(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ
(51)【国際特許分類】
B41M 5/382 20060101AFI20240905BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20240905BHJP
B41M 5/395 20060101ALI20240905BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20240905BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B41M5/382 400
B41M5/52 400
B41M5/395 400
B41M5/42 410
B41M5/44 410
(21)【出願番号】P 2020019916
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】今倉 禄浩
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-100549(JP,A)
【文献】特開2009-137256(JP,A)
【文献】特開2019-177667(JP,A)
【文献】特開2003-260878(JP,A)
【文献】特開2011-212992(JP,A)
【文献】特開2016-193546(JP,A)
【文献】特開2017-189913(JP,A)
【文献】特開2015-063050(JP,A)
【文献】特開2019-064033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、前記第1基材上に設けられた昇華転写型色材層と、を備える熱転写シートと、
第2基材と、前記第2基材上に設けられた受容層と、を備える熱転写受像シートと、
を備え、
前記第2基材上には、前記受容層が設けられた受容層形成領域と、前記受容層が設けられていない受容層非形成領域とが、面順次に設けられているか、前記受容層形成領域の周りを取り囲むように前記受容層非形成領域が設けられているか、または前記受容層非形成領域の周りを取り囲むように前記受容層形成領域が設けられており、
前記受容層非形成領域には、樹脂層(但し、ポリエチレン系樹脂を含む樹脂層を除く)が設けられており、
前記熱転写シートが備える前記昇華転写型色材層及び前記熱転写受像シートの前記受容層形成領域の間における剥離力をT1(N/m)、前記熱転写シートが備える前記昇華転写型色材層及び前記熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力をT2(N/m)としたとき、
T2は、
16.41N/m以上24.81N/m以下であり、
12.59<T2-T1≦20の式を満たす、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【請求項2】
前記昇華転写型色材層が、離型材を含む、請求項1に記載の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【請求項3】
前記離型材が、シリコーンオイルである、請求項2に記載の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【請求項4】
前記熱転写シートが、前記第1基材と前記昇華転写型色材層との間に、プライマー層を備える、請求項1~3のいずれ一項に記載の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【請求項5】
前記プライマー層が、粒子を含む、請求項4に記載の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【請求項6】
前記粒子が、無機粒子である、請求項5に記載の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【請求項7】
前記プライマー層が、カチオン性ウレタン樹脂を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、熱昇華転写型色材層及び溶融転写型色材層を備える熱転写シートと、熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、プリンタが備えるサーマルヘッドとプラテンローラーとの間を通過させると共に、サーマルヘッドにより熱転写シートを加熱することで、熱転写受像シート上に、昇華転写型色材層に含まれる昇華性染料を移行すると共に、溶融転写型色材層自体を転写することにより、画像を形成し、印画物を製造することが行われている。
上記印画物の製造に使用される熱転写受像シートの、昇華性染料を転写する領域には、通常、該染料を受容する受容層が設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昇華性染料による画像形成において、熱転写シートを加熱するタイミングのずれ、及び搬送遅れ等が生じた場合、受容層が設けられていない領域(以下、場合により受容層非形成領域という)に昇華性染料の移行が行われることとなるが、本発明者らは、このような場合に得られる印画物は、シワ等が生じ、その品質を損なってしまうおそれがあるという新たな問題を見出した。
【0004】
本開示の課題は、熱転写シートを加熱するタイミングのずれ、及び搬送遅れ等が生じてしまった場合であっても、印画物におけるシワ等の発生を抑制できる、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せは、
第1基材と、第1基材上に設けられた昇華転写型色材層と、を備える熱転写シートと、
第2基材と、第2基材上に設けられた、受容層と、を備える熱転写受像シートと、
を備え、
前記熱転写シートが備える前記昇華転写型色材層及び前記熱転写受像シートの前記受容層形成領域の間における剥離力をT1(N/m)、前記熱転写シートが備える前記昇華転写型色材層及び前記熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力をT2(N/m)としたとき、|T1-T2|≦20の式を満たすことを特徴とする。
【0006】
一実施形態において、昇華転写型色材層は、離型材を含む。
【0007】
一実施形態において、離型材は、シリコーンオイルである。
【0008】
一実施形態において、熱転写シートは、第1基材と昇華転写型色材層との間に、プライマー層を備える。
【0009】
一実施形態において、プライマー層は、粒子を含む。
【0010】
一実施形態において、粒子は、無機粒子である。
【0011】
一実施形態において、プライマー層は、カチオン性ウレタン樹脂を含む。
【0012】
一実施形態において、熱転写受像シートは、第2基材上の受容層非形成領域に、樹脂層を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の組合せによれば、熱転写シートを加熱するタイミングのずれ、及び搬送遅れ等が生じてしまった場合であっても、印画物におけるシワ等の発生を抑制できる(以下、場合により、単に印画シワ抑制性という)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せの一実施形態を表す模式断面図である。
【
図2】熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層形成領域の間における剥離力、並びに熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力を測定するために使用されるプリンタの一実施形態を表す模式図である。
【
図3】本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せの一実施形態を表す模式断面図である。
