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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】硬化性組成物、放熱材、及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20240904BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240904BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20240904BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240904BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240904BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240904BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/013
C08G18/64 023
C08G18/32 025
C08G18/32 003
C08G18/44
H01L23/36 D
H01L23/36 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024004803
(22)【出願日】2024-01-16
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】山田 勇気
(72)【発明者】
【氏名】森木 翔也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸之
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530470(JP,A)
【文献】特開2020-200454(JP,A)
【文献】特表2023-554027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 18/00- 18/87
71/00- 71/04
H01L 23/36
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱材を形成するために用いられる、主剤及び硬化剤の組み合わせを含む二剤硬化型の硬化性組成物であって、
前記主剤が、ポリアミン(A)、ジオール(C)、及び無機充填剤(D1)を含有し、
前記硬化剤が、ポリイソシアネート(B)及び無機充填剤(D2)を含有し、
前記主剤中、前記ポリアミン(A)及び前記ジオール(C)の合計に占める、前記ポリアミン(A)の含有量が、50~90質量%であり、
前記主剤中のアミノ基及び水酸基の合計モル数(NH+OH)に対する、前記硬化剤中のイソシアネート基のモル数(NCO)の比(NCO/(NH+OH))の値が、0.75~2.50である硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリアミン(A)のアミン価が、300mgKOH/g以下である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネートである請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤(D1)及び前記無機充填剤(D2)が、それぞれ独立に、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、及び金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記主剤中の前記無機充填剤(D1)の充填率が、70~95質量%であり、
前記硬化剤中の前記無機充填剤(D2)の充填率が、50~95質量%である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物である放熱材。
【請求項7】
熱伝導率が2.0W/(m・K)以上である請求項6に記載の放熱材。
【請求項8】
前記無機充填剤(D1)と前記無機充填剤(D2)の合計充填率が、65~95質量%である請求項6に記載の放熱材。
【請求項9】
発熱体と、
前記発熱体と接触した状態で配置される、請求項6に記載の放熱材と、を備える物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、放熱材、及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の高密度化等に伴い、電子機器内部の発熱量は大きくなる傾向にあるため、電子部品内部で発生する熱を効率よく拡散させる技術の開発が要求されている。例えば、電子機器内部に設けられた電子部品等の発熱体と、ヒートシンク等の放熱器との間に配置される、熱伝導性に優れた放熱シート等の放熱材(TIM;サーマルインターフェースマテリアル)が知られている。このような放熱材を用いることで、発熱体表面と放熱器表面の微細な隙間を埋めて接触熱抵抗を低減させ、発熱体からの熱を放熱器へと適切に移動させることができる。
