(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】弓術体験・練習用システム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20240905BHJP
F41J 3/00 20060101ALI20240905BHJP
G16Y 10/65 20200101ALI20240905BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20240905BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
A63B69/00 515
F41J3/00
G16Y10/65
G16Y20/40
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2020150866
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】512065591
【氏名又は名称】株式会社フューチャー・ブレイン
(72)【発明者】
【氏名】萬屋 菊洋
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0035043(KR,A)
【文献】特開2011-183054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0001138(US,A1)
【文献】特開平08-247700(JP,A)
【文献】特開2004-191022(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0068097(KR,A)
【文献】"指導者も学生にとっても映像は大切な情報源。弓道に最適な動作分析ツールとは?",ダートフィッシュジャパン[online],2019年10月31日,[2024年2月6日検索], <https://www.dartfish.co.jp/cases/kokugakuin/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
F41J 3/00
G16Y 10/65
G16Y 20/40
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弓術の開始から終了までの
弓術者の所作指導を行うモニター手段と、
弓術の開始から終了までの
前記弓術者の所作、矢の移動状態、矢の的中または外れ状態を画像記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された画像を配信するインターネット・ネットワーク配信手段とを備え、
前記記録手段は、前記弓術者の前面または背後に配置されたカメラ手段と、的の近傍および・または的の内部に配置され前記弓術者が放った矢の移動状態を的側から撮影するカメラ手段とを含んでおり、
前記的の近傍および・または前記的の内部に配置されたカメラ手段は、カメラ前面に透明な矢よけ部材を備えていることを特徴とする弓術体験・練習システム。
【請求項5】
前記インターネット・ネットワーク配信手段により、弓術所作の手順が前記モニター手段により表示され、経験者からの所作アドバイスをオンラインにより双方向的に行いうることを特徴とする請求項
4記載の弓術体験・練習システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弓道、アーチェリーなどの弓術競技の技能向上、体験、入門に有用なシステムであって、さらに詳しくは、弓術未体験者や初心者および外国観光客による日本古来の武術体験および技能向上を行う撮像、記録、配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
弓を用いて矢で的(まと)当てを行う弓術は日本古来の武術、弓道として弓射文化となっている。また、西洋でもアーチェリーとして独自の弓競技が行われ、趣味のみならず競技として普及している。弓術は、日本古来の武術であり、武器として狩猟、戦争へ用いられただけでなく、弓射神事としての性格を有しており、弓矢の神社への奉納、大相撲での弓取り式、流鏑馬行事などが行われている。また、弓道としては、心身鍛錬の道を重要視している側面もある。
【0003】
そのため弓道としては、武芸弓術として身につけるべき所作、射法などが挙げられている。各流派により異なるが、代表的なものとしては、射法である「五射」(巻藁前、的前、遠矢前、差矢前、要前)と心得としての「六科」(弓理、弓礼、弓法、弓器、弓工、丹心)などがある。また、具体的弓術の射法所作として一連の流れを8つの節に分けて行う「射法八節」(後述する)が多く用いられている。
【0004】