【
図4】本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを構成する、熱転写受像シートの一実施形態を表す上面図、及び該熱転写受像シートのA-A線模式断面図である。
【
図5】本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを構成する、熱転写受像シートの一実施形態を表す上面図、及び該熱転写受像シートのA-A線模式断面図である。
【
図6】本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを構成する、熱転写受像シートの一実施形態を表す上面図、及び該熱転写受像シートのA-A線模式断面図である。
【
図7】本開示の熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを構成する、熱転写受像シートの一実施形態を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せ)
本開示の熱転写シート10と熱転写受像シート20との組合せは、
図1に示すように、
第1基材11と、第1基材11上に設けられた、昇華転写型色材層12とを備える熱転写シート10と、
第2基材21と、第2基材21上に設けられた受容層22とを備える熱転写受像シート20と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
本開示の熱転写シートと、熱転写受像シートとの組合せにおいて、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層形成領域の間における剥離力をT1(N/m)、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力をT2(N/m)としたとき、|T1-T2|≦20の式を満たすことを特徴とする。これにより、印画シワ抑制性を向上できる。
また、|T1-T2|≦18の式を満たすことがより好ましく、|T1-T2|≦14の式を満たすことがさらに好ましい。
また、T1及びT2は、0.1以上30以下であることが好ましく、0.1以上25以下であることがより好ましく、0.1以上18以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本開示において、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層形成領域の間における剥離力、並びに熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力は、以下のようにして測定する。
まず、
図2に示す、熱転写シート10を搬送する熱転写シート供給ロール31と、熱転写シート巻取ロール32と、サーマルヘッド等の加熱手段33と、熱転写受像シートを搬送するプラテンローラー34と、加熱後の熱転写シートを熱転写受像シートから剥離する剥離手段35と、加熱手段33及び熱転写シート巻取ロール32の間に配置され、熱転写シートと熱転写受像シートとを50°の角度で剥離するときの剥離力を測定する剥離力測定手段36と、を備えるプリンタ30を準備する。
次いで、本開示の組合せを構成する、熱転写シートが備える昇華転写型色材層と、熱転写受像シートが備える受容層と、が重ね合わされるようにプリンタ内を搬送する。
この際、熱転写シートの受容層形成領域には、加熱手段33により、背面層側から0.136mJ/dotの印画エネルギーを加え、熱転写シートの搬送速度を84.6mm/sec.とする。
加熱後、熱転写シート巻取ロール32によって熱転写シートを巻き取ることにより、熱転写シートと熱転写受像シートとを50°の角度で剥離させる。
この剥離時における剥離力を、剥離力測定手段36によって測定することにより、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層形成領域の間における剥離力を測定できる。
加熱手段33によるエネルギーの印加を、受容層非形成領域において行うことにより、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力を同様に測定できる。
なお、剥離力測定手段36は、搬送経路を走行中の熱転写シートの引張強度を測定できるものであればよく、テンションメーター(ASK-1000型 大倉インダストリー(株)製)を使用できる。
また、上記印画エネルギーは、W×L.S×P.D×階調値の式により算出でき、式中、[W]は印加電力、[L.S]は1ライン周期(msec/line)、[P.D]はパルスDutyを示す。
また、上記印加電力は、V
2/Rの式により算出でき、式中[V]は印加電圧、[R]は加熱手段の抵抗値を示す。
また、上記搬送速度は、(25.4×1000)/(副走査方向の印字密度(dot/inch))×ライン周期(msec/line)の式により算出できる。なお、式中の25.4は、inchをmmに換算するための値である。
【0018】
一実施形態において、
図3に示すように、熱転写受像シート20は、第2基材21の受容層非形成領域に、樹脂層23を備える。
【0019】
一実施形態において、熱転写シート10は、
図1に示すように、第1基材11の昇華転写型色材層12が設けられた面とは反対の面に、背面層13を備える。
一実施形態において、熱転写シート10は、昇華転写型色材層12を複数備える(図示せず)。
一実施形態において、熱転写シート10は、第1基材11と昇華転写型色材層12との間にプライマー層を備える(図示せず)。
また、一実施形態において、熱転写シート10は、昇華転写型色材層12と面順次となるように、溶融転写型色材層を備える(図示せず)。
また、一実施形態において、熱転写シート10は、第1基材11と溶融転写型色材層との間に、剥離層や離型層を備える(図示せず)。
さらに、一実施形態において、熱転写受像シート20は、第2基材と、受容層22及び樹脂層23の少なくとも一方の層との間に、中間層を備える(図示せず)。
【0020】
一実施形態において、熱転写受像シート20は、
図4に示すように、受容層22と、樹脂層23とが面順次に設けられる。
一実施形態において、熱転写受像シート20は、
図5に示すように、受容層22の周りを取り囲むように、樹脂層23が設けられる。
一実施形態において、熱転写受像シート20は、
図6に示すように、樹脂層23の周りを取り囲むように、受容層22が設けられる。
一実施形態において、
図7に示すように、受容層22と、樹脂層23とは、搬送方向と略垂直方向に面順次となるように設けられる。
なお、受容層22及び樹脂層23の位置関係はこれに限定されるものではない。
【0021】
以下、熱転写シート及び熱転写受像シートが備える各層について説明する。
【0022】
(熱転写シート)
熱転写シートは、第1基材と、第1基材上に設けられた昇華転写型色材層を備える。該昇華転写型色材層は複数設けられていてもよい。
一実施形態において、熱転写シートは、昇華転写型色材層と面順次となるように、溶融転写型色材層を備える。該溶融転写型色材層は複数設けられていてもよい。
さらに、一実施形態において、熱転写シートは、第1基材の昇華転写型色材層が設けられた面とは反対の面に、背面層を備える。
【0023】
(第1基材)
第1基材は、熱転写時に加えられる熱エネルギー(例えば、サーマルヘッドによる熱)に耐え得る耐熱性を有し、第1基材上に設けられる色材層等を支持できる機械的強度や耐溶剤性を有するものであれば、特に制限なく使用できる。
【0024】
