(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 25/12 20060101AFI20240905BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C03B25/12
C03B17/06
(21)【出願番号】P 2021565399
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043475
(87)【国際公開番号】W WO2021124801
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019228190
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】大庭 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆英
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-65988(JP,A)
【文献】特開2008-266098(JP,A)
【文献】特開2017-154911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 25/12
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンドロー法によりガラスリボンを成形する成形炉と、前記成形炉の下方に連通して前記ガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、前記徐冷炉の下方に連通して前記ガラスリボンを冷却する冷却部と、前記成形炉及び前記徐冷炉が内部に配置される成形徐冷室と、前記冷却部が内部に配置される冷却室とを備える製造装置を用いるガラス物品の製造方法であって、
前記成形徐冷室を、前記成形炉及び前記徐冷炉の上部が内部に配置される第一室と、前記徐冷炉の下部が内部に配置される第二室とに区分した状態で、
加圧機構によって前記第一室内を加圧しながら、排気機構によって前記第二室内の気体を室外に排気することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記第一室の気圧が前記第二室の気圧よりも高く、かつ、前記第二室の気圧が前記冷却室の気圧よりも低い請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記徐冷炉の下部の気圧が、前記第二室の気圧よりも高い請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記ガラスリボンの歪点温度に対応する位置が、前記徐冷炉の上部に含まれる請求項3に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記徐冷炉の下部の側壁に、前記徐冷炉内の気体の一部を前記第二室に導く流路を設ける請求項3又は4に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
前記加圧機構によって前記第一室内を加圧すると共に、前記加圧機構とは異なる位置で前記第一室内の気体を室外に排気する請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項7】
前記加圧機構により前記第一室の上部から冷気を室内に給気すると共に、前記加圧機構とは異なる位置で前記第一室の上部から熱気を室外に排気する請求項6に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項8】
前記排気機構によって前記第二室内の気体を排気すると共に、前記排気機構とは異なる位置で前記第二室内に気体を給気する請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項9】
ダウンドロー法によりガラスリボンを成形する成形炉と、前記成形炉の下方に連通して前記ガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、前記徐冷炉の下方に連通して前記ガラスリボンを冷却する冷却部と、前記成形炉及び前記徐冷炉が内部に配置される成形徐冷室と、前記冷却部が内部に配置される冷却室とを備えるガラス物品の製造装置であって、
前記成形徐冷室は、前記成形炉及び前記徐冷炉の上部が内部に配置される第一室と、前記徐冷炉の下部が内部に配置される第二室とを備え、
前記第一室内を加圧する加圧機構と、前記第二室内の気体を室外に排気する排気機構とをさらに備えることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造方法及びガラス物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイ用のガラス物品を製造するための製造装置としては、例えば、ダウンドロー法によりガラスリボンを成形する成形炉と、成形炉の下方に連通してガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、徐冷炉の下方に連通してガラスリボンを冷却する冷却部とを備えたものが挙げられる。
