(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20240905BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
A61L9/015
F24F7/003
(21)【出願番号】P 2020146191
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520333734
【氏名又は名称】有限会社日本テクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 和臣
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-135677(JP,A)
【文献】特開平09-172959(JP,A)
【文献】特開平03-262551(JP,A)
【文献】特開平10-287407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
F24F 8/26
C01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の筐体と、前記筐体に内蔵する複数のオゾナイザとを備える空気浄化装置において、
前記筐体は、空気の吸気口と、排気口と、前記吸気口から前記排気口に向けて前記空気が流れる通気路とを有しており、
前記複数のオゾナイザは、第1のオゾナイザと第2のオゾナイザとを含み、オゾンを生成することにより前記空気中の殺菌対象物を酸化分解により殺菌可能に構成されており、
さらに、前記空気浄化装置は、前記第1のオゾナイザと前記第2のオゾナイザとを交互運転可能である制御装置
と、前記吸気口から前記通気路に前記空気を導入する送風ファンとを備えており、
前記送風ファンは、前記空気を送風して前記複数のオゾナイザに当てることで前記複数のオゾナイザを空冷可能に構成されている
空気浄化装置。
【請求項2】
箱型の筐体と、前記筐体に内蔵する複数のオゾナイザとを備える空気浄化装置において、
前記筐体は、空気の吸気口と、排気口と、前記吸気口から前記排気口に向けて前記空気が流れる通気路とを有しており、
前記複数のオゾナイザは、第1のオゾナイザと第2のオゾナイザとを含み、オゾンを生成することにより前記空気中の殺菌対象物を酸化分解により殺菌可能に構成されており、
さらに、前記空気浄化装置は、前記第1のオゾナイザと前記第2のオゾナイザとを交互運転可能である制御装置とを備え、
前記第1のオゾナイザと第2のオゾナイザは、1又は複数の薄板形状の沿面放電型オゾナイザであり、
前記沿面放電型オゾナイザは、板面が前記通気路における空気の流れ方向と対向するように配置されている
空気浄化装置。
【請求項3】
請求項2記載の前記空気浄化装置であって、
複数の沿面放電型オゾナイザは、前記空気の流れ方向で交互に配置されており、第1の沿面放電型オゾナイザと第2の沿面放電型オゾナイザとの間にクランク状通気部を形成する
空気浄化装置。
【請求項4】
請求項1~3何れか1項記載の前記空気浄化装置であって、さらに、
前記複数のオゾナイザよりも前記排気口側に配置されており、前記通気路に残留するオゾンを分解可能なオゾン分解装置を備える
空気浄化装置。
【請求項5】
請求項1~4何れか1項記載の前記空気浄化装置であって、
前記複数のオゾナイザが生成するオゾン量が、100mg/h~30000mg/hである
空気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気中に浮遊する人体に有害な病原菌を殺菌するために、オゾナイザを備える空気浄化装置が知られている(特許文献1)。特許文献1はその一例であり、この空気浄化装置は、オゾナイザで生成したオゾンを、配管を通じて殺菌流路に供給することで、殺菌流路を通過する空気中の殺菌対象物を殺菌処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人体に有害な病原菌に対してオゾンの殺菌力が有効であることは、前述の特許文献1で示す空気浄化装置のように、従来から知られている。しかしながら、例えば病院、家庭、オフィス等の室内で使用する空気浄化装置は、室内で設置できるように小型であるため、オゾナイザの耐久性が低く、継続的に浄化処理を行うのが難しい。
【0005】
