(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】脱臭工法及び脱臭施工システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20240905BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
F24F7/003
(21)【出願番号】P 2019004606
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月15日に、UR錦糸町営業センターにて開催された顧客向けの臭気汚染改善工事の説明会(第1回)において、野崎淳夫が、「臭気汚染改善工事用空気清浄機を用いた脱臭工法」についてプレゼンテーションを実施し、また、平成30年6月8日に、暮らしの科学研究所株式会社内にて開催された顧客向けの臭気汚染改善工事の説明会(第2回)において、野崎淳夫が、「臭気低減対策業務の今後、空気清浄機の活用」についてプレゼンテーションを実施した。
(73)【特許権者】
【識別番号】301071022
【氏名又は名称】野崎 淳夫
(73)【特許権者】
【識別番号】511240357
【氏名又は名称】暮らしの科学研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】野崎 淳夫
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】金 公彦
【審判官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-61836(JP,A)
【文献】特開2001-193974(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0770481(KR,B1)
【文献】特殊清掃「タカフジ」のスタッフblog,2013年7月24日,t-tokusyuseisou.com/blog/2013/07
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
F24F 7/00- 7/007
F24F 8/00- 8/99
B08B 1/00- 1/04
B08B 5/00-13/00
B01D 53/14-53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間内の
特定の部位に臭気物質が付着、含浸して残存する臭気発生源から発生する
前記臭気物質を測定する測定工程と、
前記臭気発生源において前記測定工程で測定した
前記臭気物質に
吸着して脱離あるいは
前記臭気物質と反応して分解する上で有用な有用物質を前記臭気発生源に供給する有用物質供給工程と、
前記臭気発生源を含む室内空間を加熱し、前記有用物質供給工程による前記有用物質の供給後に前記臭気発生源から前記臭気物質又はその分解物質からなる臭気成分を放散させるベイクアウト工程と、
前記ベイクアウト工程と並行して空気清浄機を作動させ、前記ベイクアウト工程にて放散された臭気成分を、室外に排出せずに、前記空気清浄機により形成された気流に乗せて吸引し当該空気清浄機内に設置された捕捉部材に捕捉する臭気成分捕捉工程と、
を備えたことを特徴とする脱臭工法。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭工法において、
前記臭気成分捕捉工程後に、前記臭気発生源に対して封止剤を塗布する封止剤塗布工程を更に備えることを特徴とする脱臭工法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱臭工法において、
前記臭気成分捕捉工程後に前記室内空間内の脱臭レベルを検査する検査工程を備え、
前記検査工程による検査の結果、前記脱臭レベルが予め決められた許容レベルに至らない条件では、前記有用物質供給工程、前記ベイクアウト工程及び前記臭気成分捕捉工程の一連の工程を繰り返し、前記脱臭レベルが前記許容レベルに至った条件で前記一連の工程の繰り返しを終了することを特徴とする脱臭工法。
【請求項4】
室内空間内の
特定の部位に臭気物質が付着、含浸して残存する臭気発生源から発生する
前記臭気物質を測定する測定手段と、
前記臭気発生源において前記測定手段で測定した
前記臭気物質に
吸着して脱離あるいは
前記臭気物質と反応して分解する上で有用な有用物質を前記臭気発生源に供給する有用物質供給手段と、
前記臭気発生源を含む室内空間を加熱し、前記有用物質供給手段による前記有用物質の供給後に前記臭気発生源から前記臭気物質又はその分解物質からなる臭気成分を放散させるベイクアウト手段と、
前記ベイクアウト手段による処理と並行して空気清浄機を作動させ、前記ベイクアウト手段にて放散された臭気成分を吸引するための気流を形成し、前記臭気成分を、室外に排出せずに前記気流に乗せて吸引し、前記空気清浄機の内部に設置された捕捉部材に捕捉する臭気成分捕捉手段と、を備えたことを特徴とする脱臭施工システム。
