(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】電池、受電装置、電池を作製する方法及び設備
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240904BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240904BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20240904BHJP
H01M 50/367 20210101ALI20240904BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/342 101
H01M50/35 201
H01M50/367
(21)【出願番号】P 2023504840
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 CN2020121998
(87)【国際公開番号】W WO2022082395
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】522010668
【氏名又は名称】ジアンス・コンテンポラリー・アンプレックス・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 毓群
(72)【発明者】
【氏名】胡 浪超
(72)【発明者】
【氏名】黄 小▲騰▼
(72)【発明者】
【氏名】洪 家▲榮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲海▼奇
(72)【発明者】
【氏名】汪 文礼
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109568834(CN,A)
【文献】特開2014-135234(JP,A)
【文献】特開2014-165026(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098067(WO,A1)
【文献】特表2014-517986(JP,A)
【文献】特開2010-097836(JP,A)
【文献】特開2016-110881(JP,A)
【文献】中国実用新案第210349923(CN,U)
【文献】国際公開第2018/131221(WO,A1)
【文献】特開平09-161754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除圧機構を含む電池セルであって、前記除圧機構は、前記電池セルの内部圧力または温度が閾値に達したときに、前記内部圧力を放出するように作動するためのものである電池セルと、
消火媒体を収容するための消火チャンバであって、前記除圧機構の作動時に、前記消火媒体が前記電池セルの内部に入るように前記消火媒体を放出するように構造されている消火チャンバと、
前記消火チャンバの前記電池セルから離れる側に位置する、前記除圧機構の作動時に前記電池セルからの排出物を収集するための収集チャンバと、
前記消火チャンバと前記収集チャンバとを仕切るための仕切り部材と、を含む電池において、
前記仕切り部材は、前記除圧機構の作動時に、前記排出物が前記消火チャンバを介して前記収集チャンバに入るように、前記排出物を貫通させるように構造されて
おり、
前記電池は、
前記電池セルを収容するためのシェルと、
前記電池セルをパッケージするように前記シェルに接続されるための蓋体と、をさらに含み、
前記消火チャンバ、前記収集チャンバ及び前記仕切り部材は、前記蓋体の少なくとも一部として構造されている、電池。
【請求項2】
前記仕切り部材は、前記除圧機構の作動時に、前記排出物が前記消火チャンバを介して前記収集チャンバに入るように前記排出物によって破壊されるように構造されている、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記仕切り部材には、前記除圧機構の作動時に、前記排出物によって破壊されるように構造されている脆弱部が設けられている、
請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記仕切り部材には、前記排出物が前記仕切り部材を貫通することが許容されるように構造されている貫通孔が設けられている、
請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記仕切り部材は、前記消火チャンバと前記収集チャンバとが共通するチャンバ壁に構造されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記蓋体には、前記仕切り部材を貫通して前記収集チャンバに入るように前記排出物を案内するための排出路が設けられている、
請求項
1に記載の電池。
【請求項7】
前記消火チャンバは、前記排出物が前記排出路を通過するときに、前記消火媒体を放出するように、前記排出物によって破壊されるように構造されている、
請求項
6に記載の電池。
【請求項8】
前記排出路は、開口が前記除圧機構に向かって設けられている凹溝として構造されており、前記排出物は、前記開口を介して前記排出路に入る、
請求項
6または
7に記載の電池。
【請求項9】
前記凹溝は、前記除圧機構に対向して設けられている底壁と、前記除圧機構に向かって延設されている、前記底壁に接続された側壁とを有している、
請求項
8に記載の電池。
【請求項10】
前記底壁は、前記仕切り部材の少なくとも一部として構造されており、前記側壁は、前記消火チャンバの少なくとも一部のチャンバ壁として構造されている、
請求項
9に記載の電池。
【請求項11】
前記消火チャンバは、前記除圧機構の作動時に、前記消火媒体を放出するように、前記排出物によって破壊されるように構造されている、
請求項1~
10の何れか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記消火チャンバは、前記除圧機構に対向して設けられている収容凹部を含み、前記除圧機構の作動時に前記消火媒体を前記収容凹部に向かって流すように、前記収容凹部は、前記消火チャンバの前記除圧機構に向かうチャンバ壁が凹んで形成される、
請求項1~
11の何れか1項に記載の電池。
【請求項13】
前記収容凹部は、少なくとも2つ設けられており、隣接する2つの前記収容凹部の間は、互いに連通している、
請求項
12に記載の電池。
【請求項14】
前記電池は、前記電池セルの温度を調整するための熱管理部材をさらに含み、かつ、前記熱管理部材は、前記消火チャンバに前記消火媒体を送るように前記消火チャンバに連通するように構造されている、
請求項1~
13の何れか1項に記載の電池。
【請求項15】
請求項1~
14の何れか1項に記載の電池を含み、前記電池が電力を提供するために用いられる、
受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池技術分野に関し、特に電池、受電装置、電池を作製する方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を駆動エネルギーとして採用する装置において、電池は、その中核部材とし、電池の使用安全性を確保することは、装置全体の使用安全を確保するために非常に重要であり、電池の熱暴走は、電池の使用安全を脅かす重要な要因の1つである。
