(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】航空機の操縦を支援する方法及びシステム、並びに、同システムを装備した航空機
(51)【国際特許分類】
B64D 45/00 20060101AFI20240904BHJP
B64D 27/04 20060101ALI20240904BHJP
B64D 27/10 20060101ALI20240904BHJP
G09B 9/46 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
B64D45/00 A
B64D27/04
B64D27/10
G09B9/46
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039286
(22)【出願日】2023-03-14
【審査請求日】2023-03-14
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】593020038
【氏名又は名称】エアバス ヘリコプターズ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シアブリーニ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ゴージズ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】スコーリック,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント,エリック
(72)【発明者】
【氏名】キアリグリオーネ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】デュムール,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】アビンク,フィリップ
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528372(JP,A)
【文献】米国特許第05986580(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105416601(CN,A)
【文献】米国特許第10173787(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0044679(US,A1)
【文献】特表2009-501670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/04
B64D 27/10
B64D 31/00-31/18
B64D 43/00-45/08
G01C 23/00
G09B 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(1)の操縦を支援するための方法(20、30、40、50)であって、
前記航空機(1)の飛行フェーズ中、前記航空機(1)の少なくとも2つの各動作パラメータの少なくとも2つの現在値を測定する少なくとも2つのステップ(21、21’)を含み、
前記方法(20、30、40、50)は、前記少なくとも2つの動作パラメータの各々について、
この動作パラメータの現在値を表すデジタルデータのアイテム(11、11’)を生成するステップ(22、22’)と、
前記現在値、前記現在値の経時的変動の速度、及び前記現在値の経時的変動の速度の関数として補正された現在値からなる群より選択された指標が存在する現在の範囲を識別するステップ(24、24’)であって、前記現在の範囲は、少なくとも2つの分離した指標範囲から識別され、前記少なくとも2つの指標範囲の各範囲は、前記デジタルデータのアイテム(11、11’)の特定の表示構成に関連付けられ、2つの異なる範囲に関連付けられた2つの別個の構成は、互いに異なり、前記別個の構成は、各々、前記少なくとも2つの動作パラメータの各々について同一であ
り、各特定の表示構成は、少なくとも前記デジタルデータのアイテム(11、11’)の色、前記デジタルデータのアイテム(11、11’)を表示する表示ゾーン(10、10’)の背景色、前記表示ゾーン(10、10’)の輪郭(12、12’)の色、の組み合わせに対応するステップ(24、24’)と、
前記現在の範囲に対応する前記特定の表示構成に従って、少なくとも1ページの記号体系上に、前記デジタルデータのアイテム(11、11’)を表示するステップ(25~29、25’~29’)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの指標範囲は、第1の指標範囲と、第2の指標範囲と、第3の指標範囲と、第4の指標範囲と、を含み、
前記第1、第2、第3及び第4の範囲は、互いに分離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デジタルデータの各アイテム(11、11’)を表示すること(25~29、25’~29’)は、少なくとも1ページの記号体系内の列において達成され、
デジタルデータの少なくとも1つのアイテム(11)は、他のデジタルデータのアイテム(11’)の上方に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1ページの記号体系は、前記航空機(1)の飛行中ナビゲーションに関連する「FND」ページと称されるページと、前記航空機(1)の動作に関連する「VMD」ページと称されるページと、からなる群より選択された単一のページを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1ページの記号体系は、前記航空機(1)の飛行中ナビゲーションに関連する「FND」ページと称されるページと、前記航空機(1)の動作に関連する「VMD」ページと称されるページと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記航空機(1)は、少なくとも2つのエンジン(13、14)を備え、
前記方法(40)は、前記少なくとも2つのエンジン(13、14)のすべてが動作可能な「AEO」モードと称される少なくとも1つのモードと、前記少なくとも2つのエンジン(13、14)の一方が故障した「OEI」モードと称されるモードと、前記少なくとも2つのエンジン(13、14)の一方の故障がパイロットのトレーニング目的でシミュレーションされる「OEIトレーニング」モードと称されるモードと、から前記航空機(1)の動作モードを識別すること(41)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方は、前記航空機(1)の前記動作モードの識別(41)に応じて、前記少なくとも2つのパラメータの少なくとも一方について可変である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記「AEO」モードにおいて、前記少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方の範囲は、第1の限界値対によって定義され、
前記「OEI」モードにおいて、前記少なくとも一方の範囲は、第2の限界値対によって定義され、
前記「OEIトレーニング」モードにおいて、前記少なくとも一方の範囲は、第3の限界値対によって定義され、
