(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】理容美容用ケープ
(51)【国際特許分類】
A45D 44/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A45D44/08 A
(21)【出願番号】P 2021134378
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2023-06-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596179944
【氏名又は名称】株式会社ワコウ
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】松田 兼一
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6857865(JP,B2)
【文献】特開2002-339239(JP,A)
【文献】特許第6293957(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3165301(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0172286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前布と後布の両側上部間に袖部が縫着され、該前布、該後布、該袖部の上部中央に、円形開口部が形成され、立ち襟が、該円形開口部の周縁を、テープ状布地で被覆して縫着された理容美容用ケープにおいて、
該立ち襟は、該テープ状布地の全ての部分が
、該前布、該後布、該袖部とは別部材の襟用のトリコット織布で縫製され、
該トリコット織布には、該前布、該後布、及び該袖部の織布とは異なり、
細菌の増殖を抑制する作用を付す制菌加工が施されるとともに、消臭作用を付す消臭加工が施され、さらに耐久撥水性を付す耐久撥水加工が施され、
該トリコット織布をテープ状に裁断して該テープ状布地とし、該立ち襟は、該テープ状布地を用いたパイピングによって、該円形開口部の周縁をくるみ縫着され、
該円形開口部の周縁に縫着された該立ち襟の該テープ状布地には、身頃側縁部と開放側縁部の両縁部の、円周方向に沿って、ステッチが付され、
該立ち襟の円周方向における、一端側に第1面ファスナが配設され、他端側に該第1面ファスナと重合可能な第2面ファスナが配設されていることを特徴とする理容美容用ケープ。
【請求項2】
前布と後布の上部中央に、円形開口部が形成され、立ち襟が、該円形開口部の周縁を、テープ状布地で被覆して縫着された理容美容用ケープにおいて、
該立ち襟は、該テープ状布地の全ての部分が
、該前布、該後布とは別部材の襟用のトリコット織布で縫製され、
該トリコット織布には、該前布、該後布の織布とは異なり、
細菌の増殖を抑制する作用を付す制菌加工が施されるとともに、消臭作用を付す消臭加工が施され、さらに耐久撥水性を付す耐久撥水加工が施され、
該トリコット織布をテープ状に裁断して該テープ状布地とし、該立ち襟は、該テープ状布地を用いたパイピングによって、該円形開口部の周縁をくるみ縫着され、
該テープ状布地は、該トリコット織布をバイアステープ状に裁断し、バイアス襟として該立ち襟が縫製され、
該立ち襟の円周方向における、一端側に第1面ファスナが配設され、他端側に該第1面ファスナと重合可能な第2面ファスナが配設されていることを特徴とする理容美容用ケープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容院や理髪店等において、ヘアカットや洗髪などを行なう際、服の汚れを防ぐために利用者が着用する理容美容用ケープに関する。
【背景技術】
【0002】
理髪店などで、ヘアカットや洗髪を行う際、利用者にケープを着用させてカットや洗髪を行うが、ケープの襟が利用者(着用者)の首に直接触れると、着用者に違和感や嫌悪感を生じさせる場合がある。このため、理髪店などでは、着用者の首の回りに、タオルや帯状の紙を巻き付け、その上からケープの襟部を止めることが行われており、着用者が変わる度にタオルや帯状紙を変えるようにしている。
【0003】
しかし、例えばタオルを使用する場合、タオルを首に巻いた状態で、その上からケープの襟部を装着すると、襟部の内側が厚くなるため、ケープの襟部の開口部を適正に止められない場合があり、また、ヘアカットや洗髪などの際に、厚いタオルの縁部が首の回りに大きく露出するため、カットした髪や水が多量に付着しやすい。
【0004】
そこで、本出願人は、従来、下記特許文献1により、着用者の蒸し暑さを低減するようにしたケープを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このケープは、その襟部の内側に沿って、帯状のパイル地を用いて縫製したネック当て布を、着脱可能に装着し、着用者の首の周りに、ネック当て布のパイル地表面を緩く当てるようにして、ヘアカットや洗髪を行う。
