(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】サンプルの品質の予測方法、核酸配列解析の精度の予測方法、サンプルの品質の予測装置、および核酸配列解析の精度の予測装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20240905BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020105623
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-05-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:公開年月日:令和1年6月19日 公開場所:府省共通研究開発管理システム(e-Rad)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:掲載年月日:令和1年12月27日 掲載アドレス:https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-17K16707/17K167072018jisseki/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:掲載年月日:令和2年3月30日 掲載アドレス:https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16707/ https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-17K16707/17K16707seika/ https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-17K16707/17K16707seika.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】植田 成実
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/189085(WO,A1)
【文献】特開2015-204813(JP,A)
【文献】J. Vis. Exp.,2016年04月14日,Vol.110, No.e53939,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する方法であって、
前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、
各サンプルにおける増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルが、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する品質予測工程とを含
み、
前記基準サンプルは、1つであり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量であり、
前記品質予測工程では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合、または前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測する;または
前記基準サンプルは、複数であり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記複数の基準サンプルから前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量とを判別でき、
前記品質予測工程では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と同じもしくはより多い場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測する、方法。
【請求項2】
前記標的領域は、16S rRNAのV1領域およびV2領域の少なくとも一方を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記標的領域の核酸は、前記標的領域を含む大腸菌である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記基準サンプルは、複数であり、
各基準サンプルは、前記標的領域の核酸を異なる量含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各サンプルに対して超音波処理を行なう前処理工程を含み、
前記超音波処理された各サンプルを用いて、前記定量工程を実施する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象者由来サンプルは、インプラント由来サンプルまたは生体サンプルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸配列解析は、次世代シーケンサーによる核酸配列解析である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する方法であって、
前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、
前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なう配列解析工程と、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する予測工程とを含
み、
前記基準サンプルは、1つであり、かつ、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量であり、
前記予測工程では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合、または前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測する;または
前記基準サンプルは、複数であり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記複数の基準サンプルから前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量とを判別でき、
前記予測工程では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と同じもしくはより多い場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる精度を有すると予測する、方法。
【請求項9】
前記標的領域は、16S rRNAのV1領域およびV2領域の少なくとも一方を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記標的領域の核酸は、前記標的領域を含む大腸菌である、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記基準サンプルは、複数であり、
各基準サンプルは、前記標的領域の核酸を異なる量含有する、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各サンプルに対して超音波処理を行なう前処理工程を含み、
前記超音波処理された各サンプルを用いて、前記定量工程および配列解析工程を実施する、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象者由来サンプルは、インプラント由来サンプルまたは生体サンプルである、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
次世代シーケンサーを用いて、前記配列解析工程を実施する、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する装置であって、
取得部および品質予測部を備え、
前記取得部は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記品質予測部は、
各サンプルにおける増幅断片の量のデータに基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測
し、
前記基準サンプルは、1つであり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量であり、
前記品質予測部は、前記対象由来サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合、または前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象由来サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測する;または
前記基準サンプルは、複数であり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記複数の基準サンプルから前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量とを判別でき、
前記品質予測部では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と同じもしくはより多い場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測する、装置。
【請求項16】
対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する装置であって、
取得部および予測部を備え、
前記取得部は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記標的領域の核酸配列解析のデータとを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記核酸配列解析のデータは、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで得られたデータであり、
前記予測部は、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測
し、
前記基準サンプルは、1つであり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量であり、
前記予測部では、前記対象由来サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合、または前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象由来サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測する;または
前記基準サンプルは、複数であり、かつ、前記核酸配列解析を実施した際に、前記複数の基準サンプルから前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量とを判別でき、
前記予測部では、前記対象由来サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と同じもしくはより多い場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記対象由来サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる精度を有すると予測する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの品質の予測方法、核酸配列解析の精度の予測方法、サンプルの品質の予測装置、および核酸配列解析の精度の予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプラント周囲では感染が起きる場合がある。また、感染症によりインプラントのゆるみ、不具合発生等の問題が生じることが知られている。感染により早期にインプラントがゆるんだ場合には、再手術が必要となることもある。また、ゆるみの原因として感染診断がされていない場合は、ゆるみに伴い、早期の再手術が必要となる。