前記第1、第2、及び第3の限界値対の少なくとも1つは、前記第1、第2、及び第3の限界値対の少なくとも1つの他の限界値対とは別個のものである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方の範囲は、前記少なくとも2つのパラメータの少なくとも一方について予め決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記航空機(1)の前記少なくとも2つの動作パラメータは、前記航空機(1)のエンジン(13、14)のガス発生器(N1)の回転速度、前記エンジン(13、14)の前記動作に関連する第1のトルク(TQ1)、メインギアボックスの前記動作に関連する第2のトルク(TQ2)、前記エンジン(13、14)の前記ガスの温度(T4)、及び、前記航空機に装備されたロータの回転速度(NR)、からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法(50)は、空気との関連で前記航空機(1)の移動速度を測定すること(51)を含み、
前記少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方の範囲は、前記移動速度の前記測定に応じて可変である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法(20)は、前記少なくとも2つの指標範囲のうちの前記現在の範囲が変化するときにトリガされるアラート(33、33’)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
航空機(1)の操縦を支援するシステム(2)であって、
前記システム(2)は、前記航空機(1)の少なくとも2つの各動作パラメータの少なくとも2つの現在値を測定する少なくとも2つのセンサ(3、4)を備え、
前記少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータの1つのアイテム(11、11’)を生成するコンピュータ(5)と、
前記少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して、
指標が存在する現在の範囲を識別するように構成された識別ユニット(7)であって、前記指標は、現在値、前記現在値の経時的変動の速度、前記現在値の前記経時的変動の速度の関数として補正された現在値からなる群より選択され、前記現在の範囲は、少なくとも2つの分離した指標範囲から識別され、前記少なくとも2つの指標範囲の各範囲は、前記デジタルデータのアイテム(11、11’)の特定の表示構成に関連付けられ、2つの異なる範囲に関連付けられた2つの別個の構成は、互いに異なり、前記別個の構成は、各々、前記少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して同一であ
り、各特定の表示構成は、少なくとも前記デジタルデータのアイテム(11、11’)の色、前記デジタルデータのアイテム(11、11’)を表示する表示ゾーン(10、10’)の背景色、前記表示ゾーン(10、10’)の輪郭(12、12’)の色、の組み合わせに対応する、識別ユニット(7)と、
前記特定の表示構成に従って、少なくとも1ページの記号体系上に前記デジタルデータのアイテム(11、11’)を表示するディスプレイ(6)と、
を備える、システム。
【請求項14】
前記システム(2)は、空気との関連で前記航空機(1)の移動速度の測定値を生成する速度センサ(9)を備え、
前記少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方は、前記移動速度の前記測定値に応じて可変である、請求項
13に記載の操縦支援システム。
【請求項15】
請求項
13に記載の前記操縦支援システム(2)を備える、航空機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2022年4月15日に出願されたFR2203512号の利益を主張し、その開示全体は参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、航空機の操縦を支援する方法に関する。
【0003】
[0003] 一般に、回転翼航空機を操縦するためには、計器盤に配置された多数の計器類をモニタリングする必要がある。これらの計器は、特に、回転翼航空機の外部飛行条件と或る動作パラメータとについて、パイロットに知らせるために使用される。このような動作パラメータは、特に、エンジンアセンブリ、及び/又は、以下、便宜上「MGB」と称するメインギアボックスに関連し、これらの部材を循環する流体の温度及び/又は圧力に関連してもよい。
【0004】
[0004] さらに、物理的理由により、パイロットが飛行中に常に考慮しなければならない多くの制限、特に熱的制限がある。
【0005】
[0005] さらに、一部の回転翼航空機は、特に、1つ以上のフリータービンターボシャフトエンジンを装備する。この場合、動力は、圧縮機アセンブリから機械的に分離されたタービンの「低圧」段と称される段と、タービンの「高圧」段と称される段とから得られる。ターボシャフトエンジンは30,000~50,000rpmの間で回転するため、メインギアボックスは、回転翼航空機の1つ(又は複数)のロータを回転させるエンジンアセンブリによって出力される回転速度を、例えば300~400rpmオーダーの回転速度NRに低下させる。
【0006】
[0006] さらに、エンジン製造業者は、計算又は試験を使用して、特に高度及び温度に応じて、許容動作定格ごとにターボシャフトエンジンの利用可能な動力の曲線を確立している。
【0007】
[0007] そして、このような曲線は、例えば、回転翼航空機のいくつかの動作パラメータ、すなわち、エンジンの回転速度、エンジン及びMGBの動作に関連したトルク(TQ)、及びエンジンガスの温度(T4)により、モニタリング可能な限度を定義している。
【0008】
[0008] これらのパラメータの値は、様々な指針面(dial)に表示されてもよい。
【背景技術】
【0009】
[0009] 文献FR2749545には、ターボシャフトエンジンのモニタリングされたパラメータのうちのどれがその限界に最も近いかを識別する飛行制御インジケータが記載されている。観察される必要のある制限に関する情報は、単一のディスプレイ上に一緒にグループ化され、概要の生成と、この概要の結果のみの表示を可能にすることで、計器盤上のスペースを削減しつつ、パイロットのタスクを簡易化するようにする。これにより、ターボシャフトエンジンのモニタリングされたパラメータから「制限パラメータ」を選び出す。この現在値はパラメータの限界値に最も近いものである。この理由のため、このようなインジケータは、以下「第1の制限計器」又は「FLI」とも称される。
【0010】
[0010] さらに、このFLIの変形例では、同等のパワーとして、すなわち、例えばMTOPの+10%等のパワーマージンとして、又は、入射風に関して回転翼航空機のロータのブレードの位置を示すピッチのマージンとして、制限パラメータの値を表示させる。
【0011】
[0011] さらに、文献FR2756256号及びFR2973340号、並びに文献US2013/054053号及びCN105416601号に記載されているように、パワーマージンインジケータを実装するためにこれらの異なるパラメータを使用することは既知であり、このようなマージンは、場合によってはメインロータのコレクティブピッチ値として表現され、1名(以上)のパイロットに利用可能なパワーマージンを示唆するサマリを提供し、一般には計器盤に散乱するいくつかの従来のインジケータにとって代わる。
【0012】
[0012] さらに、一部のヘリコプターでは、エンジン及びMGBの異なる動作パラメータの現在値が専用の表示デバイスに持続的に表示されてもよく、この場合、パイロットは、これらの異なるパラメータの値がどのような値であるかを見ることができ、場合によっては、これらの値のうちの1つが限界に近付いているかどうかを見ることができる。
【0013】
