(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】台車用吊り具および台車
(51)【国際特許分類】
B66C 1/62 20060101AFI20240905BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240905BHJP
B65D 19/38 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B66C1/62 Z
B62B3/00 Z
B65D19/38 C
(21)【出願番号】P 2023171378
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2019193073の分割
【原出願日】2019-10-23
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】596027782
【氏名又は名称】大一機材工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 勝信
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0152700(US,A1)
【文献】特開2007-261466(JP,A)
【文献】特表平8-503438(JP,A)
【文献】特開2016-052805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
B62B 1/00-5/08
B65D 19/00-19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に組み付けられて使用され、
相互に離間して平行に配置されて台車の荷台を下面側から受け支える一対の差渡しフレーム部材と、
前記差渡しフレーム部材同士を連結する連結フレーム部材と、
前記差渡しフレーム部材各々の両端部に取り付けられて、前記台車を吊って昇降させるための昇降機械の留め具が掛けられる引掛部と、を有する、
ことを特徴とする台車用吊り具。
【請求項2】
前記引掛部が、前記荷台に積載される資材を締め付けて固定するための荷締め具を係合させる係合部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の台車用吊り具。
【請求項3】
前記差渡しフレーム部材の側縁が、前記荷台の下面側において凹凸を形成する部材又は構造の側縁に当接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の台車用吊り具。
【請求項4】
請求項1に記載の台車用吊り具を備える、
ことを特徴とする台車。
【請求項5】
前記荷台の下面側に差し渡されて配置されて車輪が取り付けられる車輪受部材を有し、
前記車輪受部材が、
長方形の板状に形成されたベースフランジと、
前記ベースフランジの下面の前記長方形の長手方向に沿う両側縁部それぞれから離間しつつ下向きに突出して対向する一対のウェブと、
前記ウェブ各々の下端と連接して前記ベースフランジと対向する一対の下フランジと、を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の台車。
【請求項6】
前記荷台の一部を構成するフレーム体と前記車輪受部材との間に隙間が設けられて手持ち用間隙が形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設資材などを積載した状態の台車を吊る際に用いられる台車用吊り具と、この台車用吊り具を備える台車に関する。
【背景技術】
【0002】
資材や荷物を積載して運搬するための台車として、例えば、均一な厚みの単板として形成されて上面に荷を載置する水平な荷支持板と、該荷支持板の下面に取り付けられて偏心回動する4個の自在輪とを有する運搬台車が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、台車に積載して運搬した建設資材などを、これら建設資材などが実際に使われる場所へと、例えばクレーンによって持ち上げたり下ろしたりする場合がある。この場合、例えば特許文献1のような従来の台車では、台車に積載されている建設資材などを昇降用のかごへと移し替える必要があり、建設資材などを昇降させるたびに多大な手間および時間がかかるという問題がある。
【0005】
