(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】真空容器、その前駆体、および真空容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20240905BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F16L59/065
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2021526151
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023188
(87)【国際公開番号】W WO2020251011
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2019111000
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆欣
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】山岸 宏章
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-125600(JP,A)
【文献】特開2008-111493(JP,A)
【文献】特開2009-063033(JP,A)
【文献】特開2015-059642(JP,A)
【文献】特開2005-325224(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021359(WO,A1)
【文献】特開2016-84833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
当該容器の空間内に配置された、二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)とを含み、
前記二酸化炭素吸収剤(C)は、化学反応によって二酸化炭素を吸収する際に水を発生する物質であり、
前記
二酸化炭素吸収剤(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜
cによって、前記
水吸収剤(W)は水蒸気を透過する膜
wによって、前記空間においてそれぞれ隔離されており、
前記容器内の25℃で測定した圧力が3kPa以下である、真空容器。
【請求項2】
前記
二酸化炭素吸収剤(C)が、金属水酸化
物を含む、請求項
1に記載の真空容器。
【請求項3】
前記空間内に多孔体をさらに含み、当該多孔体の空隙内の前記圧力が3kPa以下である、請求項1
または2に記載の真空容器。
【請求項4】
前記
水吸収剤(W)が金属酸化物である、請求項1~
3のいずれかに記載の真空容器。
【請求項5】
少なくとも二酸化炭素と水が封入された密閉容器と、
当該容器の空間内に配置された、二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)とを含み、
前記二酸化炭素吸収剤(C)は、化学反応によって二酸化炭素を吸収する際に水を発生する物質であり、
前記
二酸化炭素吸収剤(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜
cによって、前記
水吸収剤(W)は水蒸気を透過する膜
wによって、前記空間においてそれぞれ隔離されており、
前記
二酸化炭素吸収剤(C)は前記容器内の二酸化炭素の量より多い二酸化炭素の量を吸収可能な量で存在し、
前記
水吸収剤(W)は前記容器内に存在しうる水の量より多い水の量を吸収可能な量で存在する、
請求項1~
4のいずれかに記載の真空容器の前駆体。
【請求項6】
前記
二酸化炭素吸収剤(C)が、当該
二酸化炭素吸収剤(C)の全質量に対して2~40質量%の水を含む、請求項
5に記載の前駆体。
【請求項7】
前記
二酸化炭素吸収剤(C)が、前記化学反応によって二酸化炭素を吸収する際に水を発生する物質であり、
前記
水吸収剤(W)が、前記化学反応で発生する水と当該水以外の前記空間内に存在する水との合計量よりも多い水の量を吸収可能な量で存在する、請求項
6に記載の前駆体。
【請求項8】
前記
二酸化炭素吸収剤(C)が、当該
二酸化炭素吸収剤(C)の全質量に対してX(質量%)の水を含有し、
前記膜cおよび膜wのうち少なくとも一方は、以下の関係を満たす水蒸気透過度T(38℃、24時間)を有する、
T≦350×X[g/m
2]
請求項
5~
7のいずれかに記載の前駆体。
【請求項9】
請求項
5~
8のいずれかに記載の前駆体を準備する準備工程、
前記前駆体内の二酸化炭素を前記
二酸化炭素吸収剤(C)で吸収する二酸化炭素吸収工程、ならびに、
前記前駆体内の水を前記
水吸収剤(W)で吸収する水吸収工程、
