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特許7549683プロピレン系重合体組成物およびこれらの用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】プロピレン系重合体組成物およびこれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240904BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20240904BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240904BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240904BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20240904BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20240904BHJP
   C09J 123/10 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C08L23/10
C08F210/06
C08J5/18 CES
C08L23/08
C08L23/14
C09J123/08
C09J123/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023005710
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2021522851の分割
【原出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2023041732
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019100232
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水間 貴大
(72)【発明者】
【氏名】奥 達也
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
(72)【発明者】
【氏名】野田 公憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】江川 真
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】保谷 裕
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/098452(WO,A1)
【文献】特開2013-185101(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084517(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/10
C08F 210/06
C08J 5/18
C08L 23/08
C08L 23/14
C09J 123/08
C09J 123/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(I)~(V)および(IX)を満たすプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)1~60重量%と、
下記要件(1)および(2)を満たすプロピレン系重合体(B)40~99重量%(但し、共重合体(A)および重合体(B)の合計を100重量%とする。)と
を含む、プロピレン系重合体組成物。
(I)プロピレンから導かれる構成単位(i)、エチレンから導かれる構成単位(ii)、および、炭素数4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(iii)の合計を100モル%とした時、該構成単位(i)の含有量が60~92モル%、該構成単位(ii)の含有量が5モル%以上14モル%未満、および、該構成単位(iii)の含有量が3~30モル%である
(II)13C-NMRにより算出したアイソタクティックトライアッド分率が85%以上である
(III)プロピレンとエチレンとの連鎖、および、炭素数4~20のα-オレフィンとエチレンとの連鎖の合計の、全ダイアッドに対するモル分率をMOEとし、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとのモル分率の合計をMOとし、エチレンのモル分率をMEとした時、B=MOE/(2MO×ME)で規定するB値が0.9~1.5である
(IV)ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~3g/10分である
(V)示差走査熱量計により測定した融点が100℃未満、または、融解ピークが観測されない
(IX)ショアA硬度(瞬間値)が91~97である
(1)示差走査熱量計により測定した融点が110~170℃である
(2)アイソタクティックペンタッド分率が90%以上である
【請求項2】
前記共重合体(A)が、下記要件(VI)を満たす、請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。
(VI)示差走査熱量計により融解ピークが観測されない、または、示差走査熱量計による融解熱量が10~50J/gである
【請求項3】
前記共重合体(A)が、下記要件(VII)~(VIII)のうち少なくとも1つを満たす、請求項1または2に記載のプロピレン系重合体組成物。
(VII)前記構成単位(i)~(iii)の合計を100モル%とした時、前記構成単位(i)の含有量が61~85モル%、前記構成単位(ii)の含有量が6モル%以上14モル%未満、および、前記構成単位(iii)の含有量が5~30モル%である
(VIII)示差走査熱量計により融解ピークが観測されない、または、示差走査熱量計による融解熱量が20~40J/gである
【請求項4】
下記要件(C1)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(C)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物。
(C1)エチレンから導かれる構成単位および炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とした時、エチレンから導かれる構成単位を50~99モル%の量で含有し、炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位を1~50モル%の量で含有する
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、接着性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、ペレット。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、成形体。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、無延伸フィルム。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、シート。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、射出成形体。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、ブロー成形体。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、内装部品および外装部品から選ばれる自動車部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン系重合体組成物、接着性樹脂組成物、ペレット、成形体、無延伸フィルム、シート、射出成形体、ブロー成形体または自動車部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟性、耐熱性、透明性に優れると共に、環境適性、衛生性を有するポリオレフィンからなる軟質材料として、プロピレンを主成分としたプロピレン系重合体が知られている。
【0003】
現在、このようなプロピレン系重合体を含むプロピレン系重合体組成物の用途が広がる中で、現在使用されているプロピレン系重合体の性能は十分ではなく、高温下で低分子量、低結晶性のプロピレン系重合体成分がブリードアウトし、油等に溶出するなどの問題が発生しており、また、高温下でその成形体の表面特性を悪化させる、耐熱性を悪化させる等の要因になっている。
【0004】
特許文献1には、プロピレン系樹脂組成物からなるフィルム(シート)が60℃に曝された際に、低分子量成分等のブリードアウトにより、外観が変化することが記載されている。
また、特許文献2には、アイソタクティックペンタッド分率、分子量分布および極限粘度が特定の範囲にあるプロピレン系重合体を用いることで、べたつき成分を低減できる(耐べたつき性に優れる)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-265281号公報