特許文献1の台車では、また、荷支持板が均一な厚みの単板として形成されるとともに各自在輪が荷支持板の下面に直にボルトによって固定されており、荷支持板に載置される資材などの荷重を荷支持板のみによって受け支える構造であるため、積載荷重が小さい値に制限されるという問題があり、また、積載荷重を大きくしようとすると荷支持板全体の厚みが厚くなって台車自体が非常に重くなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、台車に積載して運搬した資材や荷物を昇降させる際の手間を低減し時間を短縮することが可能な台車用吊り具および台車を提供することを目的とする。本発明は、加えて、部分的な改良によって台車の強度を向上させることが可能な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る台車用吊り具は、台車に組み付けられて使用され、相互に離間して平行に配置されて台車の荷台を下面側から受け支える一対の差渡しフレーム部材と、前記差渡しフレーム部材同士を連結する連結フレーム部材と、前記差渡しフレーム部材各々の両端部に取り付けられて、前記台車を吊って昇降させるための昇降機械の留め具が掛けられる引掛部と、を有する、ようにしてよい。
【0008】
本発明に係る台車用吊り具は、前記引掛部が、前記荷台に積載される資材を締め付けて固定するための荷締め具を係合させる係合部を備える、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る台車用吊り具は、前記差渡しフレーム部材の側縁が、前記荷台の下面側において凹凸を形成する部材又は構造の側縁に当接する、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る台車は、上記に記載の台車用吊り具を備える、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る台車は、前記荷台の下面側に差し渡されて配置されて車輪が取り付けられる車輪受部材を有し、前記車輪受部材が、長方形の板状に形成されたベースフランジと、前記ベースフランジの下面の前記長方形の長手方向に沿う両側縁部それぞれから離間しつつ下向きに突出して対向する一対のウェブと、前記ウェブ各々の下端と連接して前記ベースフランジと対向する一対の下フランジと、を有する、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る台車は、前記荷台の一部を構成するフレーム体と前記車輪受部材との間に隙間が設けられて手持ち用間隙が形成されている、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、台車によって資材等を運搬した上で、引掛部を利用して、資材等が実際に使われる場所へと台車ごとクレーンなどにより吊って昇降させることが可能になり、台車に積載して運搬した資材等を昇降させる際の手間を低減し時間を短縮することが可能となる。
【0014】
本発明によれば、加えて、台車の荷台の下面側に於いて差し渡されて台車を受け支える2本の差渡しフレーム部材を有するので、これら2本の差渡しフレーム部材が両端支持の梁として機能し、台車全体としての強度を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明によれば、引掛部の係合部を利用して、台車に積載されている資材等が荷崩れしないように荷締め具によって締め付けて固定することが可能になり、台車に積載した資材等を運搬したり昇降させたりする際の安全性を確保することが可能となる。
【0016】
本発明によれば、台車用吊り具の、台車に対するずれ/がたつきを防止し、台車への台車用吊り具の組み付けの安定性を向上させ、延いては、台車によって資材等を昇降させる際の安全性を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明によれば、ベースフランジの長手方向に沿う両側縁部それぞれにウェブおよび下フランジを有することによって単なる平板材と比べて断面係数が大きい形態として構成される車輪受部材が台車の荷台の下面側に於いて差し渡されて台車を受け支えるので、この車輪受部材が両端固定の梁として機能し、台車全体としての強度を向上させることが可能となる。
【0018】
本発明によれば、台車を持ち運ぶ際に手持ち用間隙に手を差し入れて把手として利用することができるので、例えば台車の寸法が大きい場合でも、台車を容易に持ち運ぶことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態に係る台車用吊り具を示す斜視図である。
【
図6】
図1に示す台車用吊り具が組み付けられた状態の台車の正面図である。
【
図7】
図1に示す台車用吊り具が組み付けられた状態の台車の側面図である。
【
図8】
図1に示す台車用吊り具が組み付けられた状態の台車の平面図である。
【
図9】
図1に示す台車用吊り具が組み付けられた状態の台車の底面図である。
【
