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特許7549687非ニューロンSNARE切断性ボツリヌス神経毒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】非ニューロンSNARE切断性ボツリヌス神経毒
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/57 20060101AFI20240904BHJP
   C12N 9/52 20060101ALI20240904BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20240904BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20240904BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240904BHJP
   A61P 25/08 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
C12N15/57
C12N9/52 ZNA
C12Q1/37
A61K38/48
C12N5/071
A61P25/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023020549
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2020530630の分割
【原出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2023058652
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】18153941.2
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シコーラ,ステファン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/025626(WO,A2)
【文献】特表2012-524093(JP,A)
【文献】Journal of Molecular Biology,2015年,Vol.428,pp.372-384
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ボツリヌス神経毒A(BoNT/A) L鎖(配列番号1)と比較して増大したヒトSNAP-23(hSNAP-23)切断を実証し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する変BoNT/A L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアミノ酸残基フェニルアラニン;
を含む、改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
【請求項2】
a)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、請求項1に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
【請求項3】
a)hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、請求項1又は2に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
【請求項4】
a)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
【請求項5】
a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載される改変BoNT/A L鎖プロテアーゼをコードする核酸配列を含む、又はからなる核酸構築物。
【請求項7】
a)請求項1から5のいずれか一項に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は請求項6に記載の核酸構築物;及び
b)前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は前記核酸構築物を、標的細胞に、好ましくは、非ニューロン標的細胞に送達する手段;
を含む、送達ビヒクル。
【請求項8】
前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼを標的細胞に送達する手段b)が:
i)送達ビヒクルを標的細胞と結合する標的化部分;及び
ii)改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は核酸構築物を、標的細胞に、好ましくは、非ニューロン標的細胞に転位置する転位置ペプチド;
を含む、請求項7に記載の送達ビヒクル。
【請求項9】
hSNAP-23を切断するインビトロ方法であって、hSNAP-23を、請求項1から5のいずれか一項に記載のBoNT/A L鎖プロテアーゼと、又は請求項6に記載の核酸構築物と、又は請求項7若しくは8に記載の送達ビヒクルと接触させることを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の(BoNT/A) L鎖プロテアーゼ又は請求項6に記載の核酸構築物又は請求項7若しくは8に記載の送達ビヒクル。
【請求項11】
医薬として使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載のBoNT/A L鎖プロテアーゼ又は請求項6に記載の核酸構築物又は請求項7若しくは8に記載の送達ビヒクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ニューロンSNAREタンパク質を切断する能力を有する改変ボツリヌス神経毒プロテアーゼ及び哺乳動物細胞からの望ましくない分泌を前記哺乳動物細胞における前記非ニューロンSNAREタンパク質の切断により抑制するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毒素は、通常、2つのクラス、すなわち、その天然標的細胞を死滅させる細胞傷害性毒素(例えば、リシンなどの植物毒素)及びその天然標的細胞を死滅させない非細胞傷害性毒素(例えば、ボツリヌス神経毒)のうち一方に分類される。非細胞傷害性毒素は、タンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することによって標的細胞に対してその効果を発揮する。
【0003】
ボツリヌス神経毒プロテアーゼは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP-25、VAMP又はSyntaxin)として知られる細胞内輸送タンパク質をタンパク分解性に切断することによって作用する。頭字語SNAREは、可溶性NSF付着タンパク質受容体という用語に由来し、NSFは、N-エチルマレイミド感受性因子を意味する。SNAREタンパク質は、タンパク質の大きなスーパーファミリーである。SNAREタンパク質の重要な機能は、神経伝達物質分子のシナプス後接合部へのエキソサイトーシスを媒介することである。従って、SNAREタンパク質は、細胞からの小胞輸送を介した分子の分泌に不可欠である。
【0004】
クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)は、抗血清交差血清型中和(anti-serum cross serotype neutralization)の欠如によって血清学的に区別される7種(A~G)の異なる神経毒素(BoNT)を産生する。BoNTは、ニューロンを標的化し、ニューロン特異的SNAREタンパク質を切断することによってニューロン特異的弛緩性麻痺を誘発する。
【0005】
BoNTは、ジスルフィド結合によって連結された100kDaの重鎖及び50kDaの軽鎖を含む150kDaのポリペプチド鎖を有する。BoNTは、3つの機能的ドメインで構成されている、N末端タンパク分解性軽鎖(L鎖)及びC末端重鎖(H鎖)であって、後者は、転位置ドメイン(HN)及びC末端ニューロン結合ドメイン(HC)からなる。BoNTの毒性効果(神経中毒)は、3ステップの作用機序を辿る。第1に、HC部分は、コリン作動性神経細胞と結合し、受容体媒介性エンドサイトーシスを介して内部移行されるようになる。第2に、HN部分は、エンドソーム膜を越えて神経細胞のサイトゾル中にL鎖を転位置する。第3に、L鎖は、サイトゾル内のニューロンSNAREタンパク質と結合し、切断し、それによって、神経細胞からの神経伝達物質放出を抑制し、神経細胞中毒をもたらす。
【0006】
7種のBoNT血清型は、3種のSNAREタンパク質のうち1種で特定の残基を切断する:
血清型B、D、F及びGは、VAMP-2を切断し;
血清型A及びEは、SNAP-25を切断し;及び
血清型Cは、SNAP-25及びシンタキシンlaを切断する。
【0007】
天然BoNTは、VAMP-2、SNAP-25及びシンタキシン1aなどのニューロンSNAREアイソフォームを標的化し、切断可能であるが、前記プロテアーゼは、非ニューロンSNAREタンパク質の大部分で切断効果がほとんどない、又は全くない。このニューロンSNARE基質特異性は、BoNTによって実証される天然神経細胞結合特異性と一致し、これを反映するものであると理解される。例えば、BoNT/Aは、ヒトSNAP-25を切断するが、ヒト非ニューロンアイソフォームを切断しない。
【0008】
早くも1989年には、BoNT/Aは、斜視、眼瞼痙攣及び片側顔面痙攣を治療するために、次いで、頸部ジストニア、美容的使用、眉間の顔面のしわ及び腋窩多汗症のためにFDAによって承認された。ジストニア及び不随意骨格筋活性と関連するその他の障害におけるBoNT/A有効性は、満足のいく安全性プロフィールと相まって、種々の分泌及び疼痛及び美容的障害における経験的/承認適応症外使用を促してきた。
【0009】
BoNTの臨床適用は、神経筋活性と関連する障害を標的化することに焦点を当ててきた。より最近は、Syntaxin Ltdによって先導された先駆的研究が、ニューロンの独特のサブセット(例えば、侵害受容性求心性神経-その全文が参照により本明細書に組み込まれるWO96/33273を参照のこと)と、及び/又は非ニューロン細胞(例えば、気道上皮細胞-その全文が参照により本明細書に組み込まれるWO00/10598を参照のこと)と結合する再標的化されるBoNTの設計を可能にした。標的化分泌阻害剤(TSI)技術として知られるこの技術は、異なる標的化部分(例えば、増殖因子又はその他のシグナル伝達分子)による天然BoNT結合ドメインの置換を含み、BoNTベースの新規治療薬及び療法の扉を開いた。
【0010】
しかし、BoNTによるニューロン特異的SNAREタンパク質の選択的切断は、これらの非ニューロン系における新規療法の開発を制限した。ニューロン及び非ニューロンSNAREタンパク質は、細胞内小胞融合のプロセスにとって、従って、細胞からの小胞輸送を介した分子の分泌にとって同様に重要なものであると考えられる。従って、ニューロンSNAREタンパク質によって駆動される分泌を不活性化するための従来のBoNTベースの治療薬の使用は、対応する非ニューロンSNAREによって駆動された細胞性分泌に全く対処しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、非ニューロンSNAREタンパク質を効率的に切断する改変BoNT L鎖プロテアーゼが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、非ニューロン細胞において主に発現されるSNAREタンパク質アイソフォーム、すなわち、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼを提供することによって上記の問題のうち1つ以上を解決する。従って、本発明は、非細胞傷害性治療薬の新規クラスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において別に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有さなくてはならない。更に、文脈によって別に必要とされない限り、本明細書において使用される命名法並びに細胞及び組織培養の技術は、当技術分野において周知であり、一般に使用されるものである。
【0014】
それにもかかわらず、本明細書を通じて種々の用語の使用に関して、以下の定義がより特に当てはまる。
【0015】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」は、文脈からそうではないと指示されない限り、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」などを意味する複数の意味を包含する。
【0016】
用語「プロテアーゼ」とは、本明細書において、タンパク質及び/又はペプチドを加水分解的に切断可能である酵素を意味する。本発明との関連で、前記プロテアーゼは、より詳しくは、ボツリヌス神経毒(BoNT)軽鎖(L鎖)プロテアーゼ、すなわち、ボツリヌス神経毒由来の、特に、ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)由来のプロテアーゼ(タンパク分解性ドメインとしても記載される)である。当業者には周知であるように、ボツリヌス神経毒の軽鎖は、プロテアーゼ機能(非細胞傷害性プロテアーゼ機能としても知られる)を提供し、一般に、約50kDaの分子量を有する。このような非細胞傷害性プロテアーゼは、通常、SNAREタンパク質(例えば、SNAP-25、VAMP又はシンタキシン)として知られる細胞内輸送タンパク質をタンパク分解性に切断することによって作用する-Gerald K (2002) "Cell and Molecular Biology” (4th edition) John Wiley & Sons, Inc.を参照のこと。天然に存在する(すなわち、野生型)BoNT/A L鎖は、より詳しくは、SNAP-25を効率的に切断可能であるが、以下に更に説明されるようにhSNAP-23をわずかにのみ切断可能である。対照的に、以下により詳細に記載されるような本発明のBoNT/A L鎖プロテアーゼは、hSNAP-23を切断する改善された能力を有する点で天然に存在するBoNT/A L鎖とは異なり、本明細書において、「hSNAP-23を切断する改変BoNT/A L鎖」と呼ばれる。
【0017】
hSNAP23を切断する能力は、以下の実施例2に記載されるアッセイなどの従来のアッセイによって確認され得る。「hSNAP-23の切断」は、より詳しくは、本明細書において、本発明の改変BoNT/A L鎖が、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改善されたhSNAP-23切断を実証することを意味する。実施例2に例示されるhSNAP-23アッセイなどの任意の簡単な比較アッセイが使用され得る。野生型BoNT/A L鎖は、わずかにのみ(すなわち、バックグラウンド)hSNAP-23切断可能である。
【0018】
従って、本発明の改変BoNT/A L鎖は、以下のうち1以上(好ましくは両方)を実証する。
a)細胞不含アッセイ(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23)における、0.2%を超える(例えば、0.5%を超える、好ましくは、1%を超える、より好ましくは、5%を超える)hSNAP-23切断-実施例2、図1を参照のこと;及び/又は
b)細胞不含アッセイ(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖;20マイクロモル濃度hSNAP-23)における、225のKm未満(例えば、200未満、好ましくは、150未満)マイクロモル濃度-実施例2、図1を参照のこと;及び/又は
c)細胞不含アッセイ(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23)における、0.2のKcat(1/分)未満(例えば、0.18未満、好ましくは、0.1未満)-実施例2、図1を参照のこと。
【0019】
本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼは、随意によりhSNAP-23を切断するだけでなく、SNAP-25も切断し得る。SNAP-25の切断は、以下の実施例3に記載されるアッセイなどの従来のアッセイによって確認され得る。この随意の実施形態によれば、「SNAP-25の切断」は、本明細書において、本発明の改変BoNT/A L鎖が、好ましくは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、好ましくは、少なくとも3%、更に好ましくは、少なくとも10%のSNAP-25切断を実証することを意味する。実施例3に例示されるSNAP-25アッセイなどの、任意の簡単な比較アッセイが使用され得る。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼは、hSNAP-23を切断し、hSNAP-25などのSNAP-25も切断する。
【0021】
用語「SNAP-23」(シナプトソーム関連タンパク質23)とは本明細書において、種々のその他のSNAREタンパク質と結合可能であり、細胞において、好ましくは、非ニューロン細胞において、これらのタンパク質と高親和性複合体を形成可能であり、それによって、前記細胞において細胞内細胞膜融合を調節するSNAREタンパク質を指す。「hSNAP-23」とは、より詳しくは、ヒトSNAP-23、好ましくは、配列番号2のタンパク質を指す。
【0022】
用語「SNAP-25」(シナプトソーム関連タンパク質25)は本明細書において、種々のその他のSNAREタンパク質と結合可能であり、細胞において、好ましくは、ニューロン細胞において高親和性複合体を形成可能であり、それによって、前記細胞において細胞内細胞膜融合を調節するSNAREタンパク質を指す。「hSNAP-25」とは、より詳しくは、ヒトSNAP-25、好ましくは、配列番号3のタンパク質を指す。
【0023】
用語「改変」、「変化」又は「突然変異」は本明細書において同義的に使用されてよく、参照のタンパク質のものと比較した、すなわち、本明細書においては野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較した、アミノ酸配列の変更を指す。配列番号1として本明細書において説明されるアミノ酸配列は、438個のアミノ酸残基の長さであり、K438で終了する。K438は、活性化ループの最初のリジンアミノ酸残基であり、活性化ループのタンパク質分解による切断後にL鎖のC末端を表す可能性が最も高いことは理解される。従って、配列番号1は、野生型BoNT/A L鎖の(天然に)活性化された形態を表す。この関連で、タンパク質分解活性化に先立って、野生型BoNT/A L鎖は通常、約448個のアミノ酸残基の長さであり、これは、活性化ループアミノ酸残基の短いC末端伸長を含む。