[0013] しかしながら、航空機がこの専用の表示デバイスを備えていない場合、パイロットはどのパラメータがその限界に近付いているかを知る術がない。限界を超えたという事実は、この限界に達した後にのみ示すことができる。
【0014】
[0014] さらに、第2の画面(screen)の専用ページ上にエンジン及び/又はMGBの動作パラメータの現在値を持続的に表示することは、第2の画面がミッションに必要な情報の表示にもはや使用できなくなるため、不利な場合がある。
【0015】
[0015] 他の既知の文献はFR2950324号であり、これは、第1制限インジケータの故障の場合に航空機の操縦を支援するための方法及びデバイスについて記載している。
【0016】
[0016] このような文献は、第1の制限インジケータがFLIスケールに対応する情報をもはや表示できなくなるときに、モニタリングされた各パラメータ(Ng、T4、Tq)を所定の閾値未満に維持することを開示している。
【0017】
[0017] 文献FR2871520号は、ターボシャフトエンジンのモニタリングされているパラメータの変化を予測するのに使用可能な飛行制御インジケータを開示している。
【0018】
[0018] 文献FR3051772号は、航空機の操縦を支援する方法及びデバイスを記載している。これは、コレクティブピッチの増加の際に、エンジン制御に制限を超過させることを提案している。
【0019】
[0019] 文献FR2772718号は、ターボシャフトエンジンのモニタリングされたパラメータのうちのどれがその限界に最も近いかを識別する第1の制限計器を記載している。したがって、観察の必要のある制限に関連する情報は、単一のディスプレイ上でともにグループ化される。本発明はまた、航空機の操縦を支援する方法であって、航空機の飛行フェーズ中に、航空機の少なくとも2つの各動作パラメータの少なくとも2つの現在値を測定する少なくとも2つのステップを含む方法についても記載する。
【0020】
[0020] 文献FR2888638号は、情報源と、情報源から受信した情報を処理する手段と、処理手段からのデータを少なくとも1つの表示画面上に表示するのに好適な表示手段と、を備える航空機の飛行制御インジケータに関する。
【0021】
[0021] さらに、情報源は、航空機に関連するパラメータの値に加え、ターボプロップエンジンのプロペラ及びタービンに関連するパラメータの値を判定し、処理手段は、これらの値を使用して、ターボプロップエンジンの現在のパワーと標準大気中の海水水準において、エアブリードを使用せずに得られた最大パワーとの間の比を考慮したパワーパラメータを計算し、表示手段は、表示画面上のパワーパラメータを示す少なくとも1つの特徴的兆候を示す。
【0022】
[0022] 表示手段(5)は、表示画面(7)上に、その最大値(「10」、すなわち100%)が最大パワーPWRmaxを表すパーセンテージマーキング(0%~100%)とともに、指針面(12)を示す。
【0023】
[0023] 文献US10173787号は、ロータ(12)を備えたツインエンジン回転翼航空機(10)用の他の第1の制限計器を記載している。
【0024】
[0024] このような第1の制限計器は、パイロットに通信される情報を動的に再定義するように設計されたディスプレイ(40)を備える。
【0025】
[0025] ツインエンジン回転翼航空機(10)は、パワータービンの速度(Np)、メインロータの速度(Nr)、エンジントルク(Qe)、ガスタービンの測定温度(MGT)、ガスタービンの速度(Ng)、及びマストトルク(Qm)等のパラメータを測定するための複数のセンサを備える。
【0026】
[0026] パワーゲージ(42)は、MGT、Ng、Qe、及びQmのパラメータといくつかの動作限界との間の関係が単一の表示針を介して表示されるように、これらのパラメータの組み合わせ表示を提供するように構築及び配置される。
【0027】
[0027] さらに、バーグラフインジケータ(50)は、メインロータ(Nr)の回転速度の値(72)を表示してもよく、この値(72)は、飛行条件に応じて着色されてもよい。
【0028】
[0028] さらに、メインロータの速度のこの値は、例えば、97%(
図4Dに示される)と103%(
図4Aに示される)との間にある参照値のパーセンテージとして定義される。
【0029】
[0029] 文献US2001/044679号は、他の第1の制限計器を記載しているが、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータを表示するものでない。
【発明の概要】
【0030】
[0030] したがって、本発明の目的は、航空機の操縦を支援するための代替の方法及びデバイスを提案することである。この操縦支援方法及びデバイスは、パイロットの作業負荷を制限し、パイロットが、エンジン及びMGBの動作パラメータのうちの1つの限界が超過してしまうリスクの原因をより容易に識別できるようにするソリューションを提供する。
【0031】
[0031] これにより、パイロットは、自身の操縦操作を計画することができるか、又は、実際にこの限界超過の防止に役立つ操縦アクションが実施できるため、飛行の安全性が向上する。
【0032】
[0032] したがって、本発明は、航空機の操縦を支援する方法に関し、方法は、航空機の飛行フェーズ中、航空機の少なくとも2つの各動作パラメータの少なくとも2つの現在値を測定する少なくとも2つのステップを含む。
【0033】
[0033] さらに、「航空機の少なくとも2つの各動作パラメータの少なくとも2つの現在値を測定する少なくとも2つのステップ」という表現は、各測定ステップで、航空機の動作パラメータの現在値を測定することを意味する。
【0034】
[0034] 本発明によると、このような方法は、少なくとも2つの動作パラメータの各々について、
この動作パラメータの現在値を表すデジタルデータのアイテムを生成するステップと、
現在値、現在値の経時的変動の速度、及び現在値の経時的変動の速度の関数として補正された現在値からなる群より選択された指標が存在する現在の範囲を識別するステップであって、現在の範囲は、少なくとも2つの分離した指標範囲から識別され、少なくとも2つの指標範囲の各範囲は、デジタルデータのアイテムの識別の表示構成に関連付けられ、2つの異なる範囲に関連付けられた2つの別個の構成は、互いに異なり、別個の構成は、各々、少なくとも2つの動作パラメータの各々について同一であるステップと、
現在の範囲に対応する特定の表示構成に従って、少なくとも1ページの記号体系上にデジタルデータのアイテムを表示するステップと、
を含む点で注目に値する。
【0035】
[0035] さらに、現在値の経時的変動の速度に対応する指標は、所定の期間中に測定されたパラメータのいくつかの現在値から判定されてもよい。
【0036】
[0036] さらに、「別個の構成は、各々、少なくとも2つの動作パラメータの各々について同一である」という表現は、デジタルデータの各アイテムが、表示構成の各々において同一の手法で表示されることを意味するものとして理解されなければならない。したがって、1つの動作パラメータに対応するデジタル値の表示構成は、他の動作パラメータに対応するデジタル値の表示構成と同一である。
【0037】
[0037] これは、デジタルデータの各アイテムの表示構成に応じて、パイロットが、問題の動作パラメータの指標が位置する範囲を迅速に識別できることを意味する。パイロットは、好適な手法で範囲を選択することにより、限界を超過する前に、航空機の動作パラメータが限界に接近しているか否かを判定することができる。このような限界は、第1の範囲及び第2の範囲とは別個の第3の範囲内にあってもよく、限界は、例えば、この第3の範囲の限界値である。したがって、これらの第1、第2、及び第3の指標範囲は、少なくとも2つの範囲に属する。
