(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】ユーティリティビークルおよびそれを備えたシステム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240904BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240904BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/16 C
G08G5/00 A
(21)【出願番号】P 2022527411
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021166
(87)【国際公開番号】W WO2021240743
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】長坂 和哉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 敦司
(72)【発明者】
【氏名】市川 和宏
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-078950(JP,A)
【文献】特開2008-117132(JP,A)
【文献】特開2018-111340(JP,A)
【文献】特開2019-016076(JP,A)
【文献】特開2006-011596(JP,A)
【文献】特開2008-090861(JP,A)
【文献】特開2019-184247(JP,A)
【文献】特開2012-215959(JP,A)
【文献】特開2018-139720(JP,A)
【文献】特開2001-320538(JP,A)
【文献】特開平05-108930(JP,A)
【文献】特表2020-502675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/16
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪と、前記前輪に設けられた操舵装置と、前記前輪および/または前記後輪を駆動する駆動源と、を含む走行装置と、
所定の走行領域において有人操作を要しない自律走行を行うように、前記走行装置を制御する制御装置と、
前記自律走行の走行経路を設定する経路設定装置と、
自車位置を検知する自車位置検知部と、を備え、
前記制御装置は、前記自律走行時において、前記走行領域における監視対象を検知するための対象検知部が前記監視対象を検知した場合に、前記監視対象に対して所定の警戒動作を行うとともに、前記監視対象の位置の履歴を記憶し、
前記経路設定装置は、前記監視対象を過去に検知した位置を基準点に設定し、予め定められた初期走行経路のうち、前記基準点に基づいて設定される一部領域
である警戒走行領域において所定の警戒走行を行うように、
前記警戒走行領域における走行経路を前記初期走行経路とは異なる警戒走行経路に変更し、前記所定の走行領域において複数の前記警戒走行領域が含まれる場合に、前記複数の警戒走行領域において設定された複数の前記警戒走行経路の間を、前記初期走行経路の警戒走行領域以外の部分で繋ぐことにより、前記走行経路を設定する、ユーティリティビークル。
【請求項2】
前記経路設定装置は、予め定められた初期走行経路のうち、前記基準点に基づいて設定される一部領域において所定の警戒走行を行うように、前記一部領域における走行経路を、前記初期走行経路に比べて走行距離が長くなるように変更することにより、前記走行経路を設定する、請求項1に記載のユーティリティビークル。
【請求項3】
前記経路設定装置は、前記基準点を通り、かつ、前記走行領域内を所定の論理で走行するように前記走行経路を設定する、請求項1に記載のユーティリティビークル。
【請求項4】
前記経路設定装置は、前記基準点が複数ある場合、前記基準点が新しいほど前記走行経路設定のための重要度を高く設定し、前記重要度に応じて前記基準点近傍における前記走行経路の設定態様が異なるようにする、請求項1から3の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項5】
前記経路設定装置は、前記基準点が複数ある場合、前記複数の基準点が多く存在する一部領域において前記走行経路設定のための重要度を高く設定し、前記重要度に応じて前記基準点近傍における前記走行経路の設定態様が異なるようにする、請求項1から4の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項6】
前記走行領域における監視対象を検知する無人航空機からの検知データを受信するデータ受信部を備え、
前記経路設定装置は、前記無人航空機が検知した監視対象の位置を前記基準点に加え、前記無人航空機が検知した監視対象の位置を優先的に走行するような前記走行経路を設定する、請求項1から5の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項7】
前記警戒動作は、検知された前記監視対象に対する威嚇動作または外部への通報動作を含む、請求項1から6の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項8】
前記警戒動作は、データ収集動作を含み、
前記データ収集動作で収集されるデータは、前記監視対象を検知したときの検知日時または検知時の環境に関するデータを含む、請求項1から7の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項9】
前記警戒動作は、データ収集動作を含み、
前記データ収集動作で収集されるデータは、検知した前記監視対象の種類、大きさまたは移動速度に関するデータを含む、請求項1から8の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項10】
前記経路設定装置は、前記監視対象
とともに所定の識別子を検知した場合、検知した位置を前記基準点に設定しないようにする、請求項1から9の何れかに記載のユーティリティビークル。
【請求項11】
ヘッドランプおよびホーンを備え、
前記制御装置は、前記警戒動作として、前記ヘッドランプを点灯させる、または、前記ホーンを鳴らす、請求項7に記載のユーティリティビークル。
【請求項12】
ユーティリティビークルと、
対象検知部と、を備えたシステムであって、
前記ユーティリティビークルは、
前輪および後輪と、前記前輪に設けられた操舵装置と、前記前輪および/または前記後輪を駆動する駆動源と、を含む走行装置と、
所定の走行領域において有人操作を要しない自律走行を行うように、前記走行装置を制御する制御装置と、
前記自律走行の走行経路を設定する経路設定装置と、
自車位置を検知する自車位置検知部と、を備え、
前記対象検知部は、前記走行領域における監視対象を検知し、
前記制御装置は、前記自律走行時において、前記対象検知部が前記監視対象を検知した場合に、前記監視対象に対して所定の警戒動作を行うとともに、前記監視対象の位置の履歴を記憶し、
前記経路設定装置は、前記監視対象を過去に検知した位置を基準点に設定し、予め定められた初期走行経路のうち、前記基準点に基づいて設定される一部領域