【0024】
以下に更に説明されるように、本発明は、BoNT/A L鎖をhSNAP-23切断可能にするために異なるアミノ酸残基への合理的変化を必要とする、野生型BoNT/A L鎖内の重大なアミノ酸位置を同定する。この関連で、アミノ酸変化(すなわち、突然変異)の導入は、アミノ酸挿入、欠失又は置換によって、好ましくは、アミノ酸置換によって達成され得る。このような突然変異の導入を可能にする方法は、当業者に公知である。例えば、参照のタンパク質をコードするヌクレオチド配列において、例えば、ランダム又は特異的突然変異誘発(random or directed mutagenesis)によって、縮重プライマーを使用するPCRによって、突然変異を導入することが可能である。前記技術は、Sambrook et al. in “Molecular Cloning: A laboratory Manual”, 4th edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2012, and updates from 2014)によって、及びAusubel et al. in “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons (2012)によって特に記載されている。
【0025】
アミノ酸変化は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較してL鎖「結合ポケット」のうち1つ以上の内で生じる。「結合ポケット」とは、本明細書において、hSNAP-23の対応する結合部位との結合(例えば、水素結合、塩橋及び/又は疎水性接触による)のための接触点である1個以上のアミノ酸を含む、及び/又はその他の基質アミノ酸残基(複数可)(例えば、置換によってなど、修飾によって)を収容する空間を提供するhSNAP-23と結合可能なBoNT/A L鎖の領域を意味する。用語「との結合」とは、本明細書において、「との結合に適した」を意味し、本発明の出願人の理論的根拠の一部を形成する-前記理論的根拠は、本発明の本質的な技術的特徴を構成しない。例えば、配列番号1のアミノ酸残基E148、T307、A308及びY312によって定義されるBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、hSNAP-23上の予測された結合部位と(例えば、hSNAP-23のP182/D178結合部位と)結合するのに協働すると出願人が考える、アミノ酸E148、T307、A308及び/若しくはY312を含むBoNT/A L鎖プロテアーゼの領域並びに/又は本明細書において記載されるようなその突然変異体を指す。
【0026】
用語「結合部位」とは、本明細書において、対応するBoNT/A L鎖結合ポケットによって結合され得る1個以上のアミノ酸を含むhSNAP-23の領域を指す。例えば、hSNAP-23の「P182/D178」結合部位は、hSNAP-23のアミノ酸P182及び/又はD178を含む。用語「結合部位」とは、本明細書において、単純に「予測される結合部位」(出願人によって予測されるような)を意味し、本発明の出願人の理論的根拠の一部を形成する-前記理論的根拠は、本発明の本質的な技術的特徴を構成しない。
【0027】
アミノ酸又は核酸配列間の「配列同一性」は、比較目的でアラインされ得る各配列中の位置を比較することによって決定され得る。比較配列中の位置が、同一ヌクレオチド又はアミノ酸によって占められる場合には、配列は、その位置で同一である。アミノ酸配列間の同一性の程度は、これらの配列間で共有される同一アミノ酸数の関数である。核酸間の配列同一性の程度は、これらの配列によって共有される位置で同一ヌクレオチド数の関数である。
【0028】
2種のアミノ酸配列又は2種の核酸配列間の「配列同一性の百分率」を決定するために、最適比較となるよう配列がアラインされる。例えば、第2のアミノ酸配列又は第2の核酸配列との最適アラインメントのために、第1のアミノ酸配列又は第1の核酸配列の配列中にギャップが導入されてもよい。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められる場合に、分子は、その位置で同一である。
【0029】
2種の配列間の同一性の百分率(%)は、配列によって共有される同一位置の数の関数である。従って、同一性の百分率は、同一位置の数に100を乗じること及びギャップを含む(内部ギャップのみ、配列端のギャップは含まない)アラインされた領域(重複する位置)の長さによって除することによって算出され得る。
【0030】
この比較では、配列は同一長さのものであってもよく、又は異なる長さのものであってもよい。同一性スコアリングは、完全マッチのみをカウントし、アミノ酸の互いに対する類似性の程度を考慮しない。
【0031】
配列の最適アラインメントは、本明細書において、好ましくは、Needleman and Wunsch (Journal of Molecular Biology; 1970, 48 (3): 443-53)によって記載されるアルゴリズムによって、このアルゴリズムのコンピュータ処理された実行によって(例えば、DNASTAR(登録商標)Lasergeneソフトウェアを使用する)、又は目視検査によってなど、同一若しくは同様の長さの配列を使用して実施されなくてはならない、全体的相同性アラインメントアルゴリズムによって実施され得る。あるいは、アラインメントは、別個の長さの配列(例えば、本発明の軽鎖のアミノ酸配列対天然に存在するボツリヌス神経毒の全アミノ酸配列)を使用して実施されなくてはならず、配列の最適アラインメントは、本明細書において、好ましくは、Smith and Waterson (Journal of Molecular Biology; 1981, 147: 195-197)によって記載されるアルゴリズムによって、このアルゴリズムのコンピュータ処理された実行によって(例えば、DNASTAR(登録商標)Lasergeneソフトウェアを使用する)、又は目視検査によってなど、局所相同性アラインメントアルゴリズムによって実施され得る。種々の方法によって作製された最良アラインメント(すなわち、比較配列間の同一性の最高百分率をもたらす)が選択される。全体的及び局所相同性アラインメントアルゴリズムの例は、当業者に周知であり、制限するものではないが、ClustalV(全体的アラインメント)、ClustalW(局所アラインメント)及びBLAST(局所アラインメント)を含む。
【0032】
当業者ならば、本発明が、実質的に相同であり、かつ、hSNAP-23を切断する能力を保持する改変BoNT/A L鎖、すなわち、機能的変異体又は相同体を包含することを更に容易に理解するであろう。これらの機能的変異体又は相同体は、本明細書において以下hSNAP-23切断に関して開示されるもの以外の1個以上のアミノ酸突然変異(アミノ酸欠失、付加及び/又は置換など)を有し、フォールディング又はプロテアーゼ活性、特に、hSNAP-23切断に有意に影響を及ぼさないと特性決定され得る。例えば、このような突然変異は、制限するものではないが、保存的置換、小さい欠失(通常、1~約30個のアミノ酸の)、小さいアミノ又はカルボキシル末端伸長(アミノ末端メチオニン残基など)、最大約20~25個の残基の小さいリンカーペプチドの付加、又は親和性タグの付加を含む。
【0033】
本発明の機能的変異体又は相同体は、好ましくは、保存的アミノ酸置換などのわずかな性質の突然変異を含む。保存的アミノ酸置換は、当業者には周知であり、制限するものではないが、以下を含む:
塩基性: アルギニン、リジン、ヒスチジン
酸性: グルタミン酸、アスパラギン酸
極性: グルタミン、アスパラギン
疎水性: ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン
芳香族: フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
小さい: グリシン、アラニン、セリン、スレオニン。
【0034】
20種の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン及びα-メチルセリンなど)が、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換され得る。制限された数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸及び非天然アミノ酸が、クロストリジウムポリペプチドアミノ酸残基と置換され得る。本発明のポリペプチドはまた、天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る。
【0035】
天然に存在しないアミノ酸として、制限するものではないが、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチル-スレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニン及び4-フルオロフェニルアラニンが挙げられる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質中に組み込むためのいくつかの方法が当技術分野で公知である。
【0036】
アミノ酸置換は、特定の生理化学的特性(例えば、疎水性)を含むアミノ酸の、同様の又は代替特性を有するアミノ酸との置換を含み得る。このような置換の例として、以下が列挙される:
中性、極性アミノ酸と置換される酸性アミノ酸;
非極性アミノ酸と置換される極性アミノ酸;
非極性アミノ酸と置換される非極性アミノ酸;
極性アミノ酸と置換される非極性アミノ酸;
塩基性アミノ酸と置換される極性アミノ酸;
酸性アミノ酸と置換される非極性アミノ酸;
極性アミノ酸と置換される非極性アミノ酸。
【0037】
従って、hSNAP-23の切断について本明細書において記載されるような突然変異のうち1つ以上を含む、すべてのBoNT/AサブタイプのL鎖、例えば、BoNT/A1~BoNT/A8 L鎖のいずれも、本発明によって包含される。前記BoNT/A L鎖は、非天然活性化切断部位、例えば、エンテロキナーゼ(配列番号10)、PreScission、第X因子、トロンビン、TEVプロテアーゼなどの切断部位を提供する更なる突然変異を更に含み得る。
【0038】
更なる定義は、本明細書を通じて提供される。
【0039】
本発明は、以下のとおりに記載され得る。
【0040】
第1の態様において、本発明は、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼを提供し、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148、T307、A308及びY312によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基T307に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にフェニルアラニン、イソロイシン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基A308に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にプロリン、アスパラギン、スレオニン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y312 に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にリジン、バリン、メチオニン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0041】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23上の認識配列と重要な酵素-基質会合を達成すると考える。
【0042】
従って、本発明は、特許請求されるような狙い通りのアミノ酸置換が、hSNAP-23切断を増大した(野生型BoNT/A L鎖に対して)BoNT/A L鎖(複数可)の生成を可能にするという驚くべき知見(例えば、予測しない技術的効果)に基づく。本発明者らは、hSNAP-23切断を増大するように変更(例えば、置換)され得るBoNT/A L鎖の適したアミノ酸位置を成功裏に同定しただけでなく、この効果を提供する正確なアミノ酸置換も同定した。
【0043】
第1の態様において、本発明は、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼを提供し、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0044】
一態様では、本発明は、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼを提供し、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148、T307、A308及びY312によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基T307に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にフェニルアラニン、イソロイシン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基A308に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にプロリン、アスパラギン、スレオニン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y312 に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にリジン、バリン、メチオニン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0045】
改変BoNT/A L鎖は、1つのアミノ酸置換(野生型配列番号1に対して)を含み得る。改変BoNT/A L鎖は、2つのアミノ酸置換(野生型WT配列番号1に対して)を含み得る。改変BoNT/A L鎖は、3つのアミノ酸置換(野生型配列番号1に対して)を含み得る。改変BoNT/A L鎖は、4つのアミノ酸置換(野生型配列番号1に対して)を含み得る。
【0046】
hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、少なくとも1.15倍に増大したhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1A中の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y又はE148Nを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148N、T307I及びA308P、Y312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308T及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308I及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖。
【0047】
一実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも1.35倍に増大したhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1A中の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y又はE148Nを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148N、T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308T及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308I及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖。
【0048】
別の実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも1.7倍に増大したhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1A中の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307Fを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307Iを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312Kを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312K、E148Yを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148N、T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308T及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖。
【0049】
更なる実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178 結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも2.0倍に増大されたhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証し得る-図1A中の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148N、T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308T及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖。
【0050】
