(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
H05B 45/375 20200101AFI20240904BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240904BHJP
B60Q 11/00 20060101ALI20240904BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20240904BHJP
H05B 45/52 20200101ALI20240904BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20240904BHJP
【FI】
H05B45/375
B60Q1/04 E
B60Q11/00 610B
B60Q11/00 625
H05B45/10
H05B45/52
H05B47/16
(21)【出願番号】P 2022526996
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019412
(87)【国際公開番号】W WO2021241451
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020094517
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020094657
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020094918
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020094919
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】太田 優
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌司
(72)【発明者】
【氏名】柳津 翔平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155280(JP,A)
【文献】特開2015-116915(JP,A)
【文献】特開2013-8615(JP,A)
【文献】特表2011-515027(JP,A)
【文献】特開2007-295641(JP,A)
【文献】特開2010-272410(JP,A)
【文献】特開2017-117606(JP,A)
【文献】特開2012-125074(JP,A)
【文献】特開2011-139609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0283397(US,A1)
【文献】国際公開第2017/086220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/375
B60Q 1/04
B60Q 11/00
H05B 45/10
H05B 45/52
H05B 47/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源であって、前記アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路と、を有している、配光可変光源と、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源ユニットを含む電源回路と、
を備え、
前記電源ユニットは、
その出力が、電源ラインを介して前記アレイ型発光デバイスの前記電源端子と接続されるDC/DCコンバータと、
制御可能な補正電圧を生成する電圧設定回路と、
前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた制御対象電圧と前記補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、
前記フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、前記フィードバック電圧が所定の目標電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
を備えることを特徴とする灯具システム。
【請求項2】
前記電源ユニットは、
前記電源ラインと独立した検出ラインを介して、前記アレイ型発光デバイスの前記電源端子と接続される検出端子をさらに備え、
前記制御対象電圧は、前記検出端子に発生する検出電圧に比例することを特徴とする請求項1に記載の灯具システム。
【請求項3】
前記制御対象電圧は、前記DC/DCコンバータの出力に発生する電圧に比例することを特徴とする請求項1に記載の灯具システム。
【請求項4】
前記フィードバック回路は、オペアンプを有する減算回路を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項5】
前記電圧設定回路は、
デジタル信号を生成するマイクロコントローラと、
前記デジタル信号を前記補正電圧に変換するD/Aコンバータと、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項6】
前記配光可変光源は、複数のアレイ型発光デバイスを含み、
前記電源回路は、前記複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項7】
アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源であって、前記アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路と、を有している、配光可変光源と、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源ユニットを含む電源回路と、
を備え、
前記電源ユニットは、
その出力が、電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
前記電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、前記アレイ型発光デバイスの前記電源端子と接続される検出端子と、
前記検出端子に生ずる検出電圧に応じた第1フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、
前記第1フィードバック電圧にもとづいて、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
を備えることを特徴とする灯具システム。
【請求項8】
前記フィードバック回路は、前記検出電圧またはそれに応じた電圧を分圧する分圧回路を含むことを特徴とする請求項7に記載の灯具システム。
【請求項9】
前記フィードバック回路は、前記検出電圧またはそれに応じた電圧を増幅するアンプを含むことを特徴とする請求項7または8に記載の灯具システム。
【請求項10】
前記フィードバック回路は、前記第1フィードバック電圧に加えて、
前記DC/DCコンバータの出力電圧にもとづく第2フィードバック電圧を生成可能であり、前記第1フィードバック電圧と前記第2フィードバック電圧の一方を、前記コンバータコントローラに供給することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項11】
前記フィードバック回路は、前記検出ラインの異常を検出する異常検出回路を含み、前記検出ラインが正常であるとき、前記第1フィードバック電圧を前記コンバータコントローラに供給し、前記検出ラインに異常が検出されると、前記第2フィードバック電圧を前記コンバータコントローラに供給することを特徴とする請求項10に記載の灯具システム。
【請求項12】
前記異常検出回路は、前記検出ラインのオープン故障を検出することを特徴とする請求項11に記載の灯具システム。
【請求項13】
前記電源回路は、前記異常の検出が、所定時間にわたり継続すると、前記配光可変光源への電力供給が停止することを特徴とする請求項11または12に記載の灯具システム。
【請求項14】
前記配光可変光源は、複数のアレイ型発光デバイスを含み、
前記電源回路は、前記複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットを含むことを特徴とする請求項7から13のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項15】
アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源であって、前記アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路と、を有している、配光可変光源と、
前記アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源ユニットを含む電源回路と、
を備え、
前記電源ユニットは、
その出力が電源ケーブルを介して前記アレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、
前記電源ケーブルとは独立した検出ラインを介して、前記アレイ型発光デバイスの前記電源端子と接続される検出端子と、
前記DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、
少なくとも前記検出端子に生ずる検出電圧にもとづいて、前記電源ケーブルの電気的状態を検出する監視回路と、
を備えることを特徴とする灯具システム。
【請求項16】
前記監視回路は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧と前記検出電圧にもとづいて、前記電源ケーブルの断線を検出することを特徴とする請求項
15に記載の灯具システム。
【請求項17】
前記監視回路は、前記出力電圧に応じた第1電圧を第1デジタル値に変換し、前記検出電圧に応じた第2電圧を第2デジタル値に変換し、前記第1デジタル値と前記第2デジタル値の差分が所定のしきい値より大きいとき、前記電源ケーブルの断線と判定することを特徴とする請求項
16に記載の灯具システム。
【請求項18】
前記電源回路は、A/Dコンバータを内蔵し、前記第1電圧および前記第2電圧を前記第1デジタル値および前記第2デジタル値に変換するマイクロコントローラを備え、前記監視回路は、前記マイクロコントローラに実装されることを特徴とする請求項
17に記載の灯具システム。
【請求項19】
前記監視回路は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧、前記検出電圧および前記DC/DCコンバータの出力電流にもとづいて、前記電源ケーブルのインピーダンスを検出することを特徴とする請求項
15から18のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項20】
前記コンバータコントローラは、
前記DC/DCコンバータの出力電圧が目標電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御することを特徴とする請求項
15から19のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項21】
前記コンバータコントローラは、前記検出電圧が目標電圧に近づくように、前記DC/DCコンバータを制御することを特徴とする請求項
15から19のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項22】
前記配光可変光源は、複数のアレイ型発光デバイスを含み、
前記電源回路は、前記複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットを含むことを特徴とする請求項
15から21のいずれかに記載の灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、自車近傍を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADBランプとして、LED(発光ダイオード)ストリングとバイパス回路を組み合わせたバイパス方式の構成が実用化されている。
図1は、バイパス方式のランプ1Rのブロック図である。
【0005】
ADBランプ1Rは、LEDストリング(LEDバー)50と、定電流ドライバ70、バイパス回路80を備える。LEDストリング50は、直列に接続された複数のLED52_1~52_n(n≧2)を含む。ADBランプ1Rは、複数のLED52_1~52_nそれぞれの出射ビームが、車両前方の仮想鉛直スクリーン40上において、異なる領域を照射するように構成されている。
【0006】
定電流ドライバ70は、所定の電流量に安定化された駆動電流ILEDを生成し、LEDストリング50に供給する電流源72を含む。バイパス回路80は、複数のLED52_1~52_nと並列に設けられた複数のスイッチSW1~SWnを含む。
【0007】
バイパス回路80のあるスイッチSWi(1≦i≦n)がオフの状態では、電流源60が生成する電流ILEDは、LED52_iに流れるため、LED52_iは点灯する。スイッチSWiがオンの状態では、電流源60が生成する電流ILEDは、スイッチSWiに迂回して流れるため、LED52_iは消灯する。
【0008】
仮想鉛直スクリーン40上には、複数のバイパススイッチSW1~SWnのオン、オフに応じた配光パターン42が形成される。
【0009】
図2は、バイパス方式のランプ1Rの別の構成例を示すブロック図である。
ADBランプ1Rは、LEDストリング(LEDバー)50と、電流源60、電源回路70、バイパス回路80を備える。電流源60は、LEDストリング50と直列に設けられ、所定の電流量に安定化された駆動電流I
LEDを生成する。電源回路70は、LEDストリング50と電流源60の両端間に、電源電圧を供給する。バイパス回路80は、複数のLED52_1~52_nと並列に設けられた複数のスイッチSW1~SWnを含む。
【0010】
図1あるいは
図2のバイパス方式のランプでは、LED52の個数n、すなわちオン、オフ制御可能な領域の分割数は、数個から多くて十数個程度である。より多くの分割数を実現するため、LED(発光ダイオード)アレイ方式のADBランプが提案されている。
図3は、LEDアレイ方式のADBランプ1Sのブロック図である。ADBランプ1Sは、LEDアレイデバイス10と、配光コントローラ20、電源回路30を備える。LEDアレイデバイス10は、アレイ状に配置される複数のLED12と、複数のLED12を駆動するLEDドライバ14を備え、1パッケージ化されたデバイスである。1画素(画素回路ともいう)は、LED12とLEDドライバ14で構成され、LEDドライバ14は、LED12と直列に接続される電流源(スイッチ)を含み、電流源のオンオフを制御することで、各画素のオン(点灯)、オフ(消灯)を切り替える。
【0011】
電源回路30は、LEDアレイデバイス10に電源電圧VDDを供給する。電源回路30は、DC/DCコンバータ32と、そのコントローラ34を含む。コントローラ34には、DC/DCコンバータ32の出力電圧VOUTにもとづくフィードバック電圧VFBがフィードバックされており、フィードバック電圧VFBが目標値VREFに近づくように、DC/DCコンバータ32を制御する。
【0012】
配光コントローラ20は、複数の画素のオン、オフを指定する制御信号を生成し、LEDアレイデバイス10に送信する。LEDアレイデバイス10の出射ビームは、図示しない光学系を経て、仮想鉛直スクリーン40上に照射される。仮想鉛直スクリーン40には、複数の発光素子12のオン、オフに対応した配光パターン42が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
課題1.
