(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ロッド、拭き取り綿、及び清掃具キット
(51)【国際特許分類】
A61B 90/70 20160101AFI20240905BHJP
A61M 39/16 20060101ALI20240905BHJP
A61J 15/00 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
A61B90/70
A61M39/16
A61J15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020062724
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】浮田 純次
(72)【発明者】
【氏名】上原 康賢
(72)【発明者】
【氏名】木村 篤志
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143945(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092571(WO,A1)
【文献】特開2017-099738(JP,A)
【文献】特表2009-511181(JP,A)
【文献】特表2018-519005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/70
A61M 39/16
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃する際に使用されるロッドであって、
前記ロッドは、シート状の拭き取り綿を前記オスコネクタの前記オス部材と前記外筒との間の隙間に押し込むために、前記隙間に挿入される中空の筒状体を備え、
前記筒状体の外径が8.75mm以下であり、
前記筒状体の先端が、筒状体の長手方向に対して斜めに切断されていることを特徴とするロッド。
【請求項2】
前記筒状体の内径が5.59mm以上である請求項
1に記載のロッド。
【請求項3】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃する際に使用されるロッドであって、
前記ロッドは、シート状の拭き取り綿を前記オスコネクタの前記オス部材と前記外筒との間の隙間に押し込むために、前記隙間に挿入される中空の筒状体を備え、
前記筒状体の先端に切り欠きが設けられていることを特徴とするロッド。
【請求項4】
前記筒状体が設けられた中実のハンドルを更に備える請求項1~
3のいずれか一項に記載のロッド。
【請求項5】
前記筒状体は吸水性を有しない請求項1~
4のいずれか一項に記載のロッド。
【請求項6】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジと、前記オス部材を前記外筒に連結する底板とを備えた経腸栄養法に用いられるオスコネクタを拭き取り清掃するための清掃具キットであって、
ロッドとシート状の拭き取り綿とを備え、
前記ロッドが請求項1~
5のいずれか一項に記載のロッドであり、
前記拭き取り綿
は、前記オスコネクタを拭き取り清掃するためのシート状の拭き取り綿であって、前記拭き取り綿は、前記筒状体とは別部材として前記筒状体と前記オスコネクタとの間に前記筒状体の先端及び前記オス部材の先端にそれぞれ当接するように配置され、前記筒状体を前記オスコネクタの前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入することにより前記拭き取り綿が前記底板に接触するまで前記筒状体によって前記隙間に押し込まれることができるように構成されており、
前記ロッドの前記筒状体と前記オスコネクタとの間に前記筒状体の先端及び前記オス部材の先端にそれぞれ当接するように配置された、前記筒状体とは別部材であるシート状の前記拭き取り綿を、前記筒状体を前記オスコネクタの前記隙間に挿入することにより前記拭き取り綿が前記底板に接触するまで前記隙間に押し込むことができる清掃具キット。
【請求項7】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジと、前記オス部材を前記外筒に連結する底板とを備えた経腸栄養法に用いられるオスコネクタを拭き取り清掃するための清掃具キットであって、
ロッドとシート状の拭き取り綿とを備え、
前記ロッドは、前記オスコネクタを拭き取り清掃する際に使用されるロッドであって、前記ロッドは、前記オスコネクタの前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入される中空の筒状体を備え、前記筒状体と前記オスコネクタとの間に前記筒状体の先端及び前記オス部材の先端にそれぞれ当接するように配置された、前記筒状体とは別部材であるシート状の拭き取り綿を、前記筒状体を前記オスコネクタの前記隙間に挿入することにより前記拭き取り綿が前記底板に接触するまで前記隙間に押し込むためのものであり、
前記筒状体の外径が8.75mm以下であり、
前記拭き取り綿は、前記オスコネクタを拭き取り清掃するためのシート状の拭き取り綿であって、前記拭き取り綿は、前記筒状体とは別部材として前記筒状体と前記オスコネクタとの間に前記筒状体の先端及び前記オス部材の先端にそれぞれ当接するように配置され、前記筒状体を前記オスコネクタの前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入することにより前記拭き取り綿が前記底板に接触するまで前記筒状体によって前記隙間に押し込まれることができるように構成されており、
前記ロッドの前記筒状体と前記オスコネクタとの間に前記筒状体の先端及び前記オス部材の先端にそれぞれ当接するように配置された、前記筒状体とは別部材であるシート状の前記拭き取り綿を、前記筒状体を前記オスコネクタの前記隙間に挿入することにより前記拭き取り綿が前記底板に接触するまで前記隙間に押し込むことができる清掃具キット。
【請求項8】
前記拭き取り綿の略中央部に、相対的に薄い薄肉部が設けられている請求項
6又は7に記載の
清掃具キット。
【請求項9】
前記拭き取り綿の略中央部に、前記拭き取り綿を貫通するスリットまたは孔が設けられている請求項
6~8のいずれか一項に記載の
清掃具キット。
【請求項10】
前記筒状体の中心軸を含む面に沿った前記筒状体の断面において、前記筒状体の先端が略円弧状断面を有する請求項
7に記載の
清掃具キット。
【請求項11】
