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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/18 20060101AFI20240904BHJP
   A41B 9/00 20060101ALI20240904BHJP
   A41B 9/02 20060101ALI20240904BHJP
   A41B 9/04 20060101ALI20240904BHJP
   A41D 27/10 20060101ALI20240904BHJP
   A41D 27/06 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
A41D27/18 Z
A41B9/00 C
A41B9/02 J
A41B9/04 B
A41D27/10 E
A41D27/06 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024502683
(86)(22)【出願日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2024000059
【審査請求日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2023002482
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519053094
【氏名又は名称】東麗(香港)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 卓充
(72)【発明者】
【氏名】木戸 達也
(72)【発明者】
【氏名】松本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大塚 亜津希
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-85104(JP,A)
【文献】特開2021-85103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/06-27/18
A41B 9/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する衣類であって、
前記開口部は、生地端を折り返した構造からなるとともに、少なくとも前記生地端の一部が接着剤により固着されてなり、
前記開口部の一部は曲率半径の変化する形状で構成されるとともに、前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅が最も狭く、曲率半径の大きい部分に向かって折返し幅が広く変化していることを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記折返し幅の変化に合わせて、前記接着剤が配置された接合部の幅が変化していることを特徴とする請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記接着剤の少なくとも一部が線状に配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衣類。
【請求項4】
前記接着剤の少なくとも一部が点状に配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衣類。
【請求項5】
前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅は2~6mmの範囲かつ、曲率半径の最も大きい部分の折返し幅は5~25mmの範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衣類。
【請求項6】
前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅(A)と、曲率半径の最も大きい部分の折返し幅(B)との比率(A÷B)は、0.1~0.9の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類の開口部を構成する生地の端を処理する技術として、二つ折りした生地の端を接着剤で固着する技術が知られている。