、およびジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、下記数式1を満たすポリエステル樹脂混合物が提供される。
【0012】
【数2】
【0013】
上記数式1中、Xは、250℃の温度および窒素雰囲気下でプレート-プレートレオメーターを用いて0.5rad/sで測定した前記ポリエステル樹脂の複素粘度であり、Yは、上述した方法で500rad/sで測定した前記ポリエステル樹脂の複素粘度であり、Zは、150℃のオルトクロロフェノールに0.12重量%の濃度でポリエステル樹脂を溶解させて35℃で測定した前記ポリエステル樹脂の固有粘度である。
【0014】
前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分(acid moiety)およびジオールから誘導されたジオール部分(diol moiety)が繰り返される構造を有する。本明細書において、酸部分(acid moiety)およびジオール部分(diol moiety)は、ジカルボン酸あるいはその誘導体およびジオールが重合され、これらから水素、ヒドロキシ基またはアルコキシ基が除去され、残った残基(residue)をいう。
【0015】
本明細書において、用語「ジカルボン酸あるいはその誘導体」は、ジカルボン酸とジカルボン酸誘導体の中から選択される1種以上の化合物を意味する。そして、「ジカルボン酸誘導体」は、ジカルボン酸アルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルなどの炭素数1~4の低級アルキルエステル)あるいはジカルボン酸無水物を意味する。したがって、例えば、テレフタル酸あるいはその誘導体は、テレフタル酸、モノアルキルあるいはジアルキルテレフタレート、およびテレフタル酸無水物などのジオールと反応してテレフタロイル部分(terephthaloyl moiety)を形成する化合物を通称する。
【0016】
前記ポリエチレンテレフタレートは、低廉な価格および優れた物理/化学的性質によって商業的に広く使用されているが、ポリエチレンやポリプロピレンに比べて相対的に低い粘度を有するので、押出吹込成形時、成形温度を非常に低く調節する必要がある。したがって、ポリエチレンテレフタレートを使用する場合単一または多重ヘッド方式で一定のパリソンを製造することに限界がある。
【0017】
かかる問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレンテレフタレートに前記数式1を満たすポリエステル樹脂を配合することで加工性を向上させることができ、特に、押出吹込成形工法による加工性を顕著に向上させる可能性があることを発見して本発明を完成した。
【0018】
以下、このようなポリエステル樹脂混合物について詳しく説明する。
【0019】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、汎用の多様なポリエチレンテレフタレートと配合され、その加工性を向上させることによって高品質の押出吹込成形品を提供することができる。
【0020】
したがって、前記ポリエチレンテレフタレートの種類は特に限定されない。非制限的な例として、前記ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールが重合されて製造されたものであって、前記ジカルボン酸あるいはその誘導体は主にテレフタル酸あるいはその誘導体であってもよく、前記ジオールは主にエチレングリコールであってもよい。
【0021】
前記ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸あるいはその誘導体以外の他の共単量体から誘導された酸部分を含んでもよい。具体的には、前記共単量体は、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体、および炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体からなる群より選択される1種以上であり得る。前記炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、イソフタル酸、ジメチルイソフタレート、フタル酸、ジメチルフタレート、フタル酸無水物、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどのジアルキルナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体が挙げられる。前記炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレートなどのシクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される線状、分枝状または環状脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体が挙げられる。前記共単量体は、ジカルボン酸全体あるいはその誘導体に対して0~50モル%、0モル%~30モル%、0~20モル%あるいは0~10モル%で使用可能である。
【0022】
前記ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール以外の他の共単量体から誘導されたジオール部分を含んでもよい。具体的には、前記共単量体は、炭素数8~40あるいは炭素数8~33の芳香族ジオール、炭素数2~20あるいは炭素数2~12の脂肪族ジオールあるいはこれらの混合物などであり得る。前記芳香族ジオールの具体的な例としては、ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンまたはポリオキシプロピレン-(n)-ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加されたビスフェノールA誘導体(ここで、nはポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンユニット(unit)の個数(number)を示し、例えば、0~10である)が挙げられ、前記脂肪族ジオールの具体的な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールなど)、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの線状、分枝状または環状脂肪族ジオールが挙げられる。前記共単量体は、ジオール全体に対して0~50モル%、0モル%~30モル%、0~20モル%あるいは0~10モル%で使用可能である。