【0003】
インプラント周囲の感染症の原因細菌の同定方法としては、寒天培地を用いた培養検査が行なわれている(非特許文献1)。しかしながら、培養検査で検出可能な菌は、自然環境で実際に存在する細菌の数%に過ぎないとの報告がある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Osmon DR et al., “Diagnosis and management of prosthetic joint infection: clinical practice guidelines by the Infectious Diseases Society of America.” Clin Infect Dis, 2013;56:e1e25.
【文献】Rudolf I. Amann et.al., “Phylogenetic Identification and In Situ Detection of Individual Microbial Cells without Cultivation.2, MICROBIOLOGICAL REVIEWS, 1995, pages 143-169.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、問題が生じたインプラントについて抜去後、前記インプラントを生理食塩水存在下で超音波処理することで、前記インプラント周囲の細菌を含有するサンプルを調製した。そして、得られたサンプルを次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)で配列解析することで、インプラント周囲の菌を同定する検査方法を発明した。前記検査方法によれば、培養検査と比較して、より多くの菌、具体的には、前記方法では同定が困難な複数の細菌を同定できることを見出している。
【0006】
しかしながら、NGSにおいても、菌が検出されないサンプルが存在するという問題が見出された。なお、同様の問題は、生体由来のサンプルについても同様に生じると推定される。
【0007】
そこで、本発明は、対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測しうる方法または前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測しうる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の方法は、対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する方法(以下、「品質予測方法」ともいう)であって、
前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、
各サンプルにおける増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルが、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する品質予測工程とを含む。
【0009】
本発明の方法は、対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する方法(以下、「精度予測方法」ともいう)であって、
前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、
前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なう配列解析工程と、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する予測工程とを含む。
【0010】
本発明の装置は、対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する装置(以下、「品質予測装置」ともいう)であって、
取得部および品質予測部を備え、
前記取得部は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記品質予測部は、
各サンプルにおける増幅断片の量のデータに基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する。
【0011】
本発明の装置は、対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する装置(以下、「精度予測装置」ともいう)であって、
取得部および予測部を備え、
前記取得部は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記標的領域の核酸配列解析のデータとを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記核酸配列解析のデータは、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで得られたデータであり、
前記予測部は、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測可能である。また、本発明によれば、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1の品質予測装置の一例の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の品質予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の品質予測装置により実行される方法およびプログラムの一例の構成を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態2の精度予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の精度予測装置により実行される方法およびプログラムの一例の構成を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施例1における基準サンプルの増幅断片の量と、各サンプルの核酸配列解析におけるリード数または割合を比較したグラフである。
【
図7】
図7は、実施例2における対象サンプルおよび基準サンプルの増幅断片の量と、各サンプルの核酸配列解析の結果とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<品質予測方法>
本発明の方法は、前述のように、対象者由来サンプル(以下、「対象サンプル」ともいう)が細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する方法であって、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、各サンプルにおける増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルが、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する品質予測工程とを含む。本発明の品質予測方法は、前記対象者由来サンプルに加え、前記基準サンプルについても、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を増幅し、各サンプルの増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルが、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の品質予測方法によれば、前記対象サンプルが、前記対象サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測可能である。
【0015】
本発明者らは、鋭意研究の結果、対象サンプルでは、前記対象サンプルに付着または存在している細菌の量に大きなばらつきがあり、これにより、検出対象の細菌の濃度または量が低い対象サンプルが生じることに起因することを見出した。このような対象サンプルに対して核酸配列解析を行うと、前記細菌の濃度が、前記核酸配列解析の検出限界以下となり、結果として、菌が検出されない、または検体に実際には存在しない細菌が検出されるという現象が生じる。そして、本発明者らは、前記標的領域の核酸の含有量が既知である基準サンプルを参照として利用すること、および前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用いて、前記対象サンプルと前記基準サンプルとに含まれる標的領域の核酸の量を定量し、得られた増幅断片の量(定量値)を用いることで、前記対象サンプルの品質の予測可能であることを見出し、本発明を確立するに至った。したがって、本発明によれば、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測可能である。なお、前記プライマーセットとして、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用いることで、前記定量時の標的領域の増幅効率が、前記核酸配列解析時に実施される標的領域の増幅効率と同程度となるため、前記定量値を用いて前記対象サンプルの品質が予測可能と推定される。ただし、本発明は、上記推定に何ら制限されない。
【0016】
本発明において、前記「対象者」は、任意の対象者とできる。前記対象者は、例えば、ヒトまたはヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ウマ、ネコ、ヤギ、サル、モルモット、コウモリ等の哺乳類;トリ等の鳥類;等があげられる。
【0017】
本発明において、前記「対象者由来のサンプル」は、特に制限されず、例えば、対象者由来の生体サンプル、対象者から単離したインプラント由来サンプル等があげられる。
【0018】
前記生体サンプルは、例えば、細胞、組織、器官、臓器、またはこれらの一部等があげられる。具体例として、前記生体サンプルは、例えば、膿、骨、筋肉、滑膜、瘢痕組織等の骨または軟部組織;尿;血液、胸水、腹水、髄液等の体液;等があげられる。前記サンプルは、前記対象者から単離した生体サンプルでもよいし、単離した生体サンプルに対して前処理を行ったサンプルでもよい。前記前処理は、例えば、タンパク質、核酸分子等の抽出処理;超音波処理;ホモジェナイザー等による破砕処理;DTT等の還元剤を用いた化学処理;等があげられる。前記細菌のバイオフィルムを破砕する場合、前記前処理は、超音波処理が好ましい。
【0019】
前記インプラントは、例えば、前記対象者の体内に埋め込まれる医療器具を意味する。具体例として、前記インプラントは、例えば、人工関節、人工歯根、脊椎インプラント、ペースメーカー、カテーテル(中心静脈カテーテル、豊胸インプラント、骨接合デバイス、尿カテーテル等)、心臓弁(機械弁等)、ステント、CVポート、眼内レンズ(人工水晶体等)、セメント(医療用・人工関節置換時の固定セメント、腰椎圧迫骨折時の骨セメント等)、人工靭帯等があげられる。前記インプラント由来サンプルは、前記対象者から単離したインプラントそのものでもよいし、単離したインプラントに対して前処理を行ったサンプルでもよい。前記前処理は、前述の説明を援用できる。前記前処理は、インプラントに付着した細菌のバイオフィルムを破壊でき、これにより効率よく細菌を抽出できることから、好ましくは、超音波処理である。前記超音波処理は、例えば、溶媒の存在下で実施する。前記溶媒は、例えば、水、生理食塩水;緩衝液;細胞内液、細胞外液等の輸液;UniversityofWisconsin(UW)液、histidine-tryptophan-ketogluta-rate(HTK)液、Celsior液等の保存液;等があげられ、好ましくは、生理食塩水である。
【0020】
