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  • 特許-扉開閉用制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】扉開閉用制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/74 20150101AFI20240905BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20240905BHJP
   E06B 9/68 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E05F15/74
E05F15/73
E06B9/68 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020093926
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021188352
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592055554
【氏名又は名称】ヒースト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 祥尋
(72)【発明者】
【氏名】百々 素樹
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008004(JP,A)
【文献】特開2008-303604(JP,A)
【文献】特開2006-328853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
E06B 9/56 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉制御対象である扉から所定距離離れた所までを第1検知エリアとする車両検知用のレーダー検知部と、上記第1検知エリア内で上記扉側寄りの上記第1検知エリアよりも狭い範囲を第2検知エリアとする歩行者検知用の赤外線検知部と、上記レーダー検知部のレーダー反射波に対するしきい値を有し上記レーダー反射波が上記しきい値を超えた場合に扉開信号を上記扉の開閉駆動部に与える制御部とを含み、
上記制御部は、上記赤外線検知部からの出力信号に応じて上記しきい値を変更することを特徴とする扉開閉用制御装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記赤外線検知部が上記第2検知エリア内で歩行者を検知しないとき上記しきい値を小さくし、上記赤外線検知部が上記第2検知エリア内で歩行者を検知したときには上記しきい値を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の扉開閉用制御装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記赤外線検知部により歩行者が上記扉に近づく方向に移動することが検知された場合、上記しきい値を漸次大きくすることを特徴とする請求項2に記載の扉開閉用制御装置。
【請求項4】
上記扉が工場や倉庫等の建物の出入り口に設けられているシャッターであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の扉開閉用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は扉開閉用制御装置に関し、さらに詳しく言えば、工場や倉庫等の建物の出入り口に設置されているシャッターを開閉制御対象とする扉開閉用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、図6(a),図7(a)を参照して、工場や倉庫等の建物の出入り口に設置されているシャッターSDを自動的に開閉するため、多くの場合、レーダー検知機(レーダーモジュール)1が用いられている。
【0003】
レーダー検知機1はシャッターSDの上部の無目2に配置されるが、検知する対象はシャッターに近づくフォークリフト等の車両Vであり、車両Vに対してはシャッターSDを開けるが、歩行者(建物内の作業者等)Hに対してはシャッターSDを開けない機能が要求されている。これは図示しないが、通常、シャッターSDに隣接して歩行者用の通用口が設けられているためである。
【0004】
レーダー反射波の強度は、歩行者Hに比べて金属製である車両Vの方が強いため、歩行者Hの反射強度と車両Vの反射強度との間にしきい値THを設定し、レーダー検知機1で受信したレーダー反射波の強度を所定のしきい値THと比較することで歩行者Hか車両Vかを判断するようにしている。
【0005】
このしきい値THは、図6(b),図7(b)に示すように、車両Vによるレーダー反射波RVは検知として拾うが、歩行者Hによるレーダー反射波RHは非検知として拾わないように設定される。
【0006】
