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特許7549676ダイオード励起パルスレーザを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】ダイオード励起パルスレーザを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/131 20060101AFI20240904BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20240904BHJP
   H01S 5/068 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
H01S3/131
H01S3/0941
H01S5/068
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022567602
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021061770
(87)【国際公開番号】W WO2021224288
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】20172968.8
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522432985
【氏名又は名称】ドルニエ・メドテック・レーザー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DORNIER MEDTECH LASER GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒーレート,ベルナー
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0018350(US,A1)
【文献】米国特許第09368933(US,B1)
【文献】米国特許第06414980(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第01696522(EP,A2)
【文献】国際公開第2013/079943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスダイオード励起されるTm:YAGレーザを動作させる方法であって、
Tm:YAGレーザを励起するための励起光源を提供することを含み、前記励起光源は、前記Tm:YAGレーザを励起するための一連の光パルス(105、106、107)を放出するよう構成される少なくとも1つのレーザダイオードユニットを含み、前記少なくとも1つのレーザダイオードユニットは、前記Tm:YAGレーザの要求周波数設定に近いか等しい周波数を有する光パルスを放出するとともに、前記要求周波数設定に等しくない周波数を有する光パルスを放出し、前記要求周波数設定に等しくない周波数は、前記要求周波数設定の付近の所定の間隔外の周波数であり、
前記方法はさらに、
前記少なくとも1つのレーザダイオードユニットの前記一連の発光パルス(105、106、107)を変調して、前記Tm:YAGレーザの要求周波数設定に近いか等しい周波数を有する光パルス(106、107)のみを、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こすように、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で動作させ
前記少なくとも1つのレーザダイオードユニットによって放出される任意の他の光パルス(105)を、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こさないように動作させるようにすることを含む、方法。
【請求項2】
前記要求周波数設定は、300Hz未満または100Hz以下の周波数にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Tm:YAGレーザの前記要求周波数設定は、5Hz,10Hz,20Hz,25Hzまたは50Hzの周波数設定のうちの1つであり、
前記少なくとも1つのレーザダイオードユニットは、100Hzの周波数を有する光パルス(105、106、107)を放出するように動作され、
5Hzの要求周波数設定の場合に、前記レーザダイオードユニットの光パルスを、20番目ごとにのみ、前記必要なパルス振幅および/または前記必要なパルス持続時間で動作させて、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こし、
10Hzの要求周波数設定の場合に、前記レーザダイオードユニットの光パルスを、10番目ごとにのみ、前記必要なパルス振幅および/または前記必要なパルス持続時間で動作させて、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こし、
20Hzの要求周波数設定の場合に、前記レーザダイオードユニットの光パルスを、5番目ごとにのみ、前記必要なパルス振幅および/または前記必要なパルス持続時間で動作させて、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こし、
