(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ジョイント部品の製造方法及びジョイント部品
(51)【国際特許分類】
B21D 19/08 20060101AFI20240905BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B21D19/08 D
B21D19/08 C
B21D53/88 Z
(21)【出願番号】P 2020078193
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019102505
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】平野 幸一
(72)【発明者】
【氏名】鳥成 秀祐
(72)【発明者】
【氏名】西村 茉利子
(72)【発明者】
【氏名】大矢 聡
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-122716(JP,U)
【文献】特開平07-116746(JP,A)
【文献】特開2002-192261(JP,A)
【文献】特開平11-226648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/08
B21D 53/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状の本体と、前記本体の周縁部に沿って形成したフランジと、バーリング加工により前記本体の端部に形成した突起とを有するジョイント部品を製造するに際し、
前記本体に予め形成した下穴にバーリング加工用のポンチを圧入して前記突起を成形し、
次いで、前記本体の周縁部に、前記突起の基端部を圧入された前記ポンチに設けられた肩部により固定し、前記基端部を起点として傾斜した前記フランジを成形することを特徴とするジョイント部品の製造方法。
【請求項2】
プレート状の本体と、前記本体の周縁部に沿って形成したフランジと、バーリング加工により前記本体の端部に形成した突起とを有するジョイント部品を製造するに際し、
前記本体の周縁部に前記フランジを成形し、
前記本体に予め形成した下穴にバーリング加工用のポンチを圧入して、前記フランジの基端部を起点として立ち上がる傾斜片を成形し、
次いで、前記傾斜片の先端側から前記下穴に前記ポンチを圧入して、前記傾斜片を前記フランジに重なり合う前記突起に成形することを特徴とするジョイント部品の製造方法。
【請求項3】
前記傾斜片を前記突起に成形する際、前記傾斜片の近傍位置において前記本体の材料の流れを抑制しながら前記下穴に前記ポンチを圧入することを特徴とする請求項2に記載のジョイント部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械構造物の連結箇所に用いられるジョイント部品の製造方法、及びその製造方法により製造したジョイント部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のジョイント部品としては、ボールジョイント支持装置の名称で特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載のジョイント部品は、自動車のサスペンションアームとして用いられるものであって、周縁部に補強用のフランジを有すると共に、アーム端部のフランジよりも内側に環状の突起を有している。この突起は、フランジから離間すると共に、フランジの突出方向と同じ方向に突出しており、ボールジョイントのケーシングの圧入部として用いられる。
【0003】
ここで、自動車のサスペンションアームに用いるジョイント部品は、良好な操縦安定性を確保するうえで、タイヤの中心線とボールジョイントによる操舵中心線とがタイヤの接地面上で交差するように、ボールジョイントを支持できることが望ましい。なお、タイヤの接地面上において、タイヤの中心線と操舵中心線とのずれ量が大きくなると、走行時のハンドル操作が重くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような従来のジョイント部品は、補強用のフランジと、ボールジョイントのケーシングの圧入部となる突起とが離間している。この離間寸法は、僅かであっても、ボールジョイントによる操舵中心線をタイヤの接地面まで延長すると、タイヤの中心線とのずれに大きく影響する。その一方で、自動車のサスペンションアームの近傍には、ブレーキやスプラッシュガード等の機器が密集し、空間が小さく限られているので、サスペンションアームに用いられるジョイント部品の小型化が有効である。
【0006】
なお、従来のジョイント部品には、本体に対して、環状の突起の部分を別の鍛造部品にして全体の小型化と機械的強度の確保を図ったものもあるが、この場合、重量が増加し、製造コストが嵩むといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたものであって、プレート状の本体と、本体の周縁部に沿って形成したフランジと、バーリング加工により本体の端部に形成した突起とを有するジョイント部品を製造するに際し、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたジョイント部品を得ることができる製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、プレート状の本体と、本体の周縁部に沿って形成したフランジと、バーリング加工により本体の端部に形成した突起とを有するジョイント部品において、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させることができるジョイント部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わるジョイント部品の製造方法は、プレート状の本体と、本体の周縁部に沿って形成したフランジと、バーリング加工により本体の端部に形成した突起とを有するジョイント部品を製造する方法である。この製造方法は、本体に予め形成した下穴にバーリング加工用のポンチを圧入して突起を成形し、次いで、本体の周縁部に、突起の基端部を圧入された前記ポンチに設けられた肩部により固定し、前記基端部を起点として傾斜したフランジを成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わるジョイント部品の製造方法は、上記構成を採用したことにより、プレート状の本体と、本体の周縁部に沿って形成したフランジと、バーリング加工により本体の端部に形成した突起とを有するジョイント部品を製造するに際し、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたジョイント部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係わるジョイント部品の第1実施形態を示す図であって、要部の拡大図を含むジョイント部品の上面側斜視図である。
【
図2】
図1に示すジョイント部品の要部の拡大図を含む下面側斜視図である。
【
図3】
図1に示すジョイント部品の製造方法を説明する図であって、環状の突起を成形した状態を示す断面図である。
【
図4】
図3に続いてフランジを成形した状態を示す断面図である。
【
図5】自動車のサスペンション部分を説明する図であって、タイヤ中心線と操舵中心線とがタイヤ接地面で一致している状態を示す概略正面図(A)、タイヤ中心線と操舵中心線とがタイヤ接地面ですれている状態を示す概略正面図(B)、及び従来例のジョイント部品を示す底面側の斜視図(C)である。
【
図6】本発明に係わるジョイント部品の第2実施形態を示す要部の斜視図である。
【
図7】
図6に示すジョイント部品の底面側の斜視図である。
【
図8】フランジの形成後に環状の傾斜片を成形した状態を示す断面図である。
【
図9】環状傾斜片を形成したジョイント部品の底面側の斜視図である。
【
図10】
図8に続いて突起の成形前の状態を示す断面図である。
【
図11】
図10に続いて突起の成形後の状態を示す断面図である。
【
図12】本発明に係わるジョイント部品の第3実施形態を説明する上側の斜視図である。
【
図14】突起を成形する成形装置の一例を説明する断面図である。
【
図15】突起の成形時における材料の流れを説明する要部の断面図である。
【
図16】突起を成形する成形装置の他の例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〈第1実施形態〉
図1~
図4は、本発明に係わるジョイント部品の製造方法及びジョイント部品の第1実施形態を説明する図である。
図1及び
図2に示すジョイント部品J1は、自動車のサスペンションリンク(又はサスペンションアーム)に用いるものであって、所定形状に形成されたプレート状の本体1と、本体1の周縁部に沿って形成した補強用のフランジ2と、本体1の端部に形成した環状の突起3及びその内側の開口部4を有する。本体1は、2つの隆起部Q,Qを有する。
【0015】
図示のジョイント部品J1は、両端部及び中間部の三箇所に、バーリング加工により成形した環状の突起3を有している。このジョイント部品J1は、
図1及び
図2の拡大図に示す端部の突起3及び開口部4が、自動車の操舵系を構成するボールジョイントの圧入部となる。そこで、この実施形態のジョイント部品の製造方法では、とくに、ボールジョイントの圧入部となる突起3及び開口部4を成形する場合を例示する。なお、本発明の製造方法は、それ以外の突起3の成形にも当然適用可能であり、突起の形態は環状に限らず、環状の少なくとも一部である円弧状を成すものにも適用可能である。
【0016】
この実施形態におけるジョイント部品J1のフランジ2は、本体1の一方の主面側に突出すると共に、本体1の外側に傾斜している。突起3は、本体1の一方の主面側、すなわちフランジ2の突出方向と同じ方向に突出している。この突起3は、円形を成していると共に、後述するように、本体1に予め形成した下穴にバーリング加工を行うことによって成形してあり、下穴が開口部4となる。
【0017】
そして、ジョイント部品J1は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いの基端部同士で折れ曲がる状態に形成してある。つまり、ジョイント部品J1は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いに基端部同士で連続している。
【0018】
図3及び
図4は、上記のジョイント部品J1の製造方法に適用可能な成形装置を説明する図である。なお、
図3及び
図4は、先述したボールジョイントの圧入部となる突起3を成形する要部の断面図である。成形装置は、
図1及び
図2に示すジョイント部品J1の全体を成形するものであっても構わない。そして、製造方法は、プレート状の本体1と、本体1の周縁部に沿って形成したフランジ2と、バーリング加工により本体1の端部に形成した突起3とを有するジョイント部品J1を製造する。
【0019】
図3及び
図4に示す成形装置は、図外のプレス装置のボルスタ側(下側)に配置した固定型10と、プレス装置のスライド側(上側)に配置した可動型20とを備えている。可動型20は、バーリング加工用のポンチ21と、バーリング加工の際にジョイント部品J1の本体1を固定型10に押圧固定するためのパッド22と、フランジ用ダイ23とを備えている。フランジ用ダイ23は、フランジ成形用の傾斜面24を有している。
【0020】
ポンチ21,パッド22及びフランジ用ダイ23は、異なるストロークが得られるように、スライドとの間に図示しないリテーナや弾性体を介装して位置調整されている。これにより、可動型20は、下降時には、パッド22が先行し、続いてポンチ21が下降し、最後にフランジ用ダイ23が下降する。
【0021】
これに対して、固定型10は、ポンチ21を突入させる成形穴11と、フランジ用ダイ23の傾斜面24との間でフランジ2を成形する傾斜面12とを有している。
【0022】
次に、上記成形装置の動作とともにジョイント部品J1の製造方法を説明する。
すなわち、ジョイント部品の製造方法では、
図3に示すように、本体1に予め形成した下穴に、バーリング加工用のポンチ21を圧入して、環状の突起3を成形する。より具体的には、成形装置の固定型10に、予め下穴を形成した本体1を位置決めし、その後、スライドの下降に伴って、先行するパッド
22で本体1を固定型10上に押圧固定し、続いて、固定型10の成形穴11にポンチ21を突入させて、下穴を拡開するように突起3を折り曲げ成形する。
【0023】
次いで、同製造方法では、
図4に示すように、本体1の周縁部に、突起3の基端部を起点として傾斜したフランジ2を成形する。より具体的には、成形装置において、最終的に下降するフランジ用ダイ23の傾斜面24と、固定型10の傾斜面12との間で傾斜したフランジ2を折り曲げ成形する。
【0024】
これにより、上記製造方法は、
図1及び
図2に示すジョイント部品J1、すなわち、本体1と、フランジ2と、突起3及び開口部4とを有し、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が互いの基端部同士で折れ曲がる状態に形成されたジョイント部品J1を製造する。
【0025】
ここで、上記製造方法では、先にバーリング加工により突起3を成形し、その後、傾斜したフランジ2を成形する。これは、先にフランジ2を成形してしまうと、バーリング加工の際、固定型10と可動型20との間でフランジ2の部分を充分に固定することが難しいからである。この場合、ポンチ21の圧入に伴う大きな負荷により、フランジ2の肉がポンチ21側に引き込まれ、フランジ2及び突起3を精度良く成形することが困難になる。
【0026】
これに対して、上記製造方法では、先にバーリング加工を行って精度の良好な突起3を成形する。つまり、突起3を成形した段階では、フランジ2が未成形であるから、小さい面積ではあるが、ポンチ21の肩部21Aと固定型10との間で突起3の外周の基端部分を固定することが可能になる。
【0027】
そこで、上記製造方法では、突起3の外周の基端部分を固定しつつ、突起3が変形しない範囲(規格内の範囲)でフランジ2を成形する。この際、フランジ2は、基端部分が固定型10で保持された状態で下方に折り曲げられるので、結果的に傾斜状態に成形される。この傾斜角度は、当該ジョイント部品J1の材料、要求される寸法や機械的強度などに応じて選択することができ、例えば、40度~50度の範囲であり、好適な例として45度である。
【0028】
上記製造方法により製造したジョイント部品J1は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いの基端部同士で折れ曲がる状態、すなわち、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いに離間せずに連続した状態である。これにより、ジョイント部品J1は、フランジ2及び突起3の距離を詰めた分だけ小型であると共に、フランジ2による機械的強度を確保している。
【0029】
このようにして、ジョイント部品の製造方法は、本体1とフランジ2と突起3とを有するジョイント部品J1を製造するに際し、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたジョイント部品J1を得ることができる。すなわち、ジョイント部品J1は、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたものとなる。
【0030】
また、上記の製造方法は、
図3及び
図4から明らかなように、構造が簡単な一基の成形装置を用いて、一連の動作で突起3及びフランジ2を連続的に成形することができ、ジョイント部品J1の生産性の向上や低コスト化に貢献し得る。さらに、上記のジョイント部品J1は、全体が一体成形された部品であって、別部品を用いる必要も無いので、重量の軽減や製造コストの抑制を実現することができる。
【0031】
上記ジョイント部品J1は、先述したように、自動車のサスペンションリンク(サスペンションアーム)に適用される。この場合、ジョイント部品J1は、開口部4及び突起3が、自動車の操舵系を構成するボールジョイントの圧入部になる。
【0032】
図5は、自動車のサスペンション部分、いわゆる足回り部分を説明する図であって、ロアのサスペンションリンクLL、アッパのサスペンションリンクUL、ショックアブソーバSB、タイヤT、及びボールジョイントBJ等を示している。上記ジョイント部品J1は、少なくとも一方のサスペンションリンクLL(UL)に用いられる。
【0033】
自動車のサスペンションリンクリンクLLは、
図5(A)に示すように、タイヤTの中心線CtとボールジョイントBJによる操舵中心線CsとがタイヤTの接地面G上で交差するように、ボールジョイントBJを支持できることが望ましい。これにより、良好な操縦安定性を確保することができる。これに対して、
図5(B)に示すように、タイヤTの接地面G上において、タイヤTの中心線Ctと操舵中心線Csとがずれていると、走行時のハンドル操作が重くなる場合がある。
【0034】
図5(C)に要部を示す一般的なジョイント部品(サスペンションアーム)SAは、補強用のフランジFと、ボールジョイントBJの圧入部となる環状の突起Pとを有し、フランジFと突起Pとが離間している。この離間寸法は、例え僅かであっても、操舵中心線CsをタイヤTの接地面Gまで延長した場合に、操舵中心線CsとタイヤTの中心線Ctとのずれに大きく影響する。しかも、自動車の足回り部分には、ブレーキやスプラッシュガード等の各種機器が密集しているので、ジョイント部品SAの占有空間が小さく限られる。そこで、図示例のジョイント部品SAのように、端部のフランジFを除去すれば、突起Pの位置を端部に近づけることが可能になるが、その反面、フランジFによる端部の機械的強度が損なわれる。
【0035】
これに対して、本実施形態のサスペンションリンクLLは、
図2に示すジョイント部品J1のように、フランジ2と突起3とが離間せずに連続しているので、
図5(C)に示すジョイント部品SAに比べて、端部のフランジ2を除去することなく小型化を実現している。よって、上記のサスペンションリンクLLは、各種機器のレイアウトが厳しい足回り部分への適用に非常に効果的である。なお、この実施形態のジョイント部品J1は、フランジ2が本体1の外側に傾斜したものであるが、フランジ2と突起3とが離間していないので、従来品に比べて小型であることが明らかである。
【0036】
〈第2実施形態〉
図6~
図11は、本発明に関わるジョイント部品の製造方法及びジョイント部品の第2実施形態を説明する図である。なお、第2実施形態では、第1実施形態の構成と同一の部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0037】
図6及び
図7に要部を示すジョイント部品J2は、プレート状の本体1と、本体1の周縁部に沿って形成したフランジ2と、本体1の端部に形成した環状の突起3及びその内側の開口部4を有する。
【0038】
この実施形態におけるジョイント部品J2のフランジ2は、本体1の一方の主面側に垂直に突出している。突起3は、バーリング加工により形成したもので、本体1の一方の主面側、すなわちフランジ2の突出方向と同じ方向に突出している。
【0039】
そして、ジョイント部品J2は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いの基端部同士で折れ曲がり、且つ互いに本体1の主面に沿う方向に重なり合う状態に形成してある。つまり、ジョイント部品J2は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いに基端部同士で連続している。
【0040】
上記のジョイント部品J2の製造方法は、本体1の周縁部にフランジ2を成形し、
図8に示すように、本体1に予め形成した下穴に、予備バーリング加工用のポンチ41を圧入して、
図9にも示すように、フランジ2の基端部を起点として立ち上がる環状の傾斜片3Aを成形する。次いで、製造方法は、
図10に示すように、傾斜片3Aの先端側から、下穴に仕上げバーリング加工用のポンチ61を圧入し、
図11に示すように、傾斜片3Aをフランジ2に重なり合う突起3に成形する。
【0041】
ここで、
図8、
図10及び
図11は、上記のジョイント部品J2の製造方法に適用可能な成形装置の要部を説明する図である。
【0042】
図8に示す成形装置は、図外のプレス装置のボルスタ側(下側)に配置した固定型30と、プレス装置のスライド側(上側)に配置した可動型40とを備えている。
【0043】
可動型40は、予備バーリング加工用のポンチ41と、予備バーリング加工の際にジョイント部品J2の本体1を固定型30に押圧固定するためのパッド42とを備えている。パッド42は、図外のスライドとの間にリテーナや弾性体を介して吊下してあり、ポンチ41に先行して本体1を押圧固定する。
【0044】
固定型30は、予備バーリング加工用のポンチ41の先端部が突入する円形の凹部31を有すると共に、凹部31の内周に、ポンチ41との間で傾斜片3Aを形成するためのテーパ部32を有している。
【0045】
図10及び
図11に示す成形装置は、図外のプレス装置のボルスタ側(下側)に配置した固定型50と、プレス装置のスライド側(上側)に配置した可動型60とを備えている。
【0046】
可動型60は、仕上げバーリング加工用のポンチ61と、仕上げバーリング加工の際にジョイント部品J2の本体1を固定型50に押圧固定するためのパッド62とを備えている。パッド62は、図外のスライドとの間にリテーナや弾性体を介して吊下してあり、ポンチ61に先行して本体1を押圧固定する。固定型50は、仕上げバーリング加工用のポンチ61の先端部が突入する成形穴51を有している。
【0047】
次に、上記の各成形装置の動作とともにジョイント部品J2の製造方法を詳細に説明する。この実施形態のジョイント部品の製造方法では、予め、本体1に垂直なフランジ2と下穴が形成してある。そして、上記製造方法は、
図8に示すように、下穴に、予備バーリング加工用のポンチ41を圧入して、
図9にも示す環状の傾斜片3Aを成形する。
【0048】
より具体的には、上記製造方法は、
図8に示す成形装置の固定型30に、フランジ2が下向きになる姿勢で本体1を位置決めし、その後、スライドの下降に伴って、先行するパッド42で本体1を固定型30上に押圧固定する。続いて、上記製造方法は、固定型30の凹部31にポンチ41の先端部を突入させて、ポンチ41と固定型30のテーパ部32との間で傾斜片3Aを折り曲げ成形する。この際、フランジ2は、可動型40のパッド42と、固定型30におけるテーパ部32の頂部32Aとの間で固定されている。
【0049】
上記の傾斜片3Aの角度は、本体1に対して45度よりも大きい角度であることが望ましく、例えば、50度~70度の範囲であり、好適な例として60度である。
【0050】
次いで、上記製造方法は、
図10に示すように、傾斜片3Aの先端側から下穴に、仕上げバーリング加工用のポンチ61を圧入し、
図11に示すように、環状の傾斜片3Aをフランジ2に重なり合う環状の突起3に成形する。
【0051】
より具体的には、上記製造方法は、
図10に示す成形装置の固定型50に、傾斜片3Aを上向きにした姿勢で本体1を位置決めする。そして、成形装置は、
図10に示すように、先行するパッド62で本体1及びフランジ2を固定型50に押圧固定し、さらに、
図11に示すように、仕上げバーリング加工用のポンチ61を固定型50の成形穴51に突入させることにより、傾斜片3Aを拡開して突起3を折り曲げ形成する。
【0052】
これにより、上記製造方法は、
図6及び
図7に示すジョイント部品J2、すなわち、本体1と、フランジ2と、突起3及び開口部4とを有し、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が互いの基端部同士で折れ曲がり且つ互いに重なり合う状態に形成されたジョイント部品J2を製造する。
【0053】
ここで、上記製造方法では、予め本体1にフランジ2を形成しておき、予備バーリング加工により傾斜片3Aを成形し、その後、本体1の向きを上下反転させて、傾斜片3Aの先端側から仕上げバーリング加工を行って突起3を成形する。
【0054】
これは、フランジ2を有する本体1に、一回のバーリング加工で突起3を成形しようとすると、固定型50と可動型60との間でフランジ2の部分を充分に固定することが難しいからである。この場合、バーリング加工用ポンチの圧入に伴う大きな負荷により、フランジ2の肉がポンチ側に引き込まれ、フランジ2及び突起3を精度良く成形することが困難になる。
【0055】
これに対して、上記製造方法では、フランジ2を有する本体1に、予備バーリング加工を行って傾斜片3Aを成形する。これにより、
図8に示すように、可動型40のパッド42と固定型30におけるテーパ部32の頂部32Aとの間でフランジ2の部分を押圧固定することが可能になる。
【0056】
そして、上記製造方法では、
図10及び
図11に示す仕上げバーリング加工において、可動型60のパッド62と固定型50との間で、フランジ2を含む本体1を押圧固定する。これにより、上記製造方法では、フランジ2の肉がパッド62側に押し込まれるのを抑制しつつ、ポンチ61と成形穴51との間で、傾斜片3Aを突起3に仕上げる。
【0057】
上記製造方法により製造したジョイント部品J2は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いの基端部同士で折れ曲がり且つ重なり合う状態、すなわち、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いに離間せずに連続した状態である。これにより、ジョイント部品J2は、フランジ2及び突起3の距離を詰めた分だけ小型であると共に、フランジ2による機械的強度を確保している。
【0058】
このようにして、ジョイント部品の製造方法は、先の実施形態と同様に、本体1とフランジ2と突起3とを有するジョイント部品J2を製造するに際し、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたジョイント部品J2を得ることができる。すなわち、ジョイント部品J2は、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたものとなる。
【0059】
しかも、上記のジョイント部品J2は、フランジ2及び突起3が互いに折り合わせたように重なっているので、充分な機械的強度を確保したうえで、さらなる小型化を実現することができる。また、ジョイント部品J2は、先の実施形態と同様に、各種機器のレイアウトが厳しい自動車のサスペンション部分(足回り部分)への適用に非常に効果的である。
【0060】
〈第3実施形態〉
図12~
図15は、本発明に関わるジョイント部品の製造方法及びジョイント部品の第3実施形態を説明する図である。なお、第3実施形態では、第2実施形態の構成と同一の部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
図12及び
図13に要部を示すジョイント部品J3は、所定形状に曲成されたプレート状の本体1と、本体1の周縁部に沿って形成したフランジ2と、本体1の両端部に形成した環状の突起3及びその内側の開口部4を有する。
【0062】
ジョイント部品J3のフランジ2は、本体1の一方の主面側に垂直に突出している。突起3は、バーリング加工により形成したもので、本体1の一方の主面側、すなわちフランジ2の突出方向と同じ方向に突出している。ここで、第2実施形態の
図7で説明したジョイント部品J2は、フランジ2の高さと突部3の高さとの差が小さい構造である。これに対して、第3実施形態のジョイント部品J3は、突部3よりもフランジ2の方が明らかに高い構造である。
【0063】
そして、ジョイント部品J3は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いの基端部同士で折れ曲がり、且つ互いに本体1の主面に沿う方向に重なり合う状態に形成してある。つまり、ジョイント部品J3は、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が、互いに基端部同士で連続している。
【0064】
上記のジョイント部品J3の製造方法は、第2実施形態と同様に、本体1の周縁部にフランジ2を成形し、本体1に予め形成した下穴に、予備バーリング加工用のポンチを圧入して、フランジ2の基端部を起点として立ち上がる環状の傾斜片3Aを成形する。傾斜片3Aの成形は、第2実施形態の
図8に示すものと同等の成形装置で行うことができる。
【0065】
次に、製造方法は、第2実施形態と同様に、傾斜片3Aの先端側から、下穴に仕上げバーリング加工用のポンチを圧入し、傾斜片3Aをフランジ2に重なり合う突起3に成形する。このとき、第3実施形態の製造方法では、傾斜片3Aを突起3に成形する際、傾斜片3Aの近傍位置において本体1の材料の流れを抑制しながら下穴にポンチを圧入する。
【0066】
ここで、
図14は、上記のジョイント部品J3の製造方法に適用可能な成形装置の要部を説明する図である。
図14に示す成形装置は、図外のプレス装置のボルスタ側(下側)に配置した固定型50と、プレス装置のスライド側(上側)に配置した可動型60とを備えている。
【0067】
可動型60は、仕上げバーリング加工用のポンチ61と、仕上げバーリング加工の際にジョイント部品J2の本体1を固定型50に押圧固定するためのパッド62とを備えている。パッド62は、図外のスライドとの間にリテーナや弾性体を介して吊下してあり、ポンチ61に先行して本体1を押圧固定する。固定型50は、仕上げバーリング加工用のポンチ61の先端部が突入する成形穴51を有している。
【0068】
また、上記の成形装置は、傾斜片3Aの近傍位置において本体1の材料の流れを抑制するための拘束機構80を備えている。拘束機構80は、下穴を間にしてフランジ2の反対側に配置してあり、この実施形態では、パッド62の下面に設けた成形用凹部80Aと、固定型50の上面に設けた成形用凸部80Bとを備えている。成形用凹部80Aと成形用凸部80Bは、上下で相対向する位置に設けてある。
【0069】
上記の成形装置を用いた製造方法は、固定型50において、
図14中に仮想線で示す傾斜片3Aを上向きにした姿勢で本体1を位置決めする。そして、上記の製造方法は、先行するパッド62で本体1及びフランジ2を固定型50に押圧固定する。この際、上記の製造方法では、図中の矢印で示すように、拘束機構80、すなわちパッド62の成形用凹部80Aと固定型50の成形用凸部80Bとにより、本体1の一部をさらに加圧してビード1Aとして塑性変形させる。
【0070】
これにより、上記の製造方法は、本体1の材料が
図12及び
図13に示す方向に流れるのを抑制しながら、
図14中に実線で示すように、仕上げバーリング加工用のポンチ61を固定型50の成形穴51に突入させることにより、傾斜片3Aを拡開して突起3を折り曲げ形成する。
【0071】
ここで、例えば
図1に示すジョイント部品は、本体1において、反フランジ2側である突起3の近傍に隆起部Q,Qを有する。このようなジョイント部品は、第2及び第3の実施形態の製造方法、すなわち、予め形成した傾斜片を拡開して突起3を成形する製造方法において、突起3を成形する際、隆起部分Qにより本体1の材料の流れが抑制されるので、全体として高さが揃った精度の良い突起3を成形し得る。
【0072】
ところが、この実施形態のジョイント部品J3は、反フランジ2側となる突起3の近傍が平坦になっているので、突起3を成形する際に、仕上げバーリング加工用のポンチ61よる大きな加圧力により、
図12及び
図13の矢印並びに
図15中の点線矢印で示すように、本体1の材料が平坦部分に流れ、結果的に、突起3の高さが、フランジ2側で高く、反フランジ2側で低くなるように偏った形態になる。
【0073】
そこで、この実施形態の製造方法では、成形装置の拘束機構80により、
図15中に矢印で示す部分的な加圧により、突起3の近傍における本体1の材料が流れるのを抑制しながら、傾斜片3Aを拡開して突起3を折り曲げ形成することにより、全体として高さが揃った高精度の突起3を成形し得る。
【0074】
これにより、上記製造方法は、
図12及び
図13に示すジョイント部品J3、すなわち、本体1と、フランジ2と、突起3及び開口部4とを有し、フランジ2及び突起3の少なくとも一部が互いの基端部同士で折れ曲がり且つ互いに重なり合う状態に形成されたジョイント部品J3を製造する。
【0075】
このようにして、ジョイント部品の製造方法は、先の実施形態と同様に、本体1、フランジ2及び突起3を有するジョイント部品J3を製造するに際し、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたジョイント部品J3を得ることができる。すなわち、ジョイント部品J3は、バーリング加工の寸法精度を維持しつつ小型化と機械的強度とを両立させたものとなる。
【0076】
図16は、第3実施形態で説明した製造方法に適用可能な成形装置の他の例を示す図である。図示の成形装置は、
図14に示す成形装置と同様の基本構成と、傾斜片3Aの近傍位置において本体1の材料の流れを抑制するための拘束機構90を備えている。図示例の拘束機構90は、パッド60に形成した下方開口の収容空間90Aに、増圧用パッド90Bと、増圧用パッド90Bを下方に加圧する加圧体90Cとを収容した構造である。
【0077】
増圧用パッド90Bは、例えば、加圧体90Cがスプリング類である場合、パッド62よりも先行して、固定型50との間でジョイント部品J3の本体1の一部を加圧する。また、増圧用パッド90Bは、例えば、加圧体90Cがシリンダ類である場合、パッド62とともに下降し、加圧体90Cの作動により、固定型50との間でジョイント部品J3の本体1の一部を加圧する。
【0078】
なお、拘束機構90は、
図16中の拡大図に示すように、増圧用パッド90Bの下面、及び固定型50の上面における増圧用パッド90Bの対向領域の少なくとも一方に、摩擦抵抗を高めるための多数の凹凸等を有する接触面90Dを設けることができる。これにより、拘束機構90は、突起3の成形時において、本体1の材料の流れ抑制効果をより高めることが可能である。
【0079】
上記の成形装置を用いた製造方法においても、第3実施形態と同様に、拘束機構90により、
図16中に矢印で示す部分的な加圧により、突起3の近傍における本体1の材料が流れるのを抑制しながら、傾斜片3Aを拡開して突起3を折り曲げ形成することにより、全体として高さが揃った精度の良い突起3を成形し得る。
【0080】
なお、本発明に係わるジョイント部品の製造方法及びジョイント部品は、詳細な構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能であり、自動車のサスペンションリンク以外の部品にも当然適用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
J1,J2,J3 ジョイント部品
1 本体
2 フランジ
3 突起
3A 傾斜片
4 開口部
21 バーリング加工用のポンチ
41 予備バーリング加工用のポンチ
61 仕上げバーリング加工用のポンチ