(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】予測装置、システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 18/27 20230101AFI20240905BHJP
【FI】
G06F18/27
(21)【出願番号】P 2024540635
(86)(22)【出願日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2024015334
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517045705
【氏名又は名称】株式会社エイシング
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】川端 大亮
(72)【発明者】
【氏名】代田 隆起
(72)【発明者】
【氏名】出澤 純一
【審査官】宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】特許第7443613(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/162900(WO,A1)
【文献】特開2022-81236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 18/27
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得部と、
前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成部と、
前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算部と、
前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測部と、
を備える、予測装置。
【請求項2】
前記学習済モデルは、互いに異なる時間ステップを予測する複数の学習済モデルを含み、
前記予測データ生成部は、前記時系列値と各前記学習済モデルに基づいて、複数の前記予測値をそれぞれ生成する、請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記将来予測は、前記対象物の寿命に関する予測である、請求項1に記載の予測装置。
【請求項4】
前記回帰線は、直線である、請求項1に記載の予測装置。
【請求項5】
前記予測データ生成部は、さらに、前記時系列値の特徴量を抽出する、前処理部を備え、
前記予測データ生成部は、前記前処理部において抽出された特徴量と、前記学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、請求項1に記載の予測装置。
【請求項6】
前記特徴量は、前記時系列値の移動平均、及び/又は、前記時系列値のタイムステップ間の差分値を含む、請求項5に記載の予測装置。
【請求項7】
前記回帰線に基づいて信頼区間を演算する、信頼区間演算部をさらに備える、請求項1に記載の予測装置。
【請求項8】
前記時系列値と、前記予測値と、前記回帰線と、を表示する、表示制御部をさらに備える、請求項1に記載の予測装置。
【請求項9】
前記時系列値と、前記予測値と、前記回帰線と、前記信頼区間と、を表示する、信頼区間表示制御部をさらに備える、請求項7に記載の予測装置。
【請求項10】
対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得部と、
前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成部と、
前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算部と、
前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測部と、
を備える、予測システム。
【請求項11】
コンピュータに、
対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得ステップと、
前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成ステップと、
前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算ステップと、
前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測ステップと、
を実行させる、予測方法。
【請求項12】
コンピュータに、
対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得ステップと、
前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成ステップと、
前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算ステップと、
前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測ステップと、
を実行させる、予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物から得られる信号に基づいてその対象物の将来予測を行う装置、例えば、対象装置の寿命予測を行う装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、対象物から得られる信号に基づいて、その対象物の将来予測、例えば、対象物の寿命予測を行う技術が知られている。