一方、弓術は、的当て競技としての側面があり、射撃、射的などと同様に誰にでも娯楽として楽しめる要素を有している。そのため、弓術未経験者、外国人観光客、ゲーマー(ゲーム愛好者)などにより楽しめる弓術が求められている。特に、外国人観光客は弓道が日本武術文化であるとの認識から、弓道を気軽にできるようであれば体験して日本文化に接することを希望する外国人も多く見受けられる。このような弓術競技としてのゲーム・娯楽性の要望を満たしながら、弓道入門、弓道経験、弓術練習・訓練、技能向上を行うシステムが望まれている。
【0005】
従来技術としては、弓術訓練、技術向上を目的として特許文献1には弓射所作を分析する技術が開示され、特許文献2には弓射の息合いと弓発射とを同期させる弓術訓練装置が開示されている。また、弓術以外のスポーツでは、ゴルフ練習システムなど、種々の技能向上、訓練のための工夫された装置が開示されている(例えば、特許文献3,特許5394553号公報など)。
【0003】
しかし、これら開示された技術は、弓術の入門、体験、技能向上には必ずしも満足すべきものでなく、また、娯楽性に欠けるものであった。外国人観光客や弓術未体験者にとって弓術は、所作、心得、心身鍛錬、神事的要素などのために簡易に体験することはできず、また体験や技能向上の練習にあたっては日本国内の限られた場所でしか可能でなく、そのため弓術体験や弓術練習は、貴重なものとなっている。つまり、弓術未経験者や外国人観光客にとって、弓術をやってみたくてもその方法、所作が複雑でどのようにすればいいか、どのように技術向上が図れるのかが不明であり、そのような訓練システムも見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-313362号公報
【文献】特開昭62-129067号公報
【文献】特許5394553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はそのような状況に鑑み、弓術未経験者や外国人観光客にとっては、弓術を体験できるようにすると共に、体験記録として配信し、また、弓術体験者や技能向上を目指す者にとっては、技能向上に正しい所作を反復練習しうる装置システムが望まれているが、従来技術においては、これらを満足するシステムは開発されていない。
【0006】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、以下のような弓術の体験、訓練に有用な装置およびシステムの提供を目的とする。
(1)弓術未経験者、初心者、外国人観光客であっても予備知識なく弓術を体験しうる弓術訓練装置およびシステム。
(2)弓術所作の記録・配信により弓術所作の分析、専門的アドバイスを受けることが可能となる弓術訓練装置およびシステム。
(3)弓術競技の迫力ある映像取得、記録、配信を行いうる弓術体験、訓練創始およびシステム。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、この発明に係る弓術体験・練習システムは、弓術の開始から終了までの弓術者の所作指導を行うモニター手段と、弓術の開始から終了までの前記弓術者の所作、矢の移動状態、矢の的中または外れ状態を画像記録する記録手段と、前記記録手段により記録された画像を配信するインターネット・ネットワーク配信手段とを備え、前記記録手段は、前記弓術者の前面または背後に配置されたカメラ手段と、的の近傍および・または的の内部に配置され前記弓術者が放った矢の移動状態を的側から撮影するカメラ手段とを含んでおり、前記的の近傍および・または前記的の内部に配置されたカメラ手段は、カメラ前面に透明な矢よけ部材を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る弓術体験・練習システムは、前記的の内部に配置されたカメラ手段の1台が、的の中心に配置するように構成することができる。
【0014】
また、本発明に係る弓術体験・練習システムは、前記的の近傍および・または前記的の内部に配置されたカメラ手段が、矢の衝突感知センサーを備えるように構成することができる。
【0015】
また、本発明に係る弓術体験・練習システムは、前記カメラ手段により取得した弓術競技の的映像と基準的映像との比較により弓術の競技結果を得点として算出するように構成することができる。
【0017】
また、本発明に係る弓術体験・練習システムは、前記インターネット・ネットワーク配信手段により、弓術所作の手順が前記モニター手段により表示され、経験者からの所作アドバイスをオンラインにより双方向的に行いうるように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるシステムを利用することで弓術未経験者、初心者、外国人観光客などにとっては、弓術体験、弓術入門が容易に行うことができ、経験者にとっては、弓術訓練、技能向上に役立つ。また、弓術体験や弓術練習が所作の開始から終了、さらに的中状況まで記録され、各種ネットワークなどへ配信可能であるため、観光客にとっては旅行イベントでの体験を記録し、家族、友人へ同時配信し体験の様子を伝えられ、弓術経験者などは配信を介して専門家や師匠による指導を受け、技能向上へ役立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例システムが適用される弓道場の概略説明図である。