【0023】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、バージン(virgin)ポリエチレンテレフタレートの物性を補完することができるだけでなく、リサイクル(recycled)ポリエチレンテレフタレートの低下した物性も非常に優れた水準に補完することができる。
【0024】
リサイクルポリエチレンテレフタレートは使用された後回収されたポリエチレンテレフタレートあるいはこれから得られたものをすべて含む意味として理解され得る。具体的には、前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、回収された廃プラスチックを一定の基準に従って分離し、粉砕および洗浄した後、溶融押出して再ペレット化したものであるか、あるいは回収された廃プラスチックを単量体の水準に解重合(depolymerization)した後、これを再重合して得られたものであり得る。このようなリサイクルポリエチレンテレフタレートは、加工方法によって再ペレット化した後、結晶化して使用されるか、あるいは結晶化した後、固体状態でさらに重縮合された後使用される。
【0025】
廃プラスチックを単量体の水準に解重合し再重合したリサイクルポリエチレンテレフタレートは、バージンポリエチレンテレフタレートと区分しにくいほど良好な物性を示すことができる。しかし、廃プラスチックを再ペレット化したものは、バージンポリエチレンテレフタレートに比べて全般的に低下した物性を有するので、リサイクルポリエチレンテレフタレート単独あるいはバージンポリエチレンテレフタレートと混合しても、押出吹込成形工法で高品質の容器を製作しにくい。しかし、一実施形態によるポリエステル樹脂は、このようなリサイクルポリエチレンテレフタレートにも優れた混和性を示し、その加工性を向上させることができる。特に、一実施形態によるポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートとの混和性に非常に優れて、その他の添加剤を使用しなくても表面にフローマーク(flow-mark)がない成形品を提供することができる。
【0026】
したがって、前記ポリエチレンテレフタレートとしては、バージン(virgin)ポリエチレンテレフタレート、リサイクル(recycled)ポリエチレンテレフタレートまたはこれらの混合物を使用することができる。
【0027】
特に、前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートの中でも固有粘度が0.6~0.8dl/gである樹脂に優れた混和性を示すことができる。
【0028】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートの中でも95モル%以上のテレフタル酸から誘導された酸部分および95モル%以上のエチレングリコールから誘導されたジオール部分を含む樹脂のリサイクルに有用である。前記樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールで製造されるホモポリマー(homopolymer)であり得るので、テレフタル酸から誘導された酸部分およびエチレングリコールから誘導されたジオール部分の上限は100モル%であり、テレフタル酸から誘導された酸部分あるいはエチレングリコールから誘導されたジオール部分が100モル%未満の場合、5モル%以内で上述した共単量体から誘導されたジオール部分を含み得る。その中でも5モル%以内のイソフタル酸から誘導された酸部分および/または5モル%以内のシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含み得る。
【0029】
前記ポリエステル樹脂は、結晶化温度が130℃~160℃であるリサイクルポリエチレンテレフタレートと混合して前記リサイクルポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を効率よく調節することができる。
【0030】
前記ポリエステル樹脂は、融点が250℃以上のリサイクルポリエチレンテレフタレートと混合して加工に容易な融点を有するポリエステル樹脂混合物を提供することができる。
【0031】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、前記数式1を満たすポリエステル樹脂を含むことによって優れた加工性を示すことができる。
【0032】
前記数式1のXおよびYは、それぞれ低せん断速度(low shear rate)および高せん断速度(high shear rate)で測定したポリエステル樹脂の複素粘度であり、Zは、前記ポリエステル樹脂の固有粘度である。
【0033】
前記ポリエステル樹脂の複素粘度は、プレート-プレートレオメーターを用いて250℃の温度および窒素雰囲気下で測定した。より具体的には、前記ポリエステル樹脂の複素粘度は、直径25mmのプレートを約1~2mmの間隔で平行に配置し、250℃の温度および窒素雰囲気下でangular frequencyを0.5rad/s~500rad/sに変化させながら測定した。この時、0.5rad/sで測定したポリエステル樹脂の複素粘度は、前記数式1中のXであり、500rad/sで測定したポリエステル樹脂の複素粘度は、前記数式1中のYである。
