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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両のサイドドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/20 20140101AFI20240905BHJP
   E05B 81/64 20140101ALI20240905BHJP
   E05B 85/10 20140101ALI20240905BHJP
   E05B 81/76 20140101ALI20240905BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240905BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E05B81/20 A
E05B81/64
E05B85/10
E05B81/76
E05B49/00 J
B60J5/00 N
B60J5/04 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020100859
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195746
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-013935(JP,A)
【文献】特開平07-082932(JP,A)
【文献】特開2013-151800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0277071(US,A1)
【文献】実開昭62-151371(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に出入りするための開口部を有する車体側部と、前記開口部を開閉するためのサイドドアと、前記開口部に配設されたストライカと、前記サイドドアに装備されて前記ストライカに係合するドアラッチ装置を有する車両のサイドドア開閉装置において、
前記サイドドアに隣接する前記車体側部部位を車室側に凹入させた凹部と、
前記凹部を覆い且つ前記凹部内に押し込み可能なカバー部材と、
前記カバー部材の押し込みを検知するカバースイッチと、
前記ドアラッチ装置を駆動するラッチ駆動モータと、
前記ドアラッチ装置が前記ストライカに係合したラッチ状態で、前記カバースイッチにより前記カバー部材の押し込みを検知したときに、前記ドアラッチ装置と前記ストライカの係合を解除したアンラッチ状態にするために前記ラッチ駆動モータを駆動させる制御装置を有することを特徴とする車両のサイドドア開閉装置。
【請求項2】
前記ラッチ状態は、前記サイドドアが完全に閉じたフルラッチ状態と、前記フルラッチ状態と前記アンラッチ状態の中間のハーフラッチ状態を含み、
前記制御装置は、前記ラッチ駆動モータの駆動が禁止されたロック状態と駆動が許可されたアンロック状態を切り替え、前記アンロック状態のときに前記アンラッチ状態にするために、前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態にするように、又は前記フルラッチ状態から前記ハーフラッチ状態にするように前記ラッチ駆動モータを駆動するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記車体側部の前記サイドドア後端に隣接する部位において前記開口部後縁に連なるように形成され、
前記カバー部材は、軸支された後部側を中心に回動して、前記サイドドア側が押し込まれるように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【請求項4】
前記サイドドア側が押し込まれた前記凹部に臨む前記サイドドア後端部に、車幅方向外側に引き寄せ操作されたときに前記ラッチ状態を前記アンラッチ状態にするためのドアハンドルを有することを特徴とする請求項3に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【請求項5】
前記サイドドア側が押し込まれた前記凹部に臨む前記サイドドア後端部に、車幅方向外側に引き寄せ操作されたときに前記ラッチ状態を前記アンラッチ状態にするためのドアハンドルを有し、
前記サイドドアは、前記ドアハンドルの引き寄せ操作を検知するドアハンドルスイッチを有し、
前記制御装置は、前記ハーフラッチ状態で前記ドアハンドルスイッチにより前記引き寄せ操作を検知したときに、前記アンラッチ状態にするように前記ラッチ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項2に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【請求項6】
前記ドアハンドルは、前記ドアラッチ装置に機械的に接続されたときに、機械的に前記アンラッチ状態にする操作が可能であることを特徴とする請求項4に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【請求項7】
前記サイドドアの外面部にキーを挿入するためのキーシリンダを有し、前記キーシリンダに挿入した前記キーの操作によって、前記ドアハンドルが前記ドアラッチ装置に機械的に接続されることを特徴とする請求項6に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【請求項8】
前記ラッチ駆動モータの前記ロック状態と前記アンロック状態を切り替える遠隔操作を行うための電子キー装置を有し、