【文献】特開2009-13424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロピレン系重合体を用いた成形体を、フィルムシートなどの包装材料用途、医療用途、自動車内装材用途等に使用する場合、油等への溶出成分量が少なく、高温下(例:80℃以上)での耐べたつき性、耐熱性(耐収縮性、厚みや外観が変化しにくい)に優れることが求められているが、特許文献1および2に記載のプロピレン系重合体を用いた場合、高温下(例:80℃以上)での耐べたつき性に改良の余地があった。
【0007】
本発明の一実施形態は、柔軟性に優れるとともに、高温下で長時間使用しても、耐べたつき性、耐収縮性、厚み保持性、外観保持性に優れる等の耐熱性に優れ、また、油等への溶出成分量の少ないプロピレン系重合体およびプロピレン系重合体組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成例は、以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
【0009】
[1] 下記要件(I)~(V)を満たすプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
(I)プロピレンから導かれる構成単位(i)の含有量が50~92モル%、エチレンから導かれる構成単位(ii)の含有量が5~20モル%、および、炭素数4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(iii)の含有量が3~30モル%である(但し、構成単位(i)~(iii)の合計を100モル%とする)
(II)13C-NMRにより算出したアイソタクティックトライアッド分率(mm分率)が85%以上である
(III)B=MOE/(2M×M)で規定するB値が0.9~1.5である(式中、MOEは、プロピレンとエチレンとの連鎖、および、炭素数4~20のα-オレフィンとエチレンとの連鎖の合計の、全ダイアッドに対するモル分率を表し、Mはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとのモル分率の合計を表し、Mはエチレンのモル分率を表す。)
(IV)メルトフローレート(MFR)が1~3g/10分である
(V)示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が100℃未満、または、融解ピークが観測されない
【0010】
[2] 下記要件(VI)を満たす、[1]に記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
(VI)示差走査熱量計(DSC)により融解ピークが観測されない、または、示差走査熱量計(DSC)による融解熱量(ΔH)が10~50J/gである
【0011】
[3] 下記要件(VII)~(VIII)のうち少なくとも1つを満たす、[1]または[2]に記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
(VII)プロピレンから導かれる構成単位(i)の含有量が61~85モル%、エチレンから導かれる構成単位(ii)の含有量が6~14モル%、および、炭素数4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(iii)の含有量が5~24モル%である(但し、構成単位(i)~(iii)の合計を100モル%とする)
(VIII)示差走査熱量計(DSC)により融解ピークが観測されない、または、示差走査熱量計(DSC)による融解熱量(ΔH)が20~40J/gである
【0012】
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含むプロピレン系重合体組成物。
【0013】
[5] 下記要件(1)および(2)を満たすプロピレン系重合体(B)を含む、[4]に記載のプロピレン系重合体組成物。
(1)示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が110~170℃である
(2)アイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)が90%以上である
【0014】
[6] エチレンから導かれる構成単位を50~99モル%の量で含有し、炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位を1~50モル%の量で含有する(エチレンおよびα-オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)を含む、[4]または[5]に記載のプロピレン系重合体組成物。
【0015】
[7] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、接着性樹脂組成物。
【0016】
[8] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、ペレット。
【0017】
[9] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、成形体。
【0018】
[10] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、無延伸フィルム。
【0019】
[11] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、シート。
【0020】
[12] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、射出成形体。
【0021】
[13] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、ブロー成形体。
【0022】
[14] [1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、または、[4]~[6]のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物を含有する、内装部品および外装部品から選ばれる自動車部品。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、柔軟性に優れるとともに、高温下で長時間使用しても、耐べたつき性、耐収縮性、厚み保持性、外観保持性に優れる等の耐熱性に優れ、また、油等への溶出成分量の少ないプロピレン系重合体およびプロピレン系重合体組成物を提供することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、柔軟性に優れ、油等への溶出成分量の少ないプロピレン系重合体およびプロピレン系重合体組成物、ヒートシール強度、耐熱収縮性および高温下で長時間使用しても耐べたつき性に優れ、高温下でも、そのヒートシール強度を維持できるプロピレン系重合体組成物、延伸時の耐白化性に優れ、高温で処理した後でも、延伸時の耐白化性に優れる成形体を形成可能なプロピレン系重合体組成物、柔軟性に優れ、油等への溶出成分量が少なく、高温で処理した後でもグロスを維持することができるプロピレン系重合体組成物を提供することができる。
なお、前記油等としては、例えば、ヘキサン、n-ヘプタンが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
≪プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)≫
本発明の一実施形態に係るプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)(以下単に「共重合体(A)」ともいう。)は、下記要件(I)~(V)を満たす。
(I)プロピレンから導かれる構成単位(i)の含有量が50~92モル%、エチレンから導かれる構成単位(ii)の含有量が5~20モル%、および、炭素数4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(iii)の含有量が3~30モル%である(但し、構成単位(i)~(iii)の合計を100モル%とする)
(II)13C-NMRにより算出したアイソタクティックトライアッド分率(mm分率)が85%以上である
(III)B=MOE/(2M×M)で規定するB値が0.9~1.5である(式中、MOEは、プロピレンとエチレンとの連鎖、および、炭素数4~20のα-オレフィンとエチレンとの連鎖の合計の、全ダイアッドに対するモル分率を表し、Mはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとのモル分率の合計を表し、Mはエチレンのモル分率を表す。)
(IV)メルトフローレート(MFR)が1~3g/10分である
(V)示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が100℃未満、または、融解ピークが観測されない
【0025】
共重合体(A)は、前記効果を奏し、特に、柔軟性に優れ、油等への溶出成分量が少ない。
共重合体(A)としては特に制限されないが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0026】
前記構成単位(i)の含有量は、50モル%以上であり、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、特に好ましくは61モル%以上であり、92モル%以下であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは88モル%以下、さらに好ましくは86モル%以下、特に好ましくは85モル%以下である。