【0003】
これまでに、例えば、シリコーンポリマー前駆体に熱伝導材を分散させた耐熱性弾性材料が提案されている(特許文献1)。但し、揮発成分である低分子シロキサンの発生による絶縁性能低下を回避する等の観点から、シリコーンの使用を回避したいとする強い要望がある。このため、非シリコーン系のポリマーをバインダー成分とする放熱材や、そのような放熱材を形成するための組成物が検討されている。
【0004】
例えば、ポリオール類等の重合性樹脂成分及び水酸化アルミニウムを含む重合性樹脂組成物を、イソシアネート類等の硬化剤を用いて加熱条件下で硬化させた熱伝導性のポリマー成形体が提案されている(特許文献2)。また、カルボキシ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂及び熱伝導性フィラーを含むバインダー成分を、エポキシ化合物を用いて加熱条件下で硬化させた熱伝導性の硬化物が提案されている(特許文献3)。さらに、ポリオール等の反応性官能基を有する成分及び熱伝導性フィラーを含む組成物を加熱硬化させたシリコーンフリーのサーマルインターフェースが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-209955号公報
【文献】特表2015-530470号公報
【文献】特開2020-200454号公報
【文献】特開2023-508288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2~4で提案された組成物等は、いずれも加熱条件での硬化が必須であることから、デバイスの生産ラインに熱源を確保する必要があった。このため、放熱材を所望とする箇所に配置するための工程が煩雑になるとともに、硬化に時間を要する等の課題があり、かつ、カーボンニュートラルへの取り組みにとっても好ましいとは言えない。また、硬化後は発熱体等から剥離させることが困難であり、使用後の分別廃棄などのニーズに対応しにくく、リペア性及びリサイクル性が必ずしも良好であるとはいえなかった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、適度な可使時間が確保されており、無機充填剤の分散状態が良好であるとともに、シリコーンを用いなくとも発熱体や放熱器等の表面との密着性に優れており、室温条件下で硬化可能であり、かつ、加熱することで容易に剥離しうる放熱材を形成することが可能な硬化性組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の硬化性組成物を硬化させた硬化物である放熱材、及びこの放熱材を用いた物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す硬化性組成物が提供される。
[1]放熱材を形成するために用いられる、主剤及び硬化剤の組み合わせを含む二剤硬化型の硬化性組成物であって、前記主剤が、ポリアミン(A)、ジオール(C)、及び無機充填剤(D1)を含有し、前記硬化剤が、ポリイソシアネート(B)及び無機充填剤(D2)を含有し、前記主剤中、前記ポリアミン(A)及び前記ジオール(C)の合計に占める、前記ポリアミン(A)の含有量が、50~90質量%であり、前記主剤中のアミノ基及び水酸基の合計モル数(NH+OH)に対する、前記硬化剤中のイソシアネート基のモル数(NCO)の比(NCO/(NH+OH))の値が、0.75~2.50である硬化性組成物。
[2]前記ポリアミン(A)のアミン価が、300mgKOH/g以下である前記[1]に記載の硬化性組成物。
[3]前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネートである前記[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4]前記無機充填剤(D1)及び前記無機充填剤(D2)が、それぞれ独立に、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、及び金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[5]前記主剤中の前記無機充填剤(D1)の充填率が、70~95質量%であり、前記硬化剤中の前記無機充填剤(D2)の充填率が、50~95質量%である前記[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示す放熱材が提供される。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物である放熱材。
[7]熱伝導率が2.0W/(m・K)以上である前記[6]に記載の放熱材。
[8]前記無機充填剤(D1)と前記無機充填剤(D2)の合計充填率が、65~95質量%である前記[6]又は[7]に記載の放熱材。
【0010】
さらに、本発明によれば、以下に示す物品が提供される。
