(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】路面用または床面用の粘着剤組成物およびマーキングシート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/28 20180101AFI20240904BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240904BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20240904BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240904BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C09J7/28
C09J7/38
C09J7/22
C09J11/06
C09J133/06
(21)【出願番号】P 2022555397
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2021035832
(87)【国際公開番号】W WO2022075143
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020168434
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 昂
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-177902(JP,A)
【文献】特開2019-151837(JP,A)
【文献】特開2019-065188(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189700(WO,A1)
【文献】特開2009-035632(JP,A)
【文献】特開2015-184488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/06
C09J 11/06
C09J 7/38
C09J 7/28
C09J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が1~7の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)20~69質量%、
アルキル基の炭素数が8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)30~74質量%、および
酸性基含有モノマー(a3)1~6質量%
を含むモノマー成分(ただし、成分(a1)~(a3)の合計を100質量%とする。)の共重合体である(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
ロジン系粘着付与樹脂(B)とを含む粘着剤組成物
から形成された粘着剤層と、金属基材とを有する路面用または床面用マーキングシートであって、
前記ロジン系粘着付与樹脂(B)が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、10~30質量部の範囲で含まれ、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)において、分子量が5000以下の成分の割合が1.5質量%以下である路面用または床面用
マーキングシート。
【請求項2】
前記ロジン系粘着付与樹脂
(B)の軟化点が120℃以上である請求項1に記載された路面用または床面用
マーキングシート。
【請求項3】
前記粘着剤組成物が架橋剤(C)をさらに含有する請求項1または2に記載の路面用または床面用
マーキングシート。
【請求項4】
前記金属基材がアルミニウム箔である請求項
1に記載された路面用または床面用マーキングシート。
【請求項5】
さらにプラスチック基材を有する請求項
1~3のいずれか1項に記載された路面用または床面用マーキングシート。
【請求項6】
前記プラスチック基材が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、およびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の基材である請求項
5に記載された路面用または床面用マーキングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は路面用または床面用の粘着剤組成物およびマーキングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
路面用または床面用マーキングシートは、屋内外の道路・駐車場等の路面または床面に貼りつけて、宣伝、方向指示、交通標識または案内等の情報を表示する目的で、道路・駐車場等の路面または床面(以下、「路面等」という場合がある。)に用いられている。
【0003】
このような路面等に貼りつけて設置されるマーキングシートは、例えば、塩化ビニルシートを基材とし、基材の一方の面に路面等に貼り付けるための粘着剤層を設け、基材の他方の面に所望の情報に関する文字や模様等を施した装飾層等を形成して構成されている。
【0004】
路面用マーキングシートは、長期間における屋外の雨風や日射等を受けるとともに、度重なる車両の走行を受けるという環境下で使用される。また、床面用マーキングシートは、清掃作業や歩行者の靴等による摩擦や衝撃等を受け続けるといった環境下で使用される。そのため、路面等に貼り付けて設置されるマーキングシートは、マーキングシート自体が傷付く、あるいは路面等から剥がれてしまうといった問題が生じる。
【0005】
一方で、マーキングシートが高温環境下に長期間設置された場合、マーキングシートの粘着剤層は、基材よりも路面に対する密着性が高くなり、マーキングシートを剥離した際に粘着剤層が路面側に残ることで、路面を汚染してしまうといった問題がある。
【0006】
このような問題に対して、路面用または床面用マーキングシートの劣化を防止するために、粘着剤、さらには、粘着剤層と基材とを組み合わせた積層体の開発が進められている。
【0007】
また、路面用または床面用マーキングシートには、一般的に、アスファルトなどの凹凸のある粗面に対する追従性に加えて、粘着力、耐候性、耐熱性および耐湿熱性が必要となる。また、アスファルトなどへの追従性を出すために、アルミニウムなどの金属基材を用いることが検討されている。このような金属基材を使用する場合には、粘着剤層の成分として、金属との相互作用の強い酸性基を有するモノマーを共重合することが考えられる。
【0008】
例えば、特許文献1には、末端カルボキシ基含有モノマー(a1)および(メタ)アクリル酸(a2)を含む共重合成分(a)を共重合してなるアクリル系樹脂(A)を含有する難接着被着体用粘着剤組成物が開示されている。
【0009】
特許文献2には、第1の粘着剤層、金属層、第2の粘着剤層、基材、および装飾層を備えたマーキングシート本体と、前記マーキングシート本体の路面側(第1の粘着剤層)とは反対側の表面に貼付された路面・床面マーキング用ラミネートシートとから構成される路面・床面マーキングシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-151837号公報