【
図2】本発明の実施例で使用する的の概略説明断面図である。
【
図3】本発明の実施例で使用するカメラモジュール周辺の概略説明図である。
【
図4】本発明の実施例のブロックダイアグラムの概略である。
【
図5】本発明の実施例のモニタースクリーンの一例である。
【
図6】本発明の実施例における弓術得点計算の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態の撮像装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの図面も本発明の説明用に概略的または模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、構成要素の回路構成、寸法、材質、形状、その配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施例システムが適用される弓道場の概略説明図である。弓道場10は屋内、野外、流派それぞれにより矢道11の長さ、的12の位置などが異なってくるが、大きくは近的場と遠的場とに分かれている。近的場は射場13から的12までの距離が28m、的12の直径が一尺二寸(36cm)、遠的場は距離が60m、的12の直径が1mである。遠的場の距離は西洋弓術であるアーチェリーとほぼ同じであり、兼用することが可能である。距離を確保する必要のある遠的場は、屋外が多く、屋内での弓道場はほぼ近的場である。また、娯楽や練習用には、この近的場の距離より更に短い矢道とした弓道場も見受けられる。
【0022】
的場14は、矢道11面に対し若干傾斜角度をもって土(安土)、わら筒または砂で固められ、的場14の斜面の中央部に的12が設置されている。通常、矢道の中間部には矢よけ膜15が張られており、矢の上方への逸脱を防いでいる。射場13は、弓術者(または射者)が弓技を行う場所であり、弓術者の前方にはモニター16が設置されている。また、弓術者の後方、前方には弓術者の演技を記録する後方カメラ17および前方カメラ18が設置されており、演技を演者の正面および後方から撮影する。
【0023】
また、矢道11の中間部の場所には、的前方から的12への的中状況を撮影する的前カメラ19が設置されている。更に、的12の近傍および・または的12の内方に的側カメラ20が設置されている。的側カメラ20は、弓術者が放った矢を的側から撮影する。
図2は的および的12の近傍に配置された的側カメラ20および的中心カメラ20‘の断面図を示している。的側カメラ20は的12の近傍に配置されるが、的の中央(弓術では中白または正鵠と称する。)に的中心カメラ20‘として配置しても良いし、複数配置しても良い。
【0024】
また、
図3は、本発明の的側カメラ20および的中心カメラ20’に適用されるカメラモジュール22およびその周辺の概略説明図である。この的側カメラ20および的中心カメラ20‘は、的内または的近傍に設置されるため矢の衝撃を避ける必要がある。そのため的側カメラ20や的中心カメラ20’の前方には矢よけ部材21が施されている。現在スマートフォンなどで使用しているカメラモジュール22は、前面から見て四角形のトップパネルが略8x8mm程度の小型化された大きさであるためこれらを流用することができる。的12の中心である白丸の半径は3.6cmであり、このカメラモジュールを埋め込んでも違和感は生じない大きさである。標準的スマートフォン用カメラモジュール22は、複数枚の広角レンズ部、レンズ駆動アクチュエーター(VCM)、カラーフィルター、撮像素子センサー、回路基板(PCB)が一体化された略四角形のモジュールで構成され、画素性能もハイビジョン(約2000x1000画素数)から4K(約4000x2000画素数)の画質までカバーしている。カメラモジュール22の前方(的の前面側)には透明な矢よけ部材21がカメラモジュールと一体化されて備えられている。
【0025】
図2および
図3では、この矢よけ部材21が四角錐の形状をしているが、飛来してきた矢をわずかに避けるだけで十分であり、先端が細い形状でカメラモジュールをカバーできるものであれば十分である。また、この矢よけ部材21の素材は、透明であって飛来する矢の衝撃に耐えられるような強化プラスチックなどのものが望ましい。また、カメラモジュール22の後方(的の背面側)には矢よけ部材21に矢が当たった場合の衝撃吸収材である緩衝材23が設けられている。この緩衝材23は、弾性緩衝材としてのゴム材や機械的バネによる緩衝材であっても良い。
【0026】
