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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用バッテリパック周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240905BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240905BHJP
【FI】
B62D25/20 E
B60K1/04
B62D25/20 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021047027
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146193
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】高市 皓太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綱一郎
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-83599(JP,A)
【文献】特開2019-38467(JP,A)
【文献】特開2013-107541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアを構成するフロア組立体と、
前記フロア組立体の下方に位置するバッテリパックと、
前記バッテリパックを前記フロア組立体に取り付けるように構成されるブラケットと、
前記バッテリパックを下方から覆うアンダーカバーと
を備え、
前記フロア組立体が、それに沿って車両幅方向に延びるクロスメンバを有し、
前記ブラケットが、前記バッテリパック及び前記クロスメンバに取り付けられている、車両用バッテリパック周辺構造であって、
前記クロスメンバ及び前記ブラケットが、前記バッテリパックの車両前後方向の前端よりも車両前方寄りに配置され、
前記アンダーカバーが、前方パネルと、前記前方パネルよりも車両後方寄りに位置する後方パネルとを有し、
前記前方パネルの車両前後方向の後端領域と前記後方パネルの車両前後方向の前端領域とを結合した結合領域が形成され、
前記バッテリパック及び前記ブラケットを互いに固定した固定領域が、前記結合領域よりも車両後方寄りに位置している、車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項2】
前記フロア組立体が、その車両幅方向の中央に位置するフロアトンネルを有し、
前記フロアトンネルが、上方に膨出し、かつ車両前後方向に延びるように形成され、
前記クロスメンバが、前記フロアトンネルと交差するように配置され、
前記ブラケットが、前記バッテリパックを車両前方及び車両幅方向の外方から覆うように配置されている、請求項1に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項3】
前記固定領域が、前記バッテリパックの下方領域及び前記ブラケットを互いに固定した下方固定部を含む、請求項1又は2に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項4】
前記バッテリパックが、その車両幅方向の側方端に位置する側方壁と、前記バッテリパックの下端に位置する底壁とを有し、
前記ブラケットが、前記バッテリパックの側方壁と対向する側方部と、前記バッテリパックの底壁と対向する底部とを有し、
前記固定領域が、前記バッテリパックの側方壁及び前記ブラケットの側方部を互いに固定した側方固定区域と、前記バッテリパックの底壁及び前記ブラケットの底部を互いに固定した底固定区域とを有し、
前記ブラケットの側方部及び底部を互いに連結した側方連結部が、前記バッテリパックの側方壁と間隔を空けるように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項5】
前記ブラケットに対して下方かつ車両幅方向に沿って配置されるバー部材と、
前記バー部材を前記ブラケットに取り付けるように構成される取付部材と
を備え、
前記取付部材が、上下方向にて前記ブラケット及び前記バー部材の間に挟まれた状態で前記ブラケット及び前記バー部材に固定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアを構成するフロア組立体と、フロア組立体の下方に位置するバッテリパックと、バッテリパックを下方から覆うアンダーカバーとを有する車両用バッテリパック周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを用いて走行駆動可能となるように構成される車両、例えば、電気自動車等においては、モータに電力を供給するバッテリパックが設けられる。バッテリパックは、多くの場合、フロア組立体の下方に配置され、かつフロア組立体に取り付けられている。
【0003】