前記構成単位(ii)の含有量は、5モル%以上であり、好ましくは6モル%以上であり、20モル%以下であり、好ましくは18モル%以下、より好ましくは14モル%以下である。
前記構成単位(iii)の含有量は、3モル%以上であり、好ましくは5モル%以上であり、30モル%以下であり、好ましくは25モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。
また、前記構成単位(i)~(iii)の合計100モル%に対する、構成単位(ii)および(iii)の合計含有量は、好ましくは10~45モル%、より好ましくは12~45モル%である。
前記構成単位(i)~(iii)それぞれの含有量は、構成単位(i)~(iii)の合計を100モル%とした時の含有量である。
【0027】
構成単位(i)~(iii)の含有量が前記範囲にあると、透明性、柔軟性、機械強度、耐熱性および耐衝撃性にバランスよく優れる傾向にあり、下記プロピレン系重合体(B)との相容性が良好となる傾向にある。
該構成単位(i)~(iii)の含有量は、13C-NMRで測定することができ、具体的には、特開2007-186664号公報に記載された方法で測定することができる。
【0028】
前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセンが挙げられ、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、1-ブテンがより好ましい。
前記炭素数4~20のα-オレフィンは2種以上を用いてもよいが、好ましくは1種である。
【0029】
共重合体(A)の前記mm分率は、85%以上であり、好ましくは87%以上、より好ましくは89%以上である。
mm分率が前記範囲ある共重合体(A)を含む成形体、特に射出成形体は、流動性、機械強度および耐衝撃性にバランスよく優れる。
前記mm分率は、特開2007-186664号公報に記載された方法によって測定・解析を行うことができる。
【0030】
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn[MwおよびMnはそれぞれ、ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量])は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
分子量分布が前記範囲にあると、機械強度、耐衝撃性、低べたつき性にバランス良く優れる。
【0031】
共重合体(A)のMwは、好ましくは10,000~10,000,000、より好ましくは10,000~1,000,000である。
Mwが前記範囲にあると、成形性、機械強度、耐衝撃性、低べたつき性にバランス良く優れる。
前記MwおよびMnは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定した値である。
【0032】
共重合体(A)のMFRは、1g/10分以上であり、好ましくは1.3g/10分以上、より好ましくは1.4g/10分以上であり、3g/10分以下であり、好ましくは2.8g/10分以下である。
MFRが前記範囲にあると、成形性、機械強度、耐衝撃性、低べたつき性にバランス良く優れる。
なお、MFRが前記範囲の下限を下回ると、流動性が低く成形が困難となり、他の樹脂との相容性が低下する傾向にあり、MFRが前記範囲の上限を上回ると、べたつき成分が増加する傾向にある。
該MFRは、ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した値である。
【0033】
共重合体(A)は、DSCにより測定したTmが100℃未満、または、融解ピークが観測されないことを特徴とし、融解ピークが観測される場合、Tmは、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
Tmが前記範囲にある、または、融解ピークが観測されないことで、柔軟性に優れる成形体を容易に得ることができる。
該融解ピークは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定され、ここで、Tmは、融解ピークのピーク頂点の温度のことをいい、融解ピークが観測されないとは、-100~200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。なお、融解ピークが2つ以上観測される場合、これらのピークのピーク頂点の温度のうち、最も低い温度が融点である。
【0034】
前記融解ピークが観測される場合、そのピークの積算値である融解熱量(ΔH)は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上であり、好ましくは50J/g以下、より好ましくは45J/g以下、さらに好ましくは40J/g以下である。
ΔHが前記範囲にあると、柔軟性と低べたつき性にバランス良く優れる。
【0035】
共重合体(A)の下記式(1)で算出されるB値は、0.9~1.5であり、好ましくは0.9~1.2である。
B値が前記範囲にあると、プロピレン系重合体(B)との相容性により優れるため好ましい。
該B値は、特開2007-186664号公報に記載された方法で求めた値である。
【0036】
B=MOE/(2M×M) ・・・・(1)
(式中、MOEは、プロピレンとエチレンとの連鎖、および、炭素数4~20のα-オレフィンとエチレンとの連鎖の合計の、全ダイアッドに対するモル分率を表し、Mはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとのモル分率の合計を表し、Mはエチレンのモル分率を表す。)
【0037】
共重合体(A)の引張弾性率は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上であり、好ましくは200MPa以下、より好ましくは150MPa以下である。
引張弾性率が前記範囲にあると、柔軟性により優れる成形体を容易に得ることができる。
該引張弾性率は、ASTM D638に準拠して、ASTM 4号ダンベルを用い、23℃、引張り速度:50mm/minの条件下で測定した値である。
【0038】
共重合体(A)のショアA硬度(瞬間値)は、好ましくは20~97、より好ましくは30~97である。
特に、引張弾性率が10MPa以下である共重合体(A)のショアA硬度(瞬間値)は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは45以下である。また、引張弾性率が10MPaを超える共重合体(A)のショアA硬度(瞬間値)は、好ましくは51以上、より好ましくは71以上であり、好ましくは97以下である。
ショアA硬度(瞬間値)が前記範囲にあると、柔軟性により優れる成形体を容易に得ることができる。
該ショアA硬度(瞬間値)は、下記実施例に記載の方法で測定した値である。
【0039】
共重合体(A)の製造方法としては特に制限されないが、公知の触媒、例えば、固体状チタン成分と有機金属化合物とを主成分とする触媒、または、メタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下で、オレフィンを共重合させることで製造することができる。好ましくは、後述のように、メタロセン触媒の存在下、プロピレン、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンを共重合させることにより得られ、該触媒としては、例えば、国際公開第2004/087775号や特開2007-186664号公報に記載の触媒を用いることができる。
【0040】
≪プロピレン系重合体組成物≫
本発明の一実施形態に係るプロピレン系重合体組成物(以下単に「本組成物」ともいう。)は、前記共重合体(A)を含む。
本組成物としては、具体的には、
前記共重合体(A)と、下記要件(1)および(2)を満たすプロピレン系重合体(B)(以下単に「重合体(B)」ともいう。)とを含むプロピレン系重合体組成物(X1)、および、
前記共重合体(A)と、エチレンから導かれる構成単位を50~99モル%の量で含有し、炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位を1~50モル%の量で含有する(エチレンおよびα-オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする)エチレン・α-オレフィン共重合体(C)(以下単に「共重合体(C)」ともいう。)とを含むプロピレン系重合体組成物(X2)
が挙げられる。
【0041】
<プロピレン系重合体組成物(X1)>
前記プロピレン系重合体組成物(X1)(以下単に「組成物(X1)」ともいう。)は、前記共重合体(A)と重合体(B)とを含む。
このような組成物(X1)によれば、ヒートシール強度、耐熱収縮性および高温下で長時間使用しても耐べたつき性に優れ、高温下でも、そのヒートシール強度を維持でき、また、柔軟性に優れ、油等への溶出成分量が少なく、高温で処理した後でもグロスを維持することができる。
組成物(X1)に含まれる共重合体(A)は、1種でも、2種以上でもよく、組成物(X1)に含まれる重合体(B)も、1種でも、2種以上でもよい。
【0042】
組成物(X1)中の共重合体(A)および重合体(B)の合計100重量%に対し、共重合体(A)の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下であり、重合体(B)の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。
