(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】エレベータのマシンハッチカバー装置およびマシンハッチ仕切装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/04 20060101AFI20240904BHJP
B66B 5/00 20060101ALN20240904BHJP
【FI】
B66B11/04 A
B66B5/00 D
(21)【出願番号】P 2023204776
(22)【出願日】2023-12-04
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡橋 悦司
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-1509(JP,A)
【文献】特開昭59-12062(JP,A)
【文献】特開2016-222415(JP,A)
【文献】特開2023-110776(JP,A)
【文献】特開2020-7108(JP,A)
【文献】国際公開第2004/113218(WO,A1)
【文献】米国特許第6560931(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00-11/08
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室の床に設けられた矩形状のマシンハッチを覆うエレベータのマシンハッチカバー装置であって、
前記床に固定された、前記マシンハッチに重なるベース開口部を含むベースと、
前記マシンハッチを覆う一対のカバーと、
を備え、
前記マシンハッチの互いに対向する一対の縁部のそれぞれにおいて前記カバーが前記ベースに対して回動可能に設けられ、
前記カバーは、前記マシンハッチを覆う閉塞位置と、前記マシンハッチを開放する開放位置との間で前記ベースに対して回動可能である、
エレベータのマシンハッチカバー装置。
【請求項2】
前記カバーを前記閉塞位置に保持する閉塞保持部
を更に備えた、請求項1に記載のエレベータのマシンハッチカバー装置。
【請求項3】
前記カバーを前記開放位置に保持する開放保持部
を更に備えた、
請求項1に記載のエレベータのマシンハッチカバー装置。
【請求項4】
前記カバーのそれぞれは、他方の前記カバーの側の縁部に設けられた切欠部を含み、
前記カバーが前記閉塞位置に位置づけられた場合、前記切欠部は、主ロープが通過する主ロープ開口部を構成している、
請求項1に記載のエレベータのマシンハッチカバー装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエレベータのマシンハッチカバー装置と、
前記カバーが前記開放位置に位置づけられている場合に、一方の前記カバーから他方の前記カバーに延びる複数の仕切部材と、
を備え、
前記仕切部材は、前記マシンハッチの4つの縁部のうちの前記カバーが設けられていない一対の縁部の上方に配置されている、
エレベータのマシンハッチ仕切装置。
【請求項6】
前記仕切部材は、棒状に形成された手摺を含み、
前記カバーの裏面に、手摺孔が設けられ、
前記カバーが前記開放位置に位置づけられている場合、前記手摺孔に、対応する前記手摺が挿入されている、
請求項5に記載のエレベータのマシンハッチ仕切装置。
【請求項7】
一対の前記カバーのうちの少なくとも一方の前記カバーの裏面に、前記手摺が保持可能である、
請求項6に記載のエレベータのマシンハッチ仕切装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、エレベータのマシンハッチカバー装置およびマシンハッチ仕切装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごを昇降させる巻上機は、昇降路の上部に設けられた機械室に設置される場合がある。機械室の床には、巻上機の搬入および搬出を行うためのマシンハッチが設けられている。マシンハッチはカバーで塞がれるが、巻上機などの機器の搬入または搬出を行う際には、カバーが取り外される。カバーが取り外された状態では、機械室内の作業者の転落などを防止するために、マシンハッチの周囲に手摺が設置される。
【0003】
マシンハッチを塞ぐカバーは、多数のボルトで固定されているため、カバーを取り外す際にはこれらのボルトを取り外しており、マシンハッチの開放作業の効率が低下しているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-117367号公報
【文献】特開2016-222415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施の形態は、機械室の床に設けられたマシンハッチの開放作業の効率を向上させることができるエレベータのマシンハッチカバー装置およびマシンハッチ仕切装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態によるエレベータのマシンハッチカバー装置は、機械室の床に設けられた矩形状のマシンハッチを覆う装置である。エレベータのマシンハッチカバー装置は、床に固定された、マシンハッチに重なるベース開口部を含むベースと、マシンハッチを覆う一対のカバーと、を備えている。マシンハッチの互いに対向する一対の縁部のそれぞれにおいてカバーがベースに対して回動可能に設けられている。カバーは、マシンハッチを覆う閉塞位置と、マシンハッチを開放する開放位置との間でベースに対して回動可能である。