第1基材として、樹脂材料から構成されるフィルム(以下、単に「樹脂フィルム」という。)を使用できる。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂、ポリアクリレート及びポリメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド及びポリエーテルイミド等のイミド樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂、ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂、ポリカーボネート、並びにアイオノマー樹脂等が挙げられる。
上記樹脂の中でも、耐熱性及び機械的強度という観点から、PET及びPEN等のポリエステルが好ましく、PETが特に好ましい。
なお、本開示において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含することを意味する。また、「(メタ)クリレート」とは「アクレート」と「メタクレート」の両方を包含することを意味する。
【0025】
また、上記樹脂フィルムの積層体を第1基材として使用できる。樹脂フィルムの積層体は、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法及びエクストリュージョン法等を利用して作製できる。
【0026】
第1基材が樹脂フィルムである場合、該樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても、未延伸フィルムであってもよい。強度という観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムが好ましい。
【0027】
第1基材の厚さは、2μm以上25μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。これにより、第1基材の機械的強度及び熱転写時の熱エネルギーの伝達を良好にできる。
【0028】
(昇華転写型色材層)
昇華転写型色材層は、少なくとも1種の昇華性染料を含む。この昇華性染料は特に限定されるものではなく、例えば、ジアリールメタン染料、トリアリールメタン染料、チアゾール染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン染料、インドアニリン染料、アセトフェノンアゾメチン染料、ピラゾロアゾメチン染料、キサンテン染料、オキサジン染料、チアジン染料、アジン染料、アクリジン染料、アゾ染料、スピロピラン染料、インドリノスピロピラン染料、フルオラン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料及びキノフタロン染料等が挙げられる。
【0029】
昇華転写型色材層における昇華性染料の含有量は、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。これにより、受容層上へ形成される画像の濃度を向上できる。
【0030】
一実施形態において、昇華転写型色材層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む。例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリオール樹脂、セルロース樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、印画シワ抑制性の観点、並びに昇華性染料及び後述する離型材の分散性の観点からは、アセタール樹脂が好ましい。
なお、本開示において、カチオン性ウレタン樹脂とは、カチオン性官能基を有するウレタン樹脂である。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、アンモニウム塩基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基及びトリエチルアミノ基等が挙げられる。
【0031】
昇華転写型色材層における樹脂材料の含有量は、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。これにより、受容層上へ形成される画像の濃度及び、印画前の熱転写シートの保存性を維持できる。
【0032】
一実施形態において、昇華転写型色材層は、少なくとも1種の離型材を含む。これにより、印画シワ抑制性をより向上できる。また、印画物製造時における熱転写シートと熱転写受像シートとが融着することに起因する、熱転写シートの破断や、プリンタの異常停止を効果的に抑制できる(以下、場合により、融着抑制性という。)。
離型材としては、フッ素化合物、リン酸エステル化合物、シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド化合物及び金属石けん等が挙げられる。
これらの中でも、印画シワ抑制性及び融着抑制性という観点からは、シリコーンオイルが好ましい。
【0033】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル及びメチルフェニルシリコーンオイル等のストレートシリコンオイル、並びにアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル及びポリエーテル変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。なお、変性シリコーンオイルには、片末端型、両末端型及び側鎖片末端型が含まれる。
これらの中でも、印画シワ抑制性及び融着抑制性という観点から、変性シリコーンオイルが好ましく、特に、エポキシ変性シリコーンオイルが好ましい。
【0034】
昇華転写型色材層における離型材の含有量は、昇華転写型色材層に含まれる樹脂材料100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.8質量部以上4質量部以下が特に好ましい。これにより、印画シワ抑制性及び融着抑制性をより向上できる。
【0035】
昇華転写型色材層は、添加材を含むことができる。添加材としては、例えば、ワックス、充填材、可塑材、紫外線吸収材、無機粒子、有機粒子及び分散材等が挙げられる。
【0036】
昇華転写型色材層の厚さは、0.1μm以上5μm以下が好ましく、0.5μm以上2μm以下がより好ましい。これにより、受容層上へ形成される画像の濃度を向上できる。
【0037】
昇華転写型色材層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、第1基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。塗布手段としては、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及び又はロッドコート法等の公知の手段を使用できる。
【0038】
(背面層)
一実施形態において、本開示の熱転写シートは、第1基材の昇華転写型色材層等が設けられた面とは反対の面に、背面層を備える。これにより、熱転写時の加熱によるスティッキングやシワの発生を防止できる。
【0039】
一実施形態において、背面層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む。樹脂材料としては、例えば、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、セルロース樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられる。
【0040】
一実施形態において、背面層は、少なくとも1種のイソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
背面層は、上記離型材や添加材を含むことができる。
【0042】
背面層の厚さは、例えば、0.3μm以上3.0μm以下である。
【0043】