【文献】特開2015-184488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1では、粘着テープの被着体として改質アスファルト等が例示されている。しかしながら、特許文献1の粘着剤組成物は金属層を有する積層体における粘着剤層と金属層の密着性や、被着体である路面(アスファルト)に粘着剤が転着しにくい(すなわち、路面に対する再剥離性に優れる)といった耐路面汚染性に関する記載はない。
【0012】
特許文献2では、粘着力や耐久性の観点からアクリル系粘着剤を用いた粘着剤層と、ポリ塩化ビニル、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる基材とを組み合わせた積層体が開示され、衝撃緩和性に優れ装飾層の良好な視認性が維持されている。しかしながら、路面に対する再剥離性について記載はない。
【0013】
本発明の課題は、上記課題に鑑み、アスファルトなどの粗面な路面等に対する追従性に加え、粘着力、耐剥がれ性、耐熱性、および耐湿熱性に優れ、また基材と粘着剤層の密着性に優れ、かつ、剥離する際に基材から粘着剤が被着体に展着することを抑制できる粘着剤組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、特定の(メタ)アクリル系共重合体および、特定の粘着付与樹脂を特定量含む粘着剤組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、例えば以下の[1]~[7]に関する。
[1] アルキル基の炭素数が1~7の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)20~69質量%、アルキル基の炭素数が8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)30~74質量%、および酸性基含有モノマー(a3)1~6質量%を含むモノマー成分(ただし、成分(a1)~(a3)の合計を100質量%とする。)の共重合体である(メタ)アクリル系共重合体(A)と、ロジン系粘着付与樹脂(B)とを含む粘着剤組成物であって、前記ロジン系粘着付与樹脂(B)が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、10~30質量部の範囲で含まれ、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)において、分子量が5000以下の成分の割合が1.5質量%以下である路面用または床面用粘着剤組成物。
[2] 前記ロジン系粘着付与樹脂の軟化点が120℃以上である前記[1]に記載された路面用または床面用粘着剤組成物。
[3] 架橋剤(C)をさらに含有する前記[1]または[2]に記載の路面用または床面用粘着剤組成物。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載された粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、金属基材とを有する路面用または床面用マーキングシート。
[5] 前記金属基材がアルミニウム箔である前記[4]に記載された路面用または床面用マーキングシート。
[6] さらにプラスチック基材を有する前記[4]または[5]に記載された路面用または床面用マーキングシート。
[7] 前記プラスチック基材が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、およびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の基材である前記[6]に記載された路面用または床面用マーキングシート。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アスファルトなどの粗面な路面等に対する追従性に加え、粘着力、耐剥がれ性、耐熱性、および耐湿熱性に優れ、また基材と粘着剤層の密着性に優れ、かつ、剥離する際に基材から粘着剤が被着体に展着することを抑制できる粘着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のマーキングシートにおける層構成の具体例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの総称で用い、アクリルでもメタクリルでもよく、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの総称で用い、アクリレートでもメタクリレートでもよい。
【0019】
[路面用または床面用粘着剤組成物]
本発明の路面用または床面用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と記す場合がある。)は、以下にそれぞれ説明する、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、ロジン系粘着付与樹脂(B)とを含む。
【0020】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1~7の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)20~69質量%、アルキル基の炭素数が8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)30~74質量%、および酸性基含有モノマー(a3)1~6質量%を含むモノマー成分の共重合体である。
【0021】
≪(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)≫
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1~7の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)(以下「モノマー(a1)」ともいう。)を含む。
【0022】
炭素数が1~7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基が挙げられる。前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0023】
アルキル基の炭素数が1~7のモノマー(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、neo-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
これらの中でもモノマー(a1)としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマー(a1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0025】
≪(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)≫
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)(以下「モノマー(a2)」ともいう。)を含む。
【0026】
炭素数が8~20のアルキル基としては、例えば、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、iso-オクチル基、1-メチルヘプチル基、n-デシル基、iso-デシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、1-ヘキシルヘプチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基が挙げられる。前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0027】