【0034】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度Zは、150℃のオルトクロロフェノール(o-chlorophenol)に0.12重量%の濃度でポリエステル樹脂を溶解させた後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて測定した。より具体的には、前記ポリエステル樹脂の固有粘度Zは粘度計の温度を35℃に維持し、粘度計の特定の内部区間の間を溶媒(solvent)が通過するのにかかる時間(efflux time)tと溶液(solution)が通過するのにかかる時間tを求め、これを下記式1に代入して比粘度(specific viscosity)を算出し、算出された比粘度の値を下記式2に代入して算出した値である。
【0035】
【数3】
【0036】
上記式2中、Aはハギンス(Huggins)定数であって0.247、cは濃度値であって0.12重量%である。
【0037】
前記数式1中のX/(Y*Z)は、本明細書において加工性パラメータとも呼ばれる。前記ポリエステル樹脂は、2~15の前記加工性パラメータ値を有することによって優れた加工性、特に、押出吹込成形時に安定したパリソンが作られるポリエステル樹脂混合物を提供することができる。もし、前記加工性パラメータ値が2未満であればポリエステル樹脂の溶融強度(melt strength)とせん断薄化(shear thinning)などの物性が低下して劣悪な加工性を示し、15を超えると押出工程中のトルク(torque)が上昇するか、あるいは未溶融部分によるゲルが発生して低品質の成形品が得られる問題が生じることがある。
【0038】
前記ポリエステル樹脂混合物のさらに優れた加工性を担保するために、前記ポリエステル樹脂の加工性パラメータは3~15、3~11、あるいは4~9に調節することができる。
【0039】
前記ポリエステル樹脂は、上述した加工性パラメータを満たすために、エチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分を含み、全体のジオール部分に対して前記共単量体から誘導されたジオール部分は5~19モル%であり得る。そして、前記共単量体から誘導されたジオール部分は、イソソルビド(isosorbide、1,4:3,6-dianhydroglucitol)から誘導されたジオール部分を含んでもよい。
【0040】
もし、共単量体から誘導されたジオール部分が5モル%未満であれば、ポリエチレンテレフタレートの加工性を十分に向上させにくくなり、共単量体から誘導されたジオール部分が19モル%を超えると、前記ポリエステル樹脂のポリエチレンテレフタレートとの混和性(miscibility)が減少し、成形品の表面にフローマーク(flow-mark)が発生することがあり、ポリエステル樹脂混合物の粘度を押出吹込成形が可能な水準に増加させることができないので押出吹込成形が難しく、ポリエステル樹脂混合物をリサイクルできない問題がある。
【0041】
前記ポリエステル樹脂は、さらに優れた押出吹込成形性を示すために、共単量体から誘導されたジオール部分を全体のジオール部分に対して5~15モル%、6~14モル%、8~13モル%あるいは10~12モル%で含み得る。
【0042】
前記ポリエステル樹脂は、共単量体から誘導されたジオール部分として必ずイソソルビドから誘導されたジオール部分を含むが、このような構造によってポリエチレンテレフタレートの加工性を向上させることができ、リサイクルポリエチレンテレフタレートと混合した後にも再びリサイクルが可能で持続的に使用可能なプラスチックを提供することができる。これに対して、後述する比較例5を参照すると、イソソルビド以外の他の共単量体から誘導されたジオール部分を含むポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートと良好な混和性を示して良好な加工特性を示すが、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を適切な水準に調節できず、透明な製品を提供できない。特に、前記イソソルビド以外の他の共単量体から誘導されたジオール部分を含むポリエステル樹脂は、これを含むポリエステル樹脂混合物を押出吹込成形工法に適用した時、製造されたパリソンにヘイズが発生する問題を引き起こすことができる。
【0043】
前記ポリエステル樹脂は、イソソルビドから誘導されたジオール部分をジオールから誘導された全体のジオール部分に対して0.1~15モル%の範囲で含むことができ、特に、0.1~10モル%、0.1~9モル%、1~10モル%あるいは1~9モル%で含み、上述した特性を極大化することができる。
【0044】
また、前記エチレングリコール以外の共単量体は、イソソルビド以外にシクロヘキサンジメタノールをさらに含み得る。前記シクロヘキサンジメタノールは、ジオール全体に対して0.1~15モル%で使用され、前記数式1を満たすポリエステル樹脂を提供することができる。
【0045】
さらに優れた物性を担保するために、共単量体としてイソソルビドとシクロヘキサンジメタノールを使用する場合1:2~5モルあるいは1:2~4モルの比率で使用することができる。
【0046】
前記エチレングリコール以外の共単量体には、上述した単量体以外にポリエステル樹脂の製造に通常使用されるジオールが含まれる。このようなジオールの具体的な例は、上述したポリエチレンテレフタレートに使用できる列挙したジオールなどであり得る。しかし、前記エチレングリコール以外の共単量体はイソソルビドであるか、あるいはイソソルビドとシクロヘキサンジメタノールとを組み合わせたものが、上述した物性を満たすことに有利である。前記共単量体にイソソルビドおよびシクロヘキサンジメタノール以外の他のジオールが含まれる場合、その含有量は、共単量体全体に対して10モル%以下、5モル%以下あるいは2モル%以下であり得る。
【0047】
