(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】安全運転支援装置、安全運転支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240904BHJP
G09B 9/052 20060101ALI20240904BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
G06Q50/10
G09B9/052
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2023013489
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】598059572
【氏名又は名称】東京海上ディーアール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100209794
【氏名又は名称】三瓶 真弘
(72)【発明者】
【氏名】駒田 悠一
(72)【発明者】
【氏名】中條 恵理華
(72)【発明者】
【氏名】川上 啓一
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-026378(JP,A)
【文献】特開2018-179740(JP,A)
【文献】特開2011-034240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G08G 1/00
G09B 9/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が起こした事故に関する事故実績データを取得する事故実績データ取得手段と、
車両が備えるセンサにより計測される運転データを取得する運転データ取得手段と、
前記事故実績データと前記運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測する事故予測手段と、
前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した情報を配信する配信手段と、
前記配信手段が配信した情報に対するフィードバックを受信するフィードバック受信手段と、を備え、
前記配信手段は、さらに、前記フィードバックに基づいて情報を配信可能であ
り、
前記配信手段は、前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した教育用コンテンツを配信可能であり、
前記フィードバック受信手段は、前記フィードバックとして、前記配信手段が配信した前記教育用コンテンツの受講状況データを受信し、
前記配信手段は、前記受講状況データに応じた情報を配信可能である、
安全運転支援装置。
【請求項2】
前記配信手段は、さらに、前記事故実績データと前記受講状況データとのうち少なくともいずれかに基づいて、配信する前記教育用コンテンツを選択可能である、
請求項
1に記載の安全運転支援装置。
【請求項3】
前記配信手段は、前記受講状況データを集計し、集計結果に応じた情報を配信可能である、
請求項
1に記載の安全運転支援装置。
【請求項4】
前記事故実績データと前記受講状況データとに基づいて、前記教育用コンテンツを評価する手段をさらに備える、
請求項
1に記載の安全運転支援装置。
【請求項5】
前記配信手段は、さらに、前記運転データに基づいて判定された運転時のリスク情報と、前記事故予測手段による事故パターンの予測結果と、のうち少なくともいずれかを含むレポートを配信可能である、
請求項1に記載の安全運転支援装置。
【請求項6】
前記レポートは、前記運転時のリスク情報と、前記事故予測手段による事故パターンの予測結果と、のうち少なくともいずれかに対する改善目標に関する情報を含む、
請求項
5に記載の安全運転支援装置。
【請求項7】
前記事故予測手段は、前記運転データに基づいて求めた事故パターン毎の発生件数予測値と、前記事故実績データに含まれる過去の所定の期間における該事故パターンの発生件数と、を所定の割合で合成することで、事故パターン別の発生件数を予測する、
請求項1に記載の安全運転支援装置。
【請求項8】
前記事故予測手段は、前記運転データに顕在する顕在リスクと、前記事故実績データに含まれる前記事故パターンと、の回帰分析データを生成する手段を含み、
前記事故予測手段は、所定の前記運転データに顕在する前記顕在リスクと、前記回帰分析データと、に基づいて前記所定の前記運転データに対する事故パターン毎の発生件数予測を行う、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の安全運転支援装置。
【請求項9】
安全支援装置が実行する安全運転支援方法であって、
車両が起こした事故に関する事故実績データを取得し、
車両が備えるセンサにより計測される運転データを取得し、
前記事故実績データと前記運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測し、
予測した事故パターンに対応した情報を配信し、
配信した情報に対するフィードバックを受信し、
さらに、前記フィードバックに基づいて情報を配信可能であ
り、
前記予測した事故パターンに対応した教育用コンテンツを配信可能であり、
前記フィードバックとして、配信した教育用コンテンツの受講状況データを受信し、
前記受講状況データに応じた情報を配信可能である、
安全運転支援方法。
【請求項10】
コンピュータを、
車両が起こした事故に関する事故実績データを取得する事故実績データ取得手段、
車両が備えるセンサにより計測される運転データを取得する運転データ取得手段、
前記事故実績データと前記運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測する事故予測手段、
前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した情報を配信する配信手段、
前記配信手段が配信した情報に対するフィードバックを受信するフィードバック受信手段、として機能させ、
前記配信手段は、さらに、前記フィードバックに基づいて情報を配信可能であ
り、
前記配信手段は、前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した教育用コンテンツを配信可能であり、
前記フィードバック受信手段は、前記フィードバックとして、前記配信手段が配信した前記教育用コンテンツの受講状況データを受信し、
前記配信手段は、前記受講状況データに応じた情報を配信可能である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全運転支援装置、安全運転支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者による車内安全配慮の定着化を図るために、車載器が検出した車両の運行情報や、車載器が取得した車両の運転者の顔を撮影した画像に基づいて、運転者が安全配慮行為を行ったか否かを判断する技術が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の技術では、運転者が安全配慮行為を行ったか否かの判断結果を記録し、運転者の運転評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
業務に社用車を使う企業において、従業員による交通事故は大きなリスクである。特許文献1の技術は、主にバスドライバーの安全運転支援及び運転評価を目的としており、業務で乗用車を使用する企業等、車両を使用する組織における安全運転支援については考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであり、安全運転を好適に支援できる安全運転支援装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の安全運転支援装置は、
車両が起こした事故に関する事故実績データを取得する事故実績データ取得手段と、
車両が備えるセンサにより計測される運転データを取得する運転データ取得手段と、
前記事故実績データと前記運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測する事故予測手段と、
前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した情報を配信する配信手段と、
前記配信手段が配信した情報に対するフィードバックを受信するフィードバック受信手段と、を備え、