例えば特許文献1には、生地端の折り返しをドット状の接着剤で固着することで、生地端の縫製始末が必要なく、伸縮性や外観に優れた衣類が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-25157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、衣類の開口部を構成する生地の端を二つに折り返して接着剤で固着しようとすると、凹型に湾曲し曲率半径の特に小さい、例えばVネックの凹部付近の生地端の折り返し部分では、その内外周差で生地端が引き広げられるかたちになり、その引き吊れのシワが発生して衣類の外観を損ないやすいという問題があった。また、引き吊れのシワの発生を軽減するために、折返しの幅を狭くすることが考えられるが、曲率半径の変化するカーブに沿って均一に安定して折返しすることが難しく、美しい開口部を構成することが難しいという問題があるとともに、折返しの幅を狭くすることで開口部のハリ感がなくなってしまい、頼りない風合いの開口部になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、衣類の開口部において凹型に湾曲して曲率半径の変化する生地端を二つ折りにして接着剤を用いて固着するとき、曲率半径の小さいカーブの生地端であっても内外周差で発生する引き吊れのシワを軽減しながらも、曲率半径の変化するカーブに合わせて安定して美しい折返しの開口部を得ることができるとともに、ハリ感のある開口部を有する衣類を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る衣類は、以下の構成を有する。
(1)開口部を有する衣類であって、前記開口部は、生地端を折り返した構造からなるとともに、少なくとも前記生地端の一部が接着剤により固着されてなり、前記開口部の一部は曲率半径の変化する形状で構成されるとともに、前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅が最も狭く、曲率半径の大きい部分に向かって折返し幅が広く変化していることを特徴とする衣類。
(2)前記折返し幅の変化に合わせて、前記接着剤が配置された接合部の幅が変化していることを特徴とする(1)に記載の衣類。
(3)前記接着剤の少なくとも一部が線状に配置されたことを特徴とする(1)または(2)に記載の衣類。
(4)前記接着剤の少なくとも一部が点状に配置されたことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の衣類。
(5)前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅は2~6mmの範囲かつ、曲率半径の最も大きい部分の折返し幅は5~25mmの範囲であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の衣類。
(6)前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅(A)と、曲率半径の最も大きい部分の折返し幅(B)との比率(A÷B)は、0.1~0.9の範囲であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の衣類。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衣類の開口部において凹型に湾曲して曲率半径の変化する生地端を二つ折りにして接着剤を用いて固着するとき、曲率半径の小さいカーブの生地端であっても内外周差で発生する引き吊れのシワを軽減しながらも、曲率半径の変化するカーブに合わせて安定して折返しすることができるとともに、ハリ感のある開口部を有する衣類を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る衣類の外観を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る衣類の衿の開口部に配置された接着剤が付設された態様を模式的に示す図である。
図3図3は、図2に示す開口部の生地端を折り返して固着した態様を模式的に示す図である。
図4図4は、実施の形態2に係る衣類の外観を示す図である。
図5図5は、実施の形態2に係る衣類の衿の開口部に配置された接着剤が付設された態様を模式的に示す図である。
図6図6は、図5に示す開口部の生地端を折り返して固着した態様を模式的に示す図である。
図7図7は、実施の形態2に係る衣類の開口部の生地端を折り返して固着した別の態様を模式的に示す図である。