【0038】
[0038] 既に開示したように、航空機の動作パラメータは、エンジン及びMGBの動作に関連したパラメータであってもよい。方法は、以下の動作パラメータ、すなわち、航空機にエンジンのガス発生器(N1)の回転速度、エンジンの動作に関連する第1のトルク(TQ1)、メインギアボックスの動作に関連する第2のトルク(TQ2)、エンジンガスの温度(T4)、及び航空機に装備されたロータの回転速度(NR)、のうちの1つ以上に適用可能である。
【0039】
[0039] したがって、単に現在の表示構成を見ることで、デジタルデータのアイテムの位置する値の範囲をパイロットに知らせるので、パイロットの作業負荷が軽減される。
【0040】
[0040] したがって、デジタルデータのアイテムが第2の表示構成とは別個の第1の表示構成で表示される限り、パイロットは、指標のある現在の範囲では限界を超過するリスクがないことを知る。したがって、パイロットは、表示されたデジタルデータを読む必要がない。
【0041】
[0041] さらに、異なる動作パラメータの各々に対して同一の表示構成が使用されるという事実も、パイロット自身が、現在値と関連する限界との間のマージンを査定するために、表示された値を見たり、それを可能姓のある限界と比較する必要がないため、パイロットの作業負荷を軽減するのを助ける。
【0042】
[0042] デジタルデータの各アイテムに対して表示された所与のページの記号体系の表示ゾーンは、例えば、このデジタルデータのアイテムを含む矩形形状に対応してもよい。有利には、各表示ゾーンの形状及びサイズは、デジタルデータの各アイテムと同一であってもよい。
【0043】
[0043] さらに、第1の指標範囲は、各パラメータに対する限界を超えるリスクのない範囲に対応してもよい。
【0044】
[0044] 第1の範囲に連続する第2の指標範囲が、各パラメータに対する限界により近い範囲に対応してもよい。したがって、限界を超えるリスクがより大きくなり、デジタルデータのアイテムの表示構成への変化により、限界が近付いていることをパイロットに知らせる。
【0045】
[0045] 任意で、第3の指標範囲は、第2の範囲に連続する他の範囲に対応してもよい。したがって、この第3の範囲は、少なくとも2つの範囲の数が4つ以上であるとき、パラメータのうちの1つに対する限界により近くてもよい。
【0046】
[0046] あるいは、少なくとも2つの範囲の数は3つであり、第3の範囲は、パラメータのすべてに対する限界を含む範囲に対応してもよい。
【0047】
[0047] さらに、所与の構成に対して、関連付けられた範囲は特定のものであり各パラメータごとに異なる。
【0048】
[0048] 操縦支援方法はまた、以下の特徴のうちの1つ以上も含んでもよい。
【0049】
[0049] 有利には、少なくとも2つの指標範囲は、第1の指標範囲と、第2の指標範囲と、第3の指標範囲と、第4の指標範囲と、を含んでもよく、第1、第2、第3、及び第4の範囲は互いに分離される。
【0050】
[0050] 各パラメータに対して、第1の指標範囲は、問題のパラメータに対する限界から最も離れたリスクのレベルに対応してもよい。そして、第2及び第3の指標範囲は、この限界に接近するリスクの増加レベルに対応してもよく、第4の指標範囲は、この限界が超過していることに対応してもよい。
【0051】
[0051] 実際には、各特定の表示構成は、少なくともデジタルデータのアイテムの色、デジタルデータのアイテムを表示するゾーンの背景色、表示ゾーンの輪郭の色の組み合わせに対応してもよい。
【0052】
[0052] デジタルデータのアイテムの色、表示ゾーンの背景色、表示ゾーンの輪郭の色に対する可能な組み合わせの特定の実施形態(specific embodiment)によると、
第1の所定の表示構成では、デジタルデータのアイテムを白色、表示ゾーンの背景を黒色、表示ゾーンの輪郭を黒色で表示してもよく、
第2の所定の表示構成では、デジタルデータのアイテムを白色、表示ゾーンの背景を黒色、表示ゾーンの輪郭を白色で表示してもよく、
第3の所定の表示構成では、デジタルデータのアイテムを黒色、表示ゾーンの背景を琥珀色、表示ゾーンの輪郭を琥珀色で表示してもよく、
第4の所定の表示構成では、デジタルデータのアイテムを黒色、表示ゾーンの背景を琥珀色、表示ゾーンの輪郭を白色で表示してもよい。
【0053】
[0053] 任意に、これら4つの所定の表示構成に加えて、第5の所定の表示構成では、デジタルデータのアイテムを白色、表示ゾーンの背景を赤色、表示ゾーンの輪郭を赤色で表示してもよい。
【0054】
[0054] さらに、デジタルデータの各アイテムを表示することは、少なくとも1ページの記号体系内の列において達成されてもよく、デジタルデータの少なくとも1つのアイテムは、他のデジタルデータのアイテムの上方に配置される。
【0055】
[0055] 結果として、デジタルデータの各アイテムに対応する表示ゾーンは、重畳され、列を形成する矩形セルに対応してもよい。したがって、2つの隣接する表示ゾーンの輪郭は、互いに融合してもよく、又は互いに接触してもよい。
【0056】
[0056] 本発明の第1の実施形態によると、少なくとも1ページの記号体系は、航空機の飛行中ナビゲーションに関連する「FND」又は「飛行ナビゲーション表示」ページと称されるページと、航空機の動作に関連する「VMD」又は「車両管理ディスプレイ」ページと称されるページとからなる群より選択された単一のページを含んでもよい。
【0057】
[0057] 換言すると、デジタルデータの各アイテムは、画面又はヘルメットバイザ等のディスプレイにおいて単一のページの記号体系上に表示されてもよい。そして、好ましくは、記号体系のページは、FNDページであってもよい。このようなFNDページは、特に、航空機のナビゲーションに有用な任意の情報を提供する、機首方位、高度、追従コース等に関連する情報のアイテムを含んでもよい。
【0058】
[0058] あるいは、記号体系のページはVMDページであってもよい。このようなVMDページは、特に、航空機の正しい動作に有用な任意の情報を提供する、圧力、温度、燃料レベル、電荷等に関連する情報のアイテムを含んでもよい。
【0059】
[0059] 本発明の第2の実施形態によると、少なくとも1ページの記号体系は、航空機の飛行中ナビゲーションに関連する「FND」ページと称されるページと、航空機の動作に関連する「VMD」ページと称されるページと、を含んでもよい。
【0060】
[0060] 換言すると、デジタルデータの各アイテムは、FNDページ及びVMDページ等、数ページの記号体系上に表示されてもよい。そしてこれらのページは、1つ以上のディスプレイ上に同時に、又は1つずつ交互に表示されてもよい。
【0061】
[0061] さらに、他の例によると、航空機は少なくとも2つのエンジンを備えることができ、方法は、少なくとも2つのエンジンのすべてが動作可能な「AEO」モードと便宜上称されるモードと、少なくとも2つのエンジンの一方が故障した「OEI」モードと便宜上称されるモードと、少なくとも2つのエンジンの一方の故障がパイロットのトレーニングの目的でシミュレーションされる「OEIトレーニング」モードと便宜上称されるモードと、から航空機の動作モードを識別することを含んでもよい。
【0062】
[0062] 換言すると、方法は、航空機の動作モードを識別するステップを含んでもよい。この動作モードの識別は、デジタルデータの各アイテムの表示を修正するような手法で実施されてもよい。航空機の動作モードを識別するこのようなステップは、航空機の起動時又は実際の飛行中に、例えばパイロットの要求により、又は実際に自動的に、実施されてもよい。
【0063】