図3のADBランプ1Sにおいて、電源回路30の出力電圧V
OUTの目標電圧V
OUT(REF)は、電源回路30の内部で生成される基準電圧V
REFにもとづいて規定されていた。したがって、ADBランプ1Sの動作中に変更することができない。
【0015】
本開示のある態様はかかる状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、電源回路の出力電圧を設定可能な灯具システムの提供にある。
【0016】
課題2. 本発明者は、
図3のADBランプ1Sについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0017】
図3の回路では、複数(N個)の画素回路が並列に接続されるため、電源回路30の出力電流I
OUTは、最大でI
OUT(MAX)=I
LED×Nとなる。現状では、数千から1万を超えるような画素数Nを持つLEDアレイデバイス10が開発されている。
【0018】
たとえば、ILED=10mA,LEDの個数N=3000とした場合、電源回路30の最大出力電流IOUT(MAX)は30Aに達する。
【0019】
電源ケーブル16やコネクタは、直流抵抗成分Rを有しており、大電流が流れることにより、電圧降下VDROP(=R×IOUT)が生ずる。電源回路30の出力端の電圧をVOUTとするとき、LEDアレイデバイス10の電源端子に供給される電源電圧(負荷入力端電圧ともいう)VDDは、
VDD=VOUT-R×IOUT
となる。画素回路が正常動作するためには、負荷入力端電圧VDDは、VDD(MIN)=Vf+VSAT+αより大きくなければならない。Vfは、LEDの順方向電圧であり、VSATは定電流源であるLEDドライバ14の両端間電圧(最低動作電圧)であり、αは電圧マージンである。
【0020】
したがって、電源回路30においては、出力電圧VOUTの目標電圧VOUT(REF)を、
VOUT(REF)>VDD(MIN)+R×IOUT
を満たすように、コントローラ34を設計する必要がある。
【0021】
図4は、
図3のADBランプ1Sの動作波形図である。出力電流I
OUTは、0~I
OUT(MAX)の範囲で変化する。最大出力電流I
OUT(MAX)を想定して出力電圧V
OUTの目標値V
OUT(REF)を、
V
OUT(REF)=V
DD(MIN)+R×I
OUT(MAX)
を満たすように定めたとする。この場合、I
OUT≒0の状況で、負荷入力端電圧V
DDが最小電圧V
DD(MIN)に比べて大きくなる。(V
DD-V
DD(MIN))×I
OUTは、無駄な電力消費となる。
【0022】
また、仮に出力電流IOUTが、想定した最大値IOUT(MAX)を超えると、負荷入力端電圧VDDが、最低電圧VDD(MIN)を下回る。そうすると、LEDアレイデバイス10がちらついたり、消灯してしまう。
【0023】
本開示のある態様はかかる状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、消費電力を削減可能な灯具システムの提供にある。
【0024】
課題3. 本発明者は、
図3のADBランプ1Sについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0025】
図3の回路では、複数(N個)の画素回路が並列に接続されるため、電源回路30の出力電流I
OUTは、最大でI
OUT(MAX)=I
LED×Nとなる。現状では、数千から1万を超えるような画素数Nを持つLEDアレイデバイス10が開発されている。
【0026】
たとえば、ILED=10mA,LEDの個数N=3000とした場合、電源回路30の最大出力電流IOUT(MAX)は30Aに達する。このような大電流を出力可能な電源回路は、サイズが大きくなり、またコストも高くなる。またインダクタやスイッチングトランジスタ等に関して、30Aもの大電流に耐えうる部品は、選択肢が大きく制限される。
【0027】
また電源回路30とLEDアレイデバイス10の間が1本の電源ケーブル(電源ラインあるいはハーネス)14で接続されることとなるため、ハーネスにも30A以上の容量が必要とされる。このような電源ラインは高コストである上に、非常に太く、取り回しが困難である。またハーネス16を接続するコネクタ(カプラ)にも、大容量の部品を選定する必要がある。
【0028】
電源ケーブルやコネクタは、直流抵抗成分Rを有しており、大電流が流れることにより、電圧降下R×IOUTが生ずる。電源回路30の出力端の電圧をVOUTとするとき、LEDアレイデバイス10の電源ピンに供給される電圧VDDは、
VDD=VOUT-R×IOUT
となる。画素回路が正常動作するためには、VDD(MIN)=Vf+VSAT+αより大きな電源電圧VDDが必要となる。Vfは、LEDの順方向電圧であり、VSATは電流ドライバの定電流源の両端間電圧(最低動作電圧)であり、αは電圧マージンである。したがって、電源回路30の出力電圧VOUTの目標電圧VOUT(REF)は、
VOUT(REF)>VDD(MIN)+R×IOUT
を満たすように定める必要がある。
【0029】
出力電流IOUTは、0~IOUT(MAX)の範囲で変化するところ、最大出力電流IOUT(MAX)を想定して出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)を定めると、IOUT≒0の状況で画素回路に過剰な電圧VDDが供給され、無駄な消費電力が発生する。
【0030】
本開示のある態様はかかる状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、上述の問題の少なくともひとつを解決可能な灯具システムの提供にある。
【0031】
課題4.
図1のADBランプ1Rにおいて、定電流ドライバ70の出力とLEDストリング50の間は、配線(ハーネス)54およびコネクタを介して接続される。配線54が断線し、あるいはコネクタが外れると、LEDストリング50が点灯できなくなることから、配線54の断線検知機能が必要となる。
【0032】
図1のADBランプ1Rでは、配線54が断線すると、定電流ドライバ70の出力電流I
LEDが流れなくなる。そのため、定電流ドライバ70において、配線の断線を容易に検知できる。
【0033】
一方、
図3の灯具システム1Sでは、配線16が断線したとしても、電源回路30のフィードバックループには影響が及ばない。したがって電源回路30において、配線16の断線を検出することができない。
【0034】
本開示のある態様はかかる状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、電源ラインの断線を検出可能な灯具システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態または複数の実施形態を指すものとして用いる場合がある。
【0036】
1. 一実施形態に係る灯具システムは、アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源であって、アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路と、を有している、配光可変光源と、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源ユニットを含む電源回路と、を備える。電源ユニットは、その出力が電源ラインを介してアレイ型発光デバイスの電源端子と接続されるDC/DCコンバータと、制御可能な補正電圧を生成する電圧設定回路と、DC/DCコンバータの出力電圧に応じた制御対象電圧と補正電圧とにもとづいて、フィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、フィードバック電圧をフィードバックピンに受け、フィードバック電圧が所定の目標電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を備える。
【0037】
この構成によれば、補正電圧に応じて、コンバータコントローラのフィードバックピンのフィードバック電圧を変化させることで、DC/DCコンバータの出力電圧あるいはアレイ型発光デバイスの電源端子の電圧の目標値を調整できる。
【0038】
一実施形態において、電源ユニットは、電源ラインと独立した検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの電源端子と接続される検出端子をさらに備えてもよい。制御対象電圧は、検出端子に発生する検出電圧に比例してもよい。この構成によれば、アレイ型発光デバイスの電源端子に、適切な電源電圧が供給されるようにフィードバックループが形成される。したがって、無駄な消費電力を削減できる。
【0039】
一実施形態において、制御対象電圧は、DC/DCコンバータの出力に発生する電圧に比例してもよい。この構成によれば、DC/DCコンバータの出力電圧が目標電圧に近づくようにフィードバックループが形成されるため、DC/DCコンバータに要求される応答速度を低くできる。
【0040】
一実施形態において、フィードバック回路は、オペアンプを有する減算回路を含んでもよい。
【0041】
一実施形態において、電圧設定回路は、デジタル信号を生成するマイクロコントローラと、デジタル信号を補正電圧に変換するD/Aコンバータと、を含んでもよい。これにより、DC/DCコンバータの出力電圧あるいはアレイ型発光デバイスの電源端子の電圧を、ソフトウェア制御することが可能となる。
【0042】
一実施形態において、配光可変光源は、複数のアレイ型発光デバイスを含んでもよい。電源回路は、複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットを含んでもよい。
【0043】
2. 一実施形態に係る灯具システムは、アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源と、電源回路と、を備える。アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路と、を有する。電源回路は、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源ユニットを含む。電源ユニットは、その出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、電源ケーブルと独立した検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの電源端子と接続される検出端子と、検出端子に生ずる検出電圧に応じた第1フィードバック電圧にもとづいて、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を備える。
【0044】
この構成によると、電源ケーブルとは独立した検出ラインを追加し、検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの電源端子の電源電圧を直接センシング可能としている。これにより、アレイ型発光デバイスの電源端子に、安定した電源電圧を供給できる。DC/DCコンバータは、必要以上に高い電圧を生成する必要がなくなるため、消費電力を削減できる。
【0045】
一実施形態において、フィードバック回路は、検出電圧またはそれに応じた電圧を分圧する分圧回路を含んでもよい。この場合、分圧回路の分圧比に応じて、アレイ型発光デバイスの電源端子の電圧の目標値を設定できる。
【0046】
一実施形態において、フィードバック回路は、検出電圧またはそれに応じた電圧を増幅するアンプを含んでもよい。この場合、アンプのゲインに応じて、アレイ型発光デバイスの電源端子の電圧の目標値を設定できる。
【0047】
一実施形態において、フィードバック回路は、第1フィードバック電圧に加えて、出力端子の電圧にもとづく第2フィードバック電圧を生成可能であり、第1フィードバック電圧と第2フィードバック電圧の一方を、コンバータコントローラに供給してもよい。
【0048】
一実施形態において、2つのフィードバック経路を設けることで、システムの堅牢性を高めることができる。あるいは、灯具システムの動作状況に応じて、フィードバック経路を切り替えることで、電源系統の性能を高めることができる。
【0049】
一実施形態において、フィードバック回路は、検出ラインの異常を検出する異常検出回路を含み、検出ラインが正常であるとき、第1フィードバック電圧をコンバータコントローラに供給し、検出ラインに異常が検出されると、第2フィードバック電圧をコンバータコントローラに供給してもよい。検出ラインにオープンやショートなどの異常が生じている場合には、第2フィードバック電圧に切り替えることで、アレイ型発光デバイスの動作を維持できる。
【0050】
一実施形態において、異常検出回路は、検出ラインのオープン故障を検出してもよい。検出ラインがオープン故障(すなわち断線)すると、第1フィードバック電圧が0Vから変動しなくなる。この状況でコンバータコントローラがフィードバック制御を継続すると、DC/DCコンバータの出力電圧が上昇し続け、過電圧状態に陥る。そこでオープン故障を検出することにより、DC/DCコンバータの過電圧を抑制できる。
【0051】
一実施形態において、異常検出回路は、検出電圧またはそれに応じた電圧を所定のしきい値と比較する電圧コンパレータを含み、検出電圧がしきい値を下回ったときに、異常と判定してもよい。
【0052】
一実施形態において、電源回路は、異常の検出が、所定時間にわたり継続すると、配光可変光源への電力供給を停止してもよい。
【0053】
一実施形態において、配光可変光源は、複数のアレイ型発光デバイスを含んでもよい。電源回路は、複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットを含んでもよい。この構成では、配光可変光源が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイスに分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイスごとに電源ユニットを設け、アレイ型発光デバイスと電源ユニットを電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0054】