前記配信手段は、さらに、前記フィードバックに基づいて情報を配信可能であり、
前記配信手段は、前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した教育用コンテンツを配信可能であり、
前記フィードバック受信手段は、前記フィードバックとして、前記配信手段が配信した前記教育用コンテンツの受講状況データを受信し、
前記配信手段は、前記受講状況データに応じた情報を配信可能である。
【0008】
前記配信手段は、さらに、前記事故実績データと前記受講状況データとのうち少なくともいずれかに基づいて、配信する前記教育用コンテンツを選択可能であるようにしてもよい。
【0009】
前記配信手段は、前記受講状況データを集計し、集計結果に応じた情報を配信可能であるようにしてもよい。
【0010】
前記事故実績データと前記受講状況データとに基づいて、前記教育用コンテンツを評価する手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0011】
前記配信手段は、さらに、前記運転データに基づいて判定された運転時のリスク情報と、前記事故予測手段による事故パターンの予測結果と、のうち少なくともいずれかを含むレポートを配信可能であるようにしてもよい。
【0012】
前記レポートは、前記運転時のリスク情報と、前記事故予測手段による事故パターンの予測結果と、のうち少なくともいずれかに対する改善目標に関する情報を含むようにしてもよい。
【0013】
前記事故予測手段は、前記運転データに基づいて求めた事故パターン毎の発生件数予測値と、前記事故実績データに含まれる過去の所定の期間における該事故パターンの発生件数と、を所定の割合で合成することで、事故パターン別の発生件数を予測するようにしてもよい。
【0014】
前記事故予測手段は、前記運転データに顕在する顕在リスクと、前記事故実績データに含まれる前記事故パターンと、の回帰分析データを生成する手段を含み、
前記事故予測手段は、所定の前記運転データに顕在する前記顕在リスクと、前記回帰分析データと、に基づいて前記所定の前記運転データに対する事故パターン毎の発生件数予測を行うようにしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の安全運転支援方法は、
安全支援装置が実行する安全運転支援方法であって、
車両が起こした事故に関する事故実績データを取得し、
車両が備えるセンサにより計測される運転データを取得し、
前記事故実績データと前記運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測
し、
予測した事故パターンに対応した情報を配信し、
配信した情報に対するフィードバックを受信し、
さらに、前記フィードバックに基づいて情報を配信可能であり、
前記予測した事故パターンに対応した教育用コンテンツを配信可能であり、
前記フィードバックとして、配信した教育用コンテンツの受講状況データを受信し、
前記受講状況データに応じた情報を配信可能である。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムは、
コンピュータを、
車両が起こした事故に関する事故実績データを取得する事故実績データ取得手段、
車両が備えるセンサにより計測される運転データを取得する運転データ取得手段、
前記事故実績データと前記運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測
する事故予測手段、
前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した情報を配信する配信手段、
前記配信手段が配信した情報に対するフィードバックを受信するフィードバック受信手
段、として機能させ、
前記配信手段は、さらに、前記フィードバックに基づいて情報を配信可能であり、
前記配信手段は、前記事故予測手段が予測した事故パターンに対応した教育用コンテンツを配信可能であり、
前記フィードバック受信手段は、前記フィードバックとして、前記配信手段が配信した前記教育用コンテンツの受講状況データを受信し、
前記配信手段は、前記受講状況データに応じた情報を配信可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、安全運転を好適に支援できる。特に、車両を使用する組織における安全運転を好適に支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係る安全運転支援システムのシステム構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係る安全運転支援装置の機能ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る安全運転支援装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】配信情報設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5-1】事故リスク診断処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5-2】顕在リスク・事故パターン回帰分析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(A)は潜在リスク係数テーブルの一例を示す図、(B)は顕在リスク・事故パターン回帰係数テーブルの一例を示す図である。
【
図7】(A)~(C)は教育用コンテンツの選択イメージを示す図である。
【
図8】配信コンテンツ再設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】レポート配信処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】安全運転支援装置が生成するレポートの一例を示す図である。
【
図11】安全運転支援装置が生成するレポートの一例を示す図である。
【
図12】安全運転支援装置が生成するレポートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の安全運転支援システム1、安全運転支援装置10について、図面を参照しながら説明する。なお、図中同一または対応する部分には同一符号を付す。
【0020】
本発明の実施の形態の安全運転支援システム1は、社用車を使用する企業等、複数のメンバーで構成され、メンバーが車両を業務等で使用する組織において、メンバー全体の安全運転を支援するためのシステムである。
【0021】
図1は、安全運転支援システム1のシステム構成を示すブロック図である。安全運転支援システム1は、安全運転支援装置10と、事故実績DB20と、車両30に搭載される車載機器31と、管理用端末40と、教育用端末50と、から構成される。安全運転支援装置10は、事故実績DB(Data Base)20、車載機器31、管理用端末40、及び、教育用端末50とインターネット、移動体通信網等のネットワークを介して接続されている。
【0022】
安全運転支援装置10は、事故実績DB20から取得した事故実績データと、車載機器31から取得した運転データと、に基づいて発生しやすい事故パターンを予測し、予測した事故パターンに基づいて安全運転に関する情報(教育用コンテンツ、各種レポート)を管理用端末40や教育用端末50に配信する装置である。
【0023】
事故実績DB20は、安全運転支援システム1を使用する組織における、過去の交通事故の事故パターンと件数を示す事故実績データを記憶するデータベースである。事故実績DB20は、例えば、組織において車両30の事故が発生する度に更新されればよい。また、車載機器31からの加速度データ等に基づいて事故判定を行い、判定結果に基づいて事故実績DB20が更新されるようにしてもよい。事故実績データは、事故車両、運転者、日時等の情報を含んでいてもよい。事故実績DB20は、組織が保有するものであってもよいし、安全運転支援システム1の運営者が管理するものであってもよい。安全運転支援システム1は、一又は複数の組織が利用可能であり、複数の組織が安全運転支援システム1を利用する場合、複数の組織の事故実績データが事故実績DB20に記憶、蓄積される。
【0024】