更なる実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも4.0倍に増大されたhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証し得る-図1A中の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148N、T307I、A308P及びY312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307F、A308N及びY312Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、T307L、A308T及びY312Mを含む改変BoNT/A L鎖。
【0051】
別の実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも6.0倍、好ましくは、少なくとも7.0倍、より好ましくは、少なくとも8.0倍に増大されたhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1A中の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖。
【0052】
hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、1.5%を超えるhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中の第2のデータ列を参照のこと。参照のために、野生型BoNT/A L鎖(例えば、配列番号1)は、0.5%未満のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する。このような改変L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307Fを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307Iを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312Kを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312K及びE148Yを含む改変BoNT/A L鎖。
【0053】
一実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、2%を超えるhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)実証する-図1A中の第2のデータ列を参照のこと。このような改変L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖;
置換T307Iを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312Kを含む改変BoNT/A L鎖。
【0054】
更なる実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも9%増大したhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中の第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Yを含む改変BoNT/A L鎖。
【0055】
hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)を有する改変BoNT/A L鎖突然変異体の更なる例として、以下が挙げられる:
置換A308Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換A308Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換A308Iを含む改変BoNT/A L鎖;
置換A308Pを含む改変BoNT/A L鎖;
置換A308Nを含む改変BoNT/A L鎖;
置換A308Tを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312Mを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y312Lを含む改変BoNT/A L鎖。
【0056】
hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT/A L鎖は、本明細書において前記で定義されたような野生型BoNT/A L鎖に対して1つ以上のアミノ酸残基変化を含み得る。例示として、本発明の改変BoNT/A L鎖は、単一アミノ酸残基突然変異(上記で定義されたような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)、例えば、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する突然変異を有し得る。同様に、本発明の改変BoNT/A L鎖は、2つ以上のアミノ酸残基突然変異(上記で定義されたような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)、例えば、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基T307、A308及びY312に対応する突然変異を含み得る。
【0057】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための1つ以上の結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT/A L鎖は、以下に更に記載されるような、hSNAP-23のための1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内に1つ以上の突然変異を更に含む。
【0058】
前記のhSNAP-23のための1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット、hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット、hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット、hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット、hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット、hSNAP-23のD210結合部位との結合のための第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット、hSNAP-23のD168結合部位との結合のための第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットを含む。
【0059】
あるいは、本発明の別個の技術的特徴によれば、改変BoNT/A L鎖は、上記で定義されるようなhSNAP23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内以外に、1つ以上のBoNT/A L鎖結合ポケット内に1つ以上の突然変異を含み得る。
【0060】
前記のhSNAP-23のための BoNT/A L鎖結合ポケット及び興味の対象の対応する突然変異を本明細書において以下に更に詳述する。
【0061】
従って、追加の技術的特徴として、又は代替技術的特徴として)、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されるポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義され;
c)前記アミノ酸残基変化は;
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0062】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23上のR186と、BoNT/A上のS143の間に安定化塩橋を提供すると考える。
【0063】
hSNAP-23上のR186結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、100マイクロモル濃度未満、例えば、95マイクロモル濃度未満のhSNAP-23のKMを実証する-図1A中の第3のデータ列を参照のこと。参照のために、野生型BoNT/A L鎖(例えば、配列番号1)は、150マイクロモル濃度を超える、例えば、200マイクロモル濃度を超えるhSNAP-23のKMを実証する。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換V304Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換V304Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換G305Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換G305Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換S143Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換S143Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換S143Qを含む改変BoNT/A L鎖;
置換K166Fを含む改変BoNT/A L鎖。
【0064】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のR186結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT/A L鎖は、本明細書において記載されたような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されたような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも0.5倍に減少したhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)、又は言い換えれば少なくとも4.0倍に増大されたhSNAP-23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体の第1のデータ列を参照のこと、又は少なくとも5%hSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中の第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びS143Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y及びS143Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y及びS143Qを含む改変BoNT/A L鎖。
【0065】
従って、一実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための、第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義される;
を含み:
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0066】
別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義される;
を含み;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0067】
別の実施形態では、hSNAP-23上のR186結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されるようなhSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含む。このような突然変異体は、通常、少なくとも2.0倍に増大されたhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びS143Eを有する改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y及びS143Dを有する改変BoNT/A L鎖。
【0068】
別の実施形態では、hSNAP-23上のR186結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されるようなhSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含む。このような突然変異体は、通常、少なくとも3.0倍に増大されたhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対する百分率として)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、S143Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0069】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V304及びG305によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V304に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0070】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23上のK185と、BoNT/Aの間に安定化塩橋を提供すると考える。
【0071】
hSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、100マイクロモル濃度未満のhSNAP-23のKMを実証する-図1A中の第3のデータ列を参照のこと。参照のために、野生型BoNT/A L鎖(例えば、配列番号1)は、150マイクロモル濃度を超える、例えば、200マイクロモル濃度を超えるhSNAP-23のKMを実証する。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換V304Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換V304Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換G305Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換G305Eを含む改変BoNT/A L鎖。
【0072】
hSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT/A L鎖は、本明細書において前記で定義されるように、野生型BoNT/A L鎖に対して1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。例示として、本発明の改変BoNT/A L鎖は、単一アミノ酸残基突然変異(上記で定義されるような、hSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)を有し得る、例えば、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する突然変異体。同様に、本発明の改変BoNT/A L鎖は、例えば、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V304及びG305に対応する、2つ以上の突然変異(上記で定義されるような、hSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)を含み得る。
【0073】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT/A L鎖は、本明細書において記載されるような、hSNAP-23のための1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されるような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも2.0倍、好ましくは、少なくとも2.5倍に増大されたhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体の第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びG305Dを有する改変BoNT/A L鎖。
【0074】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のK185 結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305によって定義される;
を含み;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0075】
更に、追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアミノ酸残基アラニン;
を含む。
【0076】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23上のD189/D192と、BoNT/Aのアミノ酸29又はすぐ近くのアミノ酸の間に安定化相互作用を提供すると考える。
【0077】
このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換Q29Aを有する改変BoNT/A L鎖。
【0078】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のD189/D192結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において定義されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されるような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含む。このような突然変異体は、通常、少なくとも1.50倍%増大したhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体について定義される第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、Q29Aを有する改変BoNT/A L鎖。
【0079】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義される;
