(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
E02F9/22 K
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2023120258
(22)【出願日】2023-07-24
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏一
(72)【発明者】
【氏名】宮原 一宏
(72)【発明者】
【氏名】見掛 壮一郎
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-135607(JP,A)
【文献】特開2018-044366(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/00-11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧により作動するアタッチメントが装着されて所定の作業を行う作業用車両であって、
前記アタッチメントに作動油を供給する第1サービス回路および第2サービス回路と、
前記作動油を供給する回路を前記第1サービス回路と前記第2サービス回路とで切換を行う第1切換弁と、
前記アタッチメントの作動を制御するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブの作動を制御する比例ソレノイドバルブと、
前記比例ソレノイドバルブを介して前記コントロールバルブにパイロット油を供給するパイロット回路と、を備え、
前記パイロット回路は、前記パイロット油を通流させる油路を第1油路と第2油路とで切換を行う第2切換弁と、下流側で該第1油路と該第2油路とを合流させる合流部と、を有し、該第2油路に減圧弁が設けられて
おり、
前記第1切換弁の切換と前記第2切換弁の切換とを、一操作で同時に行う一つのスイッチを備えること
を特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記スイッチは、トリガスイッチであること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記比例ソレノイドバルブの作動を制御するスライドスイッチを備え、
前記スライドスイッチは、操作レバーのグリップ部においてスライド可能に設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記パイロット回路は、前記第2油路において前記減圧弁の下流側に逆止弁が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記減圧弁は、減圧量の調整が可能な調整部を有し、オペレータが着座するシートの下に設けられる機器室の内部で且つ該機器室の開閉扉の近傍位置に配置されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により作動する作業装置を備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両の例として、走行用のクローラもしくはタイヤが取付けられた下部体と、下部体の上に配設された上部体と、下部体もしくは上部体に取付けられて油圧(すなわち、所定圧力の作動油)により作動する作業装置を備える油圧ショベル、トラックローダ等が従来より知られている。
【0003】
上記の作業用車両においては、作業装置を構成するアタッチメントとして、複数種類の中から作業内容に適したものが選択されて装着される場合がある(特許文献1:特開2020-041266号公報参照)。そのため、作業用車両には、アタッチメントを作動させる作動油を供給するサービス回路が設けられている。当該アタッチメントには、例えば、ブレーカー等のように一系統のサービス回路に接続されて作動する構成(すなわち、一種類の作動を行うもの)や、チルトローテータバケット等のように二系統のサービス回路に接続されて作動する構成のもの(すなわち、二種類の作動を行うもの)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、作業用車両において二系統のサービス回路を設けようとした場合、アタッチメントの作動を制御するコントロールバルブや、当該コントロールバルブの作動を制御する比例ソレノイドバルブ等を、系統毎(サービス回路毎)にそれぞれ設ける構成が標準設計として考えられる。しかしながら、作業用車両においては、搭載機器の簡素化および車両のコンパクト化が恒常的な課題として存在し、特に、小型の作業用車両程その要求は顕著となる。
【0006】
そこで本発明者らは、特に、二系統のサービス回路を備える作業用車両において搭載機器の簡素化および車両のコンパクト化を図るべく鋭意研究を行った。しかし、その過程において新たな課題が明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先ず、本発明者らは、作業用車両において、比例ソレノイドバルブ、コントロールバルブをそれぞれ共通で一つ備え、且つ、コントロールバルブよりも下流側の回路に切換弁を備えることによって二系統のサービス回路を設ける構成を案出した。この構成によれば、比例ソレノイドバルブ、コントロールバルブ等を共通化できるため、搭載機器の簡素化および車両のコンパクト化を図ることができる。
