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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】マイクロトランスデューサの成形
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
H04R9/02 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022556212
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021023257
(87)【国際公開番号】W WO2021188962
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】62/992,583
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マレク・カウカ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】マーサ・カーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・エム・パーカー
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0160598(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響トランスデューサを形成する方法であって、
頂点を備える非平面状の懸架装置を形成するように構成された内部キャビティ幾何学形状を有する型を提供するステップであって、
前記型における頂点位置は、前記懸架装置の静止位置における頂点からの半径方向オフセット又は軸方向オフセットのうちの少なくとも1つを有し、
前記型の内部キャビティ幾何学形状の外縁が、8ミリメートル未満の最大長さ寸法を有する幾何学的に閉じた形状を画定するステップと、
前記型に適合材料を注入するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記型に対して第1の位置においてピストンを提供し、前記型に対して第2の位置においてフレームを提供することを更に含み、前記適合材料を前記型に注入することにより、前記適合材料が前記ピストン及び前記フレームの各々に接触することが引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適合材料が、前記ピストン及び前記フレームの各々に少なくとも部分的に付着するため、前記型から取り外すと、前記適合材料が前記フレームに対して前記ピストンを懸架する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記最大長さ寸法が、5.5mm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記幾何学的に閉じた形状が、円である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記半径方向オフセットが、約20マイクロメートル(μm)~110μmの範囲内である、及び前記軸方向オフセットが、約20μm~130μmの範囲内である、のうちの少なくとも1つである、請求項1の方法。
【請求項7】
音響トランスデューサであって、
8.0ミリメートル以下の最大長さ寸法を有するフレームと、
前記フレームに結合された適合材料から形成された頂点を有する非平面状の懸架装置と、
前記懸架装置に結合されたピストンであって、前記ピストンが前記フレーム内に懸架され、静止位置にあるときの前記ピストンが5~50ニュートン/メートル(N/m)の範囲の剛性で、加えられる力に反応するように前記懸架装置に懸架されている、ピストンと、を備え、
前記懸架装置は、頂点を備える非平面状の懸架装置を形成するように構成された内部キャビティ幾何学形状を有する型を提供することであって、
前記型における前記頂点の位置は、前記懸架装置の静止位置における頂点からの半径方向オフセット又は軸方向オフセットのうちの少なくとも1つを有することと、
前記型に適合材料を注入することと、によって形成される音響トランスデューサ。
【請求項8】
前記適合材料を前記型に注入することにより、前記適合材料が前記ピストン及び前記フレームの各々に接触することが引き起こされる、請求項7に記載の音響トランスデューサ。
【請求項9】
前記適合材料が、前記ピストン及び前記フレームの各々に少なくとも部分的に付着するため、前記型から取り外すと、前記適合材料が前記フレームに対して前記ピストンを懸架する、請求項7に記載の音響トランスデューサ。
【請求項10】
前記型の内部キャビティ形状の外縁が、5.5ミリメートル以下の最大長さ寸法を有する幾何学的に閉じた形状を画定する、請求項7に記載の音響トランスデューサ。
【請求項11】
前記幾何学的に閉じた形状が、円である、請求項10に記載の音響トランスデューサ。
【請求項12】