前記筒状体の中心軸を含む面に沿った前記筒状体の断面において、前記筒状体の先端が楔形断面を有する請求項
7に記載の
清掃具キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経腸栄養法に好ましく用いられるオスコネクタを清掃するために使用されるロッド及び拭き取り綿に関する。また、本発明は、ロッド及び拭き取り綿を備えた清掃具キットに関する。
【背景技術】
【0002】
食事を口から摂れなくなった患者に栄養剤や薬剤等を含む液状物を投与する方法として経腸栄養法が知られている。経腸栄養法では、カテーテルを体外から消化管(例えば胃)内に挿入した状態で患者に留置する。カテーテルとしては、患者の鼻から挿入する経鼻カテーテルや、患者の腹に形成された胃ろうに挿入するPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)カテーテル等が知られている。カテーテルを介して栄養剤、流動食(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる)、又は薬剤などの液状物が患者に投与される。液状物を貯留した容器と、患者に留置されたカテーテル(経鼻カテーテル、PEGカテーテルなど)とが接続される。異なる部材を接続するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる接続具が用いられる。
【0003】
【0004】
図13A及び
図13Bのオスコネクタ910は、筒形状のオス部材911と、オス部材911を取り囲む外筒913とを有する。オス部材911と外筒913とは、オス部材911の基端部から半径方向に沿ってフランジ状に突出した底板914を介して連結されている。オス部材911の外周面912は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。オス部材911には、その長手方向に沿ってオス部材911を貫通する流路917が設けられている。外筒913のオス部材911に対向する内周面には雌ネジ915が設けられている。雌ネジ915は、右ネジである。
【0005】
図14A及び
図14Bのメスコネクタ920は、中空円筒形状の管状部(メス部材)921を有する。管状部921の内周面922は、先端に近づくにしたがって内径が大きくなるテーパ面(いわゆるメステーパ面)である。管状部921の外周面には螺状突起(雄ネジ)925が設けられている。
【0006】
オスコネクタ910とメスコネクタ920とは、オス部材911を管状部921に挿入し、且つ、雌ネジ915と螺状突起925とを螺合させることにより接続される。オス部材911の外周面912と管状部921の内周面922とは、径及びテーパ角度が一致するテーパ面であるから、両者は液密な面接触をする。
【0007】
経腸栄養法では、液状物の流れ方向に関して上流側(容器側)のコネクタとしてメスコネクタ920が、下流側(患者側)のコネクタとしてオスコネクタ910が、それぞれ使用される。
【0008】
オスコネクタ910では、外筒913がオス部材911を取り囲み、外筒913の内周面には雌ネジ915が設けられている。従って、経腸栄養法を行った後、オス部材911と外筒913との間の隙間916内に液状物(経腸栄養剤)が残留しやすい。
【0009】
オスコネクタ910が患者に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられている場合には、オスコネクタ910は当該カテーテルとともに患者に長期にわたって留置される。オスコネクタ910が、液状物が残留したままで患者に留置され続けると、オスコネクタ910は不衛生状態に至りうる。また、オスコネクタ910上で液状物が乾燥して固化した固化物は、オスコネクタ910とメスコネクタ920との再接続を妨げる。従って、オスコネクタ910を清浄に清掃することが望まれる。
【0010】
特許文献1には、オスコネクタ910を清掃するための拭き取りチップが記載されている。拭き取りチップは、吸水性を有する筒状部を備える。筒状部を、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入する。隙間内に残留した液状物は、筒状部に吸収され拭き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、筒状部は、ウレタンやポリビニルアルコールなどの発泡体や不織布からなり、プレス成型やトランスファー成型などにより製造しうると記載されている。しかしながら、上記材料の発泡体又は不織布を所望する強度の筒状部に成型することは困難である。筒状部が柔らかすぎると、筒状部は、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入すると容易に変形してしまう。このため、筒状部を底板914に達するほどに深く挿入することができず、底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去することが困難である。一方、筒状部が硬すぎると、筒状部はオスコネクタ910に応じて変形できない。このため、例えば雌ネジ915の溝内や底板914近傍の隅に付着した液状物を拭き取り除去することが困難である。このように、従来の拭き取りチップは、オスコネクタ910に付着する液状物を残らず拭き取り除去することができないという課題を有している。
【0013】
本発明の目的は、オス部材を取り囲むように雌ネジが設けられたオスコネクタを、清浄に清掃することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のロッドは、筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃する際に使用される。前記ロッドは、シート状の拭き取り綿を前記オスコネクタの前記オス部材と前記外筒との間の隙間に押し込むために、前記隙間に挿入される中空の筒状体を備える。本発明の第1のロッドでは、前記筒状体の外径は8.75mm以下である。本発明の第2のロッドでは、前記筒状体の先端に切り欠きが設けられている。
【0015】
本発明の拭き取り綿は、筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するためのシート状の拭き取り綿である。前記拭き取り綿は、中空の筒状体によって前記オス部材と前記外筒との間の隙間に押し込まれることができるように構成されている。
【0016】