を含み;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0080】
別の実施形態では、hSNAP-23上のD189/D192結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような少なくとも2つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、両方とも上記で定義されるような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内及びhSNAP-23上のR186結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも2.5倍に増大されたhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中に示される第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、Q29A及びS143Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0081】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義される;及び
c)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義される;
を含み
d)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0082】
別の実施形態では、hSNAP-23上のD189/D192結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、少なくとも2つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されるような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内及びhSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも3.0倍、好ましくは、少なくとも3.4倍に増大したhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体について定義される第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、Q29A及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0083】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義される;及び
c)hSNAP-23のK185 結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305によって定義される;
を含み;
d)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0084】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251、L256、V258、L367及びF369によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L256に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、グリシン、アラニン及びアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V258に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にセリン、アラニン、プロリン、ロイシン及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L367に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
v.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基F369に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグリシン、セリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0085】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1のアミノ酸残基Y251、L256、V258、L367及びF369によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L256に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン及びアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V258に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にセリン、ロイシン及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L367に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
v.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基F369に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグリシン、セリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0086】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23のための認識配列の(S3’)位置と重要な酵素-基質会合を達成すると考える。
【0087】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251、L256、V258、L367及びF369によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択さアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L256に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン及びアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V258に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にセリン、ロイシン及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L367に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
v.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基F369に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグリシン、セリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0088】
hSNAP-23上のK206結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT/A L鎖は、本明細書において前記で定義された野生型BoNT/A L鎖に対して1つ以上のアミノ酸残基変化を含み得る。例示として、本発明の改変BoNT/A L鎖は、単一アミノ酸残基突然変異(hSNAP-23上のK206 結合部位のための結合ポケット内)、例えば、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する突然変異体を有し得る。同様に、本発明の改変BoNT/A L鎖は、2つ以上の突然変異(hSNAP-23上のK206結合部位のための結合ポケット内)、例えば、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251&L256に対応する突然変異体を含み得る。
【0089】
hSNAP-23上のK206結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、1.5%を超えるhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中の第2のデータ列を参照のこと。参照のために、野生型BoNT/A L鎖(例えば、配列番号1)は、0.5%未満のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23)を実証する-図1A中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換Y251Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換Y251Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0090】
一実施形態では、本発明の改変BoNT/A L鎖は、少なくとも3%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換Y251Eを含む改変BoNT/A L鎖。
【0091】
hSNAP-23上のK206のための結合ポケット突然変異を有する改変BoNT/A L鎖突然変異体の更なる例(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)として、以下が挙げられる:
置換V245Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256Eを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256Gを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256Qを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256Aを含む改変BoNT/A L鎖;
置換V258Aを含む改変BoNT/A L鎖;
置換V258Pを含む改変BoNT/A L鎖;
置換V258Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256E及びV258Pを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256Q及びV258Pを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256A及びV258Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換L256G及びV258Lを含む改変BoNT/A L鎖。
【0092】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のK206結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されたようなhSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも0.5倍に減少したhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)、又は言い換えれば、少なくとも4.0倍に増大されたhSNAP23切断(野生型BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体について定義される第1のデータ列を参照のこと、又は少なくとも5%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中の第2のデータ列を参照のこと。好ましいこのような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びY251Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y及びL256Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y及びY251Eを含む改変BoNT/A L鎖。
【0093】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251によって定義される;
を含み;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0094】
別の実施形態では、hSNAP-23上のK206結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような少なくとも3つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されたような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内、hSNAP-23上のR186結合部位のための結合ポケット内及びD189/D192結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも1.3倍に増大されたhSNAP-23切断(E148Y改変BoNT/A L鎖に対して)を実証する-図1B中のマルチポケット突然変異体について定義される第1のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、S143D、Q29A及びY251Eを含む改変BoNT/A L鎖。
【0095】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義される;及び
c)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29Aによって定義される;及び
d)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251によって定義される;
を含み;
e)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0096】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にバリン、フェニルアラニン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0097】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23上のI198と、BoNT/Aのアミノ酸166の間に安定化疎水性相互作用を提供し得ると考える。
【0098】
hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、9%を超えるhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中に示される第2のデータ列を参照のこと。参照のために、野生型BoNT/A L鎖(例えば、配列番号1)は、0.5%未満のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換K166Vを含む改変BoNT/A L鎖;
置換K166Fを含む改変BoNT/A L鎖;
置換K166Lを含む改変BoNT/A L鎖;
置換K166Iを含む改変BoNT/A L鎖。
【0099】
一実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、40%を超えるhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換K166Fを含む改変BoNT/A L鎖;
置換K166Lを含む改変BoNT/A L鎖。
【0100】
更なる実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を含む本発明の改変BoNT/A L鎖は、通常、60%を超えるhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1A中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換K166Fを含む改変BoNT/A L鎖。
【0101】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット及びhSNAP-23上のK185又はR186結合部位のための結合ポケットなどの少なくとも2つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも40%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する- 図1B中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、K166F及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、K166V及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、S143D及びK166Fを含む改変BoNT/A L鎖。
【0102】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義される;及び
c)hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305によって定義される;
を含み;
d)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0103】
別の実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、少なくとも2つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内及びhSNAP-23上のK185又はR186結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも15%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、10ナノモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列**を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、K166F及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、S143D及びK166Fを含む改変BoNT/A L鎖。