【請求項5】
請求項4に記載の脱臭施工システムにおいて、
前記臭気成分捕捉手段は、前記空気清浄機の内部に前記室内空間内の臭気成分が吸引される空気流通路を形成し、当該空気流通路には前記臭気成分が捕捉可能な捕捉部材としてのフィルタを配置すると共に、前記空気清浄機の内部には前記フィルタに対して前記臭気成分を捕捉する上で有効な薬液を選択的に噴霧可能な薬液噴霧機構を設けたことを特徴とする脱臭施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、移動体の室内空間内の臭気を低減する脱臭工法に係り、特に、室内空間内の臭気発生源から発生する臭気物質を室外に漏らすことなく効率的に低減する上で有効な脱臭工法及び脱臭施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の脱臭工法あるいはその脱臭施工システムとしては、例えば特許文献1~4に記載のものがある。
特許文献1には、被脱臭物から発生する臭気を吸着する材料と、マイナスイオンを発生するマイナスイオン発生材料とを混合し、建材とし、建築物の内部に前記建材を施工し、たばこ臭、動物臭、糞尿臭のような臭気を、効率的に短時間でしかも経済的に脱臭する室内脱臭工法が開示されている。
特許文献2には、食品等を貯蔵・運搬するための倉庫・コンテナ・荷物車両等の容器内に、オゾンを発生するオゾン発生器及びこの発生オゾンを容器内に拡散させるファンと、容器内のオゾン濃度を検知するオゾン検知器と、活性炭素繊維からなるオゾン吸着面を展開・収納自在に備えたオゾン吸収装置とを設け、上記オゾン検知濃度が所定の下限値より低いときは上記オゾン発生器を運転させ、上記オゾン検知濃度が上記下限値を越えたときは上記オゾン発生器を停止させると共に、上記オゾン検知濃度が上記下限値よりも高く設定された上限値より低いときは上記オゾン吸収装置の吸着面を収納させ、上記オゾン検知濃度が上記上限値を越えたときは上記オゾン吸収装置の吸着面を展開させる制御装置を設けたオゾン脱臭システムが開示されている。
特許文献3には、脱臭ユニットとして、本体ケーシングと、活性種生成部とを備え、本体ケーシングは、気体導入口と気体排出口とを有し、内部が略直方体形状であって、内部に気体導入口から気体排出口への気流があるものであり、活性種生成部は、略直方体形状であって、臭気分子および有害ガス成分の少なくとも一つを分解または不活化する活性種を生成するものであり、活性種生成部は、本体ケーシングの内部に収納され、その長手方向が気体導入口および気体排出口が形成される面に対して、傾斜させて配置される脱臭システムが開示されている。
特許文献4には、室内に配置される換気装置と脱臭装置において、換気装置運転時は脱臭装置を停止し、換気装置停止時は脱臭装置を運転する構成とすることで、室内の脱臭を効率よく確実に行うことができる実内換気脱臭システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5147262号公報(実施例)
【文献】特許第3430540号公報(実施例,
図1)
【文献】特許第5245795号公報(発明を実施するための最良の形態,
図2)
【文献】特開2016-156576号公報(発明を実施するための形態,
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、例えば寝たきりの病人を長期に亘り看病する場合、あるいは、孤独死などの事情で遺体が長期に亘り放置されたような場合には、室内空間に屎尿臭や死体臭といった悪臭が漂う状況に至ることは少なくない。このような状況においては、室内空間内の特定の部位に局所的な臭気発生源が存在することから、例えば特許文献1~4に示すような従前の脱臭工法や脱臭施工システムを適宜採用したとしても、室内空間内の臭気発生源から発生する臭気物質を早期に低減することが困難なことが多く、臭気物質の脱臭作業が長期化すると、室内空間内の悪臭が室外に漏れるという懸念が生ずる。
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、室内空間内の臭気発生源から発生する悪臭を、室外に排出せずに効率良く低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の技術的特徴は、室内空間内の特定の部位に臭気物質が付着、含浸して残存する臭気発生源から発生する前記臭気物質を測定する測定工程と、前記臭気発生源において前記測定工程で測定した前記臭気物質に吸着して脱離あるいは前記臭気物質と反応して分解する上で有用な有用物質を前記臭気発生源に供給する有用物質供給工程と、前記臭気発生源を含む室内空間を加熱し、前記有用物質供給工程による前記有用物質の供給後に前記臭気発生源から前記臭気物質又はその分解物質からなる臭気成分を放散させるベイクアウト工程と、前記ベイクアウト工程と並行して空気清浄機を作動させ、前記ベイクアウト工程にて放散された臭気成分を、室外に排出せずに、前記空気清浄機により形成された気流に乗せて吸引し当該空気清浄機内に設置された捕捉部材に捕捉する臭気成分捕捉工程と、を備えたことを特徴とする脱臭工法である。