前記半径方向オフセットが、約20マイクロメートル(μm)~110μmの範囲内である、及び前記軸方向オフセットが、約20μm~130μmの範囲内である、のうちの少なくとも1つである、請求項7に記載の音響トランスデューサ。
【請求項13】
型であって、
非平面状のトランスデューサの懸架装置を形成するように構成された内部幾何学形状を有する内部キャビティであって、
前記懸架装置は頂点を有し、
前記型における頂点の位置は、前記懸架装置の静止位置における頂点からの半径方向オフセット又は軸方向オフセットのうちの少なくとも1つを含み、
前記型の内部キャビティ幾何学形状の外縁が、8ミリメートル未満の最大長さ寸法を有する幾何学的に閉じた形状を画定する内部キャビティと、
適合材料を前記内部キャビティに注入することを可能にするための入口と、を備える、型。
【請求項14】
前記半径方向オフセットが、約20マイクロメートル(μm)~110μmの範囲内である、及び前記軸方向オフセットが、約20μm~130μmの範囲内である、のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の型。
【請求項15】
前記幾何学的に閉じた形状が、円である、請求項13に記載の型。
【請求項16】
前記適合材料が前記内部キャビティに注入されると、ピストン及びフレームのうちの少なくとも1つに接触するように、前記ピストン及び前記フレームのうちの少なくとも1つと係合するための1つ以上の遊びを更に有する、請求項13に記載の型。
【請求項17】
前記適合材料が、前記ピストン及び前記フレームの各々に少なくとも部分的に付着するため、前記型から取り外すと、前記適合材料が前記フレームに対して前記ピストンを懸架する、請求項16に記載の型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月20日に出願された「MICRO TRANSDUCER MOLDING」と題する米国特許出願第62/992,583号の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本開示は、電気音響トランスデューサに関し、様々な実施例では、適合懸架装置/包囲物を有するダイヤフラムを含む小型電気音響トランスデューサに関する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、様々な実施例において、高適合懸架システムによって懸架されている、8.0mm以下の直径、5.5mm以下の直径、又は4.2mm以下の直径を有するものなどの小さなダイヤフラムを有する小型電気音響トランスデューサを対象とする。懸架システムは、フレーム内にダイヤフラムを取り付けるか又は懸架するために射出成形され得る高適合性材料で形成された包囲物であり得る。いくつかの実施例では、本明細書のものに一致する小型電気音響トランスデューサの全幅、例えば、フレームの幅は、3.0mm以下であってもよく、4.2mm以下、5.5mm、又は8.0mm以下であってもよい。
【0004】
様々な実施例によれば、本明細書におけるものと一致するダイヤフラムは、中央ピストン、懸架装置、及びフレームから構成され得る。いくつかの実施例では、中央ピストン及び/又はフレームは、ナイロン及び/又はガラス繊維の組み合わせなどの熱可塑性材料から構築され得る。いくつかの実施例では、フレーム又はピストンのいずれかは、ナイロン9T(例えば、ポリアミド9T)から構築され得る。
【0005】
様々な実施例では、懸架装置(包囲物とも呼ばれる)は、デュロメータが70ショアA未満、好ましくは50ショアA未満の液体シリコーンゴム(liquid silicone rubber、LSR)、又は他の好適に適合性の材料で形成されてもよい。いくつかの実施例では、包囲物の材料のデュロメータは20ショアA~40ショアAであってもよく、特定の実施例では約30ショアAであってもよい。
【0006】
様々な実施例では、包囲物材料の厚さは、10~100μmの範囲であり得、50μm未満であり得、いくつかの実施例では、20~30μmの範囲であり得、特定の実施例では、約25μmであり得る。様々な実施例では、ダイヤフラムは、直径5.5mm以下であり得、いくつかの実施例では、約5.2mm以下であり得、特定の実施例では、約4mm以下であり得る。様々な実施例では、懸架装置は、50N/m以下の静止位置において軸方向剛性を有するピストン及び懸架装置アセンブリをもたらすことができる。いくつかの実施例では、軸方向剛性は、35N/m以下であり得、特定の実施例では、25N/m以下であり得る。特定の実施例では、軸方向剛性は、約8~30N/mの範囲内であり得るか、又は約5~15N/mの範囲内であり得る。軸方向剛性とは、ピストンを軸方向に、例えば、ピストンの表面に対して垂直に、かつ/又は包囲物の平面に対して垂直に、静止位置からある距離だけ移動させるのに必要な力の量を意味する。この軸方向剛性は、ピストンが静止位置から更に移動するにつれて増加し得るが、本明細書における軸方向剛性への言及は、静止位置における、又は静止位置のごく近くでの力対距離比、例えば、静止位置から離れる際のエクスカーションが、懸架システムを伸ばさないエクスカーション量など、必要な力を増加させる前のものを指す。