【0104】
一実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、少なくとも3つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されたような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内、hSNAP23上のD189/D192結合部位のための結合ポケット内及びhSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも60%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、Q29A、K166V及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、Q29A、K166F及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0105】
従って、別の実施形態では、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変BoNT/A L鎖プロテアーゼが提供され、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148によって定義される;及び
b)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義される;及び
c)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29Aによって定義される;及び
d)hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化;ここで、前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305によって定義される;
を含み;
e)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む。
【0106】
別の実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、少なくとも3つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内、hSNAP23上のD189/D192結合部位のための結合ポケット内及びhSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも10%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、10ナノモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列**を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、Q29A、K166F及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0107】
hSNAP-23上のI198のための結合ポケット突然変異を有する改変BoNT/A L鎖突然変異体(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の更なる例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、Q29A、K166F、Y251E及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0108】
一実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、上記で定義されるような、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内又はhSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも3%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、10ナノモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列**を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びK166Fを含む改変BoNT/A L鎖;
置換G305D及びK166Fを含む改変BoNT/A L鎖。
【0109】
別の実施形態では、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット内又はhSNAP-23上のK185結合部位のための結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも5%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、10ナノモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列**を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びK166Fを含む、改変BoNT/A L鎖。
【0110】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のD210結合部位との結合のための第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S254によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S254に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置に1個の(例えば、その)アミノ酸残基アラニンを含む。
【0111】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23のD210結合部位と水素結合を示し得ると考える。更に、出願人は、前記結合ポケット(本明細書において定義されるような)の改変は、hSNAP-23上のD210と、BoNT/Aのアミノ酸254の間で形成されるように提案された水素結合を妨げると考える。これは、順に、より良好な「脱離基」の形態のC末端hSNAP-23切断産物を生成し、それによって、hSNAP-23切断率を増強すると考えられる。
【0112】
このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換S254Aを含む改変BoNT/A L鎖。
【0113】
一実施形態では、hSNAP-23上のD210結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット及びhSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット、及び随意により、hSNAP23上のK185結合部位のための結合ポケットなどの少なくとも2つ又は3つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも10%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、10ナノモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列**を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、K166F及びS254Aを含む改変BoNT/A L鎖;
置換E148Y、K166F、S254A及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0114】
好ましい実施形態では、hSNAP-23上のD210結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、本明細書において記載されるような1つ以上の異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内(例えば、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット、hSNAP-23上のI198結合部位のための結合ポケット及びhSNAP23上のK185結合部位のための結合ポケットなどの少なくとも3つの異なるBoNT/A L鎖結合ポケット内)に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも25%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、10ナノモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列**を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y、K166F、S254A及びG305Dを含む改変BoNT/A L鎖。
【0115】
追加の技術的特徴として、又は代替の技術的特徴として、本発明は、BoNT/A L鎖の本明細書において定義されたポケット内に1つ以上の突然変異を含むBoNT/A L鎖突然変異体を含む。例として、ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断する本発明の改変BoNT/A L鎖は、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有し、これは:
a)hSNAP-23のD168結合部位との結合のための第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K340によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K340に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置に1個の(例えば、その)アミノ酸残基ヒスチジンを含む。
【0116】
いずれかの理論に捉われようとは思わないが、出願人は、上記で定義されたBoNT/A L鎖結合ポケットは、hSNAP-23上のD168と、BoNT/Aのアミノ酸340の間に塩橋を提供し得ると考える。
【0117】
このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換K340Hを含む改変BoNT/A L鎖。
【0118】
一実施形態では、hSNAP-23上のP182/D178結合部位のための結合ポケット突然変異を有する本発明の改変BoNT L鎖は、hSNAP-23上のD168結合部位のためのBoNT/A L鎖結合ポケット内に1つ以上の突然変異を更に含み得る。このような突然変異体は、通常、少なくとも3%のhSNAP-23切断(好ましくは、約37℃で約1時間インキュベートされた、1マイクロモル濃度改変BoNT/A L鎖、20マイクロモル濃度hSNAP-23での%)を実証する-図1B中に示される第2のデータ列を参照のこと。このような改変BoNT/A L鎖(対応する野生型BoNT/A L鎖配列番号1と比較したアミノ酸置換(複数可)によって言及される)の例として、以下が挙げられる:
置換E148Y及びK340Hを含む改変BoNT/A L鎖。
【0119】
上記のような改変BoNT/A L鎖プロテアーゼは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)に対して少なくとも70%、例えば、少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。改変BoNT/A L鎖アミノ酸配列は、野生型BoNT/A L鎖(例えば、配列番号1)に対して100%未満の配列同一性を有する。これまでに示されたように、改変BoNT/A L鎖プロテアーゼへの本明細書を通じた言及は、その機能的断片、すなわち、hSNAP-23を切断する前記プロテアーゼの断片を包含する。例えば、本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼは、少なくとも300個(例えば、少なくとも350個又は少なくとも400個又は少なくとも410個)のアミノ酸を含む。例として、ボツリヌス神経毒L鎖プロテアーゼのN末端の8個のアミノ酸及び/又はカルボキシル末端(例えば、最後の32個のアミノ酸)は、タンパク質分解活性にとって必要ではない。
【0120】
本発明の改変BoNT/A L鎖は、プロテアーゼ成分の安定性、例えば、作用の期間を増大するためにPEG化されてもよい。ペグ化は、好ましくは、L鎖のN末端へのPEGの付加を含む。例として、L鎖のN末端は、1個以上のアミノ酸(例えば、システイン)残基を用いて延長されてもよい。前記アミノ酸残基のうち1個以上は、付着された(共有結合によって付着された)それ独自のPEG分子を有し得る。この技術の一例は、WO2007/104567に記載されており、これは、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0121】
本発明の改変BoNT/A L鎖は、「二次的改変部位」の付加(又は除去)を含み得る-各々、その全文が参照により本明細書に組み込まれるWO2002/040506、US7223577及びWO2005/068494を参照のこと。このような部位の更なる有無(野生型BoNT L鎖に関して)は、本発明の改変L鎖の生物学的持続性(例えば、生物学的半減期)を変更する。
【0122】
本発明の第2の態様は、本明細書において記載されるような改変BoNT/A L鎖をコードする核酸配列を含む、又はからなる核酸構築物を提供する。前記核酸配列は、好ましくは、以下に更に記載されるようなTSI送達ビヒクルをコードする。本発明の核酸構築物は、プロモーター及び/又はターミネーターなどの従来の調節エレメントを含み得る。
【0123】
一実施形態では、核酸構築物は、細菌プラスミド又はウイルスベクターの形態で提供される。前記核酸構築物は、所望の宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))における発現(例えば、組換え発現)を最適化するために、随意により、コドンバイアスがかけられてもよい。
【0124】
一実施形態では、本明細書において記載されるような改変BoNT/A L鎖をコードする核酸構築物は、治療又は美容目的などのための対象の標的細胞への投与のために使用され得る。この目的のために、前記核酸構築物は、通常、標的細胞、好ましくは、ヒト細胞への送達(とそれに続く、その中での発現)のために従来の方法論によって最適化され得る。標的細胞は、好ましくは、非ニューロン細胞である。
【0125】
本発明の第3の態様は、改変BoNT/A L鎖のための送達ビヒクルを提供し、それによって、改変BoNT/A L鎖の対象の標的細胞への進入を促進する。この態様によれば、本発明は、より詳しくは、以下を含む送達ビヒクルに関する。
a)本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は本発明の改変BoNT/A L鎖をコードする核酸配列を含む、若しくはからなる核酸構築物、並びに
b)前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は前記核酸構築物を標的細胞に送達するための手段。
【0126】
このような送達のための好ましい手段として、当技術分野で公知の任意の従来の送達ビヒクル技術、例えば、リポソーム、微粒子銃粒子(biolistic particles)、細胞透過性ペプチド、遺伝子導入ベクターなどが挙げられる。
【0127】
本発明とともに使用するのに高度に適している1つの特に好ましい送達技術として、出願人が所有する標的化分泌阻害剤(TSI)技術がある。TSIを作製するために使用される基本方法は、十分に文書化されており、現在、従来技術と考えられている(例えば、各々参照によりその全文が組み込まれる、WO98/07864、WO2006/059113、WO2009/150469、WO2010/020811、WO2009/150470、WO2010/094905、WO2012/156743を参照のこと)。TSI技術は、クロストリジウム神経毒が、宿主細胞を中毒させる時に使用されるのと同一の基本ステップ(すなわち、標的細胞との結合、エンドソーム形成、サイトゾルへのL鎖の転位置、L鎖によるSNAREタンパク質のタンパク質分解による切断)を模倣する送達機序に頼っている。TSI送達ビヒクルは、3種の主な構成成分を有する簡単なクロストリジウム神経毒骨格に基づいている。即ち、
1)クロストリジウム神経毒L鎖;
2)送達ビヒクルを、選択した標的細胞に向ける標的化部分(TM)。通常、天然クロストリジウム神経毒結合ドメイン(HCC)は、HCCの天然標的細胞以外の所望の標的細胞との送達ビヒクルの選択的結合を提供するために、リガンドによって置き換えられ得る。好ましい実施形態では、1つより多いTMが使用され得る(随意により、クロストリジウム神経毒結合ドメインを含む);
3)クロストリジウム神経毒L鎖の、標的細胞への送達を確実にするための転位置ペプチド(例えば、クロストリジウム神経毒HN転位置ドメイン)、次いで、クロストリジウム神経毒L鎖は、標的細胞において、そのタンパク質分解効果(すなわち、SNAREタンパク質の切断)を発揮できる。
【0128】
従って、好ましい実施形態では、本発明の送達ビヒクルの手段b)は、以下を含み得る:
- i)送達ビヒクルを標的細胞と結合させる標的化部分(TM)。前記標的化部分は、天然クロストリジウム神経毒結合ドメイン(HCC)又は、より好ましくは、前記HCCの天然標的細胞以外の標的細胞との結合を提供するリガンドのいずれかであり得る;及び
- ii)本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼを、標的細胞中、好ましくは、前記細胞のサイトゾル中に転位置する転位置ペプチド。
【0129】
本発明の送達ビヒクルは、通常、1以上の標的化部分(TM)を含む。TMという場合、「部位」(例えば、受容体又はアクセプター)と機能的に相互作用して、本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼと、哺乳動物標的細胞(例えば、ヒト細胞)の表面の間の物理的結合を引き起こす任意の構造(通常、ペプチド)を包含する。「部位」は、好ましくは、内部移行(例えば、エンドソーム形成。また、受容体媒介性エンドサイトーシスとも呼ばれる。)可能であるものである。TMは、エンドソーム膜転位置機能を有することもあり、この場合には、別個のTM及び転位置ドメイン構成成分が使用される必要はない。