また、緩衝材23の後方には衝撃感知センサー24が配置されている。この衝撃感知センサー24は、的12の中心に配置された的側カメラ20‘に矢が的中した場合を検知するものである。弓術での中心部は中白または正鵠であり、近的場の場合、中心の白丸が半径3.6cmの円(中白)であり、その外側に向かって幅3.6cmの黒円(1の黒)、幅3.0cmの白円(2の白)、幅1.5cmの黒円(2の黒)、幅3.0cmの白円(3の白)、幅3.3cmの黒円(外黒)で構成されている。従って、的の中心に配置された的中心カメラ20’に矢が当たることは真の中心を撃ち抜いていることとなり、このことを衝撃感知センサー24により感知し、中白および正鵠の中心への的中音を発するように構成することができる。
【0027】
上述した本発明を弓術訓練や指導に適用するには、
図4に示すようなブロックダイアグラムによりシステムを構成する。的場における弓術者の後方カメラ17,前方カメラ18、矢道の中間部に配置された的前カメラ19,的の近傍に配置された的側カメラ20(または的中心カメラ20‘)が映像処理手段41に有線または無線により接続されている。無線接続の場合、それぞれのカメラは無線LAN(Local Area Network),ブルートゥースまたは電力線通信であるPLC(Power Line Communication)により達成することができる。
【0028】
映像処理手段41では、カメラ入力信号の切替選択を行うSW(スイッチャー)処理および映像信号分割などの表示方法処理を行う。この処理により弓術者の所作や的への的中・外れ状態の映像を単独または分割画面で切り換えて表示しうるよう設定する。映像処理手段41の出力信号は映像制御手段42へ入力される。映像制御手段42は、モニター手段43およびネットワーク手段44と接続されている。このネットワーク手段44はインターネット・ネットワークであり、種々のソーシャル・ネットワーク・システムのプラットフォーム45などへ配信、通信することができる。また、弓術の経験者や専門家であるコーチ端末手段46などとインターラクティブ(双方向)通信可能なように接続されている。さらに、ネットワーク手段44は、弓術指導、訓練プログラムデータ48や記録保存手段49を備えたクラウド47と接続されている。記録保存手段49には、弓術者の弓術的中結果だけでなく、過去の所作、訓練の映像も含め記録データとして保存され、また、他の弓術者の映像データも併せ保存されている。
【0029】
映像制御手段42では、クラウド47内に保存されている弓術指導、訓練プログラムデータ48を取り出してモニター手段16へ表示したり、指導者コーチ46とのインターラクティブな通信を行ったり、カメラ入力信号を選択したり、過去の訓練や結果を選択したり、各種映像やデータの取り出し、選択、表示、記録・保存、指示を制御する。また、訓練や体験に必要な弓術者の所作の分析、スロー、ストップ、早送り、検索などの映像処理制御を行う機能を有している。この映像制御手段42は、映像処理が可能なPC(PERSONAL COMPUTER)で達成することができる。
【0030】
本発明による装置システムにおいて弓術未経験者や初心者は、弓術の入門用に構成された入門プログラム48をクラウド47より呼び出し、弓術者の前方に配置されたモニター手段16に表示する。弓術者は射場13においてモニター手段16に表示される所作プログラムに沿って弓道所作を学び、プログラムに表示される動作を真似て体験する。弓道所作は、矢を射る射法の基本を8つの節に分けて指導しており、射法八節と言われている。その基本的内容は、次の8つの所作から構成されている;1.足踏み:射場に射位で的に向かって両足を踏み開く動作、2.胴造り:足踏みを基礎として、両脚の上に上体を安静におく動作・構え、3.弓構え:矢を番えて弓を引く前に行う準備動作、4.打起し:弓矢を持った両拳を上に持ち上げる動作、5.引分け:打起こした位置から弓を押し、弦を引いて、両拳を左右に開きながら引き下ろす動作、6.会:弓を引き切った状態で、矢は的を狙っている状態、7.離れ:矢を放つ行為、8.残心:矢が放たれた後の姿勢。
【0031】
未体験者や初心者であっても、入門プログラムに示される基本所作に沿って射法八節の節毎に指導者と弓術者との画像を左右2画面で比較し、指導者の所作を真似ることで容易に弓術入門が可能となる。また、本発明によるシステムを訓練や上達に利用する場合、映像制御手段42より専門家や指導者コーチ端末手段46との間でインターラクティブ(双方向的)に指導を受けることができる。弓術の場合、弓が上下非対象であり、支点(握り)の位置により反発力が大きく異なるため、握りの位置が極めて重要である。また、左手(押手)と右手の伸びや方向性、更に、弦の矢を押す状態に移行するポイントや、筋肉量に応じた構えなど個人の経験のみでは理解し難い点を映像で再生し、専門家やコーチによる指導を受けることにより上達、訓練の効果を上げることができる。
【0032】