前記制御装置は、前記ロック状態で前記カバー部材の押し込みを検知したときに、前記電子キー装置の認証コードの要求信号を送信し、前記要求信号を送信後に予め登録された前記電子キー装置の認証コードを受信した場合には、前記アンロック状態に切り替えて前記ラッチ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項2に記載の車両のサイドドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドドア開閉装置に関し、特に電動式のサイドドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両には、車室に出入りするために車体側部に開口部が設けられ、この開口部には開閉可能なサイドドアが装備されている。開口部にはストライカが配設され、サイドドアにはストライカに係合するドアラッチ装置が装備されている。ストライカとドアラッチ装置の係合によって、サイドドアが閉じた状態に維持される。
【0003】
閉じた状態のサイドドアを開くためには、ストライカとドアラッチ装置の係合を解除する操作が必要である。この操作を行うために、サイドドアの外面部にはアウターハンドルが装備され、サイドドアの車室側部分にはインナーハンドルが装備されている。また、サイドドアには、アウターハンドルの操作による上記の係合解除を禁止するためのドアロック装置が装備されている。
【0004】
ドアロック装置は、キーシリンダに挿入したキーを回すことによって上記係合解除の禁止と許可、即ちロック状態とアンロック状態が切り替えられる。また、車両からある程度離れた位置からもロック状態とアンロック状態を切り替える遠隔操作が可能なように、車両のドアロック装置との通信機能を備えた電子キー装置が広く利用されている。
【0005】
ところで、車両の空力性能の向上や防犯を目的として、また、デザイン的な要請によって、例えば特許文献1のようにサイドドアにアウターハンドルを設けない車両が提案されている。この車両は、ストライカとドアラッチ装置の係合に相当するオープンアクチュエータと車体の係合を、電子キー装置との通信によって解除してサイドドアを半開き状態にする。それ故、アウターハンドルが無くても半開き状態のサイドドアを手で開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平5-38832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のように電子キー装置による遠隔操作によって半開き状態にしたサイドドアは、風によって又は坂道駐停車時にサイドドア自体の重量によって、サイドドアが意図せず大きく開いてしまう虞がある。また、例えばバッテリが放電して電源喪失したバッテリ上がりの場合や、電気系統が断線した場合に、サイドドアにアウターハンドルが無いので車外からサイドドアを開くことが困難である。このように、サイドドアのアウターハンドルを省略するために解決すべき課題があった。
【0008】
本発明の目的は、アウターハンドルを備えていないサイドドアを安全に開閉することができる車両のサイドドア開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の車両のサイドドア開閉装置は、車室に出入りするための開口部を有する車体側部と、前記開口部を開閉するためのサイドドアと、前記開口部に配設されたストライカと、前記サイドドアに装備されて前記ストライカに係合するドアラッチ装置を有する車両のサイドドア開閉装置において、前記サイドドアに隣接する前記車体側部部位を車室側に凹入させた凹部と、前記凹部を覆い且つ前記凹部内に押し込み可能なカバー部材と、前記カバー部材の押し込みを検知するカバースイッチと、前記ドアラッチ装置を駆動するラッチ駆動モータと、前記ドアラッチ装置が前記ストライカに係合したラッチ状態で、前記カバースイッチにより前記カバー部材の押し込みを検知したときに、前記ドアラッチ装置と前記ストライカの係合を解除したアンラッチ状態にするために前記ラッチ駆動モータを駆動させる制御装置を有することを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、サイドドアではなく、サイドドアに隣接する車体側部部位に配設されたカバー部材を押し込むことにより、ドアラッチ装置とストライカとの係合を解除するようにラッチ駆動モータを駆動する。従って、カバー部材を押し込んでサイドドアを開くことができるので、サイドドアのアウターハンドルを省略することができ、空力性能の向上等を図ることができる。また、カバー部材がサイドドアに隣接するので、このカバー部材はアウターハンドルが無いサイドドアを開くためのものであることを想起させることができる。そして、開こうとするサイドドアに近寄ってカバー部材を押し込むので、風等によってサイドドアが意図せず大きく開くことを手等で防いで安全に開くことができる。
【0011】
請求項2の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項1の発明において、前記ラッチ状態は、前記サイドドアが完全に閉じたフルラッチ状態と、前記フルラッチ状態と前記アンラッチ状態の中間のハーフラッチ状態を含み、前記制御装置は、前記ラッチ駆動モータの駆動が禁止されたロック状態と駆動が許可されたアンロック状態を切り替え、前記アンロック状態のときに前記アンラッチ状態にするために、前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態にするように、又は前記フルラッチ状態から前記ハーフラッチ状態にするように前記ラッチ駆動モータを駆動するように構成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、アンロック状態のときにカバー部材の押し込みによってストライカとの係合を解除するようにラッチ駆動モータを駆動する。従って、アンロック状態ではカバー部材を押し込むことによってアウターハンドルが無いサイドドアを開くことが可能であり、ロック状態ではラッチ駆動モータの駆動が禁止され防犯性を確保することができる。ハーフラッチ状態は所謂半ドアの状態である。