3. 一実施形態に係る灯具システムは、複数のアレイ型発光デバイスを含み、各アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状(アレイ状)に配置された複数の画素回路と、を有する、配光可変光源と、複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットと、複数の電源ユニットの出力端子と複数のアレイ型発光デバイスの電源端子を接続する複数の電源ケーブルと、配光指令に応じて、複数のアレイ型発光デバイスの複数の画素回路のオン、オフを制御するコントローラと、を備える。
【0055】
この構成では、配光可変光源が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイスに分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイスごとに電源ユニットを設け、アレイ型発光デバイスと電源ユニットを電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、上述の問題の少なくとも一つを解決できる。
【0056】
一実施形態において、複数のアレイ型発光デバイスの出射ビームは、水平方向に異なる位置に照射されてもよい。
【0057】
一実施形態に係る灯具システムは、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路を含み、複数の画素回路は複数のセグメントに分割され、セグメント毎に電源端子が設けられている、アレイ型発光デバイスと、複数のセグメントに対応する複数の電源ユニットと、複数の電源ユニットの出力端子と複数のセグメントの電源端子を接続する複数の電源ケーブルと、配光指令に応じて、アレイ型発光デバイスの複数の画素回路のオン、オフを制御するコントローラと、を備える。
【0058】
この構成では、アレイ型発光デバイスの複数の画素を、複数のセグメントに分割し、セグメントごとに独立した電源端子を設け、セグメントごとに電源ユニットを設けることとしている。これにより上述の問題の少なくとも一つを解決できる。
【0059】
一実施形態において、複数のセグメントの出射ビームが水平方向に関して異なる位置に照射されるように、複数の画素回路を、複数のセグメントに分割してもよい。複数のセグメントの出射ビームが垂直方向に関して異なる位置に照射されるように、複数の画素回路を、複数のセグメントに分割してもよい。
【0060】
一実施形態において、複数の電源ユニットはそれぞれ、フェーズシフト型コンバータを含んでもよい。フェーズシフト型コンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧や出力電流のリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、配光可変光源をPWM制御する場合、電源ユニットの出力電流は複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0061】
4. 一実施形態に係る灯具システムは、アレイ型発光デバイスを含む配光可変光源と、電源回路と、を備える。アレイ型発光デバイスは、電源端子と、電気的に並列接続され、空間的にマトリクス状に配置された複数の画素回路と、を有している。電源回路は、アレイ型発光デバイスに電力を供給する電源ユニットを含む。電源ユニットは、その出力が電源ケーブルを介してアレイ型発光デバイスと接続されるDC/DCコンバータと、電源ケーブルとは独立した検出ラインを介して、アレイ型発光デバイスの前記電源端子と接続される検出端子と、DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、少なくとも検出端子に生ずる検出電圧にもとづいて、電源ケーブルの電気的状態を検出する監視回路と、を備える。
【0062】
「電源ケーブルの電気的状態」には、電源ラインや接地ラインの断線、コネクタの外れ、電源ラインの地絡や天絡、電源ラインのインピーダンスなどが含まれる。
【0063】
一実施形態において、監視回路は、出力電圧に応じた第1電圧を第1デジタル値に変換し、検出電圧に応じた第2電圧を第2デジタル値に変換し、第1デジタル値と第2デジタル値の差分が所定のしきい値より大きいとき、電源ラインの断線と判定してもよい。
【0064】
一実施形態において、電源回路は、A/Dコンバータを内蔵し、第1電圧および第2電圧を第1デジタル値および第2デジタル値に変換するマイクロコントローラを備え、監視回路は、マイクロコントローラに実装されてもよい。
【0065】
一実施形態において、マイクロコントローラは、第1デジタル値と第2デジタル値にもとづいて、電源ケーブルのインピーダンスを計算してもよい。
【0066】
一実施形態において、監視回路は、出力電圧、検出電圧およびDC/DCコンバータの出力電流にもとづいて、電源ケーブルのインピーダンスを検出してもよい。
【0067】
一実施形態において、コンバータコントローラは、出力電圧が目標電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御してもよい。この構成によれば、DC/DCコンバータの出力電圧が目標電圧に近づくようにフィードバックループが形成されるため、DC/DCコンバータに要求される応答速度を低くできる。
【0068】
一実施形態において、コンバータコントローラは、検出電圧が目標電圧に近づくように、DC/DCコンバータを制御してもよい。この構成によれば、アレイ型発光デバイスの電源端子に、適切な電源電圧が供給されるようにフィードバックループが形成される。したがって、無駄な消費電力を削減できる。
【0069】
一実施形態において、配光可変光源は、複数のアレイ型発光デバイスを含んでもよい。電源回路は、複数のアレイ型発光デバイスに対応する複数の電源ユニットを含んでもよい。
【0070】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0071】
本開示のある態様によれば、電源回路の出力電圧を設定できる。本開示のある態様によれば、灯具システムの消費電力を削減できる。本開示のある態様によれば、課題3で指摘した問題の少なくともひとつを解決できる。本開示のある態様によれば、灯具システムにおける電源ラインの電気的状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図3】LEDアレイ方式のADBランプのブロック図である。
【
図5】実施形態1.1に係る灯具システムのブロック図である。
【
図7】フィードバック回路の構成例を示す回路図である。
【
図9】実施形態1.2に係る灯具システムのブロック図である。
【
図11】変形例1.1に係るヘッドランプのブロック図である。
【
図12】変形例1.2に係るヘッドランプのブロック図である。
【
図13】実施形態2に係る灯具システムのブロック図である。
【
図15】実施例2.1に係る電源ユニットの回路図である。
【
図16】実施例2.2に係る電源ユニットの回路図である。
【
図17】
図17(a)、(b)は、実施例2.3に係る電源ユニットの回路図である。
【
図18】
図18(a)、(b)は、実施例2.4に係る電源ユニットの回路図である。
【
図19】変形例2.1に係るヘッドランプを示す図である。
【
図20】変形例2.2に係るヘッドランプを示す図である。
【
図21】実施形態3.1に係る灯具システムのブロック図である。
【
図22】
図21の配光可変光源が形成する配光を説明する図である。
【
図24】比較技術に係るランプのブロック図である。
【
図25】
図25(a)、(b)は、1個の電源ユニットの構成例を示す回路図である。
【
図26】実施形態3.2に係る灯具システムのブロック図である。
【
図27】
図27(a)~(c)は、アレイ型発光デバイスのセグメントの分割を説明する図である。
【
図28】実施形態4.1に係る灯具システムのブロック図である。
【
図31】監視回路の別の構成例を示す回路図である。
【
図32】実施形態4.2に係る灯具システムのブロック図である。
【
図34】変形例4.1に係るヘッドランプを示す図である。
【
図35】変形例4.2に係るヘッドランプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0074】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0075】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0076】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0077】
(実施形態1)
実施形態1.1、1.2では、上述の課題1に関連する技術を説明する。
【0078】
(実施形態1.1)
図5は、実施形態1.1に係る灯具システム100Aのブロック図である。灯具システム100Aは、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200Aを備える。
【0079】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200に対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200が形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECUとして構成してもよいし、ヘッドランプ200に内蔵される灯具側のECUとして構成してもよい。
【0080】
ヘッドランプ200Aは、配光可変光源210、電源回路220A、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0081】
配光可変光源210は、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200において、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0082】
より具体的には配光可変光源210は、アレイ型発光デバイス212を備える。アレイ型発光デバイス212は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0083】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0084】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0085】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示する制御信号S2を受信する。
【0086】
電源回路220Aは、配光可変光源210に電力を供給する。電源回路220Aは、定電圧出力のコンバータを含み、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、VF+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。VFは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源ユニット222は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0087】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210に対して送信する。たとえばコントロールユニット260は、アレイ型発光デバイス212の複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0088】
続いて電源回路220Aの構成を説明する。電源回路220Aは、電源ユニット222を備える。電源ユニット222は、出力端子AP/AN、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、フィードバック回路226、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0089】
出力端子AP/ANは、電源ケーブル204を介してアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDおよび接地端子GNDと接続される。電源ケーブル204は、電源ラインLVDDと接地ラインLGNDを含む。DC/DCコンバータ224の正極出力は、出力端子AP、電源ラインLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続され、DC/DCコンバータ224の負極出力は、出力端子AN、接地ラインLGNDを介して、アレイ型発光デバイス212の接地端子GNDと接続される。
【0090】
検出端子SNSは、電源ラインLVDDと独立した検出ライン(ジカ線)LSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。
【0091】
コンバータコントローラ228は、市販のDC/DCコンバータの制御IC(Integrated Circuit)を用いることができる。コンバータコントローラ228は、フィードバックピンFBに入力されたフィードバック電圧VFBが、内部で生成される基準電圧VREFに近づくように、パルス幅や周波数、デューティサイクルの少なくともひとつが調節されるパルス信号を生成し、パルス信号に応じてDC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0092】
電圧設定回路230は、制御可能な補正電圧VCMPを生成する。フィードバック回路226は、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTに応じた制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPとにもとづいて、フィードバック電圧VFBを生成し、コンバータコントローラ228のフィードバックピンFBに供給する。フィードバック電圧VFBは、制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPそれぞれに応じて変化する信号であり、式(1)で表される。