【0130】
本発明のTMは、選択した標的細胞と結合する(例えば、特異的に結合する)。用語「特異的に結合する」は、好ましくは、所与のTMが、106M-1若しくはそれより強い、例えば、107M-1若しくはそれより強い、108M-1若しくはそれより強い、又は109M-1若しくはそれより強い結合親和性(Ka)で標的細胞と結合することを意味する。
【0131】
TMが選択された標的細胞と結合することを確認することは日常的なことである。例えば、対象の標的細胞を代表する組織又は細胞が、過剰の非標識TMの存在下で標識された(例えば、トリチウム化された)TMに曝露される簡単な放射活性置換実験を使用してもよい。このような実験では、非特異的及び特異的結合の相対的比率が評価されることができ、それによって、TMが標的細胞と結合することの確認が可能となる。随意により、アッセイは、1種以上の結合アンタゴニストを含んでもよく、アッセイは、TM結合の喪失を観察することを更に含んでもよい。この種の実験の例は、Hulme, E.C. (1990), Receptor-binding studies, a brief outline, pp. 303-311, In Receptor biochemistry, A Practical Approach, Ed. E.C. Hulme, Oxford University Pressに見い出すことができる。
【0132】
本発明のTMは、好ましくは、非ニューロン標的細胞(例えば、肥満細胞及び/又は上皮細胞-例えば、各々参照によりその全文が組み込まれるWO00/10598及びWO01/21213を参照のこと)と結合する。そのようにすることで、前記TMは、送達ビヒクルを、望まれないhSNAP-23表現型(及び随意により、望まれないSNAP-25表現型)を発現している選択された非ニューロン標的細胞に向けることができる。並行して、本発明のTMは、(例えば、同一TMを介して、又は第2のTMを介して)選択した第2の標的細胞と、例えば、第2の非ニューロン標的細胞と、又は望まれないhSNAP-23及び/又はSNAP-25表現型を発現している神経細胞標的細胞と別個に結合し得る。
【0133】
適したTMとして、哺乳動物細胞結合部位受容体とのリガンド、例えば、サイトカイン、増殖因子、ニューロペプチド、レクチン及び抗体が挙げられる-この抗体という用語は、モノクローナル抗体、一本鎖抗体及びFab、F(ab)’2、Fv、ScFvなどといった抗体断片を含む。
【0134】
更なる例として、TMは、レプチンペプチド、グレリン受容体、ソマトスタチンペプチド、インスリン増殖因子ペプチド、ErbBペプチド(例えば、EGF)、VIP-グルカゴン-GRF-セクレチンペプチド(例えば、PACAPペプチド)、インターロイキンペプチド(例えば、Il-1、IL-2、IL-6又はIL-10ペプチド)、NGFペプチド、VEGFペプチド、ボンベシンペプチド、ウロテンシンペプチド、メラニン濃縮ホルモンペプチド、プロラクチン放出ホルモンペプチド、KiSS-1ペプチド、CRFペプチド、GHRHペプチド、サブスタンスPペプチド、ベータ2アドレナリン受容体ペプチド、ガストリン放出ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、血小板由来増殖因子ペプチド、ケラチノサイト増殖因子ペプチド、肝細胞増殖因子ペプチド、TGF-アルファペプチド、TGF-ベータペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチド及びインテグリンペプチドを含む。
【0135】
本発明の送達ビヒクルは、通常、(機能的)クロストリジウム神経毒結合ドメイン(TMとして)を欠く。
【0136】
あるいは、本発明の送達ビヒクルは、(機能的)クロストリジウム神経毒結合ドメイン(TMとして)を含み得る。クロストリジウム神経毒結合ドメインという場合、クロストリジウム神経毒のHC(より正確には、HCC)部分並びにHCドメインの結合能(例えば、Shone et al. (1985) Eur. J. Biochem. 151, 75-82)に記載されるものなどの従来の結合実験においてラットシナプトソーム膜と結合するための)を保持するその突然変異体を包含する。
【0137】
天然クロストリジウム神経毒のHC結合ドメイン/ペプチドは、およそ400~440個のアミノ酸残基を含み、各およそ25kDaの2つの機能的に別個のドメイン、すなわち、N末端領域(一般にHCNペプチド又はドメインと呼ばれる)及びC末端領域(一般にHCCペプチド又はドメインと呼ばれる)からなる。クロストリジウム神経毒の結合(神経筋接合部の神経終末との)に関与するのはC末端領域(HCC)であり、C末端の160~200個のアミノ酸残基を構成する。例示的HCCペプチドとして:
ボツリヌスA型神経毒-アミノ酸残基(Y1111~L1296)
ボツリヌスB型神経毒-アミノ酸残基(Y1098~E1291)
ボツリヌスC型神経毒-アミノ酸残基(Y1112~E1291)
ボツリヌスD型神経毒-アミノ酸残基(Y1099~E1276)
ボツリヌスE型神経毒-アミノ酸残基(Y1086~K1252)
ボツリヌスF型神経毒-アミノ酸残基(Y1106~E1274)
ボツリヌスG型神経毒-アミノ酸残基(Y1106~E1297)
テタヌス神経毒-アミノ酸残基(Y1128~D1315)
が挙げられる。
【0138】
亜血清型に従ってわずかな変動が生じ得るので、上記で同定された参照配列は、ガイドと考えられなければならない。
【0139】
本発明の送達ビヒクルは、通常、改変L鎖の、標的のサイトゾルへの転位置を可能にする転位置ペプチドを含む。ペプチドが本発明の必要な転位置機能を有するか否かは、いくつかの従来のアッセイのうち任意の1つによって確認され得る。例えば、Shone C. (1987年)には、試験分子に曝露されるリポソームを使用するin vitroアッセイが記載されている。必要な転位置機能の存在は、容易にモニタリングされ得るK+及び/又は標識NADのリポソームからの放出によって確認される[Shone C. (1987) Eur. J. Biochem; vol. 167(1): pp. 175-180を参照のこと]。更なる例は、平面リン脂質二層膜を使用する簡単なin vitroアッセイを記載するBlaustein R. (1987年)によって提供されている。膜は、試験分子に曝露され、必要な転位置機能は、前記膜を通るコンダクタンスの増大によって確認される[Blaustein (1987) FEBS Letts; vol. 226, no. 1: pp. 115-120を参照のこと]。膜融合物の評価、従って、本発明において使用するのに適した転位置ドメインの同定を可能にする更なる方法論は、Methods in Enzymology Vol 220 and 221, Membrane Fusion Techniques, Parts A and B, Academic Press 1993に提供されている。
【0140】
転位置ドメインは、神経毒のHNドメイン/部分など、クロストリジウム起源のものであり得る。「HNドメイン」という場合、H鎖のアミノ末端側の半分にほぼ等しいクロストリジウム神経毒のH鎖の断片を意味する。クロストリジウム神経毒のHNドメインは、H鎖のHC成分の天然結合機能を欠く。従って、HNドメインは、天然クロストリジウム神経毒(すなわち、ホロ毒素)が結合する標的細胞上の結合部位と結合可能ではない。
【0141】
適した(参照)転位置ドメインの例として:
ボツリヌスA型神経毒-アミノ酸残基(449~871)
ボツリヌスB型神経毒-アミノ酸残基(441~858)
ボツリヌスC型神経毒-アミノ酸残基(442~866)
ボツリヌスD型神経毒-アミノ酸残基(446~862)
ボツリヌスE型神経毒-アミノ酸残基(423~845)
ボツリヌスF型神経毒-アミノ酸残基(440~864)
ボツリヌスG型神経毒-アミノ酸残基(442~863)
テタヌス神経毒-アミノ酸残基(458~879)
が挙げられる。
【0142】
研究によって、クロストリジウム神経毒重鎖に由来するHN部分の全長は、転位置活性にとって必要ではないということが示された。従って、本実施形態の態様は、例えば、少なくとも350個のアミノ酸、少なくとも375個のアミノ酸、少なくとも400個のアミノ酸及び少なくとも425個のアミノ酸の長さを有する転位置ドメインを含むクロストリジウム毒素HN領域を含み得る。クロストリジウム・ボツリヌス及びC.テタニ(tetani)における毒素生成の遺伝的基礎に関する更なる詳細のために、本発明者らは、Henderson et al (1997) in The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressに言及する。
【0143】
用語HNは、天然に存在する神経毒HN部分を包含し、また、天然に生じないアミノ酸配列を有する変異体HN部分を、上記の転位置機能を依然として実証する限り包含する。例えば、クロストリジウム神経毒HN部分は、転位置機能が保持されるという条件で、野生型クロストリジウム神経毒HN部分に対して、少なくとも70%(例えば、少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%)の配列同一性を有する変異体アミノ酸配列を包含する。
【0144】
あるいは、転位置ペプチドは、非クロストリジウム起源のもの、例えば、ジフテリア毒素の転位置ドメイン[O.Keefe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89, 6202-6206; Silverman et al., J. Biol. Chem. (1993) 269, 22524-22532; and London, E. (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, pp.25-51]、シュードモナス外毒素A型の転位置ドメイン[Prior et al. Biochemistry (1992) 31, 3555-3559]、炭疽病毒素の転位置ドメイン[Blanke et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93, 8437-8442]、転位置機能の種々の膜融合又は疎水性ペプチド[Plank et al. J. Biol. Chem. (1994) 269, 12918-12924; and Wagner et al (1992) PNAS, 89, pp.7934-7938]及び両親媒性のペプチド[Murata et al (1992) Biochem., 31, pp.1986-1992]であり得る。
【0145】
非クロストリジウム神経毒転位置ペプチドという場合、断片及び変異体アミノ酸配列を包含し、それは、変異体が必要なものを有するという条件で、対応する非クロストリジウム野生型転位置ペプチド配列に対して少なくとも70%(例えば、少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%又は少なくとも97%又は少なくとも98%又は少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0146】
【表1】
【0147】
本発明のポリペプチドは、転位置促進ドメインを更に含み得る。前記ドメインは、非細胞傷害性プロテアーゼの標的細胞のサイトゾルへの送達を促進し、例えば、各々、参照によりその全文が本明細書に組み込まれるWO08/008803及びWO08/008805に記載されている。
【0148】
例として、適した転位置促進ドメインは、エンベロープ型ウイルス膜融合ペプチドドメインを含み、例えば、適した膜融合ペプチドドメインとして、インフルエンザウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、23個のアミノ酸のインフルエンザAウイルス膜融合ペプチドドメイン)、アルファウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、26個のアミノ酸のセムリキ森林ウイルス膜融合ペプチドドメイン)、ベジクロウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、21個のアミノ酸の水泡性口内炎ウイルス膜融合ペプチドドメイン)、レスピロウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のセンダイウイルス膜融合ペプチドドメイン)、モルビリウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のイヌジステンパーウイルス膜融合ペプチドドメイン)、アブラウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のニューカッスル病ウイルス膜融合ペプチドドメイン)、ヘニパウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のヘンドラウイルス膜融合ペプチドドメイン)、メタニューモウイルス膜融合ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のヒトメタニューモウイルス膜融合ペプチドドメイン)又はスプーマウイルス膜融合ペプチドドメイン、例えば、サル泡沫状ウイルス膜融合ペプチドドメイン又はそれらの断片若しくは変異体が挙げられる。
【0149】
更なる例として、転位置促進ドメインは、クロストリジウム神経毒HCNドメイン又はその断片若しくは変異体(対応する野生型配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する)を含み得るが、増強された転位置機能が保持される。より詳細には、クロストリジウム毒素HCN転位置促進ドメインは、少なくとも200個のアミノ酸、少なくとも225個のアミノ酸、少なくとも250個のアミノ酸、少なくとも275個のアミノ酸の長さを有し得る。この関連で、クロストリジウム毒素 HCN 転位置促進ドメインは、好ましくは、多くとも200個のアミノ酸、多くとも225個のアミノ酸、多くとも250個のアミノ酸又は多くとも275個のアミノ酸の長さを有する。具体的な(参照)例として、以下が挙げられる:
ボツリヌスA型神経毒-アミノ酸残基(872~1110)
ボツリヌスB型神経毒-アミノ酸残基(859~1097)
ボツリヌスC型神経毒-アミノ酸残基(867~1111)
ボツリヌスD型神経毒-アミノ酸残基(863~1098)
ボツリヌスE型神経毒-アミノ酸残基(846~1085)
ボツリヌスF型神経毒-アミノ酸残基(865~1105)
ボツリヌスG型神経毒-アミノ酸残基(864~1105)
テタヌス神経毒-アミノ酸残基(880~1127)。
【0150】
本発明の第4の態様は、hSNAP-23を切断する方法を提供し、前記方法は、本明細書において記載されるように、hSNAP-23を、改変BoNT/A L鎖プロテアーゼと、又は核酸構築物と、又は送達ビヒクルと接触させることを含み、それによって、改変BoNT/A L鎖が前記hSNAP-23と結合すること、続いて、改変BoNT/A L鎖プロテアーゼによるhSNAP-23のタンパク質分解による切断を可能にする。一実施形態では、前記方法は、in vitroで実施される。
【0151】
一実施形態では、前記のhSNAP-23を切断する方法は、以下の予備的ステップを含む:
1)送達ビヒクルの、その標的化部分(TM)を介した標的細胞との結合;及び
2)改変BoNT/A L鎖の、標的細胞への、好ましくは、前記標的細胞のサイトゾルへの、送達ビヒクルの転位置ペプチドを介した転位置。
【0152】
好ましくは、TMは、標的細胞上の部位と(例えば、タンパク質、糖及び/又は脂質分子と)結合し、前記部位は、受容体媒介性エンドサイトーシス可能であり、送達ビヒクルは、エンドソーム形成を介して標的細胞内にその後内部移行される。その後、送達ビヒクルの転位置ペプチドは、改変BoNT/A L鎖をエンドソーム膜を通って標的細胞のサイトゾル中に転位置させることができる。
【0153】
別の態様では、本発明は、上記のようなhSNAP23を切断する方法において使用するための、本明細書において記載されるような、改変(BoNT/A)L鎖プロテアーゼに、又は核酸構築物に、又は送達ビヒクルに関する。
【0154】
別の態様では、本発明は、治療の方法、好ましくは、分泌障害を治療する方法において使用するための、本明細書において記載される改変(BoNT/A)L鎖プロテアーゼを包含する。
【0155】
従って、一態様は、医薬として使用するための、本明細書において記載されるBoNT/A L鎖プロテアーゼ又は本明細書において記載される核酸構築物又は本明細書において記載される送達ビヒクルを提供する。
【0156】
このような態様では、前記改変(BoNT/A)L鎖プロテアーゼは、好ましくは、重鎖を更に含むBoNT、すなわち全長BoNT内に含まれる。このような全長BoNTは、通常、ジスルフィド結合によって連結された100kDaの重鎖及び50kDaの軽鎖を含む150kDaのポリペプチド鎖を有し、3つの機能的ドメインで構成されている、N末端タンパク分解性軽鎖(L鎖)及びC末端重鎖(H鎖)であって、後者は、転位置ドメイン(HN)及びC末端ニューロン結合ドメイン(HC)からなる。
【0157】
好ましい分泌障害として、筋痙縮/過活動性筋肉運動(卒中後痙縮、脊髄損傷後痙縮、頭頸部、眼瞼、膣、手足、顎及び声帯の痙攣を含む)、斜視、多汗症及び重症原発性腋窩多汗症が挙げられる。
【0158】
本発明は、以下の詳細な例に照らしてよりよく理解されよう。それにもかかわらず、当業者ならば、この詳細な説明は制限的なものではなく、種々の改変、置換、省略及び変法は本発明の範囲から逸脱することなく行われ得るということは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0159】
図1図1は、本発明の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼのhSNAP-23及びhSNAP25切断データを示す図である。(A)単一結合ポケット中に突然変異を有するBoNT/A L鎖プロテアーゼのデータ、(B)複数の結合ポケット中に突然変異を有するBoNT/A L鎖プロテアーゼのデータ。
図2図2は、SNAP-25/23の結合ポケット(ラインレンダリングされた)とのBoNT/A L鎖プロテアーゼ(輪郭)相互作用の3Dレンダリング画像を示す図である。
【0160】
アミノ酸配列
配列番号1 - 野生型 BoNT/A 軽鎖 (Uniprot A5HZZ9 の アミノ酸残基 1-438)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSK
配列番号2 - ヒト SNAP23
MDNLSSEEIQQRAHQITDESLESTRRILGLAIESQDAGIKTITMLDEQKEQLNRIEEGLDQINKDMRETEKTLTELNKCCGLCVCPCNRTKNFESGKAYKTTWGDGGENSPCNVVSKQPGPVTNGQLQQPTTGAASGGYIKRITNDAREDEMEENLTQVGSILGNLKDMALNIGNEIDAQNPQIKRITDKADTNRDRIDIANARAKKLIDS