図10】実施の形態に係る台車の車輪受部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。以下の説明では、各図に表す矢印方向の通りに前後方向、左右方向、および上下方向を定義する。
【0021】
図1~
図5はこの発明の実施の形態に係る台車用吊り具1を示す図であり、
図6~
図9はこの実施の形態に係る台車用吊り具1が組み付けられた台車10を示す図である。この台車用吊り具1は、台車10に組み付けられて、種々の資材や荷物などを積載した状態の台車10をクレーンなどにより吊って昇降させるための吊り具として機能する仕組みである。
【0022】
台車10は、複数のフレーム部材によって構成されるフレーム体11と、該フレーム体11の上面側に取り付けられる荷受板16と、フレーム体11の下面側に取り付けられる車輪17とを有する。この実施の形態では、台車10の荷台が、フレーム体11と荷受板16とによって構成されている。また、台車用吊り具1は、複数のフレーム部材によって構成される台車支持部2と、該台車支持部2に取り付けられる引掛部3と、台車支持部2に取り付けられる係合部4と、を有する。
【0023】
台車10のフレーム体11は、管状(筒状,棒状)のフレーム部材が枠体状(額縁状)に組み合わされ結合されて構成される枠フレーム12と、該枠フレーム12の内側に管状(筒状,棒状)のフレーム部材が格子状に組み合わされ結合されて構成される格子フレーム13とを有する。
【0024】
枠フレーム12は、4本のフレーム部材が連結されて平面視において方形の枠体状(額縁状)をなしている。具体的には、各々が左右方向に沿って配置されるとともに前後方向において相互に離間する前フレーム部材12aおよび後フレーム部材12bと、各々が前後方向に沿って配置されるとともに左右方向において相互に離間して前フレーム部材12aおよび後フレーム部材12bの左端同士の間に配設されたり右端同士の間に配設されたりする左右一対の側辺フレーム部材12cとが、平面視において方形の枠体(額縁)をなすように組まれている。
【0025】
平面視において方形をなす枠フレーム12の四隅のそれぞれにコーナー部材14が配設される。コーナー部材14は、枠フレーム12を構成するフレーム部材同士を連結して結合するためのものであり、左右方向と前後方向とのそれぞれに沿って設けられた2つの連結間隙部141と、上下方向に沿って設けられた差込穴部142とを有する。
【0026】
コーナー部材14の連結間隙部141は、枠フレーム12を構成するフレーム部材が嵌合する中空部として形成される。コーナー部材14の2つの連結間隙部141のそれぞれには、前フレーム部材12aと側辺フレーム部材12cとが差し込まれたり、後フレーム部材12bと側辺フレーム部材12cとが差し込まれたりする。コーナー部材14と枠フレーム12を構成するフレーム部材のそれぞれとは、ねじ等の締結部材によって相互に固定される。
【0027】
コーナー部材14の差込穴部142は、パイプ(単管パイプ,鋼管パイプなど;図示していない)が抜き差し自在に差し込まれる中空部として形成される。差込穴部142の下端にはボルトが水平方向に差し込まれ、差込穴部142の上端開口から上下方向に沿って差し込まれたパイプが前記ボルトに突き当たることによって支持される。差込穴部142に差し込まれて支持されるパイプは、台車10を移動させる際に掴まれてハンドルのように機能する操作棒として使用される。
【0028】
格子フレーム13は、方形の枠体をなす枠フレーム12の内側に6本のフレーム部材が組まれて平面視において格子状をなしている。具体的には、各々が左右方向に沿って配置されるとともに前後方向において相互に離間する4本の左右方向フレーム13aと、各々が前後方向に沿って配置されるとともに左右方向において相互に離間する2本の前後方向フレーム13bとが、相互に直交するように交差して平面視において格子体をなすように組まれている。
【0029】
格子フレーム13の左右方向フレーム13aと前後方向フレーム13bとは、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によって相互に固定されたりする。また、格子フレーム13は、枠フレーム12に対して、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によって固定されたりする。
【0030】
フレーム体11を構成する各フレーム部材(管材,筒材,棒材)の材質は、特定の種類の素材に限定されるものではなく、例えば強度や重量が考慮されるなどした上で適当な素材が適宜選択される。フレーム体11を構成する各フレーム部材の材質としては、具体的には例えば、アルミニウム合金が挙げられる。また、フレーム体11を構成する各フレーム部材として、例えば、角パイプ状に形成された部材が用いられる。