【0007】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた脱臭工法において、前記臭気成分捕捉工程後に、前記臭気発生源に対して封止剤を塗布する封止剤塗布工程を更に備えることを特徴とする脱臭工法である。
本発明の第3の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた脱臭工法において、前記臭気成分捕捉工程後に前記室内空間内の脱臭レベルを検査する検査工程を備え、前記検査工程による検査の結果、前記脱臭レベルが予め決められた許容レベルに至らない条件では、前記有用物質供給工程、前記ベイクアウト工程及び前記臭気成分捕捉工程の一連の工程を繰り返し、前記脱臭レベルが前記許容レベルに至った条件で前記一連の工程の繰り返しを終了することを特徴とする脱臭工法である。
【0008】
本発明の第4の技術的特徴は、室内空間内の特定の部位に臭気物質が付着、含浸して残存する臭気発生源から発生する前記臭気物質を測定する測定手段と、前記臭気発生源において前記測定手段で測定した前記臭気物質に吸着して脱離あるいは前記臭気物質と反応して分解する上で有用な有用物質を前記臭気発生源に供給する有用物質供給手段と、前記臭気発生源を含む室内空間を加熱し、前記有用物質供給手段による前記有用物質の供給後に前記臭気発生源から前記臭気物質又はその分解物質からなる臭気成分を放散させるベイクアウト手段と、前記ベイクアウト手段による処理と並行して空気清浄機を作動させ、前記ベイクアウト手段にて放散された臭気成分を吸引するための気流を形成し、前記臭気成分を、室外に排出せずに前記気流に乗せて吸引し、前記空気清浄機の内部に設置された捕捉部材に捕捉する臭気成分捕捉手段と、を備えたことを特徴とする脱臭施工システムである。
本発明の第5の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた脱臭施工システムにおいて、前記臭気成分捕捉手段は、前記空気清浄機の内部に前記室内空間内の臭気成分が吸引される空気流通路を形成し、当該空気流通路には前記臭気成分が捕捉可能な捕捉部材としてのフィルタを配置すると共に、前記空気清浄機の内部には前記フィルタに対して前記臭気成分を捕捉する上で有効な薬液を選択的に噴霧可能な薬液噴霧機構を設けたことを特徴とする脱臭施工システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の技術的特徴によれば、室内空間内の臭気発生源から発生する悪臭を、室外に排出せずに効率良く低減することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、封止剤塗布工程を有しない場合に比べて、室内空間内の臭気発生源から発生する悪臭をより低減することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、実内空間内の脱臭レベルを確認しながら、室内空間内の臭気発生源から発生する悪臭を効率的に低減することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、室内空間内の臭気発生源から発生する悪臭を、室外に排出せずに効率良く低減することが可能な脱臭工法を具現化することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、空気清浄機に性能の良い臭気成分捕捉機能を容易に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明が適用される脱臭施工システムの実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す脱臭施工システムによる脱臭工法を示す説明図である。
【
図2】(a)は実施の形態1に係る脱臭工法が適用される室内空間例を示す説明図、(b)は(a)に示す室内空間内に存在する臭気物質の測定工程を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1で採用される脱臭処理過程を模式的に示すフローチャートである。
【
図4】(a)は実施の形態1で採用される有用物質供給工程を示す説明図、(b)は(a)で示す有用物質供給工程で用いられる有用物質供給装置の一例を示す説明図、(c)は同有用物質供給装置の他の例を示す説明図である。
【
図5】(a)は実施の形態1で採用されるベイクアウト工程及び脱臭成分捕捉工程を示す説明図、(b)はベイクアウト工程で室内空間内に放散された脱臭成分の挙動を示す説明図である。
【
図6】(a)は
図5(a)に示す空気清浄機の構成例を示す説明図、(b)は(a)で示す薬液供給機構の構成例を示す説明図である。
