IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三笠産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ヒンジキャップ 図1
  • 特許-ヒンジキャップ 図2
  • 特許-ヒンジキャップ 図3
  • 特許-ヒンジキャップ 図4
  • 特許-ヒンジキャップ 図5
  • 特許-ヒンジキャップ 図6
  • 特許-ヒンジキャップ 図7
  • 特許-ヒンジキャップ 図8
  • 特許-ヒンジキャップ 図9
  • 特許-ヒンジキャップ 図10
  • 特許-ヒンジキャップ 図11
  • 特許-ヒンジキャップ 図12
  • 特許-ヒンジキャップ 図13
  • 特許-ヒンジキャップ 図14
  • 特許-ヒンジキャップ 図15
  • 特許-ヒンジキャップ 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/22 20060101AFI20240905BHJP
   B65D 47/36 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B65D51/22 100
B65D47/36 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019143439
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021024615
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 由弘
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第4466816(JP,B2)
【文献】実開昭53-116401(JP,U)
【文献】特開平10-264931(JP,A)
【文献】実開昭49-095048(JP,U)
【文献】特開平10-139059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/22
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に取り付けられる本体と、この本体にヒンジを介して設けられた上蓋と、を有し、
本体に、容器の口部に連通する注出筒と、注出筒の内側に形成されて容器の口部を閉鎖するように配置された隔壁と、隔壁に形成された破断可能な薄肉部と、が設けられ、
薄肉部を破断させることで容器内の内容物を出す開口が形成されるヒンジキャップであって、
上蓋に、本体の隔壁側に変形可能な押圧部が設けられ、
隔壁に、
薄肉部の内側に設けられ、上蓋の押圧部に押圧される押し込み部と、
押し込み部から押圧部に向かって突出し、上蓋の押圧部の裏面に当接可能な押圧力伝達突起と、
上蓋の押圧部を介して本体の押し込み部が押し込まれた際に変形して支点となる変形支点とが設けられ、
本体に、押し込み部が押し込まれた際に開口された状態で押圧力伝達突起を係止する突起係止部が設けられており、
上蓋に、注出筒に内側から密接してシールする筒状のインナーリングがさらに設けられ、
押圧部は、インナーリングから中央側に延びて押圧力伝達突起を上蓋側から隙間をあけて覆うとともに、押圧力伝達突起を介して押し込み部を押し込んでいる際に、インナーリングとの接続部を起点に、本体の隔壁側に変形可能であり、且つ、突起係止部との間に、押圧力伝達突起の先端の幅よりも小さな隙間が形成されるまで変形可能であり、
本体が上蓋に被せられた状態において、押圧力伝達突起を介して押し込み部が押圧部によって押し込まれる際に、押圧力伝達突起における上蓋の押圧部との当接箇所が作用点、変形支点が支点となった状態で押し込み部が変形しながら押し込まれ、薄肉部が破断しながら薄肉部の内側の押し込み部が容器の内部側に押し込まれて開口が形成され、突起係止部が押圧力伝達突起を係止した状態になることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
変形支点として、薄肉部における切断されない部分に設けられた第1変形支点と、隔壁における押圧力伝達突起の近傍に設けられている第2変形支点と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