【0007】
様々な態様によれば、懸架装置の所望の幾何学形状からの半径方向オフセット又は軸方向オフセットのうちの少なくとも1つを有する内部キャビティ幾何学形状を有する型を提供し、適合材料を型に注入することを含む、音響トランスデューサを形成する方法が提供される。
【0008】
様々な実施例はまた、型に対して第1の位置においてピストンを提供し、型に対して第2の位置においてフレームを提供することを含み、適合材料を型に注入することにより、適合材料がピストン及びフレームの各々に接触することが引き起こされる。いくつかの実施例では、適合材料は、ピストン及びフレームの各々に少なくとも部分的に付着するため、型から取り外すと、適合材料がフレームに対してピストンを懸架する。
【0009】
いくつかの実施例によれば、型の内部キャビティ幾何学形状の外縁は、8ミリメートル未満の最大長さ寸法を有する幾何学的に閉じた形状を画定する。様々な実施例では、最大長さ寸法は、5.5mm以下である。様々な実施例では、幾何学的に閉じた形状は、円であり得る。
【0010】
特定の実施例では、半径方向オフセットは、約20マイクロメートル(μm)~110μmの範囲内である、及び軸方向オフセットは、約20μm~130μmの範囲内である、のうちの少なくとも1つである。
【0011】
他の態様によれば、8.0ミリメートル以下の最大線状寸法を有するフレームと、フレームに結合された適合材料で形成された懸架装置と、懸架装置に結合されたピストンであって、ピストンがフレーム内に懸架され、静止位置にあるときのピストンが、5~50ニュートン/メートル(N/m)の範囲の剛性で、加えられる力に反応するように、懸架装置によって懸架されている、ピストンと、を含む音響トランスデューサが提供される。
【0012】
いくつかの実施例によれば、懸架装置は、懸架装置の所望の幾何学形状からの半径方向オフセット又は軸方向オフセットのうちの少なくとも1つを有する内部キャビティ幾何学形状を有する型を提供し、適合材料を型に注入することによって形成され得る。
【0013】
様々な実施例によれば、適合材料を型に注入することにより、適合材料がピストン及びフレームの各々に接触することが引き起こされる。
【0014】
特定の実施例では、適合材料は、ピストン及びフレームの各々に少なくとも部分的に付着するため、型から取り外すと、適合材料がフレームに対してピストンを懸架する。
【0015】
いくつかの実施例では、型の内部キャビティ幾何学形状の外縁は、5.5ミリメートル以下の最大長さ寸法を有する幾何学的に閉じた形状を画定する。特定の実施例では、幾何学的に閉じた形状は、円であり得る。
【0016】
特定の実施例によれば、半径方向オフセットは、約20マイクロメートル(μm)~110μmの範囲内である、及び軸方向オフセットは、約20μm~130μmの範囲内である、のうちの少なくとも1つである。
【0017】
別の態様によれば、トランスデューサ懸架装置の所望の幾何学形状からの半径方向オフセット又は軸方向オフセットのうちの少なくとも1つを含む内部幾何学形状を有する内部キャビティ、及び内部キャビティに適合材料を注入することを可能にするための入口を含む型が提供される。
【0018】
いくつかの実施例によれば、半径方向オフセットは、約20マイクロメートル(μm)~110μmの範囲内である、及び軸方向オフセットは、約20μm~130μmの範囲内である、のうちの少なくとも1つである。
【0019】
様々な実施例によれば、型の内部幾何学形状の外縁は、8.0ミリメートル以下の最大長さ寸法を有する幾何学的に閉じた形状を画定する。特定の実施例では、幾何学的に閉じた形状は、円であり得る。
【0020】
様々な実施例では、型は、適合材料が内部キャビティに注入されると、ピストン及びフレームのうちの少なくとも1つに接触するように、ピストン及びフレームのうちの少なくとも1つと係合するための1つ以上の遊びを含む。特定の実施例では、適合材料は、ピストン及びフレームのうちの少なくとも1つの各々に少なくとも部分的に付着するため、型から取り外すと、適合材料がフレームに対してピストンを懸架する。
【0021】
これらの例示的態様及び実施例に関する更なる他の態様、実施例、及び利点を、以下で詳細に考察する。本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の様式で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一実施例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「一実施例(one example)」などへの言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すように意図される。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を示すわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