【0031】
台車10の荷受板16は、資材や荷物などを載せるためのものであり、板状に形成されて、フレーム体11の上面側に取り付けられる。荷受板16は、フレーム体11に対して、例えば、ねじ等の締結部材によって固定される。
【0032】
荷受板16は、左右一対の側辺フレーム部材12c同士の間に張り渡される前部分16aおよび後部分16bと、これら前部分16aと後部分16bとの間の中央部分16cとを有し、平面視において概ねエ字形に形成される。平面視において方形をなすフレーム体11の上面のうち、前端寄りの部分および後端寄りの部分は荷受板16で塞がれず、また、荷受板16の中央部分16cの左右側方部分であって前部分16aと後部分16bとの間の部分も荷受板16で塞がれない。
【0033】
台車10の車輪17は、フレーム体11の下面側に、車輪受部材18を介して取り付けられる。
【0034】
図10~
図14はこの実施の形態に係る車輪受部材18を示す図である。車輪受部材18は、フレーム体11と車輪17との間に介在してフレーム体11に対して車輪17を取り付けるための部材であり、ベースフランジ18aと、該ベースフランジ18aと連接する一対のウェブ18bと、これらウェブ18bのそれぞれと連接する一対の下フランジ18cとを有する。
【0035】
車輪受部材18は、左右方向に沿って配置され(即ち、左右方向が長手方向である)、フレーム体11の下面側の前端寄りの位置(符号18A)、後端寄りの位置(符号18B)、および前後方向における中間の位置(符号18C)のそれぞれに取り付けられる。車輪受部材18は、フレーム体11に対して、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によって固定されたりする。
【0036】
車輪受部材18のベースフランジ18aは長方形の板状をなし、この長方形の長手方向が左右方向に沿った姿勢で車輪受部材18はフレーム体11へと取り付けられる。ベースフランジ18aの下面の、長手方向(言い換えると、台車10の荷台の下面側に於ける差渡し方向)に沿う両側縁部それぞれの端寄りの位置に、離間しつつ下向きに突出/延出するウェブ18bが一対のものとして形成される。すなわち、一対のウェブ18bは、ベースフランジ18aの下面に、該ベースフランジ18aの長手方向に沿って相互に平行に且つ対向して形成される。一対のウェブ18b各々の下端に、該ウェブ18bを挟んでベースフランジ18aと対向する下フランジ18cが一対のものとして形成される。一対の下フランジ18cのそれぞれは、ウェブ18bから、該ウェブ18bの長手方向と直交する方向の両側に突出/延出するものとして形成される。
【0037】
車輪受部材18は、ベースフランジ18aに加えてウェブ18bおよび下フランジ18cを有するので、ベースフランジ18aのみのような単なる平板材と比べて、断面係数が大きく、したがって高い強度を発揮する。
【0038】
フレーム体11の下面側の前端寄りの位置に取り付けられる前側車輪受部材18Aは、前フレーム部材12aと、格子フレーム13を構成する一番前側の左右方向フレーム13aとの間に配設される。また、フレーム体11の下面側の後端寄りの位置に取り付けられる後側車輪受部材18Bは、後フレーム部材12bと、格子フレーム13を構成する一番後ろ側の左右方向フレーム13aとの間に配設される。さらに、フレーム体11の下面側の前後方向における中間の位置に取り付けられる中間車輪受部材18Cは、格子フレーム13を構成する前後方向における中間の2本の左右方向フレーム13a同士の間に配設される。なお、図に示す例では、前側車輪受部材18Aおよび後側車輪受部材18Bは左右一対の側辺フレーム部材12cに対して一体の部材として架け渡されて配設され、中間車輪受部材18Cは左右一対の側辺フレーム部材12cそれぞれ寄りの位置の各々に別体の部材として配設される(即ち、中間車輪受部材18Cは左右一対のものとして配設される)。
【0039】
平面視において方形をなすフレーム体11の上面のうち荷受板16によっては塞がれない、前端寄りの部分が前側車輪受部材18Aによって荷受板16の上面よりも一段下がった位置で塞がれ、また、後端寄りの部分が後側車輪受部材18Bによって荷受板16の上面よりも一段下がった位置で塞がれ、さらに、荷受板16の中央部分16cの左右側方部分が中間車輪受部材18Cによって荷受板16の上面よりも一段下がった位置で塞がれる。
【0040】
図に示す例では、フレーム体11の上面のうち前端寄りの部分および後端寄りの部分ならびに荷受板16の中央部分16cの左右側方部分が荷受板16で塞がれないようにされるとともに、フレーム体11と車輪受部材18との間に隙間が複数生じるようにし、これらの隙間が手持ち用間隙19として利用されるようにしている。手持ち用間隙19は、台車10を持ち運ぶ際に手が差し入れられて把手として利用される。手持ち用間隙19が設けられることにより、例えばフレーム体11の寸法が大きい場合でも、台車10を容易に持ち運ぶことが可能となる。