【0003】
現在の電池では、1つの電池セルが熱暴走を起こすと、該電池セルの内部から、高温の煙(深刻な場合に直火を発生させる)や揮発した高温の電解液などの物質を含む排出物が発生し、これらの排出物は、排出の過程で熱拡散を起こすため、他の電池セルが熱暴走を起こし、さらに爆発などの事故を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱暴走の電池セルをタイムリーに制御し、安全事故の発生を減少させるために、本願は、電池、受電装置、電池を作製する方法及び設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1態様は、
除圧機構を含む電池セルであって、前記除圧機構は、前記電池セルの内部圧力または温度が閾値に達したときに、前記内部圧力を放出するように作動するためのものである電池セルと、
消火媒体を収容するための消火チャンバであって、前記除圧機構の作動時に、前記消火媒体が前記電池セルの内部に入るように前記消火媒体を放出するように構造されている消火チャンバと、
前記消火チャンバの前記電池セルから離れる側に位置する、前記除圧機構の作動時に前記電池セルからの排出物を収集するための収集チャンバと、
前記消火チャンバと前記収集チャンバとを仕切るための仕切り部材と、を含む電池において、
前記仕切り部材は、前記除圧機構の作動時に、前記排出物が前記消火チャンバを介して前記収集チャンバに入るように、前記排出物を貫通させるように構造されている、電池を提供する。
【0006】
幾つかの実施例において、前記仕切り部材は、前記除圧機構の作動時に、前記排出物が前記消火チャンバを介して前記収集チャンバに入るように、前記排出物によって破壊されるように構造されている。
【0007】
幾つかの実施例において、前記仕切り部材には、前記除圧機構の作動時に前記排出物によって破壊されるように構造されている脆弱部が設けられている。
【0008】
幾つかの実施例において、前記脆弱部は、前記除圧機構に対向して設けられている。
【0009】
幾つかの実施例において、前記仕切り部材には、前記排出物が前記仕切り部材を貫通することが許容されるように構造されている貫通孔が設けられている。
【0010】
幾つかの実施例において、前記貫通孔は、前記除圧機構に対向して設けられている。
【0011】
幾つかの実施例において、前記仕切り部材は、前記消火チャンバと前記収集チャンバとが共通するチャンバ壁に構造されている。
【0012】
幾つかの実施例において、前記電池は、
前記電池セルを収容するためのシェルと、
前記電池セルをパッケージするように前記シェルに接続されるための蓋体と、をさらに含み、
前記消火チャンバ、前記収集チャンバ及び前記仕切り部材は、前記蓋体の少なくとも一部として構造されている。
【0013】
幾つかの実施例において、前記蓋体には、前記仕切り部材を貫通して前記収集チャンバに入るように前記排出物を案内するための排出路が設けられている。
【0014】
幾つかの実施例において、前記排出路は、前記除圧機構に対向して設けられている。
【0015】
幾つかの実施例において、前記消火チャンバは、前記排出物が前記排出路を通過するときに、前記消火媒体を放出するように、前記排出物によって破壊されるように構造されている。
【0016】
幾つかの実施例において、前記排出路は、開口が前記除圧機構に向かって設けられている凹溝として構造されており、前記排出物は、前記開口を介して前記排出路に入る。
【0017】
幾つかの実施例において、前記凹溝は、前記除圧機構に対向して設けられている底壁と、前記除圧機構に向かって延設されている、前記底壁に接続された側壁とを有している。
【0018】
幾つかの実施例において、前記底壁は、前記仕切り部材の少なくとも一部として構造されており、前記側壁は、前記消火チャンバの少なくとも一部のチャンバ壁として構造されている。
【0019】
幾つかの実施例において、前記消火チャンバは、前記除圧機構の作動時に、前記消火媒体を放出するように、前記排出物によって破壊されるように構造されている。
【0020】
幾つかの実施例において、前記消火チャンバは、前記除圧機構に対向して設けられている。
【0021】
幾つかの実施例において、前記消火チャンバは、前記除圧機構に対向して設けられている収容凹部を含み、前記除圧機構の作動時に前記消火媒体を前記収容凹部に向かって流すように、前記収容凹部は、前記消火チャンバの前記除圧機構に向かうチャンバ壁が凹んで形成される。
【0022】
幾つかの実施例において、前記収容凹部は、少なくとも2つ設けられており、隣接する2つの前記収容凹部の間は、互いに連通している。
【0023】
幾つかの実施例において、前記電池は、前記電池セルの温度を調整するための熱管理部材をさらに含み、かつ、前記熱管理部材は、前記消火チャンバに前記消火媒体を送るように前記消火チャンバに連通するように構造されている。
【0024】
本願の第2態様は、上記の実施例に係る電池を含み、前記電池が電力を提供するために用いられる受電装置を提供する。
【0025】
本願の第3態様は、
除圧機構を含む電池セルであって、前記除圧機構は、前記電池セルの内部圧力または温度が閾値に達したときに、前記内部圧力を放出するように作動するためのものである電池セルを提供するステップと、
消火媒体を収容するための消火チャンバであって、前記除圧機構の作動時に、前記消火媒体が前記電池セルの内部に入るように前記消火媒体を放出するように構造されている消火チャンバを提供するステップと、
前記消火チャンバの前記電池セルから離れる側に位置する、前記除圧機構の作動時に前記電池セルからの排出物を収集するための収集チャンバを提供するステップと、
前記消火チャンバと前記収集チャンバとを仕切るための仕切り部材を提供するステップと、を含む電池の作製方法において、
前記仕切り部材は、前記除圧機構の作動時に、前記排出物が前記消火チャンバを介して前記収集チャンバに入るように、前記排出物を貫通させるように構造されている、電池の作製方法を提供する。
【0026】
本願の第4態様は、
除圧機構を含む電池セルであって、前記除圧機構は、前記電池セルの内部圧力または温度が閾値に達したときに、前記内部圧力を放出するように作動するためのものである電池セルを提供するための第1設備と、
消火媒体を収容するための消火チャンバであって、前記除圧機構の作動時に、前記消火媒体が前記電池セルの内部に入るように前記消火媒体を放出するように構造されている消火チャンバを提供するための第2設備と、
前記消火チャンバの前記電池セルから離れる側に位置する、前記除圧機構の作動時に前記電池セルからの排出物を収集するための収集チャンバを提供するための第3設備と、
前記消火チャンバと前記収集チャンバとを仕切るための仕切り部材を提供するための第4設備と、を含む電池の作製設備において、
第4設備に提供される前記仕切り部材は、前記除圧機構の作動時に、前記排出物が前記消火チャンバを介して前記収集チャンバに入るように、前記排出物を貫通させるように構造されている、電池の作製設備を提供する。
【0027】