【0012】
請求項3の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項1又は2の発明において、前記凹部は、前記車体側部の前記サイドドア後端に隣接する部位において前記開口部後縁に連なるように形成され、前記カバー部材は、軸支された後部側を中心に回動して前記サイドドア側が押し込まれるように構成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、サイドドア後端に隣接するように配設されたカバー部材は、アウターハンドルが無いサイドドアを開くためのものであることを想起させることができる。そして、カバー部材のサイドドア側が押し込まれると、ラッチ駆動モータの駆動によってサイドドアが車幅方向外側に移動するので、カバー部材に隣接するサイドドアの後端部に容易に手指をかけることができる。従って、意図せず大きく開くことを防いで、サイドドアを安全に開くことができる。
【0013】
請求項4の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項3の発明において、前記サイドドア側が押し込まれた前記凹部に臨む前記サイドドア後端部に、車幅方向外側に引き寄せ操作されたときに前記ラッチ状態を前記アンラッチ状態にするためのドアハンドルを有することを特徴としている。
上記構成によれば、カバー部材のサイドドア側を押し込んで手指をかけるサイドドアの後端部にドアハンドルが配設されているので、サイドドアを開く動作において自然にドアハンドルに触れることができる。従って、このドアハンドルがサイドドアを開くためのものであることを想起させることができる。また、ドアハンドルに触れてサイドドアを開く動作において自然に車幅方向外側に引き寄せる操作を行うことができる。
【0014】
請求項5の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項2の発明において、前記サイドドア側が押し込まれた前記凹部に臨む前記サイドドア後端部に、車幅方向外側に引き寄せ操作されたときに前記ラッチ状態を前記アンラッチ状態にするためのドアハンドルを有し、前記サイドドアは、前記ドアハンドルの引き寄せ操作を検知するドアハンドルスイッチを有し、前記制御装置は、前記ハーフラッチ状態で前記ドアハンドルスイッチにより前記引き寄せ操作を検知したときに、前記アンラッチ状態にするように前記ラッチ駆動モータを駆動することを特徴としている。
上記構成によれば、カバー部材のサイドドア側を押し込んでハーフラッチ状態にしたサイドドアを開く動作において、自然にサイドドアの後端部に手指をかけてドアハンドルを引き寄せ操作することができ、アンラッチ状態になったサイドドアを開くことができる。従って、意図せず大きく開くことを防いでサイドドアを安全に開くことができる。
【0015】
請求項6の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項4の発明において、前記ドアハンドルは、前記ドアラッチ装置に機械的に接続されたときに、機械的に前記アンラッチ状態にする操作が可能であることを特徴としている。
上記構成によれば、車両を長期間使用しなかったためロック状態でバッテリ上がりの状態になった場合に、ドアラッチ装置に機械的に接続されたドアハンドルの操作によって、機械的にアンラッチ状態にしてサイドドアを開くことができる。従って、電源喪失状態の非常時でも車外からサイドドアを開くことができる。
【0016】
請求項7の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項6の発明において、前記サイドドアの外面部にキーを挿入するためのキーシリンダを有し、前記キーシリンダに挿入した前記キーの操作によって、前記ドアハンドルが前記ドアラッチ装置に機械的に接続されることを特徴としている。
上記構成によれば、バッテリ上がりの状態になった場合に、車両固有のキーを使ってドアハンドルを機械的にドアラッチ装置に接続することができる。従って、ドアハンドルの操作によって機械的にアンラッチ状態にしてサイドドアを開くことができる。また、バッテリ上がりの状態では、ラッチ駆動モータを駆動できないのでロック状態が維持されて防犯性が維持され、車両固有のキーの所有者のみがサイドドアを開くことができる。
【0017】
請求項8の発明の車両のサイドドア開閉装置は、請求項2の発明において、前記ラッチ駆動モータの前記ロック状態と前記アンロック状態を切り替える遠隔操作を行うための電子キー装置を有し、前記制御装置は、前記ロック状態で前記カバー部材の押し込みを検知したときに、前記電子キー装置の認証コードの要求信号を送信し、前記要求信号を送信後に予め登録された前記電子キー装置の認証コードを受信した場合には、前記アンロック状態に切り替えて前記ラッチ駆動モータを駆動することを特徴としている。
上記構成によれば、ロック状態のサイドドアを、予め登録された電子キー装置の所有者のみが、カバー部材を押し込む操作によってアンロック状態にして開くことができる。従って、ロック状態からアンロック状態にする操作を省略してサイドドアを開くことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両のサイドドア開閉装置によれば、アウターハンドルを備えていないサイドドアを安全に開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両の右側面図である。
図2】右側のサイドドアを車室側から見た要部側面図である。
図3】右側のサイドドア後端部分の内部を車外側から見た要部斜視図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】アンラッチ状態の説明図である。
図6】ハーフラッチ状態の説明図である。
図7】フルラッチ状態の説明図である。