【0041】
車輪受部材18の材質は、特定の種類の素材に限定されるものではなく、例えば強度や重量が考慮されるなどした上で適当な素材が適宜選択される。なお、車輪受部材18は、複数の部品が組み合わされて形成されるようにしてもよいが、特に良好な強度を確保する観点からは一体成形されることが好ましい。車輪受部材18は、例えば、アルミニウム合金を素材としてダイカスト成形されて形成される。
【0042】
フレーム体11の前端寄りの位置と後端寄りの位置とのそれぞれに取り付けられる車輪受部材18A、18B各々の、ベースフランジ18aの下面の左右両端部のそれぞれに、車輪17として、上下方向軸回りに転回可能な自在輪(キャスタ)17Aが取り付けられる。また、フレーム体11の前後方向における中間の位置に取り付けられる左右一対の車輪受部材18Cそれぞれの、ベースフランジ18aの下面に、車輪17として、前後方向固定の固定輪17Bが取り付けられる。車輪17は、車輪受部材18に対して、例えば、トッププレート(取付台座)を介してねじ等の締結部材によって固定される。図に示す例では、車輪17は、車輪受部材18のベースフランジ18aに設けられた貫通孔18dを介して、ベースフランジ18aの下面に、一対のウェブ18bおよび一対の下フランジ18cによってトッププレート(取付台座)が挟まれる態様で取り付けられる。
【0043】
この実施の形態では、上記により、平面視において方形をなすフレーム体11の下面側の、四隅の角部分のそれぞれに自在輪17Aが取り付けられるとともに、前後方向における中間の左右部分のそれぞれに固定輪17Bが取り付けられる。なお、各位置に、車輪17として自在輪(キャスタ)と固定輪とのうちのどちらが取り付けられるかは任意である。また、フレーム体11の前後方向における中間の位置には車輪受部材18や車輪17が取り付けられないようにしてもよい。
【0044】
なお、平面視において方形をなすフレーム体11の上面のうち、荷受板16で塞がれない、前端寄りの部分および後端寄りの部分、並びに、荷受板16の中央部分16cの左右側方部分は、荷受板16の上面よりも下がった位置で車輪受部材18によって塞がれて凹みになる。そして、台車10を積み重ねる際に、荷受板16の上面において開口して車輪受部材18の上面を底面とする凹みに車輪17が入り込み、積み重ねられた台車10が崩れてしまうことが防止される。
【0045】
そして、この実施の形態に係る台車用吊り具1は、相互に離間して平行に配置されて台車10の荷台を下面側から受け支える一対の差渡しフレーム部材21と、相互に離間して平行に配置されて差渡しフレーム部材21同士を連結する一対の連結フレーム部材22と、差渡しフレーム部材21各々の両端部に取り付けられて、台車10を吊って昇降させるための昇降機械の留め具が掛けられる引掛部3と、を有するようにしている。なお、この実施の形態では、台車10の荷台が、フレーム体11と荷受板16とによって構成されている。
【0046】
台車用吊り具1の台車支持部2は、台車10のフレーム体11の下面側に配設されて台車10を受け支えるためのものであり、角パイプ材が枠体状(額縁状)に組み合わされ結合されて構成される。
【0047】
台車支持部2は、4本の角パイプ材が連結されて平面視において方形の枠体状(額縁状)をなしている。具体的には、各々が台車10の前フレーム部材12aおよび後フレーム部材12bの長手方向(即ち、左右方向)に沿って配置されるとともに前後方向において相互に離間する前後一対の差渡しフレーム部材21と、各々が台車10の側辺フレーム部材12cの長手方向(即ち、前後方向)に沿って配置されるとともに左右方向において相互に離間して前後一対の差渡しフレーム部材21各々の左端部同士を連結したり右端部同士を連結したりする左右一対の連結フレーム部材22とが、平面視において方形の枠体(額縁)をなすように組まれている。台車支持部2の差渡しフレーム部材21と連結フレーム部材22とは、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によって相互に固定されたりする。
【0048】
なお、連結フレーム部材22は、前後一対の差渡しフレーム部材21同士の間隔を固定する働きを有するものであり、2本備えられることは必須の構成ではない。すなわち、台車支持部2としての良好な強度の確保や、台車10の左右側縁部のそれぞれに1本ずつ配設することによって台車10の荷台の下面側の構造に影響されることなく配置できる点などにおいて連結フレーム部材22が2本備えられることは好ましいものの、連結フレーム部材22が左右中央部に1本のみ備えられるようにしてもよい。