共重合体(A)および重合体(B)の含有量が前記範囲にあると、透明性、衝撃強度、機械物性(柔軟性または剛性など)および耐衝撃性に優れ、特に、剛性と低温耐衝撃性とのバランス、および、透明性に優れる成形体を容易に得ることができる。
【0043】
2種以上の共重合体(A)を用いる場合、前記共重合体(A)の含有量は、組成物(X1)に含まれるこれら2種以上の共重合体(A)の合計量のことをいう。2種以上の重合体(B)を用いる場合も同様であり、下記組成物(X2)中の成分についても同様である。
【0044】
[プロピレン系重合体(B)]
重合体(B)は、下記要件(1)および(2)を満たせば特に制限されない。
(1)示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が110~170℃である
(2)アイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)が90%以上である
【0045】
重合体(B)は、ホモポリプロピレンであっても、プロピレンとプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン等との共重合体であってもよい。該共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
重合体(B)としては、ホモポリプロピレンまたはプロピレンとプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。
重合体(B)としては、未変性の重合体であっても、変性重合体であってもよい。該変性重合体としては、下記ポリオレフィンの変性物と同様の重合体等が挙げられる。
【0046】
耐熱性に優れる成形体を容易に得ることができる等の点を考慮すると、ホモポリプロピレンが好ましく、衝撃特性や透明性に優れる成形体を容易に得ることができる等の点を考慮すると、前記ランダム共重合体が好ましい。
前記ランダム共重合体としては、プロピレンとプロピレン以外の炭素数2~10のα-オレフィンとの共重合体、または、プロピレンとエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0047】
前記ランダム共重合体における、プロピレンから導かれる構成単位の含有量は、プロピレンから導かれる構成単位と、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の合計100モル%に対して、通常90モル%以上であり、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、通常10モル%以下であり、好ましくは8モル%以下、より好ましくは7.5モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.2モル%以上である。
【0048】
前記プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセンが挙げられる。
前記プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンは2種以上を用いてもよい。
【0049】
重合体(B)のDSCにより測定したTmは、110℃以上であり、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上であり、170℃以下であり、好ましくは168℃以下である。
Tmが前記範囲にあると、成形性、耐熱性および透明性にバランス良く優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好で好ましい。
該Tmは、DSC測定装置を用い、200℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で-20℃まで冷却し、-20℃で1分間保持した後、再度昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに観測される融点(融解ピークのピーク頂点の温度)である。
なお、該融解ピークの積算値である融解熱量(ΔH)は、好ましくは50mJ/mg以上である。
【0050】
重合体(B)のmmmm分率は、90%以上であり、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上である。
mmmm分率が前記範囲にあると、剛性と透明性とにバランス良く優れ、特に、透明性に優れる成形体を容易に得ることができる。
mmmm分率は、例えば、特開2007-186664号公報に記載されているように、13C-NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位におけるアイソタクティック連鎖の存在割合、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、該公報に記載の方法で測定できる。
【0051】
重合体(B)のMFR(230℃、2.16kg荷重下で測定)は、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上であり、通常400g/10分以下、好ましくは200g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下である。
MFRが前記範囲にあると、成形性により優れる組成物を容易に得ることができる。
【0052】
重合体(B)は、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン触媒を用いた公知の様々な方法によって製造することができる。
【0053】
<プロピレン系重合体組成物(X2)>
前記プロピレン系重合体組成物(X2)(以下単に「組成物(X2)」ともいう。)は、前記共重合体(A)と共重合体(C)とを含む。
このような組成物(X2)によれば、延伸時の耐白化性に優れ、高温で処理した後でも、延伸時の耐白化性に優れる成形体を容易に得ることができ、他の樹脂層との接着力に優れる層を容易に形成することができる。
組成物(X2)に含まれる共重合体(A)は、1種でも、2種以上でもよく、組成物(X2)に含まれる共重合体(C)も、1種でも、2種以上でもよい。
なお、組成物(X2)は、前記重合体(B)を含んでいてもよく、この場合、組成物(X1)と共重合体(C)とを用いて調製することもできる。
【0054】
組成物(X2)中の共重合体(A)の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
組成物(X2)中の共重合体(A)と重合体(B)の合計含有量は、好ましくは50~95重量%、より好ましくは65~95重量%である。
組成物(X2)中の共重合体(A)、または、共重合体(A)と重合体(B)の合計のいずれか100重量部に対する、共重合体(C)の含有量は、好ましくは5~100重量部であり、より好ましくは5~70重量部、さらに好ましくは5~50重量部、特に好ましくは5~30重量部である。
共重合体(A)、共重合体(A)と重合体(B)の合計、または、共重合体(C)の含有量が前記範囲にあると、透明性、衝撃強度、機械物性(柔軟性または剛性など)および耐衝撃性により優れ、特に剛性と低温耐衝撃性とのバランス、および、透明性により優れる成形体を容易に得ることができる。
【0055】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(C)]
前記共重合体(C)としては、構成単位の含有量が前記範囲にある共重合体であり、かつ、前記重合体(B)以外の共重合体であれば特に制限されないが、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体であることが好ましい。
共重合体(C)を用いることで、特に耐衝撃性および透明性にバランス良く優れる成形体を容易に得ることができる。
【0056】
共重合体(C)中のエチレンから導かれる構成単位の含有量は、50~99モル%であり、好ましくは55~99モル%、より好ましくは70~99モル%、特に好ましくは80~99モル%である。
共重合体(C)中の炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、1~50モル%であり、好ましくは1~45モル%、より好ましくは1~30モル%、特に好ましくは1~20モル%である。
これらの含有量は、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の合計100モル%に対する量である。
構成単位の含有量が前記範囲にあると、耐衝撃性、柔軟性にバランス良く優れる成形体を容易に得ることができる。
【0057】
前記炭素数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらの中でも、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、炭素数4~8のα-オレフィンがより好ましく、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが特に好ましい。
前記炭素数3~20のα-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0058】
共重合体(C)は、前記の構成単位に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、他の重合性モノマーから導かれる構成単位を1種または2種以上含有していてもよい。