25Hzの要求周波数設定の場合に、前記レーザダイオードユニットの光パルスを、4番目ごとにのみ、前記必要なパルス振幅および/または前記必要なパルス持続時間で動作させて、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こし、
50Hzの要求周波数設定の場合に、前記レーザダイオードユニットの光パルスを、2番目ごとにのみ、前記必要なパルス振幅および/または前記必要なパルス持続時間で動作させて、前記Tm:YAGレーザの発光を引き起こす、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パルスダイオード励起されるTm:YAGレーザの動作中、前記少なくとも1つのレーザダイオードユニットを駆動するために供給される電流は常に非零である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ダイオード励起されるTm:YAGレーザシステムであって、
Tm:YAGレーザと、
請求項1~4のいずれか1項に従って動作するよう構成される少なくとも1つのレーザダイオードユニットとを備える、ダイオード励起されるTm:YAGレーザシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレーザダイオードユニットは、単一のレーザダイオードもしくはレーザダイオードの1次元アレイ、またはレーザダイオードの2次元アレイ、またはレーザダイオードの3次元アレイを含む、請求項5に記載のダイオード励起されるTm:YAG固体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現状技術
本発明は、特許請求項1の前文に規定されるタイプの方法および特許請求項5の前文に規定されるレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体レーザは、通常、ガスランプまたはレーザダイオードを励起光源として用いて励起される。ガスランプはレーザダイオードよりも安価であるが、寿命が短く、さらには、広いスペクトル放射しか提供することができず、固体レーザの励起効率はかなり低い。
【0003】
他方、ダイオードレーザは、ガスランプよりもはるかに高価であるが、寿命がはるかに長く、その発光スペクトルのスペクトル幅が狭く(例えば、2~3nm)、したがって、狭い幅(例えば、数nm)のスペクトル吸収帯を有する固体レーザの励起においてはるかに効率的である。しかしながら、狭い幅の吸収帯を有する固体レーザを効率的に励起するためには、ダイオードレーザは、かなり狭い温度範囲で動作しなければならず、なぜならば、ダイオードレーザの発光波長/発光スペクトルはレーザダイオードの温度に依存し、例えば、発光波長または発光スペクトルピーク波長は、例えば、約0.28nm/℃だけ変化またはシフトし得るからである。
【0004】
したがって、レーザダイオードは、規定された波長/規定された発光スペクトルピーク波長を規定された動作温度においてのみ発するように設計される。
【0005】
連続波ダイオード励起固体レーザ(CWDPSSL)の場合、これは問題ではなく、なぜならば、レーザダイオードは動作中に一定の熱放散を有するからであるが、パルスダイオード励起固体レーザ(PDPSSL)の場合は、レーザダイオードの発光波長とその温度との間の温度-波長関係は、とりわけ、レーザダイオードの動作のデューティサイクルおよび冷却パラメータ/動作に依存し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パルス固体レーザを励起するための現在の技術は、煩雑であり、低速であり、効率的ではなく、例えば、固体レーザの所望の動作周波数の広範囲にわたって、固体レーザのレーザパワー出力効率の望ましくない低下をもたらす。
【0007】
さらに、レーザダイオードを介してパルス固体レーザを励起するための現在の技術は、レーザダイオードが動作することができる温度の範囲がかなり制限され、それによって、特に医療/外科用途について、パルス固体レーザの動作周波数/周波数設定の可能な範囲もさらに制限される、という欠点を有する。
【0008】
加えて、固体レーザの励起のために、レーザダイオードの温度の制御を最適化するための、すなわちレーザダイオードの発光スペクトル/発光波長を制御するための現在の解決策は、かなり静的であり、レーザダイオードの温度変化を補償するためのレイテンシが低く、とりわけ、例えば熱電冷却器を備える、レーザダイオードのための複雑かつ専用の冷却機構を必要とする。
【0009】
課題
したがって、本発明の目的は、パルス固体レーザを励起するための改善された手段を提供することである。例えば、特に、本発明の目的はパルス固体レーザのダイオード励起の効率および効果を改善し、パルスダイオード励起固体レーザの安定性およびレーザパワー出力効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
解決方法
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の方法および請求項5に記載のレーザシステムによって達成される。
【0011】
有利な実施形態およびさらなる発展形態は、従属請求項の主題である。
パルスダイオード励起固体レーザを動作させる例示的な方法は、以下のステップのうちの1つ、いくつか、またはすべてを含んでもよい:
・固体レーザを励起するための励起光源を提供するステップを含み、前記励起光源は、固体レーザを励起するための一連の光パルスを放出するよう構成される少なくとも1つのレーザダイオードユニットを備え、本方法はさらに、
・少なくとも1つのレーザダイオードユニットの一連の発光パルスを変調して、固体レーザの要求周波数設定に近いか等しい周波数を有する光パルスのみを、固体レーザの発光を引き起こすように、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で動作させるようにすることを含み、
少なくとも1つのレーザダイオードユニットはさらに、少なくとも1つのレーザダイオードユニットの任意の他の光パルスを、固体レーザの発光を引き起こさないように動作させるように、構成される。
【0012】
ここで、固体レーザの発光を引き起こすのに必要なパルス振幅および必要なパルス持続時間という文言は、とりわけ、固体レーザの発光を引き起こすのに必要な最小パルス振幅および必要な最短パルス持続時間として理解することができる。
【0013】
したがって、上に例示的に記載した変調ステップにおいて、固体レーザの要求周波数設定に近いか等しい周波数を有する光パルスは、固体レーザの発光を引き起こすのに、必要な(最小の)パルス振幅に等しいかそれより大きいパルス振幅で、および/または必要な(最短の)パルス持続時間に等しいかそれより長いパルス持続時間で、動作させることができる。
【0014】
別の言い方をすれば、「必要なパルス振幅」および「必要なパルス持続時間」という文言は、固体レーザの発光を引き起こすために必要な最小パルス振幅および/または最短パルス持続時間を指すものとして理解することができる。
【0015】
さらに、本明細書では、固体レーザの要求周波数設定に近い周波数は、とりわけ、要求周波数設定の付近の所定の間隔内の周波数として理解することができる。例えば、固体レーザのパルス動作のための要求周波数設定の+/-10%の間隔内または+/-20%の間隔内である。
【0016】
言い換えれば、本明細書で説明される、パルスダイオード励起固体レーザを動作させるための例示的な方法では、少なくとも1つのレーザダイオードユニットによって放出される、固体レーザの要求周波数設定に近いか等しい周波数を有する発光パルスのみが、例えば、固体レーザからのレーザ発光を引き起こすのに充分である、パルス持続時間およびパルス振幅などの、レーザダイオード励起パラメータで動作され、すなわち、少なくとも1つのレーザダイオードユニットによって放出される、固体レーザの要求周波数に近いか等しい周波数を有する発光パルスのみが、固体レーザのレーザ発振閾値を超えるエネルギーを与えられる。
【0017】
少なくとも1つのレーザダイオードユニットによって放出される任意の他の光パルス、すなわち、固体レーザの要求周波数に等しくない周波数を有する光パルス、および/または固体レーザの要求周波数設定の付近の所定の間隔外、すなわち、それより高いか低い周波数を有する光パルスは、固体レーザの発光を引き起こさない、例えばパルス持続時間およびパルス振幅のような、レーザダイオード励起パラメータで動作させることができる。
【0018】
別の言い方をすれば、少なくとも1つのレーザダイオードユニットによって、固体レーザの要求周波数に等しくない周波数で放出される光パルス、および/または固体レーザの要求周波数設定の付近の所定の間隔外、すなわち、それより高いか低い周波数を有する光パルスは、固体レーザのレーザ発振閾値未満のエネルギーで動作させる/提供されることができる。
【0019】
したがって、固体レーザによって放出される光パルス間において、少なくとも1つのレーザダイオードユニットは、光パルスでの固体レーザの注入/励起を、固体レーザのレーザ発振閾値を下回るエネルギーでではあるが、継続することができる。
【0020】
パルスダイオード励起固体レーザを動作させるための本明細書で例示的に説明される方法ステップ、ならびにパルスダイオード励起固体レーザを動作させるための本明細書で例示的に説明されるレーザシステムおよびレーザシステム構成は、とりわけ、パルスモードで動作される固体レーザのレーザパワー出力を顕著に改善することができる。
【0021】
内部での実験試験は、驚くべきことに、パルス固体レーザのレーザパワー出力の顕著な増加が達成され得ることを示した。特に、例えば、公知のパルス固体レーザシステムと比較して、最大30%またはそれ以上の、レーザパルス当たりの最大エネルギーの増加を達成することができる。この利点は、特に低周波数設定において顕著である。
【0022】
このかなり予想外で驚くほど大きい有益な技術的効果の理由は、固体レーザのレーザ発振閾値より下のエネルギーを有するパルスを含む、レーザダイオードユニットの変調されたパルス動作が、レーザダイオードユニットのレーザダイオードを、レーザダイオードユニットのレーザダイオードの指定された動作温度に到達するよう、より迅速に、より効果的に、およびより効率的に加熱することができるという事実からとりわけ理解することができる。したがって、レーザダイオードユニットのレーザダイオードによって発光される光の波長を、固体レーザの利得媒質/レーザ結晶がレーザダイオードユニットのレーザダイオードによって発光される光を最も良く吸収する、レーザダイオードユニットのレーザダイオードの指定された動作波長に向かって、またはその動作波長に、より速くシフトさせることを可能にする。
【0023】