本発明の清掃具キットは、筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するための清掃具キットである。清掃具キットは、ロッドとシート状の拭き取り綿とを備える。前記ロッドは本発明の上記ロッドである。前記拭き取り綿は本発明の上記拭き取り綿である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オス部材を取り囲むように雌ネジが設けられたオスコネクタを、清浄に拭き取り清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、オスコネクタを清掃するための、本発明の実施形態1の清掃具キットを示した分解斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態1の清掃具キットを用いてオスコネクタを清掃する一工程を示した斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1の清掃具キットを用いてオスコネクタを清掃する次の一工程を示した断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1の清掃具キットを用いてオスコネクタを清掃する次の一工程を示した断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1の清掃具キットを用いてオスコネクタを清掃する別の一工程を示した断面図である。
【
図6】
図6Aは、本発明の実施形態2にかかるロッドの断面図である。
図6Bは、
図6Aの部分6Bの拡大断面図である。
【
図7】
図7Aは、本発明の実施形態3にかかるロッドの断面図である。
図7Bは、
図7Aの部分7Bの拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態4にかかるロッドの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態5にかかるロッドの斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態6にかかるロッドの断面図である。
【
図11】
図11Aは、本発明の実施形態7にかかる拭き取り綿の斜視図である。
図11Bは、当該拭き取り綿の断面図である。
【
図12】
図12Aは、本発明の実施形態8にかかる拭き取り綿の斜視図である。
図12Bは、当該拭き取り綿の断面図である。
【
図13】
図13Aは、経腸栄養法で患者側コネクタとして使用されるオスコネクタの斜視図である。
図13Bは、当該オスコネクタの中心軸を含む面に沿った断面図である。
【
図14】
図14Aは、経腸栄養法で容器側コネクタとして使用されるメスコネクタの斜視図である。
図14Bは、当該メスコネクタの中心軸を含む面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の上記第1のロッドの一態様では、前記筒状体の内径が5.59mm以上であってもよい。かかる態様は、第1に、拭き取り綿をオスコネクタの隙間に深く押し込むのに有利であり、第2に、拭き取り綿が意図せずに破れて筒状体がオス部材の外周面を傷付ける事態が発生するのを防止するのに有利である。
【0020】
本発明の上記第1のロッドの一態様では、前記筒状体の中心軸を含む面に沿った前記筒状体の断面において、前記筒状体の先端が略円弧状断面を有していてもよい。かかる態様によれば、拭き取り綿が意図せずに破れるのを防止することができる。
【0021】
本発明の上記第1のロッドの一態様では、前記筒状体の中心軸を含む面に沿った前記筒状体の断面において、前記筒状体の先端が楔形断面を有していてもよい。かかる態様によれば、拭き取り綿が所望するように破れる可能性が高くなる。
【0022】
本発明の上記第1のロッドの一態様では、前記筒状体の先端が、筒状体の長手方向に対して斜めに切断されていてもよい。かかる態様によれば、拭き取り綿が意図せずに破れるのを防止することができる。また、かかる態様によれば、ロッドを回転させると、ロッドに連動して拭き取り綿も一緒に回転する。
【0023】
本発明の上記ロッドは、前記筒状体が設けられた中実のハンドルを更に備えていてもよい。かかる態様によれば、筒状体より高強度であるハンドルを把持して清掃作業を効率良く行うことができる。
【0024】
前記筒状体は吸水性を有しなくてもよい。かかる態様によれば、所望する強度を有する筒状体を容易に実現できる。
【0025】
本発明の上記拭き取り綿の略中央部に、相対的に薄い薄肉部が設けられていてもよい。かかる態様によれば、オスコネクタに対する拭き取り綿の位置決めが容易になる。
【0026】
前記拭き取り綿の略中央部に、前記拭き取り綿を貫通するスリットまたは孔が設けられていてもよい。かかる態様によれば、拭き取り綿が所望しない位置で意図せずに破れるのを防止することができる。
【0027】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。以下の図は、本発明の実施形態を概念的に示したものである。図示された各部材(特に拭き取り綿3a~3c)の形状は、実際の形状を正確に表したものでない場合があることに留意すべきである。
【0028】
(実施形態1)
図1Aは、オスコネクタ90を清掃するための、本発明の実施形態1の清掃具キット1を示した分解斜視図である。
図1Bは、
図1Aの断面図である。清掃具キット1は、棒状のロッド2aと、シート状の拭き取り綿(わた)3aとを備える。
【0029】
ロッド2aは、その全体が、まっすぐに延びた細長い棒状の筒状体20で構成される。筒状体20は、中空の筒形状を有する。孔21が、筒状体20の長手方向に沿って筒状体20(またはロッド2a)を貫通している。孔21は、筒状体20の両端をつなぐ貫通孔であり、筒状体11の両端の開口を介して外界と連通している。筒状体20の外周面及び内周面はいずれも円形の断面形状を有する。筒状体20の内径及び外径は、筒状体20の長手方向において一定である。筒状体20は、使用者が指でつまんだり、曲げ力やねじり力を加えたりした程度では実質的に変形しない程度の強度を有する。筒状体20の材料は、制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、スチレンエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体、ポリアセタール、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができ、これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。筒状体20は、上記樹脂材料を射出成形することにより全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0030】