【0003】
ここで、ガラス物品としては、ガラスリボンを所定長さで切断した略矩形状等のガラス板や、ガラスリボンを巻芯などの周囲にロール状に巻き取ったガラスロールなどが挙げられる。ガラスロールの場合、例えばガラス板を多数枚に亘って切り出すことも容易に行い得る。
【0004】
この種の製造装置の場合、成形炉、徐冷炉及び冷却部が、上下方向に連通する筒状の空間を構成し、この筒状の空間がガラスリボンの搬送ブースとされる。そして、この搬送ブース内の一部は高温とされるため、煙突効果により、搬送ブース内に上昇気流が発生し得る。この上昇気流は、徐冷炉におけるガラスリボンの徐冷工程に悪影響を与え、ガラスリボンの歪が悪化するおそれがある。
【0005】
特に、近年のディスプレイの高精細化に対応するために熱収縮の小さいガラス物品を製造する場合に、搬送ブース内に発生する上昇気流が問題となる。つまり、ガラス物品の熱収縮を低減するためには、ガラスリボンの徐冷工程において、ゆっくりとした徐冷(冷却)速度で長時間に亘って徐冷するのが効果的である。そのため、この条件を満足するために徐冷炉の長尺化が図られており、徐冷炉内のガラスリボンが上昇気流の影響を受けやすくなっている。
【0006】
そこで、例えば特許文献1には、成形炉及び徐冷炉が内部に配置された成形徐冷室内を加圧ファンなどの加圧機構によって加圧することが開示されている。このように成形徐冷室内を加圧すれば、成形炉や徐冷炉の炉壁の隙間などから気体が流出するのを低減できるため、搬送ブース内の上昇気流を抑制できる。なお、成形炉や徐冷炉の炉壁の隙間などから大量の気体が流出すると、搬送ブース内の気体の上昇が増大し、上昇気流が発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、成形徐冷室内を加圧すれば、成形徐冷室内の気圧が高くなるため、成形徐冷室の下部(例えば、成形徐冷室の底面近傍)において、成形徐冷室内の異物が、徐冷炉の炉壁の隙間から徐冷炉内に侵入するおそれがある。この異物は、徐冷炉外に延びるアニーラローラの軸受部などから発生する鉄粉を含む。そして、このような異物がガラスリボンに付着すると、製造されるガラス板などのガラス物品の表面品位が低下するという問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、ダウンドロー法によりガラス物品を製造する際に、ガラスリボンの歪の悪化を抑制しつつ、ガラスリボンへの異物の付着を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ダウンドロー法によりガラスリボンを成形する成形炉と、成形炉の下方に連通してガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、徐冷炉の下方に連通してガラスリボンを冷却する冷却部と、成形炉及び徐冷炉が内部に配置される成形徐冷室と、冷却部が内部に配置される冷却室とを備える製造装置を用いるガラス物品の製造方法であって、成形徐冷室を、成形炉及び徐冷炉の上部が内部に配置される第一室と、徐冷炉の下部が内部に配置される第二室とに区分した状態で、加圧機構によって第一室内を加圧しながら、排気機構によって第二室内の気体を室外に排気することを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、加圧機構により成形徐冷室の第一室内が加圧されるため、成形炉及び/又は徐冷炉の上部の炉壁の隙間(例えば目地)などから気体が流出するのを低減できる。その結果、成形炉、徐冷炉及び冷却部のそれぞれの内部(搬送ブース内)における上昇気流を抑制できる。したがって、上昇気流によるガラスリボンの歪の悪化を抑制できる。また、成形徐冷室に第二室が設けられ、この第二室内の気体が排気機構により室外に排気されるため、成形徐冷室の下部に対応する第二室内の異物も気体と共に室外に排出される。そのため、第二室内の異物が、徐冷炉の下部の炉壁の隙間などから徐冷炉内に侵入するのを抑制できる。したがって、ガラスリボンへの異物の付着を抑制できる。
【0012】
上記の構成において、第一室の気圧が第二室の気圧よりも高く、かつ、第二室の気圧が冷却室の気圧よりも低いことが好ましい。
【0013】
このようにすれば、第一室、第二室及び冷却室のうち、第二室の気圧が最も低くなるため、第一室内の異物や冷却室内の異物も第二室内に流れ込みやすくなる。そのため、第一室内の異物や冷却室内の異物も、第二室から排気機構により屋外に排出できる。したがって、ガラスリボンへの異物の付着をより確実に抑制できる。
【0014】
上記の構成において、徐冷炉の下部の気圧が、第二室の気圧よりも高いことが好ましい。
【0015】