本願に提供された電池は、蓋体に隣接する消火チャンバと収集チャンバとが設けられており、電池セルの持続的な熱暴走による消火チャンバの膨らみ、さらなる爆発を阻止するように、収集チャンバが消火チャンバ内の消火媒体を除圧することができる。これにより、本願の実施例における電池は、電池セルの熱暴走の状況をタイムリーに制御し、それ以上の発熱や高温排出物の発生を防止することができるだけでなく、さらに電池セルから既に発生した熱や排出物を除圧し、ケースにおける熱や排出物が蓄積し続けて爆発し、より深刻な安全事故を引き起こすのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1-A】本願の一実施例における受電装置の概略構成図である。
【
図1-B】関連技術における電池の概略構成図である。
【
図1-C】関連技術における電池モジュールの概略構成図である。
【
図1-D】関連技術における電池セルの概略構成図である。
【
図2】本願の一実施例に係る電池の爆発構成概略図である。
【
図4】蓋体と電池セルとの組み立て状態での断面概略構成図である。
【
図6】収容凹部が複数設けられ、互いに連通せず、かつ、補強板が設けられていない場合の概略構成図である。
【
図7】
図6におけるB-B断面の断面図であり、収容凹部を明確に示すために、図中には、収集チャンバと仕切り部材は図示されていない。
【
図9】収容凹部が複数設けられ、互いに連通し、かつ、補強板が設けられている場合の概略図である。
【
図10】
図9におけるD-D断面の断面図であり、収容凹部を明確に示すために、図中には、収集チャンバと仕切り部材は図示されていない。
【
図12】本願の一実施例における仕切り部材の概略図である。
【
図13】本願の別の実施例における仕切り部材の概略図である。
【
図14】本願の別の実施例における仕切り部材の概略図である。
【
図15】本願の別の実施例における仕切り部材の概略図である。
【
図16】本願の一実施例における電池の作製方法のプロセスフローチャートである。
【
図17】本願の一実施例における電池の作製設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願の目的、技術的解決手段及び利点をより明らかにするために、以下、図面及び実施例に合わせて、本願をさらに詳しく説明する。理解すべきこととして、ここで説明される具体的な実施例は、本願を解釈するためのものにすぎず、本願の好適な実施例であり、これによって本願の保護範囲を制限するものではない。したがって、本願の構造、形状、原理による全ての等価変化は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【0030】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術と科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明する目的にのみ使用され、本願を限定するものではない。本願の明細書、特許請求の範囲及び上記の図面に関する説明の「含む」、「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図する。
【0031】
本明細書での「実施例」への言及は、実施例に説明される特定の特徴、構造又は特性に合わせて、本願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。明細書の様々な位置で当該フレーズの「実施例」の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を指すとは限らず、他の実施例と相互排除する独立又は代替の実施例でもない。当業者によって明示的及び暗黙的に理解されるべきことは、本明細書に記載される実施例が他の実施例と組み合わせることができるということである。
【0032】
本明細書において、「及び/又は」という用語は、関連するオブジェクトを説明するための関連関係に過ぎず、3種類の関係が存在できることを示す。例えば、単独のA、AとBとの組み合わせ、単独のBの3つのケースを示すことができる。また、本明細書の文字「/」は、一般的に、前後に関連するオブジェクトが「又は」の関係であることを示す。
【0033】
また、本願の明細書と特許請求の範囲または上記図面における「第1」、「第2」などの用語は、異なるオブジェクトを区別するために使用され、特定の順序を説明するものではなく、1つまたはより多くの該特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。
【0034】
本願の説明において、別段の説明がない限り、「複数」の意味は2つ以上(2つを含む)を指す。同様に、「複数のグループ」とは、2つ以上のグループ(2つのグループを含む)を指す。
【0035】
本願の説明において、説明すべきこととして、別途明確な規定や限定がない限り、「取り付け」、「連結」、「接続」という用語は、広く理解されるべきである。例えば、機械構造の「連結」または「接続」は、物理的な接続を指してもよく、物理的な接続は、固定接続であってもよい。例えば、固定部材により固定接続され、例えば、ねじ、ボルト又は他の固定部材により固定接続される。物理的な接続は、着脱可能に接続されてもよく、例えば、互いに係止されるか又は係合接続される。物理的な接続は、一体的に接続されてもよく、例えば、溶接、接着又は一体成形により接続を形成して接続される。回路構造の「連結」又は「接続」は、物理的な接続を指すことができるほか、さらに電気的接続又は信号接続を指してもよく、例えば、物理的に接続されるなど、直接連結されてもよく、中間の少なくとも一つの素子により間接連結されてもよく、回路が連通することを達成すればよく、さらに、二つの素子内部での連通であってもよい。信号接続は、回路により信号接続を行うことができるほか、例えば、無線電波などの、媒体により信号接続を行うことを指してもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて、本願の実施例における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0036】
以下の実施例において各方位を明確に説明するために、幾つかの方位用語を使用することができ、例えば、
図1-Dにおける座標系は、電池200の各方位方向を定義し、X方向は、電池セル3の長さ方向を示し、Y方向は、水平面内でX方向と垂直であり、電池セル3の幅方向を示し、Z方向は、X方向及びY方向に垂直であり、電池200の高さ方向を示す。また、上記説明されたX方向、Y方向及びZ方向などの、本実施例の電池200の各部材の動作及び構造の指示方向を説明するための表現は、絶対的ではなく相対的であり、かつ、電池200の各部材が図に示す位置にある場合に、これらの指示は適切であるが、これらの位置が変化する場合に、前記変化に対応するために、これらの方向は異なる解釈を有するべきである。
【0037】
同じ方位に対する理解に基づいて、本願の説明において、「中央」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「円周方向」などにより指示される方向又は位置関係は、図面に示される方向又は位置関係に基づくものであり、本願を説明しやすくし、説明を簡略化するためのものに過ぎず、示される装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成又は操作しなければならないことを指示又は暗示するものではない。従って、本願を制限するものとして理解されるべきではない。