である警戒走行領域において所定の警戒走行を行うように、
前記警戒走行領域における走行経路を前記初期走行経路とは異なる警戒走行経路に変更し、前記所定の走行領域において複数の前記警戒走行領域が含まれる場合に、前記複数の警戒走行領域において設定された複数の前記警戒走行経路の間を、前記初期走行経路の警戒走行領域以外の部分で繋ぐことにより、前記走行経路を設定する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーティリティビークルおよびそれを備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
不整地等を走行可能なユーティリティビークルは、例えば、農作物等の運搬作業や、敷地内の監視作業等に利用される。このような作業は、予め定められた走行経路を走行し、定期的に繰り返し行われることが想定される。
【0003】
また、近年、自動車において自律運転を行うための種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、予め定められた走行経路を自律運転車両が走行するシステムが開示されている。これによれば、予め定められた走行経路の走行において有人操作を不要とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の自律運転車両を、所定の走行領域を巡回警備する警備車両として用いることを考えた場合に、改善の余地がある。例えば、上記特許文献1のような自律運転車両では、上記の通り走行経路が予め定められている。このように予め定められた走行経路を走行させる場合、走行領域を満遍なく監視することはできるが、走行領域において重点的に警備する箇所が点在する場合、効率が悪化する。
【0006】
そこで、本開示は、所定の走行領域を効率よく監視することができるユーティリティビークルおよびそれを備えたシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るユーティリティビークルは、前輪および後輪と、前記前輪に設けられた操舵装置と、前記前輪および/または前記後輪を駆動する駆動源と、を含む走行装置と、所定の走行領域において有人操作を要しない自律走行を行うように、前記走行装置を制御する制御装置と、前記自律走行の走行経路を設定する経路設定装置と、自車位置を検知する自車位置検知部と、車両に設けられ、前記走行領域における監視対象を検知するための対象検知部と、を備え、前記制御装置は、前記自律走行時において、前記監視対象を検知した場合に、前記監視対象の位置の履歴を記憶し、前記経路設定装置は、前記監視対象を過去に検知した位置を基準点に設定し、前記基準点に基づいて前記走行経路を設定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ユーティリティビークルの自律走行時に監視対象を検知した位置の履歴に基づいてユーティリティビークルの走行経路が設定される。このため、自律走行において、過去に監視対象を検知した位置を重点的に監視するような走行経路の設定が可能となる。したがって、所定の走行領域を効率よく監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施の形態におけるユーティリティビークルを示す概略左側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すユーティリティビークルの制御系の概略を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態におけるユーティリティビークルの走行領域における経路設定の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態におけるユーティリティビークルの走行領域における経路設定の他の例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態の変形例におけるユーティリティビークルを示す概略左側面図である。
【
図6】
図6は、本変形例におけるユーティリティビークルの走行領域における経路設定の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。全図を通じて、同一のまたは対応する要素には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0011】
(車両の構成)
図1は、一実施の形態におけるユーティリティビークルを示す概略左側面図である。
図1に示すユーティリティビークル1(以下、単に車両1と称する)は、左右一対の前輪2と左右一対の後輪3とを備える。前輪2および後輪3は、車体フレーム4を支持している。車体フレーム4は、複数のパイプを互いに接続してなるパイプフレームである。
【0012】
車体フレーム4は、前列シート5Aおよび後列シート5Bを支持している。前列シート5Aは、運転席を含む。なお、座席は2列に限られず1列でもよい。車体フレーム4は、前列シート5Aおよび後列シート5Bを含む乗員空間Cを取り囲むように構成されている。すなわち、乗員空間Cは、車体フレーム4によって区画される。乗員空間C(前列シート5A)の前方には、ボンネット6が配置されている。ボンネット6は、車体フレーム4の前部に支持され、左右の前輪2の間のスペースを上方から開閉可能に覆っている。
【0013】
前列シート5Aの側方には、前列サイドドア7Aが設けられ、後列シート5Bの側方には、後列サイドドア7Bが設けられる。これらのサイドドア7A,7Bは、車体フレーム4に支持されている。各サイドドア7A,7Bは、車体フレーム4に対して、それぞれ前端部に設けられた回動軸回りに回動することにより、開閉する。これにより、乗員の車両1への乗り降りが可能となる。なお、
図1においてサイドドア7A,7Bは、その内側(乗員空間C側)が透過するように示されている。
【0014】
乗員空間C(後列シート5B)の後方には、荷台8が配置されている。車体フレーム4の後部は、荷台8を支持している。荷台8の下方には、車体フレーム4に支持された駆動源9が配置されている。駆動源9は例えばエンジンである。これに代えて、駆動源9は電気モータまたはエンジンと電気モータとの組み合わせであってもよい。駆動源9は、駆動輪(前輪2および/または後輪3)を駆動する。
【0015】
運転席の前方かつ下方(運転者の足元領域)には、アクセルペダルおよびブレーキペダルを含む第1操作子10が設けられる。アクセルペダルを操作することにより駆動源9の駆動力が変化する。前輪2および後輪3には、図示しないブレーキ装置が設けられ、ブレーキペダルを操作することにより車両1が減速する。このように、第1操作子10は、車両1を加減速させるための操作子として構成される。
【0016】
前輪2には操舵装置11が設けられる。また、前列シート5Aのうちの運転席の前方には、第2操作子としてハンドル12が設けられる。ハンドル12は、操舵装置11に接続されており、ハンドル12への操作に応じて操舵装置11が動作し、前輪2を操舵する。このように、第2操作子は、車両1を方向転換させるための操作子として構成される。
【0017】