[9]発熱体と、発熱体と接触した状態で配置される、前記[6]~[8]のいずれかに記載の放熱材と、を備える物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適度な可使時間が確保されており、無機充填剤の分散状態が良好であるとともに、シリコーンを用いなくとも発熱体や放熱器等の表面との密着性に優れており、室温条件下で硬化可能であり、かつ、加熱することで容易に剥離しうる放熱材を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記の硬化性組成物を硬化させた硬化物である放熱材、及びこの放熱材を用いた物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<硬化性組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の硬化性組成物の一実施形態は、放熱材を形成するために用いられる、主剤及び硬化剤の組み合わせを含む二剤硬化型の硬化性組成物である。主剤は、ポリアミン(A)、ジオール(C)、及び無機充填剤(D1)を含有し、硬化剤は、ポリイソシアネート(B)及び無機充填剤(D2)を含有する。主剤中、ポリアミン(A)及びジオール(C)の合計に占める、ポリアミン(A)の含有量は、50~90質量%である。そして、主剤中のアミノ基及び水酸基の合計モル数(NH+OH)に対する、硬化剤中のイソシアネート基のモル数(NCO)の比(NCO/(NH+OH))の値が、0.75~2.50である。以下、本実施形態の硬化性組成物の詳細について説明する。
【0013】
(主剤)
本実施形態の硬化性組成物は、主剤及び硬化剤の組み合わせを含む二剤硬化型の組成物であり、二剤(二成分)を混合した後、所定の条件下で硬化させるタイプの組成物セットである。主剤(第一剤)は、ポリアミン(A)、ジオール(C)、及び無機充填剤(D1)を含有し、好ましくは、ポリアミン(A)、ジオール(C)、及び無機充填剤(D1)のみで実質的に構成される組成物である。主剤は、液媒体を実質的に含有しない無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0014】
ポリアミン(A)は、その分子中に二以上のアミノ基を有する、硬化剤中のポリイソシアネート(B)と反応してウレア結合を形成する成分である。ポリアミン(A)は、主剤中に同様に含まれるジオール(C)に比してポリイソシアネート(B)との反応速度が速い。このため、ポリアミン(A)を用いることで、速やかにウレア結合を形成し、初期物性(常態密着性)を発現させることができる。
【0015】
また、ポリアミン(A)は、無機充填剤(D1)を主剤中に良好な状態で均一に分散させるための分散剤としても機能する成分である。このため、ポリアミン(A)を用いることで、無機充填剤(D1)の充填率(含有量)を高めることが可能であり、熱伝導性に優れているとともに、熱伝導性や密着性等の物性にムラが生じにくい硬化物である放熱材を形成することができる。
【0016】
無機充填剤を分散させる分散剤(ポリアミン(A)を除く)を含有する主剤を用いると、形成される放熱材から分散剤がブリードアウトすることがあり、放熱材の密着性が低下しやすくなる場合がある。これに対して、分散剤としても機能しうるポリアミン(A)は、ポリイソシアネート(B)と反応することでポリマー(ポリウレタンポリウレア樹脂)の分子中に組み込まれるので、形成される放熱材からブリードアウトすることがない。このため、無機充填剤(D1)を分散させる分散剤(ポリアミン(A)を除く)を実質的に含有しない主剤とすることで、形成される放熱材から分散剤がブリードアウトすることがなく、経時的な密着性の低下が抑制された放熱材を形成することが期待される。
【0017】
ポリアミン(A)のアミン価は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、20~250mgKOH/gであることがさらに好ましく、70~200mgKOH/gであることが特に好ましい。そのアミン価が300mgKOH/g超のポリアミン(A)は分子が小さいため、反応速度が上昇する傾向にある。このため、硬化時に発熱しやすくなることがあり、可使時間がやや短くなる場合がある。
【0018】
主剤には、二以上のポリアミン(A)を含有させることができる。主剤が二以上のポリアミン(A)を含有する場合における「ポリアミン(A)のアミン価」は、二以上のポリアミンのアミン価のうちの最大値(最大アミン価)である。
【0019】
ジオール(C)は、その分子中に二つの水酸基を有する、硬化剤中のポリイソシアネート(B)と反応してウレタン結合を形成する成分である。ジオール(C)は、主剤中に同様に含まれるポリアミン(A)に比してポリイソシアネート(B)との反応速度が遅い。このため、ポリアミン(A)とジオール(C)を併用することで、ウレア結合が速やかに形成されて初期物性が発現した後、残余のポリイソシアネート(B)とジオール(C)が穏やかに反応してウレタン結合が形成されるので、十分な可使時間を確保しながら密着性に優れた放熱材を形成することができる。