このようにすれば、第二室内の異物が、徐冷炉の下部に侵入するのをより確実に抑制できる。また、冷却部で上昇気流が発生したとしても、冷却部で発生した上昇気流は、徐冷炉の下部で炉壁の隙間などから第二室に引き込まれるため、成形炉及び徐冷炉の上部における上昇気流を抑制できる。したがって、上昇気流によるガラスリボンの歪の悪化をより確実に抑制できる。
【0016】
徐冷炉の下部の気圧を第二室の気圧よりも高く調整する場合、ガラスリボンの歪点温度に対応する位置が、徐冷炉の上部に含まれることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、ガラスリボンの歪に影響を与える歪点温度に対応する位置における上昇気流を確実に抑制できるため、ガラスリボンの歪を十分に低減できる。
【0018】
徐冷炉の下部の気圧を第二室の気圧よりも高く調整する場合、徐冷炉の下部の側壁に、徐冷炉内の気体の一部を第二室に導く流路を有していてもよい。
【0019】
このようにすれば、冷却部で発生した上昇気流が、徐冷炉の下部で流路を通じて第二室に引き込まれやすくなる。そのため、ガラスリボンの歪の悪化をより確実に抑制できる。
【0020】
上記の構成において、加圧機構によって第一室内を加圧すると共に、加圧機構とは異なる位置で第一室内の気体を室外に排気することが好ましい。
【0021】
このようにすれば、第一室内の気圧を調整しやすくなる。また、第一室内は炉の熱で高温となり得るが、第一室内の気体を流通させて入れ替えやすくなるため、第一室内の気温を適度に下げることができる。
【0022】
第一室内の気体を室外に排気する場合、加圧機構により第一室の上部から冷気を室内に給気すると共に、加圧機構とは異なる位置で第一室の上部から熱気を室外に排気することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、冷気は密度が高く下降する傾向があり、熱気は密度が低く上昇する傾向があるため、第一室内で気体を効率よく循環させることができる。したがって、第一室内の気温を効率よく下げることができる。
【0024】
上記の構成において、排気機構によって第二室内の気体を排気すると共に、排気機構とは異なる位置で第二室内に気体を給気することが好ましい。
【0025】
このようにすれば、第二室内の気圧を調整しやすくなる。また、第二室内は炉の熱で高温となり得るが、第二室内の気体を流通させて入れ替えやすくなるため、第二室内の気温を適度に下げることができる。
【0026】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ダウンドロー法によりガラスリボンを成形する成形炉と、成形炉の下方に連通してガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、徐冷炉の下方に連通してガラスリボンを冷却する冷却部と、成形炉及び徐冷炉が内部に配置される成形徐冷室と、冷却部が内部に配置される冷却室とを備えるガラス物品の製造装置であって、成形徐冷室は、成形炉及び徐冷炉の上部が内部に配置される第一室と、徐冷炉の下部が内部に配置される第二室とを備え、第一室内を加圧する加圧機構と、第二室内の気体を室外に排気する排気機構とをさらに備えることを特徴とする。
【0027】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ダウンドロー法によりガラス物品を製造する際に、ガラスリボンの歪の悪化を抑制しつつ、ガラスリボンへの異物の付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス物品の製造装置の概略側面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るガラス物品の製造装置の概略側面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係るガラス物品の製造装置の成形徐冷室の第一室周辺を拡大して示す概略側面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係るガラス物品の製造装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0031】
(第一実施形態)
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るガラス物品の製造装置1は、オーバーフローダウンドロー法によってガラス物品としてのガラス板Gを製造する装置であり、建屋Xの一部を構成する。なお、建屋Xの内部は、外気の侵入を抑制するために陽圧に管理される。
【0032】
本製造装置1は、成形炉2と、成形炉2の下方に配置された徐冷炉3と、徐冷炉3の下方に配置された冷却部4と、冷却部4の下方に配置された切断室5と、成形炉2及び徐冷炉3が内部に配置される成形徐冷室6と、冷却部4が内部に配置される冷却室7とを備える。成形徐冷室6、冷却室7及び切断室5は、外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成する処理室(例えばクリーンルーム)である。
【0033】
