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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   E01H 8/10 20060101AFI20240905BHJP
   B05B 1/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E01H8/10
B05B1/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021188319
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075424
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】303059071
【氏名又は名称】独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】末木 健之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 晃平
(72)【発明者】
【氏名】小林 駿
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028897(JP,A)
【文献】特開2010-007423(JP,A)
【文献】特開2013-024015(JP,A)
【文献】特開昭53-114511(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226645(JP,U)
【文献】特開2006-007123(JP,A)
【文献】実開昭51-142610(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 8/10
B05B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール転換部に流体を噴射する噴射ノズルにおいて、
前記流体を通過させる流路と、前記流路の流体流れ方向の下流側端部に設けられる開口部とを有するノズル本体と、
前記開口部を前記流体流れ方向と交差する方向に2以上に分割する消音部材と、を備え
前記消音部材は線状の部材からなり、前記開口部の端面に平面的に架設されることを特徴とする噴射ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載する噴射ノズルにおいて、
前記消音部材は、ワイヤからなることを特徴とする噴射ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する噴射ノズルにおいて、
前記消音部材は、前記開口部を格子状に区切るように配置されることを特徴とする噴射ノズル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載する噴射ノズルにおいて、
前記消音部材は樹脂材料からなることを特徴とする噴射ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴射する噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地において、軌道に設置されたポイント部やノーズ可動クロッシング部等の可動部(以下、レール転換部という。)を転換する際、固定レールと可動レールとの間に氷塊や雪が存在していると、可動部が正常に動作することのできない不転換が発生するおそれがある。このようなレール転換部の不転換を防止するため、圧縮した空気を吹き付け、介在する氷塊等の異物を除去する噴射装置が従来知られている。また、このような噴射装置によって圧縮空気を噴射する際、大きな噴射音が発生するため、噴射音の低減が望まれている。
【0003】
特許文献1には、ポイント部に設置される噴射装置であって、噴射部に供給する流体の圧力を制御することにより噴射音を低減することができる噴射装置が開示されている。噴射部に供給する流体の圧力を圧力制御部によって降下させることで、噴射音は、高い圧力で発生する噴射音に対して相対的に低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-55275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記噴射装置では、噴射圧力を下げることによって噴射音を低減させているため、氷塊等の異物を除去する力(以下、除去力という。)も同時に低下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、必要な除去力を保ちつつ、噴射音を低減させることができる噴射ノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る噴射ノズルは、レール転換部に流体を噴射する噴射ノズルにおいて、前記流体を通過させる流路と、前記流路の流体流れ方向の下流側端部に設けられる開口部とを有するノズル本体と、前記開口部を前記流体流れ方向と交差する方向に2以上に分割する消音部材と、を備え、前記消音部材は線状の部材からなり、前記開口部の端面に平面的に架設されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る噴射ノズルにおいて、前記消音部材は、ワイヤからなると好適である。