【0007】
実施の形態によるエレベータのマシンハッチ仕切装置は、上述したエレベータのマシンハッチカバー装置と、カバーが開放位置に位置づけられている場合に、一方のカバーから他方のカバーに延びる複数の仕切部材と、を備えている。仕切部材は、マシンハッチの4つの縁部のうちのカバーが設けられていない一対の縁部の上方に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、エレベータの機械室に設置された巻上機を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態によるマシンハッチカバー装置を拡大して示す斜視図であって、各カバーが閉塞位置に位置づけられている状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すマシンハッチカバー装置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すマシンハッチカバー装置を示す斜視図であって、各カバーが開放位置に位置づけられて、本実施の形態によるマシンハッチ仕切装置が構成されている状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すカバーが閉塞位置に位置づけられている場合の閉塞保持部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すカバーが開放位置に位置づけられている場合の開放保持部を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図4に示す手摺が保持されたカバーの裏面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態におけるエレベータのマシンハッチカバー装置およびマシンハッチ仕切装置について説明する。ここではまず、エレベータの機械室に設置された巻上機について説明する。
【0010】
図1に示すように、機械室1には、巻上機2が設置されている。巻上機2にはトラクションシーブ(図示せず)が連結されており、トラクションシーブに、乗りかごおよび釣り合い錘(いずれも図示せず)に連結された主ロープ3が巻き掛けられている。巻上機2が主ロープ3を巻き上げることにより、機械室1の下方に設けられた昇降路4内を乗りかごが昇降する。
【0011】
巻上機2は、機械室1の床5に、マシンビーム構造体6を介して固定されている。機械室1の床5には、マシンハッチ7が設けられており、マシンハッチ7の上方に巻上機2が配置されている。マシンハッチ7は、上方から見たときに、矩形形状に形成されている開口部である(
図3参照)。
【0012】
図1に示すように、マシンハッチ7に、本実施の形態によるマシンハッチカバー装置10(または後述するマシンハッチ仕切装置40)が設けられている。
図1では、マシンハッチカバー装置10の後述するカバー12によって、マシンハッチ7が閉塞されている。後述する主ロープ開口部24を、主ロープ3が通過している。主ロープ開口部24を通過する主ロープ3は乗りかごに連結されている。釣り合い錘に連結される主ロープ3は、機械室1の床5において別の位置に設けられた図示しない開口部を通過している。
【0013】
次に、本実施の形態によるエレベータのマシンハッチカバー装置10について、
図2~
図7を用いて説明する。エレベータのマシンハッチカバー装置10(以下、単にマシンハッチカバー装置10と記す)は、機械室1の床5に設けられた矩形状のマシンハッチ7を覆うための装置である。
【0014】
マシンハッチカバー装置10は、ベース11と、カバー12と、閉塞保持部13(
図5参照)と、開放保持部14(
図4参照)と、を備えている。
【0015】
図2に示すように、ベース11は、機械室1の床5に固定されている。より具体的には、機械室1の床5には、補強枠8が固定されており、ベース11は、補強枠8上に固定されている。補強枠8は、概略的には、マシンハッチ7に重ならないように矩形枠状に形成されている。補強枠8の構造は任意である。
【0016】
図3に示すように、ベース11は、ベース開口部15を含んでいる。ベース開口部15は、上方から見たときに、マシンハッチ7に重なっており、巻上機2またはマシンビーム構造体6などの機器が通過可能になっている。
【0017】
図2および
図3に示すように、ベース11は、一対の第1ベース部材16と、一対の第2ベース部材17と、を含んでいてもよい。第1ベース部材16および第2ベース部材17はそれぞれ、細長状に延びる板状の部材であってもよい。第1ベース部材16は、マシンハッチ7を画定する4つの縁部7a、7bのうちの互いに対向する2つの縁部7aに設けられている。第1ベース部材16には、後述するシャフト部材18が固定されている。第2ベース部材17は、残りの2つの縁部7bに設けられている。各第1ベース部材16および各第2ベース部材17により、上述したベース開口部15が画定されている。