【0003】
例えば、対象物から得られたデータに対して回帰線(又は近似線)を演算し、その回帰線に基づいて寿命予測を行う技術が知られていた(例えば、特許文献1)。また、他の手法として、対象物の状態を学習済モデルへと入力することで直接的に寿命予測を行う技術も知られていた(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-208773号公報
【文献】特開2018-97723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の手法のように、過去データから線形回帰を行う手法では、明確な算出過程で予測を行うことができるため説明可能性があるものの、その予測精度は十分なものではなかった。
【0006】
また、後者の手法のように、機械学習技術を用いて直接的に寿命予測を行う手法では、予測精度の向上を期待し得るものの、その予測過程が所謂ブラックボックスとなり、予測結果に対する説明可能性は無かった。
【0007】
本発明は、上述の技術的背景の下になされたものであり、その目的とするところは、対象物から得られる信号に基づいてその対象物の将来予測を行う技術において、高精度でありながら説明可能性を有する予測技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する予測装置、予測システム、予測方法及び予測プログラム等により解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明に係る予測装置は、対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得部と、前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成部と、前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算部と、前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測部と、を備えている。
【0010】
このような構成によれば、機械学習技術を用いて得られた予測値とそれまでの時系列値に基づいて将来予測を行うことができる。これにより、精度良く将来予測を行うことができる。また、回帰線を用いることから、機械学習技術を用いて直接的に予測値を得る場合に比べて、説明可能性を高めることができる。すなわち、対象物から得られる信号に基づいてその対象物の将来予測を行う技術において、高精度でありながら説明可能性を有する予測技術を提供することができる。
【0011】
前記学習済モデルは、互いに異なる時間ステップを予測する複数の学習済モデルを含み、前記予測データ生成部は、前記時系列値と各前記学習済モデルに基づいて、複数の前記予測値をそれぞれ生成する、ものであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、互いに異なる時間ステップを予測する複数の学習済モデルが用いられるので、各時間ステップの予測精度を向上させることができる。これにより、精度良く将来予測を行うことができる。
【0013】
前記将来予測は、前記対象物の寿命に関する予測である、ものであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、精度良く対象物の寿命を予測することができる。
【0015】
前記回帰線は、直線であってもよい。
【0016】
このような構成によれば、対象物の線形的な変化に好適に対応することができる。
【0017】
前記予測データ生成部は、さらに、前記時系列値の特徴量を抽出する、前処理部を備え、前記予測データ生成部は、前記前処理部において抽出された特徴量と、前記学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、ものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、予測値を生成するにあたり、時系列値の特徴をさらに反映させることができる。
【0019】
前記特徴量は、前記時系列値の移動平均、及び/又は、前記時系列値のタイムステップ間の差分値を含む、ものであってもよい。
【0020】
このような構成によれば、時系列値の特徴をさらに表現することができる。
【0021】
前記回帰線に基づいて信頼区間を演算する、信頼区間演算部をさらに備える、ものであってもよい。
【0022】
このような構成によれば、信頼区間に基づき予測に幅を持たせることができる。
【0023】
前記時系列値と、前記予測値と、前記回帰線と、を表示する、表示制御部をさらに備える、ものであってもよい。
【0024】
このような構成によれば、ユーザは、時系列値、予測値及び回帰線、並びに、それらの関係性を視覚的に確認することができる。
【0025】
前記時系列値と、前記予測値と、前記回帰線と、前記信頼区間と、を表示する、信頼区間表示制御部をさらに備える、ものであってもよい。
【0026】
このような構成によれば、ユーザは、時系列値、予測値、回帰線及び信頼区間、並びに、それらの関係性を視覚的に確認することができる。従って、信頼区間の境界から、対象物に関する将来予測を時間的に最短の場合と最長の場合で行うこと等ができる。
【0027】