[0063] 有利には、航空機の動作モードの識別に応じて、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方が可変であってもよい。
【0064】
[0064] 換言すると、指標範囲の一方の1つ又は複数の限界値は、パラメータのうちの少なくとも1つに対して、航空機の動作モードに応じて変化してもよい。
【0065】
[0065] したがって、AEOモードにおいて、指標範囲の各限界値が、OEIモード又はOEIトレーニングモードに対応する指標範囲の各限界値よりも小さくてもよく、又は、大きくてもよい。
【0066】
[0066] 実際には、AEOモードにおいて、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方の範囲は第1の限界値対によって定義されてもよく、OEIモードにおいて、この指標範囲は第2の限界値対によって定義されてもよく、OEIトレーニングモードにおいて、この指標範囲は第3の限界値対によって定義されてもよく、第1、第2、及び第3の限界値対の少なくとも1つは、第1、第2、及び第3の限界値対の少なくとも1つの他の限界値対とは別個のものである。
【0067】
[0067] 例えば、第1の限界値対の下限値又は上限値の一方は、第2の限界値対の下限値又は上限値よりも小さくてもよく、又は、大きくてもよい。第2の限界値対のこの下限値又は上限値は、第3の限界値対の下限値又は上限値に等しくてもよい。
【0068】
[0068] 他の例によると、第1の限界値対の下限値又は上限値の一方は、例えば、第2の限界値対の下限値又は上限値に等しくてもよい。第2の限界値対のこの下限値又は上限値は、第3の限界値対の下限値又は上限値よりも小さくてもよく、又は大きくてもよい。
【0069】
[0069] さらに他の例によると、第1の限界値対の下限値又は上限値の一方は、例えば、第2の限界値対の下限値又は上限値とは別個であってもよく、第2の限界値対の下限値又は上限値自体が、第3の限界値対の下限値又は上限値と別個である。第1の限界値対のこの下限値又は上限値もまた、第3の限界値対の下限値又は上限値と別個である。
【0070】
[0070] 特有の実施形態(particular embodiment)によると、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方の範囲は、少なくとも2つのパラメータの少なくとも一方について予め決定されてもよい。
【0071】
[0071] 換言すると、1つ以上の指標範囲は、固定されてもよく、試験、試行、又はシミュレーションによって判定されてもよく、及び/又は、航空機が使用される前に計算されてもよい。したがって、この指標範囲又はこれらの指標範囲は、航空機使用時の飛行中に使用するため、メモリに記憶されてもよい。このようなメモリは、航空機に内蔵されることが有利である。
【0072】
[0072] さらに、航空機の少なくとも2つの動作パラメータは、航空機のエンジンのガス発生器(N1)の回転速度、エンジンの動作に関連する第1のトルク(TQ1)、及びメインギアボックスの動作に関連する第2のトルク(TQ2)、エンジンガスの温度(T4)、及び航空機に装備されたロータの回転速度(NR)からなる群より選択されてもよい。
【0073】
[0073] したがって、航空機のこのような動作パラメータにより、航空機の操縦に最も重要且つ必要な構成要素をモニタリングできるようにする。
【0074】
[0074] 1つの有利な例によると、方法は、空気との関連で航空機の移動速度を測定することを含んでもよく、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方の範囲は、少なくとも2つのパラメータの少なくとも一方に対する移動速度の測定値に応じて可変である。
【0075】
[0075] 例えば、移動速度の測定値が所定の閾値未満である場合、指標範囲は、第1の限界値対によって定義されてもよく、移動速度の測定値がこの閾値以上である場合、この指標範囲は、第2の限界値対によって定義されてもよい。したがって、第1の対の2つの限界値の少なくとも一方は、第2の対の限界値と異なってもよい。第1の対の2つの限界値は、任意で、第2の対の2つの限界値と異なってもよい。
【0076】
[0076] 有利には、方法は、少なくとも2つの指標範囲のうちの現在の範囲が変化するときにトリガされるアラートを含んでもよい。
【0077】
[0077] このようなアラートは、聴覚、視覚、又は振動信号を生成するアラータ(alerter)によって生成されてもよい。例えば、ライト又はダイオードを点灯又は点滅させて、現在の範囲が変化したことをパイロットに警告してもよい。デジタルデータを表示するためのディスプレイには、手書きのメッセージが表示されてもよい。
【0078】
[0078] サイレン又は任意の聴覚信号が、ブザー又は拡声器(loudspeaker)によって発出されてもよい。
【0079】
[0079] 本発明の目的はまた、航空機の操縦を支援するためのシステムであって、航空機の少なくとも2つの各動作パラメータの少なくとも2つの現在値を測定する少なくとも2つのセンサを備えたシステムである。
【0080】
[0080] 本発明によると、このシステムは、
少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータの1つのアイテムを生成するコンピュータと、
少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して、現在値が存在する現在の範囲を識別するように構成された識別ユニットであって、指標は、現在値、現在値の経時的変動の速度、現在値の経時的変動の速度の関数として補正された現在値からなる群より選択され、現在の範囲は、少なくとも2つの分離した指標範囲から識別され、少なくとも2つの指標範囲の各範囲は、デジタルデータのアイテムの特定の表示構成に関連付けられ、2つの異なる範囲に関連付けられた2つの別個の構成は、互いに異なり、別個の構成は、各々、少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して同一である、識別ユニットと、
特定の表示構成に従って、少なくとも1ページの記号体系上にデジタルデータのアイテムを表示するディスプレイと、
を備える点で注目に値する。
【0081】
[0081] 換言すると、このようなコンピュータを使用して、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータのアイテムを計算又は提供することができる。このようなコンピュータは、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリ、少なくとも1つの集積回路、少なくとも1つのプログラマブルシステム、又は少なくとも1つの論理回路を備えてもよく、これらの例は「コンピュータ」という用語に与えられる範囲を限定するものではない。「プロセッサ」という用語は、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、デジタル信号処理(DSP)、マイクロコントローラ等を等しく指してもよい。
【0082】
[0082] さらに、このようなコンピュータはまた、有線又は無線手段によっていくつかのセンサに接続されてもよい。これらのセンサを使用して、航空機の少なくとも2つの動作パラメータの現在値を測定することができる。
【0083】
[0083] したがって、このようなセンサは、航空機に装備されるエンジンのガス発生器の回転速度を感知するセンサ、エンジン及び/又はメインギアボックスの動作に関連するトルクを感知するセンサ、エンジンガスの温度を感知するセンサからなる群より選択されてもよい。
【0084】
