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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】保守業務支援装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240904BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023536252
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027071
(87)【国際公開番号】W WO2023002553
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕司
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-163387(JP,A)
【文献】特開2019-133412(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の保守業務を支援する保守業務支援装置において、
前記設備の保守作業に関する作業履歴情報と、前記設備の保有者が重視する項目である企業KPIを含む企業KPI情報と、を記憶する統合データベースと、
前記作業履歴情報を用いて、前記設備に対する保守作業の計画を示す保守作業計画を作成する保守作業計画作成部と、
作成された保守作業計画に対して、前記企業KPI情報を用いて、前記設備に対する保守作業の条件を示す複数の変数に対応する企業KPIに応じた評価を、対応する現場作業者の数を反映した前記設備の保守難易度が含まれる保守内容、現場作業者および部品が含まれる前記変数を用いて算出する評価部とを有する保守業務支援装置。
【請求項2】
請求項に記載の保守業務支援装置において、
前記評価部は、前記保守難易度を、
【数1】
により算出する保守業務支援装置。
【請求項3】
請求項1または2の何れかに記載の保守業務支援装置において、
前記保守作業計画作成部は、複数の保守作業計画を作成し、
前記複数の保守作業計画のうち、前記評価に応じて保守作業計画を選択する絞込み部を有する保守業務支援装置。
【請求項4】
請求項に記載の保守業務支援装置において、
前記統合データベースは、複数の前記企業KPIそれぞれの相関性の度合いを示す相関情報を記憶し、
選択された前記保守作業計画について、前記複数の企業KPIごとの評価を、前記相関情報に応じた順序にてレーダーチャートとして出力する出力部を有する保守業務支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至の何れかに記載の保守業務支援装置において、
前記統合データベースは、
前記複数の前記企業KPIの夫々に対し、前記設備の所有者による重視の度合いである評価を示す登録企業KPI情報を記憶し、
前記評価部は、
複数の前記保守作業計画の前記複数の企業KPIそれぞれの評価と、前記登録企業KPI情報の評価を比較して差異を比較し、当該差異が予め定められた規定値以内の前記保守作業計画を、採用すべき保守計画として特定する保守業務支援装置。
【請求項6】
設備の保守業務を支援する保守業務支援装置を用いた保守業務支援方法において、
統合データベースに、前記設備の保守作業に関する作業履歴情報と、前記設備の保有者が重視する項目である企業KPIを含む企業KPI情報と、を記憶しておき、
保守作業計画作成部により、前記作業履歴情報を用いて、前記設備に対する保守作業の計画を示す保守作業計画を作成し、
評価部により、作成された保守作業計画に対して、前記企業KPI情報を用いて、前記設備に対する保守作業の条件を示す複数の変数に対応する企業KPIに応じた評価を、対応する現場作業者の数を反映した前記設備の保守難易度が含まれる保守内容、現場作業者および部品が含まれる前記変数を用いて算出する保守業務支援方法。
【請求項7】
請求項に記載の保守業務支援方法において、
前記評価部により、前記保守難易度を、
【数1】
により算出する保守業務支援方法。
【請求項8】
請求項6または7の何れかに記載の保守業務支援方法において、
前記保守作業計画作成部により、複数の保守作業計画を作成し、
さらに、絞込み部により、前記複数の保守作業計画のうち、前記評価に応じて保守作業計画を選択する保守業務支援方法。
【請求項9】
請求項に記載の保守業務支援方法において、
前記統合データベースは、複数の前記企業KPIそれぞれの相関性の度合いを示す相関情報を記憶し、
さらに、出力部により、選択された前記保守作業計画について、前記複数の企業KPIごとの評価を、前記相関情報に応じた順序にてレーダーチャートとして出力する保守業務支援方法。
【請求項10】
請求項乃至の何れかに記載の保守業務支援方法において、
前記統合データベースは、前記複数の前記企業KPIの夫々に対し、前記設備の所有者による重視の度合いである評価を示す登録企業KPI情報を記憶し、