本発明は、継続的にオゾンによる浄化処理を可能とする空気浄化装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、箱型の筐体と、前記筐体に内蔵する複数のオゾナイザとを備える空気浄化装置について、前記筐体は、空気の吸気口と、排気口と、前記吸気口から前記排気口に向けて前記空気が流れる通気路とを有しており、前記複数のオゾナイザは、第1のオゾナイザと第2のオゾナイザとを含み、オゾンを生成することにより前記空気中の殺菌対象物を酸化分解により殺菌可能に構成されており、さらに、前記空気浄化装置は、前記第1のオゾナイザと前記第2のオゾナイザとを交互運転可能である制御装置を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様によれば、複数のオゾナイザが、第1のオゾナイザと第2のオゾナイザとを含み、さらに、前記空気浄化装置が、前記第1のオゾナイザと前記第2のオゾナイザとを交互運転可能である制御装置を備えるため、第1のオゾナイザと第2のオゾナイザとを交互運転することによって継続的にオゾンによる浄化処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、継続的にオゾンによる浄化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による空気浄化装置の内部構造を示す平面図。
【
図2】
図1のII-II線に沿う空気浄化装置の断面図。
【
図3】
図1の空気浄化装置の吸気口を示す空気浄化装置の正面図。
【
図4】
図1の空気浄化装置の排気口を示す空気浄化装置の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
【0011】
本発明の実施形態の例について図面を参照しつつ説明する。以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0012】
以下の説明では、
図3で示す空気浄化装置1の側面を正面とし、その左右方向(幅方向)をX方向、その上下方向(高さ方向)をZ方向、その前後方向(長手方向)をY方向として説明する。本明細書、特許請求の範囲に記載する「第1」、「第2」の用語は、異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣を示すために用いるものではない。なお、各図面で示す空気浄化装置1は、理解を容易にするため装置の要部を模式的に示すものである。
【0013】
空気浄化装置1は、筐体2と、送風ファン3と、制御装置4と、操作部5と、オゾナイザ6と、「オゾン分解装置」としての紫外線照射装置7とを備えている。
図1、
図2で示す二点鎖線は、浄化処理を行う空気の流れを示す想像線である。空気浄化装置1の殺菌対象物は、空気に含まれる人体に有害な細菌やウイルス(大腸菌、黄色ブドウ球菌、新型コロナウイルス等)であるが、オゾンにより分解可能な人体に有害な化学物質(揮発性有機化合物(VOC)等)も含む。
【0014】
筐体2の説明
【0015】
筐体2は、本体2aと本体2aの上部開口を閉塞する蓋2bとを備える。筐体2は、例えばステンレス板等の金属材にて形成されている。本体2aは、周壁板2a1と底板2a2とで構成されており、
図3で示す筐体2の正面となる周壁2a1の第1の側面2a3には、吸気口2a4が設けられている。本実施形態の吸気口2a4は、送風ファン4を第1の側面2a3に露出させることで設けられている。
図4で示す筐体2の背面となる周壁板2a1の第2の側面2a5には、多数の貫通孔でなる排気口2a6が設けられている。
図4で示す円はすべてその排気口2a6である。
【0016】
吸気口2a4を有する第1の側面2a3の内面には、送風ファン3が取付けられている。送風ファン3は、モータによりファンを回転駆動させることで、外気を筐体2の内部に吸引し、流入する空気を排気口2a6に向けて送風する。送風ファン3は、図示しない配線を通じて電源に接続されている。
【0017】
送風ファン3の説明
【0018】
送風ファン3は、空気を送風してオゾナイザ6に当てることで、オゾナイザ6を空冷する機能を有する。より具体的には、送風ファン3の下流側にオゾナイザ6を直列的に近接して配置する構造とすることで、送風をオゾナイザ6に直接接触させ、オゾナイザ6の冷却効果を高めることができる。また、送風ファン3が、空気をオゾナイザ6に直接当てるように送風することで、空気中に含有する人体に有害な殺菌対象物に対してオゾンを効率的に接触させて殺菌効果を高めることができる。
【0019】
制御装置4の説明
【0020】