しかしながら、このように、しきい値THの幅を歩行者Hによるレーダー反射波RHよりも広く設定すると、車両Vに対するレーダー検出範囲が狭くなる。すなわち、図8(a)(b)に示すように、車両Vがある程度までシャッターSDに近づかないと、シャッターSDが開かない、という問題が生ずる。
【0007】
なお、特許文献1には、レーダー検知機と赤外線検知機とを併用した扉用複合センサが記載されている。この複合センサでは、レーダー検知機により第1検知エリアを形成するとともに、赤外線検知機による第2検知エリアを第1検知エリアに接近して形成し、第2検知エリアにおいて物体の第2検知エリアへの接近によって第2検知エリアを有効とし、反対に物体が第2検知エリアから離れる方向に移動すると第2検知エリアを無効とするようにしている。
【0008】
これによれば、雨や雪等の外乱による自動ドアの誤動作が防止されるが、上記した車両Vがある程度にまでシャッターSDに近づかないと、シャッターSDが開かない、という問題の解決策とはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-328853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、工場や倉庫等の建物の出入り口に設置されているシャッターの開閉制御において、歩行者を非検知としながらも車両の検知範囲を広くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、開閉制御対象である扉から所定距離離れた所までを第1検知エリアとする車両検知用のレーダー検知部と、上記第1検知エリア内で上記扉側寄りの上記第1検知エリアよりも狭い範囲を第2検知エリアとする歩行者検知用の赤外線検知部と、上記レーダー検知部のレーダー反射波に対するしきい値を有し上記レーダー反射波が上記しきい値を超えた場合に扉開信号を上記扉の開閉駆動部に与える制御部とを含み、上記制御部は、上記赤外線検知部からの出力信号に応じて上記しきい値を変更することを特徴としている。
【0012】
本発明の好ましい態様として、上記制御部は、上記赤外線検知部が上記第2検知エリア内で歩行者を検知しないとき上記しきい値を小さくし、上記赤外線検知部が上記第2検知エリア内で歩行者を検知したときには上記しきい値を大きくする。
【0013】
より好ましくは、上記制御部は、上記赤外線検知部により歩行者が上記扉に近づく方向に移動することが検知された場合、上記しきい値を漸次大きくする。
【0014】
本発明は、上記扉が工場や倉庫等の建物の出入り口に設けられているシャッターに好ましく適用される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、工場や倉庫等の建物の出入り口に設置されているシャッターの開閉制御において、歩行者を非検知としながらも車両の検知範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による扉開閉用制御装置の実施形態を説明するためのブロック線図。
図2】(a)第1,第2検知エリアの何れにも歩行者がいない状態を示す模式図、(b)そのときのしきい値。
図3】(a)第1検知エリアのシャッターから遠いところに歩行者がいる状態を示す模式図、(b)そのときのしきい値。
図4】(a)歩行者がシャッターに近づいて第2検知エリアに踏み込んだ状態を示す模式図、(b)そのときのしきい値。
図5】(a)歩行者がシャッターの直前にいる状態を示す模式図、(b)そのときのしきい値。
図6】従来技術の説明として、(a)レーダーの検知エリア内に車両が入り込んでいる状態を示す模式図、(b)車両によるレーダー反射波としきい値との関係を示すグラフ。
図7】従来技術の説明として、(a)レーダーの検知エリア内に歩行者が入り込んでいる状態を示す模式図、(b)歩行者によるレーダー反射波としきい値との関係を示す波形グラフ。
図8】(a)(b)従来技術によると、車両に対するレーダー検出範囲が狭くなることを説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1ないし図5を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
まず、図1を参照して、本発明による扉開閉用制御装置10は、基本的な構成として、レーダー検知部20と、赤外線検知部30と、制御部(CPU)40とを備えている。
【0019】
レーダー検知部20はもっぱら車両検知用で、レーダー検知部20には電波の送受信回路およびアンテナを有する市販のレーダーモジュール21が用いられてよい。レーダーモジュール21から2つのレーダー反射波IF1,IF2がそれぞれ増幅回路22a,22bを介して制御部40に送られる。制御部40はレーダー反射波IF1,IF2の位相を見て検知物体の移動方向(接近方向か離反方向か)を判別する。
【0020】
赤外線検知部30はもっぱら歩行者検知用で、LED等からなる複数の投光素子を含む投光部31と、フォトダイオード等からなる複数(投光素子と同数)の受光素子を含む受光部32を備えた公知の態様であってよい。
【0021】