図8】凹部を車室側後方から見た斜視図である。
図9図1のIX-IX線断面図である。
図10図9のカバー部材及びドアハンドルの操作状態を示す断面図である。
図11】車両のサイドドア開閉装置の制御構成ブロック図である。
図12】ロック/アンロック動作を示す動作ブロック図である。
図13】アンロック時のアンラッチ動作を示す動作ブロック図である。
図14】ロック時のアンラッチ動作を示す動作ブロック図である。
図15】スライド式のサイドドアへの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両Vは、2ドアハードトップ型乗用車であり、左右1対のサッシュレスタイプのサイドドア1を備えている。この車両Vは、左右対称構造であるため、以下、右側部分を主に説明する。また、図において、矢印F方向は前方、矢印U方向は上方、矢印O方向は車幅方向外方を夫々示すものとして説明する。
【0022】
車両Vは、前後方向に延びるサイドシル2と、このサイドシル2から上方に立設されたたヒンジピラー3と、このヒンジピラー3の後方にてサイドシル2から上方に立設されたセンタピラー4と、ヒンジピラー3の上端部から上側後方に延びるフロントピラー5と、このフロントピラー5とセンタピラー4の上端部を連結するルーフサイドレール6等を有する。車室に出入りするための開口部7は、車体側部8において車体側骨格部材であるサイドシル2、ヒンジピラー3、センタピラー4、フロントピラー5、ルーフサイドレール6によって囲まれた領域に形成され、サイドドア1によって閉じられている。
【0023】
サイドドア1は、車室内からサイドドア1を開く操作を行うためのインナーハンドル9と、インナーハンドル9の操作を検知するための後述する図示外のインナーハンドルスイッチ9aを有する。また、車体側部8におけるサイドドア1の後端に隣接する部位には、この車体側部8の部位を開口部7の後縁に連なるように車幅方向内方(車室側)に凹入させて形成された凹部10を有し、この凹部10を覆うカバー部材11が装備されている。また、サイドドア1の外面部1aに、キーシリンダ16とドアロックスイッチ17を備えている。
【0024】
図2に示すように、サイドドア1の前側部分には上下1対のヒンジ12が締結固定されている。そして1対のヒンジ12がヒンジピラー3に締結固定され、サイドドア1が上下方向に延びるヒンジ12の回動軸回りに回動自在に支持されている。
【0025】
図2図4に示すようにサイドドア1の後端部には、開口部7の後縁部に配設されたストライカ14に係合するドアラッチ装置20が装備されている。サイドドア1が閉じられる際に、サイドドア1の後端部のドアラッチ開口部15からストライカ14を受け入れて、ドアラッチ装置20のラッチ21がストライカ14に係合する。例えばサイドドア1のインナーハンドル9の操作によってこの係合が解除されると、サイドドア1を開くことが可能になる。
【0026】
ドアラッチ装置20について、図3図7に基づいて説明する。
ドアラッチ装置20はサイドドア1の前後方向に軸心が延びるラッチ軸21aを中心に回動可能な略コ字状のラッチ21を有する。また、このラッチ21を回転させる電動のラッチ駆動モータ22を有する。サイドドア1が開いたアンラッチ状態では、ラッチ21がストライカ14を受け入れ可能な姿勢に維持されるように付勢され、サイドドア1を閉じる際には、略コ字状のラッチ21の開いた側からストライカ14が受け入れられる(図5参照)。
【0027】
ストライカ14を受け入れたラッチ21は、サイドドア1の車幅方向内側への移動によりストライカ14を押したときの反力によってラッチ軸21aを中心に回転して、ハーフラッチ状態(図6参照)を経てフルラッチ状態(図7参照)になり、サイドドア1が完全に閉じられる。
【0028】
閉じたサイドドア1は、例えばインナーハンドル9の操作によってラッチ駆動モータ22が駆動され、フルラッチ状態からアンラッチ状態になる方向にラッチ21が回転されると共にサイドドア1が車幅方向外側に移動してアンラッチ状態になる。アンラッチ状態のサイドドア1は、手で容易に開く。
【0029】
サイドドア1には、安全、防犯のために、閉じた状態のサイドドア1を開くことを禁止/許可するドアロック機構が装備されている。ドアロック機構は、例えばサイドドア1に装備されたドアロックスイッチ17の操作によって、サイドドア1を開くことが禁止されたロック状態とサイドドア1を開くことが許可されたアンロック状態が切り替えられるように構成されている。
【0030】
例えばラッチ駆動モータ22によって駆動されるウォームと、ラッチ軸21aを回転させるウォームホイールとでウォームギヤが構成されている。そして、ラッチ駆動モータ22の駆動によりラッチ軸21a及びラッチ21がフルラッチ状態からアンラッチ状態になる方向に回転される。一方、ラッチ21をフルラッチ状態からアンラッチ状態になる方向に回転させようとしても、ウォームギヤのセルフロックによって回転させることが困難であり、フルラッチ状態又はハーフラッチ状態のサイドドア1に車幅方向外側に力を加えてもサイドドア1は容易に開かない。
【0031】
ラッチ駆動モータ22を駆動しなければサイドドア1が開かないことを利用して、ドアロック機構は、ラッチ駆動モータ22の駆動を電気的に禁止することによりロック状態にする。アンロック状態では、ラッチ駆動モータ22を駆動可能であり、ロック状態とアンロック状態とが電気的に容易に切り替えられる。
【0032】
ハーフラッチ状態は、サイドドア1を閉じる際にサイドドア1の気密性を高めるウェザーストリップ13(図4参照)の弾力等によってフルラッチ状態にならない所謂半ドアの状態でも、安全のために容易にサイドドア1が開かないように設けられている。このハーフラッチ状態とフルラッチ状態が、ストライカ14にラッチ21が係合したラッチ状態である。尚、アンラッチ状態からハーフラッチ状態になった場合に、ラッチ駆動モータ22を駆動してラッチ21をフルラッチ状態にするよう回転させて安全性を高めてもよい。