制御装置4は、タイマー装置4aとリレー装置4bとを備えている。タイマー装置4aは、複数のオゾナイザ6のそれぞれの駆動時間を設定するためのものであり、任意の時間を設定することができる。リレー装置4bは、タイマー装置4aで設定した駆動時間に応じてそれぞれのオゾナイザ6に対する通電を制御するものである。空気浄化装置1は、制御装置4を備えることで、各オゾナイザ6を所定の設定時間に応じて間欠運転させることができる。そして、各オゾナイザ6を交互運転することで、空気浄化装置1はオゾンを継続的に発生し、浄化処理を継続的に行うことができる。この点はさらに後述する。
【0021】
操作部5の説明
【0022】
操作部5は、空気浄化装置1を運転するための操作スイッチ5aを有している。そのため操作部5は、図示しない配線で、送風ファン3等に接続されており、操作スイッチ5aをオンにする容易な操作によって、送風ファン3とオゾナイザ6と紫外線ランプ7を作動させることができる。操作スイッチ5aは、空気浄化装置1を運転のオン・オフを切り替えるものであるが、それ以外にも空気浄化装置1の運転時間を設定するためのメカニカルスイッチや操作画面を表示するタッチパネル等を備えるものとして構成してもよい。
【0023】
オゾナイザ6の説明
【0024】
オゾナイザ6は、オゾンを生成する装置である。本実施形態では、複数のオゾナイザ6、具体的には第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bとを備えている。これらのオゾナイザ6は沿面放電型オゾナイザである。本実施形態の沿面放電型オゾナイザは薄板形状であるため、空気浄化装置1が複数のオゾナイザ6を内蔵する構成であっても、空気浄化装置1の全体を小型に構成することが可能である。一実施例として、空気浄化装置1は、例えば幅(左右方向X)を800~1200mm、高さ(高さ方向Z)を150~300mm、長さ(前後方向Y)を150~300mmとすることができる。このように空気浄化装置1は、「小型空気浄化装置」として構成できるため、その設置態様に基づく用途に応じて、室内の床面設置用の「床設置型空気浄化装置」として構成したり、天井設置用の「天井固定型空気浄化装置」として構成することができる。
【0025】
第1のオゾナイザ6aは、筐体2の右側面となる第3の側面2a7に片持ち梁状に固定されており、第2のオゾナイザ6bは、筐体2の左側面となる第4の側面2a8に片持ち梁状に固定されている。したがって第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bは、放電面となる板面が、筐体2の通気路2a9を流れる空気の流れ方向と対向するように配置されている。このため空気浄化装置1は、空気に含まれる殺菌対象物を第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bの広い面積の放電面に近づけるようにして、殺菌対象物に対してオゾンを効率的に接触させて殺菌効果を高めている。
【0026】
第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bは、通気路2a9の空気の流れ方向で交互に配置されている。それにより第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bの間にはクランク状通気部2a10が形成されている。より具体的には、第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bは、
図1及び
図2で示すように通気路2a9における空気の流れ方向(前後方向Y)と筐体2の高さ方向Zで、それぞれの放電面が相互に部分的に重なる位置に配置されている。空気浄化装置1は、対向する一対の放電面により形成されたクランク状通気部2a10を有することで、殺菌対象物を第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bとの対向間隙に発生するオゾンに晒すことができ、オゾンによる殺菌対象物の殺菌効率を高めることができる。
【0027】
オゾナイザ6によるオゾン(オゾンガス)の発生量は100mg/h~30000mg/hである。空気浄化装置1は、小型でありながらも、複数のオゾナイザ6(第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6b)を組合わせることにより、前述のオゾンの発生量を生成することができる。例えばオゾナイザ6のオゾン発生量が2000mg/hである場合、1m3の空気を約42秒で殺菌処理することができるため、毎分1.42m3、毎時85.7m3を殺菌処理することができ高い殺菌効率を実現することが可能である。