アルキル基の炭素数が8~20のモノマー(a2)としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n-ノナデシル(メタ)アクリレート、イソノナデシル(メタ)アクリレート、n-エイコシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
これらの中でもモノマー(a2)としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマー(a2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
モノマー成分において、モノマー(a1)とモノマー(a2)との質量比は、1:0.6~1:2.2が好ましく、1:0.7~1:1.5がより好ましい。前記範囲でモノマー(a1)とモノマー(a2)とを用いた(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物は、基材との密着性および凝集力のバランスに優れる。
【0030】
≪酸性基含有モノマー(a3)≫
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、酸性基含有モノマー(a3)(以下「モノマー(a3)」ともいう。)を含む。
【0031】
酸性基含有モノマー(a3)としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマーなどが挙げられ、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0032】
カルボキシ基含有モノマーは、分子内にカルボキシ基を有するモノマーである。カルボキシ基含有モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0033】
スルホン酸基含有モノマーは、分子内にスルホン酸基を有するモノマーである。スルホン酸基含有モノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。
【0034】
リン酸基含有モノマーは、分子内にリン酸基を有するモノマーである。リン酸基含有モノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、モノマー(a3)としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸から選択される少なくとも1種のモノマーを用いることがより好ましい。これらのモノマーは工業的に入手し易いため好ましい。
モノマー(a3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)のモノマー成分>
(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)を20~69質量%、好ましくは25~63.5質量%、より好ましくは30~58質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)を30~74質量%、好ましくは35~69質量%、より好ましくは40~65質量%、および酸性基を有するモノマー(a3)を1~6質量%、好ましくは1.5~6質量%、より好ましくは2~5質量%含む。ただし、成分(a1)~(a3)の合計を100質量%とする。
【0037】
モノマー(a1)およびモノマー(a2)を前記範囲で用いることにより、密着性と凝集力のバランスに優れた粘着剤組成物を得ることができる。また、酸性基含有モノマー(a3)を前記範囲で用いた粘着剤組成物は、耐熱性、耐湿熱性、金属基材への密着性が向上するため好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)中のモノマー(a3)が前記範囲を超えると、粘着剤組成物を用いたマーキングシートを路面から剥離する際、路面への糊残りが多く再剥離性が劣るため好ましくない。
【0038】
また、各モノマーを前記範囲で用いて製造された(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ロジン系粘着付与樹脂(B)との相溶性に優れており、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、層全体にロジン系粘着付与樹脂(B)が分散すると考えられる。前記粘着剤層は、層全体にロジン系粘着付与樹脂(B)が分散しているため、応力緩和性および耐熱性に優れる。
【0039】
≪その他のモノマー(a4)≫
(メタ)アクリル系重合体(A)は、上記モノマー(a1)~(a3)以外の他のモノマー(a4)を含んでいてもよい。その他のモノマー(a4)としては、例えば、水酸基含有モノマー、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、酢酸ビニルが挙げられる。
【0040】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0041】
脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等の官能基化スチレンが挙げられる。
【0044】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素系複素環含有モノマーが挙げられる。
【0045】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
シアノ基含有モノマーとしては、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0047】
モノマー(a4)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
モノマー(a4)は任意成分であり、共重合体(A)を形成するために用いられるモノマー成分100質量%中、モノマー(a4)の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0048】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)の物性>
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万~150万、より好ましくは25万~130万、さらに好ましくは35万~120万である。Mwが前記範囲内にあると、粘着剤組成物より得られる粘着シートに十分な凝集力が付与されるため、高温条件下や高温かつ高湿条件下における耐久性向上の観点から好ましい。
【0049】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される。GPCの測定条件の詳細は、後述する実施例欄に記載する。