前記評価部により、複数の前記保守作業計画の前記複数の企業KPIそれぞれの評価と、前記登録企業KPI情報の評価を比較して差異を比較し、当該差異が予め定められた規定値以内の前記保守作業計画を、採用すべき保守計画として特定する保守業務支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備における保守業務を支援する技術に関する。なお、設備には、機器、機械(ITリソース)、施設、製品といった各種装置が含まれる。また、保守には、修理、交換、点検(メンテナンス)などの各種作業が含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、稼働中の設備に対して、現場作業者が現場へ赴き、当該設備に対して保守作業を行っている。ここで、当該保守作業は、設備のオーナー自身ではなく、例えば当該設備を販売した企業の現場作業者にオーナーから委託され行われる場合がある。そこで現場作業員は、委託先、すなわち顧客であるオーナー(以下「顧客企業」)の要望に沿うよう、効率的な保守作業が求められている。これを実現するための技術として、現場作業者の手配の効率化を図る保守リコメンデーションが提案されている。例えば、特許文献1では、リコメンドを行うアプリケーションを使用するユーザの納得感を高めることを目的に、以下の構成を採用している。
【0003】
特許文献1の修理リコメンドシステムでは、事象に関する入力情報が入力される入力部と、事象に関する入力情報を入力とし、事象に対処するために推奨される修理を出力とする学習モデルを用いて、入力された当該事象に関する入力情報に対して推奨される複数の修理と各修理の確度の高さを示す確信度とを含むリコメンド情報を推論するリコメンド演算部と、修理に関連するキーワードが登録されたキーワードリストから、リコメンド情報に含まれる各修理に関連するキーワードを選択するキーワード演算部と、リコメンド情報と各修理に関連するキーワードとを合わせて出力する出力部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-022205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のように、保守業務の効率化のために、従来から、機械学習や人工知能(Artificial Intelligence:AI)が用いられている。このような、既存の機械学習手法では、入力された事象に対して、予め定められたルールや基準に則って最善の回答を返すことができる。保守業務を主導する対象機器の保有者たる顧客企業においては、保守の効率化において重要視すべき指標である当該顧客企業に関する経営指標を予め設定し、当該経営指標への貢献を前提にAIが保守に係るリコメンデーションを行うことになる。顧客企業に関する経営指標とは、顧客企業自身の経営指標や顧客企業の経営目標を考慮した保守業者の経営指標が含まれる。なお、経営指標には、KPI(Key Performance Indicators)やKGI(Key Goal Indicator)が含まれる。なお、対象機器の保有には、対象機器の貸与を受けることも含まれる。このため、顧客企業とは、対象機器を利用、管理する企業であればよい。
【0006】
しかしながら、顧客企業に関する経営指標の一例であるKPIのうち、重要視すべきKPIは企業の経営状況によって時々刻々と変化する。このため、従来技術のようにあらかじめ定められたルールや基準を設けたAIによるリコメンデーションではKPIのうち、その都度変化する重要視すべきKPIを改善させるリコメンデーションを行うことが困難であった。さらに当該KPIは、KPI同士の間で相関性の高い関係にあるため、一つのKPIを重要視することで、他のKPIを悪化させてしまうようなトレードオフの関係になることが殆どであり、KPI全体を俯瞰した上で、最もその時の経営状況にあった重要視すべきKPIを選択することを一層困難なものとしていている。
【0007】
つまり、従来においては、上述のような予め定められた顧客KPIに基づくAIの回答は、企業、特に顧客企業に関する経営指標に応じた視点で考えた場合のその時々の最善解であるとは限らず、保守作業における顧客企業の途の時々の最も重要視すべきKPIや、相関性ある複数のKPI群による事業活動全体に対する影響を考慮した臨機応変なリコメンデーションとなっていないことが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、顧客企業に関する企業目標情報であって保守業者における企業目標情報(企業KPI情報)を利用して、作成した保守作業計画に対して評価を行う。より具体的な本発明の構成は、保守業者における設備に対する保守業務を支援する保守業務支援装置において、前記設備の保守作業に関する作業履歴情報および前記保守作業において前記保守業者が重視する項目である企業KPIを含む企業KPI情報を記憶する統合データベースと、前記作業履歴情報を用いて、前記設備に対する複数の保守作業の計画を示す保守作業計画を作成する保守作業計画作成部と、作成された複数の保守作業計画に対して、前記企業KPI情報を用いて、前記設備に対する保守作業の条件を示す複数の変数に対応する企業KPIに応じた評価を、対応する現場作業者の数を反映した前記設備の保守難易度が含まれる保守内容、現場作業者および部品が含まれる前記変数を用いて算出する評価部とを有する保守業務支援装置である。
【0009】
また、本発明には、保守業務支援装置を用いた保守業務支援方法や保守業務装置をコンピュータとして機能させるためのプログラム、このプログラムを格納した記憶媒体も含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期的な視点、顧客企業に関する経営指標に応じた視点を反映した作業計画の作成を可能となる。これにより、顧客企業の作業に関する価値創造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例の考え方を示す概念図である。
図2】本発明の実施例における処理の概要を示す図である。
図3】本発明の実施例の処理を実行するためのシステム構成図である。
図4】本発明の実施例における統合データベースを含む保守業務支援装置のハードウエア構成図である。