投光部31内の投光素子(LED)は駆動回路31bにより順次交代的に発光し、分割レンズ31aを介して監視領域の床面にスポット光を照射する。例えば、投光素子が4素子で分割レンズ31aが2分割レンズである場合、床面に1列あたり8個のスポット光が照射される。受光部32では、床面からの反射光を分割レンズ32aを介して受光し、増幅回路32bを介して制御部40に送信する。
【0022】
図2ないし図5を併せて参照して、開閉する制御対象の扉は、先に説明した従来例と同じく、工場や倉庫等の建物の出入り口に設置されているシャッターSDであり、レーダー検知部20と赤外線検知部30は、シャッターSDの上部の無目2(もしくは無目に相当する部位)に配置される。
【0023】
レーダー検知部20は、シャッターSDから所定距離離れた所までを第1検知エリア20Aとして物体の有無およびその移動方向を監視する。赤外線検知部30は、第1検知エリア20A内でシャッターSD側寄りの第1検知エリア20Aよりも狭い範囲を第2検知エリア30Aとして物体の有無を監視する。
【0024】
この実施形態において、赤外線検知部30は、物体の移動方向を検知するため、シャッターSDから離れる方向に多列(この例では5列)の監視列L1~L5を形成し、監視列L5→L4→L3…の順に物体を検知するとき、その物体がシャッターSDに近づいていると判断する。反対に、監視列L1→L2→L3…の順に物体が非検知となるとき、その物体がシャッターSDから離れる方向に移動していると判断する。
【0025】
歩行者Hによるレーダー反射波RHの強度は、距離が離れるほど弱くなる性質があることから、歩行者Hの存在する位置に応じて、レーダー反射波強度のしきい値THを変更することにより、車両Vの検知範囲をより広くすることができる。
【0026】
図2(a)に示すように、第1検知エリア20A、第2検知エリア30Aの何れにも歩行者Hがいない場合、制御部40は、図2(b)に示すように、レーダー反射波に対するしきい値THを最小のしきい値TH1に設定する(しきい値幅を最小幅に狭める)。
【0027】
次に、図3(a)に示すように、歩行者Hが検知エリア外から第1検知エリア20A内に踏み込んでも、まだシャッターSDとの距離が大きいため、この実施形態において、制御部40は、図3(b)に示すように、レーダー反射波に対するしきい値THを引き続き最小値TH1を維持するようにしているが、上記最小値TH1よりも若干大きなしきい値TH2(TH1<TH2)に設定し、しきい値幅を最小値TH1のときよりも広げるようにしてもよい。
【0028】
次に、図4(a)に示すように、歩行者Hが第2検知エリア30A内に進行すると、制御部40は、図4(b)に示すように、歩行者Hによるレーダー反射波RHは非検知として拾わないようにするため、レーダー反射波に対するしきい値THを上記TH1もしくはTH2よりもさらに大きな値TH3(TH1,TH2<TH3)とする(しきい値幅をTH1もしくはTH2のときよりもさらに広げる)。
【0029】
そして、図5(a)に示すように、歩行者Hが第2検知エリア30A内でシャッターSDの直近にまで近づくと、制御部40は、図5(b)に示すように、歩行者Hによるレーダー反射波RHは非検知として拾わないようにするため、レーダー反射波に対するしきい値THを最も大きな値TH4(TH3<TH4)とする(しきい値幅をTH3のときよりもさらに広げる)。
【0030】
このように、歩行者Hが第1検知エリア20A,第2検知エリア30Aにいないときには、レーダー反射波に対するしきい値THが最小値TH1に設定されるため、例えば車両Vが第1検知エリア20A内に入った時点で車両Vを検知することができる。すなわち、歩行者Hを非検知としながらも車両Vの検知範囲を広くすることができる。
【0031】
再び図1を参照して、レーダー反射波に対するしきい値THの最小値TH1や最大値TH4およびこれらの中間値TH2,TH3の増大率等は、ユーザーのリモコン操作でリモコン受光部41より制御部40に任意に設定することができる。
【0032】
また、制御部40は2系統の出力回路42,43を備えている。このうち、一方の出力回路43はレーダー検知部20の出力部で、車両Vによるレーダー反射波RVがしきい値THを超えた場合に、シャッターSDの図示しない開閉駆動部にシャッター開信号を送信する。車両Vが遠ざかれば上記開閉駆動部にシャッター閉信号を送信する。
【0033】
もう一つの出力回路42は赤外線検知部30の出力部で、例えばシャッターSDが開けられ車両Vが建物の出入り口を通過してシャッターSDを閉める際、その近辺で歩行者Hを検知した場合には、シャッターSDを閉めないように上記開閉駆動部に安全信号を送信する。
【0034】
本発明の扉開閉用制御装置は、工場や倉庫等の建物の出入り口に設置されているシャッターに好適であるが、車両によってのみ開閉し歩行者には反応しない自動扉であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 扉開閉用制御装置
20 レーダー検知部
21 レーダーモジュール
30 赤外線検知部
31 投光部
32 受光部
31a,32a 分割レンズ
40 制御部(CPU)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8