【0007】
このネック当て布は、その内側に、ウレタン樹脂層などの防水樹脂層がラミネートされるため、洗髪の際に水分が襟部の内側まで浸透しにくく、着用者は快適に装着できるものの、襟部の内側に面ファスナでネック当て布を取着して使用するため、襟部が厚く目立つ形状となって、ケープのデザイン性や見栄えなどが悪化しやすい。
【0008】
また、ケープ使用時の着用者に対する衛生管理を考慮した場合、理髪店や美容院で、着用者が変わる度に、ネック当て布を襟部から着脱し、新たなネック当て布を襟部の内側に正しく装着し、使用後のネック当て布は洗濯・乾燥後に再使用する必要がある。このため、ネック当て布の付け替え作業が煩雑であり、また、その洗濯・乾燥の作業も手間がかかる課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、美容院や理髪店の利用者が衛生的に且つ快適に着用することができる理容美容用ケープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る理容美容用ケープは、前布と後布の両側上部間に袖部が縫着され、該前布、該後布、該袖部の上部中央に、円形開口部が形成され、立ち襟が、該円形開口部の周縁を、テープ状布地で被覆して縫着された理容美容用ケープにおいて、
該立ち襟は、該テープ状布地の全ての部分が、該前布、該後布、該袖部とは別部材の襟用のトリコット織布で縫製され、
該トリコット織布には、該前布、該後布、及び該袖部の織布とは異なり、細菌の増殖を抑制する作用を付す制菌加工が施されるとともに、消臭作用を付す消臭加工が施され、さらに耐久撥水性を付す耐久撥水加工が施され、
該トリコット織布をテープ状に裁断して該テープ状布地とし、該立ち襟は、該テープ状布地を用いたパイピングによって、該円形開口部の周縁をくるみ縫着され、
該円形開口部の周縁に縫着された該立ち襟の該テープ状布地には、身頃側縁部と開放側縁部の両縁部の、円周方向に沿って、ステッチが付され、
該立ち襟の円周方向における、一端側に第1面ファスナが配設され、他端側に該第1面ファスナと重合可能な第2面ファスナが配設されていることを特徴とする。
【0011】
この理容美容用ケープによれば、立ち襟を形成する布地が、制菌加工を施したトリコット織布で縫製されているため、理容美容用ケープを着用する着用者の首の皮膚に、立ち襟が直接触れても、着用者には柔らかい弾力のある良好な感触を生じさせ、また制菌作用が生じて細菌の増殖が効果的に抑制され、美容院や理髪店では利用者にケープを衛生的に使用することができる。
【0012】
制菌加工に加え、消臭加工及び耐久撥水加工を施した布地は、製造時に時間や工数がかかり、布地を含むケープの製造コストがアップしやすい。しかし、立ち襟のみに限って制菌加工、消臭加工、及び耐久撥水加工を施した布地を使用し、ケープの前布、後布、袖部などは、通常の布地を使用することができるので、比較的低コストで必要な部分のみに制菌性能、消臭性能、撥水性能を有した衛生的なケープを製造することができる。
【0013】
また、制菌加工された、立ち襟のテープ状布地の使用によって、細菌の増殖が抑制されるため、それにより、立ち襟の防臭効果を促進することができる。さらに、トリコット織布のテープ状布地に消臭加工が施されているため、着用者の汗などが立ち襟に付着し、その汗などから臭気が生じた場合でも、立ち襟のもつ消臭作用により臭気の発生を抑制し、ケープを利用者に、快適に着用してもらうことができる。
【0014】
また、利用者の洗髪時に、立ち襟が濡れた場合、立ち襟には耐久撥水加工を施したテープ状布地が使用されるため、立ち襟への水の吸収は抑制され、利用者は快適にケープを着用することができる。また、耐久撥水加工が施されるため、ケープを繰り返し洗濯した場合でも、耐久性をもって高い撥水性能を保持することができる。
【0016】
本発明の別の理容美容用ケープは、前布と後布の上部中央に、円形開口部が形成され、立ち襟が、該円形開口部の周縁を、テープ状布地で被覆して縫着された理容美容用ケープにおいて、
該立ち襟は、該テープ状布地の全ての部分が、該前布、該後布とは別部材の襟用のトリコット織布で縫製され、
該トリコット織布には、該前布、該後布の織布とは異なり、細菌の増殖を抑制する作用を付す制菌加工が施されるとともに、消臭作用を付す消臭加工が施され、さらに耐久撥水性を付す耐久撥水加工が施され、
該トリコット織布をテープ状に裁断して該テープ状布地とし、該立ち襟は、該テープ状布地を用いたパイピングによって、該円形開口部の周縁をくるみ縫着され、
該テープ状布地は、該トリコット織布をバイアステープ状に裁断し、バイアス襟として該立ち襟が縫製され、