さらに、車両1には、駆動源9と駆動輪との間に接続される変速装置(図示せず)を備えている。変速装置は、図示しない変速レバー等の第3操作子への操作に基づいて変速比を変化させたり、走行方向(前進または後退)を変化させたりする。
【0018】
以上のように、車両1を走行させるための走行装置14は、前輪2、後輪3、操舵装置11、駆動源9、ブレーキ装置、および変速装置等を含む。また、走行装置14を操作するための操作子は、第1操作子、第2操作子、および第3操作子等を含む。
【0019】
さらに、車両1は、走行装置14を制御するための制御装置13を備えている。制御装置13には、後述する各種センサが接続される。制御装置13は、各種センサの検出値を取得する。制御装置13は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(記憶器)およびI/Oインターフェース等を有し、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで各種制御を実現する電子回路として構成される。
【0020】
(制御系の構成)
図2は、
図1に示すユーティリティビークルの制御系の概略を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置13には、各種センサが接続される。センサは、操作子および走行装置14を含む走行系の車両状態の検知を行う。
【0021】
センサは、例えば、アクセル開度センサ15、ブレーキ量センサ16、操舵角センサ17、駆動源回転数センサ18、車速センサ19等を含む。車両1は、これらのセンサのすべてを備えていてもよいし、これらのセンサのうちの一部を備えていてもよいし、これらのセンサ以外のセンサを備えていてもよい。
【0022】
アクセル開度センサ15は、アクセルペダルの操作量を検知する。ブレーキ量センサ16は、ブレーキペダルの操作量を検知する。操舵角センサ17は、ハンドル12の操作方向および操作量を検知する。駆動源回転数センサ18は、駆動源9の出力軸の回転数を検知する。車速センサ19は、車両1の速度を検知する。
【0023】
制御装置13は、所定の走行領域において有人操作を要しない自律走行を行い得るように、走行装置14を制御する。制御装置13には、モード切替部50が接続される。モード切替部50は、操作子への操作に応じた走行を行う有人操作モードと、制御装置13により、所定の走行経路に従って操作子への操作を必要としない自律走行を行う自律走行モードとを切り替える。
【0024】
モード切替部50は、スイッチによる切り替えや、各種認証操作等に基づいたモード切替信号を制御装置13に送信する。制御装置13は、受信したモード切替信号に応じて制御モードを有人操作モードと自律走行モードとの間で切り替える。
【0025】
有人操作モードにおいて、制御装置13は、運転者が操作する各種操作子への入力に応じて走行装置14の制御を行う。例えば、制御装置13は、運転者のアクセルペダルへの操作に応じてアクセル開度センサ15が検知するアクセル開度に基づいて、駆動源9の出力調整(エンジンの場合はスロットル開度の制御等)を行う。また、例えば、制御装置13は、運転者のハンドル12への操作に応じて操舵角センサ17が検知する操舵角および操舵方向に基づいて、操舵装置11の舵角調整を行う。
【0026】
一方、自律走行モードにおいて、制御装置13は、所定の走行経路に従って操作子への操作を必要としない自律走行を行う。例えば、車両1は、車両1の前方(進行方向)空間の状態を検知するための前方空間検知部29および自車位置を検知するための自車位置検知部30を備えている。
【0027】
前方空間検知部29は、例えば、カメラ、各種レーダ、およびレーザセンサ等の少なくとも1つを備えている。制御装置13は、カメラで撮像した前方空間の画像データ、および/または、各種レーダまたはレーザセンサで測距した距離データ等に基づいて、前方空間の解析を行う。制御装置13は、前方空間の解析結果に基づいて走行装置14を制御する。例えば、前方に障害物がある場合、制御装置13は、車両1を減速または停車させるように駆動源9および/またはブレーキ装置(図示せず)を制御したり、車両1の進行方向を変えるために操舵装置11を制御したりする。
【0028】
自車位置検知部30は、例えばGPSアンテナ等を備えている。制御装置13の記憶器には、予め設定された走行経路のデータが記憶される。制御装置13は、自律走行モードにおいて走行経路のデータを読み出し、自車位置検知部30からの自車位置の情報に基づいて走行経路に沿って走行するように走行装置14を制御する。さらに、制御装置13は、上記した前方空間の解析結果に基づいて走行経路を微調整する。例えば、前方に障害物がある場合、制御装置13は、走行経路のリルート設定を行う。
【0029】
車両1は、自律走行の走行経路を設定する経路設定装置41を備えている。経路設定装置41は、制御装置13の制御ブロックとして構成されてもよいし、別のコンピュータにより構成されてもよい。経路設定装置41が制御装置13とは異なる別のコンピュータにより構成される場合、経路設定装置41は、車両1内に設けられてもよいし、通信ネットワークを介して通信可能な携帯端末(タブレット端末)等のコンピュータにより構成されてもよい。
【0030】
経路設定装置41は、通信ネットワークを介して外部と通信可能に構成され、外部から所定のデータを受信するデータ受信部42が接続されている。走行経路のデータは、例えば予め車両1と通信ネットワークを介して通信可能な携帯端末(タブレット端末等)にユーザが走行経路を設定入力することにより、所定のサーバ装置を介して設定入力された情報が車両1の制御装置13に送信される。あるいは、制御装置13に接続され、ユーザが走行経路を設定入力するための操作端末が車両1に搭載されてもよい。
【0031】
上記構成によれば、モード切替部50により、操作子への操作に応じた走行を行う有人操作モードと、所定の走行経路に従って操作子への操作を必要としない自律走行を行う自律走行モードとが切り替えられる。したがって、定期的な作業等を行う場合には自律走行モードを実行することにより、有人操作を不要とし、作業負担を軽減することができる。また、臨時的な作業を行う場合等、必要に応じて有人操作モードを実行することにより、有人操作のユーティリティビークル1として使用することができる。したがって、上記構成によれば、所定の走行経路に従った自律走行が可能なユーティリティビークル1において、柔軟な運用を可能とすることができる。
【0032】
なお、本実施の形態において、車両1は、自律走行モードにおいても乗員空間Cへの乗車が可能である。すなわち、車両1は、自律走行モードにおいて有人または無人のいずれでも走行可能である。
【0033】
(自律走行モードの詳細)
以下、自律走行モードについてより詳しく説明する。例えば、ユーザが所定の起動操作を行うことにより、車両1が起動する。ユーザが自律走行モードへのモード切替操作を行うことにより、モード切替部50は、制御装置13に自律走行モードに切り替えるためのモード切替信号を送信する。その後、制御装置13は、経路設定装置41に走行経路の設定処理(走行経路設定プログラム)を実行させる。
【0034】
走行経路の設定は、記憶器に走行経路が予め記憶されている場合にはそれを読み出すことで行われてもよい。記憶器に走行経路が記憶されていない場合、または、前回とは異なる走行経路で走行させる場合には、走行経路の再設定を行い得る。この場合、例えば、車両1と無線または有線で通信接続可能な携帯端末で経路設定を行ってもよい。