本発明において、前記「細菌」は、特に制限されず、例えば、核酸配列解析の目的に応じて、適宜決定できる。前記細菌は、例えば、アクチノマイセス属(Actinomyces);アシネトバクター属(Acinetobacter);アエロコッカス属(Aerococcus);バクテロイデス属(Bacteroidales);バシラス属(Bacillus)等のバシラス綱(Bacilli);ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobiaceae);バークホルデリア属(Burkholderia);コマモナス属(Comamonadacea);コリネバクテリウム属(Corynebacterium);クロストリジウム科(Clostridiaceae);エンテロバクター科(Enterobacteriaceae);エンテロコッカス属(Enterococcus);ヘリコバクター属(Helicobacter);Hydrogenophilus;リステリア属(Listeria);ラクトバシラス属(Lactobacillus)等のラクトバシラス目(Lactobacillales);ナイセリア属(Neisseria);シュードモナス科(Pseudomonadaceae);プラノコッカス科(Planococcaceae);プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium);ロドバクター科(Rhodobacteraceae);Sediminibacterium;Sinobacteraceae;スフィンゴモナス属(Sphingomonas);ブドウ球菌属(Staphylococcus);レンサ球菌属(Streptococcus);キサントモナス科(Xanthomonadaceae);に属する細菌があげられる。
【0021】
本発明において、前記「標的領域」は、例えば、前記核酸配列解析において、核酸配列の解読を目的とする領域、すなわち、塩基配列の決定を目的とする領域を意味する。前記標的領域は、例えば、前記細菌を識別可能な領域に設定することが好ましい。前記「細菌を識別可能」は、例えば、分類学上、異なる細菌を区別できることを意味する。前記細菌の識別の単位は、例えば、綱、科、目、属または種であり、好ましくは、属または種である。
【0022】
前記標的領域は、例えば、16S リボソームRNA(rRNA)またはRNAポリメラーゼのβサブユニット(rpoB)のコード遺伝子内に設定される。前記16S rRNAは、細菌間で核酸配列が共通する保存領域と、細菌間で核酸配列が異なる可変領域とを含む。このため、前記標的領域は、前記16S rRNAの可変領域(超可変領域ともいう)内に設定されることが好ましい。前記可変領域は、例えば、V1領域、V2領域、V3領域、V4領域、V5領域、V6領域、V7領域、V8領域、およびV9領域等があげられ、重症軟部組織感染症、ガス壊疽、壊死性筋膜炎等の感染症の原因となり得る黄色ブドウ球菌感染症(MRSA)およびB群溶血性連鎖球菌GBS等の溶連菌を好適に検出できることから、好ましくは、V1領域およびV2領域、またはV1領域およびV2領域と、V1領域およびV2領域間の保存領域である。前記可変領域の決定は、例えば、下記参考文献1を参照できる。前記rpoB遺伝子は、超可変領域を含む。このため、前記標的領域は、前記rpoB遺伝子の超可変領域内に設定することが好ましい。本発明において、前記標的領域は、1つでもよいし、複数でもよい。複数の可変領域を標的領域として設定する場合、前記標的領域に含まれる可変領域の数は、例えば、核酸配列解析により解析可能な塩基数に応じて、適宜設定できる。
参考文献1:Fiona Fouhy et al., “16S rRNA gene sequencing of mock microbial populations- impact of DNA extraction method, primer choice and sequencing platform”, BMC Microbiology, 2016, 16, Article number 123
【0023】
本発明において、前記「核酸配列」は、例えば、天然もしくは合成のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドおよびその断片または部分の塩基配列、すなわち、核酸分子の塩基配列を意味する。前記核酸分子は、DNAでもよいし、RNAでもよい。また、前記核酸分子は、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。具体例として、前記核酸分子は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、rRNA、tRNA、mRNA等があげられる。
【0024】
本発明において、前記「核酸配列解析」は、例えば、核酸分子における塩基の配列(順序)を決定することを意味し、シーケンスまたはシーケンシングということもできる。前記塩基は、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルがあげられる。
【0025】
前記「核酸配列解析」は、特に制限されず、前記核酸配列解析の目的に応じて、任意の核酸配列の解析方法を採用できる。前記解析方法は、例えば、クローンライブラリー法、DGGE/TGGE(Denaturing/Temperature Gradient Gel Electrophoresis)法、メタゲノム解析等があげられる。前記クローンライブラリー法は、例えば、前記対象サンプルから、ゲノムDNAを抽出し、得られたゲノムDNA内の16S rRNA遺伝子について、プライマーセットを用いて各細菌に特異的な核酸配列を増幅し、得られた増幅断片をプラスミド等のベクターに挿入して、前記増幅断片を含むプラスミドの核酸配列(塩基配列)を決定する。DGGE/TGGE法は、例えば、前記クローンライブラリー法と同様にしてDNAを増幅後、得られた増幅断片を電気泳動によって増幅断片の核酸配列に応じて分離し、分離された各増幅断片の核酸配列(塩基配列)を決定する。前記メタゲノム解析は、例えば、前記対象サンプルから抽出したゲノムDNAを断片化後、任意に核酸増幅反応等を行った後、各DNA断片または増幅核酸鎖の核酸配列(塩基配列)を決定する。
【0026】
前記核酸配列の決定は、例えば、サンガー法を利用したシーケンサーを用いて実施してもよいし、パイロシークエンス、可逆的ターミネータ法、またはイオン半導体シーケンシングを利用した次世代シーケンサーを用いて実施してもよいし、単分子シーケンサーを用いて実施してもよいが、次世代シーケンサーを用いて実施することが好ましい。前記次世代シーケンサーとしては、例えば、GS JuniorおよびGS FLX+プラットフォーム(Roche社製)、MiSeq、NextSeqおよびHiSeqプラットフォーム(Illumina社製)、Genetic AnalyzerおよびIon Proton System(ThermoFisher Scientific社製)等があげられる。前記単分子シーケンサーとしては、例えば、Nanoporeシーケンサー(Oxford Nanopore Technologies社製)等があげられる。本発明の品質予測方法は、イオン半導体シーケンシングを利用した次世代シーケンサー(例えば、Ion Proton System)を用いて実施する際に好適に利用できる。
【0027】
本発明において、前記「核酸配列解析に使用しうる品質」は、例えば、対象のサンプルが、前記対象のサンプルに対して核酸配列解析を実施することにより、細菌の核酸配列を得られうる程度に細菌を含有することを意味する。
【0028】
本発明において、「予測」は、例えば、予想、推定、分析、または評価ということもできる。
【0029】
以下、本発明の品質予測方法の各工程について、具体的に説明する。
【0030】
前記定量工程は、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する。これにより、前記定量工程では、後述の品質予測工程に用いる増幅断片の量(定量値)を取得できる。
【0031】
前記定量工程において、前記細菌は、特に制限されず、例えば、前記核酸配列解析の対象とする細菌と同じでもよいし、異なってもよいが、前者が好ましい。前記定量工程では、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用いることにより、前記核酸配列解析の対象とする細菌と実質的に同じ細菌を定量対象とできる。前記細菌は、例えば、1種類でもよいし、複数種類でもよい。
【0032】
前記定量工程において、前記標的領域は、例えば、各細菌を識別可能な領域に設定する。具体例として、前記標的領域は、例えば、細菌を網羅的に識別しうることから、好ましくは、前記16S rRNAであり、より好ましくは、前記16S rRNAの可変領域であり、さらに好ましくは、前記可変領域におけるV1領域およびV2領域の少なくとも一方を含み、特に好ましくは、前記V1領域および前記V2領域である。前記標的領域は、ゲノムDNA内に設定することが好ましい。前記標的領域として、複数の可変領域を設定する場合、前記標的領域は、前記可変領域間の保存領域を含んでもよい。前記標的領域は、例えば、1箇所でもよいし、複数箇所でもよいが、1箇所が好ましい。
【0033】
前記標的領域の長さは、例えば、利用する核酸配列解析方法に応じて、各細菌を識別可能な長さに設定する。具体例として、前記核酸配列解析において単分子シーケンサーを用いる場合、前記標的領域の長さは、特に制限されず、任意の長さとできる。また、前記核酸配列解析において、前記次世代シーケンサーを用いる場合、前記標的領域の長さは、例えば、100~700bp、300~500bpがあげられる。
【0034】
前記プライマーセットは、前記標的領域およびその近傍の核酸配列に応じて、適宜設計できる。前記定量工程において用いるプライマーセットは、各プライマーにおいて、前記標的領域にアニールする領域の核酸配列が、前記核酸配列解析に用いるプライマーセットにおけるプライマーの対応する領域の核酸配列と同じであればよい。すなわち、前記定量工程において用いるプライマーセットの核酸配列と、前記核酸配列解析に用いるプライマーセットの核酸配列とは、前記標的領域にハイブリダイズ核酸の核酸配列が同じであればよい。前記標的領域が前記V1領域およびV2領域の場合、前記プライマーセットは、例えば、下記プライマーセット1があげられる。下記プライマーセットは、例えば、前記V1領域およびV2領域の全長と、前記V1領域およびV2領域間の保存領域を増幅可能である。
・プライマーセット1
フォワードプライマー(配列番号1、8F)
5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'
リバースプライマー(配列番号2、338R)
5'-TGCTGCCTCCCGTAGGAGT-3'
【0035】
前記定量工程において、前記基準サンプルは、前記標的領域の核酸を所定量含有する、すなわち、既知の量の標的領域の核酸を含有する。前記基準サンプルとしては、例えば、前記標的領域の核酸そのもの、すなわち、前記標的領域をコードするポリヌクレオチドでもよいし、前記標的領域の核酸を含むプラスミド等のベクターでもよいし、前記標的領域の核酸を含む細菌でもよい。前記標的領域が前記16S rRNAの場合、前記基準サンプルは、前記標的領域の核酸を含む細菌が好ましい。前記標的領域の核酸を含む細菌は、例えば、その含有量の測定が容易であり、また、他の細菌と比較して、前記核酸配列解析における検出力が低く、これを基準とすることにより、他の細菌をより精度よく検出できることから、大腸菌が好ましい。前記大腸菌は、前記核酸配列解析において、次世代シーケンサーを用いるときに、特に好適な基準サンプルとして使用できる。前記大腸菌としては、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)より分譲可能なEscherichia
coli ATCC 25922株があげられる。
【0036】