成形炉2、徐冷炉3及び冷却部4は、上下方向に連通する筒状の空間を壁8a~8dによって区画形成している。壁8a~8dを含む有蓋筒状の空間は、成形炉2で成形されるガラスリボンGrの搬送ブース9とされる。なお、搬送ブース9は、成形炉2と徐冷炉3の上部3aとの間、徐冷炉3の上部3aと徐冷炉3の下部3bとの間、徐冷炉3の下部3bと冷却部4との間、及び冷却部4と切断室5との間が、建屋Xのフロア面などからなる仕切り部材10a~10dによって仕切られている。各仕切り部材10a~10dには、ガラスリボンGrを通過させるための開口部が設けられている。なお、搬送ブース9内の仕切り部材10a~10dは省略してもよく、各仕切り部材10a~10dの間に仕切り部材を追加してもよい。
【0034】
成形炉2の内部には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形する成形体11が配置されている。成形体11に供給された溶融ガラスGmは成形体11の頂部に形成された溝部から溢れ出るようになっており、その溢れ出た溶融ガラスGmが成形体11の両側の側面を伝って下端で合流することで、板状のガラスリボンGrが連続成形される。成形されるガラスリボンGrは、縦姿勢(好ましくは鉛直姿勢)のまま搬送ブース9の下流側(好ましくは鉛直下方)へと搬送される。
【0035】
徐冷炉3は、成形炉2で成形されたガラスリボンGrの歪を低減するための炉である。徐冷炉3内は、下方に向かって所定の温度勾配を有している。ガラスリボンGrは、徐冷炉3内を下方に向かって移動するに連れて、温度が低くなるように徐冷(アニール)される。徐冷炉3内の温度勾配は、例えば、徐冷炉3に配置されたヒーター(図示省略)により調整できる。
【0036】
冷却部4は、徐冷炉3で徐冷されたガラスリボンGrを放熱させて室温付近まで冷却するための空間である。なお、冷却部4には、ヒーターは配置されていない。
【0037】
徐冷炉3内には、成形体11の直下で、ガラスリボンGrの幅方向収縮を規制するエッジローラ12が配置されている。エッジローラ12は、ガラスリボンGrの幅方向両端部を表裏両側から挟持する。これにより、ガラスリボンGrの幅方向両端部には、ガラスリボンGrの幅方向中央部よりも相対的に厚肉となる耳部が形成される。なお、エッジローラ12が徐冷炉3内に配置される場合を例示したが、エッジローラ12は、成形炉2内に配置されていてもよい。
【0038】
徐冷炉3内には、エッジローラ12の下方にアニーラローラ13が配置されている。アニーラローラ13は、上下方向に複数段設けられている。アニーラローラ13は、例えばセラッミクス製などの無機材質製のローラで構成される。
【0039】
冷却部4内には、ガラスリボンGrを表裏両側から挟持する支持ローラ14が配置されている。支持ローラ14は、上下方向に一段又は複数段(図示例)配置されている。支持ローラ14は、例えばゴム製などの耐熱樹脂材料製のローラで構成される。
【0040】
切断室5内には、切断装置(図示省略)が配置されている。切断装置は、冷却部4で冷却されたガラスリボンGrを所定長さ毎に切断し、ガラス板Gを得るための装置である。切断装置による切断方法は、特に限定されるものではなく、例えば、曲げ応力割断、レーザ割断、レーザ溶断などが利用できる。
【0041】
成形徐冷室6は、成形炉2及び徐冷炉3の上部3aが内部に配置される第一室6aと、徐冷炉3の下部3bが内部に配置される第二室6bとを備える。本実施形態では、徐冷炉3の上部3aには、ガラスリボンGrの徐冷点温度に対応する位置と、ガラスリボンGrの歪点温度に対応する位置とが含まれる。ここで、徐冷点温度とは、ほぼこの温度に15分間保持すると歪が除去される温度を意味し、歪点温度は、その温度以下では急冷してもガラスに歪が発生しない温度を意味する。歪点温度は、徐冷点温度よりも例えば30~150℃低くなる。つまり、ガラスリボンGrの徐冷点温度に対応する位置は、ガラスリボンGrの歪点温度に対応する位置よりも上方に位置する。
【0042】
第一室6aと第二室6bとの間、第二室6bと冷却室7との間、及び冷却室7と切断室5との間は、建屋Xのフロア面などからなる仕切り部材15a~15cによって仕切られている。仕切り部材15a~15cは、気体の流通を許容する構成としてもよい。例えば、仕切り部材15a~15cは、搬送ブース9との間に、気体が流通可能な隙間を有していてもよい。なお、仕切り部材15a~15cの上下方向位置は、搬送ブース9内の仕切り部材10b~10dの上下方向位置と同じ場合を例示しているが、両者の上下方向位置は異なっていてもよい。
【0043】
ガラス物品の製造装置1は、第一室6a内を加圧する第一加圧機構16をさらに備える。ここで、第一室6a内とは、成形炉2及び徐冷炉3の上部3aの外側の空間を意味する。
【0044】
本実施形態では、第一加圧機構16は、屋外(建屋Xの外部)に接続された外気ダクト17と、外気ダクト17から屋外の気体(外気)を取り込む給気ファン18と、給気ファン18で取り込んだ気体を第一室6a内に給気する給気ダクト19とを備える空調機からなる。