【0035】
例えば、携帯端末に地図を表示し、地図上で経由地または目的地等を設定入力する。経路設定装置41は、走行経路設定プログラムを実行し、入力された経由地および目的地等の情報、自車位置の情報、および地図に対応して予め記憶された地形情報等から走行経路を設定する。また、例えば、後述するような、車両1を所定の領域内を巡回警備するために用いる場合には、巡回領域を地図上で設定入力することにより、経路設定装置41が巡回領域の全域を走行するような走行経路を設定可能としてもよい。走行経路の設定後、制御装置13は、自律走行を開始する。
【0036】
(巡回警備のための経路設定例1)
以下、所定の領域内を巡回警備するために、車両1を自律走行モードで自律走行させる態様について例示する。
図3は、本実施の形態におけるユーティリティビークルの走行領域における経路設定の一例を示す平面図である。
図3の例において、車両1は、巡回領域WA(例えば所有地の敷地等)内において、巡回領域WAの監視作業(巡回走行)等を行う。
図3の例において、巡回領域WAが車両1の走行領域SAとして予め設定される。
【0037】
図3の例において、巡回領域WAの所定位置Poを起点として、巡回領域WA内を所定の走行経路で巡回して監視作業を行う巡回走行の経路が予め定められた自律走行時の走行経路(初期走行経路Ri)として設定される。初期走行経路Riは、例えば、巡回領域WAの第1方向Xに往復動しつつ方向転換時に第2方向Yへ移動する蛇行区間Mを含む。
【0038】
車両1は、自律走行モードによる自律走行時において、走行領域SAにおいて所定の監視対象を検知した場合に、監視対象に対して所定の警戒動作を行う。このために、前方空間検知部29は、走行領域SAにおける監視対象を検知する対象検知部として機能する。
【0039】
本例において、監視対象は、例えば、人、車両または動物等の巡回領域WAへの侵入者である。前方空間検知部29は、車両1の前方空間の画像を解析する等により、所定の監視対象が存在するかどうかを判定する。前方空間検知部29が監視対象の存在を検知した場合、検知信号を制御装置13に送信する。制御装置13は、前方空間検知部29からの検知信号を受信した場合に、所定の警戒動作を行うように車両1を制御する。警戒動作は、通報動作、データ収集動作、威嚇動作等を含む。
【0040】
通報動作は、車両1と通信ネットワークを通じて通信可能な車両1外のコンピュータ装置に監視対象を検知したことを報知する。車両1外のコンピュータ装置は、ユーザが所持する携帯端末等でもよいし、車両1の管理者が運営する管理装置等でもよい。データ収集動作は、監視対象を検知したときの各種データを収集する。このデータには、例えば、検知位置(検知時の自車位置)、検知日時、監視対象の特徴(種類、大きさ、移動速度等)、検知時の環境(気温、天候等)、監視対象の撮影画像等のデータが含まれ得る。制御装置13は、収集した各種データを車両1外のコンピュータ装置に送信してもよい。
【0041】
威嚇動作は、車両1から光や音を出すことにより、監視対象に対して威嚇を行う。車両1がヘッドランプを備えている場合には、制御装置13は、威嚇動作としてヘッドランプを点灯させたり、点滅させたりすることで威嚇を行ってもよい。また、車両1がホーン(警音器)を備えている場合には、制御装置13は、威嚇動作としてホーンを鳴らすことで威嚇を行ってもよい。車両1が威嚇のための発光源または拡声器を備えていてもよい。
【0042】
さらに、制御装置13は、自律走行モードによる自律走行時において、走行領域SAにおいて所定の監視対象を検知した場合に、その監視対象の位置(発見位置)を記憶する。監視対象の位置Pxは、監視対象が発見されるたびに、車両1内の記憶器または通信ネットワークを通じて通信可能な車両1外の記憶装置(サーバ装置または携帯端末等)に履歴として蓄積される。
【0043】
経路設定装置41は、走行経路の設定に際し、監視対象を過去に検知した位置を基準点Px(Px1,Px2,…)に設定し、それらの基準点Pxに基づいて走行経路Rsを設定する。
図3の例において、経路設定装置41は、予め定められた初期走行経路Riのうち、基準点Pxに基づいて設定される一部領域Ax(Ax1,Ax2,…)において所定の警戒走行を行うように、初期走行経路Riを変更することにより、走行経路Rsを設定する。
【0044】
より詳しくは、経路設定装置41は、基準点Pxを基準として警戒走行領域Axを設定する。例えば、警戒走行領域Axは、基準点Pxを中心とする所定形状(
図3の例では矩形)の領域に設定される。これに代えて、警戒走行領域Axは、基準点Pxを起点(辺の中心位置、角等)として基準点Pxにおける車両1の走行方向の前方に形成された所定形状の領域に設定されてもよい。
【0045】
経路設定装置41は、警戒走行領域Ax内における走行経路として初期走行経路Riに比べてより重点的な走行となるような警戒走行経路Rm(Rm1,Rm2,…)を設定する。警戒走行経路Rmは、警戒走行領域Axにおける走行距離または走行時間が初期走行経路Riに比べて長くなるように設定される。これに加えて、またはこれに代えて、警戒走行経路Rmは、警戒走行領域Axに占める走行面積(警戒範囲)が初期走行経路Riに比べて広くてもよい。
【0046】
例えば、警戒走行経路Rm1は、警戒走行領域Ax1内において基準点Px1を起点としてらせん状(または渦巻き状)に走行(旋回)するような走行経路に設定される。また、例えば、警戒走行経路Rm2は、警戒走行領域Ax2内における初期走行経路Riに対して左右に蛇行するような走行経路に設定される。さらに、警戒走行経路Rm2は、基準点Px2を通過するように設定される。
【0047】
なお、警戒走行経路Rmは、基準点Pxを通過しない走行経路として設定されてもよい。また、
図3の例では、警戒走行経路Rm1と警戒走行経路Rm2とで走行経路の設定態様が異なっているが、すべての警戒走行経路Rmについて走行経路の設定態様は同じでもよい。また、警戒走行経路Rmは、例えば、監視対象の種別、発見時刻、その位置における履歴の新しさ等、所定の要因に基づいて走行経路の設定態様が異なるように設定されてもよい。
【0048】
例えば、経路設定装置41は、基準点Pxが複数ある場合、基準点Pxが新しいほど(すなわち、基準点Pxにおける監視対象の発見履歴が新しいほど)走行経路設定のための重要度を高く設定してもよい。この場合、経路設定装置41は、設定された重要度に応じて基準点Px近傍における走行経路(警戒走行経路Rm)の設定態様が異なるようにしてもよい。すなわち、最近監視対象を発見した位置であるほどその位置(基準点Px)に対応する警戒走行領域Ax内における走行経路として初期走行経路Riに比べてより重点的な走行(長距離、長時間または広範囲等)となるような警戒走行経路Rm(Rm1,Rm2,…)が設定されてもよい。
【0049】
これに加えて、またはこれに代えて、経路設定装置41は、基準点Pxが複数ある場合、複数の基準点Pxが多く存在する一部領域(警戒走行領域Ax)において走行経路設定のための重要度を高く設定してもよい。この場合、経路設定装置41は、設定された重要度に応じて基準点Px近傍における走行経路(警戒走行経路Rm)の設定態様が異なるようにしてもよい。すなわち、過去に監視対象を発見した頻度が高い位置であるほどその位置(基準点Px)に対応する警戒走行領域Axにおける内における走行経路として初期走行経路Riに比べてより重点的な走行(長距離、長時間または広範囲等)となるような警戒走行経路Rm(Rm1,Rm2,…)が設定されてもよい。