押圧力伝達突起は、隔壁の中心よりも、ヒンジに近い側、または、ヒンジから離れている側に設けられるとともに薄肉部に接し、
第1変形支点は、隔壁の中心を挟んで押圧力伝達突起と反対側に位置し、
第2変形支点は、押圧力伝達突起の下端部に接する箇所であって、押圧力伝達突起を挟んで薄肉部と反対側に位置することを特徴とする請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
押圧力伝達突起は、隔壁の中心よりもヒンジに近い側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
上蓋に、押圧部を押圧する際に指を挿入可能な操作用切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体にヒンジを介して上蓋が設けられているヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に取り付けられるキャップとして、容器の口部に取り付けられる本体と、この本体にヒンジを介して設けられた上蓋と、を有するヒンジキャップは広く知られている。また、この種のヒンジキャップにおいて、本体に、容器の口部を閉鎖するように配置された隔壁と、隔壁に形成されたスコアとも称せられる破断可能な薄肉部と、が設けられ、薄肉部を破断させることで内容物を出す開口が開口可能とされているヒンジキャップも既に知られている。
【0003】
このようなヒンジキャップとしては、隔壁に、プルリングと称せられる操作部が一体的に形成されているものが多い。そして、上蓋を開けた状態で、プルリング(操作部)を引き上げることで、薄肉部を破断して開口するように構成されている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
しかし、このようにプルリングを引き上げて開口する構成であるヒンジキャップでは、以下のような各種の問題を生じる場合があった。例えば、開封時においてプルリングに指を引っ掛け難いという問題を生じたり、プルリングを引き上げる際の抵抗が大きくて指が痛くなったりすることがある。また、プルリングに接続されている操作部の支柱根元や支柱とプルリングとの接続部などが破断することがあり、この場合には薄肉部を破断できなくなってしまう。
【0005】
このような問題に対処するものとして、特許文献2等に、プルリングを設けずに、本体に設けられている隔壁を直接に指で押し込んだり、隔壁に立設させた支柱を指で押し込んだりする構造が開示されている。この構造によれば、プルリング自体がないため、プルリングに関する上記の問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-154570号公報
【文献】特許4466816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献2に開示されているように、本体に設けられている隔壁を直接に指で押し込んだり、隔壁に立設させた支柱を指で押し込んだりする構造によれば、隔壁を直接に指で押し込んだり、隔壁に立設させた支柱を指で押し込んだりする際に、容器内の内容物が指に付着するおそれがある。また、指で押し込んだ隔壁の部分や支柱が容器内に入り込み、押し込まれた隔壁や支柱に内容物が直接接触することとなるため、不衛生となる恐れもある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するもので、プルリングを設けなくて済むとともに、容器内の内容物が指に付着したり、指で押し込んだ隔壁の部分や支柱に内容物が直接接触して不衛生となったりすることがないヒンジキャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、容器の口部に取り付けられる本体と、この本体にヒンジを介して設けられた上蓋と、を有し、本体に、容器の口部に連通する注出筒と、注出筒の内側に形成されて容器の口部を閉鎖するように配置された隔壁と、隔壁に形成された破断可能な薄肉部と、が設けられ、薄肉部を破断させることで容器内の内容物を出す開口が形成されるヒンジキャップであって、上蓋に、本体の隔壁側に変形可能な押圧部が設けられ、隔壁に、薄肉部の内側に設けられ、上蓋の押圧部に押圧される押し込み部と、押し込み部から押圧部に向かって突出し、上蓋の押圧部の裏面に当