(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】情報処理方法、制御装置及び溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20240905BHJP
B23K 9/127 20060101ALI20240905BHJP
F16L 55/18 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
B23K31/00 M
B23K9/127 501Z
F16L55/18 Z
(21)【出願番号】P 2023106146
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591027237
【氏名又は名称】コスモエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594120261
【氏名又は名称】株式会社三葉電熔社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】又賀 和昭
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 洋
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-177480(JP,A)
【文献】特開2002-59263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B23K 9/127
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の腐食部を撮像した画像を取得し、
前記画像から、周辺よりも凹んだ第1凹部の輪郭と、該第1凹部内に位置し、該第1凹部より更に凹んだ第2凹部の輪郭とを検出し、
前記第1凹部及び第2凹部の輪郭の検出結果に基づき、前記第2凹部に対する肉盛り溶接を行った後、前記第1凹部に対する肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機に出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記腐食部に赤外光を照射した第1画像と、前記腐食部に可視光を照射した第2画像とを取得し、
前記第1画像及び第2画像に基づき、前記第1凹部の輪郭を検出する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記腐食部に、異なる方向から照明光を照射した複数の前記画像を取得し、
複数の前記画像を重ね合わせて陰影部分を特定することで、前記第2凹部の輪郭を検出する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記第1凹部及び第2凹部それぞれについて、凹部重心から放射状に延ばした複数の直線と凹部輪郭との交点を検出し、
検出した各交点を結ぶ枠線を溶接経路として特定し、
前記枠線を凹部重心に向けて所定幅ずつ狭めることで肉盛り溶接を行う前記溶接指示を出力する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
制御部を備える制御装置であって、
前記制御部が、
配管の腐食部を撮像した画像を取得し、
前記画像から、周辺よりも凹んだ第1凹部の輪郭と、該第1凹部内に位置し、該第1凹部より更に凹んだ第2凹部の輪郭とを検出し、
前記第1凹部及び第2凹部の輪郭の検出結果に基づき、前記第2凹部に対する肉盛り溶接を行った後、前記第1凹部に対する肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機に出力する
制御装置。
【請求項6】
配管の腐食部を溶接する溶接機と、前記腐食部を撮像するカメラと、赤外光及び可視光を照射するリング状の照明と、前記溶接機、カメラ及び照明を制御する制御装置とを有する溶接装置であって、
前記制御装置が、
前記腐食部に赤外光を照射した第1画像と、前記腐食部に可視光を照射した第2画像とを前記カメラから取得し、
前記第1画像及び第2画像に基づき、前記配管内で周辺よりも凹んだ第1凹部の輪郭を検出し、
前記腐食部に、リング状の前記照明により異なる方向から照明光を照射した複数の画像を前記カメラから取得し、
複数の前記画像を重ね合わせて陰影部分を特定することで、前記第1凹部内に位置し、前記第1凹部より更に凹んだ第2凹部の輪郭を検出し、
前記第1凹部及び第2凹部の輪郭の検出結果に基づき、前記第2凹部に対する肉盛り溶接を行った後、前記第1凹部に対する肉盛り溶接を行う溶接指示を前記溶接機に出力する
溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、制御装置及び溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、天然ガス等を送るための配管内では、金属の酸化等により様々な形状の腐食が起こり、配管機能が損なわれる。そこで、作業者が配管内に立ち入り、配管の表面を金属で覆う肉盛り溶接補修が実施される。
【0003】
この配管の溶接補修を支援する手法が提案されている。例えば特許文献1では、溶接トーチと、溶接トーチを支持するロボットアームと、補修箇所の画像情報を取得する視覚センサと、画像情報に基づいて補修箇所を認識し、溶接トーチ及びロボットアームを制御して溶接補修させる制御部とを備える配管内補修装置等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの側面では、配管腐食部の溶接補修を好適に実施することができる情報処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面では、情報処理方法は、配管の腐食部を撮像した画像を取得し、前記画像から、周辺よりも凹んだ第1凹部の輪郭と、該第1凹部内に位置し、該第1凹部より更に凹んだ第2凹部の輪郭とを検出し、前記第1凹部及び第2凹部の輪郭の検出結果に基づき、前記第2凹部に対する肉盛り溶接を行った後、前記第1凹部に対する肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機に出力する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、配管腐食部の溶接補修を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図9】制御装置が実行する処理手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、配管の腐食により配管内に散在する凹部(腐食部)の溶接補修を行う溶接装置について説明する。
図1は、溶接装置11の外観を示す模式図である。
図2は、溶接装置11の構成例を示すブロック図である。
【0010】
図1、
図2に示すように、溶接装置11は、溶接トーチ12とロボットアーム13とを有する溶接機14と、配管15内を撮像するカメラ16と、溶接機14を配管に対して接地するための接地機構20と、溶接トーチ12とロボットアーム13と設置機構とを制御する制御装置17と、溶接機14、カメラ16、接地機構20、及び制御装置17に電力を供給する発電機18と、凹部30を照らすための照明21と、溶接機14の溶接トーチ12に供給するためのシールドガスを貯留したガスボンベ22と、制御装置17にコマンドを入力するためのコントローラ23と、これらを載置した1以上の台車24と、を備える。
【0011】
補修対象となる配管15は、炭素鋼製であることが多い。台車24は、一台で構成されていてもよいし、2以上で構成される場合には互いに連結部を介して連結されていてもよい。
【0012】
溶接機14は、たとえば、一部がロボット化されたコンピュータ制御によって半自動的に動作する半自動溶接機(GMAW;CO2、MAG(Metal Active Gas))で構成される。溶接機14は、ガスシールドアーク溶接機であり、Gas Metal Arc Weldingと呼ばれる溶接法を用いる。このGas Metal Arc Weldingと呼ばれる溶接法には、CO2溶接またはMAG溶接が含まれる。
【0013】
溶接機14は、制御装置17に記憶されたプログラムに従い、配管15内で自動的に溶接を行うことができる。溶接機14は、溶接棒を兼ねる接線ワイヤとその外側のガスノズルとを含む溶接トーチ12と、溶接トーチ12を支持するロボットアーム13と、を有する。接線ワイヤは、ガスシールドアーク溶接時の電極を構成する。
【0014】
溶接機14は、発電機18から電力供給を受けて各部に電力を供給する図示しない電源回路を有する。溶接機14は、配管15に対して電気的に接続するアース線19を有する。溶接機14は、配管15の凹部(腐食部)30に対して溶接補修を行うことができる。
【0015】
接地機構20は、溶接機14に接続されたアース線19の途中に介在されている。接地機構20は、たとえば、アース線19が周囲に巻き回されたドラムと、ドラムを回転駆動するモータと、を有する。モータは、たとえば、サーボモータで構成される。
【0016】
接地機構20は、たとえば、制御装置17からの制御でモータを正転または逆転させ、ドラムを正方向または逆方向に回転させることで、アース線19の先端を配管15の内面に当接させたり、アース線19の先端を配管15の内面から離間させたりすることができる。
【0017】
なお、接地機構20の構成は、上記に限定されるものではなく、たとえば、スピンドルのような進退機構でアース線19の先端を配管15に押し当てるものであっても良い。
【0018】
ロボットアーム13は、たとえば、直交3軸移動ロボット(X軸Y軸Z軸移動テーブル)で構成されているが、それ以外の多関節型のアーム形ロボットで構成されていてもよい。