図8図8は、実施の形態3に係る衣類の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という」)を説明する。なお、図面はあくまでも模式的なものである。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る衣類の外観を模式的に示す図である。衣類1の衿首の開口部2は凹型に湾曲して曲率半径の変化するカーブで構成されており、一般にVネックと呼ばれるデザインカーブで構成されている。
なお、本発明における曲率半径とは,開口部2を形成する曲線を、局所的に円の弧とみなしたときの円の半径を指す。本発明の衣類は、開口部2において局所的に円弧が最もゆるやかなカーブを描く箇所、すなわち曲率半径の最も大きい部分、開口部2において局所的に円弧が最も急なカーブを描く箇所、すなわち曲率半径の最も小さい部分、および曲率半径の中間な部分とを有する。図2は、図1に示す衣類1の衿首の開口部2の生地端7に接着剤3を付設した様子を示し、図3は、図2の生地端7を折り返して固着した様子を示す図である。なお、図2および図3はともに衣類1の前身頃を内側(肌側)から見た図である。
【0011】
本発明の実施の形態1は、図3に示すように、開口部2を有する衣類1であって、開口部2は、生地端7を折り返した構造からなるとともに、少なくとも生地端7の一部が接着剤3により固着されてなり、開口部2の一部は曲率半径の変化する形状で構成されるとともに、開口部2の曲率半径の最も小さい部分10の生地端の折返し幅Aが最も狭く、曲率半径の最も小さい部分10より曲率半径の大きい部分の折返し幅が広く変化していることが重要である。
そうすることにより、凹型に湾曲して曲率半径の変化する生地端7を二つ折りにして接着剤3を用いて固着するとき、曲率半径の小さいカーブの生地端であっても内外周差で発生する引き吊れのシワを軽減するとともに、ハリ感のある開口部2を得ることができる。
【0012】
図3に示すVネックの開口部2は、曲率半径の最も小さい部分10を中心にしてその左右両側につながる、曲率半径の中間な部分13、および曲率半径の最も大きい部分11との組み合わせで構成されている。曲率半径の最も小さい部分10はその曲率半径が小さければ小さいほどシャープなV字形状となり好まれるが、その生地端7を折り返して開口部2を構成するため、内外周差による引き吊れのシワが発生しにくいよう折返し幅Aを狭くしている。折返し幅Aは狭ければ狭いほど良いが、接着剤3で固着するために実用的には2~6mmの幅が好ましく、V字の頂点に相当する位置の折返し幅15が最も狭くなっている。
【0013】
また、図3に示すVネックの開口部2は、曲率半径の最も小さい部分10の生地端7の折返し幅Aが最も狭くなるように生地端7の折返し幅が曲率半径に対応して変化している。すなわち、曲率半径の最も小さい部分10から、曲率半径の中間な部分13および曲率半径の最も大きい部分11にかけて折返し幅が次第に広くなっている。そうすることにより、曲率半径の最も大きい部分11が、生地を折り返して2枚重ねになる面積が大きくなり、ハリ感のある開口部2を得ることができる。曲率半径の最も大きい部分11の好ましい折返し幅Bは、その曲率半径にもよるが、曲率半径が大きくてほぼ直線状である場合には制限はなく、カーブ状であった場合でも内外差による引き吊れのシワが発生しない範囲で広くすることが好ましいが、実用的には5~25mm程度の折返し幅が好ましい。
【0014】
開口部2の曲率半径の最も小さい部分10の生地端の折返し幅Aと、曲率半径の最も大きい部分11の折返し幅Bとの比率(A÷B)は、0.1~0.9の範囲であることが、生地端を折り返して開口部2を構成する際、曲率半径の最も小さい部分10においてカーブ内外周差による引き吊れのシワが発生しにくく、曲率半径の最も大きい部分11において、ハリ感のある開口部2を得ることができ好ましい。より好適には0.2~0.6の範囲である。
【0015】
本発明の実施の形態1は、図3に示すように、接着剤3が付設された領域である接合部の幅は、生地の折返し幅の変化に合わせて変化していることが好ましい。図3においては、接着剤3がドット状の接着剤である場合の態様を示している。接着剤3の列は、曲率半径の最も小さい部分10の付近で単列に付設され、曲率半径の最も大きい部分11に向かって2列、3列というふうに複列に変化して付設されている。すなわち、接着剤が付設された領域である接合部の幅も変化している。また、接着剤3を複列に付設した部分は、生地端7に概ね平行に配置された生地端側の列が含まれるように構成している。そうすることにより、生地端7を折返し線8で二つに折り返したとき、生地端7が自由端となって生地が剥がれているような外観となることを防ぐことが出来る。更に、接着剤3を複列に付設した部分は、折返し線8に概ね平行に配置された折返し線側の列が含まれるよう構成している。そうすることにより、凹型に湾曲して曲率半径の変化する生地端7を二つ折りにして接着剤を用いて固着するとき、折り返す幅の変化を接着剤3を折返し線8に概ね平行に配置した列をガイドラインとして折返し作業者が認識しやすくなる。詳しくは、作業者が折返しの幅の変化を制御する際、手指に触れる接着剤3の固さを頼りにその位置とラインを把握して折返しの幅の変化を制御することができる。もって、作業者は折返しの幅の変化を迷うことなく連続的に発現させることができ、安定して美しい折返しが得られやすくなる。更には曲率半径の最も大きい部分11に向かって接合部の幅が広くなることで、ハリ感のある開口部2を得ることができる。