図5】本発明の実施例で用いられる変数対応表を示す図である。
図6】本発明の実施例で用いられる作業履歴情報を示す図である。
図7】本発明の実施例で用いられる現場情報を示す図である。
図8】本発明の実施例で用いられる企業KPI情報を示す図である。
図9】本発明の実施例で作成される保守作業計画を示す図である。
図10】本発明の実施例における保守業務支援装置での処理の内容を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施例における評価結果の提示内容の一例を示す図である。
図12】本発明の実施例で用いられる相関情報を示す図である。
図13】本発明の実施例2で用いられる登録企業KPI情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1を、図面を参照して説明する。なお、本実施例では、保守業者が保守業務を実行するものとして説明する。但し、保守業務は、顧客企業が行うことも可能である。この場合、以下の説明において、保守業者を顧客企業として読み替えることで、実現できる。さらに、顧客企業とは、対象機器を利用、管理すればよく、必ずしも顧客である必要はない。また、本実施例における顧客企業、保守業者、システムベンダー、サービス業者は、企業に限定されず、各種団体、組織体が含まれる。
【0013】
図1は、本実施例および後述の実施例2(以下、単に本実施例と記載)の考え方を示す概念図である。本実施例では、AI1を用いて、保守業務の支援を行う。このために、まず、AI1に対して、作業履歴情報2、現場情報3、保守業者の目標を示すKPI情報である企業KPI情報4が入力される。ここで、作業履歴情報2には、保守における保守履歴、保守難易度、部品利用回数、作業習熟度などが含まれる。また、現場情報3には、故障状況、製品稼働履歴などの保守の現場で取得される情報が含まれる。さらに、企業KPI情報4は、コスト削減、教育目標といった保守業者としての目標ないし指標となる情報である。
【0014】
そして、AI1において、入力された情報を用いて、機械学習や最適化アルゴリズムなどによって、保守作業計画の作成や選択を行う。次に、AI1は、この保守作業計画を、保守業者における各関係者に提示する。関係者には、作業指示者5-1、現場作業者5-2、経営者等の経営層5-3が含まれる。
【0015】
ここで、企業KPI情報4は、保守業者の目標を示すKPI情報であるが、これは保守対象機器の保有者たる顧客企業に関するKPI情報である。つまり、企業KPI情報4は、顧客企業の経営目標やKGIを考慮したKPI情報である。特に、企業KPI情報4は、この経営目標やKGIを達成するための情報であることが望ましい。また、顧客企業自身が保守業務を行う場合、企業KPI情報4として、顧客企業のKPI情報を用いることになる。このように、企業KPI情報4は、顧客企業の保守業務に対する価値創造を可能にする情報である。
【0016】
次に、図2に、本実施例における処理の概要を示す。本実施例では、複数の拠点、場所が関わってその処理が実行される。複数の拠点、場所としては、データセンタ10、保守拠点20、部品拠点30、経営エリア40、保守現場50が含まれる。
【0017】
データセンタ10は、作業履歴情報2、現場情報3、企業KPI情報4といった各種データを格納する統合データベース11が設けられている。また、保守拠点20では、作業指示者5-1がAI1を利用して、上述した保守作業計画を作成する。このため、保守拠点20としては、保守業者のオフィスなどが想定される。なお、保守拠点20は、AI1が利用できる環境であればよく、他の場所に設置されていてもよい。他の場所としては、例えば、データセンタ10が想定される。
【0018】
また、部品拠点30では、保守作業に利用される部品を保管する倉庫などであり、部品在庫情報を管理している。経営エリア40は、経営層5-3が駐在するオフィス等で実現できる。そして、保守現場50には、保守対象の設備が設置され、現場作業者5-2が派遣される。
【0019】
ここで、図2における処理について説明する。本処理は、図1で説明したAI1を利用して保守作業計画の作成や選択が主に実行される。このために、AI1は、統合データベース11から作業履歴情報2を受け付ける。また、AI1は、経営層5-3から企業KPI情報4を受け付ける。またさらに、AI1は、部品拠点30における部品在庫情報を受け付ける。さらに、AI1は、保守現場50から現場情報3を受け付ける。
【0020】
そして、AI1は、これらを用いて、保守作業計画の作成や選択を実行する。この際、AI1は、作業指示者5-1の操作に従って処理することが望ましい。また、AI1は、保守作業計画として、保守作業のための人員や部品の手配を保守現場や作業指示者5-1に提示する。また、AI1は、保守作業計画に対する企業KPI情報4の達成状況などの評価を算出し、これを作業指示者5-1や経営層5-3へ提示する。
【0021】
以上で、本実施例における処理の概要の説明を終わる。次に、本実施例の詳細を説明する。図3は、本実施例の処理を実行するためのシステム構成図である。
【0022】
本実施例では、図2に示すデータセンタ10、保守拠点20、部品拠点30、経営エリア40、保守現場50の各拠点に、以下に示す情報処理装置が設けられている。まず、データセンタ10には、統合データベース11および保守業務支援装置12が設けられている。また、保守拠点20には、作業指示者5-1が操作する指示者装置21が設けられている。なお、図3では、指示者装置21を1台のみ記載したが、複数台設けてもよい。
【0023】