前記定量工程において、前記基準サンプルは、1つでもよいし、複数でもよく、予測精度がより向上することから、好ましくは、複数であり、予測精度がさらに向上することから、より好ましくは、3つまたは4つ以上である。前記基準サンプルが1つの場合、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量は、例えば、既知量の標的領域の核酸を含有するサンプルに対して、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量に設定してもよいし、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量に設定してもよいし、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量との間に設定してもよい。各含有量は、例えば、既知量の標的領域の核酸を含有するサンプルに対して、前記核酸配列解析を実施することにより決定できる。前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量は、例えば、既知量の標的領域の核酸を含有するサンプルについて、核酸配列解析を用いて測定した際の標的領域の核酸の含有量が、前記既知量に対して、50~150%の範囲、60~140%の範囲、70~130%の範囲、80~120%の範囲、90~110%の範囲となることを意味する。前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量は、含有割合で評価してもよい。この場合、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量は、例えば、既知量の標的領域の核酸を含有するサンプルについて、核酸配列解析を用いて測定した際の前記標的領域の核酸の含有割合が、70%以上、80%以上、好ましくは、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上となることを意味する。
【0037】
前記基準サンプルが複数の場合、各基準サンプルは、前記標的領域の核酸を異なる量含有することが好ましい。これにより、後述の品質予測工程において、例えば、前記定量工程後に得られる各基準サンプルにおける増幅断片の定量値に基づき、前記対象サンプルの品質を予測できる。前記定量工程において、複数の基準サンプルを用いる場合、各基準サンプルは、例えば、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量を含む基準サンプルと、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量(検出限界以下の含有量)を含む基準サンプルとを含むことが好ましい。この場合、前記基準サンプルは、例えば、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量を含む基準サンプルと、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量を含む基準サンプルを1以上の段階希釈した基準サンプルとを組み合わせることで調製できる。前記段階希釈における1段階の希釈倍率は、例えば、1~20倍であり、好ましくは、約10倍である。前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量を含む基準サンプルとしては、例えば、1×105 CFU/ml以上、好ましくは、1×106 CFU/ml以上の大腸菌を含む大腸菌液があげられる。前記定量工程において、複数の基準サンプルを用いる場合、各基準サンプルは、例えば、1つの基準サンプルを所定の希釈倍率で段階的に希釈することにより調製してもよい。前記基準サンプルが前記大腸菌を所定量含有し、前記基準サンプルが複数である場合、前記基準サンプルにおける大腸菌の量は、例えば、約1×107 CFU/ml、約1×106 CFU/ml、約1×105CFU/ml、および約1×104CFU/mlと設定できる。
【0038】
前記基準サンプルは、陽性コントロールおよび/またはネガティブコントロールを含んでもよい。前記陽性コントロールは、その標的領域の核酸の含有量が、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析できる含有量であるサンプルである。前記ネガティブコントロールは、その標的領域の核酸の含有量が、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析できる含有量であるサンプル、または核酸を実質的に含まないサンプル(例えば、水、生理的塩水、緩衝液等)等があげられる。
【0039】
前記定量工程において、前記標的領域の核酸の増幅方法は、前記核酸の種類に応じて適宜設定できる。前記標的領域の核酸がDNAである場合、前記定量工程では、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルと、DNAポリメラーゼと、dNTPと、前記プライマーセットとを含む核酸増幅系を用いて、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルにおける標的領域の核酸を増幅できる。前記標的核酸がRNAである場合、前記定量工程では、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルと、逆転写酵素と、dNTPと、cDNA合成用プライマーとを含む逆転写系を用いて、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルにおける標的領域の核酸からcDNAを合成し、ついで、得られたcDNAと、DNAポリメラーゼと、dNTPと、前記プライマーセットとを核酸増幅系を用いて、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルにおける標的領域の核酸を増幅できる。前記標的核酸の増幅は、例えば、市販のキット等を用いて実施できる。
【0040】
前記定量工程において、前記標的核酸の増幅における反応条件は、例えば、前記プライマーセットのTm、前記標的領域の長さ等に応じて適宜設定できる。前記定量工程において、前記標的核酸の増幅における反応条件は、核酸配列解析において増幅工程を有する場合、例えば、前記対象サンプルの品質の予測精度が向上することから、核酸配列解析において増幅工程における反応条件と同じことが好ましい。前記反応条件は、例えば、反応温度、反応時間等があげられる。
【0041】
前記定量工程において、前記増幅断片の量は、例えば、絶対量でもよいし、相対量でもよい。すなわち、前記定量工程では、前記増幅断片の絶対定量または前記増幅断片の相対定量を実施する。前記絶対量は、例えば、前記標的領域の核酸の分子数、モル数、コピー数、重量またはこれらの濃度等があげられる。前記相対量は、例えば、任意の基準に対する増幅断片の量であり、具体例として、内在性の核酸分子に対する増幅断片の量、前記基準サンプルに対する増幅断片の量、所定の増幅断片の量に達するまでの核酸増幅工程の回数(Cq値、Ct値等)等があげられる。
【0042】
前記定量工程において、前記増幅断片の量は、例えば、インターカレーター等の核酸分子にキレートする色素、前記増幅断片を検出可能なプローブ等を用いて測定できる。前記色素としては、例えば、インターカレーター法に利用可能な蛍光色素が利用でき、具体例として、SYBR(登録商標)Green、TB Green(登録商標)等があげられる。前記プローブは、例えば、Taqman(登録商標)プローブ等の加水分解型プローブ;ハイブリダイゼーションプローブ;サイクリングプローブ等があげられる。前記プローブの核酸配列の設計は、前記増幅断片の核酸配列に応じて、適宜設計できる。
【0043】
前記定量工程において、前記標的領域の核酸の増幅と、得られた増幅断片の量の定量とは、同時に実施してもよいし、前記標的領域の核酸の増幅後に、得られた増幅断片の量の定量を実施してもよい。前者の場合、すなわち、前記増幅と前記定量とを同時に実施する場合、前記増幅断片の量は、例えば、前記インターカレーター、加水分解型プローブ、サイクリングプローブ等を用いて、定量できる。この場合、前記インターカレーターおよびプローブ等は、前記核酸増幅系に共存させる。また、後者の場合、すなわち、前記増幅後に、定量を実施する場合、前記増幅断片の量は、例えば、前記ハイブリダイゼーションプローブを用いて、定量できる。この場合、前記定量は、例えば、ノザンブロット、サザンブロット等により、実施してもよい。
【0044】
つぎに、前記品質予測工程では、各サンプルにおける増幅断片の量に基づき、前記対象サンプルが、前記対象サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する。これにより、前記品質予測工程は、前記対象サンプルの品質を予測できる。前記品質予測工程では、例えば、前記基準サンプルの数に応じて、下記のように予測できる。
【0045】
前記基準サンプルが1つであり、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量、または前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量との間の含有量である場合、前記品質予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合(有意差が無い場合)、または前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測できる。他方、前記品質予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量より少ない場合、前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有さないと予測できる。また、前記基準サンプルが1つであり、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量である場合、前記品質予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合(有意差が無い場合)、または前記基準サンプルの増幅断片の量より低い場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有さないと予測できる。他方、前記品質予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測できる。
【0046】
前記基準サンプルが複数の場合、前記品質予測工程では、前記複数の基準サンプルから前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量とを判別することが好ましい。この場合、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と同じ(有意差なし)もしくはより多いの場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記品質予測工程では、前記基準サンプルが1つの場合と同様にして、前記品質予測工程では、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有すると予測できる。他方、前記品質予測工程では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量未満の場合、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量との間に存在する場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析できない含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記対象サンプルは、前記核酸配列解析に使用しうる品質を有さないと予測できる。
【0047】
本発明の品質予測方法は、前記定量工程に先立ち、前記対象サンプルに対して処理を行なう前処理工程を含んでもよい。前記前処理工程では、例えば、前記対象サンプルのみに対して処理を行なってもよいし、前記対象サンプルに加えて、前記基準サンプルに対して前処理を実施してもよい。この場合、前記定量工程では、前記対象サンプルとして、前記前処理後の対象サンプルを利用する。前記前処理は、例えば、前述の説明を援用できる。前記前処理は、例えば、核酸分子の抽出処理を含むことが好ましい。
【0048】