【0016】
図2に示すVネックの開口部2において、生地端7に概ね平行に配置された生地端側の接着剤3の列は、生地端7との距離が大きくなると、生地端7を折返し線8で二つに折り返したとき、生地端7が自由端となって生地が剥がれているような外観となる問題がある。したがって、生地端7に概ね平行に配置された生地端側の接着剤3の列はなるべく生地端7に近づけて付設することが好ましい。生地端7が自由端となっている幅は2mm以内とすることが好ましく、より好ましくは1mm以内である。
また図3に示すVネックの開口部2において、折返し線8に概ね平行に配置された折返し線側の接着剤3の列は、折返し線8との距離が近くなりすぎると、開口部2を引き延ばした時にドット状の接着剤の形状が生地表面に発現し、生地端8が凹凸になったような外観になりやすい問題がある。したがって、折返し線8と接着剤3の列との距離は、0.5mm以上とすることが好ましく、より好ましくは1.0mm以上である。
【0017】
本発明の実施の形態1は、図3に示すように、開口部2の曲率半径の最も小さい部分10に、連続した線状の接着剤3aを配置する。そうすることにより、曲率半径の最も小さい部分10の折返し幅が狭くなったとしても、剥離強力が得られやすい。
開口部2の曲率半径の最も小さい部分10に線状の接着剤3aを配置せず、曲率半径の中間な部分13、および曲率半径の最も大きい部分11と同様のドット状の接着剤3を付設する場合は、生地の伸度特性が阻害されにくくなることから、曲率半径の最も小さい部分10を折返す時に生地端が引き広がりやすくなり引き吊れのシワが発生にくく、衿の開口部2の全体の伸度特性も得られやすい。これらは、生地の伸度特性や剥離強力のバランスをとってより好ましい形態を自由に選択することができる。
【0018】
図3に示すVネックの開口部2において、連続した線状の接着剤3aは曲率半径の最も小さい部分10のVネックの頂点を含む位置に配置されている。連続した線状の接着剤3aを配置することにより、ドット状の接着剤3に比べて接着面積が大きくなり剥離強力が得られやすいため、折返し幅Aを狭くしても剥離強力が不十分になりやすいVネックの頂点付近には好ましい。連続した線状の接着剤3aはその幅に対して2倍以上の長さを有することが好ましい。実用的には、隣合うドット状の接着剤3aを接近させて付設し、互いに接触して一続きの線状の接着剤となるよう付設すると良い。
【0019】
本発明の実施の形態1は、図3に示すように、開口部2の最も小さい曲率半径R1が5cm以下であることが好ましい。そうすることにより、生地端7を折り返した時の内外周差で発生する引き吊れのシワの軽減の効果が得られやすい。曲率半径R1は、それが描く円が曲率半径の最も小さい部分10において、概ね曲率半径と同じ長さが接する状態の円のものである。曲率半径R1が小さくなり1cm以下になると、折返し幅Aを狭く設定したとしても滑らかなカーブで折り返すことが難しくなり、短い直線をつなげたような角のあるカーブになりやすいが、生地端7が折り返されて接着剤3または接着剤3aで固着されている場合は、本発明の衣類と同じである。
【0020】
接着剤3の形状は、折返しの幅の変化に合わせて面状に付設するとハリ感が強く得られて好ましいが、線状に付設されたものでも良い。線状に付設することで、ハリ感が得られやすいだけでなく、適度な柔らかさも得られやすくなる。面状の接着剤は、フィルム状の接着剤を接合部の幅の変化に合わせて裁断、付設して接着する場合や、ゲル状の接着剤を接合部の幅の変化に合わせて塗布した後、接着のための加圧により押し広げられて隣合う接着剤同士が接触して一体となりフィルム状の接着剤と同様の接合部となる場合が考えられ好ましい。線状の接着剤は、接合部の幅の変化に合わせて概ね平行に並ぶように付設したり、あるいは格子状に付設する場合が考えられ好ましい。また、接着剤3の形状は、ドット状に付設することが好ましい。そうすることにより、生地の伸度特性を阻害することなく、ハリ感のある開口部が得られやすくなる。
【0021】