このような車両は、典型的には、バッテリパックを保護するためにバッテリパックを下方から覆うアンダーカバーを有している。アンダーカバーは、その製造効率、その強度等を考慮して、前方パネルと、この前方パネルよりも車両後方寄りに位置する後方パネルとを接続するように構成されることがある。そして、このようなバッテリパックをフロア組立体によって安定的に支持可能とし、かつバッテリパックをアンダーカバーによって効率的に保護可能とする様々な車両用バッテリパック周辺構造が提案されている。
【0004】
車両用バッテリパック周辺構造の一例としては、1つのアンダーカバーが、互いに二分割された前半部(前方パネル)と後半部(後方パネル)とを接続するように構成され、前半部と後半部との接続部がバッテリユニット(バッテリパック)の下方を通過するように配置されており、さらに、バッテリユニットの前端部に一対の前側支持部材が設けられ、一対の前側支持部材が、車体の幅方向に延びるクロスメンバに固定されている、車両用バッテリパック周辺構造が挙げられる。(例えば、特許文献1、特に、その段落[0020]~段落[0025]、図1、及び図2を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-147070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、車両の車輪、特に、前輪によって跳ね上げられた小石、泥水等の異物、又は車両によって乗り上げられる歩道の段差、縁石、車止め等の障害物は、車両の前方かつ下方からアンダーカバーに向かって衝突する傾向にある。そして、上記車両用バッテリパック周辺構造の一例においては、アンダーカバーの前方パネル及び後半パネルの接続部がバッテリパックの下方を通過するように配置されており、前方パネルは、バッテリパックよりも前方の位置からバッテリパックの車両前後方向の中間までの範囲で略平坦に延びるに過ぎない。さらに、前方パネルの後方領域は、車両前後方向にてバッテリパックの前方領域とオーバーラップしており、前方パネルの後方領域は、バッテリパックの前方領域に接近している。
【0007】
そのため、上記車両用バッテリパック周辺構造の一例において、略平坦な前方パネルは、上述のような異物又は障害物の衝突に起因する衝撃を十分に吸収できない。さらに、前方パネルの前方領域に加えられた衝撃は、前方パネルの後方領域を経由してバッテリパックの前方領域に伝わるおそれがある。この場合、アンダーカバーが、バッテリパックを十分に保護できないおそれもある。さらに、アンダーカバーへの異物又は障害物の衝突によって、乗員にとって不快な騒音がアンダーカバーを中心に発生するおそれがある。
【0008】
また、上記車両用バッテリパック周辺構造の一例において、バッテリパックは、その前端部に設けられる一対の前側支持部材によってクロスメンバに取り付けられるに過ぎない。そのため、バッテリパックのクロスメンバへの取付が、上述のように車両の前方かつ下方からアンダーカバーに向かって衝突する異物又は障害物からの衝撃に対して十分に保護されないおそれがある。そのため、バッテリパックを安定的に支持できないおそれがある。
【0009】
このような実情を鑑みると、車両用バッテリパック周辺構造においては、バッテリパックを効率的に保護すること、バッテリパックを安定的に支持することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、一態様に係る車両用バッテリパック周辺構造は、車両のフロアを構成するフロア組立体と、前記フロア組立体の下方に位置するバッテリパックと、前記バッテリパックを前記フロア組立体に取り付けるように構成されるブラケットと、前記バッテリパックを下方から覆うアンダーカバーとを備え、前記フロア組立体が、それに沿って車両幅方向に延びるクロスメンバを有し、前記ブラケットが、前記バッテリパック及び前記クロスメンバに取り付けられている、車両用バッテリパック周辺構造であって、前記クロスメンバ及び前記ブラケットが、前記バッテリパックの車両前後方向の前端よりも車両前方寄りに配置され、前記アンダーカバーが、前方パネルと、前記前方パネルよりも車両後方寄りに位置する後方パネルとを有し、前記前方パネルの車両前後方向の後端領域と前記後方パネルの車両前後方向の前端領域とを結合した結合領域が形成され、前記バッテリパック及び前記ブラケットを互いに固定した固定領域が、前記結合領域よりも車両後方寄りに位置している。
【発明の効果】
【0011】
一態様に係る車両用バッテリパック周辺構造においては、バッテリパックを効率的に保護することができ、バッテリパックを安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造を有する車両を、そのバッテリパック及びアンダーカバーを分解した状態で概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造を概略的に示す底面図である。