【
図7】(a)は実施の形態1で採用される封止剤塗布工程を示す説明図、(b)は封止剤塗布工程による作用を示す説明図である。
【
図8】(a)は実施例1に係る脱臭工法を適用する対象となる測定対象室3部屋の概要を示す説明図、(b)は実施例1に係る脱臭工法を適用する対象となる測定対象室内に含まれる測定対象物質と、測定対象室から採取した畳、壁紙の化学物質発生量をチャンバー試験により求めた測定物質とを比較した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された脱臭施工システムの実施の形態の概要を示し、同図(b)は同脱臭施工システムによる脱臭工法を示す。
本実施の形態において、脱臭工法は、
図1(a)(b)に示すように、室内空間R内の
特定の部位に臭気物質Wが付着、含浸して残存する臭気発生源Eから発生する臭気物質Wを測定する測定工程S1と、
臭気発生源Eにおいて測定工程S1で測定した臭気物質Wに
吸着して脱離あるいは
臭気物質Wと反応して分解する上で有用な有用物質Qを臭気発生源Eに供給する有用物質供給工程S2と、臭気発生源Eを含む室内空間Rを加熱し、有用物質供給工程S2による有用物質Qの供給後に臭気発生源Eから臭気物質W又はその分解物質からなる臭気成分を放散させるベイクアウト工程S3と、ベイクアウト工程S3と並行して空気清浄機4aを作動させ、ベイクアウト工程S3にて放散された臭気成分を、室外に排出せずに、空気清浄機4aにより形成された気流に乗せて吸引し当該空気清浄機4a内に設置された捕捉部材4bに捕捉する臭気成分捕捉工程S4と、を備えたものである。
【0012】
このような技術的手段において、測定工程S1は、少なくとも臭気物質Wを特定することができればよく、更に、臭気発生源Eからの臭気物質Wの発生量を算出することが好ましく、臭気物質Wの発生量の大小、室内空間Rの容積からベイクアウト工程S3の実施時間を可変設定することも可能である。
また、有用物質供給工程S2にて供給される有用物質Qは、内装材やインテリア用品に付着、含浸した臭気物質Wに対して脱離あるいは分解する上で有用なものであれば適宜選定して差し支えない。有用物質Qの供給手法は、液状、粒子状の有用物質Qを臭気発生源E(臭気物質Wが飛散して付着した室内空間R内の内装材やインテリア用品も含む)に噴霧する、あるいは、塗布する等適宜選定して差し支えない。
更に、ベイクアウト工程S3は少なくとも有用物質Qの供給後に行えばよいが、有用物質Qの供給中、あるいは、供給前であっても差し支えない。
更にまた、臭気成分捕捉工程S4は、ベイクアウト工程S3と並行して実施されればよいが、ベイクアウト工程S3と臭気成分捕捉工程S4との開始が同時でない態様も含む。
【0013】
次に、本実施の形態に係る脱臭工法の好ましい態様について説明する。
先ず、脱臭工法の一つの好ましい態様としては、臭気成分捕捉工程S4後に、臭気発生源Eに対して封止剤Mを塗布する封止剤塗布工程S5を更に備える態様が挙げられる。本例は、臭気発生源Eから発生する臭気成分を臭気成分捕捉工程S4で許容レベルまで捕捉した場合であっても、仮に、臭気発生源Eに臭気物質Wの一部が残存し、室内空間Rに放散される懸念を有効に防止する態様である。
また、別の好ましい態様としては、臭気成分捕捉工程S4後に室内空間R内の脱臭レベルを検査する検査工程S6を備え、検査工程S6による検査の結果、脱臭レベルが予め決められた許容レベルに至らない条件では、有用物質供給工程S2、ベイクアウト工程S3及び臭気成分捕捉工程S4の一連の工程を繰り返し、脱臭レベルが許容レベルに至った条件で一連の工程の繰り返しを終了する態様が挙げられる。本例は、検査工程S6にて室内空間R内の脱臭レベルを検査し、脱臭レベルが許容レベルに達するまで、一連の脱臭処理工程(有用物質供給工程S2、ベイクアウト工程S3、臭気成分捕捉工程S4)を繰り返す態様である。
【0014】
また、脱臭工法を具現化した脱臭施工システムとしては、
図1(a)に示すように、室内空間R内の
特定の部位に臭気物質Wが付着、含浸して残存する臭気発生源Eから発生する臭気物質Wを測定する測定手段1と、
臭気発生源Eにおいて測定手段1で測定した臭気物質Wに
吸着して脱離あるいは
臭気物質Wと反応して分解する上で有用な有用物質Qを臭気発生源Eに供給する有用物質供給手段2と、臭気発生源Eを含む室内空間Rを加熱し、有用物質供給手段2による有用物質Qの供給後に臭気発生源Eから臭気物質W又はその分解物質からなる臭気成分を放散させるベイクアウト手段3と、ベイクアウト手段3による処理と並行して空気清浄機4aを作動させ、ベイクアウト手段3にて放散された臭気成分を吸引するための気流を形成し、前記臭気成分を、室外に排出せずに前記気流に乗せて吸引し、空気清浄機4aの内部に設置された捕捉部材4bに捕捉する臭気成分捕捉手段4と、を備えた態様が挙げられる。
【0015】
本例においては、脱臭施工システムの好ましい態様としては、
図1(a)に示すように、封止剤塗布工程S5(