を備える、請求項1~
4のいずれかに記載の真空容器の製造方法。
【請求項10】
前記水吸収工程が、前記二酸化炭素吸収工程において発生した水を前記
水吸収剤(W)で吸収することを含む、請求項
9に記載の製造方法。
【請求項11】
以下の関係を満たす:
二酸化炭素を前記
二酸化炭素吸収剤(C)で吸収する速度>水を前記
水吸収剤(W)で吸収する速度
請求項
9または
10に記載の製造方法。
【請求項12】
二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)の組合せを含み、
前記二酸化炭素吸収剤(C)は、化学反応によって二酸化炭素を吸収する際に水を発生する物質であり、前記
二酸化炭素吸収剤(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜
cによって包装され、前記
水吸収剤(W)は水蒸気を透過する膜
wによって包装されている、減圧状態を形成するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空容器、その前駆体、および真空容器の製造方法に関する。また、本発明は、前記真空容器を製造するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
内部が真空である密閉容器は優れた断熱材等として利用できる。このような容器は、従来、真空ポンプを用いて製造されてきた。しかし、高真空状態とするまでにある程度の時間を要することや、連続処理が困難であるため工業的スケールでの実施が困難であるという問題があった。そこで、ガス吸収材を用いて容器内部を真空にするという技術が提案されている。例えば特許文献1にはガス吸収材を用いて内部を真空とした断熱材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法は、容器内で樹脂を発泡させ、その際に発生したガスを吸収して容器内部を真空にするという方法であり、工業的に優れた方法である。発明者らはより速やかに内部を真空にし、かつ、その状態を持続できる真空容器、すなわち内部の高真空状態を安定して保てる真空容器が提供できれば、より工業的に有益な材料となりうるとの着想を得た。かかる事情を鑑み、本発明は内部の高真空状態を安定して保てる真空容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、二酸化炭素と水蒸気を透過する膜で空間から隔離された二酸化炭素吸収剤と、水蒸気を透過する膜で空間から隔離された水吸収剤とを備える容器が前記課題を解決することを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]
密閉容器と、
当該容器の空間内に配置された、二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)とを含み、
前記(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜によって、前記(W)は水蒸気を透過する膜によって、前記空間においてそれぞれ隔離されており、
前記容器内の25℃で測定した圧力が3kPa以下である、真空容器。
[2]
前記(C)が、化学反応によって二酸化炭素を吸収する物質である、[1]に記載の真空容器。
[3]
前記(C)が、金属水酸化物またはアミン系化合物を含む、[1]または[2]に記載の真空容器。
[4]
前記空間内に多孔体をさらに含み、当該多孔体の空隙内の前記圧力が3kPa以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の真空容器。
[5]
前記(W)が金属酸化物である、[1]~[4]のいずれかに記載の真空容器。
[6]
少なくとも二酸化炭素と水が封入された密閉容器と、
当該容器の空間内に配置された、二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)とを含み、
前記(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜によって、前記(W)は水蒸気を透過する膜によって、前記空間においてそれぞれ隔離されており、
前記(C)は前記容器内の二酸化炭素の量より多い二酸化炭素の量を吸収可能な量で存在し、
前記(W)は前記容器内に存在しうる水の量より多い水の量を吸収可能な量で存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の真空容器の前駆体。
[7]
前記(C)が、化学反応によって二酸化炭素を吸収する物質である、[6]に記載の前駆体。
[8]
前記(C)が、当該(C)の全質量に対して2~40質量%の水を含む、[6]または[7]に記載の前駆体。
[9]