図3図3は、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造を、アンダーカバーを取り外した状態で概略的に示す底面図である。
図4図4は、図2のX-X線断面図である。
図5図5は、図2のY-Y線断面図である。
図6図6は、図2のZ-Z線断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造のブラケット及びその周辺部分を、アンダーカバーを取り外した状態で概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造について、それを設けた車両と共に説明する。本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造(以下、必要に応じて、単に「バッテリパック周辺構造」という)を設けた車両は、電気自動車となっている。しかしながら、車両は、バッテリパック周辺構造を設けることができる電気自動車以外の電動車両とすることもできる。
【0014】
本明細書中の説明に用いられる図1図7においては、車両を基準とした方向を次のように示す。図1図4図6、及び図7においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。図1図3図5、及び図7においては、車両前方を向いた場合の左方及び右方を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。車両幅方向は、片側矢印L及び片側矢印Rによって示される。さらに、図1及び図4図7においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。
【0015】
なお、左方及び右方は、それぞれ車両前方を向いた場合の左方及び右方を指すものとする。水平方向は、車両の前後方向及び幅方向に沿った方向を指すものとする。車両上方及び車両下方を、場合によっては、それぞれ単に上方及び下方と呼ぶ。
【0016】
「車両用アンダーカバー構造の概略」
図1図7を参照して、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1について説明する。すなわち、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1は、概略的には以下のように構成される。図1に示すように、車両用バッテリパック周辺構造1は、車両に設けられる。
【0017】
図1図7に示すように、車両用バッテリパック周辺構造1は、車両のフロア2を構成するフロア組立体10を有する。図1及び図3図6に示すように、バッテリパック周辺構造1は、フロア組立体10の下方に位置するバッテリパック20を有する。
【0018】
図2図3図6、及び図7に示すように、バッテリパック周辺構造1は、バッテリパック20をフロア組立体10に取り付けるように構成されるブラケット30を有する。ここで、本実施形態に係るバッテリパック周辺構造1は、車両幅方向に互いに間隔を空けた2つのブラケット30を有する。なお、バッテリパック周辺構造は、2つのブラケットのいずれか一方のみを有することもできる。
【0019】
言い換えれば、本実施形態に係るバッテリパック周辺構造1は、車両幅方向にて左右一対のブラケット30を有する。これら2つのブラケット30は、車両幅方向にて略対称に形成されている。以下においては、特に言及しない限り、2つのブラケット30の一方及びその周辺部分のみについて説明する。
【0020】
図1図2、及び図4図6に示すように、バッテリパック周辺構造1は、バッテリパック20を下方から覆うアンダーカバー40を有する。図3図6に示すように、フロア組立体10は、それに沿って車両幅方向に延びるクロスメンバ11を有する。図6に示すように、ブラケット30は、バッテリパック20及びクロスメンバ11に取り付けられている。クロスメンバ11及びブラケット30は、バッテリパック20の車両前後方向の前端よりも車両前方寄りに配置されている。
【0021】
図1図2図4、及び図6に示すように、アンダーカバー40は、前方パネル50と、この前方パネル50よりも車両後方寄りに位置する後方パネル60とを有する。前方パネル50の車両前後方向の後端領域51と後方パネル60の車両前後方向の前端領域61とを結合した結合領域41が形成されている。図6に示すように、バッテリパック20及びブラケット30を互いに固定した固定領域70が、結合領域41よりも車両後方寄りに位置している。
【0022】
さらに、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1は、概略的には以下のように構成することができる。図3図6に示すように、フロア組立体10は、その車両幅方向の略中央に位置するフロアトンネル12を有する。フロアトンネル12は、上方に膨出し、かつ車両前後方向に延びるように形成されている。クロスメンバ11は、フロアトンネル12と交差するように配置される。
【0023】
図7に示すように、ブラケット30は、バッテリパック20を車両前方及び車両幅方向の外方から覆うように配置されている。上記固定領域70は、バッテリパック20の下方領域21及びブラケット30を互いに固定した下方固定部71を含む。