図1(b)参照)を実施するための封止剤塗布手段5を付加したり、あるいは、検査工程S6(
図1(b)参照)を実施するための検査手段6を設ける態様が挙げられる。
また、臭気成分捕捉手段4の好ましい態様としては、空気清浄機4aの内部に室内空間R内の臭気成分が吸引される空気流通路を形成し、当該空気流通路には臭気成分が捕捉可能な捕捉部材4bとしてのフィルタを配置する
と共に、空気清浄機4aの内部にはフィルタに対して臭気成分を捕捉する上で有効な薬液を選択的に噴霧可能な薬液噴霧機構を設けた態様が挙げられる。
【0016】
◎実施の形態1
図2(a)は実施の形態1に係る脱臭工法が適用される室内空間例を示す。
同図において、室内空間Rは一般に床、天井、側壁等の内装材20で区画されており、この室内空間R内の例えば床上の特定部位に病人が長期に亘り寝たきり状態であったり、あるいは、孤独死などの事情で遺体が長期に亘り放置された場合、室内空間Rのうち、病人や遺体等の人体Hが置かれていた特定部位が臭気発生源Eとなり、室内空間R内に臭気発生源Eから屎尿臭や死体臭といった悪臭が漂う状況に至ることがある。尚、臭気発生源Eから発生する臭気物質Wは放散して天井や側壁等の内装材20や、室内空間R内のインテリア用品(図示せず)に付着、含浸することから、内装材20やインテリア用品も後発的に臭気発生源になり得るものと想定される。
本実施の形態で採用される脱臭工法は、このような室内空間R内に漂う悪臭の室内濃度を早期に低減する上で有効な手法である。
【0017】
-測定工程-
本実施の形態では、
図2(b)に示すように、先ず、室内空間R内の空気を採取し、例えば図示外の精密化学分析装置にて採取空気の精密化学分析を実施し、室内空間Rの空気に含まれる臭気物質Wを特定する。尚、精密化学分析装置としては、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析器、高速液クロマトグラフ、イオンクロマトグラフ等の公知の分析手法のものが採用される。
更に、本例では、臭気発生源E付近の空気を採取し、採取空気の定量分析を実施することで臭気物質Wの発生量を算出する。ここで、臭気物質Wの発生量の算出値は室内空間R内の臭気物質Wの濃度に依存することから、脱臭効率を考慮することで、大凡の脱臭処理時間を割り出すことが可能である。
【0018】
-有用物質供給工程-
前述した測定工程を経て、室内空間R内の臭気物質Wが特定されると、内装材20等に付着、含浸した臭気物質Wに対して脱離あるいは分解する上で有用な有用物質Qを供給する有用物質供給工程が実施される(
図3,
図4(a)参照)。
ここで、有用物質Qとしては、臭気物質Wに対して消臭作用を奏するものが好ましく、「脱離する上で有用」とは、臭気物質Wに吸着して内装材20の表面や内部に付着、含浸した臭気物質Wを内装材20から脱離し易くするものを指し、また、「分解する上で有用」とは臭気物質Wと反応して無害な物質(例えば無臭の物質)に分解し易くするものを指す。
例えば屎尿臭、死体臭に対して有用な有用物質としては、クエン酸水、二酸化塩素水、オゾン水、過酸化水素水等が挙げられる。
【0019】
本例において、有用物質供給工程を実施する場合には、
図4(a)に示すように、室内空間R内に有用物質供給装置30を設置し、もともとの臭気発生源Eや臭気物質Wが付着、含浸した後発的な臭気発生源である内装材20の表面に対し有用物質Qを供給するようにすればよい。
そして、有用物質供給装置30は、
図4(a)(b)に示すように、装置筐体31内に有用物質Qを含む薬液が収容される薬液ボトル32を設置し、この薬液ボトル32の薬液内には吸い上げチューブ33の基端を浸漬させ、ポンプユニット34にて吸い上げチューブ33に一定量吸い上げ、吸い上げチューブ33の先端に接続されたノズル35から定量的に噴霧するようにしたものである。
また、本例では、吸い上げチューブ33は可撓性を有するものであって、ノズル65の吹き出し位置は変更可能であるため、有用物質供給装置30のユーザーが噴霧対象位置に対向してノズル35を配置した状態で、ノズル35からの噴霧動作を行うようにすることが可能である。
更に、有用物質供給装置30を持ち運び可能にすれば吸い上げチューブ33の長さは一律に設定されていてもよいが、有用物質供給装置30を固定的に設置する場合には、吸い上げチューブ33にチューブ長可変機構36を付加し、吸い上げチューブ33を長さ調整可能として適宜引き出し、室内空間R内全域に有用物質Qを供給できるようにしてもよい。
【0020】
また、有用物質供給装置30としては、
図4(a)(b)に示す態様に限られるものではなく、例えば
図4(c)に示すように、臭気発生源Eや内装材20の表面に塗布用具37(把手38に刷毛39を設けた態様)にて有用物質Qを塗布する態様も挙げられる。この塗布用具37による有用物質Qの塗布作業は、例えば噴霧式の有用物質供給装置30による処理を実施した後に有用物質Qの供給が不足している箇所を作業者が目視確認しながら補足的に行うようにすることが好ましいが、噴霧式の有用物質供給装置30による処理、あるいは、塗布用具37による塗布作業とを単独で個別に行うようにしてもよいことは勿論である。