背面層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第1基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0044】
(プライマー層)
一実施形態において、熱転写シートは、第1基材と昇華転写型色材層との間にプライマー層を備える。これにより、これら層間の密着性を向上できる。
【0045】
プライマー層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む。樹脂材料としては、第1基材と昇華転写型色材層との密着性を向上できるものであれば特に限定されることなく使用でき、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、第1基材と昇華転写型色材層との密着性の観点からは、ウレタン樹脂又はビニル樹脂が好ましく、カチオン性ウレタン樹脂又は酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体がより好ましく、カチオン性ウレタン樹脂がさらに好ましい。
なお、本開示において、カチオン性ウレタン樹脂とは、カチオン性官能基を有するウレタン樹脂である。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、アンモニウム塩基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基及びトリエチルアミノ基等が挙げられる。
【0046】
一実施形態において、プライマー層は、粒子を含む。これにより、第1基材と昇華転写型色材層との密着性をより向上できる。粒子としては、有機粒子、無機粒子および有機-無機のハイブリッド型の粒子等が挙げられる。これらの中でも、密着性向上という観点から、無機粒子が好ましい。
【0047】
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子(コロダイルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等)、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子及び酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子が挙げられる。また、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン又はγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等を用いて表面処理が施された粒子を使用してもよい。
【0048】
粒子の体積平均粒径は、1nm以上1μm以下が好ましく、5nm以上500nm以下がより好ましい。これにより、密着性をより向上できる。
本開示において、体積平均粒径は、粒度分布・粒径分布測定装置(ナノトラック粒度分布測定装置、日機装(株)製)を用いて、JIS-Z-8819-2(2019発行)に準拠して測定できる。
【0049】
プライマー層における粒子の含有量は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましい。これにより、密着性をより向上できる。
【0050】
プライマー層は、上記添加材を含むことができる。
【0051】
プライマー層の厚さは、例えば、0.02μm以上1μm以下である。
【0052】
(溶融転写型色材層)
一実施形態において熱転写シートは、第1基材上に、昇華転写型色材層と面順次となるように、溶融転写型色材層を備える。
【0053】
溶融転写型色材層は、少なくとも1種の着色材を含み、これは顔料であっても、染料であってもよい。
着色材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、黒煙、鉄黒、アニリンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、カドミウムレッド、カドモポンレッド、クロムレッド、バーミリオン、ベンガラ、アゾ系顔料、アリザリンレーキ、キナクリドン、コチニールレーキペリレン、イエローオーカー、オーレオリン、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、クロムイエロー、ジンクイエロー、ネイプルスイエロー、ニッケルイエロー、アゾ系顔料、グリニッシュイエロー、ウルトラマリン、岩群青、コバルト、フタロシアニン、アントラキノン、インジコイド、シナバーグリーン、カドミウムグリーン、クロムグリーン、フタロシアニン、アゾメチン、ペリレン、アルミニウム顔料等が挙げられる。
【0054】
一実施形態において、溶融転写型色材層は、樹脂材料を含む。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0055】
溶融転写型色材層は、上記離型材や上記添加材を含むことができる。
【0056】
溶融転写型色材層の厚さは、例えば、0.1μm以上5μm以下である。
【0057】
溶融転写型色材層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第1基材等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0058】
(剥離層)
剥離層は、第1基材と溶融転写型色材層との間に、溶融転写型色材層の転写性向上を目的として設けられる層である。熱転写受像シートへの転写時には、溶融転写型色材層と共に転写される。
【0059】
剥離層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0060】
剥離層における樹脂材料の含有量は特に限定されず、例えば、50質量%以上99質量%以下とできる。
【0061】
剥離層は、上記添加材を含むことができる。
【0062】
剥離層の厚さは、0.1μm以上3μm以下が好ましく、0.3μm以上1.5μm以下がより好ましい。これにより、溶融転写型色材層の転写性をより向上できる。
【0063】
剥離層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第1基材等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0064】
(離型層)
離型層は、第1基材と溶融転写型色材層との間に、溶融転写型色材層の転写性向上を目的として設けられる層である。熱転写受像シートへの転写時には、第1基材上に留まる。
熱転写シートが、剥離層及び離型層を備える場合、第1基材と溶融転写型色材層との間に、第1基材側から離型層、剥離層の順に設けられる。
【0065】
一実施形態において、離型層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む。例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、アセタール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリオール樹脂、セルロース樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0066】
離型層は、上記離型材や上記添加材を含むことができる。
【0067】
離型層の厚さは、例えば、0.1μm以上2.0μm以下である。
【0068】
離型層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第1基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0069】
(熱転写受像シート)