車両30は、安全運転支援システム1の使用する組織のメンバーが使用する自動車であり、例えば、組織が所有する社用車、メンバーの所有車等である。車載機器31は、車両30に搭載され、GPS(Global Positioning System)、加速度センサ、カメラ等を備え、車両30の運転操作や運転手に関する情報(視線、目の開き具合等)といった運転データを計測する機器であり、例えば通信型ドライブレコーダー等の車載型テレマティクスデバイスである。車載機器31は、計測した運転データを安全運転支援装置10に送信する。車載機器31が計測した運転データは、クラウドサーバに保存され、安全運転支援装置10は、クラウドサーバから運転データを取得するようにしてもよい。なお、車載機器31は、デジタルタコグラフや、カーナビ、車両30のドライバーの所有するスマートフォン、車両30と接続して車両30から運転データを取得する機器等であってもよいし、複数の機器で構成されていてもよい。
【0025】
なお、
図1では1台の車両30が示されているが、組織のメンバーが使用する複数の車両30であってもよい。なお、組織のメンバーが使用する全ての車両30に車載装置31を搭載し、全ての車両30から運転データを取得するのではなく、組織のメンバーが使用する全ての車両30のうち一部の車両30に車載装置31を搭載し、該一部の車両30から運転データを取得するようにしてもよい。そして、一部の車両30から運転データに基づき、全体の運転診断や事故予測を行うようにしてもよい。このようにすることで、車載装置31を搭載するコスト、運転データ取得の処理負担を軽減できる。
【0026】
管理用端末40は、安全運転支援システム1を使用する組織における管理者用の端末装置であり、パーソナルコピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。
【0027】
教育用端末50は、安全運転支援システム1を使用する組織におけるメンバーの安全運転教育用の端末装置であり、パーソナルコピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。
【0028】
なお、
図1では、1つの管理用端末40、2つの教育用端末50を示しているが、これらの端末の数は任意でよい。
【0029】
図2は、本実施の形態に係る安全運転支援装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。安全運転支援装置10は、事故実績データ取得部101と、運転データ取得部102と、事故予測部103と、配信部104と、フィードバック受信部105と、DB(データベース)110と、から構成される。
【0030】
事故実績データ取得部101は、事故実績DB20から事故実績データを取得し、取得した事故実績データを事故予測部103に入力する。
【0031】
運転データ取得部102は、車載機器31が計測した運転データを取得し、取得した運転データを事故予測部103に入力する。運転データ取得部102は、車載機器31から直接運転データを取得するようにしてもよいし、クラウドサーバ経由で運転データを取得するようにしてもよい。
【0032】
事故予測部103は、入力された事故実績データと運転データとに基づいて、運転時のリスクの診断を行い、発生しやすい事故パターンの予測を行う。事故予測部103は、リスクの診断結果、事故パターンの予測結果を配信部104に入力する。また、事故予測部103は、運転データに顕在する顕在リスクと、事故実績データに含まれる事故パターンと、の回帰分析を行い、回帰分析データを生成する機能を有する。
【0033】
配信部104は、入力された診断結果に基づくレポートを管理端末40に配信する。また、配信部104は、入力された事故パターンの予測結果に対応した教育用コンテンツを選択し、教育用端末50に配信する。
【0034】
フィードバック受信部105は、教育用端末50から情報配信のフィードバックとして、教育用コンテンツの受講状況データを受信し、受講状況データを配信部104に入力する。受講状況データは、教育用端末50において受講した教育用コンテンツの種類を特定可能な情報であればよく、受講回数や受講者を示す情報等を含んでいてもよい。
【0035】
配信部104は、フィードバック受信部105から入力された受講状況データに基づいて、教育用コンテンツの受講状況データを集計し、集計結果をレポートとして管理用端末40に配信する。また、配信部104は、受講状況データや事故実績データに基づいて、教育用コンテンツを選択(再選択)可能となっている。
【0036】
安全運転支援装置10は、事故実績データと運転データと受講状況データとの少なくともいずれかに基づいて、教育用コンテンツを評価する手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0037】
DB110は、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置から構成され、安全運転支援に関する各種データ、安全運転の教育用コンテンツデータ、安全運転の進捗情報(改善状況等)、安全運転教育の進捗情報等を記憶する。なお、安全運転の教育用コンテンツは、安全運転支援装置10の運営者によって作成されて格納されてもよいし、ネットワーク介して外部から取得するようにしてもよい。
【0038】
安全運転支援装置10は、メインフレームやワークステーション、あるいはパーソナルコンピュータ(PC)などの1又は複数の物理的な情報処理装置等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的な情報処理装置を用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。また、安全運転支援装置10は、専用の装置であってもよい。
【0039】
図3は、安全運転支援装置10のハードウェア構成例を示す図である。安全運転支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD及び/又はSSD等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信インターフェース13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。
【0040】
プロセッサ11が記憶装置12に記憶されるプログラムを読み込むことで、
図2に示す各種機能部として動作する。また、記憶装置12は、
図2に示すDB110として機能する。
【0041】
続いて、安全運転支援装置10の動作について説明する。
図4は、安全運転支援装置10が実行する配信情報設定処理の一例を示すフローチャートである。配信情報設定処理は、運転データ及び事故実績データに基づいて、事故のリスク診断を行い、診断結果に応じた情報(レポートや教育用コンテンツ)を配信するための処理である。安全運転支援装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶される動作プログラムを読み込むことで配信情報設定処理を実行する。配信情報設定処理は、例えば年度初めといった所定の組織における教育用コンテンツの配信スケジュールの年間計画の策定タイミングや、予め定められた診断スケジュール毎等、所定のタイミングで実行されればよい。この実施の形態では、年度初めといった所定の組織(企業)における教育用コンテンツの配信スケジュールの年間計画の策定タイミングで実行されるものとして説明する。
【0042】
配信情報決定処理において、先ず、安全運転支援装置10の運転データ取得部102が、車両30に搭載される車載機器31が計測した運転データを取得する(ステップS11)。
【0043】
続いて、安全運転支援装置10の事故実績データ取得部101が、事故実績DB20から事故実績データを取得する(ステップS12)。
【0044】
なお、この実施の形態では、運転データ及び事故実績データは、安全運転支援装置10が、ネットワークを介して取得するものとして説明するが、運転データ及び事故実績データの少なくともいずれかは、オペレータ等の操作を介して安全運転支援装置10に入力されるものであってもよい。
【0045】
なお、ステップS11では、組織における全ての車両30から運転データを取得してもよいし、組織における一部の車両30から運転データをサンプルとして取得し、全体のリスク診断を行うようにしてもよい。このようにすることで、全体の運転データを取得する工数を減らすことができ、処理負担を軽減できる。
【0046】
その後、安全運転支援装置10の事故予測部103が、運転データ及び事故実績データに基づいて運転時のリスクを診断する事故リスク診断処理を実行する(ステップS13)。
【0047】