【0008】
その一方で、上記の構成において新たな課題が明らかとなった。具体的に、二系統のサービス回路に接続されるアタッチメントは、切換弁によりサービス回路の切換が行われることによって二種類の作動を行うことが可能となる。しかし、いずれのサービス回路においても供給される作動油の油量は変わらないため、一方の作動が速過ぎる(あるいは、他方の作動が遅過ぎる)状態となり、作業性の悪化が生じることが明らかとなった。
【0009】
この課題に対しては、例えば、高度な制御コントローラを搭載して、切換が行われるサービス回路の系統(すなわち、アタッチメントの作動)に応じて比例ソレノイドバルブが最適な作動となるように制御することによって当該課題を解決する方法も考えられなくはない。しかしながら、そのような制御コントローラを搭載すれば、車両コストが高騰する要因となってしまう。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、搭載機器の簡素化、車両のコンパクト化、および車両コストの抑制を図りつつ、二系統のサービス回路に接続されて作動するアタッチメントの作業性を向上させることが可能な作業用車両を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0012】
一実施形態に係る作業用車両は、油圧により作動するアタッチメントが装着されて所定の作業を行う作業用車両であって、前記アタッチメントに作動油を供給する第1サービス回路および第2サービス回路と、前記作動油を供給する回路を前記第1サービス回路と前記第2サービス回路とで切換を行う第1切換弁と、前記アタッチメントの作動を制御するコントロールバルブと、前記コントロールバルブの作動を制御する比例ソレノイドバルブと、前記比例ソレノイドバルブを介して前記コントロールバルブにパイロット油を供給するパイロット回路と、を備え、前記パイロット回路は、前記パイロット油を通流させる油路を第1油路と第2油路とで切換を行う第2切換弁と、下流側で該第1油路と該第2油路とを合流させる合流部と、を有し、該第2油路に減圧弁が設けられおり、前記第1切換弁の切換と前記第2切換弁の切換とを、一操作で同時に行う一つのスイッチを備える。
【0013】
上記の構成によれば、搭載機器の簡素化、車両のコンパクト化、および車両コストの抑制を図りつつ、二系統のサービス回路に接続されて作動するアタッチメントの作業性を向上させることができる。
【0014】
また、前記スイッチは、トリガスイッチであることが好ましい。
【0015】
また、前記比例ソレノイドバルブの作動を制御するスライドスイッチを備え、前記スライドスイッチは、操作レバーのグリップ部においてスライド可能に設けられていることが好ましい。
【0016】
また、前記パイロット回路は、前記第2油路において前記減圧弁の下流側に逆止弁が設けられていることが好ましい。
【0017】
また、前記減圧弁は、減圧量の調整が可能な調整部を有し、オペレータが着座するシートの下に設けられる機器室の内部で且つ該機器室の開閉扉の近傍位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
一実施形態に係る作業用車両によれば、搭載機器の簡素化、車両のコンパクト化、および車両コストの抑制を図りつつ、二系統のサービス回路に接続されて作動するアタッチメントの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業用車両の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の作業用車両の運転室の例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の作業用車両の操作装置の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る作業用車両1の例を示す概略図(左前部上方からの斜視図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。作業用車両1として、油圧ショベルを例に挙げて説明する。ただし、作業用車両1は、油圧ショベルに限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、作業用車両1は、車体として下部体2および下部体2の上に配設される上部体3を備えている(なお、下部体2と上部体3とが一体の構成であってもよい)。
【0023】
作業用車両1は、下部体2や上部体3に取付けられて油圧(所定圧力の作動油)により作動する作業装置12、14を備えている。下部体2は、走行を行う走行装置10を備えている。上部体3は、前部にオペレータが乗車して走行や作業の操作を行う各種操作装置が設けられた運転室16を備えている。