【0028】
紫外線ランプ7の説明
【0029】
オゾナイザ6の二次側には「オゾン分解装置」としての紫外線照射装置7が配置されている。本実施形態の空気浄化装置1は、紫外線照射装置7として複数の紫外線ランプ(7a、7b)を備えている。各紫外線ランプ(7a、7b)は、蛍光管形状に形成されており、その長手方向が、筐体2の長さ方向(前後方向Y)及び通気路2a9における空気の流れ方向に沿うように配置されている。これにより紫外線照射装置7の長手方向にわたって、空気に含まれる残留オゾン及び殺菌対象物に対して紫外線を照射することができる。したがって空気浄化装置1は、紫外線照射装置7の長手方向にわたって効率的に残留オゾンの分解処理を行うことができる。
【0030】
複数の紫外線照射装置7は、第1の紫外線ランプ7aと第2の紫外線ランプ7bとを含む。これらの第1の紫外線ランプ7aと第2の紫外線ランプ7bとは、同一波長の紫外線を放出するものでもよいし、異なる波長の紫外線を放出するものとしてもよい。
【0031】
一実施形態として、第1の紫外線ランプ7aは波長254nmの紫外線を放出するものであり、第2の紫外線ランプ7bは波長185nmの紫外線を放出するものとすることができる。この場合、第1の紫外線ランプ7aは、空気中の残留オゾンのオゾン濃度を人体に無害なレベルを下回るまで分解して(無害化)、排気口2a6から放出する殺菌処理後の空気を清浄化することが可能である。人体に無害なオゾン濃度は、例えばアメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)が定める24時間の最大許容濃度0.05ppmを超えない濃度及びアメリカ合衆国職業安全衛生研究所(NIOSH)が定める上限値0.1ppmを常時超えない濃度とすることができる。第2の紫外線ランプ7bは、空気中の酸素と反応してオゾンを発生し、このオゾンと第1の紫外線ランプ7aによる紫外線との反応により活性酸素が発生し、その酸化作用によってさらに有機汚染物質(揮発性有機化合物等)を分解処理することも可能となる。
【0032】
実施形態の効果
【0033】
以下、既に説明した効果に加えて空気浄化装置1の主要な効果を例示して説明する。
【0034】
空気浄化装置1は、複数のオゾナイザ6が、通気路2a9の吸気口2a4の側に配置されており、オゾンを生成することにより空気中の殺菌対象物を酸化分解により殺菌可能に構成されており、「紫外線照射装置」としての紫外線ランプ7が、複数のオゾナイザ6よりも排気口2a6の側に配置されており、通気路2a9に残留する残留オゾンを分解可能に構成されている。このため空気浄化装置1によれば、吸気口2a4の側に配置したオゾナイザ6が発生したオゾンによって殺菌処理を行う一方で、オゾナイザ6よりも下流の通気路2a9にある残留オゾンは排気口2a6の側に配置した紫外線ランプ7で分解して無害化することができる。よって空気浄化装置1によれば、室内空間であってもオゾンの殺菌力を効果的に活かした殺菌処理を行うことができ、無害化されたクリーンな空気を生成することができる。
【0035】
空気浄化装置1は、複数のオゾナイザ6を構成する第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bとを設定時間ごとに交互運転する制御装置4を備える。放電方式や水分電気分解方式のオゾナイザ6は、オゾンを発生するため放電により発熱するとオゾンの発生効率が低下するおそれがある。しかしながら空気浄化装置1によれば、連続的な交互運転(間欠運転)により一方のオゾナイザ6の運転を停止して継続的な発熱を抑制できるため、オゾナイザ6によるオゾンの発生効率が低下するのを抑制することができ、またオゾナイザ6を長寿命化することができる。
【0036】
空気浄化装置1は、複数のオゾナイザ6を連続的に交互運転することで、少なくとも何れかのオゾナイザ6からオゾンを継続的に発生させることができる。具体的には空気浄化装置1は、例えば第1のオゾナイザ6aが運転を停止しても、第2のオゾナイザ6bがオゾンを発生することができる。したがって空気浄化装置1は、それが運転している間は、少なくとも何れかのオゾナイザ6がオゾンを継続して発生して浄化処理を継続的に行うことができる。
【0037】