ドット状の接着剤3の大きさは、衣類1を構成する生地の組織や厚さによって好ましい大きさが異なる。直径が1.0~2.0mm程度のドットであれば比較的強いハリ感が得られやすいが、生地が薄い場合は生地の表側にしみ出して目立ってしまい、外観を損ねる場合があるため、必要なハリ感が得られる範囲内で小さいものが好ましい。直径が1.0mm以下の接着剤であれば、生地厚みが0.5~0.8mm程度のインナー生地の場合でもしみ出しにくく好ましい。更に直径が0.6mm以下の接着剤であれば、生地厚みが0.3~0.5mm程度の更に薄い生地でもしみ出しが目立ちにくく好ましい。接着剤3の直径が小さくなってハリ感が低下する場合は、接着剤3同士の間隔を小さくすることで補うことができる。
【0022】
ドット状の接着剤3は、実施の形態1において丸の形状であるが、これに限定されるものではない。接着剤3が分離した状態で繰り返し付設させられる形状であれば良く、連続しなければ線状であってもよく、三角、四角、楕円等の幾何学的な形状のものでも良いし、それらを組み合わせた形状であっても良い。
【0023】
本発明の実施の形態1の衣類1は、伸縮性を有する生地からなる。たとえば、一般の衣料用素材として提供される編物素材であれば、丸編や経編の素材が本発明の実施に必要な伸縮性があり限定されるものではない。また、織物素材であっても、衣料用に伸縮性を持つ素材は本発明に好適である。また用途は、一般的な肌着やカップ付きインナーの他、Tシャツやカットソーなどのアウターウェアの素材に適用することができ、限定されるものではない。
【0024】
接着剤3を構成する樹脂は、天然樹脂よりも合成樹脂の方が好ましく、その中でも熱可塑性樹脂がより好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの他、高分子化合物からなるものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。
また接着剤3を構成する樹脂は、反応性ホットメルトであることが好ましい。樹脂が反応性ホットメルトであるとき、樹脂が軟化または溶融して接着部位の構造間に浸み込んで、冷却固化した後に周囲の湿気と反応することにより架橋が進行し、耐熱性および耐溶剤性などに優れた接着構造を形成することができる。
【0025】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る衣類1Aの外観を模式的に示す図である。衣類1Aの衿首の開口部2Aは凹型に湾曲して曲率半径の変化するカーブで構成されており、一般にスクエアネックと呼ばれるデザインカーブで構成されている。
図5は、図4に示す衣類1Aの衿首の開口部2Aに接着剤3を付設した様子を示し、図6は、開口部2Aの生地端7を折り返して固着した様子を示す図である。また、図7は生地端7を折り返して固着した他の開口部2Bの態様を示す図である。図5図7はそれぞれ衣類1の内側(肌側)から見た図である。
【0026】
図6に示すスクエアネックの開口部2Aは、曲率半径の最も小さい部分10を中心にしてその左右両側につながる曲率半径の中間な部分13、14、曲率半径の最も大きい部分11および12との組み合わせで構成されている。曲率半径の最も小さい部分10はその曲率半径が小さければ小さいほどシャープなスクエア形状となり好まれるが、その生地端を折り返して開口部を構成するため、内外周差による引き吊れのシワが発生しにくいよう折返し幅を狭くしている。折返し幅Aは狭ければ狭いほど良いが、接着剤で固着するために実用的には2~6mmの幅が好ましく、その位置は、少なくとも角の頂点に相当する位置の幅Aが最も狭くなっていることが好ましい。
【0027】
また、図6に示すスクエアネックの開口部2Aは、曲率半径の最も小さい部分10の生地端7の折返し幅Aが最も狭くなるように開口部2Aの折返し幅が変化している。すなわち、曲率半径の最も小さい部分10から曲率半径の最も大きい部分11に向かって折返し幅が次第に広くなっている。また、曲率半径の最も小さい部分10から曲率半径の最も大きい部分12に向かって折返し幅が次第に広くなっている。曲率半径の最も小さい部分10と曲率半径の最も大きい部分11および12の間には、曲率半径が中間の部分13、14を有する。曲率半径が中間の部分13および14の折返しの幅は、曲率半径の最も小さい部分10と曲率半径の最も大きい部分11、12の中間である。そうすることにより、曲率半径の最も大きい部分11または12が、生地を折り返して2枚重ねになる面積が大きくなり、ハリ感のある開口部2Aを得ることができる。曲率半径の最も大きい部分11または12の好ましい折返し幅は、その曲率半径にもよるが、曲率半径が大きくてほぼ直線状である場合には制限はなく、カーブ状であった場合でも内外差による引き吊れのシワが発生しない範囲で広くすることが好ましいが、実用的には5~25mm程度の折返し幅が好ましい。