【0018】
各々のカバー12は、マシンハッチ7の一部の領域を覆うように構成されている。各々のカバー12は、概略的にはマシンハッチ7の半分の領域を覆うように形成されている。
【0019】
図2~
図4に示すように、カバー12は、マシンハッチ7の互いに対向する一対の縁部7aの一方の縁部7aにおいて、ベース11に回動可能に設けられている。本実施の形態によるカバー12は、対応する第1ベース部材16に回動可能に設けられている。より具体的には、カバー12と第1ベース部材16との間にシャフト部材18が設けられて、カバー12が第1ベース部材16に対して回動可能になっている。シャフト部材18は、蝶番のように構成されていてもよい。例えば、シャフト部材18は、第1ベース部材16に固定された管と、カバー本体20に固定された管とが交互に並び、各管に挿入されたピンによって、構成されていてもよい。
【0020】
カバー12は、マシンハッチ7を覆う閉塞位置(
図2参照)と、マシンハッチ7を開放する開放位置(
図4参照)との間でベース11に対して回動可能になっている。
図2に示すように、閉塞位置において、カバー12の上面が水平に位置づけられていてもよい。
図4に示すように、閉塞位置におけるカバー12の上面は、カバー12が開放位置に位置づけられると垂直に位置づけられていてもよい。本実施の形態による一対のカバー12は、観音開き構造を有している。
【0021】
図4に示すように、カバー12は、カバー本体20と、カバー本体20の両側部に設けられたアングル部材21と、を含んでいてもよい。カバー本体20は、マシンハッチ7を覆う部分である。カバー本体20は、概略的には平板状に形成されており、両側部が折り曲げられて側壁部22が形成されている。アングル部材21は、側壁部22に沿って細長状に延びていてもよい。アングル部材21は、横断面が矩形枠形状に形成された形鋼であってもよいが、アングル部材21の横断面形状は任意である。アングル部材21によってカバー12は補強されており、カバー12の機械的強度を確保している。アングル部材21は、図示しないボルトによって側壁部22に固定されていてもよいが、溶接などの任意の手段で固定されていてもよい。
【0022】
各々のカバー12は、切欠部23を含んでいる。各々の切欠部23は、カバー本体20のうちの他方のカバー12の側の縁部に設けられている。切欠部23は、シャフト部材18とは反対側の縁部に形成されている。切欠部23は、上方から見たときに、矩形状に形成されていてもよい。
図2および
図3に示すように、各々切欠部23は、カバー12が閉塞位置に位置づけられた場合、上述した主ロープ3が通過する主ロープ開口部24を構成している。
【0023】
図5に示すように、閉塞保持部13は、カバー12を閉塞位置に保持するように構成されている。閉塞保持部13は、閉塞保持ボルト25を含んでいてもよい。閉塞保持ボルト25は、カバー12のアングル部材21を対応する第2ベース部材17に固定する。閉塞保持ボルト25は、アングル部材21の内側からアングル部材21に設けられたボルト孔26を貫通して、第2ベース部材17のねじ孔27にねじ込まれていてもよい。この場合、カバー12の側壁部22およびアングル部材21にボルト締付工具Tを挿入するための作業孔28が設けられていてもよい。
【0024】
図6に示すように、開放保持部14は、カバー12を開放位置に保持するように構成されている。開放保持部14は、支持部材30と、ロック部材31と、受け部材32と、を含んでいる。支持部材30は、第2ベース部材17に固定されている。ロック部材31は、基端部において支持部材30に回動可能に取り付けられている。ロック部材31は、先端部に設けられた溝33を含んでいる。受け部材32は、カバー12のアングル部材21に固定されている。受け部材32は保持ピン34を含んでおり、ロック部材31の溝33に保持ピン34が嵌合可能になっている。ロック部材31の溝33に、受け部材32の保持ピン34が挿入されると、カバー12の回動が規制され、カバー12が開放位置に保持される。
【0025】
次に、本実施の形態によるエレベータのマシンハッチ仕切装置40について説明する。エレベータのマシンハッチ仕切装置40(以下単にマシンハッチ仕切装置40と記す)は、エレベータの機械室1の床5に設けられたマシンハッチ7の周囲を仕切るための装置である。
【0026】
図4に示すように、マシンハッチ仕切装置40は、上述したマシンハッチカバー装置10と、複数の仕切部材41と、を備えている。
【0027】
仕切部材41は、上述したカバー12が開放位置に位置づけられている場合に、一方のカバー12から他方のカバー12に延びている。仕切部材41は、マシンハッチ7を画定する4つの縁部7a、7b(
図3参照)のうちのカバー12が設けられていない一対の縁部7bの上方に配置されている。本実施の形態においては、仕切部材41は、第2ベース部材17の上方に配置されている。各々のカバー12と仕切部材41とにより、マシンハッチ7が、マシンハッチ7の周囲の空間と仕切られている。このことにより、機械室1内の作業者がマシンハッチ7に転落することを防止することができる。
【0028】