図5-1は、事故予測部103が実行する事故リスク診断処理の一例を示すフローチャートである。事故リスク診断処理では、事故予測部103は、先ず、組織における直近の所定の期間(例えば直近1年間)の運転データに顕在する顕在リスク及び道路交通法違反のスコアを算出する(ステップS131)。ステップS131では、顕在リスク及び道路交通法違反を、例えばそれぞれの発生率や重大性に基づいて評価し、100点満点等でスコア化する。なお、所定の期間は任意に指定できるようにしてもよい。
【0048】
ここで、顕在リスクとは、車載機器31の加速度センサ、カメラ等により直接計測される運転時のリスク行動である。顕在リスクの発生回数は運転データから判別し、抽出し、その発生回数を運転データから抽出される走行距離で割ることで、顕在リスクの発生率を算出すればよい。さらに、例えば、その発生率を一般平均や業種平均と比較し、相対評価してスコア化すればよい。なお、この実施の形態の顕在リスクは、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル、前方車接近、片寄り走行、わき見、居眠りが含まれる。これら以外の顕在リスクが含まれていてもよい。
【0049】
また、道路交通法違反は、速度超過、一時停止違反、通行禁止違反等を含む。道路交通法違反の発生回数は、運転データや道路データ等に基づいて判別すればよい。そして、その発生回数を運転データに含まれる走行ルートにおける規制件数で割ることで、道路交通法違反の発生率を算出すればよい。また、起こした違反の重大性を、例えば、違反点数÷違反件数で算出する。そして、道路交通法違反の発生率及び重大性を加味して、道路交通法違反のスコアを算出すればよい。なお、道路交通法違反の種類を細分化して、種類毎のスコアを算出するようにしてもよい。
【0050】
なお、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドルは、加速度センサのデータにより計測、判別すればよい。前方車接近、片寄り走行は、車外映像から判別すればよい。わき見、居眠りは、車内映像から判別すればよい。道路交通法違反は、映像解析やGPSによる走行軌道等により判別してもよいし、別途実績情報を取得するようにしてもよい。また、運転データに基づく顕在リスク及び道路交通法違反の評価方法は、ここで説明した方法に限定されず、運転データに基づいて好適にリスク評価をできれば他の方法であってもよい。
【0051】
続いて、事故予測部103は、ステップS131にて算出した直近の顕在リスク7種及び道路交通法違反の合計8種のスコアについて、各潜在リスクへの関連度合いに応じた重み付けを加味した平均を取ることで、潜在リスクのスコアを算出する(ステップS132)。
【0052】
この実施の形態における潜在リスクとは、顕在リスクに潜在するリスク傾向であり、認知、判断、操作、体調が含まれる。これら以外の潜在リスクが含まれていてもよい。各潜在リスクは、例えば100点満点で評価しスコア化すればよい。
【0053】
図6(A)は、顕在リスクから潜在リスクを算出するための重み付け割合を示す潜在リスク係数テーブルの一例を示す図である。
図6(A)に示すように、7種の顕在リスク及び道路交通法違反について、各潜在リスクに対する関連度合いに対応した重み付け係数(重み付け割合)が予め定められている。各潜在リスクのスコアは、7種の顕在リスク及び道路交通法違反のスコア×対応する係数の平均値となる。例えば、「認知」の値は、(急アクセルのスコア×a1+急ブレーキのスコア×b1+急ハンドルのスコア×c1+前方車接近のスコア×d1+片寄り走行のスコア×e1+わき見のスコア×f1+居眠りのスコア×g1+道路交通法違反のスコア×h1)÷8で算出する。「判断」、「操作」、「体調」についても同様に算出すればよい。なお、
図6(A)に示す顕在リスクや潜在リスクを設ける場合、それらに対応した計数も設定すればよい。
【0054】
なお、潜在リスク係数テーブルは、研究データ、統計データ、事故実績データ、事故の分析データ等に基づいて予め生成されていればよい。例えば、研究機関等の外部から取得するようにしてもよいし、安全運転支援システム1の運営者により作成されるようにしてもよい。
【0055】
その後、事故予測部103は、ステップS131にて算出した直近の所定の期間の運転データに基づく顕在リスクのスコアと、顕在リスクのスコアと各事故パターンの発生件数(事故実績データ)との回帰分析により予め求められた回帰係数及び回帰式と、に基づいて、今後特定の期間(例えば今後1年間)における各事故パターンの発生件数を予測する(ステップS133)。なお、特定の期間は任意に指定できるようにしてもよい。
【0056】
ここで、顕在リスクのスコアと各事故パターンの発生件数との回帰分析を行い、全ての顕在リスクと全ての事故パターンとの対応関係を示す回帰係数βを求めるための顕在リスク・事故パターン回帰分析処理について説明する。顕在リスク・事故パターン回帰分析処理は、少なくとも事故リスク診断処理(配信情報設定処理)に先だって、安全運転支援装置10により実行されていればよい。例えば、顕在リスク・事故パターン回帰分析処理は、安全運転支援システム1の運用開始時や、予め定められた回帰係数の見直しタイミング(例えば年1回の所定タイミング、新たな運転データ及び事故実績データがある程度蓄積したタイミング等)等に実行されればよい。
【0057】
図5-2は、安全運転支援装置10が実行する顕在リスク・事故パターン回帰分析処理の一例を示すフローチャートである。顕在リスク・事故パターン回帰分析処理では、先ず、安全運転支援装置10の運転データ取得部102が、車両30に搭載される車載機器31が計測した運転データを取得する(ステップS21)。ステップS21では、運転データを回帰分析に用いるため、安全運転支援システム1を利用している全ての組織の車両30の運転データ(全体の運転データ)を取得する。
【0058】
続いて、安全運転支援装置10の事故実績データ取得部101が、事故実績DB20から事故実績データを取得する(ステップS22)。ステップS22では、事故実績データを回帰分析に用いるため、安全運転支援システム1を利用している全ての組織の事故実績データ(全体の事故実績データ)を取得する。
【0059】
そして、安全運転支援装置10の事故予測部103が、過去の所定期間(例えば過去5年間等)の全体の運転データに顕在する顕在リスクのスコアを算出する(ステップS23)。顕在リスクの算出方法は、ステップS131と同様である。なお、所定期間は任意に指定できるようにしてもよい。
【0060】
次に、事故予測部103は、算出した過去の所定期間の全体の運転データに基づく顕在リスクのスコアと、全体の事故実績データに含まれる同期間における事故パターン毎の発生件数と、の回帰分析を行う(ステップS24)。
【0061】
具体的には、事故予測部103は、説明変数を顕在リスクのスコア、目的変数を事故発生件数とするポアソン回帰分析を行い、事故パターン毎に以下の回帰式(1)を求める。
ln(λ)=β0+β1x1+…+βjxj+…+βpxp+ε ・・・(1)
(λ:事故件数、x:顕在リスクのスコア、β:回帰係数、ε:定数)
【0062】
そして、事故予測部103は、分析結果に応じて、全ての顕在リスクと全ての事故パターンとに対応する回帰係数βを示す顕在リスク・事故パターン回帰係数テーブルを生成または更新する(ステップS25)。その後、顕在リスク・事故パターン回帰分析処理を終了する。
【0063】
図6(B)は、ポアソン回帰分析により求められた回帰係数βを示す顕在リスク・事故パターン回帰係数テーブルの一例を示す図である。
図6(B)に示すように、ステップS24における分析結果に応じて、全ての顕在リスクと全ての事故パターンとに対応する回帰係数βが顕在リスク・事故パターン回帰係数テーブルに記憶される。なお、
図6(B)に示す事故パターンは一例であり、他の事故パターンが含まれていてもよい。
【0064】
このような顕在リスク・事故パターン回帰分析処理により、全ての顕在リスクと全ての事故パターンとの対応関係を示す回帰係数βを求めることができる。また、回帰分析においては、安全運転支援システム1の利用者全体の運転データ及び全体の事故実績データを用いるので、好適な分析が可能である。
【0065】
なお、この実施の形態では、全体の運転データ(顕在リスク)及び全体の事故実績データに基づいて回帰分析を行い、回帰係数テーブルを生成しているが、業種別または組織別に回帰分析を行い、業種別または組織別の回帰係数テーブルを生成するようにしてもよい。このように、業種別または組織別の回帰分析を行うことで、より精度の高い回帰係数を求めることができ、事故予測の精度の向上が図れる。
【0066】