【0050】
経路設定装置41は、警戒走行領域Ax以外の領域における初期走行経路Riの部分と、警戒走行領域Axにおいて設定された警戒走行経路Rmとを繋いで今回の走行経路Rsを設定する。設定された走行経路Rsは、車両1内の記憶器または通信ネットワークを通じて通信可能な車両1外の記憶装置(サーバ装置または携帯端末等)に記憶される。今回設定された走行経路Rsのデータは、過去の走行経路Rsのデータに上書き記憶されてもよいし、過去の走行経路Rsのデータとは別に記憶されてもよい。すなわち、過去の走行経路Rsのデータの履歴が記憶器等に残されてもよい。
【0051】
上記構成によれば、ユーティリティビークル1の自律走行時に監視対象を検知した位置の履歴に基づいてユーティリティビークル1の走行経路Rsが設定される。このため、自律走行において、過去に監視対象を検知した位置を重点的に監視するような走行経路Rsの設定が可能となる。したがって、所定の走行領域SAを効率よく監視することができる。
【0052】
さらに、上記構成によれば、初期走行経路Riが予め設定され、監視対象を検知した位置に基づいた一部領域においてより重点的に走行するように、走行経路の変更が行われる。このため、走行領域SAの全域を警戒走行しつつ監視対象を過去に検知した位置の近傍においてより重点的な警戒走行を行うための走行経路Rsの設定を容易に行うことができる。これにより、例えば広大な農地または山林等の目標物のない、または、少ない走行領域SAにおいて、車両1による巡回警備(監視)のための走行をさせる際に、発見効率の高い走行経路Rsを設定することができる。
【0053】
また、監視対象を検知した位置が複数ある場合に、上記のように重要度が設定され、重要度に応じた警戒走行態様となるような走行経路Rsが設定され得る。このように、監視対象の検知内容に応じて警戒走行の軽重を変えることにより、より効率的な走行経路Rsの設定を行うことが可能となる。
【0054】
警戒走行領域Axにおける警戒走行経路Rmの設定態様は、
図3の例のような旋回走行または蛇行走行に限られず、種々の態様で設定可能である。例えば、経路設定装置41は、基準点Pxを通る回数を増やすように警戒走行経路Rmを設定してもよい。すなわち、警戒走行経路Rmは、重複位置(交差位置)が生じるように設定されてもよい。また、例えば、経路設定装置41は、基準点Pxの周囲を巡回するように警戒走行経路Rmを設定してもよい。さらに、経路設定装置41は、これらの複数の要素を含むように警戒走行経路Rmを設定してもよい。
【0055】
複数の基準点Pxに基づく複数の警戒走行領域Axが少なくとも一部の領域において互いに重なり合う場合、互いに重なり合う複数の警戒走行領域Axが、複数の基準点Pxに基づく1つの警戒走行領域(重複領域)として設定されてもよい。
【0056】
このときに設定される重複領域は、元の各警戒走行領域全域を少なくとも含む領域として設定されてもよい。例えば、2つの基準点Pxa,Pxbに基づく2つの警戒走行領域Axa,Axbが少なくとも一部の領域において互いに重なり合う場合、重複領域は、警戒走行領域Axaと警戒走行領域Axbとを少なくとも含むような領域として設定されてもよい。
【0057】
これに代えて、重複領域は、新たに複数の基準点Pxに基づいて設定されてもよい。例えば、2つの基準点Pxa,Pxbに基づく2つの警戒走行領域Axa,Axbが少なくとも一部の領域において互いに重なり合う場合、重複領域は、2つの基準点Pxa,Pxb間を結ぶ線分の中点を新たな基準点とする所定の領域として設定されてもよい。
【0058】
警戒走行領域Axの設定および警戒走行経路Rmの設定には、機械学習が利用され得る。例えば、経路設定装置41は、隣接する2つの基準点Px間の距離を入力とし、警戒走行領域Axの面積または警戒走行領域Axにおける走行時間を出力する学習モデルを用いて、当該面積または走行時間を取得する。学習モデルは、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムを利用して生成する。
【0059】
機械学習アルゴリズムに入力する教師データは、例えば、基準点Pxに基づいて警戒走行した際に再度監視対象が検知された場合の位置のデータから、基準点Pxと再度検知された位置との間の距離と、そのときに想定すべき警戒走行領域Axの面積または想定すべき走行時間とを紐付けることで作成されてもよい。例えば、警戒走行領域Axは、隣接する2つの基準点Px間の距離が短いほど、警戒走行領域Axの面積が小さくなるように設定されてもよい。また、警戒走行経路Rmは、隣接する2つの基準点Px間の距離が短いほど、単位面積あたりの走行時間が長くなるように設定されてもよい。
【0060】
さらに、制御装置13は、警戒走行領域Axにおける警戒走行経路Rmに沿った自律走行において、走行装置14に対する制御を、警戒走行領域Ax外の走行経路における場合とは異なるようにしてもよい。例えば、制御装置13は、警戒走行経路Rmにおける車両1の速度の上限を警戒走行領域Ax以外の領域における場合に比べて低減するように走行装置14を制御してもよい。また、制御装置13は、警戒走行経路Rmにおいて所定距離走行ごとに一時停止を行うように走行装置14を制御してもよい。これらの走行制御により、警戒走行領域Axにおける走行時間をより長くすることができる。
【0061】
(巡回警備のための経路設定例2)
経路設定装置41は、初期走行経路Riなしで走行経路Rsを設定してもよい。
図4は、本実施の形態におけるユーティリティビークルの走行領域における経路設定の他の例を示す平面図である。
図4の例においても、
図3の例と同様に、車両1は、巡回領域WA(例えば所有地の敷地等)内において、巡回領域WAの監視作業(巡回走行)等を行う。
図4の例においても、巡回領域WAが車両1の走行領域SAとして予め設定される。以下の説明において、
図3の例と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0062】
経路設定装置41は、基準点Pxを通り、かつ、走行領域SA内を所定の論理で走行するように走行経路Rsを設定する。
図4の例において、経路設定装置41は、予め定められた規則に従って走行経路Rsを設定する。
【0063】
走行経路Rsを設定するための規則の一例を、以下に示す。まず、経路設定装置41は、起点となる位置Poから最も近い位置の基準点Px1に向かって直線的に走行するような走行経路部分Rs1を設定する。経路設定装置41は、基準点Px1に基づく警戒走行領域Ax1を設定し、警戒走行領域Ax1における警戒走行経路Rm1を設定する。警戒走行経路Rm1の設定態様は、
図3の例と同様である。
【0064】
基準点Pxが複数存在する場合、経路設定装置41は、1つ目の基準点Px1から最も近い位置の基準点Px2に向かって直線的に走行するような走行経路部分Rs2を設定する。経路設定装置41は、基準点Px2に基づく警戒走行領域Ax2を設定し、警戒走行領域Ax2における警戒走行経路Rm2を設定する。3つ目以降の基準点Pxが存在する場合は、2つ目の基準点Px2と同様に、走行経路の設定が行われる。