【0033】
次に車体側部8の凹部10とカバー部材11について説明する。
図1図8図9図10に示すように、凹部10は、車体側部8におけるサイドドア1に隣接する部位に、開口部7の後縁に連なるように形成されている。例えば合成樹脂製のケース10aによって凹部10の車室側と天部の一部と底部の一部が区画され、合成樹脂製のケース10bによって凹部10の後部と天部の残部と底部の残部が区画されている。凹部10の車幅方向外側はカバー部材11によって覆われており、凹部10の前側は閉じたサイドドア1の後端部によって覆われる。
【0034】
ケース10aは、開口部7の後縁部に沿う開口カバー部10cと一体的に形成され、開口カバー部10cが開口部7の後縁部に例えば図示外の複数のプッシュリベット等により固定されている。ケース10bは、例えばセンタピラー4に固定された図示外のブラケットに締結固定される。
【0035】
カバー部材11は、走行時の車両側部8の気流の凹部10による乱れを抑制して車両Vの空力性能の向上を図ると共に、サイドドア1から車体側部8にわたって滑らかに連なる面を形成するデザイン的な要請によって、車体側部8及びサイドドア1との段差が小さくなるように形成されている。このカバー部材11は、カバー部材11の車幅方向内側面部を支持するカバー支持部11aと、カバー支持部11aの後部から後方に延びる1対のカバーアーム部11bと、カバー支持部11aの前部から車幅方向内方に円弧状に延びて先端部が折り曲げられた前壁部11cを有する。
【0036】
凹部10のケース10bの車幅方向外側後部には、1対のカバーアーム部11bに対応するように設けられたアーム挿通部10dを有する。1対のカバーアーム部11bは、対応するアーム挿通部10dに挿通されてケース10bの後方に延びている。ケース10bは、1対のカバーアーム部11bと平行状に設けられた1対のプレート部10eを後面に有する。そして、上下方向に延びるカバー軸部11dが、1対のカバーアーム部11bの後端部を連結するように挿通され、このカバー軸部11dの上下端部が、1対のプレート部10eに支持されている。これにより、ケース10bに対して、軸支されたカバー軸部11dを中心に、カバー部材11が回動可能に支持されている。
【0037】
前壁部11cは、カバー軸部11dを中心とする円筒に沿うように円弧状に形成されている。この前壁部11cは、カバー部材11が押し込まれてカバー軸部11dを中心に回転したときに、ケース10aとケース10bの間に形成されたスロット部10fを通ってケース10a,10bの後方に進出する(図10参照)。カバー軸部11dには、カバー部材11を車幅方向外方に付勢するスプリング11eが装備されている。前壁部11cの折り曲げられた先端部11fがケース10aの後端部に当接することによって、スプリング11eの付勢力によるカバー部材11の回転が規制される。これにより、カバー部材11の姿勢を、サイドドア1の外面部1a及び車体側部8と滑らかに連なる面を形成する姿勢に維持している(図9参照)。
【0038】
1対のプレート部10eの一方(例えば上側のプレート部)には、ロータリーダンパ10gが配設されている。ロータリーダンパ10gは、1対のカバーアーム部11bのうちの対応する上側のアーム部に設けられた図示外のセクター歯車に噛合ってカバー部材11の回動速度を調整し、カバー部材11の操作感や元の姿勢に戻るスピードを適切なものにしている。
【0039】
また、例えば1対のプレート部10eのうちの下側のプレート部には、カバースイッチ18が配設されている。図10に示すように、カバー部材11が凹部10内に押し込まれたときに、1対のカバーアーム部11bのうち下側のプレート部に対応する下側のカバーアームによって押されてカバースイッチ18がON状態になり、カバー部材11の押し込み操作が検知される。カバースイッチ18は、例えば押し込んだ深さによって2段階で押し込み操作を検知するスイッチであってもよい。
【0040】
カバー部材11が押し込まれてカバー軸部11dを中心に回転すると、カバー部材11の外面部が押し込んだ手指をサイドドア1の後端部に案内する姿勢になる。カバー部材11のサイドドア側が所定量以上押し込まれたとき(カバー部材11がカバー軸部11dを中心に所定角度以上回転したとき)にカバースイッチ18がON状態になる。尚、所定量は、カバー部材11に要求される操作感等に応じて適宜設定される。
【0041】
次にサイドドア1のドアハンドル30について説明する。
図2図3図9図10に示すように、サイドドア1の後端部の凹部10に臨む部位に、ドアラッチ装置20のラッチ21とストライカ14との係合を解除するためのドアハンドル30を有する。このドアハンドル30は、サイドドア1の外面部1aよりも車室側に配設され、サイドドア1を閉じた状態では車外及び車室内から視認することが困難である。
【0042】
サイドドア1の後端部の凹部10に臨む部位には、ドアハンドル30の収容ケース31が配設されている。ドアハンドル30は、収容ケース31に大部分が収容された本体部30aと、本体部30aから延びる上下1対のプレート部30bを有し、収容ケース31の前側部分の図示外の対応する挿通部に1対のプレート部30bが挿通されている。この1対のプレート部30bに対応するように、収容ケース31の前側部分には上下1対の支持部31aが設けられている。
【0043】
1対のプレート部30bを挿通するドアハンドル軸部30cの上下端部が1対の支持部31aに固定され、ドアハンドル30がドアハンドル軸部30cを中心に回動可能に支持されている。ドアハンドル軸部30cには、ドアハンドル30を車室側に向かって付勢するスプリング30dが装着されている。ドアハンドル30は、1対のプレート部30bのうちの上側のプレート部から車室側に延びるドアハンドルアーム部30eを有する。
【0044】