このような他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等のビニル化合物類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等の非共役ポリエン類が挙げられる。
【0059】
共重合体(C)の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体が好ましい。
【0060】
共重合体(C)の密度は、好ましくは880kg/m以上、より好ましくは885kg/m以上、特に好ましくは890kg/m以上であり、好ましくは920kg/m以下、より好ましくは905kg/m以下である。
密度が前記範囲にあると、耐衝撃性、剛性および透明性にバランス良く優れる成形体を容易に得ることができる。
該密度は、密度勾配管法で測定することができる。
【0061】
共重合体(C)のMFR(ASTM D1238準拠、190℃、2.16kg荷重下で測定)は、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上、特に好ましくは1.0g/10分以上であり、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。
MFRが前記範囲にあると、耐衝撃性、剛性および透明性にバランス良く優れる成形体を容易に得ることができる。
【0062】
共重合体(C)は、ASTM D1238に準拠して、190℃、荷重10kgの条件で測定したMFR10と、190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRとの比(MFR10/MFR)が、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上であり、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下である。
MFR10/MFRが前記範囲にあると、透明性および耐衝撃性にバランス良く優れる成形体を容易に得ることができる。
【0063】
共重合体(C)は、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造することができる。好ましくは、メタロセン系触媒を用いて製造することによって、分子量分布・組成分布が狭い共重合体を得ることができ、透明性・耐衝撃性の面でより好適である。
【0064】
<接着性樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る接着性樹脂組成物は、前記共重合体(A)または前記本組成物を含有する。
接着性樹脂組成物が本組成物を含有する場合、該本組成物としては、特に、前記組成物(X2)が好ましい。
接着性樹脂組成物中の前記共重合体(A)の含有量は、好ましくは1~50重量%、より好ましくは1~40重量%である。
【0065】
接着性樹脂組成物は、基材(他の樹脂)との接着性および相容性により優れ、また、得られる成形体表面の濡れ性をより改良できる場合がある等の点から、ポリオレフィンの変性物を含有することが好ましい。
該ポリオレフィンの変性物の具体例としては、前記共重合体(A)、重合体(B)または共重合体(C)を、1種または2種以上の極性モノマーでグラフト変性したものが挙げられる。
【0066】
前記極性モノマーの好適な例としては、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体が挙げられる。該不飽和カルボン酸および/またはその誘導体としては、例えば、カルボン酸基を1つ以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する不飽和カルボン酸化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1つ以上有する不飽和化合物(例:不飽和ジカルボン酸の酸無水物)が挙げられる。
これらの化合物における不飽和部分としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基が挙げられる。
前記極性モノマーとしては、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、マレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物がより好ましい。
【0067】
前記ポリオレフィンの変性物における変性量(極性モノマーのグラフト量)は、基材(他の樹脂)との接着性および相容性により優れる等の点から、該変性物100重量%に対し、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
前記変性量の制御は、例えば、グラフト条件を適宜に選択することにより行えばよい。
【0068】
前記極性モノマーをグラフトさせる方法としては特に制限されず、溶液法、溶融混練法等、従来公知のグラフト重合法を採用することができる。具体的には、例えば、前記共重合体(A)、重合体(B)または共重合体(C)を溶融し、または、溶媒に溶解させて溶液とし、そこにグラフトモノマーを添加してグラフト反応させる方法が挙げられる。
【0069】
接着性樹脂組成物に前記ポリオレフィンの変性物を配合する際の、該ポリオレフィンの変性物の含有量は、接着性樹脂組成物100重量%に対し、好ましくは40~90重量%、より好ましくは40~80重量%である。
ポリオレフィンの変性物の含有量が前記範囲にあると、高い接着強度を示す組成物を容易に得ることができる。
【0070】
接着性樹脂組成物は、通常、単層または多層の基材の片面または両面に積層されて多層フィルムとして用いられる。具体的には、Tダイフィルム成形法やインフレーションフィルム成形法等の公知の多層フィルム成形方法により、前記接着性樹脂組成物と基材層とを共押出しする方法や、予め成形された基材上に、前記接着性樹脂組成物を設ける方法などにより積層されて多層フィルムとして用いられる。
【0071】
前記基材としては特に制限されないが、好ましくは熱可塑性樹脂製の基材が挙げられる。
該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂(例:ホモポリプロピレン、プロピレンと少量のα-オレフィンとの共重合体)、ポリエチレン系樹脂(例:低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン)、公知のエチレン系重合体(例:エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・n-ブチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体)、ポリ-4-メチル-ペンテン-1、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
なお、前記基材は、従来公知の方法で表面処理されていてもよく、着色または印刷されていてもよい。
【0072】
前記多層フィルムは、アルミニウム板、鋼板、ステンレス板等の金属板、およびそれらの塗装板、ガラス板、合成樹脂板等の加工用部材、さらにはこれらの部材を用いた家電製品や自動車部品、電子部品を保護するための表面保護フィルムなどとして好適に利用でき、具体的には、例えば、光学板保護フィルム、レンズ保護フィルム、半導体ウエハー用バックグラインドテープ、ダイシングテープ、プリント基板用保護テープ等のエレクトロニクス分野に用いられるフィルム、窓ガラス保護用フィルム、焼付塗装用フィルムとして好適に利用できる。
【0073】
[添加剤]
本組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記重合体(A)~(C)以外の添加剤、具体的には、前記重合体(A)~(C)以外のポリオレフィンの変性物、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤(結晶造核剤)、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
これら添加剤は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
例えば、結晶化速度を速め成形サイクルを短縮することができ、透明性を高め剛性を調整することができる等の点から、結晶造核剤を用いることが好ましい。
該結晶造核剤は、プロピレン系樹脂に対して造核効果を有する物質であることが好ましく、具体例としては、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、アルジトール系誘導体、ロジンの金属塩が挙げられる。
【0075】
前記芳香族カルボン酸金属塩としては、p-t-ブチル安息香酸アルミニウムが好適である。前記芳香族リン酸金属塩としては、リン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)アルミニウムが好適である。前記アルジトール系誘導体としては、ヘキシトール系誘導体、ノニトール系誘導体が好ましく、中でも、p-メチル-ベンジリデンソルビトール、p-エチル-ベンジリデンソルビトール、7,8,9-トリデオキシ-3,5:4,6-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-D-グリセロ-L-グロ-ノニトールが好適に用いられる。