仕切部材41は、棒状に形成された手摺42を含んでいてもよい。手摺42は、円柱状に形成されていてもよい。カバー12の裏面に、対応する手摺42が挿入可能な手摺孔43が設けられている。手摺孔43は、カバー12のアングル部材21に形成されていてもよい。カバー12がそれぞれ開放位置に位置している場合に、手摺孔43のそれぞれに、対応する手摺42が挿入されている。
【0029】
本実施の形態においては、マシンハッチ7の4つの縁部7a、7bのうちの2つの縁部7aがカバー12によって仕切られ、残りの2つの縁部7bが、手摺42によって仕切られる。カバー12および手摺42は、所望の機械的強度を有している場合、マシンハッチ仕切装置40は、マシンハッチ手摺装置として機能することができ、機械室1内の作業者がマシンハッチ7に転落することをより一層防止することができる。
【0030】
図7に示すように、手摺42は、一対のカバー12のうちの少なくとも一方のカバー12の裏面に保持可能になっていてもよい。例えば、各々のカバー12の裏面に、手摺42が保持可能になっていてもよい。裏面は、閉塞位置に位置づけられた場合のカバー本体20の下面に相当する。より具体的には、各々のカバー本体20の下面に、保持部材44によって手摺42が保持されていてもよい。この場合、手摺42は、アングルに対して斜めに配置されてもよい。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。本実施の形態によるマシンハッチカバー装置10は、機械室1に巻上機2およびマシンビーム構造体6などの構造物を搬入する際に開放されたり、機械室1から巻上機2およびマシンビーム構造体6などの構造物を搬出する際に開放されたりする。
【0032】
マシンハッチ7を開放する場合、まず、各々のカバー12を閉塞位置(
図2参照)に保持していた閉塞保持部13(
図5参照)を取り外す。より具体的には、閉塞保持ボルト25を緩めて取り外す。
【0033】
続いて、各々のカバー12を回動させて、開放位置に位置づける(
図4参照)。この際、各々のカバー12は、ベース11に対して垂直に位置づけられる。
【0034】
次に、開放位置に位置づけられた各々のカバー12を、開放位置に保持する。より具体的には、開放保持部14(
図6参照)のロック部材31を回動させて、ロック部材31の溝33に、受け部材32の保持ピン34を挿入させる。このことにより、ロック部材31が受け部材32に係合される。
【0035】
このようにして、本実施の形態によるマシンハッチカバー装置10によって、マシンハッチ7を容易に開放することができる。
【0036】
さらに、カバー12が開放位置に位置づけられている場合に、一方のカバー12から他方のカバー12に延びる仕切部材41が、各々のカバー12に取り付けられてもよい。より具体的には、カバー12の裏面に保持されていた手摺42を取り外し、各々のカバー12の裏面に設けられた手摺孔43に挿入させてもよい。
【0037】
このようにして、本実施の形態によるマシンハッチ仕切装置40によって、マシンハッチ7の周囲を仕切ることができる。
【0038】
マシンハッチ7を閉塞する場合には、上述とは逆の手順を行えばよい。カバー12を閉塞位置に位置づける際には、開放保持部14のロック部材31を第2ベース部材17上に倒す。カバー12を閉塞位置に回動させると、カバー12は、図示しないストッパに当接する。開放保持部14は、第2ベース部材17とカバー12との間に形成された隙間に収納されてもよい。あるいは、閉塞する際には、開放保持部14を取り外すようにしてもよい。
【0039】
このように本実施の形態によれば、マシンハッチ7の互いに対向する一対の縁部7aのそれぞれにおいて、マシンハッチ7を覆うカバー12がベース11に回動可能に設けられている。カバー12は、マシンハッチ7を覆う閉塞位置と、マシンハッチ7を開放する開放位置との間でベース11に対して回動可能になっている。このことにより、マシンハッチ7を開放する際、カバー12を取り外すことを不要にすることができる。このため、マシンハッチ7の開放作業の効率を向上させることができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、カバー12は、閉塞保持部13によって閉塞位置に保持される。このことにより、閉塞位置に位置づけられたカバー12が、不意に回動することを防止することができる。また、閉塞位置に位置づけられたカバー12が、乗りかごの昇降によって生じる風圧によって振動することを防止できる。例えば、乗りかごの上昇時には、昇降路4の上部で気圧が高まるが、乗りかごの下降時には昇降路4の上部の気圧は下がる。また昇降中の乗りかごが停止することによっても昇降路4の上部の気圧は変動する。このような気圧変動によって、カバー12には上向きの力が掛かったり、下向きの力が掛かったりする。このため、カバー12が振動したり、騒音を発生したりする可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、閉塞保持部13でカバー12が保持されるため、カバー12の振動によって生じる騒音の発生も防止することができる。このため、マシンハッチカバー装置10の信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、カバー12は、開放保持部14によって開放位置に保持される。