接可能な押圧力伝達突起と、上蓋の押圧部を介して本体の押し込み部が押し込まれた際に変形して支点となる変形支点とが設けられ、本体に、押し込み部が押し込まれた際に開口された状態で押圧力伝達突起を係止する突起係止部が設けられており、上蓋に、注出筒に内側から密接してシールする筒状のインナーリングがさらに設けられ、押圧部は、インナーリングから中央側に延びて押圧力伝達突起を上蓋側から隙間をあけて覆うとともに、押圧力伝達突起を介して押し込み部を押し込んでいる際に、インナーリングとの接続部を起点に、本体の隔壁側に変形可能であり、且つ、突起係止部との間に、押圧力伝達突起の先端の幅よりも小さな隙間が形成されるまで変形可能であり、本体が上蓋に被せられた状態において、押圧力伝達突起を介して押し込み部が押圧部によって押し込まれる際に、押圧力伝達突起における上蓋の押圧部との当接箇所が作用点、変形支点が支点となった状態で押し込み部が変形しながら押し込まれ、薄肉部が破断しながら薄肉部の内側の押し込み部が容器の内部側に押し込まれて開口が形成され、突起係止部が押圧力伝達突起を係止した状態になることを特徴とする。
【0010】
この構成において、開封する際に、上蓋を本体に被せて閉じた状態で上蓋の押圧部を指などで押圧することにより、薄肉部が破断しながら破断用薄肉部の内側の押し込み部が容器の内部側に押し込まれて開口させることができる。すなわち、この構成によれば、プルリングを設けなくて済むとともに、指などが直接に容器内に押し込まれることがないので、容器内の内容物が指に付着したり、指で押し込んだ隔壁の部分や支柱に内容物が直接接触して不衛生となったりすることがない。
また、この構成によれば、開封する際に上蓋の押圧部を指などで押圧すると、この押圧力が、本体の押し込み部に形成された押圧力伝達突起を介して、押し込み部全体に伝達され、薄肉部を良好に破断しながら押し込み部を押し込むことができる。
さらに、この構成によれば、作用点と支点とを有するいわゆる「てこの原理」を用いて、押し込み変形部を変形させたり破断用薄肉部を破断させたりすることができ、この際の押圧力をより小さい力で済ますことが可能となる。
そして、この構成により、一旦、押し込み部を変形させたり薄肉部を破断させたりして開口すると、この開口状態を良好に維持することができる。
【0015】
また、変形支点として、薄肉部における切断されない部分に設けられた第1変形支点と、隔壁における押圧力伝達突起の近傍に設けられている第2変形支点と、が設けられていると好適である。さらに、押圧力伝達突起は、隔壁の中心よりも、ヒンジに近い側、または、ヒンジから離れている側に設けられるとともに薄肉部に接し、第1変形支点は、隔壁の中心を挟んで押圧力伝達突起と反対側に位置し、第2変形支点は、押圧力伝達突起の下端部に接する箇所であって、押圧力伝達突起を挟んで薄肉部と反対側に位置することが好適である。そして、押圧力伝達突起は、隔壁の中心よりもヒンジに近い側に設けられていることが好適である。
【0017】
また、本発明は、上蓋に、押圧部を押圧する際に指を挿入可能な操作用切欠部が設けられていることを特徴とする。この構成によれば、操作用切欠部に指などを挿入しながら押圧部を押圧することができるので、便利である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上蓋に、本体の隔壁側に変形可能な押圧部を設け、上蓋の押圧部が押圧されることにより、薄肉部が破断しながら薄肉部の内側の押し込み部が容器の内部側に押し込まれて開口されるように構成することにより、プルリングを設けなくて済むとともに、指などが直接に容器内に押し込まれることがない状態で開封することができるので、容器内の内容物が指に付着したり、指で押し込んだ隔壁の部分や支柱に内容物が直接接触して不衛生となったりすることを良好に防止できる。
【0019】
また、押し込み部に、上蓋の押圧部の裏面に当接可能な押圧力伝達突起を形成し、上蓋の押圧部が押圧された際に、押圧力伝達突起を介して押し込み部が押し込まれるように構成することにより、押し込み部を良好に変形させたり、薄肉部を良好に破断したりすることができる。
【0020】
また、隔壁に、上蓋の押圧部を介して本体の押し込み部が押し込まれた際に変形して支点となる変形支点を設け、上蓋の押圧部が押圧された際に、押圧力伝達突起における上蓋の押圧部との当接箇所が作用点、変形支点が支点となった状態で押し込み部が変形しながら押し込まれるように構成することにより、作用点と支点とを有するいわゆる「てこの原理」を用いて、小さな力で楽に、押し込み部を変形させたり薄肉部を破断させたりすることができる。