【0065】
すべての基準点Pxについて警戒走行経路Rmが設定された場合、経路設定装置41は、走行領域SA全体を周回し、最後に起点となる位置Poに戻るような走行経路部分RsAを設定する。この際、走行経路部分RsAは、再度すべての基準点Pxを通過するように設定されてもよい。周回態様は、
図4の例のようにらせん状(渦巻き状)としてもよいし、蛇行状、ジグザグ状等、所定の規則的な周回態様としてもよいし、所定の乱数(または疑似乱数)を用いたランダムな周回態様としてもよい。なお、周回走行を行うための走行経路部分RsAは、走行領域SAの境界部(外縁部)または走行領域SA内に予め設定された進入禁止領域に達しないように設定される。
【0066】
経路設定装置41は、各走行経路部分Rs1,Rm1,Rs2,Rm2,RsAを順に繋げて走行領域SAにおける走行経路Rsを設定する。なお、基準点Pxが存在しない場合(走行領域SAにおいて初めて走行経路Rsを設定する場合)、経路設定装置41は、走行経路部分RsAと同様に走行経路Rsを設定する。あるいは、基準点Pxが設定されるまでは、予め設定された初期走行経路Ri(
図3)が走行経路Rsとして設定されてもよい。
【0067】
走行経路Rsを設定するための規則は、上記例に限られず、種々の規則が設定され得る。例えば、複数の基準点Pxを、起点の位置Poから近い順に走行するような走行経路部分が設定されてもよい。また、複数の基準点Pxを、検知した日時が新しい順に走行するような走行経路部分が設定されてもよい。また、周回走行を行うための走行経路部分RsAは、基準点Pxの数(または警戒走行領域Axの数)に応じて走行経路部分RsAを構成する所定の要素(例えば曲がる数、曲線部分間の直線部分の距離等)が異なるように設定されてもよい。
【0068】
例えば、基準点Pxの数が第1基準値を超えた場合、走行経路部分RsAにおいて曲がる数が第1基準値以下の場合に比べて少なくなるようにする、および/または、走行経路部分RsAにおける直線部分の距離が第1基準値以下の場合に比べて長くなるようにしてもよい。これに加えて、または、これに代えて、基準点Pxの数が第1基準値より大きい第2基準値を超えた場合、走行経路部分RsAを起点の位置Poに直線的に戻るように(
図6で後述する走行経路部分RsBと同様に)設定してもよい。
【0069】
また、走行領域SAを複数の領域部に区分けし、複数の領域部を、各領域部に含まれる基準点Pxの数が多い順に走行するような走行経路部分が設定されてもよい。また、警戒走行経路Rmはなくてもよい。また、走行経路上で隣り合う(前後する)基準点Px間の走行経路部分を、直線状ではなく、蛇行状またはジグザグ状等の所定の規則的経路またはランダムな経路としてもよい。
【0070】
また、走行経路Rsの設定に際して、過去に設定された走行経路Rsが参照されてもよい。例えば、過去に設定された走行経路Rsのうち、監視対象を発見した数が多い走行経路に近くなるように新しい走行経路Rsが設定されてもよい。または、前回設定された走行経路Rsに重ならないように新しい走行経路Rsが設定されてもよい。
【0071】
また、経路設定装置41は、基準点Pxを通過しつつランダムに走行経路Rsを設定してもよい。すなわち、上記所定の論理に基づく走行経路Rsの設定には、走行経路Rsをランダムに設定することを含む。例えば、経路設定装置41は、単位距離ごとに乱数を取得し、その乱数に対応する走行態様(直進、右折、左折等)を決定する。
【0072】
このように、初期走行経路Riなしで走行経路Rsを設定することにより、初期走行経路Riの設定を不要とすることができ、ユーザの手間を省くことができる。
【0073】
経路設定装置41は、走行経路Rsの設定に際し、地形データまたは地図データを参照してもよい。地形データまたは地図データは、車両1内の記憶器または通信ネットワークを通じて通信可能な車両1外の記憶装置(サーバ装置または携帯端末等)に予め記憶される。
【0074】
例えば、地形データまたは地図データから車両1が走行不能と判断される領域(車両1が進入不能な岩場、建物、壁等)は、予め走行経路Rsの設定領域外(走行領域SA外)としてもよい。また、例えば、経路設定装置41は、地形データまたは地図データから岩場や建物等の影になる領域(見通しの悪い領域)を車両1が優先的に走行するように、走行経路Rsを設定してもよい。
【0075】
また、例えば、経路設定装置41は、地形データまたは地図データから建物の入口等のユーザが重点的に監視したい箇所を優先的に走行するように、走行経路Rsを設定してもよい。ユーザが重点的に監視したい箇所は、ユーザにより入力可能としてもよい。例えば、車両1と通信可能なユーザの携帯端末等において地図データ等に基づく地図が表示され、表示された地図上でユーザがタッチ入力した箇所等が重点的に監視したい箇所として設定されてもよい。
【0076】
また、経路設定装置41は、走行経路Rsの設定に際し、走行領域SAにおける路面状況を示す路面状況データに基づいて走行経路を設定してもよい。路面状況データは、走行領域SAを予め定められた複数の路面状況レベルに区分したものである。路面状況データは、車両1内の記憶器または通信ネットワークを通じて通信可能な車両1外の記憶装置(サーバ装置または携帯端末等)に記憶されている。
【0077】
例えば、経路設定装置41は、走行経路Rsの設定に際して基準点Pxまで車両1を移動させる際に、距離優先で走行経路Rsを設定する場合、経路設定装置41は、路面状況レベルがある程度高いレベル以上である経路の採用を許容する。また、例えば、基準点Pxまで車両1を移動させる際に、時間優先で走行経路Rsを設定する場合、経路設定装置41は、路面状況レベルに応じた制限速度を考慮して到達時間がより短い走行経路を採用する。
【0078】
また、例えば、基準点Pxまで車両1を移動させる際に、車両1の姿勢変動の少なさを優先して走行経路Rsを設定する場合、経路設定装置41は、路面状況レベルが走行可能な所定のレベル以上となる走行経路上の距離がより短い走行経路を採用する。この場合、さらに、経路設定装置41は、左右の車輪2,3がそれぞれ接地する左右の路面の路面状況レベルが異なるような状態がより少なくなるような走行経路Rsの設定を行ってもよい。
【0079】
なお、制御装置13は、自律走行モードによる自律走行時において、自車位置の進行方向前方における路面状況に応じた走行装置14の制御を行ってもよい。
【0080】
経路設定装置41は、走行経路Rsの設定に際し、外部環境に関する所定のデータを参照してもよい。車両1の外部環境に関するデータは、例えば天候、気温、気圧、季節、日時、地域(気候帯)、地面の種別(泥濘地、湿地帯、砂浜、砂漠等)等を含み得る。これらのデータのうちの1つを用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。外部環境に関するデータ(例えば天候、季節、日時、地域等)は、例えば、車両1のデータ受信部42と通信ネットワークを介して通信接続されるサーバ装置に蓄積され、サーバ装置からデータ受信部42に送られる。あるいは、外部環境に関するデータ(例えば気温、気圧、路面の状態等)は、例えば、車両1に設けられたセンサで検知された値でもよい。