別の側面から見た本発明は、予測システムであって、対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得部と、前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成部と、前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算部と、前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測部と、を備えている。
【0028】
別の側面から見た本発明は、予測方法であって、コンピュータに、対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得ステップと、前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成ステップと、前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算ステップと、前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測ステップと、を実行させる。
【0029】
別の側面から見た本発明は、予測プログラムであって、コンピュータに、コンピュータに、対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得ステップと、前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成ステップと、前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算ステップと、前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測ステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、対象物から得られる信号に基づいてその対象物の将来予測を行う技術において、高精度でありながら説明可能性を有する予測技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】
図3は、情報処理装置の寿命予測動作に関するフローチャートを示す図である。
【
図4】
図4は、寿命予測アルゴリズムの概念図である。
【
図5】
図5は、表示制御部により表示装置上に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の一形態を、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0033】
(1.第1の実施形態)
図1~
図5を参照しつ、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、本発明を、対象物を観測可能に取り付けられたセンサからの信号に基づいて、当該対象物の寿命予測を行う装置へと適用した例について説明する。
【0034】
(1.1 構成)
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1(又は寿命予測装置)の概略構成図である。情報処理装置1は、例えば、マイコン、PC、タブレット端末等であってもよい。
【0035】
同図から明らかな通り、情報処理装置1は、制御部10、記憶部11、入力部12、表示制御部15、通信部16、及びI/O部17と、を備え、それらはバスを介して接続されている。なお、情報処理装置1は、表示制御部15を介して表示装置19へと接続されている。また、I/O部17を介してセンサ18に接続されている。これらを含めて情報処理装置1と称してもよい。
【0036】
制御部10は、CPU等の演算装置で構成され、記憶部11から読み出したコンピュータプログラムの実行処理を行い、後述の種々の動作を実現する。記憶部11は、ROM/RAM、フラッシュメモリ、ハードディスク等の各種の記憶装置で構成され、コンピュータプログラム及び後述の種々の動作に必要なデータの記憶を行う。
【0037】
入力部12は、ボタン、タッチパネル、マウス、キーボード等の所定の入力装置からの入力信号を処理して制御部10へと提供するよう構成されている。表示制御部15は、CPU又はGPUで構成され、表示装置19へと表示される画像/動画像に関する処理を行う。なお、制御部10が、表示制御部15の一部又はすべての動作を担ってもよい。
【0038】
通信部16は、外部装置との有線又は無線の通信を実現するための通信ユニットとして構成されている。I/O部17は外部装置との入出力のインタフェースとして機能し、種々の装置と接続可能に構成されている。本実施形態においては、I/O部17には、センサ18が接続されている。これにより、センサ信号を情報処理装置1へと取り込むことができる。なお、センサの種類は特に限定されない。従って、歪みセンサ、温度センサ、光センサ、音センサ、画像センサ等あらゆる種類のセンサが含まれる。また、センサ素子を一部に含む装置をセンサ18と観念してもよい。
【0039】
図2は、本実施形態に係る機能ブロック図である。同図から明らか通り、情報処理装置1にはセンサ18と表示装置19が接続されており、センサ18は、観測対象となる対象装置2に取り付けられている。このセンサ18により、少なくとも対象装置2に関する状態とその時間的な変化を検出することができる。
【0040】
なお、対象装置2は、特に限定されずあらゆる種類の装置とすることができる。例えば、工作機械等の機械装置であってもよいし、その要素部品であってもよい。また、機械的動作を行うものだけでなく、電子的、電磁的又は化学的動作を行う装置であってもよい。さらに、固定された装置でなく、車両等の移動装置であってもよい。