前記ポリエステル樹脂も上述したポリエチレンテレフタレートと同様に、これを製造するためのジカルボン酸あるいはその誘導体が主にテレフタル酸あるいはその誘導体であり得、テレフタル酸あるいはその誘導体以外の共単量体を含み得る。前記共単量体の種類および使用含有量は、上述したポリエチレンテレフタレートに用いられる共単量体の種類および使用含有量を参照して調節することができる。
【0048】
一方、前記ポリエステル樹脂は、その重合時に3個以上の官能基を有する分枝化剤を添加することによって、前記3個以上の官能基を有する分枝化剤から誘導された残基を含み得る。理論的に制限されるものではないが、前記3個以上の官能基を有する分枝化剤は、ポリエステル樹脂の主鎖に側鎖を導入するか、あるいはポリエステル樹脂をグラフト重合させてポリエステル樹脂が複雑な鎖状構造を有することによって前記数式1を満たすことができる。前記分枝化剤は、3個の官能基を有する分枝化剤であって、例えば、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸(トリメリット酸(trimellitic acid))、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸アンハイドライド(トリメリット酸無水物(trimellitic anhydride))、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸アンハイドライド、トリメチロールプロパン(trimethylolpropane)あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0049】
前記3個以上の官能基を有する分枝化剤から誘導された残基は、全体のジオール部分100重量部に対して0.01~15重量部で含まれ、前記数式1を満たすポリエステル樹脂を提供することができる。
【0050】
前記ポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレートと混合して適切な温度で押出吹込成形できるように180℃で100分間結晶化させた後、測定した融点が210~245℃、220~240℃あるいは230~235℃であり得る。
【0051】
また、前記ポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸あるいはその誘導体と上述したジオールのエステル化反応またはエステル交換反応段階、および前記エステル化またはエステル交換反応生成物の重縮合反応段階により製造することができる。
【0052】
前記エステル化反応またはエステル交換反応においては触媒を使用してもよい。このような触媒としては、ナトリウム、マグネシウムメチラート(methylate);Zn、Cd、Mn、Co、Ca、Baなどの酢酸塩、ホウ酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩;金属Mg;Pb、Zn、Sb、Geなどの酸化物などが挙げられる。
【0053】
前記エステル化反応またはエステル交換反応は、バッチ(batch)式、半-連続式または連続式で行われ得、それぞれの原料は別途投入してもよいが、ジオールにジカルボン酸あるいはその誘導体を混合したスラリー形態で投入することが好ましい。
【0054】
前記エステル化反応またはエステル交換反応開始前のスラリー、あるいは反応完了後の生成物に重縮合触媒、安定剤、呈色剤、結晶化剤、酸化防止剤、分枝化剤などを添加することができる。
【0055】
しかし、上述した添加剤の投入時期はこれに限定されるものではなく、ポリエステル樹脂の製造段階中の任意の時点に投入することもできる。前記重縮合触媒としては、通常のチタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ系化合物などを一つ以上適宜選択して使用することができる。有用なチタン系触媒としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などが挙げられる。また、有用なゲルマニウム系触媒としては、ゲルマニウムジオキシドおよびこれを用いた共重合体などが挙げられる。前記安定剤としては、通常、リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのリン系化合物を使用することができ、その添加量は、リン元素量を基準として最終ポリマー(ポリエステル樹脂)の重量に対して10~200ppmである。前記安定剤の添加量が10ppm未満であれば、安定化効果が微小であり、ポリエステルの色相が黄色く変わる恐れがあり、200ppmを超えると所望の高重合度のポリマーを得られない恐れがある。また、ポリマーの色相を向上させるために添加される呈色剤としては、酢酸コバルト、コバルトプロピオネートなどの通常の呈色剤が挙げられ、その添加量は、コバルト元素量を基準として最終ポリマー(ポリエステル樹脂)の重量に対して10~200ppmである。必要に応じて、有機化合物の呈色剤としては、アントラキノン(Anthraquionone)系化合物、ペリノン(Perinone)系化合物、アゾ(Azo)系化合物、メチン(Methine)系化合物などを使用することができ、市販の製品としては、Clarient社製のPolysynthren Blue RLSあるいはClarient社製のSolvaperm Red BBなどのトナーを使用することができる。前記有機化合物の呈色剤の添加量は、最終ポリマーの重量に対して0~50ppmに調節することができる。もし、呈色剤を上記の範囲以外の含有量で使用する場合、ポリエステル樹脂の黄色が十分に分けられないかまたは物性が低下することがある。
【0056】
前記結晶化剤としては、結晶核剤、紫外線吸収剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。前記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファート系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0057】