【0010】
本発明に係る噴射ノズルにおいて、前記消音部材は、前記開口部を格子状に区切るように配置されると好適である。
【0011】
本発明に係る噴射ノズルにおいて、前記消音部材は樹脂材料からなると好適である。
【0013】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、必要な除去力を保ちつつ、噴射装置から発生する噴射音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る噴射装置が設置されるノーズ可動クロッシング部の概略構成を示す図
図2】本発明の第1の実施形態に係る噴射ノズルを示す正面図
図3図2のX-X断面図
図4】本発明の実施形態に係る噴射ノズルを示す正面図であって、図4(a)は第2の実施形態、図4(b)は第3の実施形態、図4(c)は第4の実施形態、図4(d)は第5の実施形態。
図5】本発明の第1から第5の実施形態に係る音圧レベル低減効果を示す実験データ
図6】本発明の第6の実施形態に係る噴射ノズルを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る噴射装置が設置されるノーズ可動クロッシング部の概略構成を示す図、図2は、本発明の第1の実施形態に係る噴射ノズルを示す正面図、図3は、図2のX-X断面図である。なお、本明細書において「流体流れ方向」、及び「上流・下流」とは、図3における矢印に示す方向及び向きと定義する。
【0018】
本実施形態に係る噴射ノズル1は、図1に示すように、軌道分岐部に備わるノーズ可動クロッシング部100に設置される。先ず、本実施形態に係るノーズ可動クロッシング部100について説明を行う。
【0019】
ノーズ可動クロッシング部100は、軌道分岐部において軌間線が交差する部分であり、可動式の可動ノーズレールB、及び固定レールC1、C2等を備える。可動ノーズレールBが転換する際、可動ノーズレールBが固定レールC1に押付けられると、可動ノーズレールBは固定レールC2から離間する。反対に、可動ノーズレールBが固定レールC2に押付けられると、可動ノーズレールBは固定レールC1から離間する。(ここで離間とは、距離的に離れている状態をいう。)
【0020】
降雪地においては、ノーズ可動クロッシング部100を通過する際に、固定レールC1、C2と可動ノーズレールBとの乗り移りに伴う振動で、列車の床下に付着した雪や氷塊が落下することがある。このとき、固定レールC1、C2と可動ノーズレールBとの間に落下した雪や氷塊が挟まると、軌道を転換することのできない不転換が発生する。
【0021】
ノーズ可動クロッシング部100には、圧縮空気を例とする流体を噴射することで、固定レールC1、C2と可動ノーズレールBとの間に存在する異物を吹き飛ばす噴射装置Aが、図1に示すように、複数設置される。
【0022】
噴射装置Aは、図1に示すように、可動ノーズレールBの両側であって、固定レールC1、C2の延長線上、及び固定レールC1、C2の間であって、可動ノーズレールBの先端側に設置される噴射ノズル1と、噴射ノズル1に圧縮空気を供給する配管2とを備える。
【0023】
噴射ノズル1は、配管2の一方の端部に接続され、配管2から供給された圧縮空気を噴射する。なお、圧縮空気は、配管2の他方の端部に接続された図示しない空気タンクから供給され、電磁弁等によって噴射タイミングが制御されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る噴射ノズル1について、詳しく説明を行う。
【0025】
噴射ノズル1は、図3に示すように、ノズル本体10及び消音部材31を備える。
【0026】
ノズル本体10は、ステンレス鋼等の金属材料によって形成され、例えば、SUS304相当材が好適に用いられる。ノズル本体10は、図3に示すように、流体流れ方向に伸びる中心軸線を有する略円筒形状をなし、流路11、開口部12、管用ねじ部14、及び貫通孔26を備える。
【0027】