【0081】
例えば、経路設定装置41は、天候または気圧に応じて、警戒走行領域Axにおける警戒走行経路Rmを簡略化した経路に設定する、または、複雑化した経路に設定してもよい。
【0082】
また、経路設定装置41は、車両1の自律走行時において、外部環境が変化した場合、現在の走行経路Rsを変更(リルート)してもよい。例えば、経路設定装置41は、天候が変化したと判定された場合(または気圧が所定の範囲内になった場合)、警戒走行領域Axにおける警戒走行経路Rmを簡略化した経路に変更する、または、複雑化した経路に変更してもよい。また、例えば、経路設定装置41は、天候が変化したと判定された場合(または気圧が所定の範囲内になった場合)、現在の位置から起点の位置Poに帰還するように走行経路Rsを変更してもよい。
【0083】
経路設定装置41は、車両1を模した仮想の車両の走行シミュレーションの結果に基づいて走行経路Rsを設定してもよい。走行シミュレーションは、経路設定装置41が行ってもよいし、車両1と通信ネットワークを通じて通信可能な車両1外のコンピュータが行ってもよいし、車両1とは通信を行わない独立したコンピュータが行い、その結果として得られた走行経路群データが車両1の記憶器等に記録媒体等を介してデータ移送されてもよい。
【0084】
走行シミュレーションに際して、走行領域SAにおける地形データが用意される。地形データは、例えば衛星画像等から作成される。走行シミュレーションを行うコンピュータは、走行領域SAにおける路面形状データに基づいて仮想の走行空間を生成する。また、コンピュータは、車両1を模した仮想の車両を生成し、仮想の走行空間に配置する。
【0085】
コンピュータは、生成された仮想の走行空間において仮想の車両を走行させる走行シミュレーションを行い、経路群の抽出を行う。このような走行シミュレーションにおいては、機械学習が利用され得る。経路設定装置41は、抽出された経路群の中から最適な経路を選択する、または、経路群に含まれる複数の経路を組み合わせて、それを走行経路Rsとして設定してもよい。
【0086】
(無人航空機を利用した巡回警備)
上記のような巡回警備のための車両1の走行経路Rsの設定について、無人航空機(UAV:Unmanned Air Vehicle。ドローンとも称される)による巡回飛行の結果を利用することも可能である。
【0087】
図5は、本実施の形態の変形例におけるユーティリティビークルを示す概略左側面図である。また、
図6は、本変形例におけるユーティリティビークルの走行領域における経路設定の一例を示す平面図である。
図5に示すユーティリティビークル1B(以下、単に車両1Bと称する)が
図1に示す車両1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0088】
図5に示す車両1Bが
図1に示す車両1と異なる点は、車両1Bが、無人航空機60が発着可能な航空機発着部70を備えていることである。
図5の例において、航空機発着部70は、乗員空間Cの後方(荷台8の上方)において車体フレーム4に接続されている。
【0089】
無人航空機60は、無人航空機60から所定方向(斜め下方)の空間の状態を検知するための空間検知部61を備えている。空間検知部61は、例えば、カメラ、各種レーダ、およびレーザセンサ等の少なくとも1つを備えている。無人航空機60は、カメラで撮像した空間の画像データ、および/または、各種レーダまたはレーザセンサで測距した距離データ等に基づいて、無人航空機60の所定方向の空間の解析を行う。
【0090】
さらに、無人航空機60は、無人航空機60の現在位置を検知する位置検知部62を備え、自律飛行が可能である。位置検知部62は、自車位置検知部30と同様に、例えば、GPSアンテナ等を備えている。無人航空機60は、空間検知部61から得られる空間データと、位置検知部62から得られる無人航空機60の現在位置とに基づいて飛行制御を行う。
【0091】
無人航空機60は、自律飛行により、車両1の走行領域SAを巡回しつつ空間検知部61により監視を行う。無人航空機60は、自律飛行中に監視対象を検知した場合、車両1に検知データを送信する。車両1のデータ受信部42は、無人航空機60からの検知データを受信する。検知データは、監視対象の位置、検知時刻、検知対象の種類等のデータを含む。
【0092】
経路設定装置41は、無人航空機60が検知した監視対象の位置を基準点Pxに加え、無人航空機60が検知した監視対象の位置(基準点Px1a,Px2a)を優先的に走行するような走行経路Rsを設定する。
【0093】
以下に、具体例を例示する。巡回警備の開始時において車両1は、起点となる位置Poに停車している。このとき、無人航空機60は、航空機発着部70に駐機している。航空機発着部70は、無人航空機60が航空機発着部70に駐機している間、無人航空機60の充電を可能としてもよい。
【0094】
巡回警備を開始後、まず、無人航空機60を車両1の走行領域SAにおいて予め定められた飛行経路Raに従って自律飛行させ、走行領域SAの監視を行う。例えば、飛行経路Raは、走行領域SAを渦巻状に旋回し、起点の位置Poに帰還するような経路に設定される。なお、飛行経路Raも、車両1における走行経路Rsの設定と同様に、基準点Pxに基づいて設定されてもよい。前述したように、無人航空機60は、自律飛行中に監視対象を検知した場合、車両1に検知データを送信する。なお、無人航空機60の空間検知部61における監視対象の検知精度は、車両1の前方空間検知部29における検知精度より低くてもよい。
【0095】
経路設定装置41は、データ受信部42を介して無人航空機60からの検知データを取得し、無人航空機60が検知した監視対象の位置を基準点Pxとして登録する。なお、車両1のデータ受信部42が無人航空機60からの検知データを受信するタイミングは、無人航空機60の飛行中でもよいし、無人航空機60が自律飛行を終了して起点の位置Poにおいて車両1の航空機発着部70に到着した後でもよい。飛行中に検知データを送信する場合、無人航空機60が監視対象を検知したときにその都度検知データを送信してもよいし、無人航空機60が自律飛行を開始してから所定の期間ごとに、その期間における検知データをまとめて送信してもよい。
【0096】
経路設定装置41は、無人航空機60の帰還後、検知データに基づいて車両1の走行経路Rsの設定を行う。例えば、経路設定装置41は、起点の位置Poを出発して無人航空機60が検知した監視対象の位置に基づくすべての基準点Px(図6の例では2つの基準点Px1a,Px2a)を順に繋ぐ走行経路部分Rs1a,Rs2aを設定し、すべての基準点Pxを通過後は、起点の位置Poに戻るような走行経路部分RsBを設定する。
【0097】
さらに、経路設定装置41は、各基準点Px1a,Px2aに基づく警戒走行領域Ax1a,Ax2aを設定し、各警戒走行領域Ax1a,Ax2aにおける警戒走行経路Rm1a,Rm2aを設定する。警戒走行経路Rm1a,Rm2aの設定態様は、
図3または
図4の例における警戒走行経路Rm1,Rm2と同様である。経路設定装置41は、各走行経路部分Rs1a,Rm1a,Rs2a,Rm2a,RsBを順に繋げて走行領域SAにおける走行経路Rsを設定する。
【0098】
図
6の例においては、
図4の例における周回走行のための走行経路部分RsAは設定されない。このため、図