【0038】
充電池は、二次電池または動力電池と呼ぶことができる。現在、比較的に広く用いられている充電池は、リチウム電池であり、例えば、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池またはマグネシウムイオン電池であるが、これらに限定されない。説明しやすいために、本明細書において、充電池を電池200と総称することができる。
【0039】
電池200の安全特性は、電池200を評価する重要な特性であり、使用時や充電時には、電池200の安全性をできるだけ確保する必要がある。
【0040】
電池200は、複数の電池セル3を接続して組み立てて構成されるものが一般的であり、電池セル3に外部短絡、過充電、針刺し、プレート衝撃などの状況が発生すると、電池セル3が熱暴走しやすくなり、該電池セル3の内部から、高温の煙(深刻な場合に直火を発生させる)や揮発した高温の電解液などの物質を含む排出物が発生し、これらの排出物は、排出の過程で熱拡散を起こすため、他の電池セル3が熱暴走を起こし、さらに爆発などの事故を引き起こす。
【0041】
電池セル3の熱暴走に対しては、現在、効果的な解決手段として、消火システムを設定し、電池セル3に熱暴走が発生した場合に、電池セル3の爆発や失火の発生を阻止したり、遅らせたりするように消火システムが消火を行うことである。
【0042】
消火システムは、一般的に電池セル3の除圧機構33に対向して設けられ、例えば、電池200を収容するケース1の上部の蓋体2内に消火システムを設けることができ、例えば、蓋体2内に消火媒体を収容する消火チャンバ25が設けられており、電池セル3の排出物が消火チャンバ25のチャンバ壁を破壊したときに、消火媒体が流出して電池セル3内に入り、電池セル3の排出物も消火チャンバ25に入ることができる。
【0043】
しかし、発明者らの長期にわたった研究により、蓋体2の消火チャンバ25内に多くの排出物が入ると、蓋体2は、膨らみや爆発などの安全上の問題が発生しやすいことが判明する。この問題は、主に、蓋体2が一般的に非金属や金属薄板でできており、強度が小さく、消火チャンバ25の容積が小さい一方、消火の過程でケース内の排出物や温度が上昇し続け、熱暴走による排出物の量が急激に上昇することがあることによって、消火チャンバ25の容積が排出物の収容要求を満たすことが困難になるためである。
【0044】
関連技術によれば、消火剤を用いて熱暴走を起こした電池セル3を消火することがあるが、消火チャンバ25は、熱暴走の過程で既に発生した排出物を排出することができず、排出物の量がある程度に達した後で、低い程度でケースが変形し、高い程度で爆発し、深刻な安全事故が発生する。
【0045】
これに鑑み、本願は、消火媒体を収容する蓋体2内の消火チャンバ25に対して、消火チャンバ25内の排出物を収集するための隣接する収集チャンバ24を追加し、除圧効果を達成する電池を提供する。したがって、本願に提供された電池200は、電池セル3の熱暴走の状況をタイムリーに制御し、それ以上の熱と高温の排出物の発生を防止することができるだけでなく、電池セル3が既に発生した熱や排出物を除圧して、ケース中の熱や排出物が累積し続けて爆発し、さらなる安全事故を引き起こすことを防止することができる。
【0046】
本願の実施例における電池200は、電力で動力源を提供することができる様々な受電装置に適用することができる。ここでの受電装置は、電気自動車、電動列車、電動自転車、ゴルフカート、船舶などであってもよいが、これらに限定されない。また、受電装置は、電池200のみを用いて動力を提供する装置であってもよいし、ハイブリッド型の装置であってもよい。電池200は、受電装置に電力を提供するとともに、モーターによって電動装置を走行させるように駆動する。
【0047】
例えば、
図1-Aに示すように、本願の一実施例に係る受電装置の概略構成図であり、受電装置は、自動車であってもよく、自動車は、燃料自動車、ガス自動車または新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純粋な電気自動車、ハイブリッド自動車またはレンジエクステンデッド自動車などであってもよい。自動車は、電池200と、コントローラ210と、モーター220と、を含む。電池200は、コントローラ210とモーター220に自動車の操作電源と駆動電源として電力を提供するために用いられ、例えば、電池200は、自動車の起動、ナビゲーション及び運転時の動作電力消費のニーズに用いられる。例えば、電池200は、コントローラ210に電力を供給し、コントローラ210は、モーター220に電力を提供するように電池200を制御し、モーター220は、電池200の電力を受電するとともに、自動車の駆動電源として用いて、燃料油または天然ガスの代わりにまたは燃料油または天然ガスの一部の代わりに自動車に駆動力を提供する。
【0048】
電池200の高機能化を図ることによって、使用のニーズを満たすために、電池200は、互いに電気的に接続される複数の電池モジュール300を含むことができ、
図1-Bに示すように、電池200は、第1ケース201と、第2ケース202と、複数の電池モジュール300と、を含み、ここで、第1ケース201と第2ケース202とが互いに係合され、複数の電池モジュール300が第1ケース201と第2ケース202により囲まれて形成された空間内に配置されている。幾つかの実施例において、第1ケース201と第2ケース202とは、封止して接続されている。
【0049】
図1-Cに示すように、電池モジュール300は、直列、並列、または直列と並列の組み合わせを意味する直並列の態様で電気的に接続されることによって、大きな電流または電圧を実現することができる複数の電池セル3を含む。例えば、
図1-Cに示すように、電池セル3は、立設可能であり、電池セル3の高さ方向は、鉛直方向と一致し、複数の電池セル3は、幅方向に沿って併設される。あるいは、電池セル3を水平に寝かせてもよく、電池セル3の幅方向が鉛直方向と一致し、複数の電池セル3を幅方向に沿って少なくとも1層堆積することができ、各層ごとに長手方向に沿って配列された複数の電池セル3を含む。
【0050】
本願の改善点を当業者に明らかに理解されるために、まず、電池セル3の全体的な構成を説明する。
【0051】
図1-Dに示すように、電池セル3は、筐体31と、電極アセンブリ30と、エンドキャップアセンブリ10と、を含み、エンドキャップアセンブリ10は、筐体31に接続(例えば、溶接)されて電池セル3のハウジングを形成するエンドキャッププレート10’を含み、電極アセンブリ30が筐体31内に設けられるとともに、筐体31内に電解液が充填された。電池セル3は、立方体形、直方体形、または円柱形であってもよい。
【0052】
実際の使用ニーズに応じて、電極アセンブリ30は、単一または複数設けられてもよい。
図1-Dに示すように、電池200内に独立して巻回された電極アセンブリ30を少なくとも2つ設けてもよい。電極アセンブリ30は、第1タブと、第2タブと、隣り合う第1タブと第2タブとの間に位置するセパレータとを一緒に巻回または堆積することで本体部を形成することができ、ここで、セパレータが、隣り合う第1タブと第2タブとの間に介在する絶縁体である。本実施例において、第1タブを正極タブとし、第2タブを負極タブとして例示的に説明する。正極活物質は、正極タブのコーティングエリアにコーティングされる一方、負極活物質は、負極タブのコーティングエリアにコーティングされる。本体部のコーティングエリアからはみだした複数の不コーティングエリアが積層されてタブリード301とされる。電極アセンブリ30は、正極タブリードと負極タブリードという2つのタブリード301を含む。正極タブリードは、正極タブのコーティングエリアからはみだす一方、負極タブリードは、負極タブのコーティングエリアからはみだす。