また、部品拠点30には、部品在庫情報が可能される部品在庫データベース31と部品在庫管理装置32が設けられている。また、経営エリア40には、経営層5-3が用いる経営層装置41、42が設けられている。なお、図3では、経営層装置を2台記載したが、この台数に限定されない。また、保守現場50では、現場作業者5-2が利用する作業者端末51や作業者タブレット52が用いられる。これらは、ノートPCやスマートフォンで実現される。
【0024】
そして、これら各装置は、ネットワーク60を介して接続される。また、各装置は、いわゆるコンピュータで実現できる。なお、ネットワーク60には、顧客企業のシステムやPCが接続されてもよい。この構成により、顧客企業自身の経営指標や経営目標を、保守業務支援装置12やその他装置で取得することができる。このことで、保守業務支援装置12は、顧客企業に関する企業KPI情報4を特定できる。また、顧客企業自身の経営指標や経営目標については、オフラインで各装置が取得してもよい。
【0025】
なお、データセンタ10は、統合データベース11および保守業務支援装置12を構築するシステムベンダーや保守業務のリコメンデーションを提供するサービス業者が運営することが望ましい。但し、保守業者がこれを運営してもよい。
【0026】
次に、各装置の詳細を説明する。まず、統合データベース11は、いわゆるファイルサーバで実現可能である。なお、統合データベース11は、保守業務支援装置12に設けた記憶装置として実現してよい。
【0027】
次に、保守業務支援装置12は、本実施例の主たる処理を実行し、いわゆるサーバで実現できる。また、AI1の昨日が実装されることになる。このように、本実施例は、クラウドシステムとして構築できる。ここで、保守業務支援装置12の構成を、機能ブロックとして説明する。保守業務支援装置12は、入力部121、出力部122、保守作業計画作成部123、評価部124および絞込み部125を有する。入力部121は、ネットワーク60を介して、他の装置からの情報などを受け付ける。出力部122は、ネットワーク60を介して、他の装置へ情報などを出力する。
【0028】
また、保守作業計画作成部123は、上述の保守作業計画の作成を実行する。また、評価部124は、保守作業計画についての評価を算出する。さらに、絞込み部125は、算出された評価に基づいて、提案する保守作業計画を選択、絞込みを実行する。このように、保守業務支援装置12は、上述のAI1の処理を実行することになる。なお、各部の処理の詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0029】
次に、指示者装置21は、作業指示者5-1の操作に応じて、保守業務支援装置12に対して、各処理を実行させる。また、指示者装置21は、保守業務支援装置12の処理結果を表示する。このために、指示者装置21は、PCで実現できる。
【0030】
次に、部品在庫データベース31は、部品在庫情報を格納し、いわゆるファイルサーバで実現可能である。なお、部品在庫データベース31は、部品在庫管理装置32に設けた記憶装置として実現してよい。部品在庫管理装置32は、いわゆるサーバで実現でき、部品在庫情報を用いて、部品拠点30の部品を管理するための情報処理を実行する。
【0031】
次に、経営層装置41、42は、経営層5-3からの企業KPI情報4の入力を受け付けたり、保守業務支援装置12からの企業KPI情報4の達成状況を出力したりする。このために、経営層装置41、42は、PCで実現できる。次に、作業者端末51や作業者タブレット52は、現場情報を保守業務支援装置12に出力したり、保守作業計画を出力したりする。
【0032】
次に、図4を用いて、本実施例の主たる処理を実行する保守業務支援装置12のハードウエア構成を説明する。図4には、統合データベース11も記載し、以下この内容も説明する。
【0033】
保守業務支援装置12は、ネットワークI/F71(ネットワークインタフェース)、処理部72、主記憶装置73および補助記憶装置74を有し、これらはバスのような通信路で互いに接続されている。ここで、ネットワークI/F71は、ネットワーク60と接続し、図3における入力部121および出力部122に該当する。
【0034】
次に、処理部72は、CPUのようなプロセッサで実現され、後述するプログラムに従って、処理を実行する。また、主記憶装置73は、RAM(Random Access Memory)などで実現され、プログラムが処理部72の処理に従って展開される。また、補助記憶装置74は、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)といったストレージで実現される。
【0035】
そして、補助記憶装置74は、保守作業計画作成プログラム83、評価プログラム84および絞込みプログラム85を格納している。なお、これらプログラムは、ネットワーク60や他の記憶媒体を介して、保守業務支援装置12に配布されてもよい。
【0036】
また、補助記憶装置74は、評価プログラム84や評価部124の評価処理に用いる、変数対応表86を格納している。変数対応表86は、図5に示すように、設備に対する保守作業の条件を示す複数の変数と保守業者が重要視する項目である企業KPIの対応関係を示すテーブルである。なお、この詳細は、フローチャートを用いて評価処理と共に説明する。
【0037】
ここで、各プログラムと同様の処理を実行する図3に示す各部は、以下のとおりである。
保守作業計画作成部123:保守作業計画作成プログラム83
評価部124:評価プログラム84
絞込み部125:絞込みプログラム85
また、補助記憶装置74は、統合データベース11に格納される各種情報を記憶してもよい。
【0038】