【0041】
情報処理装置1のデータ取得部101は、センサ18で得られた信号を時系列信号として取得し、それを特徴量抽出部102、予測データ生成部103へと提供する処理を行う。特徴量抽出部102は、データ取得部101から得られたセンサ信号から特徴量を抽出して予測データ生成部103へと提供する。予測データ生成部103は、現在又は過去のセンサ値とその特徴量に基づいて学習済モデルを用いて予測データを生成する。
【0042】
データ取得部101と予測データ生成部103は、現在又は過去のデータと、予測データを回帰線演算部105へと提供する。回帰線演算部105は、回帰線を算出する演算を行い、演算結果を将来予測部106と、信頼区間演算部107と、表示制御部151へと提供する。将来予測部106は、提供された回帰線と所定の基準に基づいて対象装置2の寿命予測を行い、結果を表示制御部151へと提供する。信頼区間演算部107は、提供された回帰線に基づいて、信頼区間を演算する処理を行い、結果を表示制御部151へと提供する。
【0043】
表示制御部151は、所定の基本画面に加えて、データ取得部101から得られた現在又は過去のデータ、予測データ生成部103から得られた将来予測データ、回帰線演算部105から提供された回帰線、将来予測部106から提供された将来予測結果、及び信頼区間演算部107から提供された信頼区間を表示装置19へと表示する処理を行う。
【0044】
なお、本実施形態で示した各機能ブロック、すなわち、データ取得部101、特徴量抽出部102、予測データ生成部103、回帰線演算部105、将来予測部106、信頼区間演算部107等の構成は制御部10又は制御部10と記憶部11により実現される。また、本実施形態に示した構成は例示であって、他のハードウェア構成としてもよいことは勿論である。例えば、ネットワークを介したシステム(又はサーバ・クライアントシステム)として構成してもよい。
【0045】
(1.2 動作)
図3は、情報処理装置1の寿命予測動作に関するフローチャートを示す図である。
【0046】
同図から明らかな通り、処理が開始すると、データ取得部101は、センサ18から検出された値(センサ値)を時系列で取得する処理を行う(S1)。これにより、過去から現在までのセンサ値を取得することができる。データ取得部101は、取得したデータを特徴量抽出部102、予測データ生成部103及び回帰線演算部105へと提供する。
【0047】
センサ値の取得処理の後、特徴量抽出部102は、前処理として、時系列のセンサ値から特徴量を抽出(又は生成)する(S2)。本実施形態において、特徴量は、所定時間ステップの移動平均値、隣り合う時間ステップ間の差分等を含む。なお、時系列データの特徴を表すものであれば他の量であってもよい。特徴量抽出部102は、抽出した特徴量を予測データ生成部103へと提供する。
【0048】
このような構成によれば、予測値を生成するにあたり、時系列値の特徴をさらに反映させることができる。
【0049】
特徴量抽出処理の後、予測データ生成部103は、データ取得部101から得られたデータと特徴量抽出部102から得られたデータに基づいて、予測値を生成する処理を行う(S3)。より詳細には、本実施形態において、予測データ生成部103は、データ取得部101から得られたセンサ値と特徴量抽出部102から得られた特徴量を入力として、それぞれ、時間ステップにおいて1ステップ先、2ステップ先、・・・、Nステップ先の予測値を出力するN個の学習済モデルを備えている。予測データ生成部103は、これらの学習済モデルに対して、データ取得部101から得られたセンサ値と特徴量抽出部102から得られた特徴量をそれぞれ入力して、1ステップ先、2ステップ先、・・・、Nステップ先の予測値を出力する。予測データ生成部103は、出力した予測値を回帰線演算部105へと提供する。
【0050】
このような構成によれば、互いに異なる時間ステップを予測する複数の学習済モデルが用いられるので、各時間ステップの予測精度を向上させることができる。これにより、精度良く将来予測を行うことができる。
【0051】
予測値の生成処理の後、回帰線演算部105は、データ取得部101から得られた現在及び過去の時系列センサ値と予測値とから回帰線を演算する処理を行う(S5)。より詳細には、本実施形態においては、現在又は過去の時系列センサ値と予測値に対して、線形単回帰を行う。すなわち、次式で表される一次関数を回帰線として演算する。
【0052】
【0053】
ただし、a_hatは、xの偏差平方和Sxx、xとyの偏差積和Sxy、yの平均値y_ave、xの平均値x_aveを用いて、以下の通り表される。
【0054】
【0055】
また、b_hatは、xの偏差平方和Sxx、xとyの偏差積和Sxyを用いて、以下の通り表される。
【0056】
【0057】
このような一次回帰線を用いる構成によれば、対象物の線形的な変化に好適に対応することができる。
【0058】
回帰線演算部105は、回帰線に関する情報を将来予測部106、表示制御部151、信頼区間演算部107へと提供する。
【0059】
なお、本実施形態においては、回帰線を算出したものの、近似線を算出してもよい。また、2次以上の回帰線を算出してもよい。
【0060】
回帰線の演算処理の後、信頼区間演算部107は、信頼区間の演算処理を行う(S6)。より詳細には、本実施形態において、信頼区間演算部107は、次式に基づいて信頼区間に相当する直線を演算する。
【0061】
【0062】
なお、tはt値、Nはサンプル数、αは信頼係数、V_hatεは回帰線に対する自由度N-2の不偏分散を表している。また、信頼係数αは、本実施形態において0.9である。
【0063】