【0053】
エンドキャップアセンブリ10は、電極アセンブリ30の上部に設けられており、
図1-Dに示すように、エンドキャップアセンブリ10は、エンドキャッププレート10’と、2つの電極端子32とを含み、2つの電極端子32は、それぞれ正極端子と、負極端子とであり、各電極端子32ごとに、エンドキャッププレート10’と電極アセンブリ30との間に位置する1つの接続部材20が対応して設けられた。
【0054】
例えば、
図1-Dにおける電極アセンブリ30のタブリード301は、上部に位置し、1つの接続部材20を介して正極端子に正極タブリードが接続されており、もう1つの接続部材20を介して負極端子に負極タブリードが接続されている。例えば、電池セル3は、筐体31の両端にそれぞれ設けられた2つのエンドキャップアセンブリ10を含んでもよく、各エンドキャップアセンブリ10ごとに1つの電極端子32が設けられた。
【0055】
エンドキャッププレート10’には、電池セル3内のガスが多すぎる場合に、電池セル3内のガスをタイムリーに釈放し、爆発の発生を避ける防爆部材がさらに設けられてもよい。
【0056】
エンドキャッププレート10’には、排気孔が設けられており、排気孔は、エンドキャッププレート10’の長手方向に沿った中央位置に設けられることができる。防爆部材は、排気孔に設けられた除圧機構33を含み、通常状態で、除圧機構33が排気孔に封止して取り付けられ、電池セル3が膨張してハウジング内の気圧が上昇して所定値を超えると、除圧機構33が開き、ガスが除圧機構33で外部に釈放される。
【0057】
除圧機構33とは、電池セル3の内部圧力または内部温度が所定の閾値に達したときに、内部圧力および/または内部物質を放出するように作動することができる部品または部材を指す。除圧機構33は、具体的に、例えば、防爆弁、エアバルブ、除圧弁または安全弁などの形態を用いることができ、かつ、具体的に、感圧又は感温の部品や構造を用いることができ、すなわち、電池セル3の内部圧力や温度が所定の閾値に達したときに、除圧機構33が動作を実行したり、除圧機構33に設けられた脆弱な構造が破壊されたりして、内部圧力を放出することが可能な開口や通路を形成する。本願でいう閾値は、圧力閾値または温度閾値であってもよく、設計要求によって該閾値の設計が異なり、例えば、危険または暴走のリスクがあると考えられる電池セル3の内部圧力または内部温度値に基づいて該閾値を設計または特定することができる。また、該閾値は、例えば、電池セル3における正極タブ、負極タブ、電解液及びセパレータのうちの一種又は複数種に用いられる材料によって決定される可能性がある。
【0058】
本願において言及された「作動」とは、除圧機構33が動作するか又は一定の状態にアクティブ化されることにより、電池セル3の内部圧力が放出されることを可能にすることを指す。除圧機構33により発生された動作は、除圧機構33における少なくとも一部が破裂し、破砕し、引き裂かれ又は開かれる等を含むことができるが、それらに限定されない。除圧機構33が作動する時に、電池セル3の内部の高温高圧の物質は、排出物として作動する部位から外部へ排出される。このように、圧力又は温度が制御可能な場合に、電池セル3に除圧を発生させることにより、潜在的なより深刻な事故の発生を回避することができる。本願において言及された電池セル3からの排出物は、電解液、溶解又は分裂された正負極タブ、セパレータの破片、反応により生成された高温高圧ガス、火炎等を含むが、それらに限定されない。高温高圧の排出物は、電池セル3の除圧機構33が設けられた方向に向かって排出されるとともに、より具体的に、除圧機構33が作動する領域の方向に向かって排出されることができ、このような排出物の威力及び破壊力が非常に大きく、ひいては該方向での一つ又は複数の構造を突き破ることに十分である可能性がある。
【0059】
幾つかの実施例において、
図1-Dに示すように、エンドキャッププレート10’に電池セル3内に電解液を注入するための貫通孔が設けられ、貫通孔は、円孔、楕円孔、多角形孔又は他の形状の孔を用いることができ、かつ、エンドキャッププレート10’の高さ方向に沿って延在することができる。エンドキャッププレート10’には、貫通孔を閉塞するための注液部材40が設けられている。
【0060】
電池200の使用過程における上記問題を解決するために、本願により提供される電池200の具体的な構造は、以下のとおりである。
【0061】
図2を参照し、電池200は、シェル1と、蓋体2と、少なくとも1つの電池モジュール300と、を含む。シェル1は、中空構造であり、かつ開口を有し、シェル1と蓋体2は、開口部で互いに結合されてケースを形成し、該ケースは、少なくとも1つの電池モジュール300を収容するための収容チャンバを有する。
【0062】
例えば、シェル1と蓋体2は、溶接、ボルト接続、ねじ接続、接着等の方式を用いて接続されてケースを形成することができ、1つ又は複数の電池モジュール300を収容するために用いられ、シェル1の上方の開口は、取り付け又は交換過程において電池モジュール300を出し入れするために用いられる。シェル1及び蓋体2は、アルミニウム、アルミニウム合金又は他の金属材料で製造することができる。
【0063】
蓋体2は、シェル1に封止して接続されてシェル1上の開口を閉塞することにより、電池モジュール300をケース内にパッケージする。
【0064】
図2を参照し、電池モジュール300は、一つ又は複数の電池セル3を含むことができ、電池モジュール300が複数の電池セル3を含む場合に、該複数の電池セル3は、所定の規則に従って配列されてもよく、例えば、複数の電池セル3は、直線に沿って一列に配列される。
【0065】
図3、
図4、
図5を参照し、本願の実施例における蓋体2は、上層板21と、下層板23と、仕切り部材22とを含み、上層板21は、蓋体2のシェル1から離れるパネルであり、下層板23は、蓋体2のシェル1に近いパネルであり、例えば、上層板21と下層板23は、略平行であり、上層板21と下層板23は、それらの周辺の側板212によりチャンバを形成し、仕切り部材22は、チャンバを収集チャンバ24と消火チャンバ25に分割するために用いられ、ここで、仕切り部材22は、板状であってもよく、収集チャンバ24と消火チャンバ25は、下層板23に垂直な方向に沿って分布し、かつ、下層板23に垂直な方向に沿って、消火チャンバ25は、収集チャンバ24の下に位置し、これにより、消火チャンバ25は、電池セル3に近接し、収集チャンバ24は、電池セル3から離れる。
【0066】