【0020】
ジオール(C)の水酸基価は特に限定されず、通常、50~1,500mgKOH/gであり、反応速度と可使時間を調整する観点からは、好ましくは100~1,250mgKOH/gである。ジオール(C)の水酸基価が低すぎると、室温条件下での反応速度が遅くなる傾向にあり、常態密着性が担保されにくくなることがある。一方、ジオール(C)の水酸基価が高すぎると、室温条件下での反応速度が速くなりすぎる傾向にあり、可使時間が短くなることがある。
【0021】
ジオール(C)としては、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオール等を挙げることができる。ポリカーボネートジオールとしては、例えば、炭酸ジメチル等のジアルキルカーボネートと、分子中に2つの水酸基を有するジオール化合物との反応物を用いることができる。また、市販のポリカーボネートジオールを用いることもできる。ジオール化合物としては、炭素数2~10の直鎖状又は側鎖を持ったジオールを挙げることができる。
【0022】
ジオール化合物としては、脂肪族ジオール及び脂環族ジオール等を挙げることができる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、及び2-メチル-1,8-オクタンジオール等を挙げることができる。また、脂環族ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。ポリウレタン樹脂の柔軟性をさらに向上させる観点から、脂肪族ジオールが好ましく、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールがさらに好ましい。
【0023】
ポリエステルジオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸類及び芳香族系ジカルボン酸の少なくともいずれかと、低分子量グリコール類とを縮重合したもの等を挙げることができる。脂肪族系ジカルボン酸類としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、及びアゼライン酸等を挙げることができる。芳香族系ジカルボン酸としては、イソフタル酸及びテレフタル酸等を挙げることができる。また、低分子量グリコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
【0024】
ジオール(C)としては、上記のポリカーボネートジオールやポリエステルジオール以外のポリマージオールを用いることもできる。ポリカーボネートジオール等以外のポリマージオールとしては、ポリエーテル系ジオール、ポリラクトン系ジオール、ダイマージオール、及びその他のポリマージオールを挙げることができる。さらに、分子量400以下の短鎖ジオールを併用することもできる。
【0025】
なかでも、ジオール(C)としては、その分子構造中に側鎖を有するジオールを用いることが好ましい。その分子構造中に側鎖を有するジオールとしては、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-メチルプロパンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、及び1,2-ヘキサンジオール等の短鎖ジオール;ネオペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の分岐アルキル鎖を有するジオールに由来する構成単位を含むポリエステル系ジオール;ポリカーボネート系ジオール;ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系ジオール;ポリブタジエンポリオール等を挙げることができる。側鎖を有するジオールを用いると、側鎖が無機充填剤と相互作用して無機充填剤の分散性が向上する。これにより、比較的低粘度で塗料としてより使用しやすい硬化性組成物とすることができる。
【0026】
主剤中、ポリアミン(A)及びジオール(C)の合計に占める、ポリアミン(A)の含有量は、50~90質量%であり、好ましくは60~85質量%、さらに好ましくは70~80質量%である。ポリアミン(A)及びジオール(C)の合計に占める、ポリアミン(A)の含有量が50質量%未満であると、室温(25℃)条件下で硬化しにくくなる、又は硬化時間が長くなりすぎる。一方、ポリアミン(A)及びジオール(C)の合計に占める、ポリアミン(A)の含有量が90質量%超であると、硬化速度が速くなり過ぎてしまい、可使時間が不十分になる。
【0027】
主剤中の無機充填剤(D1)及び硬化剤中の無機充填剤(D2)は、いずれも、熱伝導性を有する無機成分である。すなわち、本実施形態の硬化組成物を構成する主剤及び硬化剤は、いずれも無機充填剤を含有する。主剤及び硬化剤のいずれにも無機充填剤を含有させることで、主剤と硬化剤を均一に混合することができ、無機充填剤が均一に分散した硬化物である放熱材を形成することができる。
【0028】