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、GPC法により測定される分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは2~13、より好ましくは2.5~10、さらに好ましくは2.8~8である。Mw/Mnが前記範囲内にあると、耐久性や再剥離性の観点から好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、分子量が5000以下の(メタ)アクリル系共重合体(低分子量成分)の割合が1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることが特に好ましい。分子量が5000以下の成分の割合の下限としては特に限定は無いが、通常は0.01質量%以上である。なお、前記割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総分子数を、100質量%とした際の、分子量が5000以下の成分の割合である。前記割合は、GPC法により、積分分子量分布曲線を求めることにより、測定することができる。(メタ)アクリル系共重合体(A)の、分子量が5000以下の成分の割合が前記範囲内であると、路面への糊残りが少なく再剥離性に優れる路面用または床面用マーキングシートが得られるため好ましい。分子量5000以下の成分の割合が1.5質量%を超えると、粘着シートを被着体に貼着した際、粘着剤層と被着体界面に前記低分子量成分に由来する層が形成されやすく、接着性や耐熱性の低下を招くため好ましくない。
【0051】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができ、これらの中でも溶液重合法が好ましい。
【0052】
具体的には、反応容器内にモノマー成分および必要に応じて連鎖移動剤、重合溶媒等を仕込み、例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40~100℃、好ましくは50~80℃に設定し、通常50~90℃、好ましくは60~90℃の温度に反応系を維持して、2~20時間反応させる。また、重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、モノマー成分、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0053】
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0054】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0055】
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造においては、重合開始剤は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を形成するために用いられるモノマー成分の合計100質量部に対して、通常0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部の範囲内の量で使用される。
【0056】
連鎖移動剤としては、2-メルカプトエタノール、チオグリセロール、3-メルカプトヘキサン-1-オール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプトブタン酸、6-メルカプトへキサン酸、11-メルカプトウンデカン酸、3-メルカプトピルビン酸、2-メルカプト安息香酸、3-メルカプト安息香酸、4-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、n-ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、α-メチルスチレンダイマー、ナフトキノン系化合物が挙げられる。
【0057】
連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
連鎖移動剤を用いる場合には、(メタ)アクリル系共重合体(A)を形成するために用いられるモノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.02~3質量部、さらに好ましくは0.03~2.5質量部の範囲内の量で使用される。
【0058】
溶液重合に用いる重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド等が挙げられる。
重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0059】
<ロジン系粘着付与樹脂(B)>
ロジン系粘着付与樹脂(B)は、軟化点が120℃以上であるものを特に制限なく用いることができるが、高温環境での応力緩和性付与の観点から、軟化点は、120~200℃が好ましく、120℃~160℃がより好ましい。
【0060】
軟化点が120℃以上のロジン系粘着付与樹脂(B)としては、例えば、荒川化学工業製ペンセルC(軟化点120℃)、ペンセルD-125(軟化点125℃)、ペンセルD-135(軟化点135℃)、ペンセルD-160(軟化点160℃)、スーパーエステルA-125(軟化点125℃)等が挙げられる。また、ハリマ化成製ハリタックPCJ(軟化点123℃)、ハリタックDP-2669(軟化点135℃)、ハリタックFK125(軟化点125℃)等が挙げられる。
【0061】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と共に、ロジン系樹脂(B)を特定量含むため、粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、路面等から剥離する際に糊残りが少なく路面等に対する再剥離性にも優れる。
【0062】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、ロジン系粘着付与樹脂(B)を、10~30質量部、好ましくは18~28質量部含み、より好ましくは20~26質量部含む。
【0063】
<架橋剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は(メタ)アクリル共重合体(A)とロジン系粘着付与樹脂(B)とともに、架橋剤(C)を含有することが好ましい。例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)を架橋剤(C)で架橋させることにより粘着剤組成物を得ることができる。
【0064】
架橋剤は、特に制限なく用いることができ、例えばイソシアネート架橋剤、金属キレート架橋剤、エポキシ架橋剤を用いることができる。架橋剤(C)としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0065】
架橋剤(C)としては、イソシアネート架橋剤(C-1)および金属キレート架橋剤(C-2)から選択される少なくとも1種が好ましく、イソシアネート架橋剤(C-1)または金属キレート架橋剤(C-2)が好ましく、イソシアネート架橋剤(C-1)がより好ましい。架橋剤(C)としては、粘着剤層と基材の密着性に優れるため、イソシアネート架橋剤(C-1)が好ましく、熟成時間が短くできる観点からは、金属キレート架橋剤(C-2)が好ましい。
【0066】
≪イソシアネート架橋剤(C-1)≫
イソシアネート架橋剤(C-1)としては、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート架橋剤が通常用いられる。イソシアネート架橋剤(C-1)により(メタ)アクリル系共重合体(A)を架橋することで、架橋体(ネットワークポリマー)を形成することができる。
【0067】
イソシアネート架橋剤(C-1)のイソシアネート基数は、通常2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~6である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、(メタ)アクリル系共重合体(A)とイソシアネート架橋剤(C-1)との架橋反応効率の点、および粘着剤層の柔軟性を保つ点で好ましい。