拭き取り綿3aは、繊維が絡まり合った綿(わた)状物である。拭き取り綿3aの材料は、制限はないが、例えば木綿、レーヨン等の吸水性を有する材料を用いることができ、特に脱脂綿を好ましく用いることができる。拭き取り綿3aは、薄いシート状に成形されている。拭き取り綿3aの平面視形状は、
図1A及び
図1Bの例では略正方形であるが、本発明はこれに限定されず、長方形、円形、楕円形など任意である。拭き取り綿3aの大きさは、制限はないが、拭き取り綿3aの内接円の直径(拭き取り綿3aの平面視形状が正方形である場合には、その一辺の長さを意味する)が、15mm以上、更には20mm以上、特に25mm以上であることが好ましく、また、80mm以下、更には70mm以下であることが好ましい。拭き取り綿3aは、略一定の厚さを有している。拭き取り綿3aの厚さは、制限はないが、1mm以上、更には2mm以上であることが好ましく、また、10mm以下、更には7mm以下であることが好ましい。
【0031】
清掃具キット1を用いたオスコネクタ90の清掃方法を説明する。
【0032】
オスコネクタ90は、
図13A及び
図13Bのオスコネクタ910と同様に、経腸栄養法における患者側コネクタである。オスコネクタ90を構成する要素のうち、
図13A及び
図13Bのオスコネクタ910を構成する要素と同じ要素には、
図13A及び
図13Bと同じ符号が付してあり、それらについての説明を省略する。オスコネクタ90は、オス部材911の流路917と連通する中空の基端部98を備える。基端部98に、柔軟なチューブ99が挿入され接続される。チューブ99は、患者に留置されたカテーテル(経鼻カテーテル、PEGカテーテルなど)であってもよい。あるいは、チューブ99は、当該カテーテルに接続されたチューブであってもよい。カテーテルは、患者の消化管(例えば胃)内に挿入されている。
【0033】
経腸栄養法を行う場合、オスコネクタ90に、メスコネクタ(
図14A及び
図14B参照)を接続して、これらを介して患者に液状物(例えば経腸栄養剤)を投与する。その後、メスコネクタをオスコネクタ90から分離する。上述したように、分離後のオスコネクタ90(特に、隙間916のを規定する内面(即ち、雌ネジ915、底板914、オス部材911の各面。以下、これらを総称して「隙間916の内面」という。))には液状物(図示せず)が付着している。
図1A及び
図1Bのオスコネクタ90は、この状態にある。
【0034】
最初に、
図2A及び
図2Bに示すように、オス部材911を上方に向けたオスコネクタ90上に拭き取り綿3aを載置する。拭き取り綿3aの略中央部がオス部材911の先端に当接する。拭き取り綿3aを挟んで、ロッド2a(筒状体20)をオスコネクタ90に対向させる。筒状体20の先端を拭き取り綿3aに当接させる。そして、筒状体20をオス部材911と同軸に維持しながら、筒状体20をオスコネクタ90に向かって押し込む。
【0035】
図3に示されているように、筒状体20を、オスコネクタ90のオス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入する。拭き取り綿3aは、筒状体20の内周面及び外周面に沿うように折り曲げられて、オスコネクタ90の隙間916に挿入される。拭き取り綿3aはオス部材911の先端を覆っている。オス部材911は筒状体20の先端の開口を通って孔21内に進入する。
【0036】
図4に示されているように、拭き取り綿3aがオスコネクタ90の底板914に接触するまで、筒状体20をオスコネクタ90に押し込む。筒状体20とオスコネクタ90(外筒913、底板914、及びオス部材911)との間に拭き取り綿3aが介在している。更に、拭き取り綿3aは、オス部材911の先端に密着している。この状態で、ロッド2a(筒状体20)及び拭き取り綿3aを一体的に、オスコネクタ90に対してオスコネクタ90の中心軸周りに回転させる。
【0037】
その後、筒状体20をオスコネクタ90から引き抜く。続いて、拭き取り綿3aをオスコネクタ90から分離する。使用済みの拭き取り綿3aは廃棄される。
【0038】
上記のように、筒状体20を用いて拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。その後、筒状体20及び拭き取り綿3aをオスコネクタ90から分離する。これにより、オスコネクタ90に付着していた液状物を拭き取り綿3aで拭き取り除去することができる。液状物は、拭き取り綿3aに吸い込まれ、拭き取り綿3aに保持された状態で、オスコネクタ90から除去される。液状物に含まれる固形物も、液状物とともに拭き取り綿3aによって拭き取られ除去される。
【0039】
上述した従来の拭き取りチップは、オスコネクタの隙間916に挿入される筒状部の全体が吸水性を有する材料で構成される。したがって、所望する強度を有する筒状部を製造することは困難である。筒状部が柔らかすぎても硬すぎても、液状物を残らず拭き取り除去することはできない。
【0040】
これに対して、本実施形態1では、拭き取り清掃する拭き取り綿3aとは別に、筒状体20を備えたロッド2aを使用する。
【0041】
筒状体20は、吸水性を有している必要はない。筒状体20は、所望する強度を有する材料で構成される。拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む際に、筒状体20は実質的に変形しない。拭き取り綿3aを、隙間916内に、底板914に当接するまで押し込むことは容易である。
【0042】
隙間916に押し込まれた拭き取り綿3aは、隙間916の内面と筒状体20との間に挟まれる。拭き取り綿3aは、柔らかいので、容易に変形可能である。また、拭き取り綿3aは、弾力性を有する。このため、拭き取り綿3aは、隙間916の内面に沿って変形し、且つ、隙間916の内面に密着する。硬質の筒状体20は、拭き取り綿3aを隙間916の内面に密着させるのに貢献する。より詳細には、雌ネジ915と筒状体20との間の拭き取り綿3aは、雌ネジ915のネジ山に応じて変形し、雌ネジ915の溝に入り込む。筒状体20の先端近傍の拭き取り綿3aは、底板914と外筒913との境界の隅、底板914とオス部材911との境界の隅に密着する。更に、オス部材911と筒状体20との間の拭き取り綿3aは、オス部材911の外周面912に密着する。筒状体20を隙間916に挿入する過程で、及び、拭き取り綿3aが隙間916に挿入された状態でオスコネクタ90に対して回転する過程で、拭き取り綿3aはオスコネクタ90上を摺動(即ち、オスコネクタ90に接触しながら移動)する。このため、拭き取り綿3aは、オスコネクタ90の隙間916の内面に付着した液状物を拭き取ることができる。