【0024】
バッテリパック20は、その車両幅方向の側方端に位置する側方壁22を有する。バッテリパック20は、その下端に位置する底壁23を有する。ブラケット30は、バッテリパック20の側方壁22と対向する側方部31を有する。ブラケット30は、バッテリパック20の底壁23と対向する底部32を有する。
【0025】
固定領域70は、バッテリパック20の側方壁22及びブラケット30の側方部31を互いに固定した側方固定区域72を有する。固定領域70は、バッテリパック20の底壁23及びブラケット30の底部32を互いに固定した底固定区域73を有する。特に、固定領域70の下方固定部71が、側方固定区域72及び底固定区域73を含むことができる。
【0026】
ブラケット30は、その側方部31及び底部32を互いに連結した側方連結部33を有する。この側方連結部33が、バッテリパック20の側方壁22と間隔を空けるように配置されている。
【0027】
図2図4図6、及び図7に示すように、バッテリパック周辺構造1は、ブラケット30に対して下方かつ車両幅方向に沿って配置されるバー部材80を有する。バッテリパック周辺構造1は、バー部材80をブラケット30に取り付けるように構成される取付部材90を有する。取付部材90は、上下方向にてブラケット30及びバー部材80の間に挟まれた状態でブラケット30及びバー部材80に固定されている。
【0028】
「フロア組立体の詳細」
図3図6を参照すると、フロア組立体10は、詳細には以下のように構成することができる。フロア組立体10は、フロアトンネル12に対して車両幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つのフロアパネル13を有する。クロスメンバ11は、フロアトンネル12及び2つのフロアパネル13の下方に配置されている。
【0029】
特に図3に示すように、フロア組立体10は、車両幅方向に互いに間隔を空けた2つのサイドメンバ14を有する。各サイドメンバ14は、前後方向に沿って配置される。クロスメンバ11は、これら2つのサイドメンバ14を連結するように車両幅方向に延びる。
【0030】
特に図5に示すように、フロアトンネル12は、略ハット形状の横断面を有するように形成される。フロアトンネル12は、その上端に位置する頂面部12aを有する。フロアトンネル12は、それぞれ頂面部12aの車両幅方向の両側方端から下方に延びる2つの側面部12bを有する。2つの側面部12bは、上方から下方に向かうに従って2つの側面部12bの間隔を広げるように形成される。フロアトンネル12は、それぞれ2つの側面部12bの下端から車両幅方向の両側方に向かって突出する2つのフランジ部12cを有する。
【0031】
図4に示すように、クロスメンバ11は、車両前後方向にてアンダーカバー40の結合領域41とオーバーラップするように位置する。図3図5を参照すると、クロスメンバ11は、フロアトンネル12と上下方向に当接し、かつフロアトンネル12に溶接によって接合されている。図5及び図6を参照すると、クロスメンバ11はまた、2つのフロアパネル13と上下方向に当接し、かつそれぞれ2つのフロアパネル13に溶接によって接合されている。しかしながら、これらの接合は、溶接以外の接合手段によってもたらすこともできる。
【0032】
「バッテリパックの詳細」
図1及び図3図7を参照すると、バッテリパック20は、詳細には以下のように構成することができる。バッテリパック20は、車両の走行駆動に用いられるモータ(図示せず)に電力を供給可能とするように構成される。さらに、バッテリパック20は充電可能に構成される。
【0033】
図3図5、及び図7に示すように、バッテリパック20は、その外部への電力の供給及びバッテリパック20の外部からの電力の受給を可能とするように構成される高電圧ケーブル25に接続されるコネクタ24を有する。さらに、コネクタ24は、車両幅方向にてフロアトンネル12とオーバーラップするように配置される。
【0034】
図1及び図3図7に示すように、バッテリパック20の下方領域21は、ロアケース21となっている。バッテリパック20の上方領域26は、アッパーケース26となっている。ロアケース21は、アッパーケース26に対して下方に位置する。ロアケース21は、アッパーケース26に対して上下方向に並ぶように配置され、かつ互いに結合されている。図4及び図6に示すように、このように互いに結合されたロアケース21及びアッパーケース26の内部に、バッテリパック20のバッテリモジュール27aを含む内部装置27が配置されている。
【0035】
図1及び図3図7を参照すると、バッテリパック20は、その前端に位置する前方壁28を有する。前方壁28は、車両幅方向に沿って配置される。各側方壁22は、車両前後方向に沿って配置される。底壁23は、水平方向に沿って配置される。ロアケース21は、側方壁22の下方部22aと、底壁23と、前方壁28の下方部28aとを含む。
【0036】
「ブラケットの詳細」