【0021】
-ベイクアウト工程-
本実施の形態では、有用物質供給工程が終了すると、
図3及び
図5(a)に示すように、室内空間R内に加熱用のエアコンディショナ(以下エアコンと略記)40及び空気清浄機50を設置し、エアコン40及び空気清浄機50の運転を開始する。
特に、本例では、室内空間Rの天井や側壁には必要に応じてファン81,82が設置され、空気清浄機50から吹き出した空気が室内空間R内を循環して再び空気清浄機50に吸引される気流Afが形成されるようになっている。
更に、本例では、エアコン40、空気清浄機50及びファン81,82はいずれも駆動用のコントローラ100に接続されており、コントローラ100によって駆動制御されている。
更にまた、本例では、コントローラ100には、室内空間R内の温度を検出する温度センサ91及び室内空間R内の臭気物質Wの濃度を検出する濃度センサ92が接続されており、例えば温度センサ91による検出温度がベイクアウトの処理温度を超えた条件でエアコン40をオンオフ制御し、また、濃度センサ92による検出濃度が許容濃度以下に至った条件でエアコン40,空気清浄機50及びファン81,82の駆動を停止するようになっている。
【0022】
本例において、コントローラ100は、エアコン40、空気清浄機50と並行してファン81,82の運転をも開始し、これにより、室内空間R内の空気全体が予め決められたベイクアウト処理温度(例えば35℃~40℃)に加熱されると共に、加熱された空気が所定の経路を循環する気流Afとなって流れる。
この状態において、室内空間Rの内装材20等に付着、含浸している臭気物質Wは、
図5(b)に示すように、ベイクアウト処理にて加熱されることで内装材20等から放散し易くなり、有用物質Qと吸着して内装材20等から脱離し、また、有用物質Qと反応して分解物質W’に分解されて脱離する。この結果、内装材20等に付着、含浸していた臭気物質Wや分解物質W’は放散し、気流Afに乗って空気清浄機50内へと移動していく。
尚、本例では、所望の気流Afを形成するように、ファン81,82を使用する態様を示したが、これに限られるものはなく、ファン81又は82のいずれか、あるいは、いずれも用いないようにしてもよい。
【0023】
-臭気成分捕捉工程-
本例では、臭気成分捕捉工程は、空気清浄機50内で実施される。
<空気清浄機の構成例>
本実施の形態では、空気清浄機50は、
図6(a)に示すように、略ボックス状の清浄筐体51を有し、清浄筐体31の一部に循環する気流Afが取り込まれる取込口52を開設すると共に、清浄筐体51の取込口52から離れた部位に清浄空気が放出される放出口53を開設し、清浄筐体51内には取込口52から放出口53に連通する空気流通路54を形成したものである。
そして、清浄筐体51の空気流通路54内には複数のフィルタ基材(本例では室内空間Rに存在する各種汚染物質を除去処理するためのフィルタ基材を含む)からなる清浄フィルタ60が着脱可能に配設されており、空気流通路54のうち清浄フィルタ60よりも取込口52側にはファン55が配設され、空気流通路54内で取込口52から放出口53に向かう気流が形成されるようになっている。尚、空気流通路54の途中に冷房や暖房のための熱交換ユニット(図示せず)を搭載してもよいことは勿論である。
【0024】
<清浄フィルタ>
本例において、清浄フィルタ60は、
図6(a)に示すように、空気流通路54の取込口52から順に、プレフィルタ61、微生物除去フィルタ62、中性能フィルタ63、ガス除去フィルタ64、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)65を配設したものである。
本例では、各フィルタ61~65は空気流通路54に対していずれも着脱自在に装着されている。
(1)プレフィルタ61
これは、目の粗いメッシュ状のフィルタで、主として粗い粉塵などを捕獲するものであり、例えば金属メッシュや、金属繊維、炭素繊維などを用いて不織布状に成型したものである。
(2)微生物除去フィルタ62
これは、主として細菌、真菌、ウィルスなどの微生物粒子を捕獲するものであるが、微生物粒子と同様な花粉やダニ及びその糞などのアレルゲン粒子をも捕捉し得るものである。
(3)中性能フィルタ63
これは、プレフィルタ61よりも目の細かいメッシュ状のフィルタで、主として中程度の大きさの粉塵などを捕捉するものであり、例えば金属メッシュや、金属繊維、炭素繊維などを用いて不織布状に成型したものである。
(4)ガス除去フィルタ64
これは、臭気物質、化学物質のガス状汚染物質を除去するフィルタであり、臭気物質を吸着する活性炭、ゼオライト、セラミックスなどの吸着材を利用した構成が採用される。
(5)HEPAフィルタ65
これは、中性能フィルタ63よりも更に目の細かいメッシュ状のフィルタで、例えばガス除去フィルタ64で用いられる活性炭の微小粉体などを捕捉するものであり、例えば金属メッシュや、金属繊維、炭素繊維などを用いて不織布状に成型したものである。