次に、図4における統合データベース11には、作業履歴情報2、現場情報3、企業KPI情報4、保守作業計画6、相関情報7および登録企業KPI8が格納される。但し、これらの各情報、特に、現場情報3、企業KPI情報4、保守作業計画6、
相関情報7および登録企業KPI8については、統合データベース11に格納せず、他の装置に格納されてもよい。ここで、これら各情報のうち、作業履歴情報2、現場情報3、企業KPI情報4および保守作業計画6を、図6図9を用いて説明する。なお、相関情報7について、図12を用いて後述する。また、登録企業KPI8は、後述の実施例2で用いられるため、実施例2で説明する。
【0039】
まず、図6に、本実施例で用いられる作業履歴情報2を示す。本実施例においては、作業履歴情報2は、その一例として(a)保守内容、(b)現場作業者、(c)部品ごとの情報として管理されるが、他の形態であってもよい。(a)~(c)に示した情報は保守作業における企業KPIとして重視されることが多い一方で、互いにトレードオフの関係にある変数が含まれることから、これらの情報を用いることでより顧客企業に関する経営指標に応じたリコメンドを行うことができる。
【0040】
これら(a)保守内容、(b)現場作業者、(c)部品は、図5の変数対応表86の変数の種類に対応している。以下、作業履歴情報2の(a)~(c)それぞれについて説明する。(a)は、作業履歴情報2の保守内容に対応する情報であり、保守対象の設備ごとに、保守履歴や作業難易度といった保守作業の内容に関する情報が対応付けられている。(b)は、作業履歴情報2の現場作業者に対応する情報であり、現場作業者ごとに、作業習熟度や担当製品といったそのスキルに関する情報が対応付けられている。(c)は、作業履歴情報2の部品に関する情報であり、部品ごとに、部品の特性を示す情報が対応付けられている。なお、本実施例では、各部品を、設置される設備ごとに対応付けているが、他の態様であってもよい。例えば、設備については省略してもよい。
【0041】
なお、図6では、省略したが、作業履歴情報2の各項目(保守履歴、作業習熟度、部品単価等)は、変数対応表86の変数(名称)にそれぞれ対応するものを用意することが望ましい。
【0042】
次に、図7に、本実施例で用いられる現場情報3を示す。本実施例の現場情報3は、設備ごとに、該当の保守現場50における作業者端末51や作業者タブレット52から入力された保守に関する情報が対応付けられている。これらには、該当の設備ないし部品の状況、該当の部品、該当の設備ないし部品の稼働履歴、保守の作業内容、作業を行った現場作業者などが含まれる。
【0043】
次に、図8に、本実施例で用いられる企業KPI情報4を示す。本実施例の企業KPI情報4は、コスト削減などの目標ごとに、その目標値や重要度といった情報が対応付けられている。この企業KPI情報4は、経営層5-3の操作に応じて、経営層装置41、42から入力される。なお、企業KPI情報4は、変数対応表の企業KPI(項目)に対応した項目で構成することが望ましい。また、上述のように、企業KPI情報4は、顧客企業に関するKPI情報であり、顧客企業の経営目標を達成するためのKPI情報であることが望ましい。
【0044】
最後に、図9、本実施例で作成される保守作業計画6を示す。本実施例の保守作業計画6は、後述するフローチャートで示される処理に従って作成される。そして、計画(計画1、計画2…)ごとに、計画の内容を示す保守内容、現場作業者、部品が対応付けられている。図中〇印が、実施する保守内容、作業を行う現場作業員、利用する部品を示す。ここで、保守内容、現場作業者、部品は、変数対応表86や作業履歴情報2と同様の項目であるが、これらに限定されない。また、現場作業者には、作業行う人数も記録される。
【0045】
次に、本実施例における処理の内容を説明する。図10は、本実施例における保守業務支援装置12での処理の内容を示すフローチャートである。以下、図3に示す機能ブロック(部)を処理主体として、図10の内容を説明する。
【0046】
まず、ステップS1において、入力部121が、指示者装置21からの保守作業計画作成指示を受け付ける。保守作業計画作成指示には、保守の対象となる設備を識別する情報が含まれる。また、ステップS1の前提として、修理依頼を受け付ける。例えば、指示者装置21は、作業者端末51や作業者タブレット52から保守作業計画作成依頼を受信したり、電話などでその必要性が作業指示者5-1に通知されたりすることが望ましい。また、保守作業計画作成依頼の受信の代わりに、指示者装置21は統合データベース11から現場情報3を取得して、保守の必要性を判断してもよい。なお、このように、保守作業計画作成指示が必要な場合、指示者装置21はアラートを表示することが望ましい。
【0047】
次に、ステップS2において、保守作業計画作成部123は、保守作業計画作成指示に応じて、図9に示すような複数の保守作業計画6を作成する。このために、保守作業計画作成部123は、AI1の機能を用いることになる。例えば、特許文献1に開示された修理リコメンデーション技術を用いる。また、保守作業計画作成部123は、統合データベース11の格納されている情報や部品在庫データベース31の部品在庫情報を用いて、保守作業計画6を作成することが望ましい。
【0048】
そして、本ステップにおいて、保守作業計画作成部123は、出力部122を用いて指示者装置21に、作成された保守作業計画6を提示する。また、保守作業計画作成部123は、作成した保守作業計画6を、統合データベース11に格納する。
【0049】