前記(C)が、前記化学反応によって二酸化炭素を吸収する際に水を発生する物質であり、
前記(W)が、前記化学反応で発生する水と当該水以外の前記空間内に存在する水との合計量よりも多い水の量を吸収可能な量で存在する、[8]に記載の前駆体。
[10]
前記(C)が、当該(C)の全質量に対してX(質量%)の水を含有し、
前記膜cおよび膜wのうち少なくとも一方は、以下の関係を満たす水蒸気透過度T(38℃、24時間)を有する、
T≦350×X[g/m2]
[6]~[9]のいずれかに記載の前駆体。
[11]
[6]~[10]のいずれかに記載の前駆体を準備する準備工程、
前記前駆体内の二酸化炭素を前記(C)で吸収する二酸化炭素吸収工程、ならびに、
前記前駆体内の水を前記(W)で吸収する水吸収工程、
を備える、[1]~[5]のいずれかに記載の真空容器の製造方法。
[12]
前記水吸収工程が、前記二酸化炭素吸収工程において発生した水を前記(W)で吸収することを含む、[11]に記載の製造方法。
[13]
以下の関係を満たす:
二酸化炭素を前記(C)で吸収する速度>水を前記(W)で吸収する速度
[11]または[12]に記載の製造方法。
[14]
二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)の組合せを含み、前記(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜によって包装され、前記(W)は水蒸気を透過する膜によって包装されている、減圧状態を形成するためのキット。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、内部の高真空状態を安定して保てる真空容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.真空容器の前駆体
本発明に係る真空容器の前駆体は、少なくとも二酸化炭素と水が封入された密閉容器と、当該容器の空間内に配置された、二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)とを含み、二酸化炭素吸収剤(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜によって、水吸収剤(W)は水蒸気を透過する膜によって、前記空間においてそれぞれ隔離されており、二酸化炭素吸収剤(C)は前記容器内の二酸化炭素の量より多い二酸化炭素の量を吸収可能な量で存在し、水吸収剤(W)は前記容器内に存在しうる水の量より多い水の量を吸収可能な量で存在している。
【0009】
図1は本発明の真空容器の前駆体の一態様を示す。図中、10’は前駆体、2は容器、4’は圧力が、例えば85kPa以上である空間(以下「空間4’」ともいう)、Cは二酸化炭素吸収剤、cは二酸化炭素と水蒸気を透過する膜、Wは水吸収剤、wは水蒸気を透過する膜である。
【0010】
本発明において真空容器は、容器内の25℃で測定した圧力が3kPa以下である容器をいう。圧力は環境温度で変動しうるので、特に断らない限り、本発明において圧力は、温度25℃で測定した圧力した値をいう。例えば真空容器が100℃の環境に置かれている際の内部圧力がX100である場合、X100を25℃での圧力に換算した値X25が特許請求の範囲に記載された「容器内の圧力」となる。当該圧力は、好ましくは2kPa以下、より好ましくは1kPa以下、さらに好ましくは0.1kPa以下、ことさら好ましくは0.01kPa以下である。
【0011】
本発明に係る真空容器の前駆体における容器内の空間の圧力(空間4’の圧力)は、真空容器となる過程で低下することから、特に限定されないが、例えば85kPa以上であってよく、大気圧(101.3kPa)であってよい。すなわち、前駆体10’における容器内の空間の圧力範囲としては、85kPa~125kPaであってよい。圧力が85kPa以上である空間4’が減圧されて3kPa以下の空間4(以下「真空空間」ともいう)となると、本発明の真空容器10となる。
【0012】
[容器および密閉容器]
本発明において、密閉容器および真空容器となる容器は、限定されないが、金属、プラスチック、セラミック等の公知の材料で構成できる。当該材料は、真空容器とした際に真空度を保てる程度の機械的強度を有することが好ましい。容器の容量は、ニーズに応じて適宜決められるため限定されないが0.001~200000mlであることが好ましい。また、容器の形状もニーズに応じて適宜決められるため限定されないが、板状、ブロック状等が挙げられる。
【0013】
本発明の前駆体10’において、容器を密閉容器としたとき、当該密閉容器内には少なくとも二酸化炭素と水が封入される。ここで、密閉容器内に二酸化炭素と水が封入されているとは、特に限定されないが、当該密閉容器の空間4’に二酸化炭素と水が存在する態様と、空間4’に二酸化炭素が存在しかつ後述する吸収剤Cに水が含有されている態様をも含む。