前記対象サンプルが対象者から抜去したインプラント等の医療器具の場合、前記前処理は、例えば、前記医療器具から前記細菌を剥離できることから、前記超音波処理が好ましい。前記超音波処理は、例えば、溶媒の存在下で実施する。前記溶媒は、例えば、水、生理食塩水;緩衝液;細胞内液、細胞外液等の輸液;University of Wisconsin(UW)液、histidine-tryptophan-ketogluta-rate(HTK)液、Celsior液、ET-Kyoto液、IGL-1液等の保存液;等があげられ、好ましくは、生理食塩水である。
【0049】
前記超音波処理の条件は、特に制限されず、例えば、10~100kHzである。また、処理時間は、例えば、10秒~10分間である。前記超音波処理における平均強度は、例えば、0.1~1W/cm2である。前記超音波処理の条件は、例えば、培養検査に用いる条件、PCR等に用いるサンプルの調製条件を利用できる。具体例として、培養検査に用いる場合、前記超音波処理は、例えば、約40±2kHz、約0.22±0.04cm2で、約1分~5分間実施する。これにより、前記細菌が形成するバイオフィルムが破壊可能である。PCR等に用いるサンプルを調製する場合、前記超音波処理は、例えば、約40±2kHz、約0.22±0.04cm2で、5~10分間実施する。これにより、前記細菌が形成するバイオフィルム破砕および細菌の死滅に伴うDNA抽出が可能である。
【0050】
前記前処理工程は、例えば、前記細菌から核酸を抽出する抽出工程を含むことが好ましい。前記核酸の抽出は、例えば、前記核酸の種類に応じて、常法により実施できる。前記核酸の抽出は、例えば、市販のDNA抽出キットまたは市販のRNA抽出キットを用いてもよい。
【0051】
このようにして、本発明の品質予測方法は、前記対象サンプルの品質を予測できる。本発明の品質予測方法によれば、前記対象サンプルの品質を予測できるため、例えば、前記核酸配列解析に供するサンプルの選抜、および前記核酸配列解析で得られた解析結果の精度の評価等を行なうことができる。
【0052】
<精度予測方法>
本発明の方法は、前述のように、対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する方法であって、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なう配列解析工程と、前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する予測工程とを含む。本発明の精度予測方法は、前記対象サンプルに加え、前記基準サンプルについても、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を増幅し、各サンプルの増幅断片の量に基づき、前記対象サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の精度予測方法によれば、前記対象サンプルにおける細菌の標的領域の核酸配列解析について、精度を予測できる。本発明の精度予測方法は、前記本発明の品質予測方法の説明を援用できる。
【0053】
前記定量工程は、前記本発明の品質予測方法の定量工程と同様にして実施できる。これにより、前記定量工程では、後述の予測工程に用いる増幅断片の量(定量値)を取得できる。
【0054】
つぎに、前記配列解析工程では、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なう。前記標的領域の核酸配列解析は、例えば、前記核酸配列解析方法に応じて適宜実施できる。
【0055】
前記配列解析工程において、前記標的領域の核酸配列解析を、前記次世代シーケンサー(NGS)を用いて実施する場合、例えば、以下の手順で実施できる。まず、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルから、NGS用の核酸ライブラリを調製する。前記核酸ライブラリは、例えば、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルと、NGS用のタグ配列が5’末端に付加されたプライマーセットとを用いて、PCRを実施することにより調製できる。前記タグ配列は、例えば、使用する次世代シーケンサーのマニュアルに応じて設計できる。前記プライマーセットとしては、例えば、前述のプライマーセット1にタグ配列を付加したものを使用できる。つぎに、PCR後の対象サンプルおよび前記基準サンプルから、核酸を精製する。前記核酸の精製は、例えば、前記核酸の種類に応じて、常法により実施できる。前記核酸の精製は、例えば、市販のDNA抽出キットを用いてもよい。そして、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルから精製されたDNAについて、NGSに供して、標的領域の核酸配列を解析できる。
【0056】
つぎに、前記予測工程では、前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する。これにより、前記予測工程では、前記配列解析工程で得られた前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測できる。
【0057】
前記基準サンプルが1つであり、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量、または前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量との間の含有量である場合、前記予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合(有意差が無い場合)、または前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度は、十分であると予測できる。他方、前記予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量より少ない場合、前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度は、不十分であると予測できる。また、前記基準サンプルが1つであり、前記基準サンプルにおける前記標的領域の核酸の含有量が、前記核酸配列解析を実施した際に、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量である場合、前記予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量と同じ場合(有意差が無い場合)、または前記基準サンプルの増幅断片の量より低い場合、前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度は、不十分であると予測できる。他方、前記予測工程では、例えば、前記対象サンプルにおける増幅断片の量が、前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記基準サンプルの増幅断片の量より多い場合、前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度は、十分であると予測できる。
【0058】
前記基準サンプルが複数の場合、前記予測工程では、前記複数の基準サンプルから前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量とを判別することが好ましい。この場合、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と同じ(有意差なし)もしくはより多いの場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記予測工程では、前記基準サンプルが1つの場合と同様にして、前記予測工程では、前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度は、十分であると予測できる。他方、前記予測工程では、前記対象サンプルにおける前記増幅断片の量が、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量未満の場合、前記標的領域の核酸配列が解析可能な含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量と、前記標的領域の核酸配列が解析できない含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量との間に存在する場合、または、複数の標的領域の核酸配列が解析できない含有量の基準サンプルにおける増幅断片の量間に存在する場合、前記細菌の標的領域の核酸配列解析の精度は、不十分であると予測できる。
【0059】
本発明の精度予測方法は、例えば、前記標的領域の核酸配列に基づき、前記対象サンプルが含有する細菌を同定する同定工程を含んでもよい。これにより、本発明の精度予測方法は、例えば、前記予測工程において、十分な精度があると予測される対象サンプルについて、細菌の種類を同定できる。この場合、本発明の精度予測方法は、例えば、細菌の同定方法ということもできる。前記同定は、例えば、得られた標的領域の核酸配列を、各種細菌の標的領域の核酸配列が登録されたデータベースにおける核酸配列と照合することにより実施できる。前記標的領域が16S rRNAの場合、前記データベースとしては、例えば、Greengenes(https://greengenes.secondgenome.com/)、MicroSEQ(登録商標)16S Reference Library(ThermoFisher Scientific社製)が利用できる。
【0060】
本発明の精度予測方法は、前記定量工程に先立ち、前記対象サンプルに対して処理を行なう前処理工程を含んでもよい。前記前処理工程は、前記本発明の品質予測方法における前処理工程の説明を援用できる。
【0061】
このようにして、本発明の精度予測方法は、前記核酸配列解析で得られた解析結果の精度の予測等を行なうことができる。
【0062】
<品質予測装置>
本発明の装置は、前述のように、対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する装置であって、取得部および品質予測部を備え、前記取得部は、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得し、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記品質予測部は、各サンプルにおける増幅断片の量のデータに基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する。
【0063】
また、本発明の方法は、対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測するためにコンピュータで実行される方法であって、前記方法は、取得処理および品質予測処理を含み、前記取得処理は、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得し、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記品質予測処理は、各サンプルにおける増幅断片の量のデータに基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する。
【0064】
本発明の品質予測装置および方法によれば、前記対象サンプルが、細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測できる。本発明は、前記本発明の品質予測方法および精度予測方法の説明を援用できる。
【0065】
以下、本発明の実施形態について、
図1および2を用いて説明する。なお、本発明は、下記の実施形態によって何ら限定および制限されない。なお、以下の
図1および2において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用できる。
【0066】
[実施形態1]
図1は、本発明の品質予測装置の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、品質予測装置1は、取得部11および品質予測部12を含む。本実施形態の品質予測装置1は、本発明のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。
【0067】
