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特許7549789出湯口プレキャスト体及びこれを与えられた誘導炉
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  • 特許-出湯口プレキャスト体及びこれを与えられた誘導炉 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】出湯口プレキャスト体及びこれを与えられた誘導炉
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/14 20060101AFI20240905BHJP
   F27B 14/18 20060101ALI20240905BHJP
   F27B 14/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F27D3/14 A
F27B14/18
F27B14/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019152413
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021032464
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴茂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡一郎
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】実公昭43-015928(JP,Y1)
【文献】実開昭51-122123(JP,U)
【文献】国際公開第2013/074963(WO,A2)
【文献】特開2010-139198(JP,A)
【文献】実開昭58-087099(JP,U)
【文献】特開2002-228365(JP,A)
【文献】実開昭59-181853(JP,U)
【文献】実開昭59-032291(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/04
F27D 3/14
F27B 14/00-14/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導炉の炉本体上部の開口周縁に取り付けられて出湯口を与える無機焼成体からなる出湯口プレキャスト体であって、
前記炉本体の略円筒形の内壁面の一部を与える前面部を前方に有する鉛直壁部と、
前記鉛直壁部の後方に突出し上部に樋状通路を有する突出樋部と、
前記前面部と前記樋状通路の内面とを連続的に接続する立ち上がり部と、を含み、
前記鉛直壁部は前記立ち上がり部を挟んだ左右に前記前面部を張り出させるように張り出し部を設けられ前記左右の両側端に前記前面部を後方に下げた段差部を有し、前記内壁面を与える前記炉本体の耐火レンガのうちの前記開口周縁にあって前記両側端のそれぞれに並べられた固定用耐火レンガの側部から前記側部に設けられた取付用段差部に前記段差部を突き合わせて前記固定用耐火レンガで前方から後方へ向けて押さえるように取り付けられ得ることを特徴とする誘導炉用プレキャスト体。
【請求項2】
前記樋状通路を延長する延長樋部を前記突出樋部の突出先端に接続されていることを特徴とする請求項1記載の誘導炉用プレキャスト体。
【請求項3】
無機焼成体からなる出湯口プレキャスト体を炉本体上部の開口周縁に取り付けられて出湯口を与えられた誘導炉であって、
前記炉本体の略円筒形の内壁面の一部を与える前面部を前方に有する鉛直壁部と、前記鉛直壁部の後方に突出し上部に樋状通路を有する突出樋部と、前記前面部と前記樋状通路の内面とを連続的に接続する立ち上がり部と、を含む出湯口プレキャスト体を、前記炉本体に固定された受け台の上に与えて固定されており、
前記鉛直壁部は前記立ち上がり部を挟んだ左右に前記前面部を張り出させるように張り出し部を設けられ前記左右の両側端に前記前面部を後方に下げた段差部を有し、前記内壁面を与える前記炉本体の耐火レンガのうちの前記開口周縁にあって前記両側端のそれぞれに並べられた固定用耐火レンガの側部から前記側部に設けられた取付用段差部に前記段差部を突き合わせて前記固定用耐火レンガで前記出湯口プレキャスト体を前方から後方へ向けて押さえていることを特徴とする出湯口プレキャスト体を与えられた誘導炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導炉の炉本体上部の開口周縁に取り付けられて溶解された合金溶湯を外部に取り出すための出湯口を構成する出湯口プレキャスト体及びこれを与えられた誘導炉に関する。
【背景技術】
【0002】
高温の合金溶湯を内部に保持する溶解炉の内壁には、酸化物からなる耐火レンガの如き耐火物が敷き詰められている。そして、炉内部で溶融された合金溶湯は、溶解炉を傾動させて、炉の周縁部に「くちばし」のように突出して与えられた樋状の出湯口から外部に注ぎ出される。ここで、出湯口は、出湯の毎に入熱と冷却とを繰り返し与えられるため、熱衝撃によって壊れやすく、炉本体の寿命と比較して短命となるため、定期的に交換できることが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1では、炉本体と重ね合わせた炉蓋に挿通した電極を溶湯の上面に近接させてこの間にアークを生じさせて炉内部の合金を溶解させるアーク溶解炉において、炉本体の出湯口に樋ユニットを適用してこれを定期的に交換できるようにした出湯口構造を開示している。ここでは、鋼板製の樋枠の内側に耐火レンガをセットし間隙にキャスタブル耐火材を流し込み乾燥させた樋ユニットについて、断面略U字状の樋受けブラケットの上に着脱自在に固定できるようにしている。