【0049】
台車支持部2を構成する各フレーム部材(角パイプ材)の材質は、特定の種類の素材に限定されるものではなく、例えば強度や重量が考慮されるなどした上で適当な素材が適宜選択される。台車支持部2を構成する各フレーム部材として、例えば、鋼製の角パイプ材が用いられる。
【0050】
台車支持部2の前後一対の差渡しフレーム部材21同士の間隔は、差渡しフレーム部材21が車輪受部材18に当接する寸法に調節されることが好ましい。具体的には、前後一対のうちの前側の差渡しフレーム部材21の前面(側縁)が前側車輪受部材18Aの後面(具体的には、ベースフランジ18aおよび下フランジ18cの後面,側縁)に当接するとともに、前後一対のうちの後ろ側の差渡しフレーム部材21の後面(側縁)が後側車輪受部材18Bの前面(具体的には、ベースフランジ18aおよび下フランジ18cの前面,側縁)に当接するように、差渡しフレーム部材21同士の間隔が調節されることが好ましい。これにより、台車用吊り具1の、台車10に対する前後方向のずれ/がたつきが防止され、台車10への台車用吊り具1の組み付けの安定性が向上し、延いては、台車10によって資材等を昇降させる際の安全性が向上する。なお、差渡しフレーム部材21の側縁が当接する部材は、車輪受部材18でなくてもよく、台車10の荷台の(具体的には、フレーム体11の)下面側に於いて凹凸を形成するように固定されて配設されている部材や構造であれば何であってもよい。また、前後一対の差渡しフレーム部材21によって前後方向において挟まれる部材や構造の前面に前側の差渡しフレーム部材21の後面(側縁)が当接するとともに、前記部材や構造の後面に後ろ側の差渡しフレーム部材21の前面(側縁)が当接するようにしてもよい。
【0051】
台車用吊り具1の引掛部3は、台車支持部2に受け支えられている台車10を吊って昇降させる際に昇降機械の留め具(例えば、クレーンなどのフック)を掛け止めるためのものであり、さらに、台車10の荷受板16に積載されている資材や荷物などを荷崩れしないように締め付けて固定するための荷締め具(例えば、ラッシングベルト,荷締めベルト)を係合させるためのものであり、台車支持部2に取り付けられる。
【0052】
引掛部3は、台車支持部2の前後一対の差渡しフレーム部材21各々の左右両端それぞれに結合されて、合計4個が備えられる。
【0053】
引掛部3は、クレーンなどのフックを掛け止めるためのものであり、断面円形の棒材が曲げ加工されて側面視において上側部分を湾曲部分31とするとともに下側部分を直線部分32とする上下逆さのU字形に形成され、下端開口部に差渡しフレーム部材21の左端もしくは右端を挟んだ状態で差渡しフレーム部材21に対して取り付けられる。引掛部3は、差渡しフレーム部材21に対して、例えば、溶接によって接合されたり、ねじ等の締結部材によって固定されたりする。
【0054】
引掛部3の湾曲部分31の内側の空隙33は、湾曲部分31にクレーンなどのフックを掛け止める際にフックを通すための空間として利用される。
【0055】
係合部4は、荷受板16上の資材等を締め付けて固定するための荷締め具を係合させるためのものであり、断面円形の棒材が曲げ加工されて湾曲部分を有するU字形に形成され、引掛部3と隣接する位置若しくは近傍位置に、U字形のうちの湾曲部分を左右方向において外側に向けた姿勢で、U字形のうちの対向する一対の直線部分のうちの一方の端部が連結フレーム部材22の下面側に取り付けられるとともに他方の端部が連結フレーム部材22の上面側に取り付けられる。
【0056】
係合部4の湾曲部分の内側の空隙41は、荷受板16上の資材等を締め付けて固定する荷締め具を係合部4に係合させるために、荷締め具を通すための空間として利用される。
【0057】
台車支持部2の差渡しフレーム部材21の左右方向に沿う長さや、左右方向において対向する左右一対の引掛部3同士の間隔は、引掛部3が枠フレーム12の側辺フレーム部材12cに当接する寸法に調節されることが好ましい。具体的には、左右一対の引掛部3それぞれの、引掛部3のうちの左右方向において対向する相手方の引掛部3と対向する面が側辺フレーム部材12cの側面(側縁)に当接するように、差渡しフレーム部材21の長さや引掛部3同士の間隔が調節されることが好ましい。これにより、台車用吊り具1の、台車10に対する左右方向のずれ/がたつきが防止され、台車10への台車用吊り具1の組み付けの安定性が向上し、延いては、台車10によって資材等を昇降させる際の安全性が向上する。
【0058】