流路11は、配管2から供給される圧縮空気を、流体流れ方向の上流から下流へと通過させる。流路11は、ノズル本体10の略円筒形状の内側であって、中心軸線を中心とした一定の内径に形成される。流路11は、異物を吹き飛ばすのに適切な流量の空気が通過可能な断面積を有する。本実施形態においては、空気タンクのゲージ圧が1MPaの場合、流路11は、内径が14mm以上50mm以下に形成されると好適であるが、これに限らず、適宜設定しても構わない。
【0028】
開口部12は、流路11の下流側端部に位置し、圧縮空気を大気中に噴射する。開口部12は、流路11と連続しており、開口部12の径は、流路11の下流側端部の内径に等しい。
【0029】
管用ねじ部14は、配管2と螺合するねじ部であって、ノズル本体10の上流側外径面に形成される。管用ねじ部14は、一般的に流通している管用テーパーねじ又は管用平行ねじの規格に適合するように形成されると好適である。なお、管用ねじ部14を配管2に締結する際、工具でノズル本体10を把持することができるように、ノズル本体10の外径面には六角部または平行な2平面が形成されていると好適である。
【0030】
貫通孔26は、ノズル本体10の下流側端面と外径面を連絡するように複数設けられた孔であって、消音部材31を貫通させる。貫通孔26の両端部には、消音部材31を傷つけることが無いように、面取りが施されると好適である。
【0031】
消音部材31は、図2に示すように、線状の部材(以下、ワイヤという。)であって、開口部12を上下及び左右方向に架設し、正面視において格子状となるように取り付けられる。また、消音部材31は、図3に示すように、ノズル本体10の下流側端面において、ワイヤの軸線方向が流体流れ方向と交差する方向となるように取り付けられている。消音部材31は、貫通孔26を貫通し、両端部に貫通孔26の内径よりも大きな止め具を取り付けることによって、ノズル本体10に固定される。なお、消音部材31の固定方法はこれに限らず、消音部材31の両端部をノズル本体10の外径面にビス等の締結部材によって固定しても構わない。
【0032】
なお、図3に示す、本実施形態に係る消音部材31の取付構造は、開口部12を一か所のみ架設するような短いワイヤからなる消音部材31を、格子状に複数取り付ける構造であるが、消音部材31の取付構造はこれに限らず、一本の長いワイヤからなる消音部材31を、一続きに、開口部12を複数回往復させ格子状に架設させて取り付けても構わない。
【0033】
本実施形態において、消音部材31は、線径が0.9mm以上1.2mm以下のワイヤ
であると好適であるが、消音部材31の線径はこれに限らず、適宜設定しても構わない。また、本実施形態において、消音部材31は、樹脂製のワイヤであると好適であるが、消音部材31の材質はこれに限らず、金属製のワイヤであっても構わない。
【0034】
また、格子状に取り付けられた消音部材31のワイヤ同士の間隔は8mm以上14mm以下であると好適であるが、これに限らず、適宜設定しても構わない。このように消音部材31の線径や格子の間隔を変化させた場合であっても、後述する性能確認試験において同様な結果を得られることが確認されている。
【0035】
上記のようにノズル本体10に取り付けられた消音部材31は、開口部12から噴射される圧縮空気を、流体流れ方向に対して交差する方向に分割する。
【0036】
なお、消音部材31は、以下に示す第2から第5の実施形態のように取り付けられても構わない。第2から第5の実施形態に係る噴射ノズルは、第1の実施形態に対して、消音部材31の配置のみが相違し、その他の構成については、第1の実施形態と同一である。以下に示す第2から第5の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態の場合と同一の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係る噴射ノズルを示す正面図であって、図4(a)は第2の実施形態、図4(b)は第3の実施形態、図4(c)は第4の実施形態、図4(d)は第5の実施形態である。
【0038】
[第2の実施形態]
第2の実施形態における消音部材31は、図4(a)に示すように、開口部12の略中心を通るように一か所のみ架設するように取り付けられる。また、消音部材31は、ワイヤの軸線方向が流体流れ方向と交差する方向となるように取り付けられている。その他、消音部材31のノズル本体10への固定方法、及び消音部材31の材質や線径については第1の実施形態と同様である。なお、図4(a)では、消音部材31が開口部12の略中心を左右方向に架設するように取り付けられる構造を図示しているが、消音部材31が取り付けられる方向はこれに限らず、上下方向または斜め方向に架設するように取り付けられても構わない。
【0039】
[第3の実施形態]