【0014】
[真空でない空間]
当該空間4’の圧力は、例えば85kPa以上であり、好ましくは大気圧である。当該空間には少なくとも二酸化炭素が封入されている。また、後述するように空間4’には水がさらに封入されていてもよい。本発明において水とは液体の水または水蒸気をいう。空間4’は二酸化炭素と水以外の他の気体を含んでいてもよいが、より真空度を高めた真空容器を得るという観点からは、二酸化炭素と水の合計量は、好ましくは90容積%以上であり、より好ましくは95容積%以上であり、さらに好ましくは98容積%以上であり、ことさら好ましくは99容積%以上であり、100容積%であってもよい。
【0015】
[二酸化炭素吸収剤(C)]
二酸化炭素吸収剤(C)(以下単に「吸収剤C」ともいう)は限定されず公知のものを用いることができるが、本発明においては化学反応によって二酸化炭素を吸収する物質が好ましい。当該化学反応は水の生成を伴ってもよい。本発明においては水吸収剤(W)(以下単に「吸収剤W」ともいう)を併用するので、発生した水を吸収できるからである。このような吸収剤Cとしては、金属水酸化物が挙げられる。金属水酸化物としては、周期表第1族または第2族の元素の水酸化物が好ましく、取扱容易性等の観点からMgまたはCaの水酸化物が好ましい。以下に、吸収剤Cとして2価の金属(M)の水酸化物(M(OH)2)を用いた場合の二酸化炭素吸収反応を示す。
【0016】
M(OH)2+CO2→MCO3+H2O (1)
【0017】
化学反応によって二酸化炭素を吸収する吸収剤Cとして、アミン系化合物を用いることもできる。アミン系化合物とはアミノ基を有する化合物であり、アミノ基は第1級~第3級のいずれであってもよい。中でも入手容易性等の観点から脂肪族アミンが好ましく、炭素数が1~10であるアルキル基を有する脂肪族アミンがより好ましい。アミン系化合物と二酸化炭素との反応は例えば以下で表される。
【0018】
RNH2+H2O+CO2→RNH3
++HCO3
- (2)
2RNH2+CO2→RNH3
++RNHCOO- (3)
R2R’N+H2O+CO2→R2R’NH++HCO3
- (4)
式(2)~(4)において、RおよびR’は、それぞれ炭化水素基であり、好ましくは炭素数が1~10のアルキル基である。
【0019】
吸収剤Cは水を含むことが好ましい。水は、溶媒または反応基質として二酸化炭素吸収反応を促進させるからである。例えば、上記した反応式(1)や(3)では、当該水が溶媒のように機能すると考えられる。したがって、水は空間4’に存在していてもよいが、反応効率を考慮すると吸収剤Cが水を含有することが好ましい。この場合、水の量は上記した反応を促進する量であれば限定されないが、好ましくは吸収剤Cの全質量に対して0.1~40質量%である。吸収剤Cに水を含有させる方法は限定されず、吸収剤Cに水を噴霧する等の方法を採用できる。したがって、一態様において吸収剤Cは、金属水酸化物と水とを含み、またはアミン系化合物と水とを含む。
【0020】
また、上記した反応式(2)や(4)に示すように、水は二酸化炭素吸収反応の反応基質として関与すると考えられるので、この点からも吸収剤Cは水を含むことが好ましい。すなわち、水は空間4’に存在していてもよいが、反応効率の観点から、吸収剤Cが水を含有することが好ましい。この場合においても、水の量は上記した反応を促進する量であれば限定されず、例えば、吸収剤Cの全質量に対して、その下限は好ましくは2質量%以上であり、その上限は好ましくは40質量%以下である。また、二酸化炭素の吸収速度をより向上させる点から、前記下限は、好ましくは2質量%以上または4質量%以上であり、前記上限は、好ましくは30質量%以下、25質量%以下、または20質量%以下である。本発明において数値範囲は上限値および下限値の任意の組合せを含む。吸収剤Cに水を含有させる方法は限定されず、吸収剤Cに水を噴霧する等の方法を採用できる。
【0021】
真空度を高めた真空容器とする観点から、吸収剤Cは、空間4’に存在する二酸化炭素の量より多い二酸化炭素の量を吸収可能な量で存在する。具体的には、吸収剤Cは、空間4’に存在する二酸化炭素のモル量に対して、好ましくは1.2倍当量程度以上、2倍当量程度以上、または3倍当量程度以上の二酸化炭素を吸収可能な量を用いることができる。また、吸収剤Cの量の上限は、経済的な観点から、前記二酸化炭素のモル量に対して、好ましくは5倍当量程度以下とできる。吸収剤Cの「二酸化炭素を吸収可能な量」は、吸収剤Cが二酸化炭素を吸収できる理論値または実測値に基づいて決定することができる。例えば、吸収剤Cが化学反応によって二酸化炭素を吸収する場合は当該化学式に基づいて決定することができる。また、吸収剤Cが物理吸着によって二酸化炭素を吸収する場合は、当該Cの二酸化炭素の飽和吸着量の実測値や系内が平衡に達したときの真空度における吸着量の実測値に基づいて決定することができる。