レーザダイオードユニットのレーザダイオードの指定された動作温度に、現在のシステムと比較して、より速く到達するだけでなく、レーザダイオードの動作条件、特にその/それらの動作温度が、現在のシステムと比較して、より安定かつ正確に保たれる。例えば、レーザダイオードユニットのレーザダイオードは、励起動作中、常に、全容量、最大エネルギーまたは最大電流で動作されるのではないので、レーザダイオードユニットのレーザダイオードを過熱する危険性、およびそれによって、ここでも、レーザダイオードユニットのレーザダイオードによって放出される励起光の波長を、固体レーザの利得媒質/レーザ結晶によって吸収されるのがより少ないかまったく吸収されない波長にシフトし、その結果、固体レーザの非効率的な励起およびレーザパワー出力の損失をもたらす危険性が低減される。
【0024】
したがって、固体レーザの励起は、より安定し、より効率的で、より正確となり、その結果、固体レーザのレーザ出力もより安定する。
【0025】
レーザダイオードユニットのレーザダイオードの最適な動作に迅速に到達し、固体レーザの最適かつ効率的な励起を迅速に確立することにより、本明細書で説明される方法および手段は、固体レーザの異なる動作モードの迅速な変更、例えば、固体レーザの異なる周波数設定間の迅速な変更、例えば、高周波数設定/高繰返し周波数設定から低周波数設定/低繰返し周波数設定への変更なども可能にする。本明細書では、高周波数設定/高繰返し周波数設定は、例えば、100Hz超または200Hz超の周波数を指してもよく、低周波数設定/低繰返し周波数設定は、100Hz未満または50Hz未満の周波数を指してもよい。
【0026】
パルスダイオード励起固体レーザを動作させるための本明細書に提示される例示的な方法ステップおよび本明細書に記載される例示的なレーザシステム構成は、固体レーザの異なる周波数設定間、例えば、低周波数設定と高周波数設定との間の準瞬時変化を可能にする。言い換えれば、パルスダイオード励起固体レーザを動作させるための本明細書で提示される例示的な方法ステップおよび本明細書で説明される例示的なレーザシステム構成は、固体レーザの異なる周波数設定間の変更のために、数十秒または数分またはそれ以上も必要とし得る、従来のシステムで必要とされるかなり長い時間スケールを本質的に排除する。
【0027】
パルスダイオード励起固体レーザを動作させるための本明細書に提示される例示的な方法ステップおよび本明細書に記載される例示的なレーザシステム構成は、パルスダイオード励起固体レーザシステムの、より効率的かつ安定した動作を可能にするので、例えば、レーザダイオードのための冷却機構を簡略化することができ、例えば、水冷機構によって実現することができる。したがって、レーザダイオードユニットのレーザダイオードのための、熱電冷却器などの、より高価な、および/またはより煩雑な熱調整構成要素を、省くことができる。
【0028】
したがって、固体レーザの、より高速な動作フローを提供することとは別に、特に低周波数設定、より高いレーザパルス当たりのレーザエネルギーにおける、固体レーザの改善された出力を、公知の固体レーザシステム、および固体レーザの異なる周波数設定間での変更のための、より低いレイテンシと比較して、達成することができ、本明細書で例示的に説明されるレーザシステム構成は、さらに、現在のシステムと比較して、ダイオード励起固体レーザシステムの、簡略化された、よりコンパクトな設計を可能にする。
【0029】
ダイオード励起固体レーザを動作させるための本明細書で例示的に説明される手段、レーザシステム構成、および方法は、特に、例えば生体組織の治療のための、医療/外科用途のためのパルスダイオード励起固体レーザに適することができ、固体レーザは、パルスモードで、1~数百Hzの周波数設定範囲で動作させられている。
【0030】
例えば、選択可能なダイオード励起固体レーザ周波数設定は、例えば、300Hz以下、特に、例えば、100Hz以下の周波数にあり得る。
【0031】
例えば、本明細書で説明される固体レーザシステムによる軟組織の治療のために、100~300Hzまたは50~300Hzの周波数を有する周波数設定が適用可能であってもよい。
【0032】
より硬い成分、例えば尿結石の治療または除去のためには、例えば、3~100Hzの周波数設定の範囲内の、ダイオード励起固体レーザのための周波数設定を使用することができる。
【0033】
患者から除去されるべき結石の破砕を促進および加速するために、ダイオード励起固体レーザの、より低い周波数設定を、より高いエネルギー/より大きいレーザダイオード電流、例えば、最大100Aまたは最大200Aまたはそれより高いレーザダイオード電流とともに、適用することができる。そのような治療または動作モードは、とりわけ、フラグメンテーションと称され得る。
【0034】
そして次に結石断片を、ダイオード励起固体レーザのための、より高い周波数設定、およびより低いエネルギー/より低いレーザダイオード電流、例えば100A未満または50A未満のレーザダイオード電流を用いて、除去することができる。そのような処理または動作モードは、とりわけ、ダスティング(粉状砕石)と称され得る。
【0035】
次いで、パルスダイオード励起固体レーザを動作させるための例示的な方法は、以下の設定およびステップを含んでもよい。
【0036】