【0019】
カメラ16は、撮像素子(CCD(Charge Coupled Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ)及びレンズを有する一般的なカメラまたはビデオカメラで構成されており、配管15内の様子を画像として取得できる。カメラ16で取得した画像は、制御装置17に送られて制御装置17の記憶装置に蓄積される。
【0020】
制御装置17は、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)で構成されているが、それ以外のワンチップマイコン、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他のコンピュータ等で構成されていてもよい。
【0021】
制御装置17は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)・RAM(Random Access Memory)・HDD((Hard Disk Drive)・SSD(Solid State Drive)等の記憶装置と、それらを接続する内部バスと、CPUに電気的に接続されてロボットアーム13のモータを駆動したり、溶接トーチを制御したりする各種のドライバIC(Integrated Circuit)と、を有する。
【0022】
記憶装置は、溶接機14のロボットアーム13及び溶接トーチ12を制御するための各種の制御プログラム(制御用ソフトウェア)を記憶している。また、記憶装置は、カメラ16で取得した画像を解析する画像解析プログラム(画像解析用ソフトウェア)を記憶している。記憶装置は、カメラ16から送られた画像を随時記憶することができる。
【0023】
コントローラ23は、作業者がコマンドを入力するための複数の操作ボタン25と、作業者によって操作ボタン25を介して入力されたコマンドを表示したり制御装置17からのエラーメッセージを表示したりするための表示部26と、を有する。
【0024】
発電機18は、一般的なディーゼルエンジン発電機で構成されている。台車24は、金属材料によって構成された一般的な台車24(トロッコ)で構成されている。台車24は、モータ及びギアボックスを有し、制御装置17の制御下で、発電機18(溶接機14の電源回路)から電力供給を受けたモータによって自走するものであるが、管理者の人力によって前進・後退できるものであってもよい。
【0025】
照明21は、発電機18から電力供給を受けて配管15内を照らすことができる。照明21は、たとえば、LED照明で構成されている。後述の如く、本実施の形態に係る照明21はリング状に構成されており、リング状の軌道をLED光源が周回することで、凹部30に向けて複数の方向から照明光を出射する。
【0026】
ガスボンベ22は、シールドガス(CO2ガスまたはアルゴン等の不活性ガス)を内側に貯留しており、溶接機14からの操作を受けて、シールドガスの量を調整して溶接トーチ12のガスノズルにシールドガスを供給できる。
【0027】
図3は、制御装置17の構成例を示すブロック図である。
【0028】
制御装置17は、制御部170、主記憶部171、補助記憶部172を備える。制御部170は、一又は複数のCPU等の演算装置であり、溶接装置11に係る種々の情報処理を実行する。主記憶部171はRAM等の一時記憶領域であり、制御部170による演算に必要なデータを一時的に記憶する。補助記憶部172はROM等の記憶装置であり、制御部170に処理を実行させるプログラムP(プログラム製品)、その他のデータを記憶する。
【0029】
なお、制御装置17は可搬型記憶媒体17aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体17aからプログラムPを読み込んでもよい。また、制御装置17は、他のコンピュータからプログラムPをダウンロードしてもよい。
【0030】
図4は、配管15内の腐食部の構成を示す説明図である。
図4Aでは、凹部30(腐食部)の断面を図示している。以下では本実施の形態の概要を説明する。
【0031】
配管15内の腐食により形成される凹部30は、様々な形状(輪郭)、大きさ、深さがある。そのため、単純に一定の大きさの円などで凹部30をなぞっても、凹部30を均一に埋めることができないことから、凹部30の形状を正しく認識する必要がある。
【0032】
また、
図4Aに示すように、凹部30は、周囲の正常部分より一段凹んだ第1凹部31と、第1凹部31内に位置し、第1凹部31より更に凹んだ第2凹部32とを有する2段構造となっている。そのため、溶接を行うには深さへの対応が必要となり、深い第2凹部32を1層分先に埋めて、その後浅い第1凹部31を2層目として埋める必要がある。
【0033】