制御装置4は、例えば、運転中の第1のオゾナイザ6aを停止して、停止中の第2のオゾナイザ6bの運転を再開する際に、第1のオゾナイザ6aの運転停止と同時に第2のオゾナイザ6bの運転を再開するように制御可能として構成できる。また、制御装置4は、運転中の第1のオゾナイザ6aを停止する前に、第2のオゾナイザ6bの運転を再開するように制御可能として構成できる。このような連続的な交互運転を行う制御装置4によれば、オゾンの発生が途切れないので、オゾンによる殺菌対象物や有害物質の浄化処理を継続的に行うことができる。
【0038】
送風ファン3は、空気を送風してオゾナイザ6に当てることでオゾナイザ6を空冷可能に構成されている。このため空気浄化装置1によれば、複数のオゾナイザ6の交互運転(間欠運転)と合わせて送風により空冷することで、さらに各オゾナイザ6によるオゾンの発生効率が低下するのを抑制することができ、またオゾナイザ6を長寿命化することができる。
【0039】
通気路自体が屈曲して形成される場合(特許文献1の
図1参照。)、通気路の内部で空気が淀んで留まり、殺菌効率が低下するおそれがある。これに対して筐体2は、直線的な筒状に形成されており、その内側空間全体が直線形状の通気路2a9を形成する。したがって空気浄化装置1によれば、送風ファン3が送風する空気を、直線状の通気路2a9を通じて、オゾナイザ6、紫外線照射装置7へと直線的な流れで淀みなく送ることができ、殺菌効率の低下を抑制することができる。
【0040】
筐体2の内側空間が通気路2a9を形成しており、通気路2a9に送風ファン3、制御装置4、オゾナイザ6、紫外線照射装置7を配置している。したがって、空気浄化装置1によれば、通気路2a9の外部にそれらの各部品を配置するスペースを設ける必要が無いため、空気浄化装置1全体を小型に構成することができる。
【0041】
変形例の説明
【0042】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
【0043】
前記実施形態では、箱型の筐体2として、第1の側面2a3と第2の側面2a5が正方形に近い四角形であり、長さ方向で角筒状のものを例示した。しかしながら、「箱型」としては、そのように角筒状に限定されず、円筒状、半分が角筒形状であり半分が円筒形状を組合わせた形状等としてもよい。また、空気浄化装置1の設置方向も長手方向を水平方向に沿わせて設置するほか、長手方向を鉛直方向に沿わせて設置することもできる。
【0044】
前記実施形態では、複数のオゾナイザ6を備える例を示したが、オゾナイザ6は3つ以上備えるものとしてもよい。3つ以上のオゾナイザ6を備える構成とすることで、さらに各オゾナイザ6の連続運転時間を短くできるため、各オゾナイザ6を長寿命化することができる。また、3つ以上のオゾナイザ6を備える構成の場合、2つ以上のオゾナイザ6を同時に運転させることが可能となるため、オゾンの発生量を増加することが可能となる。したがって、オゾンの発生量は、一例として3000mg/h~30000mg/hとすることもできる。
【0045】
前記実施形態では、制御装置4により複数のオゾナイザ6を交互運転する例を示したが、例えば第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bが同時運転する時間や同時停止する時間を設けるように設定することもできる。
【0046】
前記実施形態では、オゾナイザ6として沿面放電型オゾナイザを例示したが、コロナ放電方式、無声放電方式などの他の放電方式のオゾナイザや、水分電気分解方式のオゾナイザを用いることもできる。
【0047】
前記実施形態では、第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bとを、通気路2a9における空気の流れ方向(前後方向Y)と筐体2の高さ方向Zで、互いに部分的に重なる位置に配置する例を示した。しかしながら、第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bは、前後方向Yだけで又は通気路2a9の高さ方向Zだけで部分的に重なるように配置してもよい。
【0048】
前記実施形態では、第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bとを、それらの放電面となる板面が通気路2a9における空気の流れ方向(前後方向Y)と対向するように配置する例を示した。しかしながら、第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bは、それらの放電面となる板面が空気の流れ方向(前後方向Y)に沿うように配置してもよい。これによれば、第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bが、通気路2a9における空気の流れに対して邪魔板のように配置されないので、空気をスムーズに流しつつその流れ方向に沿ってオゾンを殺菌対象物に接触させることが可能となる。