【0043】
更に、拭き取り綿3aは、隙間916に押し込まれる過程で、オス部材911の先端に密着される(
図2B、
図3、
図4参照)。このため、拭き取り綿3aは、オス部材911の先端に付着した液状物をも拭き取ることができる。従来の拭き取りチップでオス部材911の先端を清掃するためには、筒状部を隙間916に挿入する前に吸水性を有する筒状部の先端をオス部材911の先端に意識して接触させる必要がある。これを忘れると、オス部材911の先端の液状物を拭き取ることができない。これに対して、本実施形態1では、筒状体20で拭き取り綿3aを隙間916に単に押し込むだけで、オス部材911の先端に付着した液状物を拭き取ることができる。
【0044】
筒状体20をオスコネクタ90の隙間916に挿入する過程で、拭き取り綿3aが雌ネジ915に螺入されるように、拭き取り綿3aと筒状体20とを一体的に、筒状体20側から見て時計回り方向に回転させてもよい。拭き取り綿3aは、雌ネジ915に沿って移動する。これによれば、拭き取り綿3aは、雌ネジ915の溝により深く入り込むことができるので、溝に付着した液状物をより確実に拭き取る。また、拭き取り綿3aを隙間916に押し込む過程で拭き取り綿3aが意図せずに破れる可能性が低下する。
【0045】
このように、本実施形態1では、拭き取り綿3aとは別部材の筒状体20を用いて、拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。拭き取り綿3aが隙間916に押し込まれたとき(
図4参照)、オスコネクタ90と筒状体20との間に拭き取り綿3aが介在している。これにより、オスコネクタ90に付着する液状物を残らず拭き取り除去することができる。
【0046】
拭き取り綿3aは、隙間916に押し込まれる過程(
図2Bから
図4に至る過程)で引張り力を受ける。特に、拭き取り綿3aの、筒状体20の先端が当接した円形部分より内側の領域は、引張り力を受けて大きく伸ばされる。このため、
図5に示すように、オス部材911の先端が当接した部分を起点として、拭き取り綿3aが破れる場合がある。しかしながら、拭き取り綿3aがこのように破れても、拭き取り綿3aは隙間916の内面に接触しているので、隙間916の内面を拭き取り清掃することができる。また、オス部材911の先端は、拭き取り綿3aが破れるより前に拭き取り綿3aで拭き取り清掃される。このため、拭き取り綿3aが
図5のように破れても、
図4と同様に、オスコネクタ90に付着する液状物を残らず拭き取り除去することができる。
【0047】
筒状体20の内径D0(
図1B参照)は、オスコネクタ90のオス部材911の外周面912の外径と同じかこれより大きいことが好ましい。具体的には、内径D0は、D0≧5.59mm、更にはD0≧5.69mmを満足することが好ましい。内径D0がこの下限値より小さいと、以下の2つの問題が生じうる。第1に、筒状体20にオス部材911を挿入することが困難になる。これにより、拭き取り綿3aを底板914に当接するまで隙間916に押し込むことが困難になるので、特に底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去できないという事態が起こりうる。第2に、オス部材911と筒状体20との間の拭き取り綿3a(
図4参照)が薄くなり、遂には拭き取り綿3aが破れて筒状体20がオス部材911に直接接触する。これにより、オス部材911の外周面912が筒状体20によって傷付けられる可能性が生じる。内径D0の上限値は、制限されないが、D0≦8.00mm、更にはD0≦8.75mmを満足することが好ましい。内径D0がこの上限値より大きいと、オス部材911の外周面912に対する拭き取り綿3aの密着性が低下するので、外周面912に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。
【0048】
筒状体20の外径D1(
図1B参照)は、オスコネクタ90の雌ネジ915の内径と同じかこれより小さいことが好ましい。具体的には、外径D1は、D1≦8.75mm、好ましくはD1≦8.55mmを満足する。外径D1がこの上限値より大きいと、筒状体20が雌ネジ915に衝突し、筒状体20をオスコネクタ90の隙間916に挿入することが困難になる。これにより、オスコネクタ90を清掃することができない。外径D1の下限値は、制限されないが、D1≧8.20mm、更にはD1≧8.35mmを満足することが好ましい。外径D1がこの下限値より小さいと、拭き取り綿3aを雌ネジ915の溝内に入り込ませにくくなるので、雌ネジ915の溝内の液状物を拭き取り除去する能力が低下する。
【0049】
拭き取り綿3aに洗浄液が含浸されていてもよい。洗浄液としては、制限はないが、例えば、アルコールや滅菌精製水などを用いることができる。液状物が乾燥してオスコネクタ90に固着した固化物等も、洗浄液により綺麗に除去することができる。
【0050】
ロッド2a(筒状体20)と拭き取り綿3aとは、それぞれ別々に製造される。筒状体20は、単純な中空の円筒形状を有する部材であるので、容易に製造できる。拭き取り綿3aも、例えば脱脂綿などの汎用の綿を用いて容易に製造できる。オスコネクタ90を清掃する際に、使用者がロッド2aと拭き取り綿3aとを組み合わせて使用する。拭き取り綿3aは使い捨てされる。一方、ロッド2aは、繰り返し使用されてもよく、使い捨てされてもよい。
【0051】
(実施形態2)
図6Aは、本発明の実施形態2にかかるロッド2bの断面図である。
図6Bは、ロッド2bを構成する筒状体20の先端の拡大断面図である。
図6A及び
図6Bの断面は、ロッド2bの中心軸(図示せず)を含む面に沿っている。図示されているように、筒状体20の先端は、略円弧状断面22を有するように面取りされている。本実施形態では、円弧状断面22は半円形を有する。
【0052】