【0028】
開口部2Aの曲率半径の最も小さい部分10の生地端の折返し幅Aと、曲率半径の最も大きい部分11および12の折返し幅Bとの比率(A÷B)は、0.1~0.9の範囲であることが、生地端を折り返して開口部を構成する際、曲率半径の最も小さい部分においてカーブ内外周差による引き吊れのシワが発生しにくく、曲率半径の最も大きい部分11および12において、ハリ感のある開口部2Aを得ることができ好ましい。より好適には0.2~0.6の範囲である。
【0029】
本発明の実施の形態2は、図6に示すように、接着剤3が付設された接合部の幅は、生地端7の折返し幅の変化に合わせて接着剤3が付設された領域である接合部の幅も変化していることが好ましい。図6においては、接着剤3がドット状の接着剤である場合の態様を示している。接着剤3の列は、曲率半径の最も小さい部分10の付近で単列に付設され、曲率半径の中間である部分の13および14から、曲率半径の最も大きい部分11および12に向かって、接着剤3が2列、3列というふうに複列に変化して付設されている。すなわち、接着剤3が付設された接合部の幅が変化している。また、接着剤3を複列に付設した部分は、生地端7に概ね平行に配置された生地端側の列が含まれるように構成している。そうすることにより、生地端7を折返し線8で二つに折り返したとき、生地端7が自由端となって生地が剥がれているような外観となることを防ぐことが出来る。
更に、接着剤3を複列に付設した部分は、折返し線8に概ね平行に配置された折返し線側の列が含まれるよう構成している。そうすることにより、凹型に湾曲して曲率半径の変化する生地端7を二つ折りにして接着剤を用いて固着するとき、折り返す幅の変化を接着剤3を折返し線8に概ね平行に配置した列をガイドラインとして折返し作業者が認識しやすくなる。詳しくは、作業者が折返しの幅を制御する際、手指に触れる接着剤3の固さを頼りにその位置とラインを把握して折返しの幅を制御することができる。もって、作業者は折返しの幅の変化を迷うことなく連続的に発現させることができ、安定して美しい折返しが得られやすくなる。更には曲率半径の最も大きい部分11および12に向かって接合部の幅が広くなることで、ハリ感のある開口部2Aを得ることができる。
また、図6において、曲率半径の最も大きい部分11および12での折返し幅は変化せずに一定である。そうすることにより、ほぼ直線で構成されるスクエア形状に対して直線を強調した美しい衣類を得ることができる。
【0030】
更に図7に示すスクエアネックの開口部2Bは、曲率半径の最も小さい部分10に直線状の接着剤3aを配置し、曲率半径の最も小さい部分10の範囲を小さく、すなわち曲率半径を図6よりもさらに小さくしている。これにより、曲率半径の中間の部分13および14で折返し幅がゆるやかに広くなっている。そうすることで、生地端7の描く線が開口部2Bの全体で凹型の湾曲で描かれるため、更に美しい外観の衣類を得ることができる。
【0031】
開口部2Bにおいても、曲率半径の最も小さい部分10の生地端の折返し幅Aと、曲率半径の最も大きい部分11および12の折返し幅Bとの比率(A÷B)は、0.1~0.9の範囲であることが、生地端を折り返して開口部を構成する際、曲率半径の最も小さい部分においてカーブ内外周差による引き吊れのシワが発生しにくく、曲率半径の最も大きい部分11および12において、ハリ感のある開口部2Bを得ることができ好ましい。より好適には0.2~0.6の範囲である。
【0032】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係る衣類4の外観を示す図である。衣類4は、肌着下衣の一例であり、胴体および脚を通過させる開口部5および6を有する。開口部5および6は、実施の形態1および2の衣類と同様に、曲率半径の変化するパターンで構成されている。実施の形態3においても、実施の形態1および2と同様に、開口部5、6の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅が最も狭く、曲率半径の最も大きい部分に向かって折返し幅を広く変化させることで、本発明の効果を得ることができる。
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によって限定されるべきものではない。例えば、帽子や腕カバーなどの衣類の開口部に同様の効果を付与してもよい。
【実施例
【0033】
(実施例1)