配列番号3 - ヒト 及び げっ歯類 SNAP25
MAEDADMRNELEEMQRRADQLADESLESTRRMLQLVEESKDAGIRTLVMLDEQGEQLERIEEGMDQINKDMKEAEKNLTDLGKFCGLCVCPCNKLKSSDAYKKAWGNNQDGVVASQPARVVDEREQMAISGGFIRRVTNDARENEMDENLEQVSGIIGNLRHMALDMGNEIDTQNRQIDRIMEKADSNKTRIDEANQRATKMLGSG
配列番号4 - IgA-プロテアーゼ部位 His6Tag (artificial)
PPTPGHHHHHH
配列番号5 - Twin Strep Tag (artificial)
MASWSHPQFEKGGGSGGGSGGGSWSHPQFEKGAGS
配列番号6 - His6 Tag (artificial)
GHHHHHH
配列番号7 - V-IgA-プロテアーゼ部位 His6Tag (artificial)
VPPTPGHHHHHH
配列番号8 - 野生型 BoNT/A1
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
配列番号9 - LHN リンカー (artificial)
vrgiitsktksldkgynkalndl
配列番号10 - enterokinase 活性化部位
DDDDK
配列番号11 - BoNT/A1 活性化ループ
VDGIITSKTKSDDDDKNKALNLQ
【実施例
【0161】
[実施例1] 本発明の改変BoNT/A L鎖(BoNT/A LC)の製造
【0162】
鋳型として株62Aの細菌DNAを使用して、PCR及び適したオリゴヌクレオチドプライマーによって、野生型BoNT/A L鎖(アミノ酸1~448、配列番号1)をコードするプラスミド、pBN3を作製した。アミノ酸配列PPTPGHHHHHH(配列番号4)をコードするDNAを、アミノ酸Ala-449のコドンの後ろに挿入した。大腸菌(E.coli)株M15pREP4(Qiagen、Hilden、Germany)を、wt BoNT/A LCを含有するpBN3を用いて、又はその突然変異体を用いて、すなわち、本願に記載されるような配列番号1のプロテアーゼ突然変異体を用いてトランスフェクトした。各トランスフェクトされた大腸菌(E.coli)株について、5mlの2YT培地中で一晩増殖させた単一細菌コロニーを使用して、500mlの2YT培地に播種した。
【0163】
培養が0.7のOD600に到達した後、21℃で0.2mMのIPTGを使用する15時間の誘導の間、BoNT/A L鎖を製造した。遠心分離によって細菌を回収し、-20℃で一晩凍結させた。細菌を、ベンズアミジン、ペプスタチンA及びPMSFをそれぞれ5mM、1μg/ml及び0.5mMの最終濃度で補給した溶解バッファー(300mM NaCl、50mMリン酸、pH 8.0)に再懸濁し、超音波処理によって溶解し、溶解物を29,000gで30分間の遠心分離によって清澄化し、BoNT/A L鎖は、Ni2+-ニトリロ三酢酸アガロースビーズに結合された。ビーズを、20総容積(bed volumes)の10mMのイミダゾールを含有する溶解バッファーを用いて洗浄し、100mMのイミダゾールを含有する溶解バッファーによってBoNT/A L鎖を溶出した。所望のタンパク質を含有する画分を、毒素アッセイバッファー(150mMのグルタミン酸カリウム、10mMのHepes-KOH、pH7.2)に対して透析し、最終的に、精製L鎖を液体窒素中で凍結し、-70℃で維持した。
【0164】
[実施例2] hSNAP-23細胞不含切断アッセイ
【0165】
大腸菌(E.coli)発現及びin vitro転写/翻訳のためのhSNAP-23(配列番号2)プラスミド、pS3-hSNAP-23His6を作製した。
【0166】
N末端に融合したツインstrep-タグ (MASWSHPQFEKGGGSGGGSGGGSWSHPQFEKGAGS、配列番号5)及びカルボキシル末端セリン-211のコドンの下流にC末端に融合したHis6-タグ(GHHHHHH、配列番号6)をコードする。
【0167】
タンパク質製造及び精製のために、pS3-hSNAP-23His6を、大腸菌(E.coli)株BL21-DE3(Stratagene Europe、ドイツ、エプスドルファーグルント)にトランスフェクトし、実施例1においてBoNT/A L鎖プロテアーゼについて詳述したものと同一プロトコールを適用した。しかし、Ni2+-ニトリロ三酢酸-アガロースビーズから溶出されたタンパク質を、Strep-Tactinアガロースビーズ(IBA Lifesciences、Gottingen、Germany)で、20総容積の0.1M Tris pH8.0を用いて洗浄し、0.1M Tris pH8.0中10mMのデスチオビオチンを用いて溶出することによって更に精製した。更に、hSNAP-23精製に使用したすべてのバッファーに10mM β-メルカプトエタノールを補給した。
【0168】
放射標識hSNAP-23を、pS3-hSNAP-23His6、T7カップリングTNT網状赤血球溶解物系(Promega)及び[35S]メチオニン(370KBq/μl、>37TBq/mmol;Hartmann Analytic、ドイツ、ブラウンシュヴァイク)を使用するin vitro転写/翻訳によって、製造業者の使用説明書に従ってその後作製した。
【0169】
hSNAP-23細胞不含切断アッセイは、20マイクロモル最終濃度の組換えhSNAP-23並びに[35S]メチオニン標識hSNAP-23及び1マイクロモル又は10ナノモルいずれかの最終濃度の改変又は野生型BoNT/A L鎖各々の1μlの転写/翻訳混合物を含有しており、これを総容量10μlの毒素アッセイバッファーで37℃で60分間インキュベートした。等容量の二倍濃縮サンプルバッファー[120mM Tris-HCl(pH6.75)、10%(v/v)β-メルカプトエタノール、4%(w/v)SDS、20%(w/v)グリセロール及び0.014%(w/v)ブロモフェノールブルー]の添加によって反応を停止した。37℃で30分間インキュベートした後、各サンプルを、15%Tris-グリシンゲル(アクリルアミド/ビス-アクリルアミド比:73.5:1)を使用するSDS-PAGEによって解析した。
【0170】
ゲルを乾燥させ、放射標識されたタンパク質を、FLA-9000ホスフォイメージャー(Fuji Photo Film、Co.、Ltd.、日本、東京)を使用して可視化した。放射標識タンパク質及びその切断生成物の定量化は、Multigauge 3.2ソフトウェア(Fuji Photo Film)を用いて実施した。野生型BoNT/A L鎖及びその突然変異体の酵素動態学的パラメータの決定のために、基質濃度を、大腸菌(E.coli)において製造されたhSNAP-23を使用して5から100μMの間で変化させた。in vitro転写/翻訳によって作製された1μlの放射標識hSNAP-23の添加によって種々の基質濃度各々が与えられた。インキュベーションは25μlの毒素アッセイバッファーの最終容量で実施した。37℃で2及び4分インキュベートした後、10μlのアリコートを採取し、10μlの予冷二倍濃縮SDS-PAGEサンプルバッファーと混合することによって酵素反応を停止した。切断の百分率は、上記で詳述されたように放射標識基質のターンオーバーから決定し、それを使用して、基質加水分解の初速度を算出した。GraphPad Prism 4.03プログラム(GraphPad Software Inc.、米国、サンディエゴ)を使用して、非線形回帰によってKm、Kcat及び最大反応速度値を算出した。
【0171】
得られたデータは図1に示されている。
【0172】
[実施例3] hSNAP-25細胞不含切断アッセイ
【0173】
大腸菌(E.coli)発現のためのhSNAP-25(配列番号3)プラスミド(pBN10)は、Binz et al.(J Biol Chem., 1994; 269:1617-20)に記載されている。カルボキシル末端グリシン-206のコドンに、アミノ酸配列VPPTPGHHHHHH(配列番号7)をコードするDNAを続ける。その後、in vitro転写/翻訳のためのプラスミドpSNAP-25His6を、pBN10のEcoRI-SalI断片を対応して切断されたpSP73(Promega、ドイツ、マンハイム)にサブクローニングすることによって作製した。
【0174】
SNAP-25のタンパク質製造及び精製のために、pBN10を大腸菌(E.coli)株M15pREP4(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)にトランスフェクトし、実施例1においてBoNT/A L鎖プロテアーゼについて詳述されたものと同一プロトコールを適用した。
【0175】
放射標識SNAP-25を、pSNAP-25His6、SP6カップリングTNT網状赤血球溶解物系(Promega)及び[35S]メチオニン(370KBq/μl、>37 TBq/mmol;Hartmann Analytic、ドイツ、ブラウンシュヴァイク)を製造業者の使用説明書に従って使用する、in vitro転写/翻訳によって作製した。
【0176】
hSNAP25切断アッセイは、実施例2においてhSNAP-23について記載された通りに正確に実施した。
【0177】
得られたデータは、図1に示されている。
【0178】
[実施例4] 本発明の改変軽鎖A(BoNT/A LC)を含有するLHNドメインの製造
【0179】
この実施例は、本発明のhSNAP23切断活性を示す改変軽鎖A(BoNT/A LC)を含有する転位置LHNドメインの構築を記載する。このようなLHNドメインを使用して、適当な標的化部分を添加することによってTSI送達ビヒクルのファミリーを作製できる。
【0180】
手短には、前記突然変異体BoNT/A LCをコードし、大腸菌(E.coli)への発現のために最適化されているDNAを化学合成することによって(GeneArt、ThermoFisher)、pCR4ベクター(Invitrogen)にサブクローニングし、本発明のBoNT/A LCの各突然変異体についてBoNT/A LCクローニングベクターを最初に構築した。並行して、HN/Aドメイン(配列番号8、UniprotKB受託番号A5HZZ9のアミノ酸残基449~872に対応する)をコードするコドン最適化されたDNAを化学合成することによって、標準ベクター、例えば、pCR4ベクター(Invitrogen)にサブクローニングし、BoNT/A HNドメインクローニングベクターを同様に構築した。前記リンカーをコードするコドン最適化されたDNAを化学合成することによって、標準ベクターであるpCR4ベクター(Invitrogen)にサブクローニングし、LHNリンカークローニングベクターを更に構築した。特に、LHNリンカーベクターの構築のために、BoNT/A血清型に適しているLHNリンカーvrgiitsktksldkgynkalndl(配列番号9)(BoNT/AのLC及びHNドメイン間のジスルフィド橋のシステイン間に存在するドメイン間ポリペプチド領域である)を使用した。代替LHNリンカー構築物を作製できる。実際、当業者に周知であるように、特定のプロテアーゼ切断部位の作製のために、LysCプロテアーゼによるタンパク質分解に対する天然感受性を使用してもよく、又は活性化ループ中にエンテロキナーゼ活性化部位(例えば、DDDDK、配列番号10)を挿入して、VDGIITSKTKSDDDDKNKALNLQ(配列番号11)などの配列を作製してもよく、又は当技術分野で周知の任意のその他のプロテアーゼのプロテアーゼ部位、例えば、PreScision、第X因子、トロンビン、TEVプロテアーゼなどを活性化ループ中に挿入してもよい。
【0181】
本発明の改変BoNT/A LC各々をコードするDNAを、2つの主要な工程により、LHNリンカーをコードするDNAの上流になるように、改変pET発現ベクター(Novagen)中にクローニングして構築した。前記リンカーは、HN/AドメインをコードするDNAの更に上流に位置する。
【0182】
[実施例5] 本発明の非ニューロン細胞と結合するTSI送達ビヒクルの製造
【0183】
この実施例は、上記の実施例2において記載したように本発明の改変軽鎖Aを含有するLHNドメインの各C末端に適した標的化部分(ここでは、ヒトGHRP)を付加することによるTSI送達ビヒクルの構築を記載する。そのようにするために、標的化部分とLHNドメインの間に可動性リンカーを導入した。
【0184】
手短には、hGHRP標的化部分にインフレームで融合された可動性リンカーをコードするコドン最適化されたDNAを化学合成することによって、リンカー-hGHRPクローニングベクターを構築し、pCR4ベクター(Invitrogen)にサブクローニングした。
【0185】
リンカー-hGHRPが各LHNドメインのC末端にインフレームで融合されるような方法で、実施例2に記載されるLHNドメインを含有するpET発現ベクターの各々に、リンカー-hGHRPをコードするDNAをクローニングすることによってTSI構築物をその後アセンブルした。
【0186】
各TSIビヒクルのタンパク質発現のために、250mlフラスコ中の0.2%グルコサミン及び30μg/mlカナマイシンを含有する100mlの改変TerrificBroth(TB)培地を、TSIがトランスフェクトされた単一細菌コロニー(大腸菌(E.coli)BL21(DE3)とともにインキュベートした。各培養物を37℃、225rpmで16時間で増殖させ、続いて、2Lフラスコ中の0.2%グルコサミン及び30μg/mlカナマイシンを含有する1Lの改変TBに、10mlの一晩培養物を用いて播種した。得られた培養物を次いで、およそ0.5のOD600nmが到達されるまで37℃で増殖させ、その時点で温度を16℃に下げた。1時間後、1mM IPTGを用いて各培養物を誘導し、16℃で更に16時間増殖させた。遠心分離によって細菌を回収し、-20℃で一晩凍結させた。
【0187】
発現されたTSI各々のその後の精製を、以下のとおりに実施した。
【0188】
細菌を解凍し、細胞ペレットを超音波処理して、細胞を溶解した。遠心分離後、上清を、50mM HEPES pH7.2 200mM NaClを用いて平衡化した、0.1M NiSO4を充填したキレート化カラム上にロードした。カラムの洗浄は、40~100mMイミダゾール(段階勾配)を含有するバッファーを用いて実施して、結合していないタンパク質を溶出し、200mMイミダゾールを含有するバッファーを用いて、TSIタンパク質を溶出した。続いて、所望のタンパク質(TSI)を含有する画分を、50mM HEPES pH7.2 200mM NaClを含有するバッファーに対して透析した。次いで、プロテアーゼ(ここでは、LysC)を、1mgの精製されたTSIに、それを活性化する(すなわち、その結果、TSIが、GHRPと結合し、軽鎖を細胞質に転位置させ、hSNAP23を触媒的に切断することが可能な二本鎖を形成する)のに適当な量で添加した。次いで、50mM HEPES pH7.2 200mM NaClを用いて平衡化した、0.1M NiSO4を充填したキレート化カラムにロードすることによって、得られた混合物を更に精製した。カラムを、1回目、50mM HEPES pH7.2 200mM NaClを用いて、次いで、40~100mMイミダゾールを含有するバッファーを用いて洗浄して、非特異的に結合したタンパク質を溶出し、200mMイミダゾールを含有するバッファーを用いて、活性化されたTSIを溶出した。所望の活性化されたタンパク質(TSI)を含有する画分を、その後、50mM HEPES pH7.2 150mM NaClを含有するバッファーに対して透析した。次いで、透析されたタンパク質を約2mg/mlに濃縮し、アリコートとし、-80℃で最後に凍結した。
【0189】
条項
【0190】
1.ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼであって;
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148、T307、A308及びY312によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基T307に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にフェニルアラニン、イソロイシン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基A308に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にプロリン、アスパラギン、スレオニン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y312に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にリジン、バリン、メチオニン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
2.a)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、条項1に従う改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
3.a)hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V304及びG305によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V304に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、条項1又は2に従う改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
4.a)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、任意の前記の条項に従う改変BoNT/ A L鎖プロテアーゼ。
5.a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251、L256、V258、L367及びF369によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L256に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、グリシン、アラニン及びアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V258に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にセリン、アラニン、プロリン、ロイシン及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L367に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