実施形態1のロッド2aに代えてロッド2bを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。筒状体20の略円弧状断面22が設けられた先端を拭き取り綿3aに当接させて拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。拭き取り綿3aは、筒状体20の先端に引っかかることなく、先端に対して半径方向に沿って容易に摺動することができる。
【0053】
上述したように、拭き取り綿3aを筒状体20で隙間916に押し込む際、拭き取り綿3aの、筒状体20の先端が当接した円形部分より内側の領域は、大きな引張り力を受ける。本実施形態2では、先端が略円弧状断面22を有するので、拭き取り綿3aは、この引張り力が緩和されるように、先端上を容易に摺動可能である。このため、拭き取り綿3aに意図しない破れが発生するのを防止することができる。拭き取り綿3aの意図しない破れは、所望しない位置で発生しうる。例えば、拭き取り綿3aが所望しない位置で破れると、筒状体20がオス部材911に直接接触してオス部材911の外周面912を傷付ける事態が生じうる。本実施形態2のロッド2bは、拭き取り綿3aの破れを防止して、このような事態が起こる可能性を低減する。
【0054】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適用される。
【0055】
(実施形態3)
図7Aは、本発明の実施形態3にかかるロッド2cの断面図である。
図7Bは、ロッド2cを構成する筒状体20の先端の拡大断面図である。
図7A及び
図7Bの断面は、ロッド2cの中心軸(図示せず)を含む面に沿っている。図示されているように、筒状体20の先端は、楔形断面23を有する。楔形断面23を構成する楔は、制限はないが、鋭角(即ち、楔の中心角が90度以下)であることが好ましい。
【0056】
実施形態1のロッド2aに代えてロッド2cを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。筒状体20の楔形断面23が設けられた先端を拭き取り綿3aに当接させて拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。拭き取り綿3aは、楔形断面23に引っかかり、楔形断面23に対して半径方向に沿って摺動することが困難である。
【0057】
上述したように、拭き取り綿3aを筒状体20で隙間916に押し込む際、拭き取り綿3aの、筒状体20の先端が当接した円形部分より内側の領域は、大きな引張り力を受ける。楔形断面23は、筒状体20の先端に対する拭き取り綿3aの移動を抑える。このため、拭き取り綿3aの上記領域は延び変形され、遂には
図5と同様に、オス部材911の先端が当接した部分を起点として拭き取り綿3aが破れる可能性が高くなる。拭き取り綿3aが破られることにより、筒状体20とオス部材911の外周面912との間の拭き取り綿3aが極端に薄くなるのを防止できる。薄い拭き取り綿3aは、一般に液状物を拭き取り除去する能力が低い。本実施形態3のロッド2cは、拭き取り綿3aが薄くなるのを防止して、オス部材911の外周面912を拭き取り除去する能力の低下を防止する。
【0058】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態3にも適用される。
【0059】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4にかかるロッド2dの斜視図である。実施形態1~3では、筒状体20の先端は、筒状体20の長手方向に垂直な面に沿っていた。これに対して、本実施形態4では、筒状体20の先端が、筒状体20の長手方向に対して斜めに切断されている。このため、筒状体20の先端に、注射針の先端と同様に、筒状体20の長手方向に対して傾斜した斜面24が形成されている。
【0060】
実施形態1のロッド2aに代えてロッド2dを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。筒状体20の斜面24が設けられた先端を拭き取り綿3aに当接させて拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。
【0061】
隙間916に対する拭き取り綿3aの押し込み深さは、オス部材911の周方向において一定にはならない。即ち、拭き取り綿3aのうち斜面24の先端24aが当接した部分は、底板914に当接するまで隙間916にもっとも深く押し込まれる。一方、拭き取り綿3aのうち斜面24の後端24bが当接した部分は、隙間916に、浅く押し込まれ、または、ほとんど押し込まれない。このため、拭き取り綿3aが隙間916に押し込まれる過程で受ける引張り力は相対的に小さい。これは、拭き取り綿3aに意図しない破れが発生するのを防止するのに有利である。実施形態2と同様に、本実施形態4のロッド2dは、拭き取り綿3aの破れを防止して、筒状体20がオス部材911の外周面912を傷付ける事態が起こる可能性を低減する。
【0062】
また、筒状体20で拭き取り綿3aを隙間916に押し込んだ状態で筒状体20(ロッド2d)をオスコネクタ90に対して回転させると、斜面24の先端24aは、拭き取り綿3aに引っかかり、拭き取り綿3aに回転力を伝達する。従って、拭き取り綿3aは、ロッド2dを回転させると、ロッド2dに連動して連れ回る。拭き取り綿3aを把持しなくても、ロッド2dを回転させるだけで拭き取り綿3aも一緒に回転するので、オスコネクタ90の清掃作業性が良好である。
【0063】
本実施形態4では、拭き取り綿3aのうち斜面24の先端24aが当接した部分のみが、底板914に当接する。しかしながら、この状態で拭き取り綿3aを回転させれば、底板914に付着した液状物を拭き取り除去することができる。
【0064】
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態4にも適用される。
【0065】
(実施形態5)
図9は、本発明の実施形態5にかかるロッド2eの斜視図である。図示されているように、筒状体20の先端に切り欠き25が設けられている。切り欠き25は、筒状体20の先端から筒状体20の長手方向に沿って延びている。
【0066】
実施形態1のロッド2aに代えてロッド2eを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。筒状体20の切り欠き25が設けられた先端を拭き取り綿3aに当接させて拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。