図5-1に戻り、ステップS133では、事故予測部103は、ステップS131にて算出した直近の所定の期間の顕在リスクのスコアと、上記回帰式(1)及び
図6(B)に示す回帰係数βと、に基づいて、今後特定の期間(例えば今後1年間)における各事故パターンの発生件数を予測する。具体的には、回帰式(1)に、各顕在リスクのスコアx
jを代入し、両辺の指数をとることで、直近の運転データに基づく事故パターンの件数予測値λを得る。これにより、事故パターン毎の発生件数を予測でき、発生しやすい事故パターンを予測することができる。
【0067】
続いて、事故予測部103は、過去の事故実績データに基づいて、ステップS133にて求めた事故パターン別の件数予測値を補正する(ステップS134)。具体的には、ステップS133にて算出した件数予測値λと、事故実績データに含まれる過去の特定の期間(例えば前年度、当年度等)における事故パターン毎の発生件数を、既定の割合で合成することで、事故パターン毎の発生件数の最終予測値を得るようにしてもよい。例えば、件数予測値λと特定の期間の発生件数との平均値を発生件数の最終予測値としてもよい。このようにすることで、運転データから予測した件数を、過去の事故実績に応じて補正することができ、より精度の高い件数予測が期待できる。この合成割合についても、回帰分析により求めるようにしてもよい。
【0068】
教育用コンテンツの配信スケジュールの年間計画の策定後、当該年度途中で運転データに基づいて事故の発生件数予測を実行する場合、運転データに基づく件数予測値λと、事故実績データに含まれる発生件数(事故実績件数)との合成割合を、予測のタイミングに応じて異ならせてもよい。例えば、予測のタイミングが期末に近づくにしたがい、当年度中の事故実績件数の重みづけを大きくするようにしてもよい。これにより、期末時点の補正後の件数予測値と当年の事故実績件数とを一致させることができる。
【0069】
具体的には、年間計画における期首に行う事故予測では「前年度」の事故実績件数と、運転データからの件数予測値λとを64:36の比率で合成し、半年経過後の期中予測では、「前年度1年間分」の事故実績件数と「当年半年分」の事故実績件数を50:50で混ぜたものと、運転データからの件数予測値λとを64:36の比率で合成するようにしてもよい。このようにすることで、好適に件数予測値を補正することができる。なお、合成割合は一例であり、任意に調整可能である。
【0070】
なお、ステップS134における事故実績データに基づく事故パターン別の発生件数予測の補正は省略し、ステップS133における事故パターン毎の件数予測値λを最終予測値としてもよい。補正の有無や合成割合をユーザや管理者等が予め設定できるようにしてもよい。また、組織における事故実績データが少ない場合には、ステップS134における事故実績データに基づく発生件数予測の補正を省略するようにしてもよい。
【0071】
なお、顕在リスク・事故パターン回帰係数テーブルは、安全運転支援装置10が予め生成するものに限定されず、例えば、研究機関等の外部から取得するようにしてもよい。
【0072】
潜在リスクのスコアの算出や、各事故パターンの発生件数の予測をした後は、安全運転支援装置10の配信部104が、ステップS131~S134における診断結果、予測結果等に基づいて診断レポートを生成し、管理用端末40に送信する(ステップS135)。
【0073】
診断レポートは、運転データ及び事故実績データに基づく安全運転に関する診断結果を示すものであればよく、運転データから抽出されるリスクの情報、運転データ及び事故実績データから予測される事故の発生件数予測値等を含むレポートであればよい。
【0074】
具体的には、診断レポートは、
図10に示すように、運転データから抽出される顕在リスクのスコア、事故リスク診断処理において算出した潜在リスクのスコア、それらのリスク診断における総合評価点、事故リスク診断処理で予測した事故パターン毎の発生件数の予測値、今期の事故の実績件数、潜在リスクや事故パターン毎の発生件数の年度目標値等を含むレポートであればよい。また、
図10に示すように、顕在リスクのスコア、潜在リスクのスコア、及び、事故パターン毎の発生件数予測値には、同業種平均を合わせて示すようになっている。これにより、自社のリスク診断結果、事故予測結果の相対評価を把握できるようになる。また、今期の実績件数を年度目標値と合わせて表示することで、目標値に対する改善度や進捗を把握することができる。なお、業種平均や今期実績件数は、事故実績データに基づき算出すればよい。
【0075】
また、
図10に示すように、潜在リスクと事故パターンには、改善目標となる項目を設定してレポートに示すようにしてもよい。同様に、顕在リスクにも改善目標を設定するようにしてもよい。このようにすることで、その項目の改善を促すことができ、全体のリスクの改善を促すことができる。この実施の形態では、例えば、評価が最も低い潜在リスク(
図10では「判断」)を潜在リスクの改善目標に設定する。また、事故パターン毎の発生件数の予測値に事故パターン毎の損害額を乗算し、その合計値(総損害額予測値)が高い順に優先順位を設定する。そして、総損害額予測値の最も高い事故パターンの年度目標値を事故パターンの改善目標に設定する。なお、改善目標に設定する事故パターンの決定方法としては、総損害額予測値の最も高い事故パターンを設定するものに限定されず、例えば、発生件数の予測値が最多の事故パターンを設定するようにしてもよい。また、改善目標とする事故パターンの決定方法をユーザが選択できるようにしてもよいし、複数の事故パターンを改善目標に設定するようにしてもよい。
【0076】
このように、事故リスク診断処理において、事故診断結果を示すレポートを組織の管理用端末40に配信できるので、組織の管理者による安全運転の管理を支援することができる。
【0077】
なお、
図10に示す診断レポートは一例であり、過去の事故実績データ、改善度合い等の他の項目を含ませてもよい。なお、診断レポートの送信を必要としない場合は、ステップS135の処理を省略すればよい。
【0078】
診断レポートを送信した後は、事故リスク診断処理を終了する。
図5-1に示す事故リスク診断処理は、
図4に示す配信情報設定処理のサブプロセスとして含まれる他、任意の運転診断の実行タイミング等で、単独で実行されるようにしてもよい。これにより、好適に組織における運転診断(事故リスク診断、事故予測)を行うことができる。任意のタイミングで事故リスク診断処理を実行する場合、参照する運転データや事故実績データを実行タイミング(年度初め、期中、期末等)に応じて異ならせてもよい。
【0079】
事故リスク診断処理を終了すると、
図4に戻り、安全運転支援装置10の配信部104が、ステップS13の事故リスク診断処理における事故パターンの予測結果に基づいて、組織のメンバーの教育用端末50に配信する安全運転に関する教育用コンテンツを選択する(ステップS14)。
【0080】
図7は、ステップS14における教育用コンテンツの選択方法のイメージを示す図である。
図7(A)に示すように、先ず、ステップS13における事故パターン毎の発生件数の予測値に事故パターン毎の損害額を乗算し、その合計値(総損害額予測値)が高い順に優先順位を設定する。なお、改善目標とする事故パターンの決定方法と同様に、事故パターン毎の発生件数の予測値が高い順に優先順位を設定するようにしてもよい。そして、
図7(B)に示すように、各事故パターンには、1または複数の教育用コンテンツが対応付けられており、事故パターンの優先順位に基づいて、
図7(B)に示す事故パターン・教育用コンテンツの対応表から教育用コンテンツを順に選択する。そして、
図7(C)に示すように、選択した教育用コンテンツに予め設定された配信数で配信順序を設定して、教育用コンテンツの選択を完了する。このようにすることで、総損害額予測値に応じて、教育用コンテンツを選択することができる。なお、
図7に示す選択方法のイメージは一例であり、好適に教育用コンテンツを選択できれば他の方法であってもよい。
【0081】
教育用コンテンツを選択した後は、安全運転支援装置10の配信部104が、ステップS14にて選択されて配信順序が設定された教育用コンテンツを順次配信するために配信スケジュール(年間計画)を設定する(ステップS15)。ステップS15では、例えば、DB110に配信スケジュールを記憶し、組織の安全運転教育用のポータルサイト等から、教育用コンテンツを順次受講(アクセス)できるように、配信タイミング等を設定すればよい。その後、配信情報決定処理を終了する。
【0082】
このような配信情報決定処理を実行することで、運転データ及び事故実績データに基づいて予測された起こりやすい事故パターンに応じた安全運転の教育用コンテンツを組織のメンバーに配信できるので、組織のメンバーの安全運転を支援することができる。