VFB=K1・VCNT+K2・VCMP …(1)
K1>0の定数であり、K2は、非ゼロの定数である。ここではK2<0とする。コンバータコントローラ228によって、このフィードバック信号VFBが目標電圧VREFに近づくようにDC/DCコンバータ224が制御される。
【0093】
系が安定した定常状態において、
K1・VCNT+K2・VCMP=VREF
が成り立つ。したがって定常状態において、制御対象電圧VCNTは、目標電圧VCNT(REF)に安定化される。
VCNT(REF)=(VREF-K2・VCMP)/K1 …(2)
【0094】
実施形態1.1において、制御対象電圧VCNTは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDである。電源ユニット222は検出端子SNSを有し、検出端子SNSは、電源ラインLVDDと独立した検出ラインLSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。フィードバック回路226の入力インピーダンスは十分に高く、検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。フィードバック回路226には、検出端子SNSに発生する検出電圧VSNSが、制御対象電圧VCNTとして入力される。したがって、電源電圧VDDの目標電圧VDD(REF)は、式(3)で表される。
VDD(REF)=(VREF-K2・VCMP)/K1 …(3)
【0095】
以上が灯具システム100Aの構成である。続いてその動作を説明する。
図6は、
図5の灯具システム100Aの動作波形図である。期間T
0において補正電圧V
CMPは0Vである。この期間T
0の電源電圧V
DDは、
V
DD(REF)_0=V
REF/K
1
に安定化される。DC/DCコンバータ224の出力電圧V
OUTは、電源電圧V
DDよりも、電源ラインLVDDおよびコネクタ等における電圧降下V
DROPだけ高い電圧となり、式(4)で表される。
V
OUT=V
DD+V
DROP=V
DD+R×I
OUT …(4)
Rは、電源ラインLVDDおよびコネクタのインピーダンスである。なおここでは理解の容易化のため、接地ラインLGNDの電圧降下は無視することとする。灯具システム100Aの点灯中、アレイ型発光デバイス212の動作電流I
OUTは変動する。長い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの平均値は、ヘッドランプ200Aが形成する配光に応じて変化する。また短い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの瞬時値は、PWM制御の周期で変動する。
図6には、長いあるいは短い時間スケールで、出力電流I
OUTが変動する様子が示されている。実施形態1.1では、電源電圧V
DDが安定化され、出力電圧V
OUTは出力電流I
OUTに応じて変化する。
【0096】
期間T1において、補正電圧VCMPが正の値VCMP1に設定される。この期間T1の、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)_1は、
VDD(REF)_1=(VREF-K2・VCMP1)/K1
となる。K2は負の定数であるから、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)は、
VDD(REF)_1=(VREF+|K2|・VCMP1)/K1
となり、期間T0の目標値VDD(REF)_0から、|K2|・VCMP1/K1だけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0097】
期間T2において、補正電圧VCMPをさらに高い値VCMP2に設定すると、この期間T2の、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)_2は、
VDD(REF)_2=(VREF-K2・VCMP2)/K1
となり、期間T0の目標値VDD(REF)_0から、|K2|・VCMP2/K1だけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0098】
以上が灯具システム100Aの動作である。この灯具システム100Aによれば、補正電圧VCMPを応じて、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDを柔軟に設定することができる。
【0099】
アレイ型発光デバイス212に供給する電源電圧VDDは、最低動作電圧VDD(MIN)より高い範囲において、なるべく低い方が、消費電力が小さくなる。実施形態1.1によれば、補正電圧VCMPによって、電源電圧VDDの目標値VDD(REF)を柔軟に設定できるため、より消費電力が小さい状態での動作が可能となる。
【0100】
続いて補正電圧VCMPの制御例について説明する。
【0101】
(制御例1)
補正電圧VCMPは、アレイ型発光デバイス212の品番や種類に応じて設定してもよい。あるいは補正電圧VCMPは、アレイ型発光デバイス212の個体毎に設定してもよい。
【0102】
(制御例2)
補正電圧VCMPは、灯具システム100Aの動作中に、動的、適応的に変化してもよい。たとえば補正電圧VCMPを、ヘッドランプ200Aの動作環境、たとえば温度に応じて変化させてもよい。温度に応じて、アレイ型発光デバイス212の最低動作電圧VDD(MIN)が変動する場合、温度に応じて補正電圧VCMPを変化させることで、電源電圧VDDを最適化できる。
【0103】
(制御例3)
補正電圧VCMPは、アレイ型発光デバイス212からの情報にもとづいて設定してもよい。アレイ型発光デバイス212は、自身の電源電圧VDDに供給されるべき最適な電源電圧VDDを知っている。そこで、アレイ型発光デバイス212と電圧設定回路230の間に通信インタフェースを追加し、アレイ型発光デバイス212から電圧設定回路230に、最適な電源電圧VDDを直接、あるいは間接的に指示する制御信号を送信し、その制御信号にもとづいて、補正電圧VCMPを生成してもよい。
【0104】
(制御例4)
補正電圧VCMPは、ヘッドランプ200Aが形成すべき配光パターンに応じて設定してもよい。
【0105】
続いて電圧設定回路230およびフィードバック回路226の構成例を説明する。
【0106】
図7は、フィードバック回路226の構成例を示す回路図である。このフィードバック回路226は、オペアンプを有する減算回路であり、抵抗R31~R34およびオペアンプOA3を含む。このフィードバック回路226の入出力特性は、式(5)で表される。
V
FB=(R31+R32)/R31×{R34/(R33+R34)×V
CNT-R32/(R31+R32)×V
CMP …(5)
【0107】
式(1)と(5)を対比すると、
K1=(R31+R32)/R31×R34/(R33+R34)
K2=-(R31+R32)/R31×R32/(R31+R32)
を得る。
【0108】
なお、フィードバック回路226を、オペアンプを用いた加算回路で構成してもよい。この場合、K1>0,K2>0となる。補正電圧VCMPが正であるとき、補正電圧VCMPに応じて、制御対象電圧VCNTの目標電圧を、低電位側にシフトさせることができる。
【0109】
図8は、電圧設定回路230の構成例を示す回路図である。電圧設定回路230は、マイクロコントローラ232、D/Aコンバータ234、バッファ236を含む。マイクロコントローラ232は、補正電圧V
CMPを指定するデジタルの設定値D
CMPを生成する。マイクロコントローラ232を用いることで、補正電圧V
CMPを、ソフトウェア制御することが可能となる。特に、上述の制御例2や3のように、補正電圧V
CMPを動的、適応的に変化させる場合には、ソフトウェア制御が好適である。
【0110】
D/Aコンバータ234は、マイクロコントローラ232が生成した設定値DCMPを、アナログの補正電圧VCMPに変換する。補正電圧VCMPは、バッファ236を介してフィードバック回路226に供給される。なお、D/Aコンバータ234の出力インピーダンスが十分に低い場合、バッファ236は省略できる。またD/Aコンバータ内蔵のマイクロコントローラ232を用いる場合、D/Aコンバータ234は、マイクロコントローラ232の内部に存在することとなる。
【0111】
(実施形態1.2)
図9は、実施形態1.2に係る灯具システム100Bのブロック図である。灯具システム100Bの構成について、実施形態1.1との相違点を中心に説明する。
【0112】
ヘッドランプ200Bは、配光可変光源210、電源回路220B、コントロールユニット260を備える。実施形態1.2では、電源回路220Bの構成が、実施形態1.1の電源回路220Aと異なっている。
【0113】
電源回路220Bの構成を説明する。電源回路220Bの電源ユニット222は、出力端子AP/AN、DC/DCコンバータ224、フィードバック回路226、コンバータコントローラ228、電圧設定回路230を備える。
【0114】
電圧設定回路230は、制御可能な補正電圧VCMPを生成する。フィードバック回路226は、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTに応じた制御対象電圧VCNTと補正電圧VCMPとにもとづいて、フィードバック電圧VFBを生成し、コンバータコントローラ228のフィードバックピンFBに供給する。
【0115】
実施形態1.2では、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTが、制御対象電圧VCNTである。フィードバック回路226には、DC/DCコンバータ224の正極出力(出力端子AP)に発生する出力電圧VOUTが制御対象電圧VCNTとして入力される。したがって、出力電圧VOUTの目標電圧VOUT(REF)は、式(6)で表される。
VOUT(REF)=(VREF-K2・VCMP)/K1 …(6)
【0116】
以上が灯具システム100Bの構成である。続いてその動作を説明する。
図10は、
図9の灯具システム100Bの動作波形図である。期間T
0において補正電圧V
CMPは0Vである。この期間T
0の出力電圧V
OUTは、
V
OUT(REF)_0=V
REF/K
1
に安定化される。
【0117】
アレイ型発光デバイス212に供給される電源電圧VDDは、出力電圧VOUTよりも電源ラインLVDDおよびコネクタ等における電圧降下VDROPだけ低い電圧となり、式(7)で表される。
VDD=VOUT-VDROP=VOUT-R×IOUT …(7)
Rは、電源ラインLVDDおよびコネクタのインピーダンスである。灯具システム100Bの点灯中、アレイ型発光デバイス212の動作電流IOUTは変動する。したがって実施形態1.2では、出力電圧VOUTが安定化され、電源電圧VDDは出力電流IOUTに応じて変動する。
【0118】
期間T1において、補正電圧VCMPが正の値VCMP1に設定される。この期間T1の、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)_1は、
VOUT(REF)_1=(VREF-K2・VCMP1)/K1
となる。K2は負の定数であるから、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)は、
VOUT(REF)_1=(VREF+|K2|・VCMP1)/K1
となり、期間T0の目標値VOUT(REF)_0から、|K2|・VCMP1/K1だけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0119】
期間T2において、補正電圧VCMPをさらに高い値VCMP2に設定すると、この期間T2の、出力電圧VOUTの目標値VOUT(REF)_2は、
VOUT(REF)_2=(VREF-K2・VCMP2)/K1
となり、期間T0の目標値VDD(REF)_0から、|K2|・VCMP2/K1だけ正方向にオフセットさせた電圧となる。
【0120】
以上が灯具システム100Bの動作である。この灯具システム100Bによれば、補正電圧VCMPを応じて、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTを柔軟に設定することができ、ひいてはアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDを柔軟に設定できる。
【0121】
実施形態1.2においても、実施形態1.1で説明した制御例1~4にもとづいて、補正電圧VCMPを生成することができるが、制御例5にもとづいて生成してもよい。なおこの制御例5は、実施形態1.1において採用することもできる。
【0122】
(制御例5)
実施形態1.2において、補正電圧VCMPを、出力電流IOUTに応じて変化させてもよい。実施形態1.2では、電源電圧VDDが一番低くなるとき、言い換えると、出力電流IOUTが最大となるときに、最低動作電圧VDD(MIN)を下回らないように、出力電圧VOUTの目標電圧VOUT(REF)を定める必要がある。この場合、出力電流IOUTが小さい状態で、アレイ型発光デバイス212には過剰な電源電圧VDDが供給されることになる。したがって基本的には、実施形態1.2は、消費電力の観点からは、実施形態1.1に劣っている。そこで、出力電流IOUTに応じて、補正電圧VCMPを適応的に制御し、出力電流IOUTが小さい状況では、出力電圧VOUTが低くなるように、補正電圧VCMPを制御することにより、効率を改善できる。たとえば、電圧設定回路230は、出力電流IOUTを監視し、その平均値にもとづいて補正電圧VCMPを生成してもよい。
【0123】
あるいは、出力電流IOUTの平均値は、ヘッドランプ200Bが形成する配光パターンに応じていると言える。そこで、電圧設定回路230は、配光パターンに応じて、補正電圧VCMPを生成してもよい。
【0124】
実施形態1.1,1.2に関連する変形例を説明する。
【0125】
(変形例1.1)