【0067】
筒状体20で拭き取り綿3aを隙間916に押し込んだ状態で筒状体20(ロッド2e)をオスコネクタ90に対して回転させると、切り欠き25のエッジ25aが、拭き取り綿3aに引っかかり、拭き取り綿3aに回転力を伝達する。従って、拭き取り綿3aは、ロッド2eを回転させると、ロッド2eに連動して連れ回る。拭き取り綿3aを把持しなくても、ロッド2eを回転させるだけで拭き取り綿3aも一緒に回転するので、オスコネクタ90の清掃作業性が良好である。
【0068】
筒状体20の長手方向に沿った切り欠き25の長さは任意である。切り欠き25が長くなると、筒状体20の切り欠き25が設けられた先端部分は、拡径又は縮径するように弾性変形することが容易になる。これは、オスコネクタ90の拭き取り清掃時に筒状体20が破損するのを防止するのに有利である。例えば筒状体20を隙間916に挿入した状態でロッド2eをオスコネクタ90の軸に対して傾かせるような横方向の力がロッド2eに加えられた場合、筒状体20の先端部分が拡径又は縮径するように弾性変形するので、ロッド2eはオスコネクタ90の軸に対して容易に傾くことができる。このため、このような予期しない横方向の力によって筒状体20が破損するのを防止することができる。
【0069】
また、筒状体20の先端部分が拡径又は縮径するように容易に弾性変形可能であることは、相対的に大きな外径を有するオス部材911を備えたオスコネクタ90や、相対的に小さな内径を有する雌ネジ915を備えたオスコネクタ90にも、筒状体20が破損することなく、筒状体20を挿入することを可能にする。このため、ロッド2eは、サイズが異なる複数種類のオスコネクタ90の拭き取り清掃に使用することができる。換言すれば、本実施形態5の筒状体20の内径及び外径が、実施形態1で説明した内径D0及び外径D1の各数値範囲を外れていても、筒状体20が破損することなく、実施形態1と同じオスコネクタ90を拭き取り清掃することが可能である。本実施形態5では、筒状体20の内径及び外径を、実施形態1ほどに厳密に管理する必要がない。但し、本実施形態5においても、自然状態(即ち、オスコネクタ90に挿入する前の状態)での筒状体20の内径及び外径が、実施形態1で説明した筒状体20の内径D0及び外径D1に関する数値範囲を満足することが好ましい。拡径又は縮径するように弾性変形させられてオスコネクタ90の隙間916に挿入された筒状体20は拭き取り綿3aを半径方向に圧縮し、これは拭き取り綿3aに意図しない破れを生じさせる可能性があるからである。
【0070】
筒状体20の先端部分が、容易に上述した拡径又は縮径するような弾性変形をするためには、筒状体20の長手方向に沿った切り欠き25の長さは、制限されないが、7mm以上、更には10mm以上、特に15mm以上であることが好ましい。切り欠き25の長さは、制限はないが、40mm以下、更には30mm以下であることが好ましい。切り欠き25が長すぎると、筒状体20の先端部分の強度が低下して、清掃作業性が低下する。但し、切り欠き25が、筒状体20の長手方向の全長にわたって延びていてもよい。
【0071】
切り欠き25の数や幅(筒状体20の周方向に沿った寸法)は、任意に設定できる。例えば、筒状体20の先端に、2つの広幅の切り欠き25を、筒状体20の軸に対して対称位置に設けてもよい。
【0072】
切り欠き25の形状も、任意である。半径方向に沿って見た切り欠き25の形状は、例えば、三角形、四角形、円弧などであってもよい。三角形の切り欠きを周方向に隙間なく配置することにより、筒状体20の先端にジグザグ形状を設けてもよい。
【0073】
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態5にも適用される。本実施形態5の筒状体20の先端が、実施形態2の略円弧状断面22又は実施形態3の楔形断面23を有していてもよい。
【0074】
(実施形態6)
図10は、本発明の実施形態6にかかるロッド2fの断面図である。ロッド2fは、中空の筒状体20と、中実のハンドル26とを備える。ハンドル26は、まっすぐに延びた細長い棒であり、筒状体20と同じ外径を有する。筒状体20が、ハンドル26の一端に、ハンドル26と同軸に設けられている。筒状体20の長さ(孔21の深さ)は、オス部材911の長さ(底板914からオス部材911の先端までの距離、
図1B参照)より長い。ロッド2fは、実施形態1で筒状体20の材料として例示した材料を用いて、射出成形法により全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0075】
実施形態1のロッド2aに代えてロッド2fを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。筒状体20の先端(ハンドル26とは反対側端)を拭き取り綿3aに当接させて拭き取り綿3aをオスコネクタ90の隙間916に押し込む。作業者は、ロッド2fのハンドル26を把持することができる。ハンドル26は、中実であるので、筒状体20に比べて高強度である。このため、拭き取り清掃作業時に加えられる力によって、ハンドル26が直径方向に押しつぶされたり、曲がったりすることがない。清掃作業を効率よく行うことができる。
【0076】
ハンドル26は、筒状体20と同じ外径を有していなくてもよい。例えば、ハンドル26を把持しやすいように、ハンドル26の全部または一部が、筒状体20より大きな外径を有していてもよい。
【0077】
筒状体20はハンドル26に対して着脱可能であってもよい。
【0078】
ハンドル26の両端に筒状体20が設けられていてもよい。この場合、両端の筒状体20は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
本実施形態6は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態6にも適用される。実施形態1~5のロッドが、本実施形態6のハンドルを備えていてもよい。
【0080】
(実施形態7)
図11Aは、本発明の実施形態7にかかる拭き取り綿3bの斜視図である。
図11Bは、拭き取り綿3bの断面図である。図示されているように、拭き取り綿3bの略中央部に、薄肉部31が設けられている。薄肉部31での拭き取り綿3bの厚さは、その周囲での厚さより薄い。本実施形態7では、薄肉部31の平面視形状は円形であるが、本発明はこれに限定されず、正方形、楕円形などの任意の形状であってもよい。薄肉部31の内接円の直径は、オスコネクタ90の外筒913の外径と同じかこれより大きいことが好ましい。薄肉部31の作成方法は、制限されないが、例えば略一定厚さの薄いシート状の綿に、所定形状の型を押し付けて圧縮して薄肉部31を形成することができる。