図10に示すように、ドアハンドル30が車幅方向外側(サイドドア1の外面部1a側)に引き寄せ操作されてドアハンドル軸部30cを中心に回転すると、ドアハンドルアーム部30eが後方に移動する。そして、このドアハンドルアーム部30eが、収容ケース31の車室側に配設されたドアハンドルスイッチ32を押し込んでスイッチONの状態になり、ドアハンドル30の引き寄せ操作が検知される。サイドドア1を開く動作の方向とドアハンドル30の引き寄せ操作の方向が同じなので、ドアハンドル30に手指をかけてサイドドア1を開く動作を行うと、自然にドアハンドル30の引き寄せ操作を行うことができる。
【0045】
図3,図9,図10に示すように、ドアハンドルアーム部30eには、ドアラッチ装置20のラッチ21を機械的にアンラッチ状態にする方向に回転させるためのケーブル33(ボーデンケーブル)の一端部が固定されている。ケーブル33の他端部がドアラッチ装置20内で機械的に接続された場合に、ドアハンドル30の引き寄せ操作によってケーブル33を介してドアラッチ装置20のラッチ21が機械的にアンラッチ方向に回転する。アンラッチ状態になったサイドドア1は、容易に開くことができる。尚、インナーハンドル9も、ドアラッチ装置20に機械的に接続された場合に、ラッチ21を機械的にアンラッチ状態にする方向に回転させるためのケーブル34を有する。
【0046】
ドアハンドル30は、通常、ドアラッチ装置20との機械的な接続が切断された状態である。電子キー装置19に備えられた車両固有のキー19aをキーシリンダ16に挿入して回す操作によって、又は衝突事故等により受けた一定以上の衝撃によって、ドアハンドル30がドアラッチ装置20に機械的に接続される。一定以上の衝撃とは、例えばエアバッグが作動する衝撃であり、図示外のアクチュエータにより瞬時に機械的に接続される。
【0047】
図11に示すように、車両のサイドドア開閉装置は、ラッチ駆動モータ22を制御する制御装置25を有する。この制御装置25は、車両Vに配設された送受信部26を介して車両Vの電子キー装置19と無線通信を行う。また、制御装置25には、予めこの車両Vに対応する電子キー装置19の認証コード等の識別情報が登録されている。制御装置25は、車両Vの制御ユニットと連携するように構成されていてもよく、車両Vの制御ユニットの一機能部として構成されていてもよい。電子キー装置19の識別情報は、車両Vを走行可能な状態にするため(例えばエンジンの始動等)にも使用される。電子キー装置19は、遠隔操作によりロック操作/アンロック操作を行うための図示外のロック操作スイッチ/アンロック操作スイッチを有する。
【0048】
制御装置25は、ドアロックスイッチ17,インナーハンドルスイッチ9a,カバースイッチ18,ドアハンドルスイッチ32により各操作を検知可能に構成されている。そして、制御装置25は、検知した操作に対応するようにラッチ駆動モータ22の駆動を制御する。
【0049】
例えば図12に示すように、サイドドア1がロック状態のときに、カバースイッチ18によってカバー部材11の押し込み操作を検知した場合、又はドアロックスイッチ17の操作を検知した場合に、車両Vの近くにある電子キー装置19が予め登録されているものであると確認されると、車両Vの両側のサイドドア1をアンロック状態に切り替える。また、電子キー装置19のアンロック操作を受信した場合に、この電子キー装置19が予め登録されているものであると確認されると、車両Vの両側のサイドドア1をアンロック状態にする。
【0050】
この登録の確認は、操作を検知又は受信した制御装置25から送受信部26を介して例えば認証コードの要求信号を発信し、送受信部26を介して受信した電子キー装置19からの応答を予め登録されている電子キー装置19の認証コードと照合して行う。予め登録されている電子キー装置19を確認できなかった場合(登録されている認証コードと一致しなかった場合や認証コードを受信しなかった場合)には、制御装置25はロック状態を維持する。
【0051】
閉じたサイドドア1がアンロック状態のときに、ドアロックスイッチ17の操作を検知した場合、車両Vの近くにある電子キー装置19が予め登録されているものであると確認されると車両Vの両側のサイドドア1がロック状態になる。また、閉じたサイドドア1がアンロック状態のときに、電子キー装置19のアンロック操作を受信した場合に、この電子キー装置19が予め登録されているものであると確認されると、車両Vの両側のサイドドア1がロック状態になる。車室内から図示外のロックスイッチの操作を検知した場合には、運転席に隣接するサイドドア1のロックスイッチの操作であれば全サイドドア1がロック状態になり、それ以外のサイドドア1のロックスイッチの操作であればこのサイドドア1がロック状態になる。
【0052】
アンロック状態のサイドドア1を車室内の乗員が開く場合には、制御装置25がインナーハンドルスイッチ9aによってインナーハンドル9の操作を検知すると、操作されたサイドドア1のラッチ駆動モータ22を駆動してアンラッチ状態にする。この車両のサイドドア開閉装置による車外からサイドドア1を開く動作について、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0053】
図13に示すように、アンロック状態のサイドドア1が閉じられた状態でカバー部材11の押し込み操作を検知すると、制御装置25は操作されたカバー部材11側のサイドドア1のラッチ駆動モータ22を駆動してアンラッチ(A)の状態にする。アンラッチ状態のサイドドア1は、車幅方向外側に移動してサイドドア1に手指をかけ易くなり、サイドドア1を容易に開くことができる。サイドドア1を開く者は、カバー部材11の操作のためにサイドドア1に近寄っているので、強風時や坂道停車時にサイドドア1が大きく開いてしまうことを防いで安全に開くことができる。
【実施例2】
【0054】
図13に示すように、アンロック状態のサイドドア1が閉じられた状態でカバー部材11の押し込み操作を検知すると、制御装置25がラッチ駆動モータ22を駆動してハーフラッチ状態にする。ハーフラッチ状態のサイドドア1は、車幅方向外側に移動してサイドドア1の後端部に手指をかけ易くなる。サイドドア1の後端部に手指をかけるとドアハンドル30に触れることができ、ドアハンドル30を引き寄せ操作可能になる。