例えば、例示的なダイオード励起固体レーザの選択可能/要求可能/目標レーザ周波数設定は、5Hz,10Hz,20Hz,25Hz,50Hz,75Hzまたは100Hzの周波数設定のうちの1つとすることができ、例示的なレーザダイオードユニットは、選択された励起波長、例えば固体レーザの好ましい/所望の周波数設定、すなわち固体レーザの所望の動作モードに対して最適化された励起波長に対して、100Hzの周波数で光パルスを放出するように設計/構成されることができる。
【0037】
ダイオード励起固体レーザの前記例示的な周波数設定について、例示的なレーザダイオードユニットから、またはそれによって放出される光パルスの変調は、以下のように指定することができる。
【0038】
・例えば、5Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットの光パルスを、20番目ごとにのみ、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で、動作させることができ、
・10Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットの光パルスを、10番目ごとにのみ、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で、動作させることができ、
・20Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットの光パルスを、5番目ごとにのみ、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で、動作させることができ、
・25Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットの光パルスを、4番目ごとにのみ、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で、動作させ、
・50Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットの光パルスを、2番目ごとにのみ、必要とされるパルス振幅および/または必要とされるパルス持続時間で、動作させ、
・75Hzまたは100Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットのすべてのパルスを、必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間で、動作させる。
【0039】
ここで、固体レーザの発光を引き起こすのに必要とされる例示的なパルス持続時間は、最長150μsの持続時間であるか、または最長500μsもしくはそれより長い持続時間であり得、レーザダイオード/レーザダイオードユニットを駆動するために印加される電流に関して表される必要とされる例示的なパルス振幅は、最大200Aまたはそれより大きくあり得、レーザダイオード/レーザダイオードユニットに印加され、レーザダイオード/レーザダイオードユニットからの光パルスの放出をもたらし、固体レーザからのレーザ発光を引き起こさない例示的な電流は、例えば65A以下とすることができる。
【0040】
とりわけ、固体レーザの発光を引き起こすための必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間は、固体レーザの発光を引き起こすためのパルスの必要なパルス振幅および/または必要なパルス持続時間の値が、選択/要求される固体レーザ周波数設定について異なり得るように、さらに変調されることが、さらに考えられる。
【0041】
例えば、上記に列挙した例示的な場合において、75Hzまたは100Hzの選択/要求される固体レーザ周波数設定の場合に、固体レーザの発光を引き起こすために、レーザダイオードユニットのすべてのパルスを、少なくとも必要なパルス振幅および/または少なくとも必要なパルス持続時間で動作させつつも、パルスはすべてが同じパルス振幅および/または同じパルス持続時間を有するわけではないことが考えられる。言い換えれば、この例では、パルスは、固体レーザの発光を引き起こすのに必要な少なくとも振幅およびパルス持続時間を有してもよいが、それらのいくつかまたは各々は、異なるパルス振幅および/または異なるパルス持続時間を有してもよい。
【0042】
さらに、パルスダイオード励起固体レーザの動作中、一般に、少なくとも1つのレーザダイオード/レーザダイオードユニットを駆動するために供給される電流は、常に非零とすることができる。これは、とりわけ、レーザダイオードユニットの動作温度の制御をさらに容易にすることができ、特に、レーザダイオードユニットのウォームアップ時間をさらに短縮することができ、したがって、固体レーザを異なる周波数設定で動作させる/異なる周波数設定間で変化する場合に、レーザシステムのレイテンシをさらに最適化(すなわち、低減)することができる。
【0043】
本明細書で例示的に説明されるように動作させることができる例示的なダイオード励起固体レーザシステムは、固体レーザと、本明細書で説明される例示的な説明されるステップのいずれかに従って動作するように構成することができる少なくとも1つのレーザダイオードユニットとを備えてもよい。
【0044】
例えば、固体レーザは、Tm:YAG(ツリウム:イットリウムアルミニウムガーネット)固体レーザとすることができる。
【0045】