v.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基F369に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグリシン、セリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、任意の前記の条項に従う改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
6.a)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にバリン、フェニルアラニン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、任意の前記の条項に従う改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
7.a)hSNAP-23のD210結合部位との結合のための第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S254によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S254に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、任意の前記の条項に従う改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
8.a)hSNAP-23のD168結合部位との結合のための第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K340によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K340に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、任意の前記の条項に従う改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
9.ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖)(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
10.ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にバリン、フェニルアラニン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
11.ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251、L256、V258、L367及びF369によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L256に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン酸、グルタミン、グリシン、アラニン及びアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基V258に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にセリン、アラニン、プロリン、ロイシン及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基L367に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
v.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基F369に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグリシン、セリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
12.ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A) L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のD210結合部位との結合のための第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第7のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S254によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S254に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
13.ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のD168結合部位との結合のための第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第8のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K340によって定義され;
c)前記アミノ酸残基変化は
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K340に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
14.異なるBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み、前記アミノ酸残基変化及び前記の別のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、条項1~13のいずれか1つに列挙される技術的特徴によって定義される、条項9~13のいずれかに従う改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
15.任意の先行する条項において定義されるような改変BoNT/A L鎖プロテアーゼをコードする核酸配列を含む、又はからなる核酸構築物。
16.a)任意の条項1~14において定義されるような改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は条項15の核酸構築物;及び
b)前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は前記核酸構築物を、標的細胞に、好ましくは、非ニューロン標的細胞に送達する手段;
を含む、送達ビヒクル。
17.前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼを標的細胞に送達する手段b)が:
i)送達ビヒクルを標的細胞と結合する標的化部分;及び
ii)改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は核酸構築物を標的細胞に、好ましくは、非ニューロン標的細胞に転位置する転位置ペプチド;
を含む、条項16に従う送達ビヒクル。
18.hSNAP-23を、条項1~14のいずれかに従う(BoNT/A)L鎖プロテアーゼと、又は条項15に従う核酸構築物と、又は条項16若しくは17に従う送達ビヒクルと接触させることを含む、hSNAP-23を切断する方法。
19.条項18に従う方法において使用するための、条項1~14のいずれかに従う(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ、又は条項15に従う核酸構築物、又は条項16若しくは17に従う送達ビヒクル。
[態様1]
ヒトSNAP-23(hSNAP-23)を切断し、かつ、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)と比較して改変されたアミノ酸配列を有する改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼであって、これは:
a)hSNAP-23のP182/D178結合部位との結合のための第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を含み;
b)前記の第1のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148、T307、A308及びY312によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化は:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基E148に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアスパラギン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
ii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基T307に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にフェニルアラニン、イソロイシン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iii.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基A308に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にプロリン、アスパラギン、スレオニン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;及び/又は
iv.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y312に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にリジン、バリン、メチオニン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、改変ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)L鎖プロテアーゼ。
[態様2]
a)hSNAP-23のD189/D192結合部位との結合のための第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第2のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Q29に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、態様1に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
[態様3]
a)hSNAP-23のI198結合部位との結合のための第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第3のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基K166に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、態様1又は態様2に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
[態様4]
a)hSNAP-23のK185結合部位との結合のための第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第4のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基G305に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、先行する態様のいずれか一項に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
[態様5]
a)hSNAP-23のR186結合部位との結合のための第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置するアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第5のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143によって定義され;
c)かつ、前記アミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基S143に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、先行する態様のいずれか一項に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
[態様6]
a)hSNAP-23のK206結合部位との結合のための第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケット内に位置する少なくとも1つのアミノ酸残基変化を更に含み;
b)前記の第6のBoNT/A L鎖プロテアーゼ結合ポケットは、野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251によって定義され;
c)かつ、前記の少なくとも1つのアミノ酸残基変化が:
i.野生型BoNT/A L鎖(配列番号1)のアミノ酸残基Y251に対応する改変L鎖プロテアーゼアミノ酸配列上の位置にグルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基;
を含む、先行する態様のいずれか一項に記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ。
[態様7]
いずれかの先行する態様に記載される改変BoNT/A L鎖プロテアーゼをコードする核酸配列を含む、又はからなる核酸構築物。
[態様8]
a)態様1から6のいずれかに記載の改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は態様7に記載の核酸構築物;及び
b)前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は前記核酸構築物を、標的細胞に、好ましくは、非ニューロン標的細胞に送達する手段;
を含む、送達ビヒクル。
[態様9]
前記改変BoNT/A L鎖プロテアーゼを標的細胞に送達する手段b)が:
i)送達ビヒクルを標的細胞と結合する標的化部分;及び
ii)改変BoNT/A L鎖プロテアーゼ又は核酸構築物を、標的細胞に、好ましくは、非ニューロン標的細胞に転位置する転位置ペプチド;
を含む、態様8に記載の送達ビヒクル。
[態様10]
hSNAP-23を切断する方法であって、hSNAP-23を、態様1から6のいずれかに記載の(BoNT/A) L鎖プロテアーゼと、又は態様7に記載の核酸構築物と、又は態様8若しくは9に記載の送達ビヒクルと接触させることを含む、方法。
[態様11]
態様10に記載の方法において使用するための、態様1から6のいずれかに記載の(BoNT/A) L鎖プロテアーゼ又は態様7に記載の核酸構築物又は態様8若しくは9に記載の送達ビヒクル。
[態様12]
医薬として使用するための、態様1から6のいずれかに記載の(BoNT/A) L鎖プロテアーゼ又は態様7に記載の核酸構築物又は態様8若しくは9に記載の送達ビヒクル。
【符号の説明】
【0191】
[図1A]
hSNAP23 binding sites: hSNAP23結合部位
Point-mutations (in wt LC/A): 点突然変異(wt LC/A中)
Fold increase hSNAP23 cleavage (vs wild type LC/A): hSNAP23切断増大倍数(野生型LC/Aに対する)
% hSNAP23 cleavage (at 1 μM LC/A, 20 μM hSNAP23): hSNAP23切断百分率(1μM LC/A、20μM hSNAP23で)
kcat [1/min]: kcat[1/分]
% hSNAP25 cleavage (at 0.5 nM LC/A, 20 μM hSNAP25): hSNAP25切断百分率(0.5nM LC/A、20μM hSNAP25で)
none (wild type LC/A): なし(野生型LC/A)
[図1B]
hSNAP23 binding sites: hSNAP23結合部位
Point-mutations (in wt LC/A): 点突然変異(wt LC/A中)
Fold increase hSNAP23 cleavage (vs LC/A-E148Y): hSNAP23切断増大倍数(LC/A-E148Yに対する)
% hSNAP23 cleavage (% at 1 μM LC/A, 20 μM hSNAP23): hSNAP23切断百分率(1μM LC/A、20μM hSNAP23での百分率)
[**% at 10 nM LC/A]: [**10nM LC/Aでの百分率]
kcat [1/min]: kcat[1/分]
% hSNAP25 cleavage (at 0.5 nM LC/A, 20 μM hSNAP25): hSNAP25切断百分率(0.5nM LC/A、20μM hSNAP25で)
[図1C]
hSNAP23 binding sites: hSNAP23結合部位
Point-mutations (in wt LC/A): 点突然変異(wt LC/A中)
Fold change hSNAP23 cleavage (vs WT LC/A): hSNAP23切断変化倍数(WT LC/Aに対する)
% hSNAP23 cleavage (% at 1 μM LC/A, 20 μM hSNAP23): hSNAP23切断百分率(1μM LC/A、20μM hSNAP23での百分率)
[**% at 10 nM LC/A]: [**10nM LC/Aでの百分率]
% hSNAP25 cleavage v WT LC/A (at 0.5 nM LC/A, 20 μM hSNAP25): WT LC/Aに対するhSNAP25切断百分率(0.5nM LC/A、20μM hSNAP25で)
[図2]
cleavable peptide bond: 切断可能なペプチド結合
図1A
図1B
図1C
図2
【配列表】
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