例えば、上層板21の縁は、シェル1が位置する側に延在して側板212を形成し、側板212は、さらに下層板23と結合されてチャンバが形成され、例えば、側板212と下層板23とが溶接結合され、仕切り部材22と下層板23との間に消火チャンバ25が形成され、仕切り部材22と上層板21との間に収集チャンバ24が形成され、仕切り部材22は、消火チャンバ25と収集チャンバ24とが共通するチャンバ壁であり、消火チャンバ25と収集チャンバ24とを仕切るために用いられ、ここで、仕切り部材22が消火チャンバ25と収集チャンバ24とを仕切るとは、2つのチャンバを分けて、消火チャンバ25と収集チャンバ24とが連通するか否かを制限しないことを指す。例えば、消火チャンバ25と収集チャンバ24とは、仕切り部材22の貫通孔を介して連通してもよく、消火チャンバ25と収集チャンバ24とは連通せず、例えば、仕切り部材22に貫通孔がなくてもよい。仕切り部材22と下層板23の縁は、いずれも側板212に接着または溶接で接続されていてもよい。
【0067】
消火チャンバ25の内部には消火媒体が収容されている。消火媒体としては、例えば、水、液体窒素などの液体消火剤であってもよいし、例えば、ドライパウダー消火剤、フッ化タンパク泡消火剤、水成膜泡消火剤などの固体粉末消火剤であってもよい。例えば、比熱が大きく、熱暴走した電池セル3を迅速に降温させることが可能な、低コストで保存要求も低い液体水を消火媒体として用いる。そして、下層板23は、電池200の正常状態では上層板21の側板212との間で水を貯留するように閉塞状態にある。
【0068】
図4、
図5を参照し、電池セル3の内部により正確に消火媒体を進入させ、熱暴走した電池セル3内の熱や排出物の発生をより速い速度で阻止し、熱拡散を防止するために、電池セル3上の除圧機構33は、消火チャンバ25に対向して設けられている。
【0069】
そして、消火媒体が液体消火剤である場合に、電池セル3の電極端子32及び電極端子32に接続されたバスバー部材(不図示)を保護し、消火媒体が電極端子32及びバスバー部材に散布されたことによる短絡ないしより危険な事故を回避するために、
図1、
図3を参照し、本願の実施例における電池セル3の電極端子32と除圧機構33とは、それぞれ電池セル3の異なる面に位置する。例えば、電極端子32と除圧機構33とは、それぞれ電池セル3の互いに垂直な2つの面に位置する。例えば、電池セル3の除圧機構33が設けられている面を電池セル3の上面と呼ぶことができ、電池セル3の電極端子32が設けられている面を電池セル3の側面と呼ぶことができ、上面と側面が互いに垂直であり、電池セル3に接続されているバスバー部材は、同様に電池セル3の側面に位置する。消火媒体が電極端子32とバスバー部材に散布されないようにある程度確保されることによって、消火過程中の安全性が確保される。
【0070】
図5を参照し、除圧機構33が排出物を噴出するときに、熱暴走した電池セル3をできるだけ速く消火降温するために、下層板23全体、または少なくとも下層板23の除圧機構33との正対箇所を排出物によって破壊されやすい構造とし、ここでの「破壊」の形態は、貫通、破裂、破砕、引き裂かれのうちの1つを含むが、これらに限定されない。本願の実施例において、下層板23の除圧機構33との正対箇所を、電池セル3の内部で発生する高温高圧の排出物に溶けられやすい脆弱構造または低融点構造に構造することにより、高温高圧の排出物が作動した除圧機構33から排出されたときに、排出物が下層板23を迅速に溶け、消火チャンバ25の除圧機構33に対向して設けられたチャンバ壁が破壊されることによって、消火チャンバ25内の消火媒体が放出され、消火媒体が除圧機構33を通って電池セル3の内部に入ることによって、熱暴走した電池セル3を消火降温の処理をする。
【0071】
下層板23の除圧機構33との正対箇所が脆弱構造に構造されるには、該正対箇所の強度を下層板23の残りの部分の強度よりも小さくしてもよい。例えば、正対箇所の厚さは、下層板23の残りの部分の厚さよりも小さく、または、該正対箇所は、貫通孔である。
【0072】
下層板23の除圧機構33との正対箇所が低融点構造に構造されるには、該正対箇所の融点を下層板23の残りの部分の融点よりも小さくしてもよい。
【0073】
本願の他の幾つかの実施例において、下層板23の除圧機構33との正対箇所を下層板23の残りの部位との間にミシン目で接続されたシート状の構造に構造してもよい。これにより、消火媒体を放出するように除圧機構33から排出された排出物に突き破られやすくなり、消火媒体が除圧機構33を通って電池セル3の内部に入ることによって、熱暴走した電池セル3を消火降温の処理をする。
【0074】
本願の実施例でいう「ミシン目」とは、引き裂く必要がある部位と引き裂く必要のない部位との間を外力で断続的に破壊することによって形成された断続的なスクライブであり、破壊された材料の位置は、薄くても貫通されず、わずかな外力を受ければ割れることができるが、破壊されていない材料の位置部分は、元の材料の厚さを保留し、このように断続的に破壊されることによって形成される線をミシン目と呼ぶ。ミシン目は、レーザー穴あけ機、レーザーマーカー、レーザースクライブ機またはレーザーカッターで形成することができる。
【0075】
図6~
図11を参照し、除圧機構33の作動時に消火チャンバ25がより破壊されやすく、かつ消火チャンバ25内の消火媒体が電池セル3内に流入しやすくするために、消火チャンバ25のチャンバ壁である下層板23には、下層板23が電池セル3側に凹んで形成された収容凹部231が設けられ、下層板23の電池セル3から離れた表面が凹んで収容凹部231が形成され、収容凹部231の開口は、仕切り部材22に向かっており、収容凹部231の厚さは、下層板23の他の部位の厚さよりも薄くなることによって、電池セル3の排出物によって収容凹部231が破壊されやすくなる。収容凹部231は、1つまたは複数設けられるとともに、各収容凹部231は、少なくとも1つの除圧機構33に対向して設けられている。
【0076】
上記消火チャンバ25の構造により、収容凹部231と除圧機構33との間の距離が近くなり、かつ厚さも薄いため、除圧機構33の作動時に、電池セル3から発生する排出物によって速やかに溶け破壊されることによって、消火媒体を釈放して消火降温し、熱拡散の発生を阻止することができる。また、収容凹部231が破壊された後でも、収容凹部231は、消火チャンバ25内の消火媒体を収容凹部231に案内して流入させるとともに、収容凹部231の破壊された部位に向かって流し続け、電池セル3の内部にできるだけ速やく進入させるためのガイド作用をさらに奏することができ、熱暴走を速やかに抑制する効果を図る。
【0077】
図6~
図8を参照し、収容凹部231が2つ以上設けられている場合に、隣接する2つの収容凹部231の間は、互いに独立して互いに分離することができ、各収容凹部231の内部の消火媒体は、該収容凹部231の内部を流通することによって、各収容凹部231内で一定の消火媒体を保持することができる。
【0078】
また、
図9~
図11を参照し、収容凹部231が2つ以上設けられている場合に、隣り合う2つの収容凹部231の間は、互いに連通してもよい。例えば、隣り合う2つの収容凹部231は、異なる収容凹部231の内部の消火媒体が互いに流通できるように、開口方向が収容凹部231の開口方向と同じであるガイド溝を介して互いに連通しており、1つの収容凹部231に対応する1つの除圧機構33が作動すると、各収容凹部231の内部の消火媒体がいずれも該除圧機構33に向かって流動することができ、消火媒体の十分な供給が確保される。
【0079】
消火チャンバ25のチャンバ壁が破壊された瞬間とその後の短時間内で、熱暴走した電池セル3は、熱や排出物を発生するとともに、除圧機構33を通って排出され、熱や排出物は、消火チャンバ25にあふれるようになる。
【0080】