前記エステル化反応は、200~300℃、あるいは230~280℃の温度、および0~10.0kgf/cm(0~7355.6mmHg)、0~5.0kgf/cm(0~3677.8mmHg)あるいは0.1~3.0kgf/cm(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で行うことができる。そして、前記エステル交換反応は、150~270℃あるいは180~260℃の温度、および0~5.0kgf/cm(0~3677.8mmHg)あるいは0.1~3.0kgf/cm(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で行うことができる。ここで、括弧の外に記載された圧力はゲージ圧力を意味し(kgf/cm単位で記載)、括弧の中に記載された圧力は絶対圧力を意味する(mmHg単位で記載)。
【0058】
前記反応温度および圧力が上記の範囲を外れる場合、ポリエステル樹脂の物性が低下する恐れがある。前記反応時間(平均滞留時間)は、通常1~24時間あるいは2~8時間であり、反応温度、圧力、使用するジカルボン酸あるいはその誘導体に対するジオールのモル比に応じて異なる。
【0059】
前記エステル化またはエステル交換反応により得られた生成物は、重縮合反応によりさらに高い重合度のポリエステル樹脂で製造することができる。一般に、前記重縮合反応は、150~300℃、200~290℃あるいは260~290℃の温度、および400~0.01mmHg、100~0.05mmHgあるいは10~0.1mmHgの減圧条件で行われる。
【0060】
ここで圧力は、絶対圧力の範囲を意味する。前記400~0.01mmHgの減圧条件は、重縮合反応の副産物のグリコールなどと未反応物のイソソルビドなどを除去するためである。したがって、前記減圧条件が上記の範囲を外れる場合、副産物および未反応物の除去が不十分となる恐れがある。また、前記重縮合反応温度が上記の範囲を外れる場合、ポリエステル樹脂の物性が低下する恐れがある。前記重縮合反応は、所望の固有粘度に到達するまで必要な時間の間、例えば、平均滞留時間1~24時間行われる。
【0061】
ポリエステル樹脂中に残留するイソソルビドなどの未反応物の含有量を減少させるために、エステル化反応あるいはエステル交換反応末期あるいは重縮合反応初期、すなわち、樹脂の粘度が十分に高くない状態で真空反応を意図的に長く維持して未反応の原料を系外に流出させることができる。樹脂の粘度が高くなると、反応器内の残留している原料が系外に抜けにくくなる。一例として、重縮合反応前のエステル化反応あるいはエステル交換反応により得られた反応生成物を約400~1mmHgあるいは約200~3mmHgの減圧条件で0.2~3時間放置してポリエステル樹脂中に残留するイソソルビドなどの未反応物を効果的に除去することができる。この時、前記生成物の温度は、エステル化反応あるいはエステル交換反応温度と重縮合反応温度が同じであるかあるいはその間の温度に調節することができる。
【0062】
重縮合反応後ポリマーの固有粘度は、0.30~1.0dl/gであることが適当である。固有粘度が0.30dl/g未満の場合、固相反応での反応速度が顕著に低くなり、固有粘度が1.0dl/gを超える場合、溶融重合中の溶融物の粘度が上昇するに伴って攪拌機と反応器との間でのせん断応力(Shear Stress)によりポリマーが変色する可能性が増加し、アセトアルデヒドなどの副反応物質も増加する。
【0063】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、必要に応じて、重縮合反応後に固相反応をさらに行い、より高い重合度を有することができる。
【0064】
具体的には、重縮合反応により得られたポリマーを反応器の外に吐出して粒子化する。粒子化する方法は、ストランド状に押出後冷却液で固化した後、カッターで切断するストランドカッティング法、またはダイ穴を冷却液に浸漬させ、冷却液中に直接押出してカッターで切断するアンダーウォーターカッティング法が用いられる。一般的にストランドカッティング法では冷却液の温度を低く維持し、ストランド(Strand)がよく固化することでカッティングするのに問題はない。アンダーウォーターカッティング法では冷却液の温度をポリマーに合わせて維持し、ポリマーの形状を均一にすることが好ましい。しかし、結晶性ポリマーの場合、吐出中の結晶化を誘導するために任意に冷却液の温度を高く維持することもできる。
【0065】
粒子化されたポリマーの水洗浄によりイソソルビドなどの未反応の原料中の水に溶解する原料の除去が可能である。粒子が小さいほど粒子の重量に対して表面積が広くなるので、粒子の大きさは小さいほど有利である。このような目的を達成するために、粒子は約15mg以下の平均重量を有するように製造することができる。一例として、前記粒子化されたポリマーは、ポリマーのガラス転移温度と同じであるかあるいは約5~20℃程度低い温度の水に5分~10時間放置して水洗浄することができる。
【0066】
粒子化されたポリマーは、固相反応中の融着することを防止するために結晶化段階を経る。大気、不活性ガス、水蒸気、水蒸気含有不活性ガスの雰囲気または溶液中で行うことが可能であり、110℃~210℃あるいは120℃~210℃で結晶化処理を行う。温度が低いと粒子の結晶が生成される速度が過度に遅くなり、温度が高いと結晶が作られる速度より粒子の表面が溶融する速度が速いので粒子同士がくっつき、融着が発生する。粒子が結晶化することによって粒子の耐熱度が上昇するので、結晶化をいくつかの段階に分けて段階別に温度を上昇させて結晶化することも可能である。
【0067】
固相反応は、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど不活性ガス雰囲気下または400~0.01mmHgの減圧条件および180~220℃の温度で平均滞留時間1~150時間行われる。このような固相反応により分子量がさらに上昇し、溶融反応で反応せず残存している原料物質と反応中に生成された環状オリゴマー、アセトアルデヒドなどが除去される。