【0021】
また、変形支点として、薄肉部における切断されない部分に設けられた第1変形支点と、隔壁における押圧力伝達突起の近傍に設けられている第2変形支点と、が設けられていると、2つの変形支点を用いながら、さらに良好に、押し込み部を変形させたり薄肉部を破断させたりすることができる。
【0022】
また、本体に、押し込み部が押し込まれた際に開口された状態で押圧力伝達突起を係止する突起係止部を設けることにより、一旦、押し込み部を変形させたり薄肉部を破断させたりして開口すると、この開口状態を良好に維持することができて手間を省くことができる。
【0023】
また、上蓋に、押圧部を押圧する際に指を挿入可能な操作用切欠部を設けることにより、操作用切欠部に指などを挿入しながら押圧部を押圧することができるので、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係るヒンジキャップの縦断面図であり、上蓋を閉じた開封前状態を示す。
図2】同ヒンジキャップの側面図であり、上蓋を閉じた開封前状態を示す。
図3】同ヒンジキャップの縦断面図であり、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示す。
図4】同ヒンジキャップの側面図であり、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示す。
図5】同ヒンジキャップの平面図であり、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示す。
図6】同ヒンジキャップの縦断面図であり、開封する際の状態を示す。
図7】同ヒンジキャップの縦断面図であり、開封して突起係止部により押し込み部が開口された状態で係止されている状態を示す。
図8】同ヒンジキャップの縦断面図であり、開封後に上蓋を開けて内容物を注出している際の状態を示す。
図9】本発明の他の実施の形態に係るヒンジキャップの縦断面図であり、上蓋を閉じた開封前状態を示す。
図10】同ヒンジキャップの側面図であり、上蓋を閉じた開封前状態を示す。
図11】同ヒンジキャップの縦断面図であり、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示す。
図12】同ヒンジキャップの側面図であり、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示す。
図13】同ヒンジキャップの平面図であり、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示す。
図14】同ヒンジキャップの縦断面図であり、開封する際の状態を示す。
図15】同ヒンジキャップの縦断面図であり、開封して突起係止部により押し込み部が開口された状態で係止されている状態を示す。
図16】同ヒンジキャップの縦断面図であり、開封後に上蓋を開けて内容物を注出している際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係るヒンジキャップを、図面を参照して説明する。
ここで、図1図8は、それぞれ本発明の実施の形態(第1の実施の形態)に係るヒンジキャップを示す。また、これらの図において、図1図2は、上蓋を閉じた開封前状態を示し、図3図5は、上蓋を開けた開封前状態(製造時の状態)を示し、図6図7は、開封時の状態を段階的(経時的)に示している。
【0026】
図1図5などにおいて、1は、内部に内容物(内容液)が収容されている容器2に取付けられるヒンジキャップである。ヒンジキャップ1は、容器2の口部3に取り付けられる本体(キャップ本体)4と、この本体4にヒンジ5を介して設けられた上蓋6と、を有する。なお、本体4は、必ずしも、容器2の口部3に直接取り付けられなくてもよく、例えば、容器2の口部3に、中栓などを介して、本体4が間接的に取り付けられる構成であってもよい。ヒンジキャップ1は例えば合成樹脂製とされ、この場合には、ヒンジキャップ1が、溶融した合成樹脂を金型内に射出して製造する射出成形により一体形成されて製造される。ヒンジキャップ1における比較的薄肉の部分は弾性変形可能とされている。