【0068】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート架橋剤としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0069】
脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0070】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0071】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート架橋剤としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、4,4',4"-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0072】
また、イソシアネート架橋剤(C-1)としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート架橋剤の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート架橋剤との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ;高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0073】
このようなイソシアネート架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0074】
イソシアネート架橋剤(C-1)の中でも、粘着性能のバランスが良好で、耐久性が高い点でトリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物(綜研化学製L-45K等)、またはトリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(綜研化学製TD-75等)、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成製TSE-100、東ソー製コロネート2050等)が好ましい。
【0075】
イソシアネート架橋剤(C-1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート架橋剤(C-1)を、(メタ)アクリル共重合体(A)の固形分100質量部に対して、好ましくは1~5質量部含み、より好ましくは1.2~4.5質量部含み、さらに好ましくは1.5~4質量部含む。
【0076】
≪金属キレート架橋剤(C-2)≫
金属キレート架橋剤(C-2)としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。
【0077】
これらの中でも、特にアルミキレート化合物(綜研化学製M-5ADT等)が好ましい。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0078】
金属キレート架橋剤(C-2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、金属キレート架橋剤(C-2)を、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0~1質量部含み、より好ましくは0~0.5質量部含み、さらに好ましくは0~0.2質量部含む。
【0079】
≪エポキシ架橋剤(C-3)≫
エポキシ架橋剤(C-3)としては、例えば、1分子中のエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物が通常用いられる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。エポキシ架橋剤(C-3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0080】
本発明の粘着剤組成物は、エポキシ架橋剤(C-3)を、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部含み、より好ましくは0.03~0.8質量部含み、さらに好ましくは0.05~0.5質量部含む。
【0081】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、架橋剤(C)を、0.01~5質量部含み、好ましくは0.03~4.5質量部含み、より好ましくは0.05~4質量部含む。
【0082】
<その他の成分>
≪粘着付与樹脂(D)≫
本発明の粘着剤組成物は、任意成分として、前記軟化点が120℃以上であるロジン系粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂(D)を含んでいてもよい。粘着付与樹脂(D)としては、上述のロジン系粘着付与樹脂(B)以外の樹脂であればよく、特に制限は無い。
【0083】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、粘着付与樹脂(D)を、好ましくは0~10質量部含み、より好ましくは0~8質量部含み、さらに好ましくは0~6質量部含み、特に好ましくは0~5質量部含む。また、本発明の粘着剤組成物は、粘着付与樹脂(D)を実質的に含まないことも、高温での応力緩和性や、凝集力およびタックの観点から好ましい。実質的に含まないとは、粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、粘着付与樹脂(D)を0質量部以上0.01質量部未満含むことを意味する。
【0084】
粘着付与樹脂(D)としては、スチレン系樹脂、C9系石油樹脂、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、および軟化点が120℃未満のロジン系粘着付与樹脂から選ばれる少なくとも1種の粘着付与樹脂が挙げられる。粘着付与樹脂(D)としては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0085】
また、本発明の粘着剤組成物に含まれる粘着付与樹脂の量、すなわち、ロジン系粘着付与樹脂(B)および、粘着付与樹脂(D)の合計の量が以下の範囲であることが好ましい。本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、粘着付与樹脂を、好ましくは16質量部を超えて35質量部未満含み、より好ましくは18~33質量部含み、特に好ましくは20~30質量部含む。前記範囲内では(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して相溶し、オレフィン等の低極性被着体に対して高い接着性能を発現させ、かつ高い応力緩和性をもたらすため好ましい。
【0086】
≪添加剤(E)≫
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)およびロジン系粘着付与樹脂(B)の他に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、金属腐食防止剤、可塑剤、架橋促進剤、界面活性剤、前記(A)以外の(メタ)アクリル系共重合体およびリワーク剤などの添加剤を1種または2種以上含有することができる。