【0024】
走行装置10の例として、左右一対のクローラ26を備えている。ただし、走行装置10は、クローラ26に限定されるものではなく、クローラ26に代えてタイヤを備える構成としてもよい(不図示)。クローラ26は、走行油圧モータ28によって駆動(走行)される。
【0025】
作業装置12の例として、排土板22を備えている。排土板22は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に下部体2に取付けられている。排土板22は、油圧シリンダ(排土板シリンダ)32によって駆動される。ただし、上記の構成に限定されるものではない。
【0026】
作業装置14の例として、ブーム42、アーム44、および、着脱可能なアタッチメント46を備えている。なお、
図1においては、アタッチメント46として、バケット(サービス回路を不使用)が装着された状態を例示している。ただし、これに限定されるものではなく、その他に、ブレーカー等(サービス回路を一系統使用)、チルトローテータバケット等(サービス回路を二系統使用)のように様々な種類がある。
【0027】
具体的な構成として、ブーム42は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に上部体3に取付けられている。本実施形態においては、上部体3とブーム42との間にブームブラケット48が設けられている。ブームブラケット48によって、ブーム42は上部体3に対して左右(前後成分を含む)に揺動可能となる。なお、ブームブラケット48は省略されてもよい。アーム44は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にブーム42に取付けられている。アタッチメント46は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にアーム44に取付けられている。ブーム42は、油圧シリンダ(ブームシリンダ)52によって駆動される。アーム44は、油圧シリンダ(アームシリンダ)54によって駆動される。アタッチメント46は、油圧シリンダ(バケットシリンダ)56によって駆動される。ただし、上記の構成に限定されるものではない。
【0028】
前述の通り、アタッチメント46は、複数種類の中から作業内容に適したものが選択されて、着脱可能にアーム44に取付けられる構成となっている。なお、アーム44とアタッチメント46との間にクイックヒッチ(不図示)を介在させる構成としてもよい。その場合には、クイックヒッチを作動させるために、別途サービス回路を設ける構成とすればよい。
【0029】
上記の走行油圧モータ28、および各油圧シリンダの駆動を行うための駆動機構は、一例として駆動源18により駆動される油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ等)、コントロールバルブ等から構成されている。オペレータが所定の操作装置を操作することによりコントロールバルブを作動させて、油圧ポンプから送出される所定圧力の作動油を走行油圧モータ28、および各油圧シリンダに供給する制御が行われる。これにより、走行装置10による走行、および作業装置12、14による作業を行うことができる。駆動機構を構成する油圧ポンプは、作業装置12、14や走行装置10の構成や負荷等に応じて、一個もしくは複数個が設けられる。
【0030】
また、本実施形態においては、サービス回路に作動油を供給するサブ油圧ポンプ30と、各装置(具体的には、各コントロールバルブ)の制御に用いられるパイロット油を供給するパイロット油圧ポンプ40と、を備えている(回路等の詳細については後述する)。なお、変形例として、これらの油圧ポンプを備えずに、その他の油圧ポンプ(例えば、メイン油圧ポンプ等)から供給される作動油を分流(必要に応じて減圧)して用いる構成としてもよい(不図示)。
【0031】
作業用車両1は、上記の駆動源18としてエンジン(燃料を燃焼させる内燃機)を備えている。なお、駆動源18の他の例として、エンジンに代えて、もしくは、エンジンと共に、電動モータ(油圧ポンプの個数や定格出力等に応じて、一個もしくは複数個)を備える構成としてもよい(不図示)。
【0032】
ここで、本実施形態に係る作業用車両1は、アタッチメント46を作動させる作動油を供給するサービス回路として、少なくとも二系統(後述の第1サービス回路61および第2サービス回路62)が設けられている。これによれば、例えば、チルトローテータバケット等のように二系統のサービス回路に接続されて二種類の作動を行うアタッチメント46(46A)を使用することが可能となる。なお、さらに別系統のサービス回路を一つもしくは複数備える構成としてもよい(不図示)。
【0033】
より詳しくは、