【0049】
第1のオゾナイザ6aと第2のオゾナイザ6bの板面を空気の流れ方向(前後方向Y)に沿うように配置する場合には、例えば4枚のオゾナイザ6(第1のオゾナイザ~第4のオゾナイザ)を、筒軸が空気の流れ方向(前後方向Y)に沿うように角筒状に組合せてもよい。これによれば、複数のオゾナイザ6による筒状通気路が形成され、オゾンをより狭い筒状通気路の内部で効率的に接触させることができるため、さらに殺菌効率を高めることができる。
【0050】
前記実施形態では、紫外線照射装置7として複数の紫外線ランプ(7a、7b)を備える例を示したが、紫外線ランプは1つ以上であればよく、3つ以上備えるものとしてもよい。紫外線照射装置7は、水平方向で並列に配置する例を示したが、垂直方向又は斜め方向で並列に配置してもよい。
【0051】
前記実施形態では、「オゾン分解装置」として紫外線照射装置7を示したが、これに代えてニクロム線加熱装置を配置することもできる。また、紫外線照射装置7とニクロム線加熱装置に、オゾン分解触媒を併用することができる。オゾン分解触媒は、オゾンが活性酸素と酸素に分解するのを助長する。また、「オゾン分解装置」の一例として、オゾン分解フィルタを利用することもできる。オゾン分解フィルタは、例えば多孔質のファイルタ基材にオゾン分解触媒を担持したシート形状の状ものであり、これを排気口2a6に設置してもよい。「オゾン分解装置」としてオゾン分解フィルタを備える構成によれば、紫外線照射装置7を備える場合と比較して、筐体2の長さを短くすることが可能であり、さらに空気浄化装置1の小型化を図ることができる。
【0052】
前記実施形態では「オゾン分解装置」として紫外線照射装置7を備える例を示したが、「オゾン分解装置」を備えない構成とすることもできる。
【0053】
前記実施形態では、制御装置4としてタイマー装置4aとリレー4bとで構成する例を示したが、これらに代えて同様にオゾナイザ6の稼働を制御するプロセッサ(制御IC)により構成してもよい。
【0054】
前記実施形態では、送風ファン3を筐体2の前面部2a3に露出させて吸気口4aを設ける例を示したが、前面部2a3に1つ又は複数の通気孔を形成し、それを「吸気口」として構成してもよい。
【0055】
前記実施形態の空気浄化装置1については、筐体2の排気口2a6に排気ファンを備えるように構成できる。これによれば吸気口2a4から通気路2a9に導入する空気量を増やしオゾナイザ6の冷却効果を高めることができる。排気ファンを備える空気浄化装置1については、送風ファン3を備えないように構成できる。これによれば部品点数を削減することができ、装置構成を簡略化することができる。
【0056】
前記実施形態の空気浄化装置1については、筐体2の排気口2a6に除菌フィルタを備えるものとしてもよい。これによれば菌が排気口2a6から飛散するのを抑制できる。
【0057】
前記実施形態の空気浄化装置1については、筐体2の排気口2a6に脱臭フィルタを備えるものとしてもよい。これによれば室内の空気の臭気や残留オゾンによる臭気が排気口2a6から飛散するのを抑制できる。
【実施例】
【0058】
以下、空気浄化装置1の実施例を説明する。
【0059】
〔試験系〕 試験系は、試験チャンバー(容積25m3(W:2700mm×D3800mm×H2400mm))の中に、試験機である前記実施形態の空気浄化装置1と、攪拌ファン、レーザー式パーティクルカウンター、温湿度計をそれぞれ設置して構築した。試験チャンバーの1つの側面にウイルス液噴霧口と浮遊ウイルス捕集口を設置し、それぞれウイルス液噴霧器具と浮遊ウイルス捕集器具を接続した。ウイルス液噴霧器具にはウイルス液を入れたネブライザーを使用した。浮遊ウイルス捕集器具には捕集液を入れたインピンジャーを使用した。
【0060】
〔試験手順〕 攪拌ファンを作動させてネブライザーからウイルス液を10分間噴霧し、2分攪拌した後に試験チャンバー内空気から初発(0分)の浮遊ウイルスをインピンジャーにて捕集した。その後、撹拌ファンを止め、試験機の運転を開始し、30分、60分、90分の経過時間毎に浮遊ウイルスを捕集した。
【0061】
他方、試験機を運転せずに自然減衰(コントロール)による浮遊ウイルスを捕集も行った。自然減衰による浮遊ウイルスの捕集の手順は、試験機を運転しないことを除き、前述した試験機を用いた試験手順と同じ手順にて行った。