【0045】
本製造装置1は、第二室6b内の気体を室外に排気する排気機構20をさらに備える。ここで、第二室6b内とは、徐冷炉3の下部3bの外側の空間を意味する。排気機構20は、第二室6b内の気体の排気に伴って、第二室6b内を減圧するように構成されていることが好ましい。
【0046】
本実施形態では、排気機構20は、第二室6bに接続された還気ダクト21と、還気ダクト21から第二室6b内の気体を取り込む排気ファン22と、排気ファン22で取り込んだ気体を屋外に排気する排気ダクト23とを備える。
【0047】
本製造装置1では、第二室6bの気圧が徐冷炉3の下部3bの気圧よりも低くなるように気圧調整がなされる。
【0048】
本製造装置1では、第一室6aの気圧が第二室6bの気圧よりも高く、かつ、第二室6bの気圧が冷却室7の気圧よりも低くなるように気圧調整がなされる。
【0049】
本製造装置1は、冷却部4内を加圧する第二加圧機構24をさらに備える。ここで、冷却室7内とは、冷却部4の外側の空間を意味する。第二加圧機構24は、冷却部4の気圧が切断室5の気圧よりも高くなるように、冷却部4内を加圧するように構成されていることが好ましい。なお、第二加圧機構24は省略してもよい。
【0050】
本実施形態では、第二加圧機構24は、屋外に接続された外気ダクト25と、外気ダクト25から屋外の気体を取り込む給気ファン26と、給気ファン26で取り込んだ気体を冷却部4内に給気する給気ダクト27とを備える空調機からなる。給気ダクト27は、切断室5に近い冷却部4の下部、具体的には、最下部の支持ローラ14よりも下方で冷却部4に接続されていることが好ましい。なお、外気ダクト25及び給気ファン26が配置された建屋Xのフロアが、給気ダクト27が冷却部4に接続される建屋Xのフロアの下階である場合を例示しているが、空調機の配置態様はこれに限定されない。
【0051】
本実施形態では、第二加圧機構24は、温調部28と、フィルタ部29とをさらに備える。温調部28としては、例えば、シーズヒーター、通電加熱装置(第二加圧機構24の配管に通電するもの)、誘導加熱装置などが使用できる。フィルタ部29としては、例えば、粗塵用フィルタ、中性能フィルタ(例えばMEPAフィルタ)、高性能フィルタ(例えば、HEPAフィルタ、ULPAフィルタなど)などが使用できる。なお、温調部28及びフィルタ部29の少なくとも一方を省略してもよい。
【0052】
次に、本実施形態に係るガラス物品の製造方法について説明する。本製造方法は、上記の製造装置1を用いてガラス物品としてのガラス板Gを製造する方法である。
【0053】
図1に示すように、本製造方法は、成形炉2でオーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンGrを成形する成形工程と、成形されたガラスリボンGrを徐冷炉3で徐冷する徐冷工程と、徐冷されたガラスリボンGrを冷却部4で冷却する冷却工程と、冷却されたガラスリボンGrを切断室5で切断する切断工程とを備える。
【0054】
本製造方法は、第一加圧機構16によって第一室6a内を加圧する第一加圧工程と、排気機構20によって第二室6b内の気体を室外に排気する排気工程とをさらに備える。第一加圧工程及び排気工程は、上記の成形工程、徐冷工程、冷却工程及び切断工程と並行して行われる。
【0055】
詳細には、第一加圧工程では、第一加圧機構16によって、第一室6a内に気体を給気し、第一室6a内の気圧を上昇させる。これにより、成形炉2及び/又は徐冷炉3の上部3aの壁8a,8bの目地などの隙間から気体が流出するのを低減できる。その結果、搬送ブース9を流れる上昇気流の風量を抑制できる。したがって、徐冷炉3において、徐冷温度が不均一になったりガラスリボンGrが揺れたりすることによって、ガラスリボンGrの歪が悪化するという事態を抑制できる。
【0056】
ここで、搬送ブース9は上方に向かうに連れて温度が高くなり、気圧が高くなりやすい。そのため、成形徐冷室6の上部に対応する第一室6aに比べて、成形徐冷室6の下部に対応する第二室6bにおいて、搬送ブース9との間の差圧が小さくなりやすい。つまり、第二室6bを第一室6aと同様に加圧すると、第二室6b内の異物が徐冷炉3内に侵入しやすくなる。そこで、第一加圧機構16によって、第一室6aのみを直接加圧している。
【0057】
ただし、第一加圧機構16による加圧条件を調整することにより、成形炉2及び徐冷炉3の上部3aのそれぞれの気圧が、成形徐冷室6の第一室6aの気圧よりも高い状態に維持される。
【0058】
成形炉2(高圧側)と第一室6a(低圧側)との差圧は、例えば5~50Paであることが好ましく、徐冷炉3の上部3a(高圧側)と第一室6a(低圧側)との差圧は、例えば5~40Paであることが好ましい。差圧は、圧力センサ30,31,32によって管理されるが、所定の差圧計を用いてもよい。差圧の値は特に限定されるものではなく適宜調整できる。なお、第一室6a(高圧側)と建屋Xの外部(低圧側)との差圧は、例えば20~100Paとすればよい。
【0059】