主剤中の無機充填剤(D1)と、硬化剤中の無機充填剤(D2)は、同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよい。主剤は、分散剤としても機能しうるポリアミン(A)を含有する。このため、主剤には無機充填剤(D1)を比較的多く充填させる(含有させる)ことができる。具体的には、主剤中の無機充填剤(D1)の充填率は、好ましくは70~95質量%であり、さらに好ましくは80~95質量%である。なお、硬化剤中の無機充填剤(D2)の充填率は、好ましくは50~95質量%であり、さらに好ましくは85~90質量%である。
【0029】
無機充填剤(D1)及び無機充填剤(D2)は、それぞれ独立に、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、及び金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、及びこれらを含む合金等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、酸化チタン、及びシリカ等を挙げることができる。金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化炭素、及び窒化ケイ素等を挙げることができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム等を挙げることができる。金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びハイドロタルサイト等を挙げることができる。無機充填剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
無機充填剤(D1)及び無機充填剤(D2)の粒子形状としては、例えば、球状、針状、フレーク状、樹枝状、繊維状、及び不定形等を挙げることができる。また、無機充填剤(D1)及び無機充填剤(D2)の平均粒子径は特に限定されず、例えば、0.1~100μmの範囲内であればよい。本明細書における「平均粒子径」は、レーザー回折散乱法により測定される、体積基準の累積50%粒子径(メジアン径;D50)である。
【0031】
(硬化剤)
硬化剤(第二剤)は、ポリイソシアネート(B)及び無機充填剤(D2)を含有し、好ましくは、ポリイソシアネート(B)及び無機充填剤(D2)のみで実質的に構成される組成物である。このため、この硬化剤は、主剤中の水酸基やアミノ基と速やかに反応する。硬化剤は、液媒体を実質的に含有しない無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0032】
ポリイソシアネート(B)は、その分子中に二以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネート(B)としては、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネート等を挙げることができる。なお、脂肪族ポリイソシアネートには、脂肪族ポリイソシアネート変性体が包含される。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及び1,10-デカメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-MDI、2,4’-MDI、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-TDI、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びベンジジンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネート変性体としては、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体、アロファネート体、ビウレット体、及びポリオール(トリメチロールプロパン等)とのアダクト体等を挙げることができる。
【0036】
ポリイソシアネート(B)は、脂肪族ポリイソシアネートであることが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートに比してジオール(C)との反応速度が緩やかである。このため、脂肪族ポリイソシアネートを用いることで、硬化性組成物の可使時間をより十分に確保することができる。なお、可使時間を調整すべく、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートを併用することも好ましい。
【0037】
また、ポリイソシアネート(B)は、脂肪族ポリイソシアネート変性体であることがさらに好ましく、脂肪族ポリイソシアネート変性体のなかでもヌレート体であることが特に好ましい。脂肪族ポリイソシアネート変性体を用いると、3次元化した硬化物である放熱材を形成することができる。すなわち、室温条件下で硬化させた場合であっても、常温密着性がより向上した硬化物である放熱材を形成することができる。