【0068】
前記結晶化されたポリマーは、150℃のオルトクロロフェノールに0.12重量%の濃度で溶解させ、35℃で測定した固有粘度が0.65dl/g以上、0.70dl/g以上、0.75dl/g以上あるいは0.80dl/g以上の値に到達するように固相重合する。
【0069】
また、前記ポリエステル樹脂混合物は、ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルポリエチレンテレフタレートを約50重量%まで含んでも特別な添加剤なしに表面にフローマークが発見されない成形品を提供することができる。したがって、前記ポリエステル樹脂混合物でポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂を混合する比率は特に限定されない。
【0070】
非制限的な例として、前記ポリエステル樹脂混合物は、ポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂を1:99~99:1、5:95~95:5、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、40:60~60:40あるいは50:50の重量比で含み得る。
【0071】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、融点が220~250℃、225~250℃、230~245℃あるいは235~245℃であり得る。前記ポリエステル樹脂混合物はリサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても、上述した範囲の融点を示し、優れた品質の成形品が再生産できる。
【0072】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、前記樹脂混合物から得られた厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが5%以下、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下あるいは1%以下と高透明性を示すことができる。理論的にはヘイズは0%であることが最も好ましいので、下限は0%以上であり得る。
【0073】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても、リサイクルポリエチレンテレフタレートに対するポリエステル樹脂の混和性に非常に優れ、リサイクルポリエチレンテレフタレートの物性を補完するための添加剤を必要としない利点がある。しかし、非制限的な例として、前記ポリエステル樹脂混合物は、本発明が属する技術分野で通常採用する添加剤を含み得る。
【0074】
また、発明の他の一実施形態によれば、前記ポリエステル樹脂混合物から形成された成形品が提供される。
【0075】
前記ポリエステル樹脂混合物は、上述した数式1を満たすポリエステル樹脂を含むことによって優れた加工性を示すことができる。
【0076】
押出吹込成形(Extrusion Blow Molding;EMB)工法では、成形機のスクリュー内部の高いせん断応力区間では低い粘度を維持し、せん断応力が低いパリソン形成区間では高い粘度を示すせん断流動化特性を必要とする。このようなせん断流動化特性は、スクリュー内部で発生するせん断応力摩擦による発生熱を最小化し、パリソン自体の温度を下げることによって成形機に設定した成形温度より高い温度で摩擦熱が発生することを防止する。
【0077】
また、さらに高いせん断応力を受けるマルチヘッド押出吹込成形工法の場合、1本のスクリューでいくつかのパリソンを作るために、高い押出量のためにスクリューのRPMがさらに高くなり、より高いせん断応力を受けるようになり、さらに優れたせん断流動化特性が要求される。
【0078】
前記ポリエステル樹脂混合物は、上述した数式1を満たすポリエステル樹脂を含むことによって向上したせん断流動化特性を示し、押出吹込成形工法によって高品質の成形品を提供することができる。
【0079】
また、前記ポリエステル樹脂混合物は、バージンポリエチレンテレフタレートだけでなく、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても高透明性の押出吹込成形品の製作が可能であり、前記樹脂混合物自体の再リサイクルが可能で、近来注目されていている持続的に使用可能なプラスチック提供に有用であることが期待される。
【0080】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の一例として例示したものに過ぎず、これによって発明の権利範囲はいかなる意味でも限定されるものではない。
【0081】
下記の物性は以下の方法により測定された。
【0082】
(1)固有粘度(IV)
150℃のo-chlorophenolに0.12重量%の濃度で試料を溶解させた後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて試料の固有粘度を測定した。具体的には、粘度計の温度を35℃に維持し、粘度計の特定の内部区間の間を溶媒(solvent)が通過するのにかかる時間(efflux time)tと溶液(solution)が通過するのにかかる時間tを求めた。その後、t値とt値を式1に代入して比粘度(specific viscosity)を算出し、算出された比粘度の値を式2に代入して固有粘度を算出した。
【0083】
【数4】
【0084】
上記式2中、Aはハギンス(Huggins)定数であって0.247、cは濃度値であって0.12重量%の値を使用した。
【0085】
(2)加工性パラメータ
プレート-プレートレオメーター(plate-plate rheometer)としてAnton Paar社製のPhysica MCR301装置を用いてポリエステル樹脂の複素粘度を測定した。