【0022】
[膜c]
吸収剤Cは二酸化炭素と水蒸気を透過する膜cによって空間4’から隔離される。本発明において、吸収剤が空間から隔離されるとは、吸収剤が空間4’に直接露出されていない状態をいう。空間4’に存在する二酸化炭素は膜cを通して吸収剤Cに到達し吸収される。当該吸収によって水が発生した場合、水は膜cを通して空間4’に放出される。同様に、吸収剤Cが二酸化炭素吸収反応を促進するために水を含む場合、当該水も膜cを通して空間4’に放出されうる。これらの水は、後述する吸収剤Wで吸収される。
【0023】
膜cは、二酸化炭素と水蒸気を透過する材料で構成されていればよく、その材料は限定されないが、通気性包材が好ましい。通気性包材として公知の包装材料、例えば有孔プラスチックフィルム、不織布、マイクロポーラスフィルム、紙等の単体またはこれを基材とする複合の通気性包装材料が使用できる。また、適切な通気性を得るために、例えば、前記基材の通気性包装材料にポリオレフィン等の有孔プラスチックフィルムをラミネートして、ラミネートした有孔フィルムの開口率を調節することができる。膜cの二酸化炭素透過性は限定されないが、透過性が高いと真空に達する時間を短くできるので、25℃、50%RH雰囲気下における空気透過量がガーレー式透気度測定において4~250000秒であることが好ましく、16~25000秒であることがより好ましく、60~8500秒であることがさらに好ましい。ガーレー式透気度とは、包材に一定量の空気が透過する時間として定義され、時間が短い方ほど透過性が高いことを示す。膜cの水蒸気透過性も限定されないが、38℃における24時間の水蒸気透過量(以下「水蒸気透過度」とも称する)が10~2000g/m2程度のものを使用することができる。当該水蒸気透過度は好ましくは10~1500g/m2、より好ましくは50~1000g/m2である。二酸化炭素透過性および水蒸気透過性は公知の方法で測定される。膜cの厚みも限定されず、通常の厚みとしてよい。膜cと吸収剤Cは密着していてもよいが、両者の間にスペースが存在してもよい。
【0024】
[水吸収剤(W)]
水吸収剤(W)(吸収剤W)は限定されず公知のものを用いることができるが、本発明においては化学反応によって水を吸収する物質が好ましい。このような吸収剤Wとしては、金属酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、周期表第2族元素の酸化物が好ましく、取扱容易性等の観点からMgまたはCaの酸化物が好ましい。以下に、2価の金属(M)の酸化物(MO)を用いた場合の水吸収反応を示す。
【0025】
MO+H2O→M(OH)2 (5)
【0026】
真空度を高めた真空容器とする観点から、吸収剤Wの量は、空間4’に存在しうる水の量より多い水の量を吸収可能な量で存在する。空間4’に存在しうる水の量とは、吸収剤Cと二酸化炭素との反応で生じうる最大量の水の量と、これ以外の水の合計である。反応で生じうる最大量の水の量とは当該反応で理論上生じる水の量である。これ以外の水としては、前駆体調製時に封入された水や吸収剤Cに含まれる水が挙げられる。吸収剤Wの量は、空間4’に存在しうる水のモル量に対して、例えば1.2倍当量程度以上の水を吸収可能な量とできるが、到達圧力や吸収速度の観点からは、好ましくは2倍当量程度以上、または3倍当量程度以上である。また、吸収剤Wの量は経済的な観点から、前記水のモル量に対して、5倍当量以下とすることができる。吸収剤Wの「水を吸収可能な量」は吸収剤Wが水を吸収できる理論値または実測値に基づいて決定することができる。例えば、吸収剤Wが化学反応によって水を吸収する場合は当該化学式に基づいて決定することができる。また、吸収剤Wが物理吸着によって水を吸収する場合は、当該Wの水の飽和吸着量の実測値や系内が平衡に達したときの真空度における吸着量の実測値に基づいて決定することができる。
【0027】
[膜w]
吸収剤Wは水蒸気を透過する膜wによって空間4’から隔離される。空間4’に存在する水は膜wを通して吸収剤Wに到達し吸収される。
【0028】
膜wは、水蒸気を透過する材料で構成されていればよく、その材料は限定されないが、透湿性包材が好ましい。透湿性包材としては公知の包装材料、例えばナイロン、エチレン-ビニルアルコール共重合、テフロン(登録商標)やエラストマー系の無孔材料や、不織布、マイクロポーラスフィルム、紙等の微小孔の開いた材料の単体またはこれを基材とする複合包装材料を使用できる。また、公知の通気性包材にポリオレフィン等の有孔プラスチックフィルムをラミネートして、ラミネートした有孔フィルムの開口率を調節した包装材料も使用できる。膜wの水蒸気透過性は限定されないが、38℃における24時間の水蒸気透過量(水蒸気透過度)が、好ましくは10~2000g/m3程度、より好ましくは10~1500g/m3程度、さらに好ましくは50~2000g/m3程度である。膜の厚みも限定されず、通常の厚みとしてよい。膜wと吸収剤Wは密着していてもよいが、両者の間にはスペースが存在してもよい。