図2に、品質予測装置1のハードウェア構成のブロック図を例示する。品質予測装置1は、例えば、CPU(中央処理装置)101、メモリ102、バス103、記憶装置104、入力装置106、ディスプレイ107、通信デバイス108等を有する。品質予測装置1の各部は、それぞれのインタフェース(I/F)により、バス103を介して接続されている。
【0068】
CPU101は、例えば、コントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)等により、他の構成と連携動作し、品質予測装置1の全体の制御を担う。品質予測装置1において、CPU101により、例えば、本発明のプログラム105やその他のプログラムが実行され、また、各種情報の読み込みや書き込みが行われる。具体的には、例えば、CPU101が、取得部11および品質予測部12として機能する。品質予測装置1は、演算装置として、CPUを備えるが、GPU(Graphics Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)等の他の演算装置を備えてもよいし、CPUとこれらとの組合せを備えてもよい。なお、CPU101は、例えば、後述する実施形態2の精度予測装置における記憶部以外の各部として機能する。
【0069】
メモリ102は、例えば、メインメモリを含む。前記メインメモリは、主記憶装置ともいう。CPU101が処理を行う際には、例えば、後述する記憶装置104(補助記憶装置)に記憶されている本発明のプログラム105等の種々の動作プログラムを、メモリ102が読み込む。そして、CPU101は、メモリ102からデータを読み出し、解読し、前記プログラムを実行する。前記メインメモリは、例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)である。メモリ102は、例えば、さらに、ROM(読み出し専用メモリ)を含む。
【0070】
バス103は、例えば、外部機器とも接続できる。前記外部機器は、例えば、外部記憶装置(外部データベース等)、プリンター等があげられる。品質予測装置1は、例えば、バスに接続された通信デバイス108により、通信回線網に接続でき、前記通信回線網を介して、前記外部機器と接続することもできる。前記通信回線網は、特に制限されず、公知のネットワークを使用でき、例えば、有線でもよいし、無線でもよい。前記通信回線網は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)等があげられる。
【0071】
記憶装置104は、例えば、前記メインメモリ(主記憶装置)に対して、いわゆる補助記憶装置ともいう。前述のように、記憶装置104には、本発明のプログラム105を含む動作プログラムが格納されている。記憶装置104は、例えば、記憶媒体と、前記記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。前記記憶媒体は、特に制限されず、例えば、内蔵型でも外付け型でもよく、HD(ハードディスク)、FD(フロッピー(登録商標)ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、MO、DVD、フラッシュメモリー、メモリーカード等があげられ、前記ドライブは、特に制限されない。記憶装置104は、例えば、前記記憶媒体と前記ドライブとが一体化されたハードディスクドライブ(HDD)であってもよい。
【0072】
品質予測装置1は、例えば、さらに、入力装置106、ディスプレイ107を有する。入力装置106は、例えば、タッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス;キーボード;カメラ、スキャナ等の撮像手段;ICカードリーダ、磁気カードリーダ等のカードリーダ;マイク等の音声入力手段;等があげられる。ディスプレイ107は、例えば、LED(light emitting diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示装置があげられる。本実施形態1において、入力装置106とディスプレイ107とは、別個に構成されているが、入力装置106とディスプレイ107とは、タッチパネルディスプレイのように、一体として構成されてもよい。
【0073】
品質予測装置1において、メモリ102および記憶装置104は、ユーザからのアクセス情報およびログ情報、ならびに、外部データベース(図示せず)から取得した情報を記憶することも可能である。
【0074】
つぎに、本実施形態の品質予測測置1における処理の一例について、
図3のフローチャートに基づき、説明する。
【0075】
まず、品質予測装置1による処理に先立ち、ユーザが、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータを取得する。そして、前記ユーザは、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータを前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの情報と紐付けてデータベース等に登録する。
【0076】
つぎに、品質予測装置1による処理を開始する。まず、品質予測装置1の取得部11が、前記データベースに登録された、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得する(S1工程)。なお、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータが、記憶装置104に登録される場合、取得部11は、記憶装置104からこれらのデータを取得する。
【0077】
つぎに、品質予測部12は、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータに基づき、前記対象サンプルが、前記対象サンプルに含有される細菌の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する(S2工程)。品質予測部12における予測は、前記本発明の品質予測方法における品質予測工程と同様にして実施できる。
【0078】
本実施形態の品質予測装置およびそれを用いた方法によれば、前記対象サンプルが前記対象サンプルに含有される細菌の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測できる。
【0079】
本実施形態の品質予測装置1は、さらに、得られた品質予測結果を出力してもよい。この場合、前記品質予測結果の出力先は、例えば、ディスプレイ107等があげられる。
【0080】
<精度予測装置>
本発明の装置は、対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する装置であって、取得部および予測部を備え、前記取得部は、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記標的領域の核酸配列解析のデータとを取得し、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記核酸配列解析のデータは、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで得られたデータであり、前記予測部は、前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する。
【0081】
また、本発明の方法は、対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測するために、コンピュータで実行される方法であって、取得部および予測部を備え、前記取得部は、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記標的領域の核酸配列解析のデータとを取得し、前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、前記核酸配列解析のデータは、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで得られたデータであり、前記予測部は、前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する。
【0082】
本発明の精度予測装置および方法によれば、前記対象サンプルにおける細菌の標的領域の核酸配列解析について、精度を予測できる。
【0083】
以下、本発明の実施形態について、
図4を用いて説明する。なお、本発明は、下記の実施形態によって何ら限定および制限されない。なお、以下の
図4において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用できる。
【0084】
[実施形態2]
図4は、本発明の精度予測装置の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、品質予測装置2は、取得部21および予測部22を含む。本実施形態の精度予測装置2は、本発明のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。
【0085】
つぎに、本実施形態の精度予測測置2における処理の一例について、
図5のフローチャートに基づき、説明する。
【0086】
まず、品質予測装置1による処理に先立ち、ユーザが、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータを取得する。そして、前記ユーザは、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータを前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの情報と紐付けてデータベース等に登録する。
【0087】
また、前記ユーザが、前記プライマーセットを用い、前記対象サンプルおよび基準サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで、核酸配列のデータを取得する。そして、前記ユーザは、前記対象サンプルおよび基準サンプルの核酸配列のデータを前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの情報と紐付けてデータベース等に登録する。
【0088】
つぎに、精度予測測置2による処理を開始する。まず、精度予測測置2の取得部21が、前記データベースに登録された、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの核酸配列のデータとを取得する(S3工程)。なお、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記対象サンプルおよび前記基準サンプルの核酸配列のデータが、記憶装置104に登録される場合、取得部21は、記憶装置104からこれらのデータを取得する。
【0089】
つぎに、予測部22は、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する(S4工程)。予測部22における予測は、前記本発明の精度予測方法における予測工程と同様にして実施できる。
【0090】
本実施形態の精度予測装置およびそれを用いた方法によれば、前記対象サンプルにおける細菌の標的領域の核酸配列解析について、精度を予測できる。
【0091】
本実施形態の精度予測測置2は、さらに、得られた精度予測結果を出力してもよい。この場合、前記精度予測結果の出力先は、例えば、ディスプレイ107等があげられる。
【0092】
本実施形態の精度予測測置2は、さらに、前記標的領域の核酸配列に基づき、前記対象サンプルが含有する細菌を同定する同定部を備えてもよい。これにより、本実施形態の精度予測測置2は、例えば、予測部22において、十分な精度があると予測される対象サンプルについて、細菌の種類を同定できる。この場合、本実施形態の精度予測装置2は、例えば、細菌の同定装置ということもできる。
【0093】
<プログラム>