熱や排出物によって消火チャンバ25内の気圧が必ず膨らみが生じるまで上昇し、深刻な場合に、爆発を引き起こすなどの状況を回避するために、本願の実施例において、収集チャンバ24を消火チャンバ25の電池セル3から離れた側に位置するように設けるとともに、仕切り部材22を、除圧機構33の作動時に排出物が貫通し得る構造に構造することによって、排出物が消火チャンバ25を介して収集チャンバ24に入り、消火チャンバ25内の気圧が高くなりすぎる状況を緩和し、深刻な安全事故の発生を回避する。
【0081】
図12を参照し、本願の一実施例に開示されている電池200において、仕切り部材22は、除圧機構33の作動時に排出物によって破壊されることによって、排出物が消火チャンバ25を介して収集チャンバ24に入るように構造される。ここでの「破壊」の形態は、貫通、破裂、破砕、引き裂かれのうちの1つを含むが、それらに限定されない。
【0082】
例えば、仕切り部材22は、除圧機構33に対向して設けられた少なくとも1箇所の脆弱部221を含む。脆弱部221は、本実施例において、電池セル3の内部で発生する高温高圧の排出物に溶けられたり突き破られたりしやすい脆弱構造または低融点構造である。例えば、脆弱部221は、仕切り部材22の一部であり、かつ、脆弱部221の強度が仕切り部材22の他の部分よりも低い。例えば、脆弱部221の厚さが仕切り部材22の他の部分よりも小さい。あるいは、脆弱部221と仕切り部材22の残りの部位との間をミシン目で接続することで、高温高圧の排出物により、下層板23が破壊された後で、消火チャンバ25から消火媒体を放出すると同時に、排出物が溶けや高圧突き破りで脆弱部221を迅速に破壊するとともに、収集チャンバ24内に入り、収集チャンバ24が消火チャンバ25内の排出物に対して除圧し、電池200に膨らみや爆発の発生を回避し、電池200の使用安全性を向上させることができる。
【0083】
図13を参照し、本願の別の実施例に開示されている電池200は、上記実施例における電池と基本的に同じであるが、仕切り部材22の構造が異なることに相違している。
【0084】
例えば、本実施例における仕切り部材22には、消火チャンバ25と収集チャンバ24とを連通する貫通孔222が設けられており、これにより、排出物が消火チャンバ25のチャンバ壁を破壊した後で、貫通孔222を介して仕切り部材22を貫通して収集チャンバ24内に入ることが許容される。
【0085】
本実施例における貫通孔222は、除圧機構33に対向して設けられることにより、排出物が消火チャンバ25を介して速やかに収集チャンバ24内に直接的に入り、消火チャンバ25の圧力を緩和する。
【0086】
図14を参照し、本願の別の実施例は、他の実施例と基本的に同じであるが、仕切り部材22と下層板23との間に、排出物を収集チャンバ24内に速やかに導入するための排出路26がさらに設けられており、排出路26が除圧機構33に対向して設けられており、各排出路26ごとに1つまたは複数の除圧機構33を対応させており、例えば、1つの排出路26が1つの電池セル3上の除圧機構33、または、複数の電池セル3上の除圧機構33に対応していることに相違している。
【0087】
本実施例における排出路26は、開口が除圧機構33に向かって設けられている凹溝として構造されている。凹溝の具体的な構造として、凹溝は、仕切り部材22の少なくとも一部として構造された底壁261と、消火チャンバ25と排出路26とを仕切るための、消火チャンバ25の少なくとも一部のチャンバ壁として構造された、底壁261に接続された側壁262とを有している。底壁261は、除圧機構33に対向して設けられている。ここでの底壁261は、前記の実施例における脆弱部221と同じ構造に構造されている。側壁262は、除圧機構33に向かって延設されている。本実施例における側壁262と底壁261との間は、直接接続されており、側壁262の底壁261から離れる一端は、下層板23に当接している。
【0088】
消火チャンバ25は、排出物が排出路26を通過するときに排出物によって破壊されるとともに、消火媒体を放出する。それと同時に、排出物は、排出路26の開口を介して排出路26に入るとともに、凹溝の底壁261を破壊する。排出路26は、仕切り部材22を貫通して収集チャンバ24に入るように排出物を案内するために用いられ、これによって、排出物は収集される。
【0089】
図15を参照し、本願の別の実施例は、上記の実施例と基本的に同じであるが、本実施例における排出路26が、下層板23の電池セル3から離れる側に接続された側壁262のみを有し、側壁262が電池セル3から離れる方向に延在するように構造され、仕切り部材22は、上記の実施例と同様に貫通孔222を有する構造を用い、側壁262が貫通孔222の縁に当接するか、または貫通孔222内に挿入されることによって、消火チャンバ25を封止することに相違している。
【0090】
消火チャンバ25は、排出物が排出路26を通過するときに排出物によって破壊されるとともに、消火媒体を放出する。それと同時に、排出物は、側壁262で囲まれた領域を介して排出路26に入り、仕切り部材22上の貫通孔222を経て収集チャンバ24に入る。これにより、排出物は収集される。
【0091】
図1、
図2を参照し、上記の各実施例において、収集チャンバ24にも、気圧が飽和することがあるため、蓋体2には、電池セル3の熱暴走時に収集チャンバ24で収集された排出物を電池200の外部に排出し、電池200の使用安全性を向上させるための、例えば、防爆弁、エアバルブ、除圧弁または安全弁などの圧力で作動する弁27が設けられてもよい。
【0092】
また、
図8、
図9及び
図10を参照し、蓋体2の上層板21が高温高圧の排出物によって噴付貫通されるのを防止するために、上層板21には補強板211が設けられており、補強板211は、上層板21と一体で、厚くされた構造に構造されてもよいし、上層板21に溶接や接着、またはねじ接続された補強構造に構造されてもよい。補強板211は、金属板であってもよいし、雲母板、ロックウール板、フライアッシュバルン板、バーミキュライト板などの軽量耐火板であってもよい。補強板211は、蓋体2の内部に設けられてもよいし、蓋体2の外部に設けられてもよい。補強板211は、上層板21全体を覆ってもよいし、下層板23上の収容凹部231に対する上層板21の位置のみに設けられてもよい。図中、補強板211は、下層板23上の収容凹部231に対する上層板21の位置に設けられるとともに、蓋体2の外部に設けられた場合の概略図のみが示されており、補強板211の残りの設置状況は、図示されていないが、当業者は、これに基づいて合理的に推定することができ、図示は省略する。
【0093】
蓋体2の上層板21は、補強されているため、排出物に噴付貫通されにくい。電池200の使用安全性は、確保されている。
【0094】
本願の別の実施例において、消火チャンバ25内の消火媒体は、消火チャンバ25内に予め収容されてもよい。
【0095】
本願の別の実施例において、電池200は、電池セル3の温度を調整するための熱管理部材(不図示)をさらに含み、かつ、熱管理部材は、消火チャンバ25に消火媒体を送るように消火チャンバ25に連通するように構造されている。消火媒体は、熱管理部材によって電池セル3を温度制御することができるだけでなく、さらに、電池セル3に熱暴走が発生した場合に、熱管理部材が消火チャンバ25に消火媒体を送ることによって、消火媒体の十分な供給を確保する効果を図ることができる。