熱転写受像シートは、第2基材と、第2基材上に設けられた受容層と、を備える。一実施形態において、熱転写受像シートは、第2基材の受容層非形成領域に、樹脂層を備える。
【0070】
(第2基材)
第2基材としては、紙基材又は上記樹脂フィルムを使用できる。
紙基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、板紙、合成紙及び含浸紙等が挙げられる。
【0071】
また、2以上の上記紙基材からなる積層体、2以上の樹脂フィルムからなる積層体、又は紙基材と樹脂フィルムとの積層体を、第2基材として使用できる。
これら積層体は、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法又はエクストリュージョン法等を利用することにより製造できる。
【0072】
第2基材の厚さは、30μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。これにより、基材上への層形成時、及び印画時の熱収縮を抑えることができる。
【0073】
(受容層)
一実施形態において、受容層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む。例えば、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、並びにアイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0074】
受容層における樹脂材料の含有量は、80質量%以上99.5質量%以下が好ましく、85質量%以上99質量%以下がより好ましい。これにより、形成される画像濃度を向上できる。
【0075】
一実施形態において、受容層は、硬化材を含む。硬化材としては、例えば、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物及びオキサゾリン化合物等が挙げられる。
上記硬化材の中でも、イソシアネート化合物が好ましく、例えば、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。これらの中でも、受容層の黄変防止の観点から、XDI、HDIが好ましい。
【0076】
受容層は、上記離型材や上記添加材を含むことができる。
【0077】
受容層の厚さは、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましい。これにより、形成される画像の濃度を向上できる。
【0078】
一実施形態において、受容層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第2基材等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0079】
一実施形態において、受容層は、多層構造を有する。受容層が多層構造を有する場合、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層形成領域の間における剥離力とは、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの最表面に位置する受容層(以下、場合により、最表面受容層という。)形成領域の間における剥離力を意味する。
【0080】
一実施形態において、受容層は、第2基材側から、ビニル樹脂及び硬化材を含む第1受容層と、該第1受容層上に設けられた、(メタ)アクリル樹脂、硬化材及びスリップ材を含む第2受容層と、を備える。受容層をこのような構成とすることにより、印画物製造時における熱転写シートと熱転写受像シートとの離型性を向上できる。該構成において、第2受容層が、最表面受容層に該当する。
【0081】
第1受容層に含まれるビニル樹脂としては、例えば、PVA、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びPVP等が挙げられる。また、上記ビニル樹脂を構成するモノマーと、その他のモノマーとの共重合体を使用してもよい。上記ビニル樹脂の中でも、画像保存安定性及び画像濃度向上の観点から、ポリビニルブチラールが好ましい。
第1受容層は、ビニル樹脂を2種以上含んでいてもよい。
【0082】
第1受容層におけるビニル樹脂の含有量は、40質量%以上98質量%以下が好ましく、50質量%以上97質量%以下がより好ましい。これにより、画像保存安定性及び画像濃度を向上できる。
【0083】
第1受容層は少なくとも1種の上記硬化材を含む。上記硬化材の中でも、第1受容層の黄変防止の観点から、イソシアネート化合物が好ましく、XDI又はHDIがより好ましい。
【0084】
第1受容層において、硬化材と樹脂材料との含有量比(硬化材/樹脂材料)は、質量基準で、5/95以上25/75以下が好ましく、10/90以上20/80以下がより好ましい。これにより、画像保存安定性及び画像濃度をより向上できる。
【0085】
第1受容層は、本開示の組合せの特性を損なわない範囲において、ビニル樹脂以外の樹脂材料を含んでいてもよい。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0086】
第1受容層は、上記離型材や上記添加材を含んでいてもよい。
【0087】
第1受容層の厚さは、1μm以上20μmが好ましく、3μm以上15μmがより好ましい。これにより、画像保存安定性及び画像濃度をより向上できる。
【0088】
第1受容層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第2基材等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0089】
第2受容層に含まれる(メタ)アクリル樹脂は、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基及び水酸基を有することが好ましい。これにより、印画物製造時における熱転写シートと熱転写受像シートとの離型性をより向上できる。
【0090】
第2受容層における(メタ)アクリル樹脂の含有量は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。これにより、離型性及び画像濃度をより向上できる。
【0091】
硬化材としては、上記硬化材を使用できる。第2受容層の黄変防止の観点からは、イソシアネート化合物が好ましく、XDI又はHDIがより好ましい。
第2受容層は、硬化材を2種以上含んでいてもよい。
【0092】
第2受容層において、硬化材と樹脂材料との含有量比(硬化材/樹脂材料)は、質量基準で、5/95以上25/75以下が好ましく、10/90以上20/80以下がより好ましい。これにより、印画抜け防止性、離型性、画像濃度、画像保存安定性及び耐擦過性をより向上できる。
【0093】
スリップ材としては、例えば、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリルアルコール、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸アミド、並びにエルカ酸アミド等が挙げられる。
上記中でも、画像保存安定性及び耐擦過性という観点からは、ポリオレフィンワックスが好ましく、ポリエチレンワックスがより好ましい。
【0094】
スリップ材の体積平均粒径は、2μm以上9μm以下が好ましく、3μm以上8μm以下がより好ましい。これにより、印画抜け防止性及び耐擦過性をより向上できる。
【0095】
スリップ材の融点は、100℃以上150℃以下が好ましく、105℃以上135℃以下がより好ましい。これにより、離型性及び印画抜け防止性をより向上できる。
なお、本開示においてスリップ材の融点は、JIS K 7121に準拠して測定する。
【0096】