【0029】
真空度のより高い真空容器を得る観点から、各吸収速度が以下の関係を満たすことが好ましい。この関係が逆になると、二酸化炭素の吸収効率が低下する虞があるからである。
吸収剤Cへの二酸化炭素の吸収速度>吸収剤Wへの水の吸収速度
【0030】
[多孔体]
空間4’には多孔体を配置することができる。多孔体とは多数の空隙を有する材料である。多孔体を配置することにより、空間4を細分化でき、真空化時に容器2の形状を保持する強度を達成できる。前駆体において、当該多孔体の空隙内には少なくとも二酸化炭素が封入されており、さらに水が封入されていてもよい。二酸化炭素および水が吸収されることで本発明の真空容器が形成される。したがって空隙内の二酸化炭素と水は、吸収剤CおよびWまで到達できるように移動できる必要がある。このような多孔体としては、連続気泡を内部に含む発泡体、または空隙を画定する壁が二酸化炭素と水を透過する材料で構成される独立気泡を内部に含む発泡体が挙げられる。発泡体としてはポリマー発泡体、セラミック発泡体、金属発泡体等が挙げられるが、取扱容易性の観点からポリマー発泡体が好ましい。また、その他の多孔体として、珪藻土、ゼオライト、シリカ、活性炭、エアロゲル等の多孔質充填材料、加えてプラスチック繊維を用いた不織布やガラス繊維を用いたグラスウール等も配置することもできる。
【0031】
空間4’に多孔体を配置する方法は限定されず、例えば、予め調製した多孔体を容器内に収容することで実施できる。あるいは、発泡時に二酸化炭素、あるいは二酸化炭素および水を発生する発泡性組成物を空間4’に仕込み、当該空間内で当該組成物を発泡させることで空間4’に多孔体を配置できる。発泡性組成物としては、ポリスチレンフォーム用やポリウレタンフォーム用またはポリイソシアネートフォーム用などの公知の発泡性組成物を用いることができる。
【0032】
前記膜cおよび膜wの水蒸気透過度は、所期の目的を達成するように設定される。しかし、双方の膜の水蒸気透過度が過度に高いと、二酸化炭素吸収反応が効率よく進行しない場合がある。例えば、吸収剤Cに含まれる水は前記反応を促進させるが、当該反応に関与する前に当該水が吸収剤Wに吸収されてしまう場合があるからである。そこで、一態様において、膜cおよび膜wの少なくとも一方は、以下の関係を満たす水蒸気透過度Tを有することが好ましい。
T≦350×X[g/m2]
Xは、吸収剤Cに含まれる水の量(質量%)である。例えばX=2(質量%)である場合、T≦700[g/m2]となるので、膜cおよび膜wの少なくとも一方は700[g/m2]以下の水蒸気透過度を有することが好ましい。
【0033】
2.真空容器
本発明に係る真空容器は、密閉容器と、当該容器の空間内に配置された、二酸化炭素吸収剤(C)と、水吸収剤(W)とを含み、二酸化炭素吸収剤(C)は二酸化炭素と水蒸気を透過する膜によって、水吸収剤(W)は水蒸気を透過する膜によって、前記空間においてそれぞれ隔離されており、前記容器内の圧力が3kPa以下である。
【0034】
上述した前駆体10’の空間4’中に存在する二酸化炭素および水が吸収剤CおよびWに吸収されて、空間4’が、圧力3kPa以下である空間4となることによって、前駆体10’は真空容器10となる。空間4の圧力は、好ましくは2kPa以下、より好ましくは1kPa以下、さらに好ましくは0.1kPa以下、ことさら好ましくは0.01kPa以下である。前駆体10’には空間4’内の二酸化炭素量に対して過剰量の吸収剤Cが存在しており、その一部は二酸化炭素吸収反応によって別の物質に変換されるので、真空容器10内には吸収剤Cと二酸化炭素吸収反応生成物が存在する。例えば、前駆体10’に吸収剤Cとして金属水酸化物であるCa(OH)2が存在していた場合、真空容器10内にはCa(OH)2と二酸化炭素吸収反応生成物であるCaCO3が存在する。吸収剤Cとしてアミン化合物が存在していた場合も同様に、アミン化合物とその炭酸塩が存在する。吸収剤Cまたは二酸化炭素吸収反応生成物は水を含有していてもよい。これらは膜cによって空間4から隔離された状態で存在する。
【0035】
同様に、前駆体10’には空間4’内に存在しうる水の量に対して過剰量の吸収剤Wが存在しており、その一部は水吸収反応によって別の物質に変換されるので、真空容器10内には吸収剤Wとその反応生成物が存在する。例えば、前駆体10’に吸収剤Wとして金属酸化物であるCaOが存在していた場合、真空容器10内にはCaOと、その反応生成物であるCa(OH)2も存在する。吸収剤Wまたはその反応生成物は水を含有していてもよい。これらは膜wによって空間4から隔離された状態で存在する。
【0036】
空間4には多孔体6を配置することができる。