【0038】
なお、硬化剤は、ある程度反応性の高いポリイソシアネート(B)を含有する。このため、ポリイソシアネート(B)との反応性の低い無機充填剤(D2)を用いることが好ましい。例えば、硬化剤中の無機充填剤(D2)として金属酸化物や金属窒化物等を用いるとともに、主剤中の無機充填剤(D1)として金属水酸化物や金属炭酸塩等を用いることができる。
【0039】
主剤中のアミノ基及び水酸基の合計モル数(NH+OH)に対する、硬化剤中のイソシアネート基のモル数(NCO)の比(NCO/(NH+OH))の値は、0.75~2.50であり、好ましくは1.00~1.95、さらに好ましくは1.75~1.90である。「NCO/(NH+OH)」の値を上記の範囲内とすることで、適度な可使時間を確保しつつ、密着性に優れているとともに、加熱によって剥離可能な放熱材を形成しうる常温硬化型の硬化性組成物とすることができる。
【0040】
(その他の成分)
本実施形態の硬化性組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時の絶縁信頼性を高めるためのイオン捕捉剤、及びレベリング剤等を挙げることができる。なお、本実施形態の硬化性組成物は、シリコーンを実質的に含有しない、いわゆるシリコーンフリーの組成物であることが好ましい。本実施形態の硬化性組成物は、シリコーンを用いなくても、発熱体や放熱器等の表面との密着性に優れた放熱材を形成することができる。
【0041】
(硬化性組成物の製造方法)
上述の各成分を常法にしたがって混合することで、主剤及び硬化剤をそれぞれ得ることができる。そして、得られた主剤と硬化剤を適宜組み合わせることで、目的とする二剤硬化型の硬化性組成物を得ることができる。
【0042】
主剤及び硬化剤の20℃における粘度は、それぞれ、100~1,000Pa・sであることが好ましい。粘度が100Pa・s未満であると、無機充填剤が沈降しやすくなることがあり、貯蔵安定性がやや低下する場合がある。一方、粘度が1,000Pa・s超であると、塗工時の吐出圧が過度に高くなることがあり、実使用の面で不具合が生じやすくなる場合がある。貯蔵安定性や塗工の使用適性等を考慮すると、主剤及び硬化剤の20℃における粘度は、それぞれ、200~750Pa・sであることがさらに好ましい。また、主剤の20℃における粘度が300~750Pa・sであるとともに、硬化剤の20℃における粘度が200~550Pa・sであると、これら二剤の粘度差が比較的小さく、混ざりやすくなるので、使用適性の面で特に好ましい。
【0043】
<放熱材>
本発明の放熱材の一実施形態は、前述の硬化性組成物を硬化させた硬化物である。硬化性組成物を構成する主剤と硬化剤を混合した後、常法にしたがって発熱電子部品等の発熱体やヒートシンク等の放熱器の表面に塗工する。その後、加熱することを要さず、室温(約25℃)条件下で所定時間保持して硬化させて、目的とする放熱材を所望とする箇所に形成することができる。硬化に要する時間は、主剤中のポリアミン(A)及びジオール(C)の合計に占める、ポリアミン(A)の含有量や、主剤中のアミノ基及び水酸基の合計モル数(NH+OH)に対する、硬化剤中のイソシアネート基のモル数(NCO)の比(NCO/(NH+OH))の値を適宜調整することで設定することができる。具体的には、約6~48時間程度の保持時間で硬化させることができる。
【0044】
硬化性組成物は常温で硬化可能な組成物であるため、熱に弱い部材(CPU等)の表面に形成する場合であっても、このような部材にダメージを実質的に与えることなく硬化させて、目的とする放熱材を形成することができる。そして、このようにして形成される放熱材の熱伝導率は、通常、2.0W/(m・K)以上であり、好ましくは2.5W/(m・K)以上であり、さらに好ましくは2.5~4.0W/(m・K)である。また、このようにして形成される放熱材中の無機充填剤(D1)と無機充填剤(D2)の合計充填率は、好ましくは65~95質量%である。このため、本実施形態の放熱材は、例えば、電子機器内部に設けられた発熱電子部品等の発熱体と、ヒートシンク等の放熱器との間に配置される放熱シート等の放熱材(TIM)として有用である。
【0045】
二剤硬化型の硬化性組成物を所望とする箇所に塗工するには、例えば、流路内で二剤(二液)を混合するとともに、二剤の液状混合物である硬化性組成物を先端から吐出可能なノズルを備える二液混合用のスタティックミキサー(ディスペンサー)を使用し、二液(主剤及び硬化剤)を混合しながらノズルの先端から硬化性組成物を押し出すことが好ましい。上述の硬化性組成物は可使時間が十分に確保されており、主剤と硬化剤を混合しても室温条件下では直ちに硬化することがなく、所望とする箇所に容易に塗工することができる。さらに、硬化性組成物は、可使時間を確保しつつ細いノズルの先端から押し出すことが可能であるため、部材どうしの間の狭小な隙間(ギャップ)に対しても注入することが可能であり、汎用性に優れている。
【0046】