信頼区間演算部107は、演算結果である信頼区間に相当する直線を表示制御部151へと提供する。
【0064】
このような構成によれば、信頼区間に基づき予測に幅を持たせることができる。
【0065】
信頼区間演算処理の後、将来予測部106は、将来予測処理、本実施形態においては、対象装置2に関する寿命予測処理を行う(S7)。より詳細には、回帰線と所定の閾値(又は基準)との関係性に基づいて寿命を判定する。例えば、本実施形態においては、回帰線が所定の閾値以下となるときの時間を予測寿命とする。将来予測部106は、予測寿命を表示制御部151へと提供する。
【0066】
将来予測処理の後、表示制御部151は、将来予測部106から得られた予測寿命、回帰線演算部105から得られた回帰線、及び、信頼区間演算部107から得られた信頼区間を表示装置19上に表示する処理を行う(S8)(例として、
図5も参照)。この表示処理の後、処理は終了する。
【0067】
このような構成によれば、ユーザは、時系列値、予測値、回帰線及び信頼区間、並びに、それらの関係性を視覚的に確認することができる。従って、例えば、信頼区間の境界から、対象物に関する将来予測を時間的に最短の場合と最長の場合で行うこと等ができる。
【0068】
図4は、本実施形態に係る寿命予測アルゴリズムの概念図である。なお、同図においては、理解の容易化のため、特徴量に関する記載は省略されている点に留意されたい。同図から明らかな通り、センサ18から得られた現在から過去に亘る(M+1)ステップのセンサデータは、そのまま寿命予測モデルへと提供される。また、同センサデータは、1ステップ将来予測用学習済モデル、2ステップ将来予測用学習済モデル、・・・、Nステップ将来予測用学習済モデルへと入力として提供され、それぞれ、1ステップ将来センサ予測値、2ステップ将来センサ予測値、・・・、Nステップ将来センサ予測値が生成される。生成されたこれらの予測値も寿命予測モデルへと提供される。
【0069】
寿命予測モデルでは、(M+1)ステップの現在(0ステップ過去のセンサ値)及び過去のセンサ値とNステップの予測値から生成された回帰線と、所定の閾値との関係性から、予測寿命が生成される。
【0070】
図5は、表示制御部151により表示装置19上に表示される画面の一例を示す図であえる。同画面は、x-yの2次元のグラフを含み、xは時間(ステップ)を表し、yはセンサ値を表している。また、x
0は現在のセンサ値(又は0ステップ過去のセンサ値)を表し、それより左側には過去のセンサ値が表示され、それより右側には予測値が表示されている。なお、同図において、過去のセンサ値の数と予測値の数は例示であることに留意されたい。
【0071】
また、同グラフ上には、現在又は過去のセンサ値と予測値に基づいて得られた回帰線(同図において実線で表示)と、信頼区間境界に相当する直線(同図において破線で表示)が2本表示されている。
【0072】
本実施形態において、閾値はy=0である。従って、同図の例にあっては、x1が予測寿命となる。また、x11は、信頼区間を加味した場合の最短の予測寿命を示し、x12は、最長の予測寿命を示している。これらの値を表示することで、ユーザに対して、予測寿命、最短予測寿命、及び最長予測寿命を示すことができる。
【0073】
以上より、本実施形態に係る構成によれば、機械学習技術を用いて得られた予測値とそれまでの時系列値に基づいて将来予測を行うことができる。これにより、精度良く将来予測を行うことができる。また、回帰線を用いることから、機械学習技術を用いて直接的に予測値を得る場合に比べて、説明可能性を高めることができる。すなわち、対象物から得られる信号に基づいてその対象物の将来予測を行う技術において、高精度でありながら説明可能性を有する予測技術を提供することができる。
【0074】
(2.変形例)
上述の実施形態においては、予測データ生成部103において、複数の学習済モデルを用いて複数の予測値をそれぞれ出力する構成としたが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、予測値の数よりも少ない数の学習済モデルを用意してもよい。例えば、1つの学習済モデルを用いて、複数の異なる時間ステップの予測値を同時に生成してもよい。
【0075】
上述の実施形態においては、将来予測部106において、寿命予測を行うものとして説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、閾値を設けず、単に将来の性能予測を行ってもよい。
【0076】
上述の実施形態においては、複数の予測値に基づいて、回帰線を演算する構成としたが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、1つの予測値を生成して、現在又は過去の値と1つの予測値から回帰線を演算してもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、機械学習技術を利用する種々の産業等にて利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 情報処理装置
10 制御部
11 記憶部
12 入力部
15 表示制御部
16 通信部
17 I/O部
18 センサ
19 表示装置
【要約】
対象物から得られる時系列値を取得する、時系列データ取得部と、前記時系列値と学習済モデルに基づいて、前記時系列値に続く予測値を生成する、予測データ生成部と、前記時系列値と前記予測値に基づいて、回帰線を演算する、回帰線演算部と、前記回帰線に基づいて、前記対象物に関する将来予測を行う、将来予測部と、を備える、予測装置が提供される。
【選択図】
図5