図4の回路図(概略図)に示すように、アタッチメント46(46A)に作動油を供給する回路を、第1サービス回路61と第2サービス回路62とで切換を行う第1切換弁71を備えている。また、アタッチメント46(46A)の作動を制御するコントロールバルブ64を備えている。また、コントロールバルブ64の作動を制御する比例ソレノイドバルブ66を備えている。また、比例ソレノイドバルブ66を介して(すなわち、比例ソレノイドバルブ66によって方向や流量が制御されて)コントロールバルブ64にパイロット油を供給するパイロット回路63を備えている。この構成によれば、コントロールバルブ64、比例ソレノイドバルブ66等を共通化できるため(すなわち、共通で一個ずつ設ければよいため)、搭載機器の簡素化および車両のコンパクト化を図ることができる。なお、本実施形態において、第1切換弁71には、ソレノイドバルブが用いられている。
【0034】
パイロット回路63には、パイロット油を通流させる油路を第1油路81と第2油路82とで切換を行う第2切換弁72が設けられている。また、パイロット回路63には、当該第2切換弁72よりも下流側に第1油路81と第2油路82とを合流させる合流部74が設けられている。なお、本実施形態において、第2切換弁72には、ソレノイドバルブが用いられている。ここで、第1切換弁71および第2切換弁72に同一構成のソレノイドバルブを適用することにより、部品種類の増加を抑え、コストの抑制を図っている。
【0035】
さらに、第2油路82には、当該第2油路82を通流するパイロット油の圧力を所定値まで減圧する減圧弁76が設けられている。また、第2油路82には、減圧弁76よりも下流側で且つ合流部74よりも上流側に逆止弁78が設けられている。この逆止弁78を有することで、第1油路81を通流するパイロット油が第2油路82に逆流して圧力が設定値よりも低下してしまうことを防止できる。
【0036】
また、作業用車両1は、第1サービス回路61と第2サービス回路62との切換を行う操作装置を備えている。当該操作装置の一例として、運転室16の操作レバー(例えば、右操作レバー)90のグリップ部90aに、プッシュ式のトリガスイッチ92が設けられている(
図2参照)。なお、本実施形態においては、トリガスイッチ92の操作は、操作レバー90の内部(外部でもよい)に設けられたリモートコントローラ96を介して第1切換弁71および第2切換弁72を作動させる信号(電流)に変換されて、当該第1切換弁71および第2切換弁72に送信される構成となっている。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0037】
トリガスイッチ92の操作に伴う具体的な作動例を説明すると、トリガスイッチ92の一操作(ワンプッシュ)で第1切換弁71の切換と、第2切換弁72の切換とが同時に行われるように構成されている。より詳細には、第1切換弁71が第1サービス回路61側に切換が行われ、同時に、第2切換弁72が第1油路81側に切換が行われるように設定されている。その逆の切換も同様であって、第1切換弁71が第2サービス回路62側に切換が行われ、同時に、第2切換弁72が第2油路82側に切換が行われるように設定されている。すなわち、トリガスイッチ92の一操作(ワンプッシュ)を行う毎に、上記二通りの設定が交互に繰り返されるように構成されている。
【0038】
また、作業用車両1は、アタッチメント46(46A)を操作する操作装置を備えている。当該操作装置は、具体的には、比例ソレノイドバルブ66の作動を制御する操作装置となる。当該操作装置の一例として、運転室16の操作レバー(例えば、右操作レバー)90のグリップ部90aに、スライド式のスライドスイッチ94が設けられている(
図3参照)。なお、本実施形態においては、スライドスイッチ94の操作(量、方向)は、操作レバー90の内部(外部でもよい)に設けられたリモートコントローラ96を介して比例ソレノイドバルブ66を作動させる信号(電流)に変換されて、当該比例ソレノイドバルブ66に送信される構成となっている。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0039】
スライドスイッチ94の操作に伴う具体的な作動例を説明すると、スライドスイッチ94を中立位置から一端側(例えば、右端側)に移動する操作を行う場合、その移動量が大きくなるにつれて、アタッチメント46(46A)の作動(例えば、右回転、右傾動、等)が速くなるように構成されている。同様に、スライドスイッチ94を中立位置から他端側(例えば、左端側)に移動する操作を行う場合、その移動量が大きくなるにつれて、アタッチメント46(46A)の作動(例えば、左回転、左傾動、等)が速くなるように構成されている。
【0040】
ここで、前述した事前検討の通り、二系統のサービス回路に接続されるアタッチメントは、切換弁を設けてサービス回路の切換を行う構成とすることによって二種類の作動を行うことが可能となる。しかし、以下の課題が明らかになった。すなわち、いずれのサービス回路においても供給される作動油の油量は変わらないため、一方の作動が速過ぎる(あるいは、他方の作動が遅過ぎる)状態となり、作業性の悪化が生じ得る。具体的に、アタッチメント46(46A)として、チルトローテータバケットを使用する場合を例に挙げれば、第1サービス回路61に切換が行われて回転の作動が行われ、第2サービス回路62に切換が行われて傾動の作動が行われる。その際、本実施形態に係る上記の構成を備えない場合には、第2サービス回路62に切換が行われた際の傾動の作動が速過ぎる状態、あるいは、第1サービス回路61に切換が行われた際の回転の作動が遅すぎる状態が生じ得る。