少なくとも1つの例の様々な態様を、添付図面を参照して、以下で考察するが、これらの図面は、縮尺通りに描かれることを意図しない。これらの図は、様々な態様と例の図示、及び更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本発明の制約の定義として意図されない。図において、様々な図で図示される同一の、又はほとんど同一の構成要素は、同様の文字又は数字で表記され得る。明瞭にするために、全ての図において、全ての構成要素が、必ずしもラベル付けされていない場合がある。図中、
図1】本明細書に記載の実施例に従う、例示的な小型トランスデューサの概略図である。
図2A図1の小型トランスデューサの例示的な包囲物構成要素を図示する概略図である。
図2B図2Aの例示的な包囲物構成要素を作製するための例示的な型幾何学形状を図示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
現代のインイヤ式ヘッドホン又はイヤホンは、典型的には、小型の電気音響トランスデューサであるマイクロスピーカを含む。マイクロスピーカは、磁場内に位置付けられ、音響ダイヤフラムに機械的に結合された音声コイルを含み得る。音声コイルに提供される電気信号は、ダイヤフラム、及びピストン又はその音響放射表面の動きをもたらし、それによって、電気信号に応答して音響信号を生成する。マイクロスピーカは、ピストンが懸架装置又は包囲物によって懸架されているフレームを含み得、音声コイル及び磁気構造又は回路を取り囲むハウジングを含み得る。イヤホンのサイズが小さくなるにつれて、包囲物懸架装置を有する音響ダイヤフラムを、広域スペクトルのカバーを可能にするように製作することが難しくなってきている。本明細書に記載のマイクロスピーカの実施例は、従来のマイクロスピーカと比較して、高適合性(低剛性)の包囲物又は懸架装置を含む。そのような高適合トランスデューサの少なくとも1つの利点としては、従来のマイクロスピーカよりも広いスペクトル出力、例えば、従来の設計と比較して、より大きい音響変位及びより広い周波数範囲にわたる出力が挙げられる。
【0024】
概して、一態様では、電気音響トランスデューサは、前面、背面、及び外周を有するピストンと、ピストンに結合されたボビンと、ピストン及びフレームに結合された懸架装置(包囲物)と、を含む。ボビンは、導電体の巻線(例えば、音声コイル)を保持するように構成され得る。ボビン軸に沿ったボビンの動きにより、ピストンの動きが生成され、それによってピストンの前面から伝播する音響信号が生成される。いくつかの実施例では、音声コイルは、ボビンなしで、より直接的にピストンに結合され得る。この懸架装置は、トランスデューサの全体的な寸法規模を考えると、高い適合性を提供する。場合によっては、ダイヤフラムという用語は、ピストン及び/又は全体的な音響放射表面(例えば、ピストンの前面及び懸架装置の一部分を含み得る)を指すことが意図され得る。他の例では、ダイヤフラムという用語は、ピストン、包囲物、及びフレームから構成されるダイヤフラムアセンブリを指すことが意図され得る。
【0025】
本明細書で考察される方法と機器の実施例は、以下の説明に記載されるか、又は添付の図面で図示される構成の詳細、並びに、構成要素の配置に適用することに限定されない。本発明の方法及び機器は、他の実施例で実装可能であり、様々な方式で実施又は遂行可能である。具体的な実施例は、例示目的のみのために本明細書で提供され、限定を意図するものではない。具体的には、任意の1つ以上の実施例に関連して考察される機能、構成要素、要素、及び特徴は、任意の他の実施例において同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0026】
本明細書で開示する実施例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の様式で、外部の実施例と組み合わせることができ、更に、「実施例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替の実施例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「一実施例(one example)」などへの言及は、必ずしも互いに排他的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すように意図される。
【0027】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書において単数で言及されるシステム及び方法の実施例、構成要素、要素、行為、又は機能に対する任意の言及はまた、複数を含む実施形態を包含してもよく、本明細書における任意の例、構成要素、要素、動作、又は機能に対する複数での任意の言及もまた、単数形のみを含む実施例を包含してもよい。したがって、単数形又は複数形の参照は、本開示のシステム又は方法、それらの構成要素、行為、又は要素を制限することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、並びに、それらの変形形態の使用は、以下で列挙する項目とその等価物、並びに、他の項目を包含することを意味する。「又は(or)」への言及は、「又は(or)」で記載された全ての用語が、記載された用語の単一、複数、及び、全ての用語のいずれかを示せるよう、包括的であると解釈され得る。前後、左右、上下、上下、及び縦横への言及は、説明の便宜のためであり、本システムと方法、あるいは、それらの構成要素を、何らかの1つの位置的か、又は空間的方向に限定するものではない。