また、炉本体との接続部にはキャスタブル耐火材が与えられて、炉の内部から連続して傾斜するようにした出湯口を与えるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、特許文献1と同様に、炉の内部から連続して傾斜する出湯口を有する比較的平べったい炉本体からなるアーク溶解炉において、出湯口を補強金物の内部に形成しておき、これを炉本体に片持ち状態で交換可能に取り付けた出湯口構造を開示している。ここでは、オーバーチャージによる浴面の上昇によって出湯口の近傍まで湯面が上昇し得るため、補強金物の内部に、定形のマグネシア・カーボン耐火レンガからなる樋状部分と、その先端側の耐食性の高い低セメントキャスタブルからなるプレキャスト体と、更に先端側の湯流れの良い低セメントキャスタブルからなるブロック体と、を一体に与えた出湯口の構造について述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭59-32291号公報
【文献】実開平3-37387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘導炉では、誘導コイルを与えられた円筒状の炉本体をその軸線を鉛直にして縦型に配置して合金を溶解するが、このとき溶湯自体が熱源となるため、炉本体上部の開口部付近の温度はそれほど高くはならない。特に、真空誘導炉では、雰囲気を介在した熱伝導もほとんど生じない。そのため、低温の開口周縁に取り付けられた出湯口は、溶湯の取り出しにあたって大きな熱衝撃を受けることになる。また、上記した比較的平べったい炉本体からなるアーク溶解炉と比較して、炉本体の壁面に対する出湯口の取り付け角度が大きくなるため、出湯時の出湯口への荷重が大きくなる。
【0007】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、誘導炉での使用にも耐え得る耐久性に優れた出湯口を構成する出湯口プレキャスト体及びこれを与えられた誘導炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、誘導炉の炉本体上部の開口周縁に取り付けられて出湯口を与える無機焼成体からなる出湯口プレキャスト体であって、前記炉本体の内壁面の一部を与える前面部を前方に有する鉛直壁部と、前記鉛直壁部の後方に突出し上部に樋状通路を有する突出樋部と、前記前面部と前記樋状通路の内面とを連続的に接続する立ち上がり部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、溶湯の取り出しにあたっての大きな熱衝撃を広い面積で受け止めることができて、且つ、炉本体の内壁面から出湯口の樋状通路への接続部での荷重を減じることが出来て、誘導炉用の耐久性に優れた出湯口を与え得るのである。
【0010】
上記した発明において、前記鉛直壁部はその両側端に段差部を有し前記内壁面を与える前記炉本体の耐火レンガの側部から前記段差部を突き合わせて前記耐火レンガの上に延びるように取り付けられ得ることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、溶湯の取り出しにあたっての大きな熱衝撃を確実に受け止めることができて、且つ、地金差しによる割れを抑制できて、誘導炉用の耐久性に優れた出湯口を与え得るのである。
【0011】
上記した発明において、前記樋状通路を延長する延長樋部を前記突出樋部の突出先端に接続されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、耐久性に優れるとともに、施工性を高めるのである。
【0012】
また、本発明は、無機焼成体からなる出湯口プレキャスト体を炉本体上部の開口周縁に取り付けられて出湯口を与えられた誘導炉であって、前記炉本体の内壁面の一部を与える前面部を前方に有する鉛直壁部と、前記鉛直壁部の後方に突出し上部に樋状通路を有する突出樋部と、前記前面部と前記樋状通路の内面とを連続的に接続する立ち上がり部と、を含む出湯口プレキャスト体を、前記炉本体に固定された受け台の上に与えて固定されていることを特徴とする。
【0013】
かかる発明によれば、出湯口において、溶湯の取り出しにあたっての大きな熱衝撃を広い面積で受け止めることができて、且つ、炉本体の内壁面から出湯口の樋状通路への接続部での荷重を減じることが出来て、耐久性に優れるのである。
【0014】
上記した発明において、前記鉛直壁部はその両側端に段差部を有し前記内壁面を与える前記炉本体の耐火レンガの側部から前記段差部を突き合わせて前記耐火レンガの上に延びていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、出湯口において、溶湯の取り出しにあたっての大きな熱衝撃を確実に受け止めることができて、且つ、地金差しによる割れを抑制できて耐久性に優れるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による1実施例における出湯口プレキャスト体を取り付けた誘導炉の要部の斜視図である。
図2】出湯口プレキャスト体の側断面図である。
図3】出湯口プレキャスト体の要部を示す誘導炉の炉本体の分解斜視図である。
図4】炉本体の傾きと溶湯の流れを示す断面図である。