【0083】
なお、教育用コンテンツの配信方法は、配信スケジュールを設定して順次配信する方法に限定されず、事故パターン毎の発生件数の予測値が所定以上であり、発生しやすい事故パターンに対応した教育用コンテンツを一律配信して、教育用端末50側で、いずれの教育用コンテンツを受講するかを選択するようにしてもよい。
【0084】
また、この実施の形態の安全運転支援装置10は、所定の組織について、
図4の配信情報設定処理を実行することで教育用コンテンツの配信スケジュール(年間計画)を設定して、教育用コンテンツの配信を開始した後、その後の事故実績データや受講状況に応じて、配信するコンテンツを再設定可能となっている。
図8は、配信するコンテンツを再設定するための配信コンテンツ再設定処理の一例を示すフローチャートである。安全運転支援装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶される動作プログラムを読み込むことで配信コンテンツ再設定処理を実行する。配信コンテンツ再設定処理は、例えば予め定められた配信コンテンツの見直しタイミング毎等、所定のタイミングで実行されればよい。
【0085】
配信コンテンツ再設定処理において、先ず、安全運転支援装置10の事故実績データ取得部101が、事故実績DB20から事故実績データを取得する(ステップS31)。
【0086】
なお、この実施の形態では、事故実績データは、安全運転支援装置10が、ネットワークを介して取得するものとして説明するが、オペレータの操作を介して安全運転支援装置10に入力されるものであってもよい。
【0087】
続いて、安全運転支援装置10の配信部104は、取得した事故実績データに基づいて、教育用コンテンツの配信スケジュール設定後、現在までといった直近の事故実績データに、予め定められた重大事故(例えば人身事故、損害額が閾値を超えるような事故等)が含まれているか否かを判定する(ステップS32)。即ち、直近の教育用コンテンツの配信後に、組織において重大事故が発生したか否かを判定する。
【0088】
直近の事故実績データに重大事故が含まれている場合(ステップS32;Yes)、配信部104は、当該重大事故の再発防止コンテンツを教育用端末50に配信可能に設定する(ステップS33)。ステップS33では、例えば、既に配信設定済みの教育用コンテンツよりも再発防止コンテンツを優先的に受講可能なように配信順序を入れ替える。例えば、受講済みの教育用コンテンツの次の配信順序に再発防止コンテンツを割り込んで配信するように配信スケジュールを再設定する。このようにすることで、重大事故の再発防止を支援できる。
【0089】
直近の事故実績データに重大事故が含まれていない場合(ステップS32;No)、または、ステップS33の処理の後、配信部104は、教育用コンテンツの配信スケジュール設定後、現在までといった直近の事故実績データにおける事故の発生率が予測値より多い事故パターンがあるか否かを判定する(ステップS34)。各事故パターンの発生率の予測値は、
図5-1のステップS134にて予測した、特定の期間(例えば今後1年間)における各事故パターンの発生件数の予測結果から算出すればよい。そして、ステップS34では、直近の事故実績データに基づいて、その予測値よりも事故の発生率が多い事故パターンがあるか否かを判定する。
【0090】
直近の事故実績データにおける事故の発生率が予測値より多い事故パターンがある場合(ステップS34;Yes)、その事故パターンの教育用コンテンツを教育用端末50に優先的に配信するように設定する(ステップS35)。ステップS35では、例えば、既に配信設定済みの教育用コンテンツよりも発生率が予測値より多い事故パターンの教育用コンテンツを優先的に受講可能なように配信順序を入れ替える。例えば、受講済みの教育用コンテンツの次の配信順序にその事故パターンの教育用コンテンツを割り込んで配信するように配信スケジュールを再設定する。このようにすることで、発生率が想定よりも高い事故パターンの発生率軽減を支援できる。
【0091】
直近の事故実績データにおける事故の発生率が予測値より多い事故パターンがない場合(ステップS34;No)、または、ステップS35の処理の後、配信部104は、教育用コンテンツの配信スケジュール設定後、現在までといった直近の事故実績データにおける事故の発生率が予測値より大幅に少ない(例えば予測値の50%以下等)事故パターンがあるか否かを判定する(ステップS36)。
【0092】
直近の事故実績データにおける事故の発生率が予測値より大幅に少ない事故パターンがある場合(ステップS36;Yes)、その事故パターンの教育用コンテンツを教育用端末50に優先度を下げるように設定する(ステップS37)。ステップS37では、例えば、発生率が予測値より大幅に少ない事故パターンの教育用コンテンツよりも、配信順序が後になっている教育用コンテンツを優先的に受講可能なように配信順序を入れ替える。例えば、発生率が予測値より大幅に少ない事故パターンの教育用コンテンツが配信中であれば、該コンテンツの配信を切り上げて、配信順序が次点の教育用コンテンツを繰り上げて配信するように配信スケジュールを再設定する。このようにすることで、発生率が想定よりも低い事故パターンの教育用コンテンツに代えて他の事故パターンの教育用コンテンツに入れ替えることができるので、好適に教育用コンテンツを配信でき、安全運転の教育を支援できる。
【0093】
ステップS31~S37の処理を実行することで、事故実績データに基づいて、教育用コンテンツを再設定(再選択)できるので、好適に教育用コンテンツを配信でき、安全運転の教育を支援できる。なお、事故実績データに基づいて、教育用コンテンツを選択、再選択する方法はステップS31~S37の処理に示す例に限定されず、事故実績データに基づいて好適な教育用コンテンツを選択、配信できれば他の方法であってもよい。
【0094】
直近の事故実績データにおける事故の発生率が予測値より大幅に少ない事故パターンがない場合(ステップS36;No)、または、ステップS37の処理の後、安全運転支援装置10のフィードバック受信部105が、教育用端末50から受信した受講状況データを取得する(ステップS41)。
【0095】
なお、この実施の形態では、受講状況データは、安全運転支援装置10が、ネットワークを介して取得するものとして説明するが、受講状況データは、オペレータの操作を介して安全運転支援装置10に入力されるものであってもよい。また、受講状況データは、教育用端末50において教育用コンテンツが受講される毎にフィードバック受信部105が受信し、受講者の識別情報と対応付けて受講履歴としてDB110に蓄積、記憶するようにしてもよい。
【0096】
受講状況データを取得すると、配信部104は、受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの発生率と予測値とを比較し、事故発生率の改善度が良好であるか否かを判定する(ステップS42)。例えば、受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの発生率が予測値よりも所定の閾値以上改善していれば改善度が良好であると判定すればよい。
【0097】
受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの改善度が良好であれば(ステップS42;Yes)、安全運転支援装置10は、該コンテンツに高評価を示す情報をDB110に記憶する(ステップS43)。このようにすることで、事故実績データと受講状況データとに基づいて、教育用コンテンツを評価することができる。この評価は、配信する教育用コンテンツ自体に見直しや、教育用コンテンツ毎の優先順位や配信順序に反映すればよい。例えば、
図4のステップS14において教育用コンテンツの選択時に評価を参照して、評価に基づいて教育用コンテンツを選択するようにしてもよい。
【0098】
また、配信部104は、改善度が良好である事故パターンに対応した教育用コンテンツの配信を切り上げて、配信順序が次点の教育用コンテンツを繰り上げて配信するように配信スケジュールを再設定する(ステップS44)。このようにすることで、改善度が良好の事故パターンの教育用コンテンツに代えて他の事故パターンの教育用コンテンツに入れ替えることができるので、好適に教育用コンテンツを配信でき、安全運転の教育を支援できる。なお、改善度が良好の事故パターンに対応した教育用コンテンツが全て(例えばコンテンツ1~3のうち全て等)受講済みである場合、ステップS44の処理は省略すればよい。