図6及び図7を参照すると、ブラケット30は、詳細には以下のように構成することができる。図7に示すように、ブラケット30の側方部31は、バッテリパック20の側方壁22の下方部22aと対向する。図6に示すように、ブラケット30は、バッテリパック20の前方壁28と対向する前方部34を有する。さらに、ブラケット30の前方部34は、前方壁28の下方部28aと対向することができる。
【0037】
ブラケット30は、その底部32及び前方部34を互いに連結した前方連結部35を有する。この前方連結部35は、バッテリパック20の前方壁28と間隔を空けるように配置されている。前方連結部35は側方連結部33と繋がっている。
【0038】
図7に示すように、ブラケット30は、バッテリパック20の側方壁22に沿ってバッテリパック20の前方壁28から突出するように形成される突出領域36を含む。ブラケット30は、前方壁28から片持ち状に突出する。突出領域36は、水平方向に沿って略平面形状に形成される。
【0039】
図6及び図7に示すように、ブラケット30の底部32は、1つの底部材32として形成されている。ブラケット30は、その側方部31及び前方部34を一体に形成した角部材37を含む。底部材32及び角部材37のそれぞれは、上記突出領域36を成すように形成される突出区域32a,37aを有する。
【0040】
図7に示すように、ブラケット30の側方部31は、バッテリパック20の側方壁22、特に、側方壁22の下方部22aと溶接によって接合されている。ブラケット30の底部32は、バッテリパック20の底壁23と溶接によって接合されている。側方連結部33においては、ブラケット30の側方部31及び底部32を溶接によって互いに接合することができる。
【0041】
図6に示すように、ブラケット30の前方部34は、バッテリパック20の前方壁28、特に、前方壁28の下方部28aと溶接によって接合されている。固定領域70は、バッテリパック20の前方壁28及びブラケット30の前方部34を互いに固定した前方固定区域74を有する。特に、固定領域70の下方固定部71が、この前方固定区域74を含むことができる。図6及び図7に示すように、前方連結部35においては、ブラケット30の底部32及び前方部34を溶接によって互いに接合することができる。しかしながら、これらの接合は、溶接以外の接合手段によってもたらすこともできる。
【0042】
「アンダーカバーの詳細」
図2及び図4図6を参照すると、アンダーカバー40は、詳細には以下のように構成することができる。図2及び図5に示すように、アンダーカバー40の前方パネル50は、フロアトンネル12に対して車両幅方向の両側方にそれぞれ隣接する2つの側方領域52を有する。特に明確に図示はしないが、2つの側方領域52は、それぞれ運転席及び助手席の下方に位置する。図4及び図6に示すように、後方パネル60は、バッテリパック20と上下方向に当接する。
【0043】
図2図4、及び図6を参照すると、アンダーカバー40は、ブラケット30を介してアンダーカバー40の結合領域41をクロスメンバ11に取り付けるように構成される2つの中間取付部42を有する。2つの中間取付部42は、フロアトンネル12に対して車両幅方向の両側方寄りにそれぞれ位置する。しかしながら、アンダーカバーは、1つ又は3つ以上の中間取付部を有することができる。
【0044】
特に明確に図示はしないが、各中間取付部42は、具体的には、前方パネル50の後端領域51と後方パネル60の前端領域61とが互いに上下方向に重なった状態でボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段によってブラケット30、特に、ブラケット30の突出領域36と締結されるように構成される。しかしながら、この締結は、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段以外の締結手段によってもたらすこともできる。中間取付部、前方パネル、及び後方パネルの取付は、締結手段以外の手段を用いることもできる。
【0045】
図2及び図6に示すように、アンダーカバー40は、取付部材90を避けるように上下方向に貫通する逃げ孔43を有する。さらに詳細には、後方パネル60は、取付部材90を避けるように後方パネル60の前端領域61から車両後方に向かって切り欠かれた切欠部62を有する。逃げ孔43は、前方パネル50の車両前後方向の後端領域51と後方パネル60の切欠部62とによって画定されている。
【0046】
このようなアンダーカバー40は、後述する2つの取付部材90をそれぞれ避けるように上下方向にそれぞれ貫通する2つの逃げ孔43を有することができる。この場合、後方パネル60は、2つの取付部材90をそれぞれ避けるように、その前端領域61から車両後方に向かってそれぞれ切り欠かれた2つの切欠部62を有することができる。しかしながら、アンダーカバーの逃げ孔の数は、これに限定されない。
【0047】
「バー部材の詳細」