そこで制御装置17は、カメラ16により凹部30を撮像した画像から第1凹部31及び第2凹部32の輪郭を検出する。そして制御装置17は、第2凹部32に対する肉盛り溶接を行った後、第1凹部31に対する肉盛り溶接を行うよう溶接機14に溶接指示を出力する。
【0034】
図4Bでは、カメラ16により配管15内の凹部30を撮像する様子を図示している。制御装置17は、照明21により凹部30に照明光を当てながら、カメラ16により凹部30を撮像する。
【0035】
本実施の形態に係る照明21は、リング状の形状を有する。カメラ16は、照明21のリングの空洞部分を通して凹部30を撮像する。照明21は、リング状の軌道をLED光源が周回することで、円周上の各方向から凹部30に照明光を照射する。後述の如く、制御装置17は、各方向から照明光を照射した複数の画像を重ね合わせることで出来上がる陰影部分を、第2凹部32として検出する。
【0036】
また、照明21は、制御装置17からの指示に従って赤外光及び可視光をそれぞれ照射し、カメラ16は、赤外光及び可視光をそれぞれ照射した凹部30を撮像する。
図5は、腐食部の画像例を示す説明図である。
図5では、凹部30に赤外光を照射した画像(第1画像)と、可視光を照射した画像(第2画像)とを図示している。
図5の上側2枚は赤外光画像を、下側2枚は可視光画像を示す。
図5の左側2枚は凹部30の元々の撮像画像を、右側2枚は凹部30の輪郭を所定幅(例えば数mm)だけ外側に膨らませた画像を示す。
【0037】
凹部30は事前にケレン作業を行っているため、金属の地肌が露出しており、赤外光及び可視光の反射率が高くなっている。そこで制御装置17は、照明21により赤外光及び可視光をそれぞれ照射し、凹部30の赤外光画像と、可視光画像とを取得する。制御装置17は、取得した赤外光画像と可視光画像とを比較することで、色調コントラストの違いにより第1凹部31の輪郭を検出する。
【0038】
制御装置17は、検出した第1凹部31の輪郭を外側に向けて所定幅だけ膨らませる。輪郭を膨らませるのは、第1凹部31の周囲に散在する小さな腐食部を一つの塊として包含させるためである。以上の処理により、制御装置17は、肉盛り溶接を行う範囲を特定する。
【0039】
一方で、腐食の深い第2凹部32は第1凹部31の検出方法では検出できないため、以下の様に、異なる方向から照明光を照射した複数の画像を重ね合わせることで、第2凹部32の輪郭を検出する。
【0040】
図6は、第2凹部32の検出処理に関する説明図である。
図6では、異なる方向(
図6では4方向)から第2凹部32に照明光を照射した画像を概念的に図示している。
【0041】
図6に示すように、第2凹部32の周囲から照明光を照射することで、第2凹部32内部に陰影が出来る。制御装置17は、リング状の照明21のLED光源を回転させることで、円周上の各方向から照明光を照射した複数の画像を取得する。制御装置17はこれらの画像を重ね合わせることで、第2凹部32内部全てが陰影となった画像を得る。制御装置17は、この陰影部分の形状を特定することで、第2凹部32の輪郭を検出する。
【0042】
以上の処理により、制御装置17は第2凹部32の輪郭を検出する。制御装置17は第1凹部31の場合と同様の理由で、第2凹部32の輪郭を所定幅だけ膨らませる。これにより、制御装置17は、1層目として肉盛り溶接を行う範囲(第2凹部32)と、2層目として肉盛り溶接を行う範囲(第1凹部31)とを特定する。
【0043】
図7及び
図8は、溶接経路の特定処理に関する説明図である。制御装置17は、上記で検出した第1凹部31及び第2凹部32の検出結果に基づき、溶接トーチ12によってなぞる溶接経路を特定し、溶接指示を出力する。
【0044】
まず制御装置17は、腐食が深い第2凹部32について溶接経路を特定する。この場合、
図7に示すように、制御装置17は第2凹部32の重心を特定し、重心から放射状に延ばした複数(例えば24本)の直線と、第2凹部32の輪郭との交点を特定する。
【0045】
そして制御装置17は、
図8に示すように、各交点を結ぶ枠線を、溶接トーチ12によってなぞる第1の溶接経路81として特定する。なお、
図8において破線で囲われた領域は、肉盛り溶接によって埋められる溶接幅(本実施の形態に係る溶接装置11では5mm)を表す。
【0046】
次に制御装置17は、溶接経路とした枠線を第2凹部32の重心に向けて所定幅(5mm)だけ狭めることで、第2の溶接経路82を特定する。具体的には、制御装置17は、枠線の頂点(第2凹部32の輪郭との交点)を重心に向けて所定幅だけずらすことで、第2の溶接経路を特定する。以下同様にして、制御装置17は枠線を重心に向けて所定幅ずつ狭めることで、バームクーヘン状に肉盛り溶接を行うための第3、第4、…の溶接経路を特定する。制御装置17は、枠線から重心までの距離が所定幅より短くなり、これ以上枠線を縮小できなくなるまで溶接経路の特定を行う。制御装置17は、特定した各溶接経路(枠線)に沿って肉盛り溶接を順次行うよう溶接指示を溶接機14に出力し、溶接を実行させる。これにより、第2凹部32の溶接が完了する。