図11は、変形例1.1に係るヘッドランプ200を示す図である。これまでの説明では、配光可変光源210が1個のアレイ型発光デバイス212を備えることとしたが、配光可変光源210は、複数のアレイ型発光デバイス212を備えてもよい。その場合、電源回路220Aもしくは220B(220と総称する)には、複数のアレイ型発光デバイス212に対応して、複数の電源ユニット222が設けられる。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブルを介して、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子と接続される。また電源ユニット222とアレイ型発光デバイス212のペアごとに、検出ラインを設ければよい。
【0126】
この変形例1.1では、配光可変光源210が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212に分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、アレイ型発光デバイス212と電源ユニット222を電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源210に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0127】
(変形例1.2)
図12は、変形例1.2に係るヘッドランプ200を示す図である。アレイ型発光デバイス212は、内部の複数の発光画素が、複数のセグメントSEG1~SEGnに分割されており、複数のセグメントSEG1~SEGnに対応して、複数の電源端子VDDが設けられてもよい。電源回路220には、複数の電源端子VDDに対応して、複数の電源ユニット222_1~222_nが設けられる。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブル204を介して、アレイ型発光デバイス212の対応する電源端子VDDと接続される。また電源ユニット222ごとに、検出ラインを設ければよい。
【0128】
この変形例1.2においても、配光可変光源210に流れる電流を、複数系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、変形例1.1と同様の効果を得ることができる。
【0129】
(変形例1.3)
電源ユニット222は、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222の出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0130】
(変形例1.4)
電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0131】
(実施形態2)
実施形態2では、上述の課題2に関連する技術を説明する。
【0132】
図13は、実施形態2に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200を備える。
【0133】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200に対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200が形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECUとして構成してもよいし、ヘッドランプ200に内蔵される灯具側のECUとして構成してもよい。
【0134】
ヘッドランプ200は、配光可変光源210、電源回路220、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0135】
配光可変光源210は、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200において、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0136】
より具体的には配光可変光源210は、アレイ型発光デバイス212を備える。アレイ型発光デバイス212は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0137】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0138】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0139】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示する制御信号S2を受信する。
【0140】
電源回路220は、配光可変光源210に電力を供給する。電源回路220は、定電圧出力のコンバータを含み、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、VF+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。VFは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源ユニット222は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0141】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210に対して送信する。たとえばコントロールユニット260は、アレイ型発光デバイス212の複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0142】
続いて電源回路220の構成を説明する。電源回路220は、電源ユニット222を備える。電源ユニット222は、出力端子AP/AN、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、フィードバック回路226、コンバータコントローラ228を備える。
【0143】
出力端子AP/ANは、電源ケーブル204を介してアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。DC/DCコンバータ224の出力は、出力端子AP/ANと接続される。
【0144】
検出端子SNSは、電源ケーブル204と独立した検出ラインLSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続される。
【0145】
フィードバック回路226は、検出端子SNSに生ずる検出電圧VSNSに応じたフィードバック電圧VFBを生成する。
【0146】
コンバータコントローラ228は、フィードバック電圧VFBにもとづいて、DC/DCコンバータ224を制御する。コンバータコントローラ228は、市販のDC/DCコンバータの制御IC(Integrated Circuit)を用いることができる。コンバータコントローラ228は、フィードバックピンFBに入力されたフィードバック電圧VFBが基準電圧VREFに近づくように、パルス幅や周波数、デューティサイクルの少なくともひとつが調節されるパルス信号を生成し、パルス信号に応じてDC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0147】
以上が灯具システム100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0148】
フィードバック回路226の入力インピーダンスは十分に高く、したがって検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって、検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。
【0149】
フィードバック回路226のゲインをKとするとき、フィードバック電圧VFBと検出電圧VSNSの間には以下の関係が成り立つ。
VFB=K×VSNS=K×VDD
【0150】
コンバータコントローラ228において、フィードバックピンに入力されるフィードバック電圧VFBが、基準電圧VREFに近づくようにフィードバック制御が行われるとき、
VREF=K×VDD
が成り立つ。したがって、電源電圧VDDは、VDD(REF)=VREF/Kの目標電圧に安定化される。なお、VDD(REF)は、VDD(MIN)=VF+VSAT+αにもとづいて定められる。つまり電源電圧VDDは、出力電流IOUT、つまり電源ケーブル204やコネクタにおける電圧降下の影響を受けない目標電圧VDD(REF)に安定化される。
【0151】
図14は、
図13の灯具システム100の動作波形図である。長い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの平均値は、ヘッドランプ200が形成する配光に応じて変化する。また短い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの瞬時値は、PWM制御の周期で変動する。
図14には、長いあるいは短い時間スケールで、出力電流I
OUTが変動する様子が示される。
【0152】
電源回路220におけるフィードバック制御の結果、電源電圧VDDは、目標電圧VDD(REF)に安定化される。一方でDC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTは、
VOUT=VDD+VDROP=VDD+R×IOUT
となり、出力電流IOUTに応じて変動する。
【0153】
以上が灯具システム100の動作である。この灯具システム100によれば、電源ケーブル204とは独立した検出ラインLSNSを追加し、検出ラインLSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電源電圧VDDを電源回路220から直接センシング可能としている。これにより、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに、安定した電源電圧VDDを供給できる。DC/DCコンバータ224は、必要以上に高い電圧VOUTを生成する必要がなくなるため、消費電力を削減できる。
【0154】
続いて電源回路220の具体的な構成について、いくつかの実施例にもとづいて説明する。
【0155】
図15は、実施例2.1に係る電源ユニット222Aの回路図である。DC/DCコンバータ224は、降圧コンバータであり、ハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタML、インダクタL1、平滑キャパシタC1を含む。なお、ローサイドトランジスタMLに代えてダイオードを設けてもよい。実施例2.1において、フィードバック回路226のゲインKは1であり、V
FB=V
SNSが成り立つ。したがってフィードバック回路226は単なる配線である。
【0156】
図16は、実施例2.2に係る電源ユニット222Bの回路図である。実施例2.2において、フィードバック回路226は抵抗分圧回路230を含む。フィードバック回路226のゲインKは、抵抗分圧回路230の分圧比であり、以下の式で与えられる。
K=R12/(R11+R12)
この構成によれば、抵抗分圧回路230の分圧比に応じて、電源電圧VDDの目標値V
DD(REF)を設定できる。
【0157】
図17(a)、(b)は、実施例2.3に係る電源ユニット222Cの回路図である。実施例2.3において、フィードバック回路226はアンプAMP1を含む。
図17(b)は、アンプAMP1の回路図である。アンプAMP1は、前段の抵抗分圧回路230と、後段の非反転アンプ232を含む。
【0158】
前段の抵抗分圧回路230のゲインK1は、
K1=R12/(R11+R12)
である。
【0159】
非反転アンプ232は、オペアンプOA2、抵抗R21,R22を含み、そのゲインK2は、
K2=(R21+R22)/R22
である。
【0160】
フィードバック回路226全体のゲインKは、
K=K1×K2=R12/(R11+R12)×(R21+R22)/R22
となる。
【0161】
この構成によれば、2つのゲインK1,K2の組み合わせによって、目標電圧VDD(REF)を設定できる。
【0162】
なお
図17(b)において、前段の抵抗分圧回路230を省略してもよい。この場合のフィードバック回路226のゲインKは、後段の非反転アンプ232のゲインK
2と等しくなる。
【0163】
図18(a)、(b)は、実施例2.4に係る電源ユニット222Dの回路図である。フィードバック回路226は、2つのフィードバックブロック226_1,226_2を含む。フィードバックブロック226_1は、検出電圧V
SNSにもとづく第1フィードバック電圧V
FB1を生成し、フィードバックブロック226_2は、DC/DCコンバータ224の出力電圧V
OUTにもとづく第2フィードバック電圧V
FB2を生成する。フィードバック回路226は、フィードバック電圧V
FB1,V
FB2の一方に応じたフィードバック電圧V
FBをコンバータコントローラ228に供給する。
【0164】
たとえばフィードバック回路226は、セレクタ241と、選択回路240を含む。セレクタ241は、フィードバック電圧VFB1,VFB2のうち、選択回路240が生成する選択信号SELに応じた一方を出力する。
【0165】
選択回路240は、検出ラインLSNSの異常を検出する異常検出回路を含んでもよい。フィードバック回路226は、検出ラインLSNSが正常であるとき、第1フィードバック信号VFB1を選択し、検出ラインLSNSが異常であるとき、第2フィードバック信号VFB2を選択してもよい。検出ラインLSNSにオープンやショートなどの異常が生じている場合には、第2フィードバック電圧VBF2に切り替えることで、アレイ型発光デバイス212の動作を維持できる。
【0166】
図18(b)は、異常検出回路である選択回路240の構成例の回路図である。選択回路240は、分圧回路242および電圧コンパレータ244を含む。分圧回路242は、検出電圧V
SNSを分圧する。電圧コンパレータ244は、分圧後の検出電圧V
SNS’を、しきい値電圧V
THと比較する。V
SNS’>V
THのとき、検出ラインLSNSは正常と判定され、V
SNS’<V