図2図4図6、及び図7を参照すると、バー部材80は、詳細には以下のように構成することができる。バー部材80は、後方パネル60の前端領域61に対して下方に位置する。バー部材80は、後方パネル60の前端領域61に対して上下方向に対向する。
【0048】
バー部材80は、車両前後方向にてアンダーカバー40の結合領域41に隣接するように配置される。バー部材80は、後方パネル60の前端領域61の全体に渡って延びる。バー部材80は、車両後方から車両前方に向かって突出する略円弧形状に形成される。バー部材80は、パイプ形状に形成することができる。
【0049】
「取付部材の詳細」
図2図3、及び図7を参照すると、取付部材90は、詳細には以下のように構成することができる。図2及び図3に示すように、バッテリパック周辺構造1は、車両幅方向に互いに間隔を空けて配置される2つの取付部材90を有する。しかしながら、バッテリパック周辺構造は、1つ又は3つ以上の取付部材を有することもできる。
【0050】
図7に示すように、取付部材90は、ブラケット30の突出領域36に位置する。取付部材90は、ブラケット30の底部32に下方から上方に向かって当接する基部91を有する。取付部材90は、基部91から下方に突出する支持部92を有する。バー部材80の長手方向の端部81は、下方から上方に向かって支持部92に当接する。
【0051】
取付部材90は、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段によってブラケット30と締結される。しかしながら、この締結は、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段以外の締結手段によってもたらすこともできる。ブラケット及び取付部材の取付は、締結手段以外の手段を用いることもできる。
【0052】
取付部材90の支持部92は、バー部材80の長手方向の端部81と溶接によって接合されている。しかしながら、この接合は、溶接以外の接合手段によってもたらすこともできる。
【0053】
以上、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1は、車両のフロア2を構成するフロア組立体10と、前記フロア組立体10の下方に位置するバッテリパック20と、前記バッテリパック20を前記フロア組立体10に取り付けるように構成されるブラケット30と、前記バッテリパック20を下方から覆うアンダーカバー40とを備え、前記フロア組立体10が、それに沿って車両幅方向に延びるクロスメンバ11を有し、前記ブラケット30が、前記バッテリパック20及び前記クロスメンバ11に取り付けられている、車両用バッテリパック周辺構造1であって、前記クロスメンバ11及び前記ブラケット30が、前記バッテリパック20の車両前後方向の前端よりも車両前方寄りに配置され、前記アンダーカバー40が、前方パネル50と、前記前方パネル50よりも車両後方寄りに位置する後方パネル60とを有し、前記前方パネル50の車両前後方向の後端領域51と前記後方パネル60の車両前後方向の前端領域61とを結合した結合領域41が形成され、前記バッテリパック20及び前記ブラケット30を互いに固定した固定領域70が、前記結合領域41よりも車両後方寄りに位置している。
【0054】
一般的に、車両の走行時においては、車輪(図示せず)、特に、前輪(図示せず)によって車両の下方から跳ね上げられた小石、泥水等の異物、又は車両によって乗り上げられる歩道の段差、縁石、車止め等の障害物が、車両の前方かつ下方からアンダーカバー40の車両前後方向の前方部分に衝突し易い。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1においては、前方パネル50がバッテリパック20よりも車両前方寄りに配置される。この場合、後方パネル60の上方にはバッテリパック20が位置する一方で、前方パネル50の上方にはバッテリパック20が位置せず、前方パネル50の上方には空間が形成される。このような空間は、前方パネル50とフロア組立体10との間にてバッテリパック20の厚さに相当する十分な高さを有することができる。よって、異物等が前方パネル50に衝突し、この衝突によって前方パネル50の衝撃、振動等が加えられた場合であっても、これらの衝撃、振動等がアンダーカバー40を介してバッテリパックに直接伝わることを抑制できる。
【0056】
さらに、前方パネル50から後方パネル60に伝わる衝撃は、高剛性である結合領域41によって緩和できる。その結果、後方パネル60の上方に位置するバッテリパック20を、このような衝撃から効率的に保護することができる。例えば、前方パネル50が脱落したとしても、バッテリパック20は後方パネル60によって覆われたままとなるので、バッテリパック20を効率的に保護することができる。
【0057】
さらに、バッテリパック20及びブラケット30を互いに固定した固定領域70が、高剛性である結合領域41よりも車両後方寄りに位置している。そのため、車両の前方かつ下方からアンダーカバー40に向かって衝突する異物又は障害物からの衝撃に対して、ブラケット30を介したバッテリパック20のクロスメンバ11への取付を、高剛性である結合領域41によって効率的に保護することができる。よって、バッテリパック20を安定的に支持することができる。