第2受容層におけるスリップ材の含有量は、1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。これにより、印画抜け防止性、画像保存安定性及び耐擦過性をより向上できる。
【0097】
第2受容層は、(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂材料を含んでいてもよい。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
また、第2受容層は、上記添加材を含んでいてもよい。
【0098】
第2受容層の厚さは、0.3μm以上5μmが好ましく、0.3μm以上、3μmがより好ましい。これにより、印画抜け防止性、離型性、画像保存安定性及び耐擦過性をより向上できる。
【0099】
第2受容層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第1受容層上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0100】
(樹脂層)
一実施形態において、熱転写受像シートは、第2基材の受容層非形成領域に樹脂層を備える。樹脂層は、受容層非形成領域の全域に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。受容層非形成領域の一部に設けられている場合、受容層形成領域の周囲に幅少なくとも5mmとなるように設けられることが好ましい。
【0101】
樹脂層は、少なくとも1種の樹脂材料を含み、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、アイオノマー樹脂及び活性光線硬化樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐久性に優れるという観点から活性光線硬化樹脂が好ましい。
本開示において、活性光線硬化樹脂とは、活性光線硬化性樹脂に対して活性光線を照射し、硬化させた状態の樹脂を意味する。
また、活性光線とは、活性光線硬化性樹脂に対して化学的に作用させて重合を促進せしめる放射線を意味し、具体的には、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等を意味する。
【0102】
活性光線硬化性樹脂としては、活性光線照射により重合可能な樹脂であれば特に制限なく使用できる。
例えば、アクリロイル基、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基等のラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマー、重合性オリゴマー、並びに重合性プレポリマー等を使用できる。
なお、本開示において、オリゴマーとは、重量平均分子量(Mw)が1,000より大きく、10,000以下の重合体を、プレポリマーとは10,000より大きく、30,000以下の重合体を指す。
また、本開示において重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS-K-7252-1(2008年発行)に準拠して測定する。
【0103】
重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレンアクリレート、シリコーンアクリレート及びポリオールアクリレート等が挙げられ、印画シワ抑制性及び融着抑制性の観点からは、ポリエステルアクリレートが好ましい。
また、これらのメタクリレート、イタコネート、クロトネート又はマレエートを使用することもできる。
より具体的には、
(1)2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3-ジオキサンアルコールのε-カプロラクトン付加物のアクリレート及び1,3-ジオキソランアクリレート等の単官能アクリレート、
(2)エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート、2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-ヒドロキシメチル-5-エチル-1,3-ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε-カプロラクトン付加物及び1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリルレート、並びに
(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε-カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート及びヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリレート等が挙げられる。
【0104】
重合性オリゴマー及び重合性プレポリマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート及びポリカーボネート(メタ)アクリレート等の上記重合性モノマーの重合体が挙げられる。
【0105】
樹脂層における樹脂材料の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上95質量%以下がより好ましい。これにより、樹脂層の耐久性を向上できる。
【0106】
一実施形態において、樹脂層は、重合開始剤を含む。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系、アゾ系の化合物が挙げられ、より具体的には、ベンゾイン、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-モルホリノ-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0107】
樹脂層における重合開始剤の含有量は、樹脂層に含まれる活性光線硬化樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上、5質量部以下が好ましく、1質量部以上、3質量部以下がより好ましい。これにより、塗工液の安定性が確保でき、かつ活性光線照射後の樹脂層の耐久性を向上できる。
【0108】
樹脂層は、活性光線硬化樹脂以外の樹脂材料を含んでいてもよく、上記添加材を含んでいてもよい。
【0109】
樹脂層の厚さは、1μm以上15μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下が好ましい。
【0110】
樹脂層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第2基材等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。また、一実施形態において、乾燥した塗膜に対し、活性光線を照射し、硬化させてもよい。
電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型及び高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。また、紫外線源としては、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ及びカーボンアーク燈等が挙げられる。
【0111】
(中間層)
一実施形態において、熱転写受像シートは、第2基材と、受容層22及び樹脂層23の少なくとも一方の層との間に、中間層を備える。
本開示において、中間層とは、耐溶材性、バリア性、接着性、白色付与性、隠蔽性、クッション性及び帯電防止性等の性能を1以上有する層である。
【0112】