排気工程では、排気機構20によって、第二室6b内の気体と共に、第二室6b内の異物を屋外に排出する。そのため、第二室6b内の異物が、徐冷炉3の下部3bの壁8cの目地などの隙間から徐冷炉3の下部3b内に侵入するのを抑制できる。したがって、搬送ブース9内を搬送されるガラスリボンGrへの異物の付着を抑制できる。
【0060】
排気工程では、排気機構20によって第二室6b内の気体を排気する過程で、第二室6b内を減圧することが好ましい。具体的には、排気機構20による減圧条件を調整することにより、徐冷炉3の下部3bの気圧が、第二室6bの気圧よりも高い状態に維持されることが好ましい。このようにすれば、第二室6b内の異物が、徐冷炉3の下部3bの壁8cの目地などの隙間から徐冷炉3の下部3b内に侵入するのをより確実に抑制できる。また、冷却部4で上昇気流が発生したとしても、冷却部4で発生した上昇気流は、徐冷炉3の下部3bで第二室6bに引き込まれるため、成形炉2及び徐冷炉3の上部3aにおける上昇気流の風量を抑制できる。なお、本実施形態では、徐冷炉3の下部3bで第二室6bに向かう気流を形成しやすくするために、徐冷炉3の下部3bの壁8cに、徐冷炉3内の気体の一部を第二室6bに導く流路を構成する孔Hを設けている。孔Hは省略してもよい。
【0061】
徐冷炉3の下部3b(高圧側)と第二室6b(低圧側)との差圧は、例えば2~30Paになるように管理される。差圧は、圧力センサ33,34によって管理されるが、所定の差圧計を用いてもよい。差圧の値は特に限定されるものではなく適宜調整できる。
【0062】
徐冷炉3の下部3bの気圧を第二室6bの気圧よりも高く調整する場合、ガラスリボンGrの歪点温度に対応する位置が、徐冷炉3の上部3aに含まれることが好ましい。このようにすれば、冷却部4で上昇気流が発生したとしても、冷却部4で発生した上昇気流は、ガラスリボンGrの歪点温度に対応する位置よりも下方の徐冷炉3の下部3bで第二室6bに引き込まれる。そのため、ガラスリボンGrの歪点温度に対応する位置で上昇気流を確実に抑制できる。ガラスリボンGrの歪点温度は、ガラスリボンGrの歪を決定付ける重要な温度であるため、この温度に対応する位置で上昇気流を抑制すれば、ガラスリボンGrの歪を十分に低減できる。なお、ガラスリボンGrの歪点温度に対応する位置が徐冷炉3の下部3bに含まれる場合、徐冷炉3の下部3bから第二室6bへ向かう気流によって、ガラスリボンGrの歪が悪化するおそれがある。
【0063】
本製造方法では、上記の加圧工程の加圧条件や排気工程の減圧条件などによって、第一室6aの気圧が第二室6bの気圧よりも高く、かつ、第二室6bの気圧が冷却室7の気圧よりも低い状態に維持されることが好ましい。このようにすれば、第一室6a、第二室6b及び冷却室7のうち、第二室6bの気圧が最も低くなる。そのため、第一室6a内の異物や冷却室7内の異物も、例えば仕切り部材15a,15bの隙間等から第二室6b内に流れ込む。その結果、第一室6a内の異物や冷却室7内の異物も、第二室6bから排気機構20によって屋外に排出しやすくなる。したがって、搬送ブース9内を搬送されるガラスリボンGrへの異物の付着をより確実に抑制できる。
【0064】
第一室6a(高圧側)と第二室6b(低圧側)との差圧は、例えば10~60Paであることが好ましい。冷却室7(高圧側)と第二室6b(低圧側)との差圧は、例えば0超~20Paであることが好ましい。差圧は、圧力センサ32,34,36によって管理されるが、所定の差圧計を用いてもよい。差圧の値は特に限定されるものではなく適宜調整できる。
【0065】
また、本製造方法では、これら成形工程、徐冷工程、冷却工程、切断工程を行う間、第二加圧機構24によって冷却部4内を加圧する第二加圧工程をさらに備える。第二加圧工程は、上記の成形工程、徐冷工程、冷却工程及び切断工程と並行して行われる。
【0066】
詳細には、第二加圧工程では、第二加圧機構24によって冷却部4内に気体を給気して、冷却部4の気圧を上昇させる。これにより、切断室5で発生した異物(ガラス粉など)が冷却部4に侵入するのを抑制できる。
【0067】
第二加圧工程では、第二加圧機構24による加圧条件を調整することにより、冷却部4の気圧が切断室5の気圧よりも高い状態に維持されることが好ましい。このようにすれば、切断室5で発生した異物が冷却部4に侵入するのをより確実に抑制できる。
【0068】
冷却部4(高圧側)と切断室5(低圧側)との差圧は、例えば0~6Paであることが好ましい。差圧は圧力センサ36,37によって管理されるが、所定の差圧計を用いてもよい。差圧の値は特に限定されるものではなく適宜調整できる。
【0069】
第二加圧工程では、第二加圧機構24の温調部28によって、外気ダクト25から取り込む気体の温度に応じて給気温度を調整する。これにより、搬送ブース9(特に冷却部4)内の温度を調整できるため、煙突効果によって搬送ブース9内に発生する上昇気流の風量を調整できる。
【0070】
第二加圧工程では、第二加圧機構24のフィルタ部29によって、給気される気体から異物を除去する。これにより、清浄度の高い気体を冷却部4に給気できる。
【0071】