【0047】
次に制御装置17は、腐食が浅い第1凹部31に対する溶接を行う。第1凹部31についても第2凹部32の場合と同様に、制御装置17は、第1凹部31の重心から放射状に延ばした複数の直線と第1凹部31との交点を特定し、特定した各交点を結ぶ枠線を溶接経路として特定する。そして制御装置17は、当該枠線を重心に向けて所定幅ずつ狭めることで、バームクーヘン状に肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機14に出力する。
【0048】
上記のように、腐食の深い第2凹部32、腐食の浅い第1凹部31の順でバームクーヘン状に肉盛り溶接を行うことで、凹部30を均一に埋めることができる。
【0049】
図9は、制御装置17が実行する処理手順の一例を示す説明図である。
図9に基づき、制御装置17が実行する処理内容について説明する。
制御装置17の制御部170は、凹部30を照らす照明21を駆動する(ステップS11)。具体的には、制御部170は、赤外光及び可視光を照射するように照明21を駆動する。また、制御部170は、LED光源がリング状の軌道に沿って周回するように照明21を駆動する。制御部170は、照明21に赤外光及び可視光が照射された凹部30を撮像した画像をカメラ16から取得する(ステップS12)。
【0050】
制御部170は、凹部30に赤外光を照射した画像(第1画像)と、凹部30に可視光を照射した画像(第2画像)とを比較することで、第1凹部31の輪郭を検出する(ステップS13)。また、制御部170は、リング状の照明21によって凹部30に異なる方向から照明光を照射した複数の画像を重ね合わせて陰影部分を特定することで、第2凹部32の輪郭を検出する(ステップS14)。
【0051】
制御部170は、第2凹部32の輪郭と、第2凹部32の重心から放射状に延ばした複数の直線との交点を検出する(ステップS15)。制御部170は、検出した各交点を結ぶ枠線を溶接経路として特定する(ステップS16)。制御部170は、特定した溶接経路(枠線)に沿って肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機14(溶接ロボット)に出力する(ステップS17)。
【0052】
制御部170は、溶接経路とした枠線の縮小がこれ以上不可能であるか否かを判定する(ステップS18)。縮小が可能であると判定した場合(S18:NO)、制御部170は、枠線を第2凹部32の重心に向けて所定幅だけ狭めることで、新たな溶接経路を特定し(ステップS19)、処理をステップS17に戻す。この場合、制御部170は、新たな溶接経路に沿って肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機14に出力する。
【0053】
枠線の縮小が不可能であると判定した場合(S18:YES)、制御部170は、第1凹部31の輪郭と、第1凹部31の重心から放射状に延ばした複数の直線との交点を検出する(ステップS20)。制御部170は、検出した各交点を結ぶ枠線を溶接経路として特定する(ステップS21)。制御部170は、特定した溶接経路に沿って肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機14に出力する(ステップS22)。
【0054】
制御部170は、溶接経路とした枠線の縮小がこれ以上不可能であるか否かを判定する(ステップS23)。縮小が可能であると判定した場合(S23:NO)、制御部170は、枠線を第1凹部31の重心に向けて所定幅だけ狭めることで、新たな溶接経路を特定し(ステップS24)、処理をステップS22に戻す。縮小が不可能であると判定した場合(S23:YES)、制御部170は一連の処理を終了する。
【0055】
以上より、本実施の形態によれば、配管腐食部の溶接補修を好適に実施することができる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
11 溶接装置
12 溶接トーチ
13 ロボットアーム
14 溶接機
15 配管
16 カメラ
17 制御装置
170 制御部
171 主記憶部
172 補助記憶部
P プログラム
20 接地機構
21 照明
22 ガスボンベ
23 コントローラ
24 台車
25 操作ボタン
26 表示部
30 凹部
31 第1凹部
32 第2凹部
【要約】
【課題】配管腐食部の溶接補修を好適に実施することができる情報処理方法等を提供する。
【解決手段】情報処理方法は、配管の腐食部を撮像した画像を取得し、前記画像から、周辺よりも凹んだ第1凹部の輪郭と、該第1凹部内に位置し、該第1凹部より更に凹んだ第2凹部の輪郭とを検出し、前記第1凹部及び第2凹部の輪郭の検出結果に基づき、前記第2凹部に対する肉盛り溶接を行った後、前記第1凹部に対する肉盛り溶接を行う溶接指示を溶接機に出力する処理をコンピュータが実行する。
【選択図】
図1