具体的には、直径が25mmのプレートを約1~2mmの間隔で平行に配置し、250℃の温度および窒素雰囲気下でangular frequencyを0.5rad/s~500rad/sに変化させながらポリエステル樹脂の複素粘度(V0、Pa・s)を測定し、下記数式1に代入して加工性パラメータ値を算出した。
【0086】
【数5】
【0087】
上記数式1中、Xは、0.5rad/sで測定したポリエステル樹脂の複素粘度であり、Yは、500rad/sで測定したポリエステル樹脂の複素粘度であり、Zは、ポリエステル樹脂の固有粘度である。
【0088】
(3)結晶化後融点(Melting Temperature;Tm)
ポリエステル樹脂を180℃で100分間結晶化させた後、結晶化させた試料のTmをDSC(differential scanning calorimetry)により測定した。測定装置としては、Mettler Toledo社製のDSC1モデルを用いた。具体的には、結晶化させた試料を除湿乾燥機(Moretto社製のモデル名D2T)を用いて120℃の窒素雰囲気下で5~10時間乾燥した。したがって、融点は、試料中に残留する水分含有量が500ppm未満の状態で測定した。
【0089】
乾燥された試料約6~10mgを取り、アルミニウムパンを満たし、30℃で3分間温度を維持した後、30℃から280℃まで10℃/minの速度で加熱した後、280℃で3分間温度を維持した(1次スキャン)。そして、Mettler Toledo社から提供する関連プログラム(STAReソフトウェア)のTAメニューにあるintegration機能によりDSCによる1次スキャンでTm peak(融点)値を分析した。1次スキャンの温度範囲は、プログラムで計算するonset point-10℃からTm peak+10℃までに設定された。
【0090】
(4)ヘイズ(Haze)
ポリエステル樹脂混合物を使用して厚さ6mmの試験片を用意し、ASTM D1003-97測定法でMinolta社製のCM-3600A測定装置を用いて前記試験片のHazeを測定した。
【0091】
(5)2次融点
ポリエステル樹脂混合物の2次融点をDSC(differential scanning calorimetry)により測定した。測定装置としては、Mettler Toledo社製のDSC1モデルを用いた。具体的には、ポリエステル樹脂混合物を除湿乾燥機(Moretto社製のモデル名D2T)を用いて120℃の窒素雰囲気下で5~10時間乾燥した。したがって、融点は、試料中に残留する水分含有量が500ppm未満の状態で測定した。
【0092】
乾燥された試料約6~10mgを取り、アルミニウムパンを満たし、30℃で3分間温度を維持した後、30℃から280℃まで10℃/minの速度で加熱した後、280℃で3分間温度を維持した(1次スキャン)。1次スキャンを行った後、試料を常温まで急速冷却させた後、再び常温から280℃まで10℃/minの速度で加熱して(2次スキャン)、DSC曲線を得た。そして、Mettler Toledo社から提供する関連プログラム(STAReソフトウェア)のTAメニューにあるintegration機能によりDSCによる2次スキャンでTm peak(融点)値を分析した。2次スキャンの温度範囲は、プログラムで計算するonset point-10℃からTm peak+10℃までに設定された。
【0093】
(6)フローマーク(Flow-mark)発生の有無の評価
Bekum EBM装置を用いて190~210℃内外の温度でポリエステル樹脂混合物を使用してパリソンを形成した。そして、前記パリソンを用いて500mL瓶を製作した。製造された500mL瓶を肉眼で観察してフローマーク(flow-mark)が観察されると「O」で表し、観察されないと「X」で表した。
【0094】
(7)リサイクル時のflake融着の有無の評価
前記項目(6)のフローマーク発生の有無を評価した瓶を体積密度(bulk density)が約250~600g/Lとなるように粉砕してフレーク(flake)を得た。このようにして得られたフレークを220℃で1時間放置してフレーク間の融着の有無を肉眼で観察し、一部でも融着した部分が観察されると「O」で表し、観察されないと「X」で表した。
【0095】
(8)厚さ偏差の評価
前記項目(6)のフローマーク発生の有無を評価した瓶の指定された10箇所の厚さを測定して、平均厚さDaに対する最大厚さDmaxと最小厚さDminの差の百分率を求めた。厚さ偏差が小さいほど押出吹込成形された瓶の品質が優れ、ポリエステル樹脂混合物の押出吹込加工性に優れているとみなされ、厚さ偏差が大きいほど押出吹込成形された瓶の品質が劣悪で、ポリエステル樹脂混合物の押出吹込加工性が劣悪であるとみなされる。このような厚さ偏差は、約15%以下に調節しなければならない。
【0096】
【数6】
【0097】
製造例1:ポリエステル樹脂の製造
カラムと、水によって冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器に3257.4gのテレフタル酸(19.6mol)、1423.4gのエチレングリコール(23.0mol)、229.2gのイソソルビド(1.6mol)を投入し、分枝化剤としてトリメリット酸無水物192.5g、触媒として1.0gのGeO、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate)0.7gを使用した。次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0098】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を行った。エステル化反応が完了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0099】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にわたって上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するか、重縮合反応の進行に伴う反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるかあるいは反応物の温度が設定した温度以上に高くなる場合、攪拌速度を適切に調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度IVが0.55dl/gとなるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器外部に吐出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後平均重量が12~14mg程度になるように粒子化した。