図2にこの態様を示す。多孔体6の空隙(空間4)内の圧力は3kPa以下である。前述のとおり、多孔体6はポリマー発泡体等の発泡体であってよい。
図2は空間4の全部が多孔体6で占められている態様を示すが、空間4の一部が多孔体6で占められていてもよい。なお、多孔体6を配置する場合の空間4の圧力は、多孔体6が空間4の全部を占めるときは多孔体の全空隙内の圧力が同じになった状態での圧力をいう。また、空間4の圧力は、多孔体6が空間4の一部を占めるときは多孔体の全空隙内の圧力と多孔質体で占められていない部分の空間の圧力が同じになった状態での圧力をいう。
【0037】
空間4内の圧力の測定は公知の方法で実施でき、例えば圧力センサーを真空容器10内に挿入することによって測定できる。挿入部分からのリークによって正確な圧力が測定できない虞がある場合は、圧力センサーに注射針を溶接したものを用意し、真空容器外側にラバーを貼り付け、当該ラバー部から圧力センサー付きの針を真空容器内に挿入することによって内部の圧力を測定できる。
【0038】
また、内部圧力は特許文献1の段落0042に手法2として記載された変位センサーを用いた方法によっても測定できる。当該方法は、1)内部を真空にできる透明なチャンバーに真空容器10を入れ、2)真空容器10の表面の位置をモニターできるように変位センサーをチャンバー外に配置し、3)チャンバー内を減圧し、4)チャンバー内の圧力が真空内の圧力より低くなると真空容器10の表面位置が変動するので、この時点での圧力を以て内部圧力とする方法である。いずれの方法とするかは、真空容器10を構成する材質等を考慮して決定される。
【0039】
3.真空容器の製造方法
本発明の真空容器10は、以下の工程を備える方法で製造されることが好ましい。
上述した前駆体10’を準備する準備工程、
前駆体10’内の二酸化炭素を前記吸収剤Cで吸収する二酸化炭素吸収工程、
前駆体10’内の水を、前記吸収剤Wで吸収する水吸収工程。
【0040】
準備工程は、前記膜cで前記吸収剤Cを包装し、前記膜wで前記吸収剤Wを包装し、これらを前記容器内に収容して当該容器を密閉することで実施できる。ただし、当該準備工程においては、密閉された当該容器内は少なくとも二酸化炭素と水が封入された状態とする。準備工程においては、前駆体10’は、例えば、前記包装された吸収剤Cと前記包装された吸収剤Wとを容器内に収容し、当該容器を密閉する作業を二酸化炭素および水の存在する環境で実施することにより準備できる。また、前記包装された吸収剤Cと前記包装された吸収剤Wとを容器内に収容し、密閉された容器内の気体をポンプ等でいったん除去し、次いで二酸化炭素および水を空間4’内に導入することにより、前駆体10’を準備できる。
【0041】
二酸化炭素吸収工程および水吸収工程は、前記準備工程により得られた前駆体10’を所望の環境下に置くことで実施できる。例えば、前駆体10’を室温下または加熱下(好ましくは20~100℃)に置くことにより、二酸化炭素吸収工程および水吸収工程を実施できる。当該環境に前駆体10’を置く時間は限定されないが、0.2~130時間程度とすることができる。
【0042】
水吸収工程で吸収される前駆体10’内の水は、吸収剤Cと二酸化炭素との反応で生じる水、当該水以外の前記体10’に存在する水、またはその両方であってよい。
【0043】
4.キット
本発明は、減圧状態を形成するためのキットも提供する。当該キットは、二酸化炭素吸収剤(C)(吸収剤C)と、水吸収剤(W)(吸収剤W)の組合せを含み、吸収剤Cは二酸化炭素と水蒸気を透過する膜cによって包装され、吸収剤Wは水蒸気を透過する膜wによって包装されている。吸収剤および膜についてはすでに述べたとおりである。このキットを少なくとも二酸化炭素と水が封入され、かつ、密閉された環境に置くことにより、当該環境下を減圧状態、好ましくは真空状態にすることができる。真空状態の圧力としては、前記真空空間4における圧力と同様である。本発明のキットを用いることで、本発明の真空容器を製造できる。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
以下のように密封容器を製造し、38℃での圧力を測定して評価した。
二酸化炭素吸収剤(C)として水酸化カルシウム(和光純薬工業株式会社製、製品コード036-00625)1.8g、水吸収剤(W)として酸化カルシウム(株式会社カルファイン製、Fライム1300K)3.36gを準備した。
二酸化炭素吸収剤(C)である水酸化カルシウムに0.25gの水を加えたものを、寸法5×5cm(シール幅5mm・3方シール)の通気性包装袋内に充填し、ヒートシールにより包装して作製した。ヒートシーラーは富士インパルス社製FI-300-10を使用した。二酸化炭素吸収剤(C)の包装材料としては、耐水耐油紙の内側に有孔ポリエチレンをラミネートした多層材料(膜c)を用いた。通気性をコントロールするため、耐水耐油紙表面にアルミテープを貼りガス透過面積を調整した。