第3の実施形態における消音部材31は、図4(b)に示すように、開口部12の略中心を通り、正面視において十字状に架設するように取り付けられる。また、消音部材31は、ワイヤの軸線方向が流体流れ方向と交差する方向となるように取り付けられている。その他、消音部材31のノズル本体10への固定方法、及び消音部材31の材質や線径については第1の実施形態と同様である。なお、図4(b)では、消音部材31は、開口部12の略中心を通り、上下及び左右方向に架設するように取り付けられる構造を図示しているが、消音部材31が取り付けられる方向はこれに限らず、斜め方向に架設するように取り付けられても構わない。
【0040】
[第4の実施形態]
第4の実施形態における消音部材31は、図4(c)に示すように、開口部12を上下左右方向に架設し、井の字形となるように取り付けられ、かつ、開口部12の略中心を通りX字形に架設するように取り付けられる。また、消音部材31は、ワイヤの軸線方向が流体流れ方向と交差する方向となるように取り付けられている。その他、消音部材31のノズル本体10への固定方法、及び消音部材31の材質や線径については第1実施例と同様である。なお、消音部材31が取り付けられる方向は、図4(c)に示す方向に限らず、ノズル本体10の中心軸線を回転中心として、回転させた角度に取付けても構わない。
【0041】
[第5の実施形態]
第5の実施形態における消音部材31’は、図4(d)に示すように、樹脂製または金属製の線状部材を編み合わせた、メッシュ又は亀甲金網で構成されており、開口部12を覆うように取り付けられる。また、消音部材31’は、線状部材の軸線方向が流体流れ方向と交差する方向となるように取り付けられている。第5の実施形態における消音部材31’のノズル本体10への固定方法については、開口部12から噴射される圧縮空気によって、消音部材31’が外れない程度に固定されていればよく、例えば、テープ等によってノズル本体10の外径面に取り付けられても構わない。
【0042】
次に、本発明の第1から第5の実施形態に係る噴射ノズル1による、噴射音の低減作用について説明を行う。
【0043】
一般的に、噴射ノズルから発生する噴射音は、噴射ノズルの開口部から噴射された高速流体の外縁と、外気との間に作られるせん断層で発生し、噴射音の大きさは高速流体と外気との速度差に依存する。
【0044】
本発明の第1から第5の実施形態において、ノズル本体10の開口部12に消音部材31、31’が取り付けられると、開口部12から噴射される高速流体は、消音部材31、31’によって、流体流れ方向と交差する方向に複数分割される。消音部材31、31’によって分割された高速流体の分割面には、外気との境界となる新たなせん断層が発生する。これらの新たなせん断層の作用により、上述した高速流体の外縁に作られるせん断層の強さが弱められることで、噴射ノズル1から発生する全体としての噴射音を低減させることができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る噴射ノズル1による噴射音の低減効果について、性能確認試験の結果を用いて説明を行う。
【0046】
図5は、本発明の第1から第5の実施形態に係る音圧レベルの削減効果を示す試験データである。なお、図5に示す基準データとは、本発明の消音部材31、31’が取り付けられていない従来の噴射ノズルから発生した噴射音の測定結果である。
【0047】
図5のグラフによると、本発明の第1から第5の実施形態に係るすべての実施形態から発生する噴射音は、従来の噴射ノズルから発生する噴射音に対して、低減されたことが確認できる。また、線状の消音部材31、31’が多く架設され、開口部12から噴射される圧縮空気が分割される箇所の多い実施形態であるほど、噴射音の低減効果が高いことが確認できる。
【0048】
なお、人が知覚することのできる音の周波数範囲(以下、可聴周波数帯域という。)は、およそ20Hzから20kHzであるが、可聴周波数帯域の中でも特に人の聴力の感度が良い周波数帯域は2kHz~4kHzであることが知られている。したがって、この周波数帯域の音圧レベルを低減させることで、効果的に噴射音を低減することができる。
【0049】
図5の下段のグラフによれば、第1及び第5の実施形態に係る消音部材31を取り付けた噴射ノズル1から発生する噴射音は、人の聴力の感度が良いとされる2kHz~4kHzの周波数帯域の音圧レベルが大幅に低減されており、更に、それ以外の広範囲の周波数帯域においても音圧レベルの低減効果が高いことが確認できる。
【0050】
次に、本実施形態に係る噴射ノズル1による除去力について説明を行う。
【0051】
噴射ノズル1による除去力の確認方法は、所定の重さ(例えば、4kgとする。)の氷塊を、可動ノーズレールBと固定レールC1、C2の間に置き、可動ノーズレールBが不転換しない位置まで、圧縮空気の噴射によって氷塊を吹き飛ばすことが可能であるかを確認することにより行う。