[0084] したがって、コンピュータは、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータのアイテムを生成してもよく、このデジタルデータのアイテムは、現在値の形であってもよく、又は、例えば現在値を公称参照値(nominal reference value)のパーセンテージを表す情報に変換することにより、他の値の形であってもよい。
【0085】
[0085] ディスプレイは、コンピュータに接続され、有線又は無線手段によって各パラメータに対応するデジタルデータのアイテムを受信する。したがって、ディスプレイを使用して、少なくとも1ページの記号体系上にこのデジタルデータのアイテムを表示することができる。このようなディスプレイには、コックピット内、例えば計器盤、もしくはヘルメットバイザ又は眼鏡レンズ等の「ヘッドアップ」ディスプレイと称される表示デバイス上に配された画面が含まれてもよい。
【0086】
[0086] 識別ユニットは、異なるデジタルデータのアイテムを受信した後、指標を形成するこれらのデジタルデータのアイテム又は又はそれらの変動速度が存在する現在の範囲を識別するのに使用される。
【0087】
[0087] このような識別ユニットは、上述したコンピュータとは別体であってもよく、又はその一部であってもよく、ディスプレイに一体化されていてもよい。この識別ユニットは、例えば、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリ、少なくとも1つの集積回路、少なくとも1つのプログラマブルシステム、少なくとも1つの論理回路を備えてもよく、これらの例は、「識別ユニット」という表現に与えられる範囲を限定するものではない。「プロセッサ」という用語は、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、デジタル信号処理(DSP)、マイクロコントローラ等を等しく指してもよい。
【0088】
[0088] 次いで、現在の指標範囲の識別に対応する情報は、有線又は無線手段によってディスプレイに送信されてもよい。次いで、ディスプレイは、現在の範囲の識別に応じて、デジタルデータの各アイテムの表示をリアルタイムで適合させてもよい。
【0089】
[0089] このようなディスプレイは、任意で、上述のコンピュータ及び識別ユニットとは別体の、又はそれらの一部である表示コンフィギュレータを備えてもよい。この表示コンフィギュレータは、例えば、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリ、少なくとも1つの集積回路、少なくとも1つのプログラマブルシステム、少なくとも1つの論理回路を備えてもよく、これらの例は、「表示コンフィギュレータ」という表現に与えられる範囲を限定するものではない。「プロセッサ」という用語は、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、デジタル信号処理(DSP)、マイクロコントローラ等を等しく指してもよい。
【0090】
[0090] 実際には、このようなシステムは、空気との関連で航空機の移動速度の測定値を生成する速度センサを備えてもよく、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方は、少なくとも2つのパラメータの少なくとも一方に対する移動速度の測定値に応じて可変である。
【0091】
[0091] 換言すると、移動速度の測定値は、指標範囲の少なくとも1つを変更するために、有線又は無線手段によって識別ユニットに送信される。
【0092】
[0092] さらに、本発明はまた、前述のような操縦支援システムを備える点で注目に値する航空機にも関する。
【0093】
[0093] したがって、このような航空機は、パイロットの作業負荷を軽減することができ、安全性のレベルを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
[0094] 本発明及びその利点は、添付の図を参照して、例示として与えられる実施形態の以下の説明の文脈において、より詳細に明らかになる。
【0095】
【
図1】本発明に係る操縦支援システムを装備した航空機の図である。
【
図3】本発明に係る操縦支援方法の第1の例を示す論理図である。
【
図4】本発明に係る操縦支援方法の第2の例を示す論理図である。
【
図5】本発明に係る操縦支援方法の第3の例を示す論理図である。
【
図6】本発明に係る操縦支援方法の第4の例を示す論理図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
[0095] 複数の図に存在する要素には、各図において同一の参照符号が付与されている。
【0097】
[0096] 既に述べたように、本発明は、航空機の操縦を支援するシステム、関連する航空機、及び操縦支援方法に関する。
【0098】
[0097]
図1に示されるように、このような航空機1は、少なくとも1つのエンジン13、14と、エンジン13、14によって生成されたエンジントルクを、少なくとも航空機1の揚力に寄与するロータ15に伝達するためのメインギアボックス又はMGB16と、を備える。さらに、航空機1は、少なくともミッション中のパイロットの作業負荷を軽減することを目的とした操縦支援システム2も備える。
【0099】
[0098] このシステム2は、航空機1の少なくとも2つの動作パラメータの現在値を測定する少なくとも2つのセンサ3、4を備える。例えば、これらの少なくとも2つのセンサ3、4は、エンジン13、14、及び/又は、MGB16の動作に関連するトルクを感知するセンサから選択されてもよく、1つ又は複数のエンジン13、14からのガスの温度を感知するセンサ及びロータ15の回転速度を感知するセンサであってもよい。
【0100】
[0099] システム2はまた、少なくとも2つの動作パラメータの各々に対して、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータの1つのアイテムを生成するコンピュータ5も備える。
【0101】
[0100] コンピュータ5は、3つの動作パラメータをモニタリングするために、例えば、有線又は無線手段によって3つのセンサ3、4に接続されてもよい。当然のことながら、航空機1の3つを超える数の動作パラメータをモニタリングするために、3つを超える数のセンサ3、4が使用されてもよい。
【0102】
[0101] この例によると、コンピュータ5は、この場合、動作パラメータの3つの現在値を表すデジタルデータの3つのアイテムを生成してもよい。このようなコンピュータ5は、特に、現在値の少なくとも1つを、公称参照値のパーセンテージを表す情報に変換してもよい。
【0103】
[0102] そしてシステム2は、少なくとも1ページの記号体系上にデジタルデータの各アイテムを表示するディスプレイ6を備える。このようなディスプレイ6は、
図2にさらに詳細に示されており、例えば、3つの動作パラメータの現在値を表すデジタルデータの3つのアイテム11、11’、11’’を有する。
【0104】
[0103] ディスプレイ6は、コンピュータ5に接続され、有線又は無線手段によって、3つのパラメータに対応するデジタルデータの3つのアイテム11、11’、11’’を受信してもよい。したがって、ディスプレイ6を使用して、これらデジタルデータの3つのアイテム11、11’、11’’を、少なくとも1ページの記号体系上に表示することができる。
【0105】
[0104] このようなディスプレイ6には、コックピット内、例えば計器盤、もしくはヘルメットバイザ又は眼鏡レンズ等の「ヘッドアップ」ディスプレイと称される表示デバイス上に配された画面が含まれてもよい。
【0106】