なお、排気工程及び/又は第二加圧工程では、排気機構20による減圧条件や第二加圧機構24による加圧条件などを調整することにより、冷却部4の気圧が第二室6bの気圧よりも高い状態に維持されることが好ましい。このようにすれば、第二室6b内の異物が冷却室7に侵入しにくくなる。特に、図示例のように、徐冷炉3の下面よりも冷却部4の上面が大きく、第二室6bの一部と冷却部4の一部とが仕切り板15bを介して対面している場合に有効である。この場合、第二室6bで発生した異物の一部が、仕切り板15bの隙間等から冷却部4に流入することを防ぐことができる。
【0072】
冷却部4(高圧側)と第二室6b(低圧側)との差圧は、例えば5~30Paであることが好ましい。差圧は圧力センサ34,35によって管理されるが、所定の差圧計を用いてもよい。差圧の値は特に限定されるものではなく適宜調整できる。
【0073】
(第二実施形態)
図2に示すように、本発明の第二実施形態に係るガラス物品の製造装置1及び製造方法が、第一実施形態と相違するところは、第一室6aに排気機構41を設けた点と、第二室6bに給気機構51を設けた点である。
【0074】
排気機構41は、第一室6aに接続された還気ダクト42と、還気ダクト42から第一室6a内の気体を取り込む排気ファン43と、排気ファン43で取り込んだ気体を屋外に排気する排気ダクト44とを備える。
【0075】
排気機構41による気体の排気量は、加圧機構16による気体の給気量よりも少ないことが好ましい。つまり、第一室6aでは、加圧機構16により気体を給気しながら、排気機構41により気体を排気するが、排気機構41による排気は補助的なものであり、加圧機構16による第一室6aの加圧状態は維持されるようになっている。
【0076】
給気機構51は、屋外(建屋Xの外部)に接続された外気ダクト52と、外気ダクト52から屋外の気体(外気)を取り込む給気ファン53と、給気ファン53で取り込んだ気体を第二室6b内に給気する給気ダクト54とを備える。
【0077】
給気機構51による気体の給気量は、排気機構20による気体の給気量よりも少ないことが好ましい。つまり、第二室6bでは、給気機構51により気体を給気しながら、排気機構20により気体を排気するが、給気機構51による給気は補助的なものであり、排気機構20による第二室6bの減圧状態は維持されるようになっている。
【0078】
このようにすれば、第一室6a及び第二室6bのそれぞれで気体の給排気がなされるため、第一室6a及び第二室6bの気圧を調整しやすくなる。また、第一室6a及び第二室6bは成形炉2及び/又は徐冷炉3の熱で高温となり得るが、第一室6a内及び/又は第二室6b内の気体を流通させて入れ替えやすくなるため、それぞれの室内の気温を適度に下げることができる。
【0079】
なお、上記の実施形態では、第一室6aに排気機構41を設けると共に、第二室6bに給気機構51を設ける場合を説明したが、排気機構41及び給気機構51のうちのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0080】
(第三実施形態)
図3に示すように、本発明の第三実施形態に係るガラス物品の製造装置1及び製造方法が、第二実施形態と相違するところは、加圧機構16による気体の給気と、排気機構41による気体の排気とを、第一室6aの上方から行う点にある。
【0081】
詳細には、加圧機構16は、搬送ブース9の一方側の側方で、第一室6aの上方から冷気Cを室内に給気する。排気機構41は、搬送ブース9の他方側の側方で、第一室6aの上方から熱気(成形炉2や徐冷炉3の影響により温められた冷気)Wを室外に排気する。ここで、冷気Cは例えば常温(20℃±15℃)であり、熱気Wは例えば80℃±20℃である。
【0082】
このようにすれば、冷気Cは密度が高く下降する傾向があり、熱気Wは密度が低く上昇する傾向があるため、第一室6a内で気体を効率よく循環させることができる。したがって、成形炉2や徐冷炉3の影響により高温になりやすい第一室6a内の気温を効率よく下げることができる。
【0083】
なお、上記の実施形態では、加圧機構16により第一室6aの上方から冷気を室内に給気すると共に、加圧機構16とは異なる位置で、排気機構41により第一室6aの上方から熱気を室外に排気する場合を説明したが、当該構成は、第二室6bにも適用できる。つまり、給気機構51により第二室6bの上方から冷気を室内に給気すると共に、給気機構51とは異なる位置で、排気機構20により第二室6bの上方から熱気を室外に排気してもよい。
【0084】
また、冷気の給気位置及び熱気の排気位置は、上方に限らず、側方から第一室6a及び/又は第二室6bの上部に給排気してもよい。
【0085】
(第四実施形態)
図4に示すように、本発明の第四実施形態に係るガラス物品の製造装置1及び製造方法が、第二実施形態と相違するところは、冷却部4にも排気機構61を設けた点である。
【0086】
排気機構61は、冷却部4に接続された還気ダクト62と、還気ダクト62から冷却部4内の気体を取り込む排気ファン63と、排気ファン63で取り込んだ気体を屋外に排気する排気ダクト64とを備える。