【0099】
受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの改善度が良好でない場合(ステップS42;No)、または、ステップS44の処理の後、配信部104は、受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの発生率と予測値とを比較し、事故発生率の改善度が不良であるか否かを判定する(ステップS45)。例えば、受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの発生率が予測値未満であったり、予測値よりも所定の閾値以上悪化していれば改善度が不良であると判定すればよい。
【0100】
受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの改善度が不良であれば(ステップS45;Yes)、安全運転支援装置10は、該コンテンツに低評価を示す情報をDB110に記憶する(ステップS46)。このようにすることで、事故実績データと受講状況データとに基づいて、教育用コンテンツを評価することができる。この評価は、配信する教育用コンテンツ自体に見直しや、教育用コンテンツ毎の優先順位や配信順序に反映すればよい。例えば、
図4のステップS14において教育用コンテンツの選択時に評価を参照して、評価に基づいて教育用コンテンツを選択するようにしてもよい。
【0101】
なお、受講済みとなってから所定期間経過した教育用コンテンツや、全体の受講率が所定以上の教育用コンテンツに限り、コンテンツの評価を行うようにしてもよい。このようにすることで、別の要因で事故発生率が変化した場合等に、教育用コンテンツを評価してしまうことを防止できる。
【0102】
また、配信部104は、改善度が不良である事故パターンに対応した教育用コンテンツを追加配信するように配信スケジュールを再設定する(ステップS47)。例えば、受講済みの教育用コンテンツの次の配信順序にその事故パターンの教育用コンテンツを割り込んで配信するように配信スケジュールを再設定する。このようにすることで、改善度が不良の事故パターンの教育用コンテンツを追加配信できるので、好適に教育用コンテンツを配信でき、安全運転の教育を支援できる。
【0103】
受講済みの教育用コンテンツに対応した事故パターンの改善度が不良でない場合(ステップS45;No)、または、ステップS47の処理の後、配信コンテンツ再設定処理を終了する。
【0104】
ステップS41~S47の処理を実行することで、事故実績データ及び受講状況データに基づいて、教育用コンテンツを再設定(再選択)できるので、好適に教育用コンテンツを配信でき、安全運転の教育を支援できる。なお、事故実績データ及び受講状況データに基づいて、教育用コンテンツを選択、再選択する方法はステップS41~S47の処理に示す例に限定されず、事故実績データ及び受講状況データに基づいて好適な教育用コンテンツを選択、配信できれば他の方法であってもよい。
【0105】
なお、この実施の形態の配信コンテンツ再設定処理では、事故実績データ及び受講状況データに基づいて、教育用コンテンツを再設定(再選択)するようになっているが、事故実績データ及び受講状況データのうち少なくともいずれかに基づいて、教育用コンテンツを再設定(再選択)するようにしてもよい。
【0106】
図9は、安全運転支援装置10が実行するレポート配信処理の一例を示すフローチャートである。レポート配信処理は、運転データ、事故実績データ及び受講データに基づいて、進捗レポートを生成し、配信するための処理である。安全運転支援装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶される動作プログラムを読み込むことでレポート配信処理を実行する。レポート配信処理は、例えば予め定められたレポート配信スケジュール毎等、所定のタイミングで実行されればよい。
【0107】
レポート配信処理において、先ず、安全運転支援装置10の運転データ取得部102が、車両30に搭載される車載機器31が計測した運転データを取得する(ステップS51)。
【0108】
続いて、安全運転支援装置10の事故実績データ取得部101が、事故実績DB20から事故実績データを取得する(ステップS52)。
【0109】
そして、安全運転支援装置10のフィードバック受信部105が、教育用端末50から受信した受講状況データを取得する(ステップS53)。
【0110】
なお、この実施の形態では、運転データ、事故実績データ及び受講状況データは、安全運転支援装置10が、ネットワークを介して取得するものとして説明するが、運転データ、事故実績データ及び受講状況データの少なくともいずれかは、オペレータの操作を介して安全運転支援装置10に入力されるものであってもよい。また、受講状況データは、教育用端末50において教育用コンテンツが受講される毎にフィードバック受信部105が受信し、受講者の識別情報と対応付けて受講履歴としてDB110に蓄積、記憶するようにしてもよい。
【0111】
なお、ステップS51では、組織における全ての車両30から運転データを取得してもよいし、組織のおける一部の車両30から運転データをサンプルとして取得し、全体のレポート生成を行うようにしてもよい。このようにすることで、全体の運転データを取得する工数を減らすことができ、処理負担を軽減できる。
【0112】
その後、安全運転支援装置10の配信部104が、各組織における各種レポートのいずれかの配信タイミングであるか否かを判定する(ステップS54)。各種レポートのいずれの配信タイミングでもなければ(ステップS54;No)、レポート配信処理を終了する。
【0113】
各種レポートのいずれかの配信タイミングであれば(ステップS54;Yes)、配信部104は、該レポートを生成し、管理用端末40に送信する(ステップS55)。ステップS55では、レポート用のデータとして、運転データや事故実績データに基づいて、潜在リスクのスコアや事故発生件数の時系列データを生成し、受講状況データに基づいて、教育用コンテンツの受講率データを生成する処理等が含まれる。ステップS55の処理の後、レポート配信処理を終了する。
【0114】
この実施の形態では、安全運転支援装置10は、各種レポートとして、上述の診断レポートに加えて、安全運転進捗レポート、安全運転教育進捗レポート等を配信可能となっている。なお、この実施の形態では、安全運転支援装置10は、各種レポートのいずれかの配信タイミングであるか否かを判定してレポートを自動送信するようになっているが、管理用端末40からのレポート種別を指定したレポート要求に応じてレポートを送信するようにしてもよい。
【0115】
安全運転進捗レポートは、教育用コンテンツの配信スケジュール設定時の診断レポートの作成時(年度初めの年間計画の策定時)に設定された潜在リスク及び事故パターンの発生件数の改善目標に対する進捗を示すレポートである。安全運転進捗レポートは、例えば、改善目標設定後の今年度における運転データから抽出される潜在リスクの情報、改善目標設定後の今年度における事故実績データが示す事故パターンの発生件数、改善目標に対する進捗状況等を含むレポートであればよい。
【0116】
具体的には、安全運転進捗レポートは、
図11に示すように、改善目標設定後から現在までにおける運転データから抽出される改善目標に設定された潜在リスクのスコア、改善目標設定後から現在までにおける事故実績データに含まれる改善目標に設定された事故パターン毎の発生件数(事故実績件数及びその累計)、それぞれの改善目標値に対する進捗を示すグラフ、今年度のリスク診断結果(顕在リスク)に対応した事故の予測件数の推移を示すグラフ、進捗に対するコメント等を含むレポートであればよい。
図11下段に示すように、実際の事故の実績件数の推移と、顕在リスクに基づく事故の予測件数の推移と、を比較できるので、顕在リスクに対してたまたま事故の実績件数が少ない又は多いといった状況を把握することができる。
【0117】
なお、
図11に示す安全運転進捗レポートは一例であり、他の潜在リスクのスコアや他の事故パターンの発生件数の進捗等の他の項目を含ませてもよい。
【0118】
安全運転教育進捗レポートは、該当年度の配信中の教育用コンテンツの受講状況の進捗を示すレポートである。安全運転教育進捗レポートは、例えば、年間計画の策定時に設定された教育用コンテンツの配信スケジュールを含む安全運転教育に関する教育スケジュール、受講状況データに基づく受講率等を含むレポートであればよい。
【0119】
具体的には、安全運転進捗レポートは、