[0105] さらに、システム2は、指標が存在する現在の範囲を識別するための識別ユニット7も備える。このような指標は、現在値によって直接、又はこの現在値の経時的変動の速度のいずれかによって形成されてもよく、このような変動の速度は、例えば、所定の期間に亘って測定されたいくつかの現在値から判定される。
【0107】
[0106] 次いで、現在の範囲は、少なくとも2つの互いに分離した指標範囲であって、任意に連続していてもよい少なくとも2つの指標範囲から識別される。
【0108】
[0107] 2つの指標範囲が連続するとき、それらは、第1の範囲から除外され、もう一方の範囲に含まれる同一の限界値を有する。
【0109】
[0108] 識別ユニット7は、コンピュータ5の一部であってもよく、又は別体であってもよい。したがって、識別ユニット7は、有線又は無線手段によってコンピュータ5に接続されてもよい。
【0110】
[0109] 例えば、第1の指標範囲は、閾値未満のすべての値によって形成されてもよく、第2の指標範囲は、この同一の閾値以上のすべての値によって形成されてもよい。
【0111】
[0110] さらに、これらの少なくとも2つの指標範囲は、有利には、航空機1のミッションに先立って、試験、試行、シミュレーション、又は計算によって予め決定される。次いで、これらの少なくとも2つの指標範囲は、例えば、航空機1に内蔵されてもよいメモリに記憶される。これらの少なくとも2つの指標範囲はまた、場合によっては、例えば、航空機1が移動している周辺環境に関連する物理化学的パラメータの測定値に応じて、飛行中に計算されてもよい。
【0112】
[0111] 図示のように、ディスプレイ6はまた、デジタルデータの各アイテム11、11’、11’’の表示を修正するために使用可能な表示コンフィギュレータ8を備えてもよい。したがって、表示コンフィギュレータ8は、有線又は無線の手段によって識別ユニット7に接続されてもよい。
【0113】
[0112] あるいは、表示コンフィギュレータ8は、コンピュータ5及び識別ユニット7の一部であってもよく、又はそれらとは別体であってもよい。したがって、表示コンフィギュレータ8は、有線又は無線手段によって、識別ユニット7及びコンピュータ5に接続されてもよい。
【0114】
[0113] したがって、このような表示コンフィギュレータ8は、少なくとも2つの指標範囲に各々対応する少なくとも2つの表示構成で、デジタルデータのアイテム11、11’、11’’を表示してもよい。したがって、各表示構成は、少なくともデジタルデータのアイテム11、11’、11’’の色、デジタルデータのアイテム11、11’、11’’に対する表示ゾーン10、10’、10’’の背景色、及び表示ゾーン10、10、10’’の輪郭12、12’、12’’の色の組み合わせに対応してもよく、各組み合わせは、他の組み合わせとは異なる。
【0115】
[0114] したがって、このような少なくとも2つの表示構成は、現在の範囲が第1の範囲であるときの第1の所定の表示構成と、現在の範囲が第2の範囲であるときの第2の所定の表示構成と、を含む等、各所定の表示構成は、他の1つ又は複数の所定の表示構成とは異なる。
【0116】
[0115] 例えば、第1の表示構成において、デジタルデータのアイテム11、11’、11’’は、黒色の背景上の白色であってもよく、したがって表示ゾーン10、10’、10’’の背景と融合される黒色の輪郭12、12’、12’’に囲まれてもよい。
【0117】
[0116] 第2の表示構成において、デジタルデータのアイテム11、11’、11’’は、黒色の背景上の白色であってもよく、表示ゾーン10、10’、10’’の黒色の背景と対照的な白色の輪郭12、12’、12’’に囲まれてもよい。
【0118】
[0117] したがって、デジタルデータのアイテム11、11’、11’’のこの第2の表示構成は、現在の範囲が変化しており第2の範囲であることを非常に簡単な手法でパイロットに知らせる。
【0119】
[0118] 実際には、システム2は、空気との関連で航空機1の移動速度の測定値を生成する速度センサ9を備えてもよく、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方は、この速度センサ9から出た移動速度の測定値に応じて可変である。
【0120】
[0119] 例えば、このような可変の指標範囲の異なる限界値は、予め決定されており、少なくとも2つの行と少なくとも2つの列とを有する表又はチャートの形で、メモリに記憶されてもよい。チャートの各列は、所定の速度範囲に対応しており、各行は、速度範囲に関連付けられた所定の指標範囲の限界値を含む。
【0121】
[0120] 速度センサ9は、有線又は無線手段によって移動速度の測定値を識別ユニット7に送信する。この識別ユニット7は、この速度測定値に応じて、指標範囲の一方の1つ以上の限界値を変更してもよい。
【0122】
[0121] システム2はまた、少なくとも1つのアラートを生成するのに好適なアラータ17を備えてもよい。このようなアラートは、例えば、発光ダイオード又は同等物による光、又は画面上に表示されている1つ以上の文字を発出する視覚アラーム、拡声器を介した聴覚アラーム、及び/又は、例えば、航空機1のパイロットの保持又は装着した部材を振動させる振動ユニットによる触覚アラームの形であってもよい。
【0123】
[0122]
図3から
図6は、簡易化及び読みやすさの向上のため、2つの異なる動作パラメータのみがモニタリングされる方法の異なる例を示している。
【0124】
[0123]
図3に示されるように、本発明はまた、航空機1の操縦を支援するための方法20に関する。
【0125】
[0124] この方法20は、上述のように、少なくとも2つの別個の動作パラメータの現在値を測定する少なくとも2つのステップ21、21’を含む。これらの測定ステップ21及び21’は、パイロットが自身の操縦操作の安全性をモニタリングするのを助けるために、航空機1のミッション中である飛行中に実施される。
【0126】
[0125] したがって、方法20は、モニタリングされた動作パラメータの各々に対して、動作パラメータの現在値を表すデジタルデータのアイテム11、11’を生成すること22、22’を備える。したがって、各センサ3、4は、測定ステップ21及び21’を実施し、パラメータの現在値をコンピュータ5に送信して、デジタルデータのアイテム11、11’を生成する(22、22’)。
【0127】
[0126] 方法20は、次いで、識別ユニット7で現在の範囲を識別すること24、24’を含む。このような現在の範囲は、現在値、又は現在値の経時的変動の速度が存在する範囲であり、現在の範囲は少なくとも2つの指標範囲から識別される。
【0128】
[0127] したがって、現在の範囲が第1の範囲である限り、方法20は、第1の所定の表示構成に従って、少なくとも1ページの記号体系上にデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること25、25’を含む。
【0129】
[0128] しかしながら、現在の範囲が第2の範囲であると識別されるとき、方法20は、第2の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること26、26’を含む。
【0130】
[0129] さらに、方法20は、現在の範囲が第1の範囲から第2の範囲に変化するときにトリガされるアラート33、33’を含んでもよい。このようなアラート33、33’は、システム2のアラータ17によって、又は任意の他のアラータによって実装されてもよい。
【0131】
[0130] さらに、現在の範囲はまた、例えば、第1の指標範囲、第2の指標範囲、第3の指標範囲、及び第4の指標範囲を含む4つの指標範囲から識別されてもよく、これら第1、第2、第3、及び第4の範囲は互いに分離している。