【0027】
本体4は、容器2の口部3の上端面に上方から対向するように配置される天面11と、天面11の外周から下方に延びてその下部が容器2の口部3に外側から嵌る円筒状の外筒12と、外筒12の内周位置に径方向に隙間を有する位置で天面11から下方に延びるように形成されて、その下部が容器2の口部3に内側から嵌り込む円筒状の内筒13と、天面11の外周寄り箇所から上方に円環状に延びる係止筒17と、天面11の外周寄り箇所から上方と下方とにそれぞれ突出して容器2内の内容物を注出する注出筒14と、内筒13や注出筒14の内側に形成されて容器2の口部3(ヒンジキャップ1の内部側領域と外部側領域)を閉鎖する隔壁15と、この隔壁15に形成された破断可能な薄肉部(スコアとも称せられる)16と、隔壁15における薄肉部16の内側(平面視して中心側)に形成されて、容器2内の内容物を出すための開口を形成するための押込み部(開口予定部)18などが設けられている。
【0028】
なお、この実施の形態では、注出筒14は、図3図4などに示すように、ヒンジ5から離れた側が大きく上方に突出している一方、ヒンジ5に近づくにつれて上方への突出寸法が徐々に小さくなるように傾斜され、ヒンジ5に近い箇所では上方への突出寸法が最も小さくなるように形成されている。
【0029】
ヒンジキャップ1の容器2への装着時には、上蓋6が閉じられた状態(本体4に上蓋6が被せられた状態)で、容器2の口部3にヒンジキャップ1が載せられて、上方から打栓具によりヒンジキャップ1が打栓されることで、容器2の口部3が本体4の外筒12と内筒13との間に挟まれて嵌合され、ヒンジキャップ1が容器2に装着される。
【0030】
上蓋6には、上面における外周寄りに設けられている蓋板22と、この蓋板22に連続する外周面(スカートとも称せられる)21などが設けられている。詳しくは、上蓋6には、上蓋6を閉じた際に本体4の外筒12の外周部上縁にその下縁部が当接するとともに本体4の係止筒17が内側から密接される外周面21と、この外周面21の上端縁になだらかにつながる蓋板22と、蓋板22の内側箇所から下方に環状に突出して上蓋6を閉じた際に注出筒14に内側から密接してシールするインナーリング(内周突条とも称せられる)23などが設けられている。
【0031】
上記構成に加えて、上蓋6には、本体4の隔壁15側に変形可能な(すなわち、上蓋6を閉じた状態で下方に変形可能な)押圧部24が設けられている。この実施の形態では、押圧部24が、インナーリング23の下端部から中央側に延びて平面視して中央側領域を覆うように設けられている。なお、図1図5などに示すように、押圧部24の開封前の形状としては、概略的には外周寄り箇所がインナーリング23の下端部に接続されて下方に窪む一方で、中央部寄り領域が上方に膨出し、さらに中央部寄り領域における中心部が少しだけ下方に窪む形状とされているが、これに限るものではない。
【0032】
そして、開封前に上蓋6が閉じられている状態で、上蓋6の押圧部24が下方に(本体4の隔壁15が設けられている側に)押圧されると、薄肉部16(詳しくは薄肉部16の一部である後述する破断用薄肉部16a)が破断しながら、薄肉部16の内側に設けられた押し込み部18が、容器2の内部側に(すなわち下方に)押し込まれて開口されるようになっている。
【0033】
ここで、薄肉部16は、図5に示すように、平面視して、隔壁15における内筒13との接続部分よりも内側箇所に、この実施の形態では略円形に設けられており、縦断面においては、図1などに示すように、隔壁15における内筒13との接続部分よりも内側に向けて斜め下方に延びた部位に設けられている。また、本体4の隔壁15における薄肉部16の内側に設けられた押し込み部18には、上蓋6の押圧部24の裏面に当接可能な押圧力伝達突起18aが形成されている。そして、薄肉部16における押圧力伝達突起18aに近い側(詳しくは、押圧力伝達突起18aから離れている側の端部以外の部分)は、押圧力伝達突起18aが押し込まれた際に、破断する破断用薄肉部16aとされている一方で、薄肉部16における、押圧力伝達突起18aから離れている側の端部は、上蓋6の押圧部24が押圧された際に破断せずに、支点として変形する第1変形支点としての支点用薄肉部16bとされている。
【0034】