【0096】
一般的に、熱管理部材は、電池セル3の底部に設けられ、電池セル3の温度を調整するために用いられ、例えば、熱管理部材は、電池セル3を降温させたり、予め設定された温度まで昇温させたりするために用いられる。電池セル3を冷却または降温させる場合、該熱管理部材は、複数の電池セル3を降温させるために冷却流体を収容するために用いられる。このとき、熱管理部材は、冷却部材、冷却システムまたは冷却板などと呼ばれてもよく、それに収容されている流体は、冷却媒体または冷却流体と呼ばれてもよく、より具体的には、冷却液または冷却ガスと呼ばれてもよく、それに収容されている流体は、直接的に、消火媒体であってもよく、ここでの流体は、循環して流れるように設定することができる。また、熱管理部材は、複数の電池セル3を昇温させるように加熱するために用いられてもよく、本願の実施例は、これを限定しない。
【0097】
例えば、熱管理部材は、ケースを貫通してシェル1の外部に延在する接続管を含み、電池200の外部に設けられた貯液容器(図中、不図示)に連結される。貯液容器内に消火媒体が収容され、ここで、熱管理部材と貯液容器とは、接続管を介して循環回路を構成する。熱管理部材は、消火チャンバ25に連通するように構造されており、例えば、熱管理部材は、管路を介して消火チャンバ25に連通したり、熱管理部材、消火チャンバ25及び接続管は、三方管を介して連通したりする。
【0098】
熱管理部材が電池セル3の温度を降下させる必要がある場合に、電池セル3の温度を降下させるように、温度の低い消火媒体が接続管を介して貯液容器と熱管理部材との間を循環して流れる。熱管理部材が電池セル3の温度を上昇させる必要がある場合に、貯液容器に温度の高い消火媒体を収容してもよい。消火媒体は、接続管を介して貯液容器と熱管理部材の間を循環して流れ、電池セル3に対する昇温を実現し、電池セル3に対する温度調整を実現し、電池セル3を所定の温度で動作させることが確保され、電池200の使用性能が確保される。
【0099】
以上により、本願に提供された電池200は、蓋体2に隣接する消火チャンバ25と収集チャンバ24とが設けられており、電池セル3の熱暴走時に消火チャンバ25の膨らみ、さらなる爆発を阻止するように、収集チャンバ24が消火チャンバ25内の消火媒体を除圧することができる。これにより、本願の実施例における電池200は、電池セル3の熱暴走の状況をタイムリーに制御し、それ以上の発熱や高温排出物の発生を防止することができるだけでなく、さらに電池セル3から既に発生した熱や排出物を除圧し、ケースにおける熱や排出物が蓄積し続けて爆発し、より深刻な安全事故を引き起こすのを防止することができる。
【0100】
そして、本願における電池200は、上記の特性を有しているため、本願に提供される電池200により提供される電力を用いる受電装置は、電池爆発による安全事故が発生しにくく、使用安全性が高い。
【0101】
また、本願は、本願における上記の電池200を作製するための電池の作製方法もさらに提供する。
【0102】
図16を参照し、本願の一実施例において、電池200の作製方法は、
電池セル3であって、電池セル3の数が1つまたは複数であってもよく、電池セル3は、電池セル3の内部圧力または温度が閾値に達したときに、内部圧力を放出するように作動するための除圧機構
33を含む電池セル3を提供するステップaと、
消火媒体を収容するための消火チャンバ25であって、いくつかの実施例において、除圧機構33の作動時に、消火媒体が電池セル3の内部に入るように消火媒体を放出するように構造されている消火チャンバ25を提供するステップbと、
消火チャンバ25の電池セル3から離れる側に位置する、除圧機構33の作動時に電池セル3からの排出物を収集するための収集チャンバ24を提供するステップcと、
消火チャンバ25と収集チャンバ24とを仕切るための仕切り部材22を提供するステップdと、を含む。
【0103】
ここで、仕切り部材22は、除圧機構33の作動時に、排出物が消火チャンバ25を介して収集チャンバ24に入るように、排出物を貫通させるように構造されている。
【0104】
上記の各ステップの順序は、上記の配列順に完全に従って行われるわけではなく、実際に電池200を製造する過程で、上記のステップの順序を実情に応じて調整したり、同期して行ったり、あるいは他のステップを加えて電池200の他の部材を製造したりすることによって、最終的に必要な電池200を得ることができる。具体的には、電池200の一部の実施例を参照されたい。
【0105】
いかなる関連部材の製造および関連部材の接続が可能な方法は、いずれも本願の実施例の保護範囲内に収まる。本願の実施例は、ここで詳しい説明を省略する。
【0106】
本願の第4態様は、電池の作製設備を提供し、
図17を参照し、電池の作製設備は、
電池セル3の内部圧力または温度が閾値に達したときに、内部圧力を放出するように作動するための除圧機構33を含む電池セル3を提供するための第1設備401と、
消火媒体を収容するための消火チャンバ25であって、除圧機構33の作動時に、消火媒体が電池セル3の内部に入るように消火媒体を放出するように構造されている消火チャンバ25を提供するための第2設備402と、
消火チャンバ25の電池セル3から離れる側に位置する、除圧機構33の作動時に電池セル3からの排出物を収集するための収集チャンバ24を提供するための第3設備403と、
消火チャンバ25と収集チャンバ24とを仕切るための仕切り部材22を提供するための第4設備404と、を含む。
【0107】
ここで、第4設備404に提供される仕切り部材22は、除圧機構33の作動時に、排出物が消火チャンバ25を介して収集チャンバ24に入るように、排出物を貫通させるように構造されている。
【0108】
上記の各電池200を作製する設備が有するべき具体的な機能と詳細について、対応する電池200の実施例において既に詳細に説明されたため、ここで、詳しい説明を省略する。
【0109】
本願において、上記の各保護主題と各実施例における特徴との間は、相互に参考にすることができ、当業者は、構造が許す限り、より多くの実施例を形成するように、異なる実施例における構成要件を柔軟に組み合わせることもできる。
【0110】
以上、本願に提供される電池、受電装置、電池を作製する方法及び設備を詳しく紹介した。本明細書では、具体的な実施例を適用して本願の原理及び実施形態を述べたが、以上の実施例の説明は、単に本願の方法及びその中心思想を理解しやすくするためのものに過ぎない。なお、当業者にとっては、本願の原理を逸脱することなく、本願にいくつかの改良や修飾を行うことができ、これらの改良や修飾も本願の特許請求の範囲による保護範囲内にある。
【符号の説明】
【0111】
200 電池
210 コントローラ
220 モーター
300 電池モジュール
201 第1ケース
202 第2ケース
30 電極アセンブリ
301 タブリード
10 エンドキャップアセンブリ
10’ エンドキャッププレート
20 接続部材
40 注液部材
1 シェル
2 蓋体
21 上層板
211 補強板
212 側板
22 仕切り部材
221 脆弱部
222 貫通孔
23 下層板
231 収容凹部
24 収集チャンバ
25 消火チャンバ
26 排出路
261 底壁
262 側壁
27 弁
3 電池セル
31 筐体
32 電極端子
33 除圧機構
401 第1設備
402 第2設備
403 第3設備
404 第4設備