【0081】
実施形態1の拭き取り綿3aに代えて拭き取り綿3bを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。薄肉部31が形成された側の面をオスコネクタ90に向けて、拭き取り綿3bをオスコネクタ90上に載置する。拭き取り綿3bの薄肉部31の凹み内に外筒913が収容されるので、オスコネクタ90に対する拭き取り綿3bの位置決めが容易であり、また、オスコネクタ90に対する拭き取り綿3bの位置ずれを防止できる。このため、不慣れな作業者にも、筒状体20で拭き取り綿3bを隙間916に押し込む作業が容易である。
【0082】
薄肉部31は、拭き取り綿3bの片面のみであってもよいが、両面に設けられていてもよい。
【0083】
本実施形態7は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態7にも適用される。本実施形態7の拭き取り綿と、実施形態1~6から任意に選択したロッドとを組み合わせて、オスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。
【0084】
(実施形態8)
図12Aは、本発明の実施形態8にかかる拭き取り綿3cの斜視図である。
図12Bは、拭き取り綿3cの断面図である。図示されているように、拭き取り綿3cの略中央部に、拭き取り3cを厚さ方向に貫通するスリット32が設けられている。スリット32は、「-」(マイナス)字状の平面視形状を有する直線状の切り込みである。スリット32の長さは、制限されないが、オス部材911の先端での外径以上であり、外筒913の外径以下であることが好ましい。スリット32は、鋭利なナイフや直線状の刃等で容易に形成することができる。
【0085】
実施形態1の拭き取り綿3aに代えて拭き取り綿3cを用いて、実施形態1と同様にオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。スリット32の長手方向の中間地点をオスコネクタ90の中心軸に位置合わせして、拭き取り綿3cをオスコネクタ90上に載置する。上記実施形態と同様に、筒状体20で拭き取り綿3cを隙間916に押し込むと、拭き取り綿3cは引張り力を受ける。この引張り力でスリット32が開く。このため、拭き取り綿3cが所望しない位置で意図せずに破れるのを防止できる。本実施形態8の拭き取り綿3cは、拭き取り綿3cの所望しない位置での破れを防止して、実施形態2同様に、筒状体20がオス部材911の外周面912を傷付ける事態が起こる可能性を低減する。
【0086】
スリット32の形状は任意に変更しうる。例えば、スリット32が、十字形状(「+」)を有していてもよい。
【0087】
スリット32に代えて、拭き取り綿を厚さ方向に貫通する孔を拭き取り綿の略中央に設けてもよい。孔の径は、制限されないが、外筒913の外径以下であることが好ましい。
【0088】
本実施形態8は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態8にも適用される。実施形態7の拭き取り綿3bに、本実施形態8のスリットまたは孔を設けてもよい。本実施形態8の拭き取り綿と、実施形態1~6から任意に選択したロッドとを組み合わせて、オスコネクタを拭き取り清掃することができる。
【0089】
実施形態1~8は例示に過ぎない。本発明は、実施形態1~8に限定されず、適宜変更することができる。
【0090】
上記の実施形態では、筒状体20の外周面及び内周面はいずれも円形の断面形状を有していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、外周面及び内周面のうちの一方又は両方が、例えば正多角形(例えば正八角形等)の断面形状を有していてもよい。同様に、ハンドル26の外周面の断面形状も、円形に限定されず、例えば正多角形(例えば正八角形等)であってもよい。
【0091】
上記の実施形態では、筒状体20の内周面は、その内径が長手方向において一定である円筒面であったが、本発明はこれに限定されない。オス部材911が挿入される部分において、筒状体20の内周面が、開口に向かって内径が大きくなるようなメステーパ面(例えば、オス部材911の外周面912と同じテーパ角度のメステーパ面)であってもよい。
【0092】
上記の実施形態では、オスコネクタ90に拭き取り綿を載置し、次いで、筒状体20をオスコネクタ90に向かって押し込んだ。但し、拭き取り綿を隙間916に押し込む手順はこれに限定されない。例えば、筒状体20の先端を拭き取り綿で覆い、次いで、拭き取り綿及び筒状体20を一体的にオスコネクタ90に向かって押し込んでもよい。
【0093】
上記の実施形態で示したロッド2a~2fと拭き取り綿3a~3cとを任意に組み合わせて、オスコネクタを清掃するための清掃具キットを構成することができる。ロッド及び拭き取り綿は、それぞれ別々の商品として販売されてもよく、あるいは、ロッドと拭き取り綿とを含む清掃具キットとして販売されてもよい。本発明のロッドは、拭き取り綿3a~3c以外の任意のシート状の拭き取り綿をオスコネクタ90の隙間916に押し込むために使用することができる。本発明の拭き取り綿は、ロッド2a~2fの筒状体20以外の任意の中空の筒状体によってオスコネクタ90の隙間916に押し込まれれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の利用分野は、制限はないが、オス部材と、雌ネジが設けられた外筒とを備えたオスコネクタを清掃するために好ましく利用することができる。特に、経腸栄養法を行うために患者の体内に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられたオスコネクタの清掃具として好適である。
【符号の説明】
【0095】
1 清掃具キット
2a~2f ロッド
20 筒状体
21 筒状体の孔
D0 筒状体の内径
D1 筒状態の外径
22 略円弧状断面
23 楔形断面
24 斜面
25 切り欠き
26 ハンドル
3a~3c 拭き取り綿
31 薄肉部
32 スリット
90 オスコネクタ
911 オス部材
912 オス部材の外周面
913 外筒
915 雌ネジ
916 オス部材と外筒との間の隙間