本発明に依るシステムでは、弓術所作の開始(足踏み)から終了(残心)までの一連の動作、および矢が離れた状態から的に至るまでを弓術者の後方カメラ17、前方カメラ18、的前カメラ19および的側カメラ20(または的中心カメラ20‘)で撮影し、モニター16に表示することができる。
図5は、モニター手段16上に4分割表示したものである。表示方法は、スイッチャー映像処理手段41によりそれぞれのカメラ映像を4分割、2分割または単独で表示したり、ネットからダウンロードしたコーチ46の模範演技と訓練者の所作とを左右に表示して練習したりすることも可能である。
【0033】
このようなモニター上の画像は自らの所作のチェック、フォーム修正などに利用されるだけでなく、インターネット・ネットワーク44に接続された各種ソーシャルネットワークシステム(SNS)へ自ら配信、発信することができる。特に、外国人観光客などは、日本文化としての弓道体験をリアルタイムで自国や世界中の友人、家族、知人へ発信し、旅の思い出として記録することも可能となる。
【0034】
また、このシステムでは、矢道の中間地点に配置され、的を狙った的前カメラ19で取得した画像から得点を計算し、モニター16上に表示する。
図6は、得点計算の説明図である。弓術の得点としては、単に的への「あたり」、「はずれ」を競う「的中制」や、矢があたった部所により中心に近づくほど得点が高い「得点制」、射形、射品、態度など形も採点する「採点制」などがあるが、「得点制」での競技では競技の都度その点数カウントが行われる。本発明において、簡易的には、的前カメラ19により取得した競技結果の画像を目視により得点計算することもできるし、映像処理手段42において自動的に得点計算することもできる。
【0035】
的中率や得点の自動計算法としては、モニター16上でどの部分に的中したかを画面の位置情報により取得し、自動的に計算して表示することもできる。また、他の方法としては、的前カメラ19で取得した競技結果の画像を一旦記録し、その記録画像と標準化された的映像(基準像)とを画像比較処理することによりどの部分に的中したかを算定する。この画像処理は、弓術競技結果の記録の像から基準像を控除し、その差分像での矢の先端位置を求めるだけで容易にどの部分に的中したかを判断し、得点を計算することができる。このように得点計算を自動化することで競技結果が即時的に判明し、更に、本発明による複数のシステム同士をインターネット・ネットワークで接続すれば複数の競技者間で弓術ゲームとして競うことも可能である。
【0036】
本発明の実施例においては、的側カメラ20は、矢との衝突防止のため矢よけ部材を備えており的中心カメラ20‘として的12の中心にも配置することもできる。この的中心カメラ20’では射場13から放たれた矢が的12へ向かって飛んでくる様子が撮影されるため、迫力ある映像が記録される。これにより、弓術の娯楽性を向上することが出来、観光客などが日本文化の体験発信と共に、弓術の魅力や迫力も併せ配信することができる。
【0037】
更に、
図3に示す通り、この的中心カメラ20‘の緩衝材23の後方には衝撃感知センサー24が配置されており、これにより的の中心である正鵠を撃ち抜いた場合の信号が取得できる。この信号取得により的中心カメラ20’の映像に合わせて正鵠的中音を効果音として挿入することで、より娯楽性を向上させたシステムとなる。また、正鵠的中の場合の得点加算や正鵠的あて競技を構成するなどして、弓術をより身近な日本文化武術として構成することができる。
【0038】
本発明の実施例として弓術への体験、訓練システムを説明したが、本発明は、アーチェリー(洋弓)、モンゴル弓術、中国弓術および射的(しゃてき)などの的あて競技にも本発明の趣旨の範囲内で適用することができる。特に、アーチェリーと日本の弓道とは、類似点も多く射法も日本の「射法六節」に相当するステップをアーチェリーに適用している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によるシステムにより弓術などの的あて競技において武術訓練と娯楽とを兼ね合わせた効果的システムが構築でき、体験状況やレッスン状況をSNSへアップして配信することができるため、弓術射手の訓練、弓術未体験者や観光客向けの体験弓道場として適用することができ、教育用、娯楽用施設として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
12 的
13 射場
14 的場(安土)
15 矢よけ膜
16 モニター
17 後方カメラ
18 前方カメラ
19 的前カメラ
20 的側カメラ
20‘ 的中心カメラ
21 矢よけ部材
22 カメラモジュール
23 緩衝材
24 衝撃感知センサー
41 映像処理手段
42 映像制御手段
44 インターネット・ネットワーク
45 ソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)
46 コーチ端末
47 クラウド