すなわち、隔壁15に、上蓋6の押圧部24を介して本体4の押し込み部18が押し込まれた際に変形して支点となる変形支点が設けられている。より具体的には、この実施の形態では、本体4の押し込み部18が押し込まれた際に変形して支点となる変形支点が2つ設けられており、図6に示すように、第1変形支点として、隔壁15に設けられている薄肉部16における押圧力伝達突起18aから離れている支点用薄肉部16bに設けられている。また、これより若干遅れて変形して支点となる第2変形支点18bが、押し込み部18における押圧力伝達突起18aの下端部の本体中心寄り箇所に設けられている。なお、この実施の形態では、破断用薄肉部16aや押圧力伝達突起18aが、ヒンジ5に近い側に配置され、支点用薄肉部16bがヒンジ5から離れている側に配置されている。
【0035】
また、本体4には、押し込み部18が押し込まれた際に開口された状態で押圧力伝達突起18aを係止して、開口状態を保持する突起係止部32が設けられている。この実施の形態では、突起係止部32が、内筒13の内側から斜め下方に傾斜する隔壁15におけるヒンジ5寄りの箇所(押し込み部18が押し込まれた際に薄肉部16においてまず破断する押圧力伝達突起18a近傍の破断用薄肉部16aに続く箇所)に設けられている。
【0036】
さらに、上蓋6には、図1図2図4などに示すように、押圧部24を押圧する際に指を挿入可能な操作用切欠部31が蓋板22から下方に窪むように設けられている。そして、押圧部24を押し込む際に、この操作用切欠部31に指を挿入することで、押圧部24の押し込み動作が行い易くなるよう図られている。この実施の形態では、操作用切欠部31が、上蓋6におけるヒンジ5に近い側、すなわち、本体4における押圧力伝達突起18aが設けられている箇所の近くに設けられている。
【0037】
また、この実施の形態では、図2図4図5などに示すように、平面視して略円形である上蓋6の外周面21に、平面視して略平坦形状に窪む操作用窪み部33が左右の2箇所に形成されている。そして、上蓋6を開ける際にこの操作用窪み部33を用いて上蓋6を左右から挟むようにつまむことで、上蓋6が若干変形して係止筒17から離脱し易くなり、上蓋6を容易に開けることができるよう図られている。この実施の形態では、操作用窪み部33に細かな凹凸が形成され、指が滑り難くなって操作し易くなるよう図られているがこれに限るものではない。また、この実施の形態では、操作用窪み部33を用いて上蓋6を開けることができるので、上蓋6の外周面におけるヒンジ5から離れた箇所(いわゆる上蓋6の外周面における前端部)に上蓋6を開けるための鍔部などが設けられていない。
【0038】
上記構成において、当該ヒンジキャップ1は、内容物が入れられた容器(商品)2が出荷される際においては、図1図2に示すように、本体4の隔壁15が未開封であるとともに上蓋6が閉じられた状態で容器2に装着されている。したがって、このヒンジキャップ1が装着された容器2を使用する際には、図6図7に示すような開封動作が行われる。
【0039】
すなわち、操作用切欠部31に指を挿入するなどして、上蓋6の押圧部24を押し下げることで、上蓋6の押圧部24を押して、本体4の隔壁15を開封する。この際、上蓋6の押圧部24を介して、押圧力伝達突起18aを容器2の内部側(すなわち下方に)に押し込むと、すなわち、押圧力伝達突起18aにおける上蓋6の押圧部24との当接箇所が作用点となり、図6図7に示すように、第1変形支点としての支点用薄肉部16bを中心(支点)として、押し込み部18全体が容器2の内部側(すなわち下方に)に変形し、また、第2変形支点18bを中心(支点)として、押圧力伝達突起18aの先端が平面視して本体の中心部に傾くように変形する。これにより、作用点と支点とを有するいわゆる「てこの原理」を用いて、小さな力で楽に、押し込み部18を変形させたり薄肉部16の破断用薄肉部16aを破断させたりすることができ、隔壁15における薄肉部16の内側部分には開口34が形成される。
【0040】
また、本体4の隔壁15には突起係止部32が設けられているので、上蓋6の押圧部24を介して押し込み部18を一旦押し込むと、上蓋6から指を離しても、突起係止部32により、良好に開口された状態で、押圧力伝達突起18aが係止される。したがって、この後、図8に示すように、上蓋6を開けた状態で容器2を傾けることで、容器2内の内容物を良好に注出することができる。
【0041】