【0087】
本発明の粘着剤組成物が、他の成分を含有する場合の量としては、他の成分の種類に応じて適宜決定されるが、通常は上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部である。
【0088】
≪有機溶媒(F)≫
本発明の粘着剤組成物は、その塗布性を調整するため、有機溶媒(F)を含有することが好ましい。有機溶媒(F)としては、例えば、<(メタ)アクリル系共重合体(A)>の欄で説明した重合溶媒が挙げられる。本発明の粘着剤組成物において、有機溶媒の含有量は、粘着剤組成物100質量%に対して通常20~90質量%、好ましくは30~90質量%である。
【0089】
なお、本明細書において「固形分」とは、粘着剤組成物中の含有成分のうち上記有機溶媒(F)を除いた全成分をいい、「固形分濃度」とは、粘着剤組成物100質量%に対する前記固形分の割合をいう。
【0090】
本発明の粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系共重合体(A)の量は、固形分100質量%中、通常60質量%以上、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。前記合計量の上限値は、ロジン系粘着付与樹脂(B)、架橋剤(C)等の他の成分の量によって適宜決定することができる。
【0091】
<粘着剤組成物の調製>
本発明の粘着剤組成物は、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、ロジン系粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)と、必要に応じて他の成分とを、従来公知の方法により混合することで調製することができる。
【0092】
例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)を合成する際に得られた(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む溶液と、ロジン系粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)と、必要に応じて他の成分とを攪拌装置等を用いて各成分を一括または順次混合し、攪拌することにより粘着剤組成物を調製することができる。撹拌時間は特に制限はないが、作業性および生産性の面から室温にて10~120分程度あればよい。
【0093】
[路面用または床面用マーキングシート]
<路面用または床面用マーキングシートの構成>
本発明の路面用または床面用マーキングシート(以下、単に「本発明のマーキングシート」ともいう。)は、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、金属基材とを有し、前記粘着剤層および前記金属基材が積層されていることを特徴とする。
【0094】
本発明のマーキングシートの好ましい構成としては、例えば、第1の粘着剤層と、第1の基材と、第2の粘着剤層と、第2の基材とを含み、かつ、これらがこの順で積層されている態様が挙げられる。また第2の基材上に、さらに第3の粘着剤層、第3の基材、第4の粘着剤層、第4の基材というように粘着剤層と基材とを続けて積層してもよいし、別途、装飾層または保護層などを設けてもよい。
【0095】
図1は、本発明のマーキングシートにおける層構成の具体例を模式的に示した図である。
図1に示すマーキングシートは、第1の粘着剤層(11)と、金属基材からなる第1の基材(12)と、第2の粘着剤層(13)と、ポリ塩化ビニルからなる第2の基材(14)と、第3の粘着剤層(15)と、ポリイミドからなる第3の基材(16)とが、被着体もしくは剥離ライナー(10)からマーキングシートの厚み方向に前記の順番に積層された構成を有する。
【0096】
また、路面等に貼り付ける面には、一般的に、剥離ライナーが設けられている。本発明のマーキングシートを路面等に設置する際には、第1の粘着剤層から剥離ライナーを剥がして第1の粘着剤層を介して路面等の所定の位置に貼り合わせる。
【0097】
以下、
図1を参照しながら、各層について説明する。
<基材>
≪金属基材からなる第1の基材≫
本発明のマーキングシートに用いられる金属基材からなる第1の基材(12)は、アスファルトなどの路面への追従性の向上の観点から金属箔であることが好ましい。金属箔としては、特に限定されないが、価格や入手のし易さなどの観点から、アルミニウム箔、銅箔、鉄箔、ステンレススチール箔が用いられ、その中でもハンマー施工により変形しやすいアルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0098】
金属箔の膜厚は、10~100μm程度であることが好ましく、20~90μm程度であることがより好ましい。金属箔の膜厚が上記範囲内であれば、路面に貼り付けるために行われるハンマー施工等の施工において、変形しやすく、アスファルトの凹凸に対して追従しやすくなる。
【0099】
≪第2の基材≫
第2の基材(14)は、後述する装飾層または保護層等のその他の層を形成するための基材である。
【0100】
前記第2の基材(14)の材質としては、特に限定は無いが、プラスチック基材、ガラス、織布、不織布、紙等が挙げられる。プラスチック基材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。その中でも、インクを塗布した際に、所望の色を発色した印刷表記がしやすくなり、かつ工業的に入手し易い観点からポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、およびポリイミドが好ましい。
【0101】
第2の基材(14)の膜厚は、30~300μm程度であることが好ましく、50~250μm程度であることがより好ましい。第2の基材の膜厚が上記範囲内であれば、歩行者の歩行等に邪魔になる厚さではなく、かつ所望の強度を発揮することが可能となる。
なお、第2の基材(14)として、例えば
図1において第3の基材を積層しているように、複数の基材を積層してもよく、その際に複数の基材は同一でも異なっていてもよい。
【0102】
<粘着剤層>
≪第1の粘着剤層≫
第1の粘着剤層(11)は、上述した本発明の粘着剤組成物を用いて形成される。例えば、上述の粘着剤組成物中の架橋反応を進めることにより、具体的には(メタ)アクリル系共重合体(A)を架橋剤(C)で架橋することにより、前記粘着剤層が得られる。
【0103】
第1の粘着剤層(11)の形成条件は、例えば以下のとおりである。本発明の粘着剤組成物を基材もしくは剥離ライナーの剥離処理面上に塗布し、溶媒の種類によっても異なるが、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~100℃で、好ましくは1~10分間、より好ましくは2~7分間乾燥して溶媒を除去し、塗膜を形成する。乾燥塗膜の膜厚は、好ましくは5~125μm、より好ましくは10~100μmである。
【0104】
第1の粘着剤層(11)は、以下の条件で形成することが好ましい。本発明の粘着剤組成物を基材もしくは剥離ライナーの剥離処理面上に塗布し、上記条件で形成された塗膜上に剥離ライナーを貼付した後、好ましくは23℃、50%RH条件下で7日以上、より好ましくは40℃ドライ条件下で3~5日間の環境下で養生する。上記のような熟成条件で架橋を行うと、効率よく架橋体が形成可能である。
【0105】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布して乾燥する方法を用いることができる。