本発明のプログラムは、前述の品質予測装置における方法、または精度予測装置における方法を、コンピュータ上で実行可能なプログラムである。または、本発明のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。前記記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)である。前記記録媒体は、特に制限されず、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク(HD)、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)等があげられる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【0095】
[実施例1]
本発明により、基準サンプルを用いることで、対象サンプルの品質を予測可能であることを確認した。
【0096】
(1)サンプルの調製
培地性能試験用の大腸菌調製キット(E.coli(ATCC 25922株)EZ-CFU(商標) One Step (MicroBiologics社製)について、付属水和液1本に対して、2個のペレットを水和した。得られた水和物を、pH7.2のリン酸バッファー(PBS)で希釈し、102-103 CFU/mlに相当する基準サンプル(EZ-CFU)を調製した。
【0097】
E.coli ATCC 25922株(ATCCから入手)について、LB培地を用いて37℃で約1日培養し、増殖させた。前記培養後、マクファーランド比濁法により、得られた大腸菌液における大腸菌濃度を算出した。そして、前記大腸菌液を1×107 CFU/ml、1×106 CFU/ml、1×105 CFU/ml、または1×104 CFU/mlとなるように、手術中に使用する滅菌生理食塩水で希釈し、基準サンプルを調製した。なお、各濃度のサンプルについて、4検体ずつ調製した。
【0098】
(2)ゲノムDNAの抽出
各基準サンプルについて、DNA抽出キット(QIAamp(登録商標)DNA Mini Kit、QIAGEN社製)を用いて、DNAを抽出した。具体的には、1.5ml マイクロチューブにProtease20μlおよびサンプル(超音波処理液)200μlを添加した。前記添加後、前記マイクロチューブを、ボルテックスを用いて撹拌し、ついで、Buffer AL 200μlを添加した。前記添加後、前記マイクロチューブを、15秒間ボルテックスを用いて撹拌し、60℃で10分間インキュベートした。さらに、前記マイクロチューブ中の混合液をスピンダウンさせた後、99.5%(v/v)エタノールを200μl添加した。前記添加後、前記マイクロチューブを、15秒間ボルテックスを用いて撹拌後、前記マイクロチューブ中の混合液をスピンダウンさせた。
【0099】
つぎに、前記マイクロチューブ中の混合液全量を、コレクションチューブにセットされたカラム(QIAamp(登録商標) Spin Culumn)に負荷した。前記負荷後、前記カラムを、8000rpm(5100×g)で1分間遠心した。前記遠心後、室温(約25℃、以下同様)でBuffer AW1 500μlを前記カラムに負荷した。再度、前記カラムを、8000rpm(5100×g)で1分間遠心した後、室温でBuffer AW2 500μlを前記カラムに負荷した。さらに、前記カラムを、15000rpm(17900×g)で3分間遠心した後、室温でBuffer AE 100μlを前記カラムに負荷した。室温で1分間インキュベート後、前記カラムを、8000rpm(5100×g)で1分間遠心し、得られた溶出液を、ゲノムDNAを含むサンプル(DNAサンプル)として回収した。
【0100】
(3)標的領域の核酸の定量
前記実施例1(2)で得られたDNAサンプル(基準サンプルに相当)について、次世代シーケンサーに用いるプライマーセットを用いた定量的PCR(Quantitative PCR、qPCR)に供し、標的領域の核酸を定量した。具体的には、各サンプルについて、前記プライマーセット1およびqPCR試薬(LightCycler 480 SYBR Green I Master、Roche社製)を用いて下記組成でqPCR反応液を調製した。得られた反応液およびqPCR装置(Light cycler(登録商標)nano、Roche社製)を用いて下記qPCR条件でqPCRを実施し、蛍光色素(SYBR(登録商標) Green I)を用いて、増幅断片の量をCq値として定量した。なお、Cq値は、前記qPCR装置に組み込まれているソフトウェアを用い、自動設定により決定した。
【0101】
(qPCR反応液)
Master Mix 6μl
滅菌水(D2W) 10μl
フォワードプライマー(50μmol/l) 1μl
リバースプライマー(50μmol/l) 1μl
DNAサンプル 2μl
合計 20μl
【0102】
(qPCR反応条件)
(1)Hold:95℃、600秒
(2)3-step Amplification:35サイクル
(1サイクル:94℃30秒、58℃30秒および68℃30秒)
(3)Pre-melt Hold:95℃、10sec
(4)Melting:60℃から97℃まで0.1℃/秒で昇温
【0103】
(4)標的領域の核酸配列の解析
前記実施例1(2)で得られたDNAサンプル(基準サンプルに相当)について、60種類のNGS用のタグ配列を付加したプライマーセット1の混合物を用いて核酸ライブラリを調製した。なお、フォワードプライマー用タグ配列を60種類の異なる配列とし、リバースプライマー用タグ配列は1種類とした。
【0104】
具体的には、各サンプルについて、前記タグ配列が付加されたプライマーセット1およびPCR試薬(Platinum PCR SuperMix-High Fidelity、Invitrogen社製)を用いて下記組成でPCR反応液を調製後、前記qPCR装置を用いて下記PCR条件でPCRを実施した。
【0105】
(PCR反応液)
Master Mix 45μl
フォワードプライマー(50μmol/l) 0.5μl
リバースプライマー(50μmol/l) 0.5μl
DNAサンプル 4μl
合計 50μl
【0106】
(PCR反応条件)
(1)Hold:95℃、180秒間
(2)3-step Amplification:30サイクル
(1サイクル:94℃30秒、58℃30秒および68℃30秒)
(3)Pre-melt Hold:95℃、10秒間
(4)Melting:60℃から97℃まで0.1℃/秒で昇温
【0107】
つぎに、DNA精製キット(Agencourt AMPure XP、Beckman Coulter社製)を用いて、得られた増幅産物から、前記核酸ライブラリを精製した。前記精製は、2回行なった。そして、前記核酸ライブラリについて、次世代シーケンサー用キット(Ion PGM Hi-Q View Chef 400 Kit、ThermoFisher Scientific社製)と、次世代シーケンサー(Ion Chef(商標) System、ThermoFisher Scientific社製)とを用いて、標的配列である、V1領域およびV2領域の核酸配列を解析し、核酸配列毎のリード数(OTU)を取得した。得られたV1領域およびV2領域の核酸配列について、データベース(GreengeneおよびMicroSEQ(登録商標)16S Reference Library)と照合し、前記対象サンプルおよび基準サンプルに含まれている細菌を属単位で同定した。なお、細菌の同定は、ソフトウェア(Ion Reporter(商標) software version 5.12、ThermoFisher Scientific社製)そして、全リード数(総OTU)に占める大腸菌のゲノムDNA由来のリード数の割合(OTU%、OTU/総OTU(%))を算出した。そして、前記増幅断片の量(Cq値)と、リード数またはリード数の割合とを比較した。また、コントロールは、前記核酸ライブラリに代えて、前記滅菌生理食塩水(Saline)を用いた以外は同様にして実施した。また、ネガティブコントロールは、ヌクレアーゼフリー水(NF)を用いた以外は、同様にして実施した。なお、前記NGS解析は、異なる濃度の基準サンプルと、前記コントロールと、ネガティブコントロールとの7検体を1セットとし、独立に4回実施した。
【0108】
(5)統計解析
前記実施例1(3)で得られたCq値と、前記実施例1(4)で得られたOTUおよび%OTUについて、平均値、標準偏差(SD)、相関関係および検査精度の評価を統計解析ソフト(SPSS v22.0 software、SPSS社製)を用いて行った。前記相関関係は、Spearman の順位相関係数を用いて評価した。また、前記検査精度(信頼性)は、一般化可能性理論(generalizability theory)を用いて、級内相関(Intraclass correlation coefficients:ICC)に基づき評価した。Cq値、OTUおよび%OTUの平均値、標準偏差、および級内相関を検討した結果を下記表1~4に、Cq値と、OTUまたは%OTUとの相関関係を検討した結果を、
図6に示す。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
qPCRの標準偏差は、0.2-0.7であるのに対して、NGSのOTUの標準偏差は、2.3×103-7.9×104と数値の変動幅が大きかった。このため、対象サンプルにおける細菌の定量評価の指数としては、NGSのOTUを用いることは困難であり、qPCRが適していることがわかった。
【0114】
前記表2に示すように、Cq値の級内相関係数は、0.991であり、95%信頼区間は、0.973-0.998と高かった。また、前記表3に示すように、OTUは、0.795であり、95%信頼区間は、0.520-0.955と低かった。しかしながら、前記表4に示すように、%OTUは、0.989であり、95%信頼区間は、0.966-0.998と高かった。これらのことから、標的領域の定量において、Cq値の算出方法、すなわち、qPCRの再現性および信頼性が高いことがわかった。
【0115】
図6は、Cq値と、OTUまたは%OTUとの相関関係を示すグラフである。
図6において、(A)は、Cq値とOTUとの相関関係を示すグラフであり、(B)は、Cq値と%OTUとの相関関係を示すグラフである。
図6において、横軸は、OTUまたは%OTUを示し、縦軸は、Cq値を示す。
図6(A)に示すように、Cq値とOTUとの相関係数は、0.967であり、p値は、0.000であった。また、
図6(B)に示すように、Cq値とOTUとの相関係数は、0.931であり、p値は、0.000であった。
【0116】
前記表1-4から明らかなように、qPCRの再現性および信頼性が高く、または、qPCRにより得られるCq値は、次世代シーケンサーにより得られるOTUおよび%OTUと強い相関を示すことから、Cq値を用いること、すなわち、標的領域の増幅により得られる増幅断片の量に基づき、次世代シーケンサーにより得られるリード数が十分であるか、すなわち、核酸配列解析が十分な精度で実施できるかを予測できることがわかった。このため、核酸配列解析に供する対象サンプルについて、基準サンプルとあわせて増幅断片の量を測定し、前記基準サンプルの増幅断片の量と、前記対象サンプルの増幅断片の量とを比較することにより、前記対象サンプルを核酸配列解析に供した際に十分な解析結果を予測できるといえる。
【0117】
以上のことから、本発明において、基準サンプルの増幅断片の量を定量し、これを指標とすることで、対象サンプルの品質を予測可能であることがわかった。
【0118】
[実施例2]
本発明により、対象サンプルの品質を予測可能であること、および核酸配列解析の精度を予測可能であることを確認した。
【0119】
(1)対象サンプルの調製
対象サンプルは、対象者から抜去したインプラントを用いて調製した。具体的には、慢性骨髄炎患者(対象者)1名の8検体から、骨軟部組織を手術により清潔に取り出した。つぎに、取り出した組織(腐骨、瘢痕等)等をスピッツに収容後、臨床検査室に搬送した。細菌検査室において、検体容器ごと超音波処理装置(BactoSonic(登録商標)、BANDELIN社製)を用いて、40±2kHで1分間超音波処理することで、検体周囲のバイオフィルムを破砕し、付着している細菌を抽出した(インプラント由来サンプル、対象サンプル1~8 )。得られた超音波処理液を2600rpm(1260×g)で15分間遠心後、上清を回収し、寒天培地による細菌培養により、インプラント由来サンプル中の細菌の同定を行った。この結果、1名の患者由来の8検体全てにおいて、プロピオニバクテリウム属の細菌が検出された。残部の超音波処理液は、後述する定量および核酸配列解析に供するまで-80℃で冷凍保存した。