このことにより、開放位置に位置づけられたカバー12が、不意に回動することを防止することができる。このため、カバー12が倒れることを防止でき、マシンハッチカバー装置10の信頼性を向上させることができるとともに、機械室1内の作業者の安全性を確保することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、カバー12のそれぞれが切欠部23を含んでいる。このことにより、カバー12が閉塞位置に位置づけられた場合、切欠部23によって、主ロープ3を通過する主ロープ開口部24を構成することができる。このため、主ロープ開口部24を容易に構成することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、カバー12が開放位置に位置づけられている場合に、一方のカバー12から他方のカバー12に複数の仕切部材41が延びている。仕切部材41は、マシンハッチ7の4つの縁部7a、7bのうちのカバー12が設けられていない一対の縁部7bの上方に配置されている。このことにより、マシンハッチ7と、周囲の空間とを仕切ることができる。このため、機械室1内の作業者がマシンハッチ7に転落することを防止することができ、作業者の安全性を向上させることができる。また、カバーを取り外した後の仕切部材41の設置作業の効率を向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、仕切部材41は、棒状に形成された手摺42を含んでいる。カバー12が開放位置に位置づけられている場合、手摺孔43に、対応する手摺42が挿入されている。このことにより、マシンハッチ7と、周囲の空間とを仕切るための仕切部材41の機械的強度を向上させることができる。このため、機械室1内の作業者がマシンハッチ7に転落することをより一層防止することができ、作業者の安全性をより一層向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、一対のカバー12のうちの少なくとも一方のカバー12の裏面に、手摺42が保持可能になっている。このことにより、カバー12が閉塞位置に位置づけられている場合の手摺42の保管場所を確保することができる。このため、機械室1内に手摺42の保管場所を別途確保することを不要にすることができるとともに、手摺42の紛失を防止することができる。また、カバー12の裏面に保持された手摺42によって、カバー12の機械的強度を向上させることができる。このため、閉塞位置に位置づけられたカバー12が、乗りかごの昇降によって生じる風圧によって振動することを防止することができ、マシンハッチカバー装置10の信頼性を向上させることができる。
【0046】
なお、上述した本実施の形態において、主ロープ開口部24を構成する切欠部23に、図示しない流線型部材が取り付けられていてもよい。流線型部材は、主ロープ開口部24を通過する気流に対して流線形状を有していてもよい。このことにより、昇降路4の上部の気圧変動によって、閉塞位置に位置づけられているカバー12が振動することを防止することができるとともに、騒音が発生することをより一層防止することができる。
【0047】
また、上述した本実施の形態においては、仕切部材41が手摺42を含んでいる例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、仕切部材41は、手摺42の代わりにベルトパーテーション(図示せず)を含んでいてもよい。この場合、仕切部材41を容易に設置することができ、マシンハッチ7と、周囲の空間とを容易に仕切ることができる。
【0048】
また、上述した本実施の形態においては、カバー12のアングル部材21が、形鋼によって構成されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、アングル部材21は、折り畳み可能な部材によって構成されていてもよく、または、伸縮可能な部材によって構成されていてもよい。
【0049】
以上述べた実施の形態によれば、機械室1の床5に設けられたマシンハッチ7の開放作業の効率を向上させることができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1:機械室、2:巻上機、3:主ロープ、5:床、7:マシンハッチ、10:マシンハッチカバー装置、11:ベース、12:カバー、13:閉塞保持部、14:開放保持部、15:ベース開口部、23:切欠部、24:主ロープ開口部、40:マシンハッチ仕切装置、41:仕切部材、42:手摺、43:手摺孔
【要約】
【課題】機械室の床に設けられたマシンハッチの開放作業の効率を向上させることができるエレベータのマシンハッチカバー装置を提供する。
【解決手段】実施の形態によるエレベータのマシンハッチカバー装置は、床に固定された、マシンハッチに重なるベース開口部を含むベースと、マシンハッチを覆う一対のカバーと、を備えている。マシンハッチの互いに対向する一対の縁部のそれぞれにおいてカバーがベースに対して回動可能に設けられている。カバーは、マシンハッチを覆う閉塞位置と、マシンハッチを開放する開放位置との間でベースに対して回動可能である。
【選択図】
図4