【0052】
第1及び第5の実施形態について行った上記確認試験によると、第1及び第5の実施形態に係る消音部材31を取り付けた噴射ノズルは、氷塊を可動ノーズレールBが不転換しない位置まで吹き飛ばすことが可能であった。また、第2から第4の実施形態に係る消音部材31は、第1の実施形態に係る消音部材31よりも、開口部12に架設されるワイヤの数が少なく、除去力を低下させる影響についても、第1の実施形態に対して小さいことが確認されている。したがって、本発明の第1から第5の実施形態に係る消音部材31を取り付けた噴射ノズルより発生する除去力は、異物を吹き飛ばすのに十分な大きさである。
【0053】
[第6の実施形態]
以上説明した第1から第5の実施形態に係る噴射ノズル1では、ノズル本体10に取付けられた線状の消音部材31、31’によって、開口部12から噴射される圧縮空気を、流体流れ方向と交差する方向に分割する構造について説明した。次に説明する第6の実施形態に係る噴射ノズル1’は、第1から第5の実施形態とは異なる形態を有する噴射ノズルの実施形態について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る噴射ノズル1’を示す斜視図である。
【0055】
第6の実施形態に係る噴射ノズル1’は、図6に示すように、ノズル本体10、及び消音装置20備える。
【0056】
第6の実施形態に係る噴射ノズル1’は、線状の消音部材31を具備せず、消音装置20が取り付けられている点について、第1から第5の実施形態に係る噴射ノズル1と相違する。
【0057】
消音装置20は、ノズル本体10の下流側端部に既知の取付手段によって取り付けられる。消音装置20は、ステンレス鋼等の金属材料によって形成され、例えば、SUS304相当材が好適に用いられる。消音装置20は、略円筒形状をなし、溝付き開口部28を有する。
【0058】
溝付き開口部28は、消音装置20の下流側端部に位置する開口部であって、開口部の外縁には複数の放射状の溝29が形成されている。
【0059】
このような、消音装置20をノズル本体10に取付けることで、ノズル本体10の開口部12の下流側には、複数の放射状の溝29が形成された外縁が配置される。
【0060】
なお、上記では、複数の放射状の溝29を有する消音装置20とノズル本体10が別部品である構造について説明を行ったが、本実施形態の構造はこれに限らず、ノズル本体10の開口部12の外縁に、直接、複数の放射状の溝29を形成しても構わない。
【0061】
次に、第6の実施形態に係る噴射ノズル1’による、噴射音の低減作用について説明を行う。
【0062】
第6の実施形態において、ノズル本体10に消音装置20が取り付けられると、開口部12から噴射される高速流体の外縁は、放射状に形成された溝29によって、外気との混合が促進される。噴射ノズルから発生する噴射音の大きさは、一般的に、噴射ノズルの開口部から噴射された高速流体と、外気との速度差に依存する。第6の実施形態においては、消音装置20によって高速流体の外縁と外気とを混合させ、開口部12から噴射された高速流体と外気との速度差を穏やかにすることにより、噴射音を低減させることができる。
【0063】
以上のように、本発明の第1から第5の実施形態に係る消音部材31、31’、または第6の実施形態に係る消音装置20を噴射ノズルに取り付けることで、ノーズ可動クロッシング部100に存在する異物を吹き飛ばすのに必要な除去力を保ちつつ、圧縮空気を噴射する際に発生する噴射音を低減せることができる。
【0064】
なお、上記では、ノズル本体10及び消音装置20の材質として、ステンレス鋼等の金属材料が使用されるとして説明を行ったが、ノズル本体10及び消音装置20の材質はこれに限らず、アルミニウム合金等の非金属材料、塩化ビニル等の樹脂材料を用いても構わない。また、上記では、ノズル本体10と消音部材31とが別部品である構造について説明を行ったが、ノズル本体10と消音部材31の構造はこれに限らず、ノズル本体10と消音部材31が一体となった1つの部品に形成されても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0065】
1、1’ 噴射ノズル, 2 配管, 10 ノズル本体, 11 流路, 12 開口部, 14 管用ねじ部, 20 消音装置, 26 貫通孔, 28 溝付き開口部, 29 溝, 31、31’ 消音部材, 100 ノーズ可動クロッシング部, A 噴射装置, B 可動ノーズレール, C1、C2 固定レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6