【0025】
<薬液供給機構>
本例では、清浄フィルタ60は、例えばガス除去フィルタ64に対して除去対象となる臭気物質、化学物質(例えばVOC:Volatile Organic Compoundsの略)などのガス状汚染物質に対応する有用物質Qとしての薬液(消臭剤などを含む)が供給可能な薬液供給機構70を備えている。
この薬液供給機構70は、
図6(a)(b)に示すように、臭気物質、化学物質の除去に対応する薬液としての消臭剤(例えばアンモニアに対応する薬液Sa、メチルメルカプタンに対応する薬液Sb、あるいは、これらを含む複数の臭気物質、化学物質に対応する混合薬液Scなど)を有している。
【0026】
本例において、薬液供給機構70は、
図6(b)に示すように、ハウジング71内に各種薬液Sa~Scが収容されている薬液ボトル72(具体的には72a~72c)から予め選定されたもの(本例では例えば薬液ボトル72a)を設置し、この薬液ボトル72aの薬液Sa内には吸い上げチューブ73の基端を浸漬させ、ポンプユニット74にて吸い上げチューブ73に一定量吸い上げ、吸い上げチューブ37の先端に接続されたノズル75からガス除去フィルタ64に定量的に噴霧するようにしたものである。
【0027】
<清浄フィルタの作用>
本実施の形態の清浄フィルタ60では、空気中の汚染物質として、粉塵、花粉、真菌、細菌、ウィルス、化学物質、臭気物質が存在する場合を想定すると、粉塵は主としてプレフィルタ61、中性能フィルタ63、HEPAフィルタ65にて捕捉され、真菌、細菌、ウィルスは主として微生物除去フィルタ62にて捕捉され、更に、化学物質、臭気物質は主としてガス除去フィルタ64にて捕捉される。尚、花粉は微生物除去フィルタ62や中性能フィルタ63にて捕捉される。
このとき、本実施の形態では、ガス除去フィルタ44には対応する薬液Saが定期的に噴霧されることから、臭気物質、化学物質の除去性能が定期的に回復する。
尚、本実施の形態では、ガス除去フィルタ44に薬液Ssを噴霧するようにしているが、これに限られるものではなく、微生物除去フィルム62についても、インフルエンザウィルスなどの微生物の除去に対応する薬液(例えば微生物の殺菌に対応する殺菌剤、微生物の増殖防止に対応する抗菌剤など)を供給可能な薬液供給機構を備えるようにしてもよいことは勿論である。また、必要に応じて中性能フィルタ63等の粉塵除去フィルタにも適切な薬液を噴霧するようにしてもよい。
【0028】
<臭気成分捕捉処理>
本実施の形態では、例えばアンモニアが主たる汚染物質の室内空間であるため、ガス除去フィルタ64にアンモニアに適した薬液Saを噴霧するようになっていることから、空気清浄機50の取込口52から空気流通路54に取り込まれた気流Afに乗って移動してきた臭気成分(例えば臭気物質Wであるアンモニアやその分解物質)は清浄フィルタ60のガス除去フィルタ44にて捕捉される。
このため、室内空間R内に放散した臭気物質Wの量は次第に低減していき、これに伴って、臭気物質Wの濃度は低減していく。
尚、たばこ臭、焼き肉臭、ペット臭などの臭気物質の多い空間では、これらの臭気物質に対応した薬液を供給するようにしてもよい。更に、汚染物質が、ホルムアルデヒド、メチルメルカプタン、硫化水素など複数になるような場合には、それぞれの汚染物質に対応する薬液をそれぞれの薬液ボトルから、あるいは、混合して噴霧するようにすればよい。
【0029】
<検査処理>
このとき、例えばエアコン40及び空気清浄機50の運転時間が予め決められた時間に達すると、
図3に示すように、コントローラ100は濃度センサ92からの検出濃度を見て室内空間R内の脱臭レベルが許容レベル(OKレベル)に到達したか否かの検査処理を実施する。
このとき、脱臭レベルが予め決められた閾値以下の許容レベルに達していない条件では、
図3に示すように、有用物質供給処理、ベイクアウト処理及び臭気成分捕捉処理からなる一連の脱臭処理を繰り返す。
本例では、有用物質供給処理を再実施するときにも、エアコン40及び空気清浄機50の運転を停止しないため、ベイクアウト処理及び臭気成分捕捉処理は継続して実施されるが、ベイクアウト処理を継続したとしても、内装材20の含水率を低下させることで有用物質の吸収率を向上させることから有用物質供給処理も効率的に行われる点で好ましい。
一方、上述した検査処理による検査結果として、脱臭レベルが許容レベルに到達すると、コントローラ100はエアコン40及び空気清浄機50の運転を停止する。
【0030】
<清浄フィルタによる他の機能>
また、本実施の形態では、空気清浄機50の設置空間の汚染状態に応じたフィルタ構成とすることができる。つまり、本実施の形態では、空気清浄機50の設置空間の汚染物質の種類や物理、化学的特性により、薬液を選定することが可能である。
このため、室内空間R内に臭気物質以外の汚染物質が混在したとしても、臭気物質W以外の汚染物質を除去することができる。