また、上記構成によれば、プルリングを設けていないので、開封時においてプルリングに指を引っ掛け難いという問題を生じたり、プルリングを引き上げる際の抵抗が大きくて指が痛くなったり、プルリングに接続されている操作部の支柱根元や支柱とプルリングとの接続部などが破断して、薄肉部を破断できなくなったりするというようなプルリングに起因する各種の不具合が発生することを防止することができる。
【0042】
また、上記構成によれば、上蓋6に、本体4の隔壁15側に変形可能な押圧部24を設け、この押圧部24を押圧することにより、本体4の隔壁15の破断用薄肉部16aを破断して開口させるので、指などが直接に容器2内に押し込まれることがない状態で開封することができる。この結果、容器2内の内容物が指に付着したり、指で押し込んだ隔壁15の部分などに内容物が直接接触して不衛生となったりすることを良好に防止でき、便利であるとともに衛生状態を良好に保つことができる。
【0043】
また、上記構成においては、押し込み部18が容器2内側に押し込まれた状態で開口されているので、内容物を注出する際に、押し込み部18と開口32との間の隙間で内容物同士がぶつかりあって整流されながら注出される効果も生じると考えられる。
【0044】
また、上記構成によれば、上蓋6に、押圧部24を押圧する際に指を挿入可能な操作用切欠部31を設けているので、操作用切欠部31に指などを挿入しながら押圧部24を押圧することができて、便利である。
【0045】
また、上記構成においては、上蓋6の外周面21に、平面視して略平坦形状に窪む操作用窪み部33が左右の2箇所に形成しており、上蓋6を開ける際にこの操作用窪み部33を用いて上蓋6を左右から挟むようにつまむことで、上蓋6を容易に開けることができるようになっている。これにより、上蓋6に、上蓋6を開けるための鍔を設けていないので、鍔が設けられている場合に、開封後に横倒し状態となった際などに、鍔に物や指などが引っ掛かって誤って上蓋6が開いて内容物が漏れ出るという不具合が発生することがなくなる利点がある。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、押圧力伝達突起18aや破断用薄肉部16a、突起係止部32が、隔壁15におけるヒンジ5に近い側に設けられ、第1変形支点としての支点用薄肉部16bが、隔壁15におけるヒンジ5から離れている側に設けられている場合を述べた。しかし、この構成に限るものではなく、ヒンジキャップ1の大きさやその用途などに応じて、図9図13に示すように、押圧力伝達突起18aや破断用薄肉部16a、突起係止部32を、隔壁15におけるヒンジ5から離れている側に設け、第1変形支点としての支点用薄肉部16bを、隔壁15におけるヒンジ5に近い側に設けてもよい。
【0047】
すなわち、この構成によっても、開封する際には、図14図15に示すように、上蓋6の押圧部24を介して押圧力伝達突起18aを押し込むことで、第1変形支点としての支点用薄肉部16bや第2変形支点18bを中心(支点)とし、作用点と支点とを有するいわゆる「てこの原理」を用いて、小さな力で楽に、薄肉部16の破断用薄肉部16aを破断させたり押し込み部18を変形させたりすることができ、隔壁15における薄肉部16の内側部分に開口34を良好に形成することができる。したがって、この後、図16に示すように、上蓋6を開けた状態で容器2を傾けることで、容器2内の内容物を良好に注出することができ、上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
また、上記の実施の形態では、上蓋6に、この上蓋6を開けるための鍔が設けられていない場合を述べたが、これに限るものではなく、図9図16に示すように、上蓋6に、この上蓋6を開けるための鍔35を設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ヒンジキャップ
2 容器
3 口部
4 本体
5 ヒンジ
6 上蓋
11 天面
12 外筒
13 内筒
14 注出筒
15 隔壁
16 薄肉部(スコア)
16a 破断用薄肉部
16b 支点用薄肉部(第1変形支点)
17 係止筒
18 押し込み部
18a 押圧力伝達突起
18b 第2変形支点
21 外周面
22 蓋板
23 インナーリング
24 押圧部
31 操作用切欠部
32 突起係止部
33 操作用窪み部
34 開口
35 鍔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16