例示的なレーザダイオードユニット、レーザダイオードユニットの例示的なレーザダイオードは、光パルスを、100Hzで780nmの波長または778~782nmの範囲、最長500μsのパルス持続時間、200Aまたは250Aの最大電流までの振幅、および25℃の例示的な温度で、放出するよう構成されてもよい。
【0046】
例示的なレーザダイオードユニットは、単一のレーザダイオードもしくはレーザダイオードの1次元アレイ、例えばダイオードレーザバー、またはレーザダイオードの2次元アレイ、例えばダイオードレーザバーのスタック、またはレーザダイオードの3次元アレイ、例えばダイオードレーザバーの複数のスタックを含んでもよい。
【0047】
本明細書に記載される例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードユニットの例示的なレーザダイオードは、特に、レーザダイオードユニット/レーザダイオードが、レーザダイオードユニット/レーザダイオードに供給される所定の電流の最大値またはその近傍で動作するときに、固体レーザの利得媒質の吸収スペクトルに実質的に一致する発光スペクトルを有する光を放出することができるように、構成することができる。
【0048】
特に、本明細書に記載される例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードユニットの例示的なレーザダイオードは、レーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードが、所定の最大電流で動作し、かつ意図される用途、すなわち、最大レーザパワー出力/レーザエネルギー出力E×固体レーザの要求周波数設定fの積が最適化され得るように、Eに関するfに最もクリティカルである周波数(動作周波数)で動作する場合に、固体レーザの利得媒質が光を最もよく吸収する波長に一致する波長で光を放出するように、構成/設計されることができる。
【0049】
さらに、固体レーザは、固体レーザのレーザパワー出力/レーザエネルギー出力を最適化するために、例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードの設計された動作周波数に可能な限り近い要求周波数設定(例えば、10%または20%未満内)で動作させることができる。本明細書において、例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードの動作周波数は、とりわけ、例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードから固体レーザに光パルスを提供する/放出する、固体レーザのレーザ発光を引き起こさない励起周波数として理解することができる。
【0050】
以下の図は、例示的である:
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】レーザダイオードユニットの一連の発光パルスの例示的な変調を示す。
図2】異なる周波数設定における例示的な固体レーザパワー/エネルギー出力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、例示的なレーザダイオードユニット/レーザダイオード(図示せず)の一連108の発光パルス105、106、107の例示的な変調100を示し、縦軸104は、光パルス105、106、107の振幅またはエネルギーを例示的に表すか、前記光パルス105、106、107を引き起こす、レーザダイオードユニット/レーザダイオードに供給される電流を例示的に表し、横軸103は、時間を例示的に表す。
【0053】
参照番号106および107で示される例示的なパルスは、レーザダイオードユニット/レーザダイオードから前記パルスを受けている固体レーザ(図示せず)の発光を引き起こすのに必要であるか充分な振幅/エネルギーで、レーザダイオードユニット/レーザダイオードによって放出されるパルスを例示的に表し、すなわち、前記パルス106、107は、固体レーザのレーザ発振閾値以上で、かつパルス固体レーザの要求周波数設定に対応する周波数101で、動作される。
【0054】
さらに、参照番号102は、固体レーザを励起するためにレーザダイオードユニット/レーザダイオードが光パルス105、106、107を放出する、例示的なレーザダイオードユニット/レーザダイオードの動作周波数を例示的に示し、要求周波数設定101とは異なる周波数を有する光パルス105は、固体レーザの発光を引き起こさないように動作させられ、すなわち、固体レーザのレーザ発振閾値を下回る振幅/エネルギーで動作させられる。
【0055】
図2は、本明細書に記載の手段および方法によるレーザダイオードユニット/レーザダイオードを伴う固体レーザの励起方法と比較して、標準的な励起方法203a、203b、203cを使用した場合の、5Hz、10Hz、および25Hzの要求周波数設定を含む、異なる要求周波数設定200a、200b、200cにおける固体レーザパワー/エネルギー出力を比較する試験結果200を例示的に示す。
【0056】
例えばパネル200aは、標準励起203a(菱形の測定点を接続する線)および本明細書に例示的に記載される方法による変調励起204a(正方形の測定点を接続する線)について、レーザダイオードユニット/レーザダイオードに供給される電流201に依存して、5Hzの要求固体レーザ周波数設定における固体レーザパワー/エネルギー出力202を示す。
【0057】