結晶造核剤を用いる場合、本組成物中の結晶造核剤の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上であり、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
【0076】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、それぞれに配合する各成分を、種々公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、または、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練することで調製することができる。さらに、必要により、造粒や粉砕等を行ってもよい。
これら、混合や混練する際には、配合する各成分を、一度に添加してもよく、段階的に添加してもよい。
【0077】
≪ペレット≫
本発明の一実施形態に係るペレットは、前記共重合体(A)または前記本組成物を含む。
該ペレットの形状、大きさ等については特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。
該ペレットは、前記共重合体(A)を、バンバリーミキサー、ロール、押出機などの混練機で溶融し、造粒することで製造することができ、また、本組成物に配合する各成分を溶融混練した後、造粒することで製造することができる。
【0078】
≪成形体≫
本発明の一実施形態に係る成形体は、前記共重合体(A)または前記本組成物を含む。
該成形体は、前記共重合体(A)または本組成物を、従来公知の成形法、例えば、ブロー成形法、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、インフレーション成形法、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、真空成形法、カレンダー成形法、溶融Tダイキャスティング法により成形することで製造することができる。
【0079】
前記成形体としては特に制限されないが、共重合体(A)および本組成物は前記効果を奏するため、該効果がより発揮される成形体であることが好ましい。
前記成形体の具体例としては、無延伸フィルム、シート、射出成形体、ブロー成形体、自動車内装部品および自動車外装部品が挙げられる。より具体的には、例えば、多層ホース、チューブ、化粧シート、フローリングマット等の土木・建材部品、電線・ケーブルの被覆材(例:絶縁層、シース層)、不織布、伸縮フィルム、食品包装用フィルム、包装用シート、シートを熱成形した食品包装用トレイや飲料用カップ、シートを折り曲げ加工したプラスチック容器が挙げられる。
【0080】
<無延伸フィルム>
前記無延伸フィルムは、延伸されていないフィルムであれば特に制限されず、形状、大きさ(厚み)等については、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。また、該無延伸フィルムは、単層であってもよく、多層であってもよい。多層である場合、そのうちの少なくとも1層が、共重合体(A)または前記本組成物を含むフィルムであればよい。なお、前記無延伸フィルムが多層である場合、その全ての層が延伸されていないこという。
【0081】
該無延伸フィルムの厚み(多層である場合は合計厚)は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
なお、本明細書において、フィルムとシートとは特に区別しているわけではないが、通常、フィルムは厚さ250μm未満の膜状体をいい、シートは厚さ250μm以上の薄い板状体をいう。
【0082】
前記無延伸フィルムの具体的な用途としては、例えば、食品、液体、医薬品等を包装するための包装用フィルムが挙げられる。
【0083】
<シート>
前記シートは特に制限されず、形状、大きさ(厚み)等については、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。また、該シートは、単層であってもよく、多層であってもよい。多層である場合、そのうちの少なくとも1層が、共重合体(A)または前記本組成物を含むシートであればよい。
該シートの厚み(多層である場合は合計厚)は、好ましくは250~2000μm、より好ましくは250~1500μmである。
【0084】
前記シートの具体的な用途としては、例えば、食品、液体、医薬品等を包装するための包装用シート、該シートから形成された容器(例:シートを熱成形したトレイ、カップ、シートを折り曲げ加工した容器)が挙げられる。
【0085】
<射出成形体およびブロー成形体>
前記射出成形体としては特に制限されないが、例えば、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、所望の形状に射出成形することで製造した成形体が挙げられる。
該射出成形体は、例えば、自動車内装用トリム材、自動車用外装部品、家電製品のハウジング、容器などに幅広く用いることができる。
【0086】
前記ブロー成形体としては特に制限されないが、例えば、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、所望の形状にブロー成形することで製造した成形体が挙げられる。
前記ブロー成形体は、多層成形体であってもよく、この場合、少なくとも1層が、共重合体(A)または前記本組成物を含む層である。
【0087】
前記射出成形体およびブロー成形体の具体的な用途としては、例えば、食品容器、飲料容器、キャップ、医薬品容器、その他各種容器、日用品(例:衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具等の文具用品、コンテナ、玩具、調理器具、その他各種ケース)、家電製品のハウジング、自動車部品が挙げられる。
【0088】
<自動車内装部品および自動車外装部品>
前記自動車内装部品および自動車外装部品としては特に制限されず、例えば、射出成形などで成形された自動車部品が挙げられる。
前記自動車内装部品の具体例としては、トリム、インストルメントパネル、コラムカバーが挙げられる。前記自動車外装部品の具体例としては、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーが挙げられる。
【実施例
【0089】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0090】
<原材料>
・プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A):
後述の製造例により得たプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)~(A-5)を用いた。
【0091】
・プロピレン・エチレン共重合体(PER):
後述の製造例により得たプロピレン・エチレン共重合体(PER-1)~(PER-3)を用いた。
【0092】
・プロピレン系重合体(B):
(B-1);ホモポリプロピレン((株)プライムポリマー製、プライムポリプロ F107、MFR(230℃,2.16kg荷重)=7g/10分、融点=163℃、mmmm分率=96%)
(B-2);ランダムポリプロピレン((株)プライムポリマー製、プライムポリプロ F227、エチレン含量=3.0モル%、MFR(230℃,2.16kg荷重)=7g/10分、融点=150℃、mmmm分率=96%)
(B-3);ホモポリプロピレン((株)プライムポリマー製、プライムポリプロ J106、MFR(230℃,2.16kg荷重)=15g/10分、融点=163℃、mmmm分率=97%)
(B-4);変性ホモポリプロピレン、MFR(230℃,2.16kg荷重)=10g/10分、融点=160℃、mmmm分率=95%、密度=0.90g/cm3、無水マレイン酸グラフト量=0.5wt%
(B-5);ランダムポリプロピレン(エチレン含量=3.0モル%、MFR(230℃,2.16kg荷重)=20g/10分、融点=150℃、mmmm分率=96%、ソルビトール系透明核剤入り)
【0093】
・エチレン・α-オレフィン共重合体(C):
(C-1);エチレン・プロピレン共重合体(プロピレン含量=19モル%、MFR(190℃,2.16kg荷重)=1.8g/10分)
(C-2);エチレン・1-ブテン共重合体(1-ブテン含量=12モル%、MFR(190℃,2.16kg荷重)=3.6g/10分)
【0094】
[プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造例]
重合用触媒として、特開2007-186664号公報に記載の方法で調製したジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-エチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用い、助触媒として、メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム(株)製、アルミニウム換算で0.3mmol)を用い、原料となるエチレン、プロピレンおよび1-ブテンを、連続重合設備を用いてヘキサン溶液中で重合することで6種類のプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)~(A-5)を得た。
得られた共重合体(A-1)~(A-5)の物性値を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0095】