【0100】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度IVが0.70dl/gとなるまで行った。
【0101】
このようにして製造されたポリエステル樹脂に含まれている全体のジオール部分に対するイソソルビドから誘導されたジオール部分は5モル%であった。
【0102】
製造例2~4および比較製造例1~5:ポリエステル樹脂の製造
ポリエステル樹脂中の全体酸部分に対するテレフタル酸から誘導された酸部分およびイソフタル酸から誘導された酸部分の含有量と全体のジオール部分に対するイソソルビドから誘導されたジオール部分および1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分の含有量、分枝化剤の含有量を表1に記載の通り変更し、重縮合反応および固相重合反応を表1に記載された固有粘度に到達するまで行ったことを除いて、製造例1と同様の方法でポリエステル樹脂を製造した。
【0103】
【表1】
【0104】
上記表1で、TPAは、全体の酸部分に対してテレフタル酸から誘導された酸部分のモル%であり、IPAは、全体の酸部分に対してイソフタル酸から誘導された酸部分のモル%であり、ISBは、全体のジオール部分に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分のモル%であり、CHDMは、全体のジオール部分に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分のモル%であり、IV(重縮合)およびIV(固相重合)の単位はdl/gであり、IV(固相重合)の表示「-」は、固相重合反応を行わないことを意味する。
【0105】
前記製造例1~4および比較製造例1~5で製造したポリエステル樹脂でイソソルビドから誘導されたジオール部分と1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を除いた残りのジオール部分は、エチレングリコールから誘導されたジオール部分である。前記エチレングリコールから誘導されたジオール部分には2個のエチレングリコールが反応してジエチレングリコールを形成し、このようなジエチレングリコールがジカルボン酸あるいはその誘導体と反応して導入されたジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が含まれ得る。
【0106】
試験例1:ポリエステル樹脂の物性評価
前記製造例1~4および比較製造例1~5で製造したポリエステル樹脂の物性を上述した方法により評価し、その結果を表2に記載した。
【0107】
【表2】
【0108】
1)比較製造例1および2のポリエステル樹脂は非結晶性樹脂で結晶化されず、結晶化後融点を測定できなかった。
【0109】
実施例および比較例:ポリエステル樹脂混合物の製造
前記製造例1~4および比較製造例1~5で製造したポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と50:50の重量比で混合した。具体的には、廃プラスチックを粉砕および洗浄して得たフレークを溶融押出して再ペレット化したリサイクルPET樹脂を別にペレット化した前記ポリエステル樹脂と常温で乾式で混合し、150℃の温度で乾燥してポリエステル樹脂混合物を製造した。
【0110】
リサイクルPET樹脂は、廃プラスチックが回収された地域、廃プラスチックを分類する方法、およびそれを再ペレット化する方法によってその組成が多様である。本実験で使用したリサイクルPET樹脂は、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールで製造されるコポリマーであって、イソフタル酸の含有量は、ジカルボン酸全体に対して3モル%以内であり、固有粘度IVが0.74dl/gであり、結晶化温度が130℃であり、融点が250℃であった。
【0111】
試験例2:ポリエステル樹脂混合物の物性評価
上記で製造したポリエステル樹脂混合物を上述した方法により評価し、その結果を表3に記載した。
【0112】
【表3】
【0113】
上記表3を参照すると、本発明の一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、前記数式1の加工性パラメータを満たすポリエステル樹脂を含むことによって、リサイクルPET樹脂を使用しても押出吹込成形工法によって厚さが均一で、透明な成形品を提供できることが確認される。
【0114】
これに反し、前記数式1の加工性パラメータ値が15を超えるポリエステル樹脂を使用した場合にはリサイクルPET樹脂と混和性が低下して成形品の表面にフローマーク(flow-mark)が発生するか(比較例1)、リサイクルPET樹脂とリサイクル工程に導入される場合融着して再使用できなくなるか(比較例1および2)、押出吹込成形工法によって製造された成形品が不透明であるか(比較例5)、成形品の厚さが不均一であるなどの低品質の成形品が得られる問題が確認された(比較例1、2および5)。
【0115】
また、前記数式1の加工性パラメータ値が2未満のポリエステル樹脂を使用した場合にも押出吹込成形工法によって製造された成形品が非常に不透明で、成形品の厚さが不均一であるなどの低品質の成形品が得られる問題を確認することができた(比較例3および4)。