【0106】
≪第2の粘着剤層≫
第2の粘着剤層(13)はいずれも、本発明からなる同一または異なる粘着剤組成物を用いてもよく、他の粘着剤組成物を用いてもよい。なお、第2の基材(14)以降として複数の基材を積層する場合も、各基材を積層するための粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、同一でも異なっていてもよい。
各粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、5~125μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。
【0107】
≪その他の層≫
第2の基材(14)上に、必要に応じて他の層、例えば他の粘着剤層、装飾層、金属層、着色層、印刷層、保護層などが積層されていてもよい。
【0108】
前記その他の層は、単層からなってもよいし、複数層からなってもよい。また、装飾層は、必ずしも第2の基材の全面に形成する必要はなく、第2の基材の所定のエリアのみに形成してもよい。
【0109】
前記その他の層の厚さは、特に限定されないが、30~300μm程度であることが好ましく、50~250μm程度であることがより好ましい。その他の層の膜厚が上記範囲内であれば、歩行者の歩行等に邪魔になる厚さではなく、かつ所望の強度を発揮することが可能となる。
【0110】
(装飾層)
装飾層は、所望の広告や案内表示等のマーキングを行うべく、路面用・床面用マーキングシートに所望の図形、色、文字等を付与するためのものである。
【0111】
装飾層の形成方法は装飾層の種類によって異なるが、例えば、装飾層をインク層(印刷層)で構成する場合には、フレキソ印刷等の凸版印刷、グラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平板印刷、シルクスクリーン等のスクリーン印刷、インクジェットプリンタ等の各種プリンタによる印刷などによって装飾層を形成することができる。また、装飾層を塗料層で構成する場合には、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スプレーガン等の塗工機によって装飾層を形成することができる。さらに、装飾層を転写シートからの転写で構成する場合には、転写シートの種類に応じて、基材の表面に積層した転写シートに圧力を印加することや、基材の表面に積層した転写シートを加熱すること等によって装飾層を形成することができる。さらに、装飾層を金属薄膜で構成する場合には、蒸着、スパッタリング等によって装飾層を形成することができる。
【0112】
(保護層)
保護層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの樹脂のフィルムを、装飾積層フィルムを構成する層の上に直接又は接合層を介して積層することによって、あるいは樹脂組成物をフィルム層表面に塗布して乾燥することによって形成することができる。
【0113】
<剥離ライナー>
本発明のマーキングシートに用いることができる剥離ライナー(10)は、粘着剤層が本発明のマーキングシートを貼り付ける所望の面以外の部分に貼り付いてしまうことを防ぐために、路面等に設置する前のマーキングシートの形態として、第1の粘着剤層(11)に設けられる。
【0114】
前記剥離ライナーとしては、特に限定されず公知の剥離ライナーを好適に用いることができ、例えば、紙またはポリエステルなどの樹脂フィルムに剥離剤をコーティングしたものが挙げられる。
前記剥離剤としては、粘着剤層の材質とも関連するが、公知の剥離剤を用いることができ、シリコーン系剥離剤やフッ素系剥離剤が挙げられる。
【0115】
<路面用または床面用マーキングシートの用途>
本発明のマーキングシートは、アスファルトなど粗面に対する追従性に加えて、粘着力、耐候性、耐熱性および耐湿熱性に優れ、剥離する際に基材から粘着剤が被着体に転着することが起き難いため、これらの物性が求められる用途(乗用自動車、大型トラック等が使用する駐車場、道路および工事現場でのアスファルトに一時的な印をつけるためにマーキングシートを用いるようなとき、または屋内外の人通りの多い床面に一時的にマーキングシートを貼り付けておく必要があるとき等が想定される。)に好適に用いることが可能である。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0117】
物性の測定方法は、以下のとおりである。
[重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)、(メタ)アクリル系共重合体中の分子量5000以下の割合]
合成例等の(メタ)アクリル系共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で微分分子量分布曲線と積分分子量曲線を求めた。微分分子量分布曲線よりMwおよびMw/Mnを、積分分子量分布曲線より分子量が5000以下の割合を求めた。
【0118】
・測定装置:HLC-8220GPC(東ソー製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー製)
(1)TSKgel HxL-H(ガードカラム)
(2)TSKgel G7000HXL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel GMHxL
(5)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
【0119】
[合成例A-1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)40.5部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)56部、アクリル酸(AA)3.5部、酢酸エチル100部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を70℃に加熱した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」ともいう。)0.05部を攪拌下フラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が70℃に維持できるように、加熱および冷却を5時間行った。温度を78℃に昇温した後、2時間還流反応を行い、(メタ)アクリル系共重合体(A-1)を得た。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体(A-1)を含む、固形分濃度30質量%のポリマー溶液を調製した。得られた(A-1)についてGPCにより測定したMwは89万、Mw/Mnは5.2、分子量が5000以下の割合は0.1質量%であった。
【0120】
[合成例A-2~A-10]
表1に示す通りの原料を使用した以外は、合成例A-1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体(A-2)~(A-10)を製造した。
【0121】