中間層は、樹脂材料を含む。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、エポキシ、ポリスチレン及びポリウレタン等が挙げられる。中間層は、上記樹脂材料を2種以上含むことができる。
【0113】
一実施形態において、中間層は、充填材を含む。充填材としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム等が挙げられる。これにより、熱転写受像シートの白色度を向上できる。また、基材のムラ等を隠蔽することができ、印画ムラ抑制性を向上できる。
【0114】
また、一実施形態において、中間層は帯電防止材を含む。帯電防止材としては、例えば、アニオン性界面活性材、カチオン性界面活性材、非イオン性界面活性材、両性界面活性材等が挙げられる。
アニオン性界面活性材としては、N-アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩及び脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩及びN-アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸エーテル塩及び硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩、並びにリン酸アルキル塩、リン酸エーテル塩及びリン酸アミド塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性材としては、アルキルアミン塩等のアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩、1-ヒドロキシエチル-2-アルキル-2-イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体、イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、及びイソキノリニウム塩等が挙げられる。
非イオン性界面活性材としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル及びp-アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル、脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステルジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N-ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N-ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、並びにアルキルポリエチレンイミン等が挙げられる。
両性界面活性材としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸、N-アルキルアミノプロピオン酸塩及びN,N-ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等が挙げられる。
上記界面活性材に限定されず、層状ケイ酸塩、カチオン系(メタ)アクリル樹脂又はポリアニリンを耐電防止材として使用してもよい。
【0115】
一実施形態において、中間層は、蛍光増白材を含む。蛍光増白材としては、例えば、スチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物及びベンゾオキサゾ-ル系化合物等が挙げられる。中間層が蛍光増白材を含むことにより、熱転写シートの白色度を向上できる。
【0116】
中間層は、上記添加材を含むことができる。
【0117】
中間層の厚さは、例えば、0.1μm以上、3μm以下である。
【0118】
中間層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散して、あるいは上記材料を水又は適当な溶媒へ溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、第2基材等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【実施例】
【0119】
次に実施例を挙げて、本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0120】
実施例1
[熱転写シートの作製]
第1基材として、厚さ6μmのPETフィルムを準備し、第1基材の一方の面に、下記組成のプライマー層形成用塗工液Aを塗布、乾燥し、厚さ0.1μmのプライマー層を形成した。
<プライマー層形成用塗工液A>
・アルミナゾル 7質量部
(日産化学工業(株)製、アルミナゾル200)
・カチオン性ウレタン樹脂 3質量部
(第一工業製薬(株)製、SF-600)
・水 100質量部
・イソプロピルアルコール(IPA) 100質量部
【0121】
上記のようにして形成したプライマー層上に、下記組成の色材層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ0.7μmの色材層を形成した。
<色材層形成用塗工液>
・昇華性染料(ホロンブリリアントイエローS-6GL) 5質量部
・ポリビニルアセトアセタール 5質量部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)KS-5)
・エポキシ変性シリコーンオイル 0.05質量部
(信越化学工業(株)製、KF-101)
・ポリエチレンワックス 0.1質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 45質量部
・トルエン 45質量部
【0122】
第1基材の他方の面に、下記組成の背面層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1μmの背面層を形成し、熱転写シートを得た。
<背面層形成用塗工液>
・ポリビニルブチラール 20質量部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)BX-1)
・ポリイソシアネート 44質量部
(DIC(株)製、バーノック(登録商標)D750)
・リン酸エステル系界面活性剤 13質量部
(第一工業製薬(株)製、プライサーフ(登録商標)A208N)
・タルク 3質量部
(日本タルク工業(株)製、ミクロエース(登録商標)P-3)
・MEK 460質量部
・トルエン 460質量部
【0123】
[熱転写受像シートの作製]
第2基材として、厚さ188μmのPETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、U2L92W-188)を準備し、第2基材の一方の面に、下記組成の透明オーバープリント用UV硬化型インキをオフセット印刷法により印刷し、UV露光器(Fusion UV、F600V、LH10ランプ、Hバルブ、反射鏡はコールドタイプ)を用いて、紫外線を照射することにより、硬化させ、厚さ5μmの樹脂層を形成した。
<透明オーバープリント用UV硬化型インキ>
・エポキシアクリレート 30質量部
(昭和高分子(株)製、SP1519X2)
・アクリルオリゴマー 30質量部
(日本化薬(株)製、DPHA)
・アクリルオリゴマー 13.9質量部
(日本化薬(株)製、DPCA60)
・アクリルオリゴマー 13.9質量部
(日本化薬(株)製、R-604)
・光硬化開始剤 6質量部
(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュアー184)
・熱重合禁止材(ヒドロキノン) 0.1質量部
・紫外線吸収材 5質量部
(2-(3,5-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール)
【0124】
上記のようにして形成した樹脂層と、面順次となるように、下記組成の第1受容層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ4μmの第1受容層を形成した。
次いで、この第1受容層上に、下記組成の第2受容層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1μmの第2受容層(最表面受容層)を形成し、熱転写受像シートを得た。
【0125】
<第1受容層形成用塗工液>
・ポリビニルブチラール 95質量部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)BL-S)
・イソシアネート化合物 5質量部
(三井化学(株)製、タケネート(登録商標)D-110N)
・MEK 30質量部
・トルエン 30質量部
【0126】
<第2受容層形成用塗工液>
・スチレン-アクリル共重合体(Mw:8.53×104) 85質量部
(共重合比率・・・(スチレン(St):ラウリルアクリレート(LA):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)=70:20:10))
・イソシアネート化合物 15質量部
(三井化学(株)製、タケネート(登録商標)D-110N)
・MEK 30質量部
・トルエン 30質量部
【0127】
実施例2及び比較例1
熱転写シートが備える色材層における滑材の含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを作製した。
【0128】
実施例3
プライマー層形成用塗工液Aを、以下の組成のプライマー層形成用塗工液Bに変更した以外は、実施例2と同様にして、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを作製した。
<プライマー層形成用塗工液B>
・アルミナゾル 3質量部
(日産化学工業(株)製、アルミナゾル200)
・酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体 7質量部
(アイエスピー・ジャパン(株)製、PVP/VA E-335)
・水 100質量部
・IPA 100質量部
【0129】
実施例4
プライマー層形成用塗工液Aを、プライマー層形成用塗工液Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを作製した。
【0130】
比較例2
熱転写シートが備える色材層における滑材の含有量、及びプライマー層に含有させたカチオン性ウレタン樹脂を表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、熱転写シートと熱転写受像シートとの組合せを作製した。
【0131】
<<色材層及び受容層の間並びに色材層及び活性光線硬化樹脂層の間における剥離力測定>>
図2に示す、熱転写シート10を搬送する熱転写シート供給ロール31と、熱転写シート巻取ロール32と、加熱手段33と、熱転写受像シートを搬送するプラテンローラー34と、加熱後の熱転写シートを熱転写受像シートから剥離する剥離手段35と、加熱手段33及び熱転写シート巻取ロール32の間に配置され、熱転写シートと熱転写受像シートとを50°の角度で剥離するときの剥離力を測定する剥離力測定手段36(大倉インダストリー(株)製、テンションメーター(ASK-1000型番))と、を備えるプリンタを準備した。
次いで、上記実施例及び比較例において得られた、熱転写シートが備える昇華転写型色材層と、熱転写受像シートが備える受容層と、が重ね合わされるようにプリンタ内を搬送させた。
この際、熱転写シートの受容層形成領域には、加熱手段33により、背面層側から0.136mJ/dotの印画エネルギーを加えた。
加熱後、熱転写シート巻取ロール32により、熱転写シートを巻き取り、熱転写シートと熱転写受像シートとを50°の角度で剥離させた。
この剥離時における剥離力を、剥離力測定手段36により、測定し、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層形成領域の間における剥離力(T1)を測定した。
熱転写シートの受容層非形成領域、すなわち、樹脂層形成領域を、加熱手段33により加熱した以外は、上記と同様にして、熱転写シートが備える昇華転写型色材層及び熱転写受像シートの受容層非形成領域の間における剥離力(T2)を測定した。
それぞれの測定結果を表1に示す。
(プリンタ)
・発熱体平均抵抗値:5241(Ω)
・主走査方向印字密度:300(dpi)
・副走査方向印字密度:300(dpi)
・印画電圧:29(V)
・印画電力:0.16(W/dot)
・1ライン周期:1(msec.)
・パルスDuty:85(%)
・印画開始温度:29.0~36.0(℃)
・発熱ポイントから剥離板までの距離:4.5(mm)
・搬送速度:84.6(mm/sec.)
・印圧:3.5~4.0(kgf)
・評価画像:黒ベタ画像(0/255諧調)
【0132】
<<印画シワ抑制性評価>>
上記実施例及び比較例において得られた熱転写シートと、熱転写受像シートとの組合せを準備した。下記プリンタにより、熱転写受像シートが備える受容層上に、熱転写シートが備える昇華転写型色材層から昇華性染料を転写し、画像を形成し、印画物を得た。
得られた印画物を目視により観察し、下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1に示す。
(プリンタ)
・発熱体平均抵抗値:5241(Ω)
・主走査方向印字密度:300(dpi)
・副走査方向印字密度:300(dpi)
・印画電圧:29(V)
・印画電力:0.16(W/dot)
・1ライン周期:1(msec.)
・パルスDuty:85(%)
・印画開始温度:29.0~36.0(℃)
・発熱ポイントから剥離板までの距離:4.5(mm)
・搬送速度:84.6(mm/sec.)
・印圧:3.5~4.0(kgf)
・評価画像:黒ベタ画像(0/255諧調)
(評価基準)
A:シワが生じなかった。
B:わずかにシワが生じたが、使用上問題のない程度であった。
NG:シワが生じ、問題があった。
【0133】
<<融着抑制性評価>>
上記実施例及び比較例において得られた熱転写シートと、熱転写受像シートとの組合せを準備した。下記プリンタにより、熱転写受像シートが備える受容層上に、熱転写シートが備える昇華転写型色材層を用いて画像を形成し、印画物を得た。
得られた印画物を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。
(プリンタ)
・発熱体平均抵抗値:5241(Ω)
・主走査方向印字密度:300(dpi)
・副走査方向印字密度:300(dpi)
・印画電圧:31(V)
・印画電力:0.18(W/dot)
・1ライン周期:1(msec.)
・パルスDuty:85(%)
・印画開始温度:29.0~36.0(℃)
・発熱ポイントから剥離板までの距離:4.5(mm)
・搬送速度:84.6(mm/sec.)
・印圧:3.5~4.0(kgf)
・評価画像:黒ベタ画像(0/255諧調)
(評価基準)
A:融着が生じず、容易に剥離できた。
B:わずかに融着が生じたが、剥離でき、使用上問題のない程度であった。
C:融着が生じ、熱転写シートが破断した。
【0134】
【符号の説明】
【0135】
10:熱転写シート、11:第1基材、12:昇華転写型色材層、13:背面層、20:熱転写受像シート、21:第2基材、22:受容層、23:樹脂層、30:プリンタ、31:熱転写シート供給ロール、32:熱転写シート巻取ロール、33:加熱手段、34:プラテンローラー、35:剥離手段、剥離力測定手段