THのとき、検出ラインLSNSはオープン(あるいは地絡)と判定される。
【0167】
電源回路220は、異常を検出した後、第2フィードバック電圧VFB2を利用して、動作し続けてもよい。あるいは、電源回路220は、異常の検出が、所定時間(たとえば1秒)にわたり継続すると、配光可変光源210への電力供給を停止してもよい。この場合は、効率が悪い状態で回路が動作し続けるのを防止できる。
【0168】
このように2つのフィードバック経路を設けることで、灯具システムの堅牢性を高めることができる。
【0169】
あるいは選択回路240は、灯具システム100の動作状況に応じて、フィードバック経路を切り替えてもよい。たとえば、出力電流IOUTが大きい状況では、第1フィードバック電圧VFB1を選択して効率を高めてもよい。反対に、出力電流IOUTが小さく、電圧降下VDROPの影響が小さい状況では、第2フィードバック電圧VFB2を選択してもよい。
【0170】
続いて実施形態2に関連する変形例を説明する。
【0171】
(変形例2.1)
図19は、変形例2.1に係るヘッドランプ200を示す図である。これまでの説明では、配光可変光源210が1個のアレイ型発光デバイス212を備えることとしたが、配光可変光源210は、複数のアレイ型発光デバイス212を備えてもよい。その場合、電源回路220には、複数のアレイ型発光デバイス212に対応して、複数の電源ユニット222が設けられる。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブルを介して、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子と接続される。また電源ユニット222とアレイ型発光デバイス212のペアごとに、検出ラインを設ければよい。
【0172】
この変形例2.1では、配光可変光源210が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212に分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、アレイ型発光デバイス212と電源ユニット222を電源ケーブル204で1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源210に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0173】
(変形例2.2)
図20は、変形例2.2に係るヘッドランプ200を示す図である。アレイ型発光デバイス212は、内部の複数の発光画素が、複数のセグメントSEG1~SEGnに分割されており、複数のセグメントSEG1~SEGnに対応して、複数の電源端子VDDが設けられてもよい。電源回路220には、複数の電源端子VDDに対応して、複数の電源ユニット222_1~222_nが設けられる。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブル204を介して、アレイ型発光デバイス212の対応する電源端子VDDと接続される。また必要に応じて、電源ユニット222ごとに、検出ラインを設ければよい。
【0174】
この変形例2.2においても、配光可変光源210に流れる電流を、複数系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、変形例2.1と同様の効果を得ることができる。
【0175】
(変形例2.3)
電源ユニット222は、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222の出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0176】
(変形例2.4)
電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0177】
(実施形態3)
実施形態3.1、3.2では、上述の課題3に関連する技術を説明する。
【0178】
(実施形態3.1)
図21は、実施形態3.1に係る灯具システム100Aのブロック図である。灯具システム100Aは、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200Aを備える。
【0179】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200Aに対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200Aが形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECU(Electronic Control Unit)として構成してもよいし、ヘッドランプ200Aに内蔵される灯具側のECUとして構成してもよい。
【0180】
ヘッドランプ200Aは、配光可変光源210A、電源回路220、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0181】
配光可変光源210Aは、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200Aにおいて、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0182】
本実施形態において、配光可変光源210Aは、ハイビームとロービームで兼用されており、配光可変光源210Aの出射ビームは、ハイビームの照射領域とロービームの照射領域をカバーしている。配光可変光源210Aに要求される画素数(解像度)がAであるとする。Aは典型的には、数千のオーダーであり、あるいは10000以上であってもよい。本実施形態では、画素数がAである単一のアレイ型発光デバイスを採用せずに、画素数nがAより小さい複数のアレイ型発光デバイスに分割して構成する。つまり配光可変光源210Aは、複数M個(M≧2)のアレイ型発光デバイス212_1~212_Mを備える。つまり、
n×M≧A
の関係が成り立つ。たとえばA≒3000である場合に、M=3,n≒1000としてもよい。より具体的には、アレイ型発光デバイス212は、32×32画素を含んでもよい。
【0183】
各アレイ型発光デバイス212_i(i=1~M)は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0184】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0185】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0186】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示するデータを受信する。
【0187】
電源回路220は、配光可変光源210Aに電力を供給する。上述のように、配光可変光源210Aは、電源端子が独立したM個のアレイ型発光デバイス212_1~212_Mを備えている。電源回路220は、M個のアレイ型発光デバイス212_1~212_Mに対応するM個の電源ユニット222_1~222_Mを備える。そして、i番目の電源ユニット222_iと対応するアレイ型発光デバイス212_iは、個別の接続手段202_iを介して接続されている。各接続手段202は、電源ケーブル204およびコネクタ(あるいはカプラ)206を含む。
【0188】
電源ユニット222_1~222_Mは同様に構成される。各電源ユニット222は定電圧出力のコンバータであり、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、VF+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。VFは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源ユニット222は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0189】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210Aに対して送信する。コントロールユニット260は描画ECUとも称される。たとえばコントロールユニット260は、複数のアレイ型発光デバイス212_1~212_Mそれぞれについて、複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0190】
図22は、
図21の配光可変光源210Aが形成する配光を説明する図である。ここではM=3の場合を例とする。ヘッドランプ200の光学系は、複数のアレイ型発光デバイス212_1~212_3の出射ビームは、水平方向にずれた位置に照射されるように、構成されてもよい。複数のアレイ型発光デバイス212_1~213_3の出射ビームの組み合わせによって、配光パターンが形成される。なお光学系は、反射光学系、透過光学系、それらの組み合わせで構成することができる。
【0191】
以上が灯具システム100Aの構成である。続いてその利点を説明する。この灯具システム100Aによれば、配光可変光源210Aを、総画素数Aを有する単一のアレイ型発光デバイスではなく、それより少ない画素数nを有し、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212_1~212_Mに分割して構成する。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、対応するアレイ型発光デバイス212の出力端子と電源ユニット222を電源ケーブル204で1対1で接続することとした。電源ケーブル204は、電源ユニット222の正極出力OUTPとアレイ型発光デバイス212の電源端子を接続する電源ラインと、電源ユニット222の負極出力OUTNとアレイ型発光デバイス212の接地端子を接続する接地ラインを含んでもよい。なお接地ラインに関しては、M個の系統で共通化してもよい。
【0192】
1個の発光素子213の駆動電流をI
LEDとする。
図2に示すように、単一の電源回路(電源ユニット)によって、配光可変光源210Aに電力を供給する場合、1個の電源回路の出力電流の最大値は、A×I
LEDとなる。
【0193】
これに対して、
図21の灯具システム100Aでは、1個の電源ユニット222の出力電流I
OUTの最大値はI
LED×nとなる。n=A/Mの関係が成り立つから、電源ユニット222の出力電流の最大値は、
図2の構成に比べて1/M倍となる。その結果、電源ユニット222を、許容電流(定格電流)の小さい部品で構成することができるため、電源回路220のコストを下げることができる。
【0194】
通常、ハイビームでは、水平方向に、±15度乃至±20度の照射角度を確保できるようにレンズ光学系(配光)を設計する必要がある。アレイ型発光デバイス212のサイズ(発光面積)を変えずに、光学系だけで照射範囲を広げた設計をすると、光度が損なわれることになる。また結像性も悪くなるため、照射光がボヤけてしまい、照射光の分解能が下がり、画素数を増やして解像度を高めた意味が薄れることになる。本実施形態では、配光を水平方向にM個に分割し、各領域にアレイ型発光デバイス212を割り当てている。これにより、水平方向の照射範囲(角度)を確保すること、法規で定められた光度を確保すること、照射光の分解能の低下を抑制することが可能となる。
【0195】
図23は、
図21の灯具システム100Aのコストを説明する図である。横軸xは、電源ユニットの最大出力電流(定格電流)を、縦軸yはコストを示す。コストyは、出力電流xの関数y=f(x)として表すことができる。この関数f(x)は、1次関数y=a・xよりも高次の関数で近似される。
【0196】
電源回路220全体の最大出力電流をx1とすると、電源回路220を1個の電源ユニット222で構成する場合のコストは、
y1=f(x1)
となる。
【0197】
電源回路220をM個の電源ユニット222で分割構成する場合の、1個の電源ユニット222のコストは、
yM=f(x1/M)
となり、M個の電源ユニット222のコストは、
M×yM=M×f(x1/M)
となる。
【0198】
したがって、
f(x1)>M×f(x1/M)
の関係が成り立てば、電源回路220のコストを下げることができる。言い換えると、分割数Mは、この関係が成り立つように定めればよい。
【0199】
また本実施形態によれば、電源ユニット222の構成部品(パワートランジスタやインダクタ、キャパシタ)に、小さい部品を選定できるため、選択肢が多くなる。もし仮に、コストダウンの効果がそれほど大きくなかったとしても、あるいはコストがわずかに増加したとしても、回路部品の選択肢が増えることは大きなメリットである。
【0200】
灯具システム100Aのさらに別の利点は、比較技術との対比によって明確となる。
図24は、比較技術に係るランプ200Rのブロック図である。この比較技術では、電源回路220Rが、3個の電源ユニット222_1~222_3に分割構成されるが、それらの出力端子は、電源回路220Rの基板において共通に接続されており、電源回路220Rと配光可変光源210Aの間は、1本の電源ケーブル204およびコネクタ206で接続されている。
【0201】
この比較技術では、電源回路220のコストは、実施形態3.1と同様に下げることができるが、電源ケーブル204に流れる最大電流はA×ILEDとなる。A×ILED=30Aとすると、30Aの電流に耐えうるケーブルを選定する必要がある。そのようなケーブルは非常に太く、またコストが高い。これに対して、実施形態3.1に係る灯具システム100Aでは、1本の電源ケーブルに流れる電流も1/M倍となり、相対的に細くて、取り回しが容易なケーブルを選定することができる。
【0202】
ケーブルのコストに関しても、電源回路と同様の検討が可能である。すなわち電流xとケーブルのコストyの間に、y=g(x)の関係が成り立つとする。この場合、
g(x1)>M×g(x1/M)
の関係が成り立つとき、ケーブルの本数がM本に増えたとしても、ケーブル全体のコストを下げることが可能である。
【0203】