【0132】
[0131] したがって、
図4に示されるように、方法30は、現在の範囲が第3の範囲であるとき、第3の所定の表示構成に従って、デジタルデータのアイテム11、11’を表示すること27、27’と、現在の範囲が第4の範囲であるとき、第4の所定の表示構成に従って、デジタルデータのアイテム11、11’を表示すること28、28’と、場合によっては、現在の範囲が第5の範囲であるとき、第5の所定の表示構成に従って、デジタルデータのアイテム11、11’を表示すること29、29’と、を含んでもよい。
【0133】
[0132] さらに、第1、第2、第3、第4、及び第5の所定の表示構成は互いに別個のものであり、少なくともデジタルデータのアイテム11、11’の色、表示ゾーン10、10’の背景色、及び表示ゾーン10、10’の輪郭12、12’の色の別個の組み合わせにも対応する。
【0134】
[0133] したがって、互いに別個の4つ又は5つの表示構成を使用することで、いくつかの別個の限界に対応するいくつかのアラートを定義するか、又は、1つのアラートと、現在の範囲の識別24、24’に応じて発行されるいくつかの事前アラートと、を定義することができる。
【0135】
[0134] 例えば、第3の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること27、27’は、限界超過の第1のレベルリスクに対応した第1の事前アラートに対応してもよい。第4の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること28、28’は、第1のレベルリスクよりも高い第2のレベルリスクに対応した第2の事前アラート、又は実際に、限界が超過したという事実に対応するアラートに対応してもよい。
【0136】
[0135] 実施時、第5の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること29、29’は、限界を超えたという事実に対応するアラートに対応してもよい。
【0137】
[0136] あるいは、第3の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること27、27’は、第1の限界に接近する指標に対応した事前アラートに対応してもよい。第4の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること28、28’は、例えば、第1の特定のエンジン速度に関する、第1の限界を超過することに対応した第1のアラートに対応してもよい。第5の所定の表示構成に従ってデジタルデータのアイテム11、11’を表示すること29、29’は、例えば、第2のエンジン速度に関する、第2の限界を超過することに対応した第2のアラートに対応してもよい。
【0138】
[0137] 第1及び第2のエンジン速度は、例えば、便宜上「MCP」又は最大連続パワーと称する速度と、便宜上「MTOP」又は最大発進パワーと称する速度と、に対応してもよい。したがって第1の限界は、MCPに関連してもよく、MTOPに関連する第2の限界よりも低くてよい。
【0139】
[0138]
図2に示されるように、デジタルデータの各アイテム11、11’のこれらの表示25、26、27、28、29、25’、26’、27’、28’、29’は、例えば、1ページ以上の記号体系上の列に示されており、少なくとも第1のデジタルデータのアイテム11は、第2のデジタルデータのアイテム11’の上方に配置される。
【0140】
[0139] この記号体系のページは、有利には、航空機1の飛行中ナビゲーションに関連する「FND」ページと称されるページ、及び/又は、航空機1の動作に関連する「VMD」ページと称されるページである。
【0141】
[0140] さらに、ディスプレイ6は、場合によっては第1の制限計器18の直近に、航空機1の飛行中のナビゲーションに関連する「FND」ページと称されるページ上に、デジタルデータの各アイテム11、11’を表示してもよい。
【0142】
[0141]
図5に示されるように、航空機1に少なくとも2つのエンジン13、14が備えられるとき、方法40は、少なくともエンジン13、14のすべてが動作可能である「AEO」モードと称されるモード、エンジン13、14の一方が故障した「OEI」モードと称されるモード、及び、パイロットのトレーニングの目的でエンジン13、14の一方の故障がシミュレーションされる「OEIトレーニング」モードと称されるモード、から航空機1の動作モードを識別すること41を含んでもよい。
【0143】
[0142] したがって、航空機1の動作モードのこの識別41に応じて、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方が修正されてもよく、又は実際にはすべての指標範囲が修正されてもよい。
【0144】
[0143] 航空機1の異なる動作モード、AEO、OEI、又はOEIトレーニングに対応する各指標範囲は、予め決定され、メモリに記憶されてもよい。したがって、指標が存在する現在の範囲を識別するステップ24、24’では、このメモリを使用し、識別された各動作モードに対して、現在の範囲の識別を可能にする少なくとも2つの指標範囲を選択してもよい。
【0145】
[0144] 例えば、異なる指標範囲が予め決定されてもよく、少なくとも2つの行及び少なくとも2つの列を有する表又はチャートの形でメモリに記憶されてもよい。チャートの各列は動作モードに対応し、各行は所定の指標範囲に対応する。
【0146】
[0145] 例えば、この場合、AEOモードにおいて、2つの指標範囲の少なくとも一方は、第1の限界値対によって定義されてもよく、OEIモードにおいて、この指標範囲は、第2の限界値対によって定義されてもよく、OEIトレーニングモードにおいて、この指標範囲は、第3の限界値対によって定義されてもよい。したがって、第1、第2、及び第3の限界値対の1つ以上は、第1、第2、及び第3の限界値対の少なくとも1つの他の限界値対とは別個のものである。
【0147】
[0146] さらに
図6に記載のように、方法50は、例えば、1つ以上のピトープローブによって実施される、空気に対する航空機1の移動速度の測定51を含んでもよい。
【0148】
[0147] この場合、航空機1の移動速度の測定値に応じて、少なくとも2つの指標範囲の少なくとも一方が修正されてもよく、又は実際には、指標範囲のすべてが修正されてもよい。
【0149】
[0148] 航空機1の移動速度に対応する各指標範囲は、予め決定され、メモリに記憶されてもよい。したがって、指標が存在する現在の範囲を識別するステップ24、24’では、このメモリを使用し、移動速度の各測定値に対して、現在の範囲の識別を可能にする少なくとも2つの指標範囲を選択してもよい。
【0150】
[0149] したがって上述の速度センサ9は、航空機1の移動速度のこの測定51を実行してもよい。
【0151】
[0150] 例えば、1ノットが時速1.151マイルに等しい際の40ノットの移動速度未満では、第1の指標範囲は0%~85%の間にあってもよく、一方40ノットを超える速度では、この第1の指標範囲は0%~82%の間にある。このパーセンテージは、エンジン13、14、及び/又は、メインギアボックス、すなわちMGB16の動作に関連したトルクの値にさらに対応してもよく、100%の指標に対応する公称参照値と比較して表現される。
【0152】
[0151] 当然のことながら、本発明は、その実施に関して多数の変形が可能である。以上にいくつかの実施形態について説明したが、可能なすべての実施形態を網羅的に識別することは考えられないことを容易に理解されたい。本発明の範囲を逸脱することなく、記載された手段のいずれかを同等の手段によって置き換えることを想定することは当然可能である。