【0058】
本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1においては、前記フロア組立体10が、その車両幅方向の中央に位置するフロアトンネル12を有し、前記フロアトンネル12が、上方に膨出し、かつ車両前後方向に延びるように形成され、前記クロスメンバ11が、前記フロアトンネル12と交差するように配置され、前記ブラケット30が、前記バッテリパック20を車両前方及び車両幅方向の外方から覆うように配置されている。
【0059】
このような車両用バッテリパック周辺構造1においては、バッテリパック20及びブラケット30を互いに固定した固定領域70を、バッテリパック20に対して前方かつバッテリパック20に対して車両幅方向の外方に配置することができる。そのため、この固定領域70を拡大することができて、その結果、ブラケット30を介したバッテリパック20のクロスメンバ11への取付剛性を高めることができる。よって、バッテリパック20を安定的に支持することができる。
【0060】
本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1においては、前記固定領域70が、前記バッテリパック20の下方領域21及び前記ブラケット30を互いに固定した下方固定部71を含む。そのため、車両の前方かつ下方からアンダーカバー40に向かって衝突する異物又は障害物の衝撃から、バッテリパック20を、ブラケット30によって効率的に保護することができる。さらに、ブラケット30によって、バッテリパック20をその下方から安定的に支持することができる。
【0061】
本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1においては、前記バッテリパック20が、その車両幅方向の側方端に位置する側方壁22と、前記バッテリパック20の下端に位置する底壁23とを有し、前記ブラケット30が、前記バッテリパック20の側方壁22と対向する側方部31と、前記バッテリパック20の底壁23と対向する底部32とを有し、前記固定領域70が、前記バッテリパック20の側方壁22及び前記ブラケット30の側方部31を互いに固定した側方固定区域72と、前記バッテリパック20の底壁23及び前記ブラケット30の底部32を互いに固定した底固定区域73とを有し、前記ブラケット30の側方部31及び底部32を互いに連結した側方連結部33が、前記バッテリパック20の側方壁22と間隔を空けるように配置されている。
【0062】
このような車両用バッテリパック周辺構造1においては、側方固定区域72及び底固定区域73によって固定領域70を拡大することができて、その結果、ブラケット30を介したバッテリパック20のクロスメンバ11への取付剛性を高めることができる。よって、バッテリパック20を安定的に支持することができる。
【0063】
さらに、ブラケット30の側方部31及び底部32を互いに連結した側方連結部33が、バッテリパック20の側方壁22と間隔を空けるように配置される。そのため、ブラケット30及びバッテリパック20間に空間が形成される。このような空間は、車両の前方かつ下方からアンダーカバー40に向かって衝突する異物又は障害物の衝撃を緩和することができる。そのため、ブラケット30及びバッテリパック20間の空間によって、バッテリパック20を効率的に保護することができる。
【0064】
本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造1は、前記ブラケット30に対して下方かつ車両幅方向に沿って配置されるバー部材80と、前記バー部材80を前記ブラケット30に取り付けるように構成される取付部材90とを備え、前記取付部材90が、上下方向にて前記ブラケット30及び前記バー部材80の間に挟まれた状態で前記ブラケット30及び前記バー部材80に固定されている。
【0065】
このような車両用バッテリパック周辺構造1においては、車両の前方かつ下方からアンダーカバー40に向かって衝突する異物又は障害物の衝撃から、バッテリパック20を、バー部材80によって効率的に保護することができる。
【0066】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…車両用バッテリパック周辺構造(バッテリパック周辺構造)、2…フロア
10…フロア組立体、11…クロスメンバ、12…フロアトンネル
20…バッテリパック、21…下方領域、ロアケース、22…側方壁、23…底壁
30…ブラケット、31…側方部、32…底部、底部材、33…側方連結部
40…アンダーカバー、41…結合領域、50…前方パネル、51…後端領域、60…後方パネル、61…前端領域
70…固定領域、71…下方固定部、72…側方固定区域、73…底固定区域
80…バー部材
90…取付部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7