【0041】
この課題に対して、本実施形態に係る作業用車両1によれば、二系統のサービス回路(第1サービス回路61および第2サービス回路62)用として、それぞれにコントロールバルブ、比例ソレノイドバルブ等を設ける構成(すなわち、それらを二個ずつ設ける構成)とすることなく、且つ、高度な制御コントローラを搭載して二系統のサービス回路をそれぞれ個別に制御する構成とすることなく、解決を図ることが可能となる。すなわち、搭載機器の簡素化、車両のコンパクト化、および車両コストの抑制を図りつつ、二系統のサービス回路に接続されて作動するアタッチメント46(46A)の作業性を向上させることができる。
【0042】
具体的には、トリガスイッチ92によって第1切換弁71の切換と第2切換弁72の切換とが同時に行われる構成としたうえで、第2切換弁72によって切換が行われる第2油路82に減圧弁76が設けられる構成とすることにより、その解決を図ることが可能となる。この構成によれば、第1切換弁71が第2サービス回路62側に切換が行われ、同時に、第2切換弁72が第2油路82側に切換が行われた状態においては、他方の側に切換が行われた状態(第1切換弁71が第2サービス回路62側で、第2切換弁72が第2油路82側の状態)と比較して、以下の作用効果が得られる。すなわち、スライドスイッチ94の操作量が同じ(すなわち、比例ソレノイドバルブ66の作動量が同じ)であったとしても、第2油路82を通流して減圧弁76により減圧されたパイロット油がコントロールバルブ64に入力されることとなる。その結果、コントロールバルブ64に入力されるパイロット油の圧力を相対的に低下させることができるため、コントロールバルブ64の作動量を相対的に低下させることができる。したがって、アタッチメント46(46A)の作動速度を相対的に低下させることができる。
【0043】
このように、二種類の作動を行うアタッチメント46(46A)において、いずれか一方の作動が速過ぎる、あるいは、他方の作動が遅過ぎるといった作業性の悪化が生じない作業用車両1を実現することができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る作業用車両1において、減圧弁76は、減圧量の調整が可能な調整部76aを有し、オペレータが着座するシート34の下に設けられる機器室36の内部で且つ機器室36の開閉扉38の近傍位置(離間寸法が数cm~十数cm程度)に配置されている(
図2参照)。この構成によれば、開閉扉38を開けるだけで調整部76aに触れることができるため、減圧弁76における減圧量の調整を極めて容易に行うことができる。特に、オペレータが着座するシート34の下に設けられる機器室36に配置されているため、オペレータが実際にアタッチメント46(46A)の作動種類毎に操作速度を確認しながら、容易且つ迅速に調整を行うことができるため、より一層の作業性向上がもたらされる。
【0045】
以上説明した通り、上記の作業用車両によれば、搭載機器の簡素化、車両のコンパクト化、および車両コストの抑制を図りつつ、二系統のサービス回路に接続されて作動するアタッチメントの作業性を向上させることができる。
【0046】
本発明は、上記の実施形態(油圧ショベル)に限定されるものではない。本発明は、下部体に対して上部体が旋回しない作業用車両(トラックローダ等)に対しても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 作業用車両
10 走行装置
12、14 作業装置
46、46A アタッチメント
61 第1サービス回路
62 第2サービス回路
63 パイロット回路
64 コントロールバルブ
66 比例ソレノイドバルブ
71 第1切換弁
72 第2切換弁
76 減圧弁
【要約】
【課題】搭載機器の簡素化、車両のコンパクト化、および車両コストの抑制を図りつつ、二系統のサービス回路に接続されて作動するアタッチメントの作業性を向上させることが可能な作業用車両を提供する。
【解決手段】本発明に係る作業用車両1は、油圧により作動するアタッチメント46に作動油を供給する第1サービス回路61および第2サービス回路62と、それらの切換を行う第1切換弁71と、アタッチメント46の作動を制御するコントロールバルブ64と、コントロールバルブ64の作動を制御する比例ソレノイドバルブ66と、比例ソレノイドバルブ66を介してコントロールバルブ64にパイロット油を供給するパイロット回路63とを備え、パイロット回路63は、パイロット油を通流させる油路を第1油路81と第2油路82とで切換を行う第2切換弁72と、その下流側に合流部74とを有し、第2油路82に減圧弁76が設けられている。
【選択図】
図4