図5】他の実施例における出湯口プレキャスト体を取り付けた誘導炉の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による1つの実施例としての出湯口プレキャスト体について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、誘導炉の炉本体50は複数の耐火レンガ52を組み合わせて形成された略円筒形の内壁面51を備える。炉本体50の上部の開口周縁の一部には、内壁面51の一部を構成する前面部2aを前方に有する鉛直壁部2を含む出湯口プレキャスト体1が取り付けられている。炉本体50は、耐火レンガ52を炉本体に固定することで形成された受け台54を備え、耐火レンガ52の上に鉛直壁部2を延ばすように受け台54の上に出湯口プレキャスト体1を載置させている。出湯口プレキャスト体1は、その左右に並ぶ固定用耐火レンガ53と目地に施行された不定形耐火物によって固定されている。固定用耐火レンガ53についての詳細は後述する。出湯口プレキャスト体1は、無機焼成体からなる。かかる無機焼成体は、耐火レンガ52及び固定用耐火レンガ53と熱膨張率の近いものである。
【0018】
図2を併せて参照すると、出湯口プレキャスト体1は、鉛直壁部2の後方に突出した突出樋部3を備える。突出樋部3は、その後方端部である突出先端3aのさらに後方に接続される延長樋部10に連続するよう上部に樋状通路5を備える。また、樋状通路5は、その内面を前方の立ち上がり部4に連続的に接続され、さらに立ち上がり部4の内面も前面部2aに連続的に接続される。
【0019】
出湯口プレキャスト体1及び延長樋部10は、ともに、鉄皮11によって底面及び側面を包囲されて、間に不定形耐火物による耐火材部12を挟むよう配置されて固定される。延長樋部10と出湯口プレキャスト体1との接続部分13は不定形耐火物で固定される。なお、鉄皮11は、鉛直壁部2の下方部分の後方側の面も覆うよう下方に延びている。このようにして出湯口19が形成されることで、施工性を高め得る。
【0020】
さらに、図3に示すように、出湯口プレキャスト体1は鉛直壁部2の左右に張り出して下端から中央やや上側まで延びる張り出し6を両側に含み、張り出し6の外端の後方部分を左右に突出させた段差部6aを備える。他方、鉛直壁部2の左右に並べられる固定用耐火レンガ53は、内側の端部の前方側を出湯口プレキャスト体1に向けて突出させる段差53aを備える。そして、段差部6aと段差53aとを組み合わせるように突き合わせることで、出湯口プレキャスト体1を前方から後方へ向けて固定用耐火レンガ53で押さえることができる。このようにして出湯口プレキャスト体1は炉本体50に固定される。
【0021】
ところで、図4(a)に示すように、円筒状の炉本体50では、軸線Aを鉛直にして縦型に配置して合金を溶解する。この場合、出湯口19に対する熱源は溶湯Mとなるが、溶解時には溶湯Mとの距離が離れているため、出湯口19の温度はそれほど高くならない。特に、真空誘導炉においては雰囲気を介しての熱伝導もほとんど生じず、出湯口19の温度がさらに低い。
【0022】
ここで、図4(b)に示すように、溶湯Mを取り出すべく炉本体50を傾動させると高温の溶湯Mが出湯口19に接するため、出湯口19の熱衝撃は非常に大きいものとなる。
【0023】
これに対して、出湯口プレキャスト体1によれば、前面部2aから立ち上がり部4を介して樋状通路5までの広い面積を一体で形成されており、少なくともこの範囲において均質であり熱膨張率の差を生じづらく、全体で熱衝撃を吸収し得る。つまり、熱衝撃に強く、耐久性に優れる。そのため、出湯口プレキャスト体1は、出湯前に出湯口19の温度の高くなりづらい真空誘導炉に用いられることに特に適している。
【0024】
また、溶湯Mを取り出すにあたって、軸線Aの傾きが小さい場合、軸線を横切るような溶湯Mの流れ(矢印参照)は出湯口19の周囲の内壁面51(図1参照)に衝突して流れを乱し、地金差しを生じやすくなる。
【0025】
さらに、図4(c)に示すように、軸線Aの傾きが大きい場合、内壁面51に沿った溶湯Mの流れ(矢印参照)は内壁面51に機械的な衝撃を与えづらくなるが、縦型炉では出湯口19の内壁面51に対する取付け角度が大きくなる。そのため、出湯口19へ導かれた溶湯Mは大きな取付角度に沿って急激に流れる方向を変えるために乱流となり、出湯口19内で地金差しを生じやすくなる。
【0026】
これらに対して、出湯口プレキャスト体1によれば、前面部2aから立ち上がり部4を介して樋状通路5までの広い面積を一体で形成されており、少なくともこの範囲において継ぎ目がなく、地金差しの発生を抑制できる。
【0027】
また、段差部6a(図3参照)を固定用耐火レンガ53によって固定されるため、出湯口プレキャスト体1は比較的強固に炉本体50に固定される。地金差しを段差で抑制しつつ、強固な固定によって地金差しの発生による割れを抑制できて、耐久性に優れる。
【0028】
本発明による他の1つの実施例としての出湯口プレキャスト体について、図5を用いて説明する。
【0029】
図5に示すように、出湯口プレキャスト体1’は、上記した出湯口プレキャスト体1と同様に、鉛直壁部2と突出樋部3’とを含む。突出樋部3’の後方には延長樋部10’が接続されている。ここで、延長樋部10’は、突出樋部3’と一体に成形されていることが好ましい。この場合、延長樋部10’は、出湯口プレキャスト体1’に含まれる。そして、出湯口プレキャスト体1’は、延長樋部10’を含む一体形状で炉本体50に載置されて固定される。
【0030】
このような出湯口プレキャスト体1’によれば、延長樋部10’を含む一体型であるため炉本体50への取り付けの工数を減じることができて好ましい。また、鉛直壁部2及び突出樋部3’は上記した出湯口プレキャスト体1と同様である。つまり、出頭口プレキャスト体1’も、同様に、熱衝撃に強く、耐久性に優れる。
【0031】
以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0032】
1、1’ 出湯口プレキャスト体
2 鉛直壁部
3、3’ 突出樋部
4 立ち上がり部
5 樋状通路
10、10’ 延長樋部
50 炉本体
図1
図2
図3
図4
図5