本実施形態の放熱材は、各種の基材表面等との密着性に優れていながらも、加熱することで基材表面等から容易に剥離させることができる。放熱材を剥離させるには、例えば、80~120℃で30分間以上加熱すればよい。このように加熱することで密着性(接着性)が低下し、基材等の表面から容易に剥離させることができるので、本実施形態の放熱材はリサイクル性(リペア性)に優れている。
【0047】
<物品>
本発明の物品の一実施形態は、発熱体と、発熱体と接触した状態で配置される上述の放熱材と、を備えるものである。発熱体としては、各種の回路基板の他、半導体装置等の電子部品等を挙げることができる。半導体装置としては、パワー半導体装置、LED、及びインバーター装置等のパワーモジュール等を挙げることができる。半導体装置には、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、ダイオード、及びICチップ等の半導体素子;抵抗及びコンデンサ等の各種発熱素子;が搭載されている。
【0048】
放熱材は、シリコーンフリーとした場合であっても発熱体や放熱器等の表面との密着性に優れているとともに、熱伝導率が高いものである。また、放熱材は室温条件下で形成されうるため、熱に弱い電子部品等の発熱体に対しても好適に設けられる。さらに、適度に加熱することで放熱材を容易に剥離させることができるため、リサイクル性も良好である。
【0049】
放熱材は、発熱体と接触した状態で配置されていても、ヒートシンクやラジエーター等の放熱器(冷却部)と接触させて放熱されていれば、発熱体の熱によっても容易に剥離することはない。一方、冷却部の機能を停止させた状態では密着性が低下するので、容易に剥離させて解体し、リサイクルすることができる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0051】
<材料の用意>
表1に示す各種の材料を用意した。なお、表1中、「OH1」及び「OH2」は、いずれも側鎖を有する(分岐構造を有する)ジオールである。なお、「OH1」は3-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構成単位を含むポリエステル系ジオールであり、「OH2」は1,3-ブタンジオール(1,3-ブチレングリコール)である。また、「NCO1」及び「NCO2」は、いずれも脂肪族ポリイソシアネート(脂肪族ポリイソシアネート変性体(ヌレート体))である。さらに、「filler8~10」の粒子形状は、いずれも球状である。
【0052】
【0053】
<主剤用成分の配合>
(配合a01)
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた混合容器を用意した。この混合容器の内部を窒素ガスで置換しながら、NH4 1.5部、NH5 7部、及びOH1 1.5部を入れた。加熱減圧して脱水処理した後、窒素気流下、均一になるように100℃で1時間撹拌して、ポリアミン(A)の含有量が85%であり、全活性水素量が95.0mgKOH/gである主剤用成分(配合a01)を得た。
【0054】
(配合a02~a15)
表2の中段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を用いたこと以外は、前述の配合a01の場合と同様にして、主剤用成分(配合a02~a15)を得た。なお、表2中、「最大アミン価(mgKOH/g)」は、用いたポリアミン(A)が1種である場合には、そのポリアミン(A)のアミン価であり、用いたポリアミン(A)が2種以上である場合には、最も大きいアミン価である。また、「平均アミン価(mgKOH/g)」は、用いたポリアミン(A)が1種である場合には、そのポリアミン(A)のアミン価であり、用いたポリアミン(A)が2種以上である場合には、2種以上のポリアミン(A)のアミン価の平均値である。
【0055】
【0056】
<主剤用成分の性能評価>
調製した主剤用成分につき、以下に示す性能評価を行った。結果を表3に示す。
【0057】
(可使時間)
主剤用成分と、ポリイソシアネート(商品名「デュラネート TSE-100」、旭化成)を1:1の質量比で混合し、約1分間撹拌して均一な混合溶液を得た。得られた混合溶液を密閉容器に封入後、室温下(25℃)で保持した。密閉容器を約90°傾けて1分間放置しても混合液の液面が傾かなくなった時点で流動性が失われたと判断し、流動性が失われるまでの時間を可使時間とした。そして、以下に示す評価基準にしたがって可使時間を評価した。この評価では、二液混合仕様のディスペンサー(スタティックミキサー)の使用を想定している。このディスペンサーでは、1時間以内の内容物の交換を想定しており、使用量が多ければ内容物を30分間で使い切ることが可能である。
◎:3時間以上流動性を保っていた。
○:1時間以上3時間未満流動性を保っていた。
△:30分間以上1時間未満流動性を保っていた。
×:配合して直ちに、又は30分間未満で流動性が失われた。
【0058】
(常態密着)