6の例における車両1の走行経路Rsの警戒走行経路Rmを除く部分の距離(Rs1a+Rs2a+RsB)は、
図4の例における距離(Rs1+Rs2+RsA)に比べて短い距離となり得る。
【0099】
このように、無人航空機60を走行領域SAにおいて予め飛行させることにより、走行領域SAのうち監視対象が検知される可能性の高い領域部分について車両1を優先的に走行させることができる。したがって、短い走行時間で効率的に監視対象を発見することができる。
【0100】
なお、無人航空機60が飛行時に監視対象を検知しなかった場合、経路設定装置41は、
図3の例または
図4の例に基づいて車両1の走行経路Rsを設定し得る。
【0101】
また、経路設定装置41は、図
6の例を
図3および/または
図4の例と組み合わせた走行経路Rsを設定してもよい。例えば、まず、図
6の例のように無人航空機60が検知した検知データに基づいて一巡目の走行経路Rsが設定され、その後、
図3または
図4の例のように過去の検知履歴に基づいて二巡目以降の走行経路Rsが設定されてもよい。
【0102】
この場合、一巡目の走行経路と二巡目の走行経路との間で、車両1が起点の位置Poを通過するように設定されてもよいし、一巡目における起点の位置Poへの帰還経路部分(図
6における走行経路部分RsB)と二巡目の走行経路部分(
図4における走行経路部分Rs1等)とが起点の位置Poを介さずに共通化されてもよい。例えば、一巡目における最後の基準点Pxに基づく警戒走行経路Rmの終端部と二巡目における最初の基準点Pxに基づく警戒走行経路Rmの始端部とは直線的に接続される。
【0103】
また、無人航空機60が監視対象を検知することで設定された基準点Px(Px1a,Px2a)は、次回以降の走行経路Rsの設定において、車両1が監視対象を検知することで設定された基準点Pxと同様の基準点として扱われ得る。
【0104】
また、上記例では、無人航空機60を自律飛行させる態様を例示したが、これに代えて、無人航空機60を有人操作により飛行させてもよい。また、監視対象の検知は、上記例のように、空間検知部61が行ってもよいし、空間検知部61で撮像された画像等を元に、ユーザがその都度所定の操作入力を行うことにより、操作入力時の無人航空機60の位置が監視対象を検知した位置(検知データ)として取得されてもよい。
【0105】
また、上記例では、無人航空機60が帰還するまで車両1は自律走行を開始しない態様を例示したが、これに限られない。例えば、無人航空機60が監視対象を見つけた場合、車両1が無人航空機60を迎えに行ってもよい。このとき、無人航空機60は、監視対象を検知した位置を旋回してもよいし、監視対象を追尾するように移動してもよいし、車両1に向けて移動してもよい。経路設定装置41は、無人航空機60が車両1に帰還した後に、帰還した地点を基点とする走行経路Rsの設定を行ってもよい。また、経路設定装置41は、無人航空機60が帰還する位置(車両1と無人航空機60とが落ち合う位置)を予め予測または決定し、その位置を起点とする走行経路Rsの設定を行ってもよい。
【0106】
無人航空機60は、監視のための飛行以外の機能を有していてもよい。例えば、無人航空機60は、種まき作業、農薬散布作業等を行う作業ユニットを備えてもよい。無人航空機60は、作業ユニットを用いた作業飛行時に監視対象を検知可能としてもよい。無人航空機60が作業ユニットを備える場合、車両1は、無人航空機60に種または農薬の補給を行うための補給ユニットを備えていてもよい。また、無人航空機60は、車両1と同様に、所定の警戒動作(通報動作、データ収集動作、威嚇動作等)を行ってもよい。
【0107】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0108】
例えば、上記実施の形態では、共通の制御装置13が有人操作モードにおける制御および自律走行モードにおける制御の何れをも行う態様を例示したが、これに限られない。例えば、車両1は、有人操作モードにおける車両1の制御を行う第1制御装置(第1ECU)と自律走行モードにおける車両1の制御を行う第2制御装置(第2ECU)とを備えてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態では、有人操作による走行が可能な車両1を例示したが、自律走行専用の車両1において、上記実施の形態の自律走行モードにおける制御を適用してもよい。例えば、人が立ち入れない場所(危険区域、災害発生場所等)での監視、救助作業等に、上記実施の形態のように設定された走行経路Rsに従って自律走行する車両1を適用してもよい。
【0110】
また、上記実施の形態における基準点Pxのデータまたは設定された走行経路Rsのデータは、複数の車両1で共通利用可能としてもよい。ただし、車種によって走行能力が異なる場合には、走行経路Rsのデータに、車種に応じたラベルデータが含まれていてもよい。
【0111】
また、走行領域SA内にいる作業者または家畜等、監視対象から除外したい対象が存在する場合、その除外対象に所定の識別子を所持させる。識別子は、例えば、腕章、近距離無線通信タグ、識別コード等を含む。前方空間検知部29は、撮像された画像等から監視対象として検知すべき対象が存在すると判定しても、別途識別子を検知した場合には、監視対象を検知したとは判定しないようにしてもよい。これにより、監視対象の誤判定を抑制することができる。
【0112】
また、上記実施の形態では、監視対象として、侵入者(人、動物等の動くもの)を例示したが、監視対象は、これに限られない。例えば、監視対象は、所定の植物、種実、茸、虫、小動物、障害物(岩、落石、倒木)等であってもよい。車両1は、これらの監視対象を検知した場合、所定の警戒動作として、通報動作、データ収集動作等に加えて、またはこれらに代えて、採取動作、駆除動作、除去動作等を行ってもよい。
【0113】
例えば、車両1に植物、種実、茸、虫等を採取するための採取動作を行う採取ユニット(採取アーム等)が設けられている場合、制御装置13は、監視対象を検知した場合に、それを採取してもよい。また、例えば、車両1に害虫等を駆除するための駆除動作を行う駆除ユニット(薬剤噴霧ユニット等)が設けられている場合、制御装置13は、監視対象を検知した場合に、それを駆除してもよい。また、例えば、岩、倒木等の障害物を除去するための除去ユニット(除去ブレード等)が設けられている場合、制御装置13は、監視対象を検知した場合に、それを除去してもよい。
【0114】
また、上記実施の形態で例示した初期走行経路Riおよび走行経路Rsは、起点の位置Poから走行領域SA(巡回領域WA)内を巡回して起点の位置Poに帰還するように設定されているが、これに限られない。すなわち、起点の位置Poとは異なる位置に到達位置を設定し、初期走行経路Riおよび走行経路Rsが、基点の位置Poから到達位置に移動するまでの間に警戒走行を行うように設定されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 ユーティリティビークル(車両)
2 前輪
3 後輪
9 駆動源
11 操舵装置
13 制御装置
14 走行装置
29 前方空間検知部(対象検知部)
30 自車位置検知部
41 経路設定装置
42 データ受信部
60 無人航空機
70 航空機発着部