【0055】
サイドドア1を開く動作によって自然にドアハンドル30が引き寄せ操作され、ドアハンドルスイッチ32により引き寄せ操作を検知すると、制御装置25がラッチ駆動モータ22を駆動してアンラッチ(B)の状態にする。また、ハーフラッチ状態からアンラッチ状態にするためにサイドドア1に触れることになるので、強風時や坂道停車時にサイドドア1が大きく開いてしまうことを防いで安全に開くことができる。
【実施例3】
【0056】
図13に示すように、アンロック状態のサイドドア1が閉じられた状態でカバー部材11の押し込み操作を検知すると、制御装置25はラッチ駆動モータ22を駆動してハーフラッチ状態にして一旦停止する。そして、カバー部材11の追加操作として例えば長押し操作又はさらに深い押し込み操作を検知すると、制御装置25はラッチ駆動モータ22を駆動してアンラッチ(C)の状態にする。ハーフラッチ状態で一旦ラッチ駆動モータ22の駆動を停止するので、サイドドア1を開く準備を促すことができ、強風時や坂道停車時にサイドドア1が大きく開いてしまうことを防いで安全に開くことができる。
【実施例4】
【0057】
図14に示すように、閉じられたロック状態のサイドドア1を開くため、制御装置25はカバー部材11の押し込み操作を検知した場合には、車両Vの近くにある電子キー装置19が予め登録されているものであると確認されると、車両Vの両側のサイドドア1をアンロック状態にする。そして、操作されたカバー部材11側のサイドドア1のラッチ駆動モータ22を駆動し、上記実施例1~3の何れか1つと同様にしてアンラッチ(A),(B),(C)の何れか1つのアンラッチ状態にする。ロック解除動作を省いてサイドドア1を開く動作が簡略化される。
【0058】
一方、予め登録されているキー装置19を確認できなかった場合には、制御装置25はサイドドア1のロック状態を維持する。ロック状態では、ドアラッチ駆動モータ22の駆動が禁止されているので、カバー部材11の押し込みやドアハンドル30の操作があってもアンラッチ状態にならず、サイドドア1を開くことはできない。従って、予め登録されている電子キー装置19を所持する者のみがロック状態のサイドドア1を開くことができるので、防犯性が確保される。
【実施例5】
【0059】
車両Vを例えばサイドドア1のロック状態のまま長期間放置して車両Vに搭載されているバッテリ上がりの状態になった場合(電源喪失時)には、ラッチ駆動モータ22の駆動、カバー部材11の押し込みの検知、登録された電子キー装置19の確認等ができず、サイドドア1を開くことができない。それ故、電源喪失時には、ロック状態のまま、機械的にサイドドア1を開く仕組みを有する。
【0060】
サイドドア1のキーシリンダ16に車両固有のキー19a(電子キー装置19に装備されたキー19a)を差し込み(図9参照)、この差し込んだキー19aを所定の方向に回す操作によってドアハンドル30及びインナーハンドル9をラッチ装置20に機械的に接続する。そして、カバー部材11を押し込んでドアハンドル30を引き寄せ操作することにより(図10参照)、ケーブル33を介してラッチ21をフルラッチ状態からアンラッチ状態になる方向に機械的に回転させて、アンラッチ状態にする。
【0061】
キーシリンダ16に差し込んだキー19aを上記所定の方向と反対方向に回す操作によって、ドアハンドル1及びインナーハンドル9とラッチ装置20の機械的な接続を切断する。これにより、電源喪失時には車両固有のキー19aを所持する者のみがサイドドア1を開くことができ、防犯性が確保される。
【実施例6】
【0062】
車両Vが他車等に衝突して一定以上の衝撃を検知した場合には、ドアハンドル30及びインナーハンドル9のケーブル33,34がドアラッチ装置20に機械的に接続される。乗員が車外に出るためにインナーハンドル9を操作した場合には、ラッチ21が機械的に回転し、アンラッチ状態になったサイドドア1を開くことができる。
【0063】
車外から車両Vの乗員を救出するためにサイドドア1を開く場合には、サイドドア1にこのサイドドア1を開くためのアウターハンドルが無いので、開き方がわからない虞がある。しかし、サイドドア1の後端に隣接する部位にカバー部材11が配設されているので、カバー部材11がサイドドア1を開くためのものであることが想起される。そして、カバー部材11に触れてカバー部材11を押し込み可能であると分かると、カバー部材11が押し込まれる。
【0064】
カバー部材11はサイドドア1側が押し込まれるので、カバー部材11を押し込む手指がカバー部材11の外面部によってサイドドア1の後端部に案内され、ドアハンドル30の存在を気づかせる。そして、ドアハンドル30の操作により上記実施例4と同様にラッチ21が機械的に回転し、アンラッチ状態になったサイドドア1を開くことができる。
【0065】
上記実施形態の車両のサイドドア開閉装置の作用、効果について説明する。
サイドドア1ではなく、車体側部8のサイドドア1に隣接する部位に配設されたカバー部材11を押し込むことにより、制御装置25はストライカ14との係合を解除するようにラッチ駆動モータ22を駆動する。カバー部材11を押し込んでサイドドア1を開くことができるので、サイドドア1のアウターハンドルを省略してアウターハンドルによる気流の乱れを無くすと共に、カバー部材11によって凹部10による気流の乱れを抑制して空力性能の向上等を図ることができる。
【0066】
また、カバー部材11がサイドドア1に隣接するので、アウターハンドルが無いサイドドア1であってもカバー部材11がサイドドア1を開くためのものであることを想起させることができる。そして、開こうとするサイドドア1に近寄ってカバー部材11を押し込む操作をするので、風等によってサイドドア1が意図せず大きく開くことを手等により防いで安全に開くことができる。
【0067】