図12に示すように、教育用コンテンツの配信時期、運転診断の実行時期、配信コンテンツの見直しを行う時期、レポートの配信時期、を含む安全運転教育に関する教育スケジュール、教育スケジュールの進行度、全体の教育用コンテンツの受講率を示すグラフ、所属別の教育用コンテンツの受講率を示すグラフ、受講の進捗に対するコメント等を含むレポートであればよい。なお、教育用コンテンツの受講率は、フィードバック受信部105により受信した受講状況データを集計して算出すればよい。
【0120】
なお、
図12に示す安全運転教育進捗レポートは一例であり、例えば半期や四半期の進捗状況やスケジュール、メンバー(従業員)の属性別の受講率といった他の項目を含ませてもよい。また、受講状況データを集計して受講率を示しているが、受講状況データを集計して受講者数等を表示するようにしてもよい。
【0121】
また、この実施の形態で示したレポートは一例であり、安全運転支援装置10は、レポートとして、他のレポート(安全運転に関するレポート)を配信可能にしてもよい。例えば、
図10~
図12に示したレポートの2つ以上をまとめたレポートを配信するようにしてもよい。
【0122】
また、例えば、安全運転支援システム1の利用1年毎に、改善目標に対する達成率および配信した教育用コンテンツ受講率の最終結果を含む年間レポートを生成して、管理用端末40に配信するようにしてもよい。この年間レポートには、年間事故件数の減少度、事故削減による損害額の削減効果、それらを踏まえた次年度の安全運転の取り組みついての改善案や改善目標の提案等を含ませるようにしてもよい。このような年間レポートを配信することで、組織の管理者は安全運転支援システム1や安全運転教育の効果検証を行うことができる。そして、運転データや事故実績データに連動してその運転手・あるいはその組織に適した安全運転教育案を自動的に選定・提供することができる。
【0123】
安全運転支援装置10は、このようなレポート配信処理を実行することで、組織のメンバーの運転データ、事故実績データ、受講状況データに基づいて、安全運転や安全運転教育の進捗を示すレポートを組織の管理用端末40に配信できるので、組織の管理者は、安全運転の改善状況、安全運転教育の効果を確認することができ、その後の安全運転対策、安全運転教育の改善にフィードバックするこができる。そして、企業等の組織は、安全運転に関する安全管理体制の構築が容易になる。
【0124】
以上説明したようにこの実施の形態の安全運転支援装置10、安全運転支援システム1によれば、例えば以下の効果を奏する。
【0125】
事故防止取組みに関する企業の以下PDCAサイクルを推進することができる。
P(Plan:計画)フェーズ:組織のメンバーの運転リスクに応じて、年間の安全運転教育計画と改善目標を策定する。
D(Do:実行)フェーズ:上記計画に基づき、従業員に安全運転教育を行う。
C(Check:検証)フェーズ:計画の進捗と目標達成度を定期的にモニタリングし、教育の効果を検証する。
A(Action:改善)フェーズ:上記検証結果を踏まえ、次年度の安全運転教育計画と改善目標を改善する。
このようなPDCAサイクルを一貫で支援できるので、継続的に使用することで、企業等の組織として必要な安全管理体制の構築を容易に行うことができる。
【0126】
また、組織の事故実績データや運転データと、配信される教育用コンテンツの内容が紐づいており、組織の事故実績データや運転データに応じた教育用コンテンツが配信されるため、教育効果の向上が期待できる。さらに、組織のメンバーに対して「なぜこの教育用コンテンツを受講する必要があるのか」等の説明が容易になる。
【0127】
事故実績データや運転データの変化をもしくは不変化をトリガーとする計画修正(教育用コンテンツの再選択、教育用コンテンツの配信スケジュールの再設定)を柔軟に行い、組織にとって、つねに最適な事故削減取組みを進められる。
【0128】
教育の効果検証を事故実績データだけでなく運転データ(顕在リスク、潜在リスク)でも検証することで、従業員が真に安全運転に行動変容しているか否かを精緻に把握できる。例えば、たまたま事故件数は少なかったものの、顕在リスクが増加しており、運転は危なくなっている、といった状況も確認可能になる。
【0129】
運転データとしては一部メンバー(従業員)のサンプルデータを用いて、企業全体のリスク評価および全従業員向けの教育計画を生成することもできる。従って、全従業員の運転データを取得する必要はなく、また取得した運転データを従業員個人に紐づける必要もない。そのため、組織管理者にとって、大きな負荷の削減に繋がる。
【0130】
(変形例)
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、上記実施の形態の一部の省略、置き換え、任意の構成の追加等が可能である。
【0131】
配信部104は、さらに、運転データ(顕在リスクや潜在リスクの改善度等)に基づいて、配信する教育用コンテンツを再設定するようにしてもよい。
【0132】
安全運転支援装置10は、運転データ(顕在リスクや潜在リスクの改善度等)に基づいて、教育用コンテンツを評価するようにしもてよい。
【0133】
教育用コンテンツの内容を、組織や企業ごとにアレンジするようにしてもよい。具体的には、教育用コンテンツに、当該企業の事故リスク診断結果や、実際のドライブレコーダーで撮影した映像を入れ込み、運転評価との関連性を強めるようにしてもよい。
【0134】
フィードバック受信部105は、教育用端末50から情報配信のフィードバックとして、教育用コンテンツの受講状況データ以外の情報を受信するようにしてもよい。例えば、フィードバックは、教育用コンテンツに対する効果測定(テスト)の結果や、教育用コンテンツに対する評価、アンケート結果等であってもよい。また、フィードバック受信部105は、管理用端末40から情報配信のフィードバックを受信し、配信部104は、管理用端末40からのフィードバックに基づいて情報を配信するようにしてもよい。例えば、安全運転支援装置10は、管理用端末40からレポートに対するフィードバックとして、教育方針の選択を受け、当該教育方針に基づいて教育用コンテンツを選択、配信するようにしてもよい。
【0135】
図10~
図12に示すレポートは、その一部の項目を含むものであってもよいし、項目毎に分割されたレポートを配信するようにしてもよい。
【0136】
上記実施の形態では、事故予測部104は、運転データに基づいて算出された直近の顕在リスクのスコアと、説明変数を過去の顕在リスクのスコア、目的変数を過去の事故発生件数とするポアソン回帰分析により求められた回帰式と、に基づいて、各事故パターンの発生件数を予測するようになっていたが、事故パターンの予測方法はこれに限定されない。事故予測部104は、事故実績データと運転データとに基づいて、発生しやすい事故パターンを予測するものであればよく、例えば過去の事故実績データと過去の運転データ(例えば潜在リスク)とを回帰分析し、直近の運転データ(潜在リスク)と分析結果と基づいて、発生しやすい事故パターンを予測、判定するようにしてもよい。
【0137】
安全運転支援装置10は、専用の装置によらず、通常のコンピュータを用いて実現可能である。例えば、コンピュータに上述のいずれかを実行するためのプログラムを格納した記録媒体から該プログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する安全運転支援装置10を構成してもよい。また、複数のコンピュータが協同して動作することによって、1つの安全運転支援装置10を構成しても良い。
【0138】
また、コンピュータにプログラムを供給するための手法は、任意である。例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システム等を介して供給しても良い。
【0139】
また、上述の機能の一部をOS(Operation System)が提供する場合には、OSが提供する機能以外の部分をプログラムで提供すれば良い。
【0140】
以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1…安全運転支援システム、10…安全運転支援装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信インターフェース、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…事故実績DB、30…車両、31…車載機器、40…管理用端末、50…教育用端末、101…事故実績データ取得部、102…運転データ取得部、103…事故予測部、104…配信部、105…フィードバック受信部、110…DB