【0045】
水吸収剤(W)は、酸化カルシウムを寸法5×5cm(シール幅5mm・3方シール)の透湿性包装袋内に充填し、ヒートシールにより包装した。水吸収剤(W)の包装材料としては、表面に耐水紙の表面に無孔PETフィルム、内側に有孔ポリエチレンをラミネートした多層材料(膜w)を用いた。
【0046】
膜cは二酸化炭素と水蒸気を透過し、膜wは水蒸気を透過する材料であった。すなわち、二酸化炭素吸収速度>水吸収速度の関係が成り立つように、膜材料を選択した。これらの膜の水蒸気透過特性を表1に示す。表中、単位表面積当たりの38℃における24時間の水蒸気の透過量(g/m2)を「水蒸気透過度」と表記した。
【0047】
真空部品であるニップル配管(内径39mm、高さ100mm)、ブランクフランジ(内径41.2mm)、センターリングを準備した。ニップル配管の一方の開口部に、センターリングを挟んでブランクフランジを被せ、ニップル配管とブランクフランジをクランプで固定し、他方の端が開口された容器を作製した(容器体積120ml)。この容器の中に前述のとおり調製され包装された二酸化炭素吸収剤(C)および水吸収剤(W)を入れ、開口部にセンターリングとオネジアダプタを被せ、ニップル配管とオネジアダプタをクランプで固定した。オネジアダプタの上部には開閉のためのボールバルブを設けた。容器内圧力を測定するためにオネジアダプタとボールバルブの間に絶対圧力センサー(オプテックス・エフエー社:FHAV-050KP)を設置した。また系内圧力の経時変化を測定するため、圧力センサーをデータロガー(グラフテック社製のmidi LOGGER TYPE GL240)に接続し、モニタリングした。容器内部を二酸化炭素で置換し大気圧(101.3kPa)下でバルブを閉じて密封して密閉容器(真空容器の前駆体)を製造した。当該容器の概要を
図3に示す。ここまでの操作は25℃の雰囲気下で実施した。当該装置の測定可能な圧力の下限値は0.01kPaであり、表中の0.01kPaとの記載は、内部圧力が測定可能な圧力の下限値以下(0.01kPa以下)の真空状態に達していることを意味する。
【0048】
当該容器を速やかに38℃の雰囲気下に載置し、内部圧力が6.6kPa(水蒸気圧)に到達するまでの時間、および載置から24~72時間経過後の内部圧力を測定した。
【0049】
[実施例2、3]
膜(c)および膜(w)を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同じ方法で密封容器を製造し、評価した。
【0050】
[比較例1~3]
実施例1~3で使用した包装された二酸化炭素吸収剤(C)のみを使用し、包装された水吸収剤(W)を用いなかった以外は、実施例1~3と同じ方法で密封容器を製造し、評価した。
【0051】
[比較例4]
二酸化炭素吸収剤(C)として水酸化カルシウム1.8gに0.25gの水を加えたものと、水吸収剤(W)として酸化カルシウム3.36gを準備し、これらを寸法7×7cm(シール幅5mm・3方シール)の1つの通気性包装袋内に充填し、実施例1と同じ方法でヒートシールにより包装し、混合吸収剤を調製した。通気性をコントロールするため、耐水耐油紙表面にアルミテープを貼りガス透過面積を調整した。包装された二酸化炭素吸収剤(C)および水吸収剤(W)の代わりに、混合吸収剤を用いた以外は実施例1と同じ方法で密封容器を製造し、評価した。これらの結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
[実施例4]水分量の影響
水酸化カルシウムに加えた水分量を表2に示す値に変更した以外は、実施例2と同じ方法で密封容器を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
[実施例5]水吸収剤(W)量の影響
二酸化炭素吸収剤(C)の量と水吸収剤(W)の量を表3に示すように変更した以外は、実施例3と同じ方法で密封容器を製造し、評価した。水酸化カルシウムに対する水の添加量は12質量%とした。二酸化炭素吸収剤(C)の量は、容器内に存在する二酸化炭素のモル量のそれぞれ2倍当量および5倍当量に相当する量とした。また、水吸収剤(W)の量は、容器内に存在しうる水のモル量の1~5倍当量に相当する量とした。容器内に存在しうる水の量とは、二酸化炭素吸収材(C)に添加された水と、二酸化炭素吸収反応によって生じる水の合計量である。結果を表3に示す。
【0056】
【0057】
本発明により内部の高真空状態を安定して保てる真空容器を提供できることが明らかである。
【符号の説明】
【0058】
10 真空容器
2 容器
4 真空空間(真空空隙)
6 多孔体
C 二酸化炭素吸収剤
c 二酸化炭素と水蒸気を透過する膜
W 水吸収剤
w 水蒸気を透過する膜
10’ 前駆体
4’ 真空でない空間
P 圧力計
V バルブ