次に、ステップS3において、入力部121が、指示者装置21から、保守作業計画6を絞り込むために、保守作業において考慮する観点を受け付ける。この観点は、作業指示者5-1から指示者装置21に対して入力される。この変数は、変数対応表86の変数の「名称」の中から選択することが望ましい。このために、保守作業計画作成部123が、出力部122を用いて、指示者装置21に変数の候補を出力することが望ましい。
【0050】
次に、ステップS4において、評価部124が、保守作業計画6に対して、受け付けられた観点、つまり、変数を反映した評価を算出する。ここで、評価の算出に用いられる各変数および変数対応表86について、説明する。
【0051】
まず、変数対応表86のうち、修理内容の変数について、説明する。保守難易度は、保守の難しさを数値化したものである。保守作業に特別な資格が必要など、対象作業が難しい場合、この値が大きくなる。ここで、保守難易度を特定するために、絶縁、交換など必要な作業の内容を用いてもよい。なお、図5の変数対応表86の属性の欄に、該当の変数が「数値」もしくは「カテゴリ」かを記録する。この保守難易度は、数値化したものであるため「数値」であることが記録される。
【0052】
次に、保守対象設備は、対象設備が割り当てた現場作業員の担当設備かどうかを判断するための情報である。また、必要資格は、保守に必要な資格、現場作業員を割り当てるためことが可能か判断するための情報である。必要資格としては、例えば、電気工事士が含まれる。これらは、属性はカテゴリ、つまり、その内容を示す。また、標準作業時間は、保守作業における部品ごとの標準作業時間を示す。
【0053】
次に、変数対応表86のうち、現場作業者の変数について、説明する。まず、担当設備は、現場作業者が修理できる設備の種類、作業員が保守に割り当て可能か判断するための情報である。また、所持資格は、現場作業者が所持している資格の種類、作業員が修理に割り当て可能か判断するため情報である。勤続年数は、現場作業者の勤続年数を示し、大きいほど作業者の能力が高いこと表す。また、顧客対応回数は、現場作業者が顧客企業への対応である顧客対応を行った回数を示し、大きいほど現場作業者が顧客対応における経験豊富であることを表す。
【0054】
また、作業単価は、現場作業者の作業単価を示し、現場作業者の能力が高いほど高くなる。到着予定時間は、現場作業者が顧客先、つまり、保守現場50に到着するまでにかかる時間を示し、小さいほど早く保守現場50に到着できる。なお、現在位置情報と顧客先住所(保守現場)から到着予定時間を算出できる。なお、本実施例では、保守業者により保守を行うため、顧客先との表現を用いるが、顧客企業が保守を行う場合、保守先など他の表現を用いることができる。また、作業習熟度は、現場作業者による部品ごとの作業実施回数を示す。
【0055】
次に、変数対応表86のうち、部品の変数について説明する。まず、交換頻度は、保守の際に交換されることが多いかどうか示す。例えば、定期点検で交換する等で取り扱いの頻度が多い部品は、交換頻度が多くなる。また、部品単価は、交換部品の部品単価を示す。
部品単価が高い部品を使うと保守費用が高くなる。但し、交換部品の費用を顧客企業が負担する場合は、修理費用に影響しないため、上記の定義から外れる。
【0056】
また、交換後完治率は、部品を交換した際に再修理が発生したかどうかを示す。交換後完治率が高いほど、再保守の発生率が下がる。また、部品の変数に、部品受取時間、部品の配送時間、受取場所を追加してもよい。
【0057】
なお、変数対応表86は、図に示すように、その変数および企業KPI(項目)を重視、使用、不使用が記録されている。以上で、変数および変数対応表86の説明を終わり、次に、これらを用いた評価の算出について説明する。評価部124は、まず、保守対象の設備の部品について、変数の値を算出する。例えば、保守難易度については、評価部124が以下の(数1)を用いて、保守難易度を算出する。
【0058】
【数1】
【0059】
ここで、本実施例の1つの特徴として、保守難易度の算出に、NWPで示される部品Pを使用した経験のある現場作業者の数を反映している。これは、部品Pを使用した経験のある現場作業員が多いほど、その部品を使用した保守が標準化されている可能性があり、保守の難易度が下がると考えられることに基づいている。このため、現場作業者の数を反映することで、より現状に沿った保守難易度の算出が可能になる。
【0060】
なお、部品Pは、保守対象の設備での保守に用いられる部品を示す。また、該当の部品が複数ある場合には、評価部124は、各部品の保守難易度を合計することで、設備に対する保守難易度を算出する。そして、評価部124は、各変数についての評価を算出する。ここで、評価が算出される変数としては、変数対応表86に記録されたものや後述する(数2)~(数6)で算出する企業KPIで用いられる変数が用いられる。
【0061】
次に、評価部124は、変数対応表86の企業KPIごとに、評価を算出する。この評価を算出する算出式を(数2)~(数6)に示す。
【0062】
【数2】
【0063】
【数3】
【0064】
【数4】
【0065】
【数5】
【0066】
【数6】
【0067】
なお、企業KPIについては、図5や(数2)~(数6)に限定されない。また、顧客対応については、自身の設備の保守を行う場合には、これを省略してもよいし、運用部門に対する対応回数を用いてもよい。
【0068】
次に、ステップS5において、評価部124は、出力部122を用いて指示者装置21に、評価結果を提示する。つまり、作成された保守作業計画6ごとに、ステップS4で算出された評価が出力される。ここで、評価部124は、この結果をリスト形式で出力してもよいし、後述するステップS8のようにレーダーチャート形式で出力してもよい。
【0069】