該立ち襟の円周方向における、一端側に第1面ファスナが配設され、他端側に該第1面ファスナと重合可能な第2面ファスナが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の理容美容用ケープによれば、美容院や理髪店の利用者が、衛生的に且つ快適に着用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態を示す理容美容用ケープの正面図である。
【
図3】(a)は立ち襟部分の拡大正面図、(b)は合わせ部を離した状態の拡大正面図である。
【
図4】立ち襟のテープ状布地の縫着状態を示す部分説明図である。
【
図5】理容美容用ケープの着用状態を示す正面図である。
【
図6】他の実施形態の理容美容用ケープの正面図である。
【
図8】同理容美容用ケープの立ち襟部分の拡大背面図である。
【
図9】立ち襟のテープ状布地の縫着状態を示す部分説明図である。
【
図10】同理容美容用ケープの着用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1のケープはドレスタイプの理容美容用ケープであり、前布1と後布2の両側上部間に袖部3が縫着され、前布1、後布2、袖部3の上部中央に、円形開口部7が形成され、合せ部付きの立ち襟10が、円形開口部7の周縁を、テープ状布地11で被覆して縫着される。
【0021】
この理容美容用ケープは、前布1と後布2の上部に袖部3が縫着され、後布2は縦に二分割されて、後ろ開きのケープとされ、後布2に合せ部が形成されている。前布1、後布2、袖部3の布地は、例えばナイロンタフタ、ポリエステルタフタ、ポリエステルトリコットなどの撥水性を有する布地から形成される。撥水性を有するケープ布地の使用により、水などの液体がケープに付着したときの、染込みなどを防止することができる。
【0022】
また、ナイロンタフタやポリエステルタフタには、生地の表面に凹凸を付ける皺加工を施すことができ、皺加工により生地の表面に凹凸を付け、これによって、カットした髪の毛がケープ表面に密着しにくくし、髪の毛を落とし易くすることができる。
【0023】
また、ケープを洗髪などに使用する場合、前布1、後布2、袖部3には、防水性布を使用することもできる。防水性布には、例えばポリエステルトリコットの表面に薄いポリエチレンフィルムをラミネートしたもの、或いは、表面に合成樹脂層をコーティングした布地を使用することができる。
【0024】
理容美容用ケープは、前布1、後布2、左右の袖部3が、
図1に示すように、縫着して構成され、その上端部中央に、
図3(a)(b)に示す円形開口部7が形成される。その円形開口部7は、後布2の縦方向の分離によって開口可能であり、円形開口部7の周縁をテープ状布地11でくるむようにして、つまりパイピングによって立ち襟10が縫着されている。
【0025】
テープ状布地11には、例えばポリエステル100%の襟用のトリコット織布(トリコット生地)が使用される。さらに、テープ状布地11のトリコット織布は、前布1、後布2、及び袖部3の織布とは異なる製造工程を経て作られている。このテープ状布地11のトリコット織布は、布の製造時、制菌加工剤として例えばピリジン系抗菌剤を、染色機を用いて布の繊維表面に付着させ、制菌加工が施される。このトリコット織布のテープ状布地11は、この制菌加工処理によって、繊維上の細菌の増殖が効果的に抑制される。また、染色機を用いて布の繊維表面に抗菌剤を付着させているため、加工されたトリコット織布のテープ状布地11は、繰り返しの洗濯に対しても、制菌性能を長く保持することができる。
【0026】
さらに、テープ状布地11の生地となる襟用のトリコット織布は、製造時、布に消臭作用を付す消臭加工が施され、さらに耐久撥水性を布に付す耐久撥水加工が施される。布の消臭加工は、例えばパディング加工により実施し、消臭剤を含む処理液を入れた浸漬槽内に、ウエブ(布)を通しながら浸漬させ、その後、ロールを通して余分の液を布から絞り出し、消臭剤を布に均一に含浸させ、乾燥を経て消臭剤が布に確実に付着する。
【0027】
布の耐久撥水加工は、同様に、パディング加工により行い、撥水剤を含む処理液を入れた浸漬槽内に、ウエブ(布)を通しながら浸漬させ、その後、ロールを通して余分の液を布から絞り出しながら、撥水剤を布に均一に含浸させ付着させる。
【0028】
このようなトリコット織布は、テープ状に裁断されてテープ状布地11となり、
図3、
図4に示すように、テープ状布地11を用いたパイピングによって、立ち襟10が、円形開口部7の周縁をくるみ縫着される。また、立ち襟10には、テープ状布地11をパイピングによって円形開口部7の周縁に縫着する際、パイピングされたテープ状布地11の、身頃側縁部12に沿って第1ステッチ14が付され、開放側縁部13に沿って第2ステッチが付される。つまり、パイピングされたテープ状布地11の、身頃側縁部12と開放側縁部13の両縁部に沿ってステッチが付されている。これにより、コシが強く良好な形状保持性を有した立ち襟10がケープの円形開口部7に形成される。