[プロピレン・エチレン共重合体(PER)の製造例]
原料をエチレンおよびプロピレンに変更した以外は前記共重合体(A)の製造例と同様の方法でプロピレン・エチレン共重合体(PER-1)~(PER-3)を得た。
得られた共重合体(PER-1)~(PER-3)の物性値を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0096】
a)組成比、B値およびアイソタクティックトライアッド分率(mm分率)
13C-NMRスペクトルの解析により求めた。具体的には、特開2007-186664号公報に記載の方法により求めた。
なお、本明細書において、プロピレンから導かれる構成単位の含有量を「C3含量」や「プロピレン含量」ともいい、エチレンから導かれる構成単位の含有量を「C2含量」や「エチレン含量」ともいい、1-ブテンから導かれる構成単位の含有量を「C4含量」ともいう。
【0097】
b)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
GPC装置として、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC-2000型を用い、以下の条件でポリスチレン換算のMwおよびMnを測定し、Mw/Mnを算出した。
分離カラム:東ソー(株)製のTSKgel GNH6-HT 2本、および、東ソー(株)製のTSKgel GNH6-HTL 2本(カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mm)
カラム温度:140℃
移動相:酸化防止剤としてBHT(武田薬品工業(株)製)0.025重量%を含むo-ジクロロベンゼン(富士フィルム和光純薬(株)製)
移動速度:1.0mL/分
試料濃度:15mg/10mL
試料注入量:500μL
検出器:示差屈折計
標準ポリスチレン:分子量がMw<1000、および、Mw>4×10の場合、東ソー(株)製を使用、分子量が1000≦Mw≦4×10の場合、プレッシャーケミカル社製を使用
【0098】
c)MFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
【0099】
d)融点、融解熱量
190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した後、20℃、10MPaの加圧下で4分間冷却することで0.5mm厚のシート(試験片)を作製した。
成形後、室温で72時間経過させた約10mgの試験片を窒素雰囲気下(20mL/分)10℃/分で-100℃まで冷却した。次いで、-100℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の結晶融解ピークのピーク頂点の温度を融点とし、ピークの積算値から融解熱量(ΔH)を算出した。なお、融解ピークが2つ以上観測される場合、これらのピークのピーク頂点の温度のうち、最も低い温度を融点とした。
【0100】
e)引張弾性率
190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した後、20℃、10MPaの加圧下で4分間冷却することにより2mm厚のシート(試験片)を作製した。
得られた試験片から、ASTM D638に準拠して、ASTM 4号ダンベルを作製し、該ダンベルを用い、23℃、引張り速度:50mm/minの条件下で引張弾性率を測定した。
【0101】
f)ショアA硬度(瞬間値)
190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した後、20℃、10MPaの加圧下で4分間冷却することにより2mm厚のシート(試験片)を作製した。
成形後、室温で72時間経過させ、A型測定器を用い、72時間経過後の試験片に押針接触後直ちに目盛りを読み取った(ASTM D2240に準拠)。
【0102】
【表1】
【0103】
[実施例1-1~1-2および比較例1-1~1-3]
表2に記載の共重合体を、190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した後、20℃、10MPaの加圧下で4分間冷却することにより、厚さ2mmのシートを作製した。
得られたシートを室温で72時間経過させた試験片を用い、以下の方法で、ヘキサン溶解量、引張弾性率、ショアA硬度(瞬間値)を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
<ヘキサン溶解量>
試験片2gを切り取り、300mLのビーカーに入れ、そこに、n-ヘキサン200mLを加えた後、該ビーカーをアルミ箔で覆い、30℃にセットした水浴にて30分間撹拌を行った。攪拌後の液をナス型フラスコに移液し、エバポレーターにて、残量が30mL程度になるまで溶媒を除去し、残った液を、風袋重さを秤量した50mLビーカーに移液した。次いで、窒素気流下で溶媒を除去し、さらに2時間真空乾燥機中で乾燥させた。乾燥機から取り出したビーカーの重さを直ちに秤量し、風袋重さとの差から、ビーカー中に残存した固体量wgを求めた。w×100/2から、ヘキサン溶解量(wt%)を求めた。値が小さいほど、耐溶出性に優れるといえる。
ヘキサン溶解量は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0105】
<引張弾性率>
得られた試験片から、ASTM D638に準拠して、ASTM 4号ダンベルを作製し、該ダンベルを用い、23℃、引張速度:50mm/minの条件下で引張弾性率を測定した。
【0106】
<ショアA硬度(瞬間値)>
A型測定器を用い、試験片に押針接触後直ちに目盛りを読み取った(ASTM D2240に準拠)。
【0107】
[実施例1-3]
ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用い、190℃、40rpmの条件で、表2に記載の割合(重量%)の原材料を5分間混練し、プロピレン系重合体組成物を得た。
得られた組成物を用いた以外は、実施例1-1と同様にして試験片を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
[実施例2-1~2-5および比較例2-1~2-2]
表3に記載の原材料を表3の割合(重量%)で押出機(φ40mm)を用いて混練し、得られたペレットを、キャストフィルム成形機を用い、230℃で押出しながら、100μm厚の単層無延伸フィルムを作製した。得られた単層無延伸フィルムについて下記評価を行った。結果を表3に示す。
【0110】
<ヒートシール(HS)強度(熱処理前)>
厚さ50μmのテフロン(登録商標)シート、得られた単層無延伸フィルム2枚、および厚さ50μmのテフロン(登録商標)シートをこの順で重ねて試験体を作製した。
【0111】
ヒートシールテスター(テスター産業(株)製、TB-701B型)のヒートシールバーを幅15mm×長さ300mmとなるようにし、シールバー下側の温度を70℃、シールバー上側の温度を170℃に設定し、前記試験体をシールバーで挟み、0.2MPaの圧力で1.0秒間ヒートシールを行った。その後、2枚のテフロンシートを外すことで、積層フィルムを得、該積層フィルムを23℃で1日間放置した。該積層フィルムに、ヒートシールされた部分を含むように15mm幅のスリットを入れ、ヒートシールされていない部分を引張試験機((株)インテスコ製、IM-20ST)にチャックした。ヒートシールされた部分を300mm/分の速度で180°の方向に剥離させる際の最大荷重を測定した。この測定を5回行い、最大荷重の平均値をヒートシール強度とした。
【0112】
<ヒートシール(HS)強度(熱処理後)>
HS強度(熱処理前)の試験において、前記単層無延伸フィルム2枚の代わりに、前記で得られた単層無延伸フィルムを85℃で5日間熱処理したフィルム2枚を用いた以外は前記HS強度(熱処理前)の試験と同様にして、熱処理後のヒートシール強度を測定した。
【0113】
<ヒートシール(HS)強度保持率>
熱処理前後のHS強度から、下記式によりHS強度保持率を求めた。この値が大きいほど、耐熱性に優れるといえる。また、該HS強度保持率に基づいて、以下の基準でHS強度保持性を評価した。
HS強度保持率(%)=100×HS強度(熱処理後)/HS強度(熱処理前)
・HS強度保持性の評価基準
○:HS強度保持率が80%以上
△:HS強度保持率が30%以上80%未満
×:HS強度保持率が30%未満
【0114】
<外観変化>
単層無延伸フィルムを85℃で5日間熱処理した前後のフィルム表面の外観変化の有無を評価した。
○:外観変化無し
△:表面の一部にブリード成分が生じた(表面の一部がべたついた)
×:表面の全体にブリード成分が生じた(表面の全体がべたついた)
【0115】
<厚み保持率>
HS強度(熱処理前)の試験において、ヒートシール時間を1.0秒間または3.0秒間にした以外は、前記HS強度(熱処理前)の試験と同様にして積層フィルムを得た。
ヒートシール時間が1.0秒間および3.0秒間である場合それぞれについて、ヒートシール前の単層無延伸フィルム2枚の厚みの合計と、ヒートシール後のヒートシールされた部分の厚みとを、光学顕微鏡を用いて測定し、下記式により、ヒートシール前後における厚み保持率(それぞれ、厚み保持率(1s)および厚み保持率(3s))を求めた。この値が大きいほど、熱収縮し難いといえる。また、該厚み保持率に基づいて、以下の基準で耐熱収縮性を評価した。
厚み保持率(%)=100×ヒートシール後のヒートシールされた部分の厚み/ヒートシール前の単層無延伸フィルム2枚の厚みの合計
・耐熱収縮性の評価基準