【0028】
図1は、懸架装置120によって支持されたピストン110を有し、懸架装置120はフレーム130に更に結合されている例示的なトランスデューサ100の断面図を図示している。フレーム130は、ピストン110が懸架装置120によって懸架される支持構造を形成する。様々な実施例では、フレーム130は、カップ140に結合され得、カップ140は、フレーム130、懸架装置120、及びピストン110と共同して、取り囲まれた容積を形成し得る。更に、様々な実施例では、ボビン150は、ピストン110に機械的に結合され得、音声コイル160を支持し得る。音声コイル160は、いくつかの実施例では、一次磁石170によって創出され得る磁場内に位置付けられ得る。電流が音声コイル160を通過するとき、当技術分野で知られているように、一次磁石170の磁場と相互作用して軸方向Aへの力を創出する更なる磁場が生成され、ボビン150を介してピストン110に伝わり、ピストン110はこれに反応して動き、それによって電気エネルギーを空気中の音響エネルギーに変換する。全てではないがいくつかの実施例では、磁場は、二次磁石180及び/又はコイン190によって更に成形及び/又は強化され得る。図示の例示的なトランスデューサ100の構造は単なる実施例であり、本明細書に記載の本発明のシステム及び方法から逸脱することなく、多数の他の構造が好適であり得る。
【0029】
本明細書に記載の方法及び装置は、懸架装置120の製造及び形態を対象としている。ピストン110及びフレーム130は、懸架装置120の現在置かれた環境を形成し、多数の形態のいずれかを取ることができる。ピストン110、懸架装置120、及びフレーム130の組み合わせは、本明細書ではアセンブリ又はダイヤフラム(又はダイヤフラムアセンブリ)と称され得る。懸架装置120は、ピストン110が音声コイル160からの力に応答して移動することを可能にする。公称又は静止位置からピストン110を軸方向に所与の距離Aだけ移動させるのに必要な力の量は、懸架装置120(又はアセンブリの)の剛性である。様々な実施例では、軸方向剛性は、50ニュートン/メートル(N/m)以下であり得る。いくつかの実施例では、軸方向剛性は、35N/m以下であり得るか、又は25N/m以下であり得る。特定の実施例では、軸方向剛性は、約8~30N/mの範囲内であり得るか、又は約5~15N/mの範囲内であり得る。
【0030】
様々な実施例では、本明細書に記載のトランスデューサは、8.0ミリメートル(mm)以下、5.5mm以下の総直径D(又は場合によってはダイヤフラム直径)を有し得、特定の例では、約4mm以下であり得る。
【0031】
ピストン110は、湾曲又はドーム構造として示されているが、様々な実施例では、ピストン110は、実質的に平面状の構造であり得る。更に、図示されるように、ピストン110は、露出した外面又は前面を有する剛性構造である。前面は、音響エネルギーが動作中に発せられる空気インターフェースである。一般に、ダイヤフラムという用語は、流体、例えば、空気と接触しているトランスデューサの部分を指し得、流体に対して動くことで流体内に圧力波を生成させる。様々な実施例では、図示されるようなピストン110は、別の材料で覆われてもよく、又は別の材料でコーティングされてもよく、かかる材料の面は、本明細書に記載の実施例から逸脱することなく、上記の定義によって技術的に「ダイヤフラム」であり得る。例えば、場合によっては、懸架装置120が形成される材料は、ピストン110の表面上に延在し得る。
【0032】
図1はボビン150を図示しているが、様々な実施例はボビンを含まない場合があり、音声コイル160をピストン110又はダイヤフラムアセンブリに結合する代替の形態を有し得る。
【0033】
様々な実施例では、懸架装置120は、ソフト適合材料で形成される。様々な実施例では、懸架装置材料は、20ショアA~40ショアAであり得、特定の実施例では、約30ショアAであり得る。
【0034】
図2Aは、ピストン110、懸架装置120、及びフレーム130のアセンブリの拡大断面図を図示する。懸架装置120は、厚さ122を有しており、これは10~100マイクロメートル(um)の範囲内であり得、70μm未満又は50μm未満であり得、かつ様々な実施例では40μm未満であり得、かついくつかの実施例では、20~30μmの範囲内であり得、かつ特定の実施例では、約25μmであり得る。
【0035】