例えば、真菌(カビ)や細菌が主たる汚染物質の空間では、その菌種に有効な殺菌剤、抗菌剤、制菌剤を微生物除去フィルタ62や中性能フィルタ63等の粉塵除去フィルタ等に噴霧するようにすればよい。また、花粉などのアレルゲン粒子が多い空間では、アレルゲン粒子を不活化する薬液を例えば微生物除去フィルタ62に供給するようにすればよい。また、本実施の形態では、微生物除去フィルタ62には殺菌剤、抗菌剤、制菌剤などの薬液が噴霧、含浸されるため、これらによって変質しないことが好ましく、また、これらの薬液がファン55の気流によって揮発し難いことが好ましい。仮に、薬液が揮発、運搬されたとしても、空気流通路54の下流側にガス除去フィルタ64が設置されているため、薬液が室内空間Rに不必要に拡散するという事態は有効に回避される。
【0031】
-封止剤塗布工程-
室内空間Rの脱臭レベルが許容レベルに達すると、後処理として、もともとの臭気発生源Eを中心に内装材20の表面に封止剤塗布工程が実施される。
本例において、封止剤塗布工程は、
図7(a)に示すように、臭気発生源Eなど臭気物質Wが一部残存している可能性がある内装材20の表面に、塗布用具110(把手111に刷毛112を設けた態様)にて封止剤Mを塗布し、内装材20に残存している可能性がある臭気物質Wを封止するようにしたものである。
本例によれば、
図7(b)に示すように、
図3に示す一連の脱臭処理(有用物質供給処理、ベイクアウト処理、臭気成分捕捉処理)を実施することで、室内空間R内の臭気物質の多くは放散し、空気清浄機50の清浄フィルタ60のガス除去フィルタ64に捕捉され、脱臭レベルを許容レベルに到達させることが可能である。
しかしながら、本例では、もともとの臭気発生源Eである内装材20に脱臭物質Wが一部残存したとしても、当該脱臭物質Wは塗布された封止剤Mで封止されることから、臭気レベルは略0に抑えられる点で好ましい。
【実施例】
【0032】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1を具現化したもので、人体由来の臭気物質による室内空気の汚染現象を取り上げ、特に住宅における臭気物質汚染の実態を明らかにし、その汚染対策について本実施例に係る脱臭工法を評価したものである。
本実施例では、
図8(a)に示すように、孤独死などの事情で遺体が放置され、室内で悪臭が知覚される集合住宅(3室)を測定対象とし、臭気物質の同定と濃度レベルを求めた。
ここで、同室内での使用建材を適宜採取し、JIS規格小型チャンバー試験法により、建材毎の発生量を求めた。測定対象物質はVOC(48物質)、アルデヒド類(15物質)、アンモニア、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、トリメチルアミン、硫黄化合物(メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル)の74物質とした。
【0033】
結果を
図8(b)に示す。
同図によれば、以下のような結果が得られた。
(1)検出された臭気物質には、アルデヒド類や脂肪酸に属するものがあった。
(2)測定対象室から採取した畳、壁紙の化学物質発生量をチャンバー試験により求めたところ、畳からは室内空気汚染物質と同一の臭気物質が検出され、遺体から放散される臭気物質を同定する際の化学的資料が得られた。
(3)臭気発生源(畳)から壁紙(ビニールクロス)への吸着量は小さかった。
(4)これらの測定対象室に近似する条件の室内空間に対し、本実施例に係る脱臭工法を実施したところ、以下のような事実が判明した。
先ず、臭気発生源に有用物質を供給し、かつ、エアコン(加熱装置として使用)及び空気清浄機を用いたベイクアウト処理を実施したところ、臭気発生源からの臭気物質の発生量の増大が確認され、また、ベイクアウト処理と共に空気清浄機による空気清浄処理(主として臭気成分捕捉処理)を実施したところ、臭気発生源からの臭気物質の発生量を低減する上で極めて有効であることが確認された。更に、室内空間内の脱臭処理を行うに当たり、室外に悪臭が排出される懸念はほとんどなかったことが確認された。
更にまた、一連の脱臭処理を実施した後の臭気発生源に対し封止剤を塗布するようにすれば、封止剤を塗布しない場合に比べて、臭気発生源からの臭気物質の放散はより確実に抑制されることも確認された。
このように、本実施例では、住宅における事故物件(例えば孤独死などの事情で遺体が放置され、室内で悪臭が知覚される物件など)の臭気汚染問題を短期間で解消することに極めて有効であることが把握される。
【符号の説明】
【0034】
1…測定手段,2…有用物質供給手段,3…ベイクアウト手段,4…臭気成分捕捉手段,4a…空気清浄機,4b…捕捉部材,5…封止剤塗布手段,6…検査手段,S1…測定工程,S2…有用物質供給工程,S3…ベイクアウト工程,S4…臭気成分捕捉工程,S5…封止剤塗布工程,S6…検査工程,E…臭気発生源,M…封止剤,Q…有用物質,R…室内空間,W…臭気物質