パネル200bは、標準励起203b(菱形の測定点を接続する線)および本明細書に例示的に記載される方法による変調励起204b(正方形の測定点を接続する線)について、レーザダイオードユニット/レーザダイオードに供給される電流201に依存して、10Hzの要求固体レーザ周波数設定における固体レーザパワー/エネルギー出力202を例示的に示す。
【0058】
パネル200cは、標準励起203c(菱形の測定点を接続する線)および本明細書に例示的に記載される方法による変調励起204c(正方形の測定点を接続する線)について、レーザダイオードユニット/レーザダイオードに供給される電流201に依存して、25Hzの要求固体レーザ周波数設定における固体レーザパワー/エネルギー出力202を例示的に示す。
【0059】
同じスケールを有する3つの異なるパネル200a、200b、200cを比較すると分かるように、固体レーザパワー/エネルギー出力効率の利得/向上は、すべての要求周波数設定で顕著であるが、より低い要求周波数設定で最も高い。
【0060】
完全を期すために、示される結果について、本明細書に例示的に記載される方法に従って固体レーザを例示的に励起するためのレーザダイオードユニット/レーザダイオードの例示的な動作周波数は100Hzであったことに留意されたい。
【0061】
しかしながら、固体レーザのレーザパワー/エネルギー出力の顕著な利得は、レーザダイオードユニット/レーザダイオードの他の動作周波数でも達成することができる。
【0062】
図1および図2を含む2枚のシートに続いて、参照番号は以下の構成要素を特定する。
【符号の説明】
【0063】
100 固体レーザを励起するための光パルスの例示的な変調
101 固体レーザの例示的な(要求)周波数/周波数設定
102 例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードの例示的な動作周波数
103 例示的な横軸、例示的な時間軸、t
104 例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードによって放出される光パルスの振幅/エネルギー、またはレーザダイオードユニット/レーザダイオードに供給される例示的な電流Iを例示的に表す、例示的な縦軸
105 例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードによって放出され、固体レーザによる発光を引き起こさない振幅/エネルギーで動作される例示的な光パルス、すなわち、固体レーザのレーザ発振閾値未満で動作される、固体レーザを励起するための例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードパルス
106,107 例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードによって放出され、固体レーザによる発光を引き起こす充分な高振幅/エネルギーで動作される例示的な光パルス、すなわち、固体レーザのレーザ発振閾値以上で動作される、固体レーザを励起するための例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードパルス
108 固体レーザを励起するために例示的なレーザダイオードユニット/レーザダイオードによって放出される例示的な一連の光パルス
200 標準的な励起方法と比較して、本明細書に記載の方法に従って励起された場合における、パルスモードで固体レーザのレーザパワー出力において利得を達成するための例示的な試験結果
200a、200b、200c 固体レーザの要求周波数設定5Hz、10Hzおよび25Hzについての例示的な試験結果
201 例えばアンペアの単位である、例示的なレーザダイオードユニット/例示的なレーザダイオードに供給される例示的な電流である、例示的な横軸
202 例えばミリジュール(mJ)で指定される、パルスモードにおける例示的な固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力である、例示的な縦軸
203a 標準励起の場合の、固体レーザの要求周波数設定が5Hzである場合の、固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力
204a 本明細書に記載の方法による励起の場合の、固体レーザの要求周波数設定が5Hzである場合の、固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力
203b 標準励起の場合の、固体レーザの要求周波数設定が10Hzである場合の、固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力
204b 本明細書に記載の方法による励起の場合の、固体レーザの要求周波数設定が10Hzである場合の、固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力
203c 標準励起の場合の、固体レーザの要求周波数設定が25Hzである場合の、固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力
204c 本明細書に記載の方法による励起の場合の、固体レーザの要求周波数設定が25Hzである場合の、固体レーザの例示的なレーザパワー/エネルギー出力
図1
図2