特定の実施例では、懸架装置120は、射出成形によって形成され得る。様々な実施例では、懸架装置120は、液体シリコーンゴム(LSR)又は他の適切な適合材料から形成され得る。LSRを含むそのような材料は、硬化中に収縮し得る。本明細書に記載の小型トランスデューサ及び適合懸架装置材料の規模又は物理的サイズでは、懸架装置120は、様々な非比例的な様態で収縮し得る。したがって、本明細書に記載される方法及び実施例による懸架装置120の形成は、懸架装置120の物理的寸法における懸架装置120の適合材料の非比例的な収縮に対応する。したがって、型キャビティ200は図2Bに図示されており、例示的な懸架装置120がこれから作製され得る。型キャビティ200は、形成される予備硬化懸架装置材料の形状と一致する内部幾何学形状を有し、それにより、適切に成形された懸架装置120が硬化、乾燥、収縮などの後に生じる。
【0036】
図2Aは、懸架装置120の意図された結果として得られる形状によって画定される2つの基準位置、懸架装置120の「ハーフロール」の最高点における頂点124、及び任意の軸方向位置における基準126を含む。型キャビティ200は、これらの位置のうちの1つ以上が、結果として得られた懸架装置120とは異なる場所にあるように成形されている。「ハーフロール」という用語は主に、懸架装置120の非平面(例えば、非平坦)形状を指すことを意図しており、結果として得られた形状が必然的に半円形断面を有することを意味することを意図するものではないことに留意されたい。
【0037】
様々な実施例では、型キャビティ200の内部幾何学形状は、懸架装置120の頂点124から半径方向オフセット224を有する頂点を有する。特定の実施例では、オフセット224は、型キャビティ200の頂点が、例えば、頂点124よりもトランスデューサの中心に近いピストン110に近くなるようなものであり得る。
【0038】
いくつかの実施例では、半径方向オフセット224は、10μm以上であり得る。いくつかの実施例では、半径方向オフセット224は、約20μm~60μmの範囲内であり得る。いくつかの実施例では、半径方向オフセット224は、約20μm~130μmの範囲内であり得る。特定の実施例では、半径方向オフセット224は、約40μm、70μm、又は110μmであり得る。様々な実施例では、半径方向オフセット224は、懸架装置120が延在するスパン128(又はギャップ)の一部又はパーセンテージとして定義される(結果として得られた懸架装置120の頂点124に対する)型頂部のシフトを表し得る。様々な実施例では、半径方向オフセット224は、スパン128の5%~30%であり得る。いくつかの実施例では、半径方向オフセット224は、スパン128の18%~30%であり得る。
【0039】
様々な実施例では、スパン128は、約500μm以下であり得る。いくつかの実施例では、スパン128は、約430μm以下であり得る。いくつかの実施例では、スパン128は、図1の直径Dの一部、約5~15%であり得る。特定の実施例では、スパン128は、直径Dの約7~13%であり得、より具体的な実施例では、スパン128は、直径Dの8~12%であり得る。
【0040】
様々な実施例では、型キャビティ200の内部幾何学形状は、軸方向オフセット226を含み、それによって、懸架装置120を成形しながら、ピストン110は、その静止位置から(例えば、フレーム130に対して)軸方向にオフセットされた位置に保持される。様々な実施例では、軸方向オフセット226は、25μm以上であり得る。いくつかの実施例では、軸方向オフセット226は、約50μm~130μmの範囲内であり得る。特定の実施例では、軸方向オフセット226は、約70μm~120μmの範囲内であり得る。いくつかの態様によれば、様々な実施例は、20μm~60μm、又は30μm~60μmの軸方向オフセット226を有し得、40~50μmの範囲内であり得る。特定の実施例では、約4.2mmの直径Dを有する小型トランスデューサの懸架装置120は、約40~50μmの軸方向オフセットを有する型キャビティ200によって製造され得る。
【0041】
本明細書に記載されるように型キャビティ200に従って成形した後、型から収縮した後の結果として得られた懸架装置120は、例えば、図1に従って、図2Aに更に図示されるように、所望の形状を有し得る。図に明示的に示されていないが、型キャビティ200は、適合材料が型キャビティ200に導入又は注入され得る入口又はノズルを含み得る。
【0042】
少なくとも1つの実施例に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、及び改善が容易に思い付くことが、理解されるであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、実施例にすぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構成、及びそれらの等価物から判定されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
100 トランスデューサ
110 ピストン
120 懸架装置
124 頂点
126 基準
128 スパン
130 フレーム
140 カップ
150 ボビン
160 音声コイル
170 一次磁石
180 二次磁石
190 コイン
200 型キャビティ
224 半径方向オフセット
226 軸方向オフセット
図1
図2A
図2B