実施例1は、図1および図3に示すようなVネックのデザインの一般的な肌着を作製した。Vネックのカーブは、Vネックの頂点付近の曲率半径を0.5cmとし、そこからつながる曲率半径の最も大きいとする部分11は、図3に示すような一般的なVネックと同様の緩やかなカーブを描くよう30cmで構成した。
折返し幅は、Vネックの頂点部分で2mmとし、そこから曲率半径の最も大きい部分11の上端にかけて次第に折返し幅が広がるように構成し、前身頃の上端での折返し幅が7mmとなるようにした。
図3に示すように、生地の端部7から1mmの位置に沿うように直径1mmのドット状の接着剤3の列を付設するとともに、折返し線8から1mmの位置に沿うように同じドット状の接着剤3の列を付設した。Vネックの頂点部分にもドット状の接着剤を付設した。また、ドット状の接着剤3の列の数は、開口部2の折返し線8の長さの左右それぞれについて上、中、下と概ね3等分し、上を3列、中を2列、下を1列に付設した。その後、生地端を折返して接着剤で固着し、本発明の実施例1を得た。実施例1の構成、および評価結果について表1に示す。
【0034】
(実施例2)
実施例2は、図4および図6に示すようなスクエアネックのデザインの一般的な肌着を作製した。スクエアネックのカーブは、スクエアネックの角の曲率半径を3cmとし、そこからつながる曲率半径の最も大きい部分11および12は、図6に示すような一般的なスクエアネックと同様に概ね直線すなわち200cmとなるように構成した。
折返し幅は、スクエアネックの角部分で2mmとし、概ね直線で構成した部分は、7mmで一定とした。また曲率半径が中間の部分13および14は次第に折返し幅が広がるように構成した。
図5に示すように、生地端7から1mmの位置に沿うように直径1mmのドット状の接着剤3の列を付設するとともに、折返し線8から1mmの位置に沿うように同じドット状の接着剤3の列を付設した。また、ドット状の接着剤3の列の数は、概ね直線で構成した部分は3列、曲率半径が最も小さい角の部分は1列、それらの間の折返し幅が変化している部分は2列に付設した。その後、生地端を折返して接着剤で固着し、本発明の実施例2を得た。実施例2の構成、および評価結果について表1に示す。
【0035】
(実施例3)
実施例3は、以下に示す2点以外は、実施例1と同様にして本発明の実施例3を得た。
(1)Vネックの頂点付近の曲率半径を5cmとし、その折返し幅を、4mmとした点。
(2)図3のように、Vネックの頂点に、幅1mm、長さ10mmの線状の接着剤を付設した点。
実施例3の構成、および評価結果について表1に示す。
【0036】
(比較例1)
比較例1は、以下に示す2点以外は、実施例1と同様にして本発明の比較例1を得た。
(1)Vネックの頂点付近の曲率半径を6cmとし、曲率半径の小さい部分から大きい部分に至るすべての折返し幅を7mmとした点。
(2)曲率半径の小さい部分から大きい部分に至るすべての部分にドット状の接着剤を3列付設した点。
比較例1の構成、および評価結果について表1に示す。
【0037】
(比較例2)
比較例2は、以下に示す2点以外は、実施例1と同様にして本発明の比較例2を得た。
(1)曲率半径の小さい部分から大きい部分に至るすべての折返し幅を2mmとした点。
(2)曲率半径の小さい部分から大きい部分に至るすべての部分にドット状の接着剤を1列付設した点。
比較例2の構成、および評価結果について表1に示す。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1、1A、1B、4 衣類
2、2A、2B 衿首の開口部
3、3a 接着剤
5 胴の開口部
6 脚の開口部
7 生地端
8 折返し線
9 折返し後の予定線
10 曲率半径の最も小さい部分
11、12 曲率半径のもっと大きい部分
13、14 曲率半径の中間の部分
A、B 折返し幅
R1、R2 曲率半径
【要約】
衣類の開口部において曲率半径の小さいカーブの生地端を二つに折り返して接着剤を用いて固着するとき、曲率半径の小さいカーブの引き吊れによるシワを防ぐために折返しの幅を狭くしても衣類の開口部にハリ感を与え、且つ安定して折返し易くすることで着用感と外観に優れた衣類を提供する。本発明の衣類は、開口部を有する衣類であって、前記開口部は、生地端を折り返した構造からなるとともに、少なくとも前記生地端の一部が接着剤により固着されてなり、前記開口部の一部は曲率半径の変化する形状で構成されるとともに、前記開口部の曲率半径の最も小さい部分の生地端の折返し幅が最も狭く、曲率半径の大きい部分に向かって折返し幅が広く変化していることを特徴とする衣類。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8