○:厚み保持率(1s)および(3s)のいずれもが70%以上
×:厚み保持率(1s)および(3s)の少なくとも一方が70%未満
【0116】
【表3】
【0117】
[実施例3-1~3-5および比較例3-1~3-2]
表4に記載の原材料を表4の割合(重量%)で混練し、ペレット(プロピレン系重合体組成物)を得た。得られた組成物を中間層とし、ランダムポリプロピレン((株)プライムポリマー製、プライムポリプロ F227、エチレン含量=3.0モル%、MFR(230℃,2.16kg荷重)=7g/10分、融点=150℃)をシーラント層として用い、下記条件にて、多層無延伸フィルム(シーラント層/中間層/シーラント層=10μm/30μm/10μm)を作製した。
得られた多層無延伸フィルムを用いて下記性能を評価した。結果を表4に示す。
・押出機:シーラント層は、φ30mm、L/D=26の押出機を使用、中間層は、φ40mm、L/D=26の押出機を使用
・樹脂温度:いずれも230℃
・冷却ロール温度:いずれも30℃
・巻取速度:いずれも10m/分
【0118】
<ヒートシール(HS)強度>
実施例2-1におけるHS強度(熱処理前)の試験において、単層無延伸フィルム2枚の代わりに、得られた多層無延伸フィルム2枚を用いた以外は実施例2-1におけるHS強度(熱処理前)の試験と同様にしてヒートシール強度を測定し、また、HS強度保持性を評価した。
【0119】
<外観変化>
多層無延伸フィルムを、85℃で5日間熱処理した前後のフィルム表面の外観変化の有無を評価した。
○:外観に変化無し
×:表面にブリード成分が生じた(表面がべたついた)
【0120】
<厚み保持率>
実施例2-1における厚み保持率の試験において、単層無延伸フィルム2枚の代わりに、得られた多層無延伸フィルム2枚を用いた以外は実施例2-1における厚み保持率の試験と同様にして、ヒートシール時間が1.0秒間および3.0秒間である場合それぞれについて、ヒートシール前の多層無延伸フィルム2枚の厚みの合計と、ヒートシール後のヒートシールされた部分の厚みとを、光学顕微鏡を用いて測定し、下記式により、ヒートシール前後における厚み保持率(それぞれ、厚み保持率(1s)および厚み保持率(3s))を求め、以下の基準で耐熱収縮性を評価した。
厚み保持率(%)=100×ヒートシール後のヒートシールされた部分の厚み/ヒートシール前の多層無延伸フィルム2枚の厚みの合計
・耐熱収縮性の評価基準
○:厚み保持率(1s)および(3s)のいずれもが45%以上
×:厚み保持率(1s)および(3s)の少なくとも一方が45%未満
【0121】
【表4】
【0122】
[実施例4-1~4-9および比較例4-1~4-2]
ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用い、190℃、40rpmの条件で、表5に記載の割合(重量部)の原材料を5分間混練し、プロピレン系重合体組成物を得た。
該組成物を、190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した後、20℃、10MPaの加圧下で4分間冷却することで、厚み500μmのシートを作製した。
【0123】
<耐白化試験>
得られたシートから、JIS K 6251に規定の2号形ダンベルを作製し、50mm/minの引張速度でこれを15mm伸張させたときの色相(L値)を、分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700d)を用いて測定し、下記式に基づいて、色相変化(ΔL)を算出した。また、得られたシートを85℃で5日間熱処理した後のシートを用いて、同様に色相変化(ΔL)を算出した。ΔL値が小さいほど良好な耐白化性を有することを表す。結果を表5に示す。
ΔL=L値(伸張後)-L値(伸張前)
【0124】
【表5】
【0125】
[実施例5-1~5-6および比較例5-1~5-2]
φ40mmの単軸押出機を用い、溶融温度210℃、回転数40~50rpmの条件で、表6に記載の割合(重量%)の原材料を溶融混練することでペレットを作製した。
このペレットを用いて、温度230℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、ダンベル形状、または、シート形状の試験片を作製した。また、肉厚0.6mmの食品容器を考慮して、得られたペレットを用いて、温度200℃でプレス成形により、シート形状の試験片を得た。
得られた試験片を用いて以下に示す各種評価を行った。結果を表6に示す。
【0126】
<引張弾性率>
ASTM D638に準拠して、射出成形によって得た3.2mm厚のダンベル形状(ASTM 4号ダンベル)の試験片を用いて、23℃、引張速度:50mm/minの条件で引張弾性率を測定した。
【0127】
<n-ヘプタン溶出量>
プレス成形によって得た0.6mm厚のシートを使用し、「合成樹脂製器具又は容器包装の規格基準」(平成18年3月31日付厚生労働省告示第201号改正)中の、「第三器具及び容器包装Dの2の(2)の4.」に基づき、25℃、60分の条件にてn-ヘプタン溶出量を測定した。
引張弾性率が100MPa未満であるプロピレン系重合体組成物の場合、n-ヘプタン溶出量は500μg/ml以下であることが好ましく、400μg/ml以下であることがより好ましい。
引張弾性率が100~400MPaであるプロピレン系重合体組成物の場合、n-ヘプタン溶出量は300μg/ml以下であることが好ましく、200μg/ml以下であることがより好ましい。
引張弾性率が400MPaを超えるプロピレン系重合体組成物の場合、n-ヘプタン溶出量は50μg/ml以下であることが好ましく、30μg/ml以下であることがより好ましい。
【0128】
<グロス保持率>
射出成形によって得た2mm厚のシートを80℃のオーブンで3日間加熱した。JIS Z 8741に準拠し、加熱前後の60°グロス(入射および受光角度が60°の鏡面光沢度)を測定し、以下の式にてグロス保持率を計算した。
グロス保持率(%)=加熱後の60°グロス×100/加熱前の60°グロス
【0129】
【表6】
【0130】
[実施例6]
62重量部の(B-4)、25重量部の(C-1)、38重量部の(A-5)を混合し、二軸混錬機(TEX-30、(株)日本製鋼所製)を用いて230℃で溶融混錬し、プロピレン系重合体組成物を得た。得られた組成物の、ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定したMFRは4.7g/10分であり、ASTM D1505に準拠して測定した密度は0.88g/cmであった。
【0131】
以下に示した構成からなる各層を、下記条件で共押出しして、フィードブロック内で内層、中間層、外層の順に積層された3層フィルムを形成した。
・外層:ポリプロピレン(F327、(株)プライムポリマー製、MFR=7g/10分)を、直径50mm、L/D=28のスクリューを用いて230℃で押出しした
・中間層:得られたプロピレン系重合体組成物を、直径50mm、L/D=28のスクリューを用いて230℃で押出しした
・内層:エチレン・ビニルアルコール共重合体として、エバール F101A((株)クラレ製、MFR=1.0g/10分)を、直径40mm、L/D=28のスクリューを用いて220℃で押出しした
【0132】
なお、前記3層フィルムを形成する際のダイス温度は220℃とした。厚さ約240μmのフィルム状に共押出しされた3層フィルムは、チルロールで冷却を受けつつ、5m/分の速さで引き取った。各層の厚さは外層/中間層/内層=160/40/40μmとした。
【0133】
<層間接着力>
前記で製造した3層フィルムを15mm幅に切り取り、内層と中間層との界面の室温23℃における接着力(単位:N/15mm)を、引張試験機を使用し、Tピール法にて測定した。なお、この際のクロスヘッドスピードは300mm/minとした。結果を表7に示す。
【0134】
[比較例6]
表7に示す配合処方に従い中間層形成用組成物を調製した以外は、実施例6と同様にして、3層フィルムを製造し、層間接着力を測定した。結果を表7に示す。
【0135】
【表7】
【0136】
[実施例7-1~7-4および比較例7-1~7-4]
表8に記載の割合(重量部)の原材料を用いた以外は、実施例5-1と同様にして、射出成形にてダンベル形状またはシート形状の試験を作製し、プレス成形にてシート形状の試験片を作製した。
得られた試験片を用いて、実施例5-1と同様にして、引張弾性率およびn-ヘプタン溶出量を測定した。また、以下に示す各種評価を行った。結果を表8に示す。
【0137】
<ヘイズ(透明性)>
JIS K 7136に準拠し、射出成形によって得た2mm厚のシートを用いて、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-20D」にてヘイズを測定した。
【0138】
<圧縮永久歪>
JIS K 6262を参考に、プレス成形によって得た2mm厚のシートを6枚重ねたものを、70℃で積層方向に25%圧縮して24時間保持した後、圧縮装置から取り出して30分後の積層体の積層方向の長さを測定し、圧縮永久歪を算出した。
この値が小さいほど、高温下で変形し難いといえる。
【0139】
【表8】
【0140】
実施例7-1~7-4で得られた成形体は、柔軟性と、圧縮永久歪と、耐溶出性とのバランスに優れていた。
比較例7-1および7-2で得られた成形体は、柔軟性と、圧縮永久歪と、耐溶出性とのバランスの点で劣っており、比較例7-3で得られた成形体は、柔軟性と、圧縮永久歪とのバランスの点で劣っており、比較例7-4で得られた成形体は、柔軟性と、耐溶出性とのバランスの点で劣っていた。