なお、台車用吊り具1は、台車10に対して、例えばフレーム体11と差渡しフレーム部材21との間に介在して配設される連結金具(図示していない)を介してボルトなどによって着脱自在に締結固定されることが好ましいものの、締結固定されないようにしてもよい。図に示す例では、差渡しフレーム部材21にボルト穴211が設けられ、このボルト穴211を貫通するボルト212により、台車用吊り具1がフレーム体11に対して連結固定可能であるように構成されている。
【0059】
この実施の形態に係る台車用吊り具1や台車10によれば、台車10によって資材等を運搬した上で、引掛部3を利用して、資材等が実際に使われる場所へと台車10ごとクレーンなどにより吊って昇降させることが可能になり、台車10に積載して運搬した資材等を昇降させる際の手間を低減し時間を短縮することが可能となる。さらに、引掛部3(特に、係合部4)を利用して、荷受板16上の資材等が荷崩れしないように荷締め具によって締め付けて固定することが可能になり、台車10に積載した資材等を運搬したり昇降させたりする際の安全性を確保することが可能となる。
【0060】
この実施の形態に係る台車用吊り具1や台車10によれば、加えて、台車10のフレーム体11の下面側に於いて左右方向に差し渡されてフレーム体11を受け支える2本の差渡しフレーム部材21を有するので、これら2本の差渡しフレーム部材21が両端支持の梁として機能し、台車10全体としての強度を向上させることが可能となる。
【0061】
また、この実施の形態に係る台車10によれば、台車10のフレーム体11の下面側に於いて左右方向に差し渡されてフレーム体11を受け支える3本の車輪受部材18を有し、且つ、該車輪受部材18は単なる平板材と比べて断面係数が大きい形態にしているので、これら3本の車輪受部材18が両端固定の梁として機能し、台車10全体としての強度を向上させることが可能となる。
【0062】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では本発明に係る台車用吊り具1が図に示す台車10に対して適用される場合を例に挙げて説明したが、本発明に係る台車用吊り具1が適用され得る台車の具体的な構成は上記の実施の形態における台車10に限定されるものではなく、図に示す例としての台車10における荷台を構成するフレーム体11や荷受板16に相当する構造を有してフレーム体11や荷受板16の下面側に台車用吊り具1の台車支持部2が組み付けられ得る台車であれば具体的な構成はどのような台車でもよい。例えば、上記の実施の形態では台車10が6輪であるが、4輪の台車でもよい(尚この場合は、車輪受部材18は2本でもよい)。また、上記の実施の形態における荷受板16に相当する構造を有する一方でフレーム体11に相当する構造を有しない台車(即ち、荷台が荷受板のみによって構成される台車)でもよい。フレーム体11を有しない構造であっても、台車の用途によっては、台車用吊り具1や車輪受部材18によって必要な強度が確保され得る。
【0063】
また、上記の実施の形態では台車10の荷受板16の長手方向(尚、通常想定される台車の走行方向である)を前後方向とした上で差渡しフレーム部材21が左右方向に沿って配置される(即ち、荷受板16の長手方向と直交する方向に沿って配置される)ようにしているが、台車10の荷受板16の長手方向を左右方向とした上で差渡しフレーム部材21が左右方向に沿って配置される(即ち、荷受板16の長手方向に沿って配置される)ようにしてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では台車用吊り具1が係合部4を有するようにしているが、台車用吊り具1が係合部4を有しないようにしてもよい。この場合も、引掛部3を利用して、台車10ごとクレーンなどにより吊って昇降させることが可能である。なおこの場合には、例えば、荷締め具(例えば、ラッシングベルト,荷締めベルト)をフレーム体11の下側から回り込ませて台車10と荷受板16上の資材等とを一括りにするように周回させることにより、荷受板16上の資材等を締め付けて固定することが考えられる。
【符号の説明】
【0065】
1 台車用吊り具
2 台車支持部
21 差渡しフレーム部材
211 ボルト穴
212 ボルト
22 連結フレーム部材
3 引掛部
31 湾曲部分
32 直線部分
33 空隙
4 係合部
41 空隙
10 台車
11 フレーム体
12 枠フレーム
12a 前フレーム部材
12b 後フレーム部材
12c 側辺フレーム部材
13 格子フレーム
13a 左右方向フレーム
13b 前後方向フレーム
14 コーナー部材
141 連結間隙部
142 差込穴部
16 荷受板
16a 前部分
16b 後部分
16c 中央部分
17 車輪
17A 自在輪
17B 固定輪
18 車輪受部材
18A 前側車輪受部材
18B 後側車輪受部材
18C 中間車輪受部材
18a ベースフランジ
18b ウェブ
18c 下フランジ
18d 貫通孔
19 手持ち用間隙