また実施形態3.1に係るヘッドランプ200Aは、比較技術に比べて以下の利点を有する。比較技術では、電源回路220から見たときに、複数のアレイ型発光デバイス212_1~212_3は単一の負荷回路となる。したがって、電源回路220では、1系統のフィードバックループによって、配光可変光源210Aへの供給電圧をフィードバック制御することとなる。
【0204】
これに対して、
図21のヘッドランプ200Aでは、電源ユニット222_1~222_Mに対して、アレイ型発光デバイス212_1~212_Mが独立した負荷として存在する。ADBランプにおいて、複数のアレイ型発光デバイス212は、配光の異なるエリアに対応付けられるため、複数のアレイ型発光デバイス212の負荷率(オン画素の比率)、言い換えると電源電流I
OUTは、独立して変動する。したがって電源ユニット222ごとに、独立したフィードバックループを形成することにより、比較技術に比べて、より高速な負荷応答性(ロードレギュレーション)を実現できる。
【0205】
続いて、電源ユニット222の構成例を説明する。
図25(a)、(b)は、1個の電源ユニット222_iの構成例を示す回路図である。
図25(a)の電源ユニット222_iは、シングルフェーズの降圧コンバータ(出力回路)224と、フィードバック回路226、コントロール回路228を含む。フィードバック回路226は、電源ユニット222_iの出力電圧V
OUTiに応じたフィードバック信号V
FBiを生成する。コントロール回路228は、フィードバック信号V
FBiが目標電圧V
REFに近づくように、降圧コンバータの出力回路224を制御する。
【0206】
フィードバック信号VFBiは、出力電圧VOUTiを分圧した電圧であってもよいし、分圧した電圧を補正して得られる信号であってもよい。
【0207】
あるいはフィードバック信号VFBiは、アレイ型発光デバイス212_iの電源端子の電圧VDDを分圧した電圧であってもよいし、それを補正した信号であってもよい。アレイ型発光デバイス212_iの電源端子の電圧を直接監視することにより、電源ケーブル204_iの電圧降下の影響を取り除いた制御が可能となる。
【0208】
電源ユニット222_iは、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。
図25(b)の電源ユニット222_iは、デュアルフェーズの降圧コンバータ(出力回路)224と、フィードバック回路226、コントロール回路228を含む。
【0209】
コントロール回路228は、フィードバック信号VFBiが目標電圧に近づくように、2系統のスイッチング回路SWA,SWBを、180度の位相差で制御する。
【0210】
フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222_iの出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0211】
なお、フェーズ数は2に限定されず、3フェーズ、4フェーズ、6フェーズなどの形式を採用してもよい。
【0212】
続いて実施形態3.1に関連する変形例を説明する。上述の説明では、アレイ型発光デバイス212_1~212_Mが同じ画素数を有していたが、その限りでなく、アレイ型発光デバイス212ごとに画素数が異なっていてもよい。
【0213】
(実施形態3.2)
図26は、実施形態3.2に係る灯具システム100Bのブロック図である。灯具システム100Bの構成について、
図21の灯具システム100Aとの相違点を説明する。実施形態3.1では、配光可変光源210Aは、画素数nが、必要画素数Aの1/M倍であるアレイ型発光デバイス212を、M個含んでいた。これに対して、実施形態3.2において、配光可変光源210Bは、画素数がAであるアレイ型発光デバイス211を1個、備える。
【0214】
アレイ型発光デバイス211は、A個(=M×n)の画素回路PIXおよびインタフェース回路216を備える。画素回路PIXの構成は、
図21と同様であり、直列に接続された発光素子と電流源を含む。A個の画素回路PIXは、M個のセグメントSEG1~SEGMに分割して構成されており、セグメントSEG1~SEGMごとに、独立した電源端子VDD1~VDDMを備える。アレイ型発光デバイス211は、複数のセグメントSEG1~SEGMごとに独立した接地端子GND1~GNDMを有してもよいし、共通化されたひとつの接地端子を有してもよい。
【0215】
図27(a)~(c)は、アレイ型発光デバイス211のセグメントの分割を説明する図である。
図27(a)では、セグメント数Mは3であり、複数のセグメントSEG1~SEG3の出射ビームは、水平方向に異なる位置に照射される。水平方向に分割することの利点は上述した通りである。
【0216】
図27(b)では、セグメント数Mは3であり、複数のセグメントSEG1~SEG3の出射ビームは、垂直方向に異なる範囲に照射される。垂直方向に分割した場合、
図27(a)と同様の効果が、垂直方向に関して得られる。加えて、一番下側のセグメントの配光をロービーム領域に対応させることで、ロービームのカットライン配光を形成できるという効果が得られる。従来のカットライン形成は、光源とレンズとの間にシェードという遮光版を設け、物理的に光を遮って形成しており、さらにカットラインは左右の
ヘッドランプで180度対称形状であり、シェードは右用と左用の2種類が必要であった。これがLEDピクセルの点消灯制御でカットライン形成できればシェード部品を削減できます。また、制御コントローラからの設定だけで、左右のカットラインの形状切り替えが容易になり。さらに、車両走行のコーナリングに合わせてカットラインの形状を変化させることで電子スイブル機能の実現も可能となる。
【0217】
図27(c)では、セグメント数Mは4であり、複数のセグメントSEG1~SEG4の出射ビームは、水平方向および垂直方向に関して、異なる位置に照射される。実施形態3.2によれば、実施形態3.1と同様の効果を得ることができる。
【0218】
続いて、実施形態3.1,3.2に関連する変形例を説明する。
【0219】
(変形例3.1)
実施形態3.1,3.2では、電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0220】
(変形例3.2)
実施形態3.1と3.2を組み合わせた構成も、本発明の一形態として有効である。すなわち、配光可変光源210は、L個のアレイ型発光デバイス211を備えてもよい。アレイ型発光デバイス211は、内部が複数K個のセグメントに分割され、セグメントごとに電源端子を有する。この場合において、電源回路220を、L×K個の電源ユニット222で構成してもよい。
【0221】
(実施形態4)
実施形態4.1、4.2では、上述の課題4に関連する技術を説明する。
【0222】
(実施形態4.1)
図28は、実施形態4.1に係る灯具システム100Aのブロック図である。灯具システム100Aは、ADBランプシステムであり、バッテリ102、上位コントローラ104およびヘッドランプ200Aを備える。
【0223】
上位コントローラ104は、ヘッドランプ200に対する配光指令を生成する。配光指令は、点灯指令と追加情報を含みうる。点灯指令は、ハイビームやロービームのオン、オフを指示する信号を含みうる。点灯指令に応じて、ヘッドランプ200が形成すべき基本配光が決定される。また追加情報は、ハイビームを照射すべきでない範囲(遮光領域)に関するデータや、車速、ステアリング角などの情報を含みうる。追加情報に応じて、基本配光が修正され、最終的な配光が決定される。上位コントローラ104は、車両側のECUとして構成してもよいし、ヘッドランプ200に内蔵される灯具側のECUとして構成してもよい。
【0224】
ヘッドランプ200Aは、配光可変光源210、電源回路220、コントロールユニット260を備えるADBランプである。
【0225】
配光可変光源210は、アレイ状に配置される複数の画素を備え、画素毎にオン、オフが個別制御可能となっている。ヘッドランプ200において、所望の配光が得られるように、複数の画素のオン、オフが制御される。
【0226】
より具体的には配光可変光源210は、アレイ型発光デバイス212を備える。アレイ型発光デバイス212は、n個の画素回路PIX1~PIXnと、複数の画素回路PIX1~PIXnと接続される電源端子VDDと、を有する。
【0227】
画素回路PIXj(1≦j≦n)は、電源端子VDDと接地端子(接地ライン)GNDの間に直列に設けられる発光素子213_jおよび電流源214_jを含む。複数の発光素子213_1~213_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0228】
複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、j番目の電流源214_jがオンのとき、対応する発光素子213_jが発光し、その画素回路PIXjが点灯状態となる。
【0229】
インタフェース回路216は、コントロールユニット260からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216は、コントロールユニット260と高速シリアルインタフェースを介して接続され、全画素のオン、オフを指示する制御信号S2を受信する。
【0230】
電源回路220は、配光可変光源210に電力を供給する。電源回路220は、定電圧出力のコンバータを含み、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに対して、安定化された電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、VF+VSATにもとづいて定められ、典型的には4~5V程度である。VFは発光素子213の順方向電圧、VSATは電流源214の最低動作電圧である。したがって電源ユニット222は、12V(あるいは24V)程度のバッテリ電圧VBATを降圧する降圧コンバータ(Buckコンバータ)で構成することができる。
【0231】
コントロールユニット260は、上位コントローラ104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、配光可変光源210に対して送信する。たとえばコントロールユニット260は、アレイ型発光デバイス212の複数の画素回路PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0232】
続いて電源回路220の構成を説明する。電源回路220は、電源ユニット222を備える。電源ユニット222は、出力端子AP/AN、検出端子SNS、DC/DCコンバータ224、コンバータコントローラ228を備える。
【0233】
出力端子AP/ANは、電源ケーブル204を介してアレイ型発光デバイス212の電源端子VDDおよび接地端子GNDと接続される。電源ケーブル204は、電源ラインLVDDと接地ラインLGNDを含む。DC/DCコンバータ224の正極出力は、出力端子AP、電源ラインLVDDを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続され、DC/DCコンバータ224の負極出力は、出力端子AN、接地ラインLGNDを介して、アレイ型発光デバイス212の接地端子GNDと接続される。
【0234】
検出端子SNSは、電源ケーブル204と独立した検出ラインLSNSを介して、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDと接続されるジカ線である。
【0235】
コンバータコントローラ228は、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBにもとづいて、DC/DCコンバータ224を制御する。フィードバック電圧VFBは、出力電圧VOUTそのものであってもよいし、出力電圧VOUTを分圧した電圧であってもよいし、出力電圧VOUTを補正した電圧であってもよい。
【0236】
コンバータコントローラ228は、市販のDC/DCコンバータの制御IC(Integrated Circuit)を用いることができる。コンバータコントローラ228は、フィードバックピンFBに入力されたフィードバック電圧VFBが基準電圧VREFに近づくように、パルス幅や周波数、デューティサイクルの少なくともひとつが調節されるパルス信号を生成し、パルス信号に応じてDC/DCコンバータ224をフィードバック制御する。
【0237】
またコンバータコントローラ228は、イネーブルピンENを有してもよい。コンバータコントローラ228は、イネーブルピンENに入力されるイネーブル信号がアサート(たとえばハイレベル)されるとき、イネーブル状態となり、DC/DCコンバータ224に出力電圧VOUTを発生させる。コンバータコントローラ228は、イネーブルピンENのイネーブル信号がネゲートされるとき(たとえばローレベル)、ディセーブル状態となり、DC/DCコンバータ224の動作を停止する。
【0238】
監視回路250は、少なくとも検出端子SNSの検出電圧VSNSにもとづいて、電源ケーブル204の電気的状態を検出する。監視回路250の入力インピーダンスは十分に高く、したがって検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって、検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。
【0239】
本実施形態において、監視回路250は、DC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTと検出電圧VSNSにもとづいて、電源ケーブル204の異常を検出可能に構成される。電源ケーブル204の異常には、電源ケーブル204の断線、コネクタの外れ、電源ケーブル204の地絡や天絡が含まれうる。
【0240】
より詳しくは、監視回路250は、出力電圧VOUTと検出電圧VSNSの差分ΔVと、所定のしきい値VTHの比較結果にもとづいて、電源ケーブル204の異常を検出する。具体的には、ΔV<VTHのとき正常、ΔV>VTHのとき異常と判定される。
【0241】
監視回路250は、電源ケーブル204が正常であるとき、コンバータコントローラ228のイネーブルピンENのイネーブル信号をアサートし、電源ケーブル204が異常であるとき、コンバータコントローラ228のイネーブルピンENのイネーブル信号をネゲートする。