【0087】
冷却部4では、切断室5からのパーティクルの影響を考慮し、加圧機構24と排気機構61とは距離をできるだけ離すことが好ましい。また、冷却部4の上部に加圧機構24を配置し、冷却部4の下部に排気機構61を配置することが好ましい。このため、本実施形態では、冷却部4の上部に配置された加圧機構24(給気ダクト27)の対角に排気機構61(還気ダクト62)が配置されている。このようにすれば、冷却部4内で気体が循環するため、パーティクルを確実に補足して外部に排出しやすくなる。
【0088】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0089】
第一加圧機構16は、建屋Xの外部から気体を取り込む構成に限定されず、例えば、第一室6aの室外であれば、建屋Xの室内のいずれかの場所から気体を取り込む構成であってもよい。このように建屋Xの室内から気体を取り込む場合、ダクト17,19を短くできるなどの利点がある。このように建屋Xの室内から気体を取り込む構成は、加圧機構24、給気機構51についても同様に適用できる。
【0090】
排気機構20は、建屋Xの外部に気体を排気する構成に限定されず、例えば、第二室6bの室外であれば、建屋Xの室内のいずれかの場所に気体を排気する構成であってもよい。このように建屋Xの室内に気体を排気する場合、ダクト21,23を短くできるなどの利点がある。また、排気機構20は、第二室6bと気体が排気される部分(例えば建屋Xの外部)との差圧を利用して第二室6bの気体を室外に排気する構成であってもよい。すなわち、排気機構20は、例えば、排気ファン22を備えることなく、第二室6bの壁部に設けられた開口部によって第二室6bの気体を室外に排気する構成であってもよい。これらの構成は、排気機構41,61についても同様に適用できる。
【0091】
排気機構20は、第二加圧機構24のように、フィルタ部をさらに備えていてもよい。フィルタ部によって、排気される気体から異物(鉄粉など)を除去すれば、清浄度の高い気体を屋外に排気できる。同様の理由により、排気機構41,61が、フィルタ部をさらに備えていてもよい。
【0092】
第一加圧機構16は、第二加圧機構24のように、フィルタ部をさらに備えていてもよい。フィルタ部によって、第一室6aに給気される気体から異物を除去すれば、清浄度の高い気体を第一室6aに給気できる。同様の理由により、給気機構51が、フィルタ部をさらに備えていてもよい。
【0093】
第一加圧機構16は、第二加圧機構24のように、温調部をさらに備えていてもよい。温調部によって、第一室6aに給気される気体の温度を調整すれば、第一室6a内の気体が成形炉2や徐冷炉3の上部3aに侵入したとしても、成形条件や徐冷条件の乱れを小さくできると考えられる。同様の理由により、給気機構51が、温調部をさらに備えていてもよい。
【0094】
冷却室7及び/又は切断室5に、加圧機構(給気機構)及び/又は排気機構を設けてもよい。このようにすれば、冷却室7や切断室5の気圧を調整しやすくなる。つまり、差圧の管理が容易となる。
【0095】
切断室5の下階に、切断室5から廃棄ガラスを落下させて回収するための回収室を設けてもよい。
【0096】
ガラス物品の製造装置1は、切断室5の下流側において、ガラス板Gの耳部を含む幅方向両端部を切断する第二切断装置、ガラス板Gの端面を加工する端面加工装置、ガラス板Gを洗浄する洗浄装置、ガラス板Gを検査する検査装置などをさらに備えていてもよい。同様に、ガラス物品の製造方法は、切断工程の下流側において、ガラス板Gの幅方向両端部を切断する第二切断工程、ガラス板Gの端面を加工する端面加工工程、ガラス板Gを洗浄する洗浄工程、ガラス板Gを検査する検査工程などをさらに備えていてもよい。
【0097】
上記の実施形態では、ガラス板Gを例示したが、ガラス物品はこれに限定されず、巻芯の周囲にガラスリボンGrをロール状に巻き取ったガラスロールなどであってもよい。この場合、ガラス物品の製造装置1は、冷却部4の下流側において、ガラスリボンGrの耳部を含む幅方向両端部を切断して除去する切断装置、ガラスリボンGrをロール状に巻き取ってガラスロールを得る巻取装置などをさらに備えていてもよい。同様に、ガラス物品の製造方法は、冷却工程の下流側において、ガラスリボンGrの幅方向両端部を切断して除去する切断工程、ガラスリボンGrをロール状に巻き取ってガラスロールを得る巻取工程などをさらに備えていてもよい。
【0098】
上記の実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によりにガラスリボンGr(又はガラス物品)を成形する場合を例示したが、スロットダウンドロー法、リドロー法などの他のダウンドロー法も利用できる。
【符号の説明】
【0099】
1 ガラス物品の製造装置
2 成形炉
3 徐冷炉
4 冷却部
5 切断室
6 成形徐冷室
6a 第一室
6b 第二室
7 冷却室
9 搬送ブース
11 成形体
16 第一加圧機構
20 排気機構
24 第二加圧機構
G ガラス板(ガラス物品)
Gr ガラスリボン