【0029】
このように、
図4に示す如く、立ち襟10は、パイピングによって、円形開口部7の周縁をくるむように、テープ状布を縫着して形成され、立ち襟10のテープ状布は、前布1、後布2、左右の袖部3の上端部を巻き付けて縫着される。
【0030】
縫製された理容美容用ケープは、
図1、
図2に示すように、後開きのケープとして、後布2が縦に二分割され、
図3,4の如く、立ち襟10の後部が開口して形成され、立ち襟10の一方には外側合せ部5が形成され、立ち襟10の他方に内側合せ部4が形成される。
【0031】
さらに、立ち襟10の開口部を合せて閉じるように、
図3(a)(b)に示す如く、立ち襟10の外側合せ部5の内側に第1面ファスナ8が縫着され、立ち襟10の内側合せ部4の外側に、第1面ファスナ8と重合付着する第2面ファスナ9が縫着されている。第1面ファスナ8と第2面ファスナ9は、対をなしており、重合付着することができる。また、図示は省略されているが、後布2の重ね合せ部の両端部にも面ファスナが縫い付けられる。
【0032】
このように構成された理容美容用ケープは、美容院や理髪店等で、利用者のヘアカットなどの際に、利用者に着用して使用される。このケープは、利用者がケープの後布2を両側に開放した状態で、利用者の両腕を後方から両側の袖部3内に挿入して着用される。着用時、ケープの立ち襟10は、
図3(a)(b)のように、その外側合わせ部5の内側に内側合わせ部4の外側に合わせ、第1面ファスナ8を第2面ファスナ9に重ね合わせて止める。さらに、ケープの後ろ側では、後布2の中ごろの重ね合せ部に設けた外側面ファスナと内側面ファスナ(図示せず)を重ね合わせ、ケープの後布2を同様に止める。
【0033】
理容美容用ケープの着用者の首元には、立ち襟10が触れるが、立ち襟10はそれを形成するテープ状布地11が、制菌加工を施したトリコット織布で縫製されているため、着用者の首に、立ち襟10が直接触れても、着用者には衛生的であり、また、柔らかい弾力のある良好な感触を生じさせる。さらに、立ち襟10のテープ状布地11のトリコット織布には、制菌作用が生じて細菌の増殖が効果的に抑制され、美容院或いは理髪店では、理容美容用ケープを繰り返し衛生的に使用することができる。
【0034】
一般に、制菌加工に加え、消臭加工及び耐久撥水加工を施した布地は、製造時に時間や工数がかかり、布地の製造コストがアップしやすい。しかし、立ち襟10のみに限って、制菌加工、消臭加工及び耐久撥水加工を施した布地を使用し、ケープの前布1、後布2、袖部3などは、通常の防水性の布地を使用することができる。これにより、比較的低コストで必要な部分のみに制菌性能等を有した衛生的なケープとすることができる。また、制菌加工のテープ状布地11を立ち襟10に使用することによって、細菌の増殖が抑制されるため、ケープを繰り返し使用した際の臭いの発生を抑え、防臭効果を出すことができる。
【0035】
さらに、立ち襟10のテープ状布地11のトリコット織布には、消臭加工が施されているため、着用者の汗などが立ち襟に付着し、その汗などから臭気が生じた場合、立ち襟10の消臭作用により臭気の発生は抑制される。これにより、美容院や理髪店の利用者には、ケープを快適に着用してもらうことができる。
【0036】
また、着用者の洗髪時に、立ち襟10が濡れた場合、立ち襟10には耐久撥水加工を施したテープ状布地11が使用されるため、立ち襟10への水の吸収は抑制され、利用者は快適にケープを着用することができる。また、立ち襟10のテープ状布地11の撥水加工は、耐久撥水加工であるため、ケープを繰り返し洗濯した場合でも、高い撥水性能を保持することができる。
【0037】
図6~
図10は、他の実施形態の理容美容用ケープを示している。このケープは、
図6、
図7に示すように、袖無しタイプの理容美容用ケープであり、前布21と後布22を、その上縁部で相互に縫着し、一枚布状に形成される。
【0038】
前布21と後布22は、撥水性或いは防水性の布からなり、それらの上部中央に、円形開口部27が形成され、立ち襟23が円形開口部27の周縁を被覆して縫着される。後布22は、前布21の後側の、円形開口部27の両側に、二分割されて縫着され、両側の後布22が着用者の後ろ側で合せられ、止められる。立ち襟23は、円形開口部27の周縁をテープ状布地24でくるむように、パイピングによって前布21及び後布22の上部中央に縫着される。
【0039】
テープ状布地24には、例えばポリエステル100%の襟用のトリコット織布が使用される。テープ状布地24は、トリコット織布をバイアステープ状に裁断し、立ち襟23は、このトリコット織布のバイアステープからバイアス襟として縫製される。さらに、テープ状布地24のトリコット織布は、前布21と後布22の織布とは異なる製造工程を経て製作され、布の製造時、制菌加工剤として例えばピリジン系抗菌剤を、染色機を用いて布の繊維表面に付着させ、制菌