【0242】
以上が灯具システム100Aの動作である。続いてその動作を説明する。
図29は、
図28の灯具システム100Aの動作波形図である。DC/DCコンバータ224の出力電圧V
OUTは、その目標電圧V
OUT(REF)に安定化されている。
【0243】
時刻t0より前、灯具システム100Aは消灯している。この状態では、アレイ型発光デバイス212の全画素はオフであるから、出力電流IOUTは実質的にゼロである。このとき電源ケーブル204の電圧降下は0となるから、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDは、出力電圧VOUTと等しい。
【0244】
時刻t
0以降、灯具システム100Aが点灯すると、アレイ型発光デバイス212に電流I
OUTが流れる。長い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの平均値は、ヘッドランプ200が形成する配光に応じて変化する。また短い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの瞬時値は、PWM制御の周期で変動する。
図29には、長いあるいは短い時間スケールで、出力電流I
OUTが変動する様子が示される。
【0245】
アレイ型発光デバイス212の電源電圧VDDは、電源回路220の出力電圧VOUTよりも、電源ラインLVDDで生ずる電圧降下VDROP分、低い電圧となり、出力電流IOUTに応じて変動する。
VDD=VOUT-VDROP=VOUT-R×IOUT
Rは、電源ラインLVDDのインピーダンスである。なおここでは理解の容易化のため、接地ラインLGNDの電圧降下は無視することとする。
【0246】
時刻t1に、電源ラインLVDDが断線したとする。そうすると、アレイ型発光デバイス212の電源電圧VDDは、0Vに低下する。
【0247】
監視回路250の入力インピーダンスは十分に高く、したがって検出ラインLSNSには電流は流れない。したがって、検出電圧VSNSは、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDと等しい。したがって監視回路250が監視する電位差ΔV=VOUT-VSNSは、電源ラインLVDDの電圧降下VDROPに対応する。
【0248】
電源ケーブル204が正常である時刻t1より前において、電位差ΔVは、出力電流IOUTに比例する。ところが、電源ラインLVDDが断線し、あるいはコネクタが外れると、検出電圧VSNSは0Vに低下する。その結果、電位差ΔVがしきい値VTHを超える。監視回路250は、ΔV>VTHの状態が、所定の判定時間τDET持続すると、時刻t2に、電源ラインLVDDの断線と判定してもよい。
【0249】
監視回路250は、電源ラインLVDDの断線を検出すると、イネーブル信号ENをローレベルに変化させる。その結果、電源ユニット222が停止し、出力電圧VOUTが0Vに低下し、灯具システム100Aの動作が停止する。
【0250】
以上が灯具システム100Aの動作である。この灯具システム100Aによれば、検出ラインLSNSによって、電源回路220から、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDの電圧VDDを監視することにより、電源ケーブル204の断線やコネクタ外れ等の電気的状態を検出できる。
【0251】
続いて監視回路250の構成例を説明する。
【0252】
図30は、監視回路250の構成例を示す回路図である。この構成例において、監視回路250は、抵抗R11,R12,R21,R22およびマイクロコントローラ251を含む。抵抗R11,R12は、検出電圧V
SNSを分圧する。抵抗R21,R22は、出力電圧V
OUTを分圧する。分圧後の電圧V
SNS’,V
OUT’は、マイクロコントローラ251のアナログ入力ピンAN1,AN2に入力される。
【0253】
マイクロコントローラ251は、マルチプレクサ252、A/Dコンバータ254、プロセッサ256を含む。マルチプレクサ252は、複数のアナログ入力ピンAN1,AN2の電圧を順に選択する。A/Dコンバータ254は、マルチプレクサ252が選択した電圧を、デジタル信号に変換する。プロセッサ256には、電圧VSNS’、VOUT’をサンプリングして量子化したデジタル値D1,D2が入力される。プロセッサ256は、ソフトウェアプログラムを実行し、二つのデジタル値D1,D2の差分ΔDを生成する。この差分は、上述の電位差ΔVに相当する。そしてデジタル値の差分ΔDを、所定のしきい値THと比較し、ΔD>THの状態が、所定時間τDETにわたり持続すると、電源ラインLVDDの断線と判定する。プロセッサ256は、汎用出力ピンGPIOから、判定結果にもとづくイネーブル信号ENを出力する。このように、監視回路250の機能は、監視マイコンに実装することができる。
【0254】
図31は、監視回路250の別の構成例を示す回路図である。この構成例では、監視回路250は、アナログ回路で実装される。アンプAMP1は、V
SNS’とV
OUT’の差分を増幅し、電位差ΔVに比例した信号を生成する。コンパレータCMP1は、電位差に応じた信号を、しきい値電圧V
THと比較する。タイマー回路253は、コンパレータCMP1の出力が、所定時間τ
DETに渡り、ΔV>V
THを示すとき、イネーブル信号ENをローに切り替える。
【0255】
(実施形態4.2)
図32は、実施形態4.2に係る灯具システム100Bのブロック図である。電源ユニット222は、
図28の電源ユニット222に加えて、フィードバック回路226をさらに備える。フィードバック回路226は、検出端子SNSの検出電圧V
SNSに応じたフィードバック電圧V
FBを生成し、コンバータコントローラ228のフィードバックピンに入力する。その他については
図28と同様である。
【0256】
続いてその動作を説明する。フィードバック回路226のゲインをKとするとき、フィードバック電圧VFBと検出電圧VSNSの間には以下の関係が成り立つ。
VFB=K×VSNS=K×VDD
【0257】
コンバータコントローラ228において、フィードバックピンに入力されるフィードバック電圧VFBが、基準電圧VREFに近づくようにフィードバック制御が行われるとき、
VREF=K×VDD
が成り立つ。したがって、電源電圧VDDは、VDD(REF)=VREF/Kの目標電圧に安定化される。なお、VDD(REF)は、VDD(MIN)=VF+VSAT+αにもとづいて定められる。つまり電源電圧VDDは、出力電流IOUT、つまり電源ラインLVDDやコネクタにおける電圧降下の影響を受けない目標電圧VDD(REF)に安定化される。
【0258】
図33は、
図32の灯具システム100Bの動作波形図である。長い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの平均値は、ヘッドランプ200が形成する配光に応じて変化する。また短い時間スケールでみると、出力電流I
OUTの瞬時値は、PWM制御の周期で変動する。
図33には、長いあるいは短い時間スケールで、出力電流I
OUTが変動する様子が示される。
【0259】
電源回路220におけるフィードバック制御の結果、電源電圧VDDは、目標電圧VDD(REF)に安定化される。一方でDC/DCコンバータ224の出力電圧VOUTは、
VOUT=VDD+VDROP=VDD+R×IOUT
となり、出力電流IOUTに応じて変動する。
【0260】
以上が灯具システム100Bの動作である。この灯具システム100Bによれば、アレイ型発光デバイス212の電源端子VDDに、安定した電源電圧VDDを供給できる。DC/DCコンバータ224は、必要以上に高い電圧VOUTを生成する必要がなくなるため、消費電力を削減できる。
【0261】
時刻t3に、電源ラインLVDDが断線すると、電源電圧VDDが0Vに低下する。このとき、フィードバック制御が無効になるため、出力電圧VOUTは、元の目標電圧VOUT(REF)を維持するか、それより高い電圧レベルに変化する。したがって、断線状態では、ΔV(=VOUT-VSNS)>VTHとなり、監視回路250によって検出できる。ΔV>VTHの状態が判定時間τDET持続すると、時刻t4にDC/DCコンバータ224がディセーブルとなり、出力電圧VOUTが0Vとなる。
【0262】
実施形態4.1,4.2に関連する変形例を説明する。
【0263】
(変形例4.1)
図34は、変形例4.1に係るヘッドランプ200を示す図である。これまでの説明では、配光可変光源210が1個のアレイ型発光デバイス212を備えることとしたが、配光可変光源210は、複数のアレイ型発光デバイス212を備えてもよい。その場合、電源回路220には、複数のアレイ型発光デバイス212に対応して、複数の電源ユニット222が設けられる。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブルを介して、対応するアレイ型発光デバイス212の電源端子と接続される。また電源ユニット222とアレイ型発光デバイス212のペアごとに、検出ラインを設ければよい。
【0264】
この変形例4.1では、配光可変光源210が、電源端子が独立した複数のアレイ型発光デバイス212に分割して構成される。そして、アレイ型発光デバイス212ごとに電源ユニット222を設け、アレイ型発光デバイス212と電源ユニット222を電源ケーブルで1対1で接続することとしている。これにより、配光可変光源210に流れる電流を、複数の系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、各DC/DCコンバータにおける電圧降下の影響を小さくでき、負荷応答性を改善できる。加えてDC/DCコンバータの構成部品、電源ケーブル、コネクタの選択肢が多くなり、設計の自由度が高くなる。
【0265】
(変形例4.2)
図35は、変形例4.2に係るヘッドランプ200を示す図である。アレイ型発光デバイス212は、内部の複数の発光画素が、複数のセグメントSEG1~SEGnに分割されており、複数のセグメントSEG1~SEGnに対応して、複数の電源端子VDDが設けられてもよい。電源回路220には、複数の電源端子VDDに対応して、複数の電源ユニット222_1~222_nが設けられる。各電源ユニット222の出力端子は、個別の電源ケーブル204を介して、アレイ型発光デバイス212の対応する電源端子VDDと接続される。また必要に応じて、電源ユニット222ごとに、検出ラインを設ければよい。
【0266】
この変形例4.2においても、配光可変光源210に流れる電流を、複数系統のDC/DCコンバータに分散させることができ、変形例4.1と同様の効果を得ることができる。
【0267】
(変形例4.3)
電源ユニット222は、フェーズシフト型のコンバータで構成してもよい。フェーズシフト型のコンバータを採用することで、シングルフェーズのコンバータに比べて、出力電圧VOUTiや出力電流IOUTiのリップルを小さくでき、また効率を改善できる。さらに、アレイ型発光デバイス212の画素回路においてPWM制御が行われる場合、電源ユニット222の出力電流IOUTiは複数の画素回路の点灯率に応じて高速に変動するところ、フェーズシフト型コンバータを採用することで、負荷変動に対する追従性(応答性)を高めることができる。
【0268】
(変形例4.4)
電源回路220やコントロールユニット260が、ヘッドランプ200に内蔵される場合を説明したが、それらの一方、あるいは両方は、ヘッドランプ200のボディの外側に設けられてもよい。配光可変光源210は発熱体であるため、熱を忌避するコントロールユニット260は、配光可変光源210から遠ざけて車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0269】
(変形例4.5)
監視回路250は、検出電圧VSNSのみにもとづいて、電源ラインLVDDの断線を検出してもよい。たとえば監視回路250は、イネーブル信号ENがイネーブルの状態において、検出電圧VSNSが、0V付近に定めたしきい値VTHより低い状態が、所定時間持続すると、電源ラインLVDDの異常と判定してもよい。
【0270】
(変形例4.6)
監視回路250は、出力電圧VOUTおよび検出電圧VSNSの差分ΔVにもとづいて、電源ラインLVDDのインピーダンスRを取得してもよい。上述のように、電位差ΔVは、電源ラインLVDDにおける電圧降下VDROPに相当するから、R×IOUTに比例する。そこで、電位差ΔVを、出力電流IOUTで除算することにより、インピーダンスRを取得することができる。
【0271】
たとえば
図30で示すように監視回路250をマイクロコントローラで実装する場合、監視回路250のアナログ入力ピンAN3に、出力電流I
OUTの検出信号を入力すればよい。そしてA/Dコンバータ254によって、出力電流I
OUTの検出値D3を生成し、(D1-D2)/D3によって、インピーダンスRを計算することができる。
【0272】
あるいは、既知の出力電流IOUT(たとえば最大電流IOUT(MAX))が流れるタイミングや期間が存在する場合には、そのタイミングあるいは期間に取得した差分ΔD=D1-D2にもとづいてインピーダンスRを取得すればよい。この場合、出力電流IOUTをセンスする必要はなくなる。
【0273】
実施形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0274】
本発明は、車両用灯具に関する。
【符号の説明】
【0275】
100 灯具システム
102 バッテリ
104 上位コントローラ
200 ヘッドランプ
204 電源ケーブル
210 配光可変光源
212 アレイ型発光デバイス
PIX 画素回路
213 発光素子
214 電流源
216 インタフェース回路
220 電源回路
222 電源ユニット
224 DC/DCコンバータ
226 フィードバック回路
228 コンバータコントローラ
230 電圧設定回路
232 マイクロコントローラ
234 D/Aコンバータ
236 バッファ
260 コントロールユニット
230 抵抗分圧回路
240 選択回路
241 セレクタ
242 分圧回路
244 電圧コンパレータ
250 監視回路
251 マイクロコントローラ
252 マルチプレクサ
254 A/Dコンバータ
256 プロセッサ