次に、ステップS6において、絞込み部125が、指示者装置21から変数の変更指示を受け付けたかを判断する。この結果、受け付けた場合(YES)には、ステップS3に戻り、変更された変数を受け付ける。受け付けない場合(NO)には、ステップS7に遷移する。
【0070】
次に、ステップS7において、絞込み部125が、ステップS4で算出された評価結果を用いて、保守作業計画6の絞り込みを行う。つまり、本ステップにおいて、絞込み部125は、作成された保守作業計画6から、予め定められた基準を満す保守作業計画6を選択する。この基準として、評価(合計)の上位のものを用いることが望ましい。なお、評価については、企業KPIごとの評価を偏差値化したものを用いることが望ましい。
【0071】
次に、ステップS8において、絞込み部125が、出力部122を用いて指示者装置21に、絞込みされた結果を提示する。この内容の一例を、図11に示す。図11では、絞り込まれた保守作業計画6に対する評価結果が、レーダーチャートで指示者装置21に表示されていることを示している。
【0072】
ここで、レーダーチャートにて示される複数の企業KPI同士は一定の相関性を有している場合があり、その相関性の度合は、各企業KPIが有している変数によって大きく異なる。例えば、「再保守率」という企業KPIを改善させるために、「再保守率」を低くするように保守作業計画を作成しようとした場合、「作業習熟度」が高い作業員ほど「再保守率」は低くなるが、「作業単価」が上がる傾向にあり、その結果として「コスト」が高くなりやすい等、トレードオフな関係を持っている場合がある。このため、この相関性を考慮した処理について、説明する。
【0073】
この処理の前提として、統合データベース11に、複数の前記企業KPIそれぞれの相関性の度合を示す相関情報7を予め登録しておく。図12に、本実施例で用いられる相関情報7を示す。本実施例の相関情報7は、複数の前記企業KPIのうち、所定の企業KPIの改善により、他の企業KPIそれぞれについて、どの程度影響するかを示す。より具体的には、相関情報7は、企業KPIごとに、他の企業KPIとの影響の度合いを数値として記録されている。本実施例においては、悪化する場合「-」(マイナス)の数値で示し、改善する場合、「+」(プラス)の数値で示している。また、特に影響がない場合「0」としている。図12の「再保守率」では、「駆付時間」も改善するが、「コスト」や「教育」については悪化する。ここで、「教育」の方がマイナスの幅が大きいため、「コスト」よりも悪化の度合いが大きいことが分かる。また、「顧客対応」については、特に影響されない。なお、相関情報7は、複数の企業KPIそれぞれの関連性を示す情報であり、改善および悪化の観点以外であっても構わない。
【0074】
そして、本実施例では、相関情報7を用いて、相関性の度合いに応じた順序で企業KPIをレーダーチャートに提示する。このために、絞込み部125が、ステップS7において以下の処理を実行する。
【0075】
まず、絞込み部125が、提示する企業KPIのうち、任意の企業KPIを抽出する。この抽出は、指示者装置21から指定された企業KPIとすることが可能である。さらに、絞込み部125が、算出された評価が最も高い企業KPIを抽出してもよい。本実施例においては、例えば、「再保守率」が抽出されたものとする。
【0076】
次に、絞込み部125は、抽出された企業KPIに対する、他の企業KPIの相関情報7を特定し、その数値降順ないし昇順にソートする。本実施例では、「駆付時間」:+0.5、「顧客対応」:0、「コスト」:-1.0、「教育」:-1.5にソートされる。
【0077】
次に、絞込み部125は、ソートされた順序に従って、レーダーチャートの各企業KPIの表示位置を決定する。本実施例では、「再保守率」を頂点として、この頂点から近い位置から「駆付時間」「顧客対応」「コスト」「教育」の順序に配置される。なお、この順序は悪化(相関情報がマイナス)を近接させる順序でもよい。このように、本実施例の順序とは、その表示位置を示す。
【0078】
また、ソートにおいては、絞込み部125は、他の企業KPIのうち、所定条件を満たす企業KPIの抽出、ソートを行ってもよい。例えば、絞込み部125は、最も数値が大きな企業KPIや悪化ないし改善の企業KPIを抽出してもよい。この場合、絞込み部125は、抽出された企業KPIを頂点の企業KPIから最も遠くもしくは近接する位置に配置し、他の企業KPIを空いた位置に配置することも可能である。
【0079】
以上により、レーダーチャート上には改善と悪化の相関が低い企業KPIが隣接する順序、換言すれば、トレードオフ関係にある企業KPI同士が離れて表示される順序にて表示することになる。このため、該当の保守計画を採用することで、何を重視し、何を軽視したいかを判断しやすくすることが可能となる。また、以上の処理は、ステップS5で実行してもよい。
【0080】
そして、この評価結果は、保守作業計画の計画1~3それぞれについて、企業KPIを軸に評価結果が示されている。さらに、本レーダーチャートでは、各軸の数値を、偏差値して示される。このことで、各軸の評価が標準化されることになる。なお、この数値の偏差値化は、ステップS4で実行してもよいし、本ステップでの出力の際に実行してもよい。
【0081】
次に、ステップS9において、入力部121が、指示者装置21からのステップS8での提示内容に対する選択指示を受け付ける。この際、作業指示者5-1は、最適化条件として、コストといったKPI指標を参考に、保守作業計画6を直接選択してもよいし、最適化条件を指定してもよい。後者の場合、指示者装置21は、指定された最適化条件の評価の値が最も大きな保守作業計画を選択し、保守業務支援装置12に送信する。