【0062】
〔試験ウイルス液の調製〕 Nutrient Broth培地において36±2℃で一晩培養した宿主菌液(宿主菌:Escherichia coli NBRC 13898(大腸菌))に、試験ウイルス(Escherichia coli phage φX174 NBRC 103405(大腸菌ファージ))を接種し、半流動寒天(Nutrient Broth+0.5%塩化ナトリウム+0.5%Agar)と混合して普通寒天培地に重層した。36±2℃で18時間培養後、宿主菌を遠心除去し、孔径0.22μmのメンブランフィルタでろ過して約1012PFU/mLの試験ウイルス液を得た。これを1/10NB培地で100倍希釈して試験に用いた。
【0063】
〔ウイルス液の噴霧〕 ウイルス液を入れたネブライザーに、コンプレッサーから圧縮空気を送り出し、ウイルス液を試験チャンバー内へ毎分約0.2mLで10分間噴霧して浮遊させた。コンプレッサーからの吐出空気圧は2.0kg/cm2、吐出空気量は7.0L/分とした。
【0064】
〔浮遊ウイルスの捕集〕 捕集液として0.015%チオ硫酸ナトリウム添加リン酸緩衝生理食塩液20mLを入れたインピンジャーを用いた。1回の捕集につき試験チャンバー内の空気を毎分10Lで2分間(=20L)吸引し、浮遊ウイルスを捕集した。
【0065】
〔ウイルス数の測定〕 浮遊ウイルス捕集後のインピンジャー内の捕集液を試料原液とし、リン酸緩衝生理食塩液で10倍段階希釈列を作製した。その試料原液および希釈液と宿主菌を半流動寒天に混合して普通寒天培地に重層し、36±2℃で17~18時間培養した。培養後、発生したプラークを数え、空気20Lあたりの浮遊ウイルス数を求めた。
【0066】
〔浮遊ウイルス抑制性能の評価方法〕 一般社団法人日本電機工業会規格JEM1467「家庭用空気清浄機」の附属書D「浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験」では90分で2.0桁の減少が求められている。本試験では、同規格を参考として次のように浮遊ウイルスの除去性能評価を行った。
【0067】
初期(0分)のウイルス数から経過時間ごとのウイルス数を差し引き、対数減少値を計算し(下記[数1])、さらに、対照を差し引いた正味の対数減少値(減少率)を求め(下記[数2]、[数3])、試験品による浮遊ウイルスの抑制性能を求めた。
【0068】
[数1]対数減少値=Log(初期ウイルス数/経過時間ごとのウイルス数)
【0069】
[数2]正味の対数減少値=試験機運転時の対数減少値-自然減衰(コントロール)の対数減少値
【0070】
[数3]減少率[%]=(1-1/10(対数減少値))×100
【0071】
本試験方法によって得られる正味の対数減少値が2.0以上のとき試験機の浮遊ウイルスに対する抑制効果があるものと判断した。
【0072】
〔試験結果〕 噴霧した試験ウイルス液のウイルス数は1.0×1010PFU/mLであった。表1に自然減衰の場合と試験機を使用した場合のそれぞれの経過時間ごとの浮遊ウイルス数を示す。表2に経過時間ごとの浮遊ウイルス数から経過時間ごとの浮遊ウイルス数の対数減少値及び正味の対数減少値(減少率)を算出した結果を示す。
【0073】
【0074】
【0075】
本試験では、試験機を30分運転することで、正味の対数減少値(減少率)が2.0(99%)以上となり、試験機が浮遊ウイルスに対して除去性能を有することが確認された。
【0076】
本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の構成及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0077】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、空気浄化装置1の構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 空気浄化装置
2 筐体
2a 本体
2a1 周壁板
2a2 底板
2a3 第1の側面
2a4 吸気口
2a5 第2の側面
2a6 排気口
2a7 第3の側面
2a8 第4の側面
2a9 通気路
2a10 クランク状通気路
2b 蓋
3 送風ファン
4 制御装置
4a タイマー装置
4b リレー装置
5 操作部
5a 操作スイッチ
6 オゾナイザ
6a 第1のオゾナイザ
6b 第2のオゾナイザ
7 紫外線照射装置(オゾン分解装置)
7a 第1の紫外線ランプ
7b 第2の紫外線ランプ