【0120】
(2)ゲノムDNAの抽出
前記基準サンプルに代えて、解凍後の超音波処理液を用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、ゲノムDNAを含むサンプルを回収した。
【0121】
(3)基準サンプルの調製
E.coli ATCC 25922株について、LB培地を用いて37℃で培養した。マクファーランド比濁法により測定される濃度が、3(9×108 CFU/ml、OD=0.582)となった際に前記培養液を回収した。そして、得られた大腸菌液を1×107 CFU/ml、1×106 CFU/ml、1×105 CFU/ml、または1×104 CFU/mlとなるように希釈した。前記実施例1(1)の基準サンプルに代えて、得られた希釈液を用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、ゲノムDNAを含むサンプル(DNAサンプル)を回収した。
【0122】
(4)標的領域の核酸の定量
前記実施例1(2)で得られたDNAサンプル(基準サンプルに相当)に代えて、前記実施例2(2)で得られたDNAサンプル(対象サンプルに相当)および前記実施例2(3)で得られたDNAサンプル(基準サンプルに相当)を用いた以外は、前記実施例1(3)と同様にして、増幅断片の量をCq値として定量した。
【0123】
(5)標的領域の核酸配列の解析
前記実施例1(2)で得られたDNAサンプル(基準サンプルに相当)に代えて、前記実施例2(2)で得られたDNAサンプル(対象サンプルに相当)および前記実施例2(3)で得られたDNAサンプル(基準サンプルに相当)を用いた以外は、前記実施例1(4)同様にして、核酸ライブラリを調製後、前記DNA精製キットを用いて、前記核酸ライブラリの精製を2回実施した。
【0124】
精製された核酸ライブラリを、次世代シーケンサー(IonPGMSystem、ThermoFisher Scientific社製)に供して、標的配列である、V1領域およびV2領域の核酸配列を解析し、核酸配列毎のリード数を取得した。得られたV1領域およびV2領域の核酸配列について、前記データベースと照合し、前記対象サンプルおよび基準サンプルに含まれている細菌を同定した。また、コントロールは、前記核酸ライブラリに代えて、生理食塩水を用いた以外は同様にして実施した。また、ネガティブコントロールは、前記ヌクレアーゼフリー水(NF)を用いた以外は、同様にして実施した。これらの結果を
図7に示す。
【0125】
図7は、対象サンプルおよび基準サンプルにおける増幅断片の量と、各サンプルの核酸配列解析の結果とを比較したグラフである。
図7において、縦軸のパーセントは、各サンプルにおける%OTUを示す。また、
図7において、横軸は、サンプルの種類および対象サンプルおよび基準サンプルにおける前記増幅産物の量(Cq値)を示す。また、
図7において、図中の数値は、大腸菌の%OTUを示す。
図7の基準サンプルの結果が示すように、1×10
7CFU/mlまたは1×10
7CFU/mlの大腸菌を含む基準サンプルでは、いずれも%OTUが99%であり、高い精度で核酸配列解析を実施できた。他方、1×10
5CFU/mlの大腸菌を含む基準サンプルでは、%OTUが89%となり、1×10
4CFU/mlの大腸菌を含む基準サンプルでは、%OTUが26%となり、基準サンプル中に含まれる大腸菌以外に混入した細菌(例えば、滅菌生理食塩水中のStreptococcus属細菌)由来のゲノムDNAの割合が増加し、核酸配列解析の精度が大腸菌の濃度依存的に低下した。また、Cq値と、%OTUを比較した場合も同様の結果であった。このため、1×10
5CFU/mlを超える細菌を含む基準サンプルと、同等以上の細菌含有量の場合、すなわち、Cq値が22.8未満の場合、核酸配列解析は、十分な精度が得られたといえる。また、1×10
5CFU/ml以下の細菌を含む基準サンプルと、同等以下の細菌含有量の場合、すなわち、Cq値が22.8以上の場合、核酸配列解析は、十分な精度が得られたといえない。また、対象サンプル1~8について、Cq値と%OTUとを比較した場合、Cq値が増加するについて、プロピオニバクテリウム属の細菌(Propionibacterium)の%OTUが減少し、滅菌生理食塩水中のStreptococcus属細菌等の%OTUが増加していた。このため、同一症例より得られたサンプルであっても、採取されたサンプル間で検体にふくまれている細菌などに違いがあると考えられ、基準サンプルのCq値を指標とし、対象サンプルのCq値と、基準サンプルのCq値とを比較することにより、前記対象サンプルが、核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測するといえる。
【0126】
したがって、前記核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象サンプルおよび前記基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を指標とすることにより、前記対象サンプルの品質を予測可能であり、また、核酸配列解析の精度を予測可能であるといえる。
【0127】
以上のことから、本発明により、対象サンプルの品質を予測可能であること、および核酸配列解析の精度を予測可能であることがわかった。
【0128】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0129】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する方法であって、
前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、
各サンプルにおける増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルが、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する品質予測工程とを含む、方法。
(付記2)
前記標的領域は、16S rRNAのV1領域およびV2領域の少なくとも一方を含む、付記1記載の方法。
(付記3)
前記標的領域の核酸は、前記標的領域を含む大腸菌である、付記1または2記載の方法。
(付記4)
前記基準サンプルは、複数であり、
各基準サンプルは、前記標的領域の核酸を異なる量含有する、付記1から3のいずれかに記載の方法。
(付記5)
各サンプルに対して超音波処理を行なう前処理工程を含み、
前記超音波処理された各サンプルを用いて、前記定量工程を実施する、付記1から4のいずれかに記載の方法。
(付記6)
前記対象者由来サンプルは、インプラント由来サンプルまたは生体サンプルである、付記1から5のいずれかに記載の方法。
(付記7)
前記核酸配列解析は、次世代シーケンサーによる核酸配列解析である、付記1から6のいずれかに記載の方法。
(付記8)
対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する方法であって、
前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量を定量する定量工程と、
前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なう配列解析工程と、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する予測工程とを含む、方法。
(付記9)
前記標的領域は、16S rRNAのV1領域およびV2領域の少なくとも一方を含む、付記8記載の方法。
(付記10)
前記標的領域の核酸は、前記標的領域を含む大腸菌である、付記8または9記載の方法。
(付記11)
前記基準サンプルは、複数であり、
各基準サンプルは、前記標的領域の核酸を異なる量含有する、付記8から10のいずれかに記載の方法。
(付記12)
各サンプルに対して超音波処理を行なう前処理工程を含み、
前記超音波処理された各サンプルを用いて、前記定量工程および配列解析工程を実施する、付記8から11のいずれかに記載の方法。
(付記13)
前記対象者由来サンプルは、インプラント由来サンプルまたは生体サンプルである、付記8から12のいずれかに記載の方法。
(付記14)
次世代シーケンサーを用いて、前記配列解析工程を実施する、付記8から13のいずれかに記載の方法。
(付記15)
対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する装置であって、
取得部および品質予測部を備え、
前記取得部は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記品質予測部は、
各サンプルにおける増幅断片の量のデータに基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する、
装置。
(付記16)
対象者由来サンプルが細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測するためにコンピュータで実行される方法であって、
取得処理および品質予測処理を含み、
前記取得処理は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記品質予測処理は、
各サンプルにおける増幅断片の量のデータに基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析に使用しうる品質を有するかを予測する、
方法。
(付記17)
対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する装置であって、
取得部および予測部を備え、
前記取得部は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記標的領域の核酸配列解析のデータとを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記核酸配列解析のデータは、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで得られたデータであり、
前記予測部は、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する、
装置。
(付記18)
対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測するためにコンピュータで実行される方法であって、
取得処理および予測処理を含み、
前記取得処理は、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータおよび前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータと、前記標的領域の核酸配列解析のデータとを取得し、
前記対象者由来サンプルの増幅断片の量のデータは、前記細菌の標的領域の核酸配列解析に用いるプライマーセットを用い、前記対象者由来サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルの増幅断片の量のデータは、前記プライマーセットを用い、前記標的領域の核酸を所定量含有する基準サンプルについて、前記標的領域の核酸を増幅し、得られた増幅断片の量のデータであり、
前記核酸配列解析のデータは、前記プライマーセットを用い、各サンプルについて、前記標的領域の核酸配列解析を行なうことで得られたデータであり、
前記予測処理は、
前記各サンプルにおける、前記増幅断片の量に基づき、前記対象者由来サンプルに含有される細菌の標的領域の核酸配列解析の精度を予測する、
方法。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上のように、本発明によれば、対象サンプルの品質を予測できるため、例えば、前記核酸配列解析に供するサンプルの選抜、および前記核酸配列解析で得られた解析結果の精度の評価等を行なうことができる。したがって、本発明は、例えば、感染症の診断等の医療分野において極めて有用である。
【配列表】