【0082】
そして、絞込み部125が、選択された提示内容、つまり、保守作業計画6を特定する。つまり、絞込み部125が、特定された保守作業計画6を最適計画とする。
【0083】
最後に、ステップS10において、絞込み部125は、出力部122を用いて、最適計画を、関係する装置に通知する。例えば、当該最適計画での現場作業員の作業者端末51や作業者タブレット52にその内容を通知する。また、絞込み部125は、部品在庫管理装置32に、最適計画で用いられる部品の手配依頼を出力してもよい。
【0084】
以上の本実施例の処理によれば、保守業者での保守業務においても、対象機器の保有者たる顧客企業の経営目標に応じた保守業務のリコメンデーションが可能となる。このことで、保守業務に関する顧客企業に対する価値創造が可能となる。
【実施例2】
【0085】
実施例1では、顧客企業の経営目標に応じた保守業務のリコメンデーションを行っている。本実施例では、実施例1に加え、さらに設備のオーナーである顧客企業の重視する企業KPIと整合した保守作業計画を選択しやすくする。
【0086】
実施例1では、保守作業計画ごとに、複数の企業KPIの評価がなされている。ここで、顧客企業にとって、「どの保守作業計画を選択するか」は、「どの企業KPIを重視し、どの企業KPIを軽視するか」と同値であり、企業の経営方針を大きく左右することになる。
【0087】
ここで、顧客企業にとって、「どの保守作業計画を選択するか」は、「どの企業KPIを重視し、どの企業KPIを軽視するか」というコンセプトレベルにおいて、自身の意向と一致する保守作業計画を作成することが望ましい。そこで、本実施例では、予め登録された顧客企業の意向を示す複数の登録企業KPIと、各保守作業計画に含まれる企業KPIとを、同じ企業KPI同士でそれぞれ比較する。そして、その差異が所定の数値以内であれば、その保守作業計画を採用すべき保守作業計画としてリコメンドする。
【0088】
このために、本実施施例では、評価部124が、以下のとおりの処理を行う。評価部124は、統合データベース11から登録企業KPI8を読み出す。図13は、本実施例で用いられる登録企業KPI8を示す図である。図13に示すように、登録企業KPI8は、該当の顧客企業における各企業KPIについての重視の度合いを示す評価が記録されている。なお、登録企業KPI8の代わりに、企業KPI4の目標値を用いてもよい。
【0089】
また、評価部124は、読み出した登録企業KPI8のそれぞれと、算出された評価、つまり、保守作業計画6に含まれる各企業KPIの評価を比較してその差異を算出する。そして、評価部124は、各差異が、予め定められた規定値以内である保守作業計画を抽出する。
【0090】
これらの処理は、実施例1のステップS4の一部として実行することになる。但し、ステップS7の予め定められた基準を満す保守作業計画の選択として実行してもよいし、選択された保守作業計画に対して施してもよい。この場合、当該処理は、絞込み部125により実行されることが望ましい。
【0091】
以上の処理により、顧客企業の意向と一致する保守作業計画を特定し、これに応じた保守作業計画書を作成できる。
【0092】
本実施例では、またさらに、ステップS8において、これらの処理の結果を、実施例1のようにレーダーチャートで提示してもよい。具体的には、絞込み部125が、読み出した登録企業KPI8と各保守作業計画6の企業KPIを対応付けて提示する。このことで、KPI同士の差異を面積の形で比較でき、視覚的にも一致度合いが理解しやすくなる。
【0093】
以上で、本発明の各実施例の内容を終了するが、本発明は上述した各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【0094】
例えば、上述した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために保守業務支援装置12の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、本実施例の構成の一部について、他の構成要素の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0095】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウエアで実現してもよい。例えば、保守業務支援装置12の処理に、FPGA(Field Programmable Gate Array)や専用LSI、CPU内のアクセラレーターなどの、専用ハードウエアを利用してもよい。
【0096】
また、上述した実施例における保守業務支援装置12などの各装置の構成要素は、それぞれのハードウエアがネットワークを介して互いに情報を送受信できるならば、いずれのハードウエアに実装されてもよい。また、ある処理部により実施される処理が、1つのハードウエアにより実現されてもよいし、複数のハードウエアによる分散処理により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…AI、2…作業履歴情報、3…現場情報、4…企業KPI情報、5-1…作業指示者、5-2…現場作業者、5-3…経営層、10…データセンタ、11…統合データベース、12…保守業務支援装置、20…保守拠点、21…指示者装置、30…部品拠点、31…部品在庫データベース、32…部品在庫管理装置、40…経営エリア、41、42…経営層装置、50…保守現場、51…作業者端末、52…作業者タブレット52
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13