[合成例A-11]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)40.5部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)56部、アクリル酸(AA)3.5部、酢酸エチル140部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を70℃に加熱した。次いで、AIBN0.05部を攪拌下フラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が70℃に維持できるように、加熱および冷却を5時間行った。その間、反応開始から10分後にAIBNを0.05部、20分後にAIBNを0.05部、30分後にAIBNを0.05部追加添加した。その後、温度を78℃に昇温し、2時間還流反応を行い、(メタ)アクリル系共重合体(A-11)を得た。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体(A-11)を含む、固形分濃度30質量%のポリマー溶液を調製した。得られた(A-11)についてGPCにより測定したMwは42万、Mw/Mnは9.0、分子量が5000以下の割合は1.7質量%であった。
【0122】
【0123】
表1中のモノマー成分の記号の意味は以下の通りである。
BA:n-ブチルアクリレート
t-BA:t-ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
i-OA:イソオクチルアクリレート
AA:アクリル酸
【0124】
[実施例1]
合成例A-1で得られたポリマー溶液(固形分濃度30質量%)と、粘着付与樹脂としてDP-2669(ハリマ化成製:ロジン系粘着付与樹脂、軟化点135℃)と、架橋剤としてL-45K(綜研化学製:イソシアネート架橋剤、固形分濃度45質量%)を、それぞれ固形分比が、A-1が100部、DP-2669が20部、L-45Kが1.5部となる量で混合して、粘着剤組成物を得た。
【0125】
[実施例2~9、比較例1~10]
粘着剤組成物の配合組成を表2または表3に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。なお、表3および表4中の各成分の欄の数値は質量部を示す。
【0126】
[マーキングシートの製造]
得られた粘着剤組成物を用い、剥離処理されたライナー上に、乾燥後の厚さが30μmになるように第1の粘着剤層を形成し、その上に第1の基材としてアルミニウム基材(50μm厚)を積層し、その上に乾燥後の厚さが50μmになるように第2の粘着剤として第1の粘着剤と同様の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成し、その上に第2の基材としてPVC基材(50μm厚)を積層することにより、評価用のマーキングシートを作製した。
【0127】
[評価方法]
(1)耐熱性、(2)耐湿熱性、(3)金属基材への密着性、(4)路面貼付試験に基づく耐剥がれ性の評価、(5)路面貼付試験後の再剥離性の評価、および(6)粘着力の評価を行った。各評価方法を以下に示す。各評価結果を表2および表3に示す。
【0128】
(1)耐熱性の評価
研磨SUSにマーキングシートを貼りつけ、80℃の条件下で7日間経過させ、その後23℃/50%RH条件下で30分間静置後に、被着体の面から180°の剥離角度で、300mm/分の引張速度で剥がした時の剥離形態を目視で観察し、下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:粘着剤の転着面積が1%未満であった。
△:粘着剤の転着面積が1%以上20%未満であった。
×:粘着剤の転着面積が20%以上であった。
【0129】
(2)耐湿性の評価
研磨SUSにマーキングシートを貼りつけ、60℃/95%RHの条件下で7日間経過させ、その後23℃/50%条件下で30分間静置後に、被着体の面から180°の剥離角度で、300mm/分の引張速度で剥がした時の剥離形態を目視で観察し、下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:粘着剤の転着面積が1%未満であった。
△:粘着剤の転着面積が1%以上20%未満であった。
×:粘着剤の転着面積が20%以上であった。
【0130】
(3)金属基材への密着性の評価
指で粘着剤層部分を擦り、目視で観察し、下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:30回以上、指で擦っても剥がれ等の変化無し。
△:11~30回、指で擦って剥がれが生じた。
×:10回以内に、指の擦りで剥がれが生じた。
【0131】
(4)路面貼付試験に基づく耐剥がれ性の評価
アスファルトの路面を掃き掃除した後、その路面に10cm×15cmサイズに裁断したマーキングシートを手で貼付し、さらにゴムハンマーを用いて圧着した。そのマーキングシートの3ヶ月後の剥がれについて目視で観察し、下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:まったく剥がれが無かった。
△:端部に剥がれや浮きが見られた。
×:剥がれていた。
【0132】
(5)路面貼付試験後の再剥離性の評価
アスファルトの路面を掃き掃除した後、その路面に10cm×15cmサイズに裁断したマーキングシートを手で貼付し、さらにゴムハンマーを用いて圧着した。そのマーキングシートを3ヶ月後に剥がした時の剥離形態を目視で観察し、下記の基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:粘着剤の転着面積が1%未満であった。
△:粘着剤の転着面積が1%以上20%未満であった。
×:粘着剤の転着面積が20%以上であった。
【0133】
(6)粘着力の評価
研磨SUSにマーキングシート(幅25mm)を貼りつけ、23℃/50%RHの条件下で20分間静置後に、被着体の面から180°の剥離角度で、300mm/分の引張速度で剥がした時の粘着力(N/25mm)を評価した。
【0134】
【0135】
【0136】
表2および表3中の粘着付与樹脂の詳細は以下の通りである。
DP-2669(ハリマ化成製「ハリタックDP-2669」;ロジン系粘着付与樹脂、軟化点135℃)
D-135(荒川化学工業製「ペンセルD-135」;ロジン系粘着付与樹脂、軟化点135℃)
D-160(荒川化学工業製「ペンセルD-160」;ロジン系粘着付与樹脂、軟化点160℃)
FTR-6100(三井化学製;スチレン系粘着付与樹脂、軟化点100℃)
D-125(荒川化学工業製「ペンセルD-125」;ロジン系粘着付与樹脂、軟化点125℃)
SEA-100(荒川化学工業製「スーパーエステルA-100」;ロジン系粘着付与樹脂、軟化点100℃)
L-45K(綜研化学製;イソシアネート架橋剤)
【0137】
表2より、実施例1~9より得られるマーキングシートは、粘着物性として必要な基材への密着性や路面への粘着性を維持しつつ、高温高湿環境下においても応力緩和性に優れ、さらに路面から剥離した際に路面への糊残りが少ない、すなわち路面に対する再剥離性に優れる結果となった。
【0138】
軟化点が120℃未満のロジン系粘着付与樹脂を使用した比較例1および2のマーキングシート、軟化点が120℃以上のロジン系粘着付与樹脂の配合量が、本発明で定める範囲でない比較例3~5のマーキングシート、各種モノマーの含有量が本発明で定める範囲でない比較例6~9のマーキングシート、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量5000以下の割合が本発明で定める範囲でない比較例10のマーキングシートは、各粘着物性が劣る結果となった。
【符号の説明】
【0139】
10:被着体もしくは剥離ライナー
11:第1の粘着剤層
12:金属基材からなる第1の基材
13:第2の粘着剤層
14:ポリ塩化ビニルからなる第2の基材
15:第3の粘着剤層
16:ポリイミドからなる第3の基材