上記「可使時間」の評価の際に調製した混合溶液をSUS板に塗工し、2枚のSUS板を張り合わせた試験片を作製した。作製した試験片を室温下(25℃)で1日間放置した後、2枚のSUS板を素手で剥離し、以下に示す評価基準にしたがって常態密着を評価した。硬化が一定以上進行していれば、剥離しない又は界面剥離するので、常態密着が良好であると評価することができる。一方、凝集破壊が生じた、又は未硬化であった場合には、所望とする物性が発現されておらず、不合格であると評価される。なお、配合a11及びa12については、配合後、直ちに流動性が失われたため、常態密着の評価及び後述する加熱剥離の評価を実施することができなかった。一方、配合a10については、測定可能な範囲内の可使時間であった(30分間未満で流動性が失われた)ため、常態密着の評価及び後述する加熱剥離の評価を実施することができた。
◎:剥離しなかった。
〇:界面剥離した。
△:凝集破壊した。
×:未硬化(液状又は水飴状)であった。
【0059】
(加熱剥離)
上記「常態密着」の評価の際に作製した試験片を80℃で30分間加熱処理し、以下に示す評価基準にしたがって加熱剥離(リペア性)を評価した。
○:剥離した。
×:剥離しなかった。
【0060】
【0061】
<主剤の調製>
表4に示す種類及び量(単位:部)の各成分を混合し、撹拌ミキサー(商品名「あわとり練太郎」、シンキー社製)を使用して5分間撹拌して、配合例A01~A12の主剤を得た。表4中の「充填率(%)」は、主剤に占める無機充填剤(filler)の割合(%)である。
【0062】
【0063】
<硬化剤の調製>
表5に示す種類及び量(単位:部)の各成分を混合し、撹拌ミキサー(商品名「あわとり練太郎」、シンキー社製)を使用して5分間撹拌して、配合例B01~B12の硬化剤を得た。表5中の「充填率(%)」は、硬化剤に占める無機充填剤(filler)の割合(%)である。
【0064】
【0065】
<塗料(硬化性組成物)の用意>
表6に示す種類及び量(単位:部)の主剤と硬化剤を組み合わせた、二液混合仕様のディスペンサー(スタティックミキサー)を使用して塗工する塗料(二剤硬化型の硬化性組成物)を用意した。表6中の「充填率(%)」は、硬化性組成物全体(主剤と硬化剤の合計)に占める、無機充填剤(filler)の割合(%)である。
【0066】
【0067】
<塗料(硬化性組成物)の評価>
(熱伝導率)
ホットディスク法(ISO 22007-2)によって、塗料(硬化性組成物)を硬化させた硬化物の熱伝導率を測定した。具体的には、金型(10cm×10cm)に塗料を塗工した後、一定圧力でプレスした。次いで、40℃で96時間熟成させて、フィルム状の硬化物を得た。そして、熱物性測定装置(商品名「TPS2500S」、京都電子工業社製)を使用して得られた硬化物(放熱材)の熱伝導率を測定した。結果を表7に示す。
【0068】
(可使時間)
各塗料(主剤と硬化剤の組み合わせ)を二液混合仕様のスタティックミキサーに入れて吐出した後、所定の時間放置し、スタティックミキサーの先端で硬化して再度吐出できなくなるまでの放置時間を可使時間とした。そして、以下に示す評価基準にしたがって可使時間を評価した。結果を表7に示す。
◎:3時間以上使用可能であった。
○:1時間以上3時間未満使用可能であった。
△:30分間以上1時間未満使用可能であった。
×:30分間未満で使用不可となった。
【0069】
(常態密着)
各塗料(主剤と硬化剤の組み合わせ)を二液混合仕様のスタティックミキサーに入れた。スタティックミキサーの先端から塗料を吐出してSUS板に塗工し、2枚のSUS板を張り合わせた試験片を作製した。作製した試験片を室温下(25℃)で1日間放置した後、2枚のSUS板を素手で剥離し、以下に示す評価基準にしたがって常態密着を評価した。結果を表7に示す。
◎:剥離しなかった。
〇:界面剥離した。
△:凝集破壊した。
×:未硬化(液状又は水飴状)であった。
【0070】
(加熱剥離)
上記「常態密着」の評価の際に作製した試験片を80℃で30分間加熱処理し、以下に示す評価基準にしたがって加熱剥離(リペア性)を評価した。結果を表7に示す。
○:剥離した。
×:剥離しなかった。
【0071】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の硬化性組成物は、電子部品等の発熱体と、ヒートシンク等の放熱器との間に配置される放熱シート等の放熱材を形成するための材料として有用である。
【要約】
【課題】適度な可使時間が確保されており、無機充填剤の分散状態が良好であるとともに、シリコーンを用いなくとも発熱体や放熱器等の表面との密着性に優れており、室温条件下で硬化可能であり、かつ、加熱することで容易に剥離しうる放熱材を形成することが可能な硬化性組成物を提供する。
【解決手段】放熱材を形成するために用いられる、主剤及び硬化剤の組み合わせを含む二剤硬化型の硬化性組成物である。主剤が、ポリアミン(A)、ジオール(C)、及び無機充填剤(D1)を含有し、硬化剤が、ポリイソシアネート(B)及び無機充填剤(D2)を含有し、主剤中、ポリアミン(A)及びジオール(C)の合計に占める、ポリアミン(A)の含有量が、50~90質量%であり、主剤中のアミノ基及び水酸基の合計モル数に対する、硬化剤中のイソシアネート基のモル数の比の値が、0.75~2.50である。
【選択図】なし