制御装置25は、アンロック状態のときにアンラッチ状態にするために、ラッチ状態からアンラッチ状態にするように、又はフルラッチ状態からハーフラッチ状態にするようにラッチ駆動モータ22を駆動する。従って、アンロック状態ではカバー部材11を押し込むことによってアウターハンドルが無いサイドドア1を開くことができる。また、ロック状態ではラッチ駆動モータ22の駆動が禁止され防犯性を確保することができる。
【0068】
また、カバー部材11が、サイドドア1の後端に隣接するように配設されているので、アウターハンドルが無いサイドドア1であっても、カバー部材11がサイドドア1を開くためのものであることを想起させることができる。そして、カバー部材11のサイドドア1側が押し込まれると、ラッチ駆動モータ22の駆動によってサイドドア1が車幅方向外側に移動し、カバー部材11側のサイドドア1の後端部に容易に手指をかけることができる。従って、風等によってサイドドア1が意図せず大きく開くことを手等で防いでサイドドア1を安全に開くことができる。
【0069】
その上、カバー部材11のサイドドア1側を押し込んで手指をかけるサイドドア1の後端部にドアハンドル30が配設されているので、サイドドア1を開く動作において自然にドアハンドル30に触れることができる。従って、このドアハンドル30がサイドドア1を開くためのものであることを想起させることができ、サイドドア1を開く動作においてドアハンドル30に触れて自然に車幅方向外側に引き寄せる操作を行うことができる。
【0070】
制御装置25は、ハーフラッチ状態でドアハンドルスイッチ32により引き寄せ操作を検知したときに、アンラッチ状態にするようにラッチ駆動モータ22を駆動する。カバー部材11のサイドドア1側を押し込んでハーフラッチ状態にしたサイドドア1を開く動作において、自然にサイドドア1の後端部に手指をかけてドアハンドル30を引き寄せ操作することができ、アンラッチ状態にしてサイドドア1を開くことができる。従って、風等によってサイドドア1が意図せず大きく開くことを手等で防いでサイドドア1を安全に開くことができる。
【0071】
ドアハンドル30は、ドアラッチ装置20に機械的に接続されたときに、機械的にアンラッチ状態にする操作が可能である。これにより、車両Vを長期間使用しなかったためロック状態でバッテリ上がりの状態になった場合に、機械的にアンラッチ状態にしてサイドドア1を開くことができる。従って、電源喪失状態の非常時でも車外からサイドドア1を開くことができる。
【0072】
また、バッテリ上がりの状態になった場合に、車両固有のキー19aを使ってドアハンドル30を機械的にドアラッチ装置20に接続することができる。これにより、ドアハンドル30の引き寄せ操作によって機械的にアンラッチ状態にしてサイドドア1を開くことができる。バッテリ上がりの状態では、ラッチ駆動モータ22を駆動できないのでロック状態が維持されて防犯性が確保され、車両固有のキー19aの所有者のみがアウターハンドルが無いサイドドア1を開くことができる。
【0073】
制御装置25は、ロック状態でカバー部材11の押し込みを検知したときに、予め登録された電子キー装置19の認証コードの要求信号を送信する。そして、制御装置25は、要求信号を送信後に予め登録された電子キー装置19を確認した場合には、アンロック状態に切り替えてラッチ駆動モータ22を駆動する。予め登録された電子キー装置19の所持者のみが、ロック状態のサイドドア1をカバー部材11の押し込み操作によってアンロック状態にして開くことができる。従って、ロック状態からアンロック状態にする操作を省略してサイドドア1を開くことができる。
【0074】
上記実施形態では、予め登録された電子キー装置19の確認をロック状態でカバー部材11の押し込みを検知したときに車両V側から送信される認証コードの要求信号に対する返信信号で行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定周期で電子キー装置19から送信される認証コードの受信確認や、カバー部材11の押し込みの検知によらずに車両V側から送信される認証コードの要求信号に対する電子キー装置19からの返信信号で確認してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、車両側部にヒンジ11を介して取り付けられたサイドドア1について説明したが、本発明の車両のサイドドア開閉装置は、後方に移動して開くスライド式のサイドドア1Aに適用することもできる(図15参照)。この場合、車体側部におけるスライド式のサイドドア1Aの前端部に隣接する部位(例えばセンタピラー部)に凹部10Aを設け、この凹部10Aを覆うカバー部材11Aのサイドドア1A側(後側)が押し込まれるように構成する。空力特性の向上等に寄与すると共に、坂道駐停車時にサイドドア1Aの自重で勢いよく開くことを防止できる。アンラッチ状態になったらドアスライド用モータを駆動してスライド式のサイドドア1Aを自動的に開くようにしてもよい。
【0076】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0077】
1,1A:サイドドア
1a :外面部
2 :サイドシル
3 :ヒンジピラー
4 :センタピラー
5 :フロントピラー
6 :ルーフサイドレール
7 :開口部
8 :車体側部
9 :インナーハンドル
10,10A:凹部
10a,10b:ケース
11,11A:カバー部材
12 :ヒンジ
14 :ストライカ
15 :ドアラッチ開口部
16 :キーシリンダ
17 :ドアロックスイッチ
18 :カバースイッチ
19 :電子キー装置
19a :キー
20 :ドアラッチ装置
21 :ラッチ
22 :ラッチ駆動モータ
25 :制御装置
30 :ドアハンドル
31 :収容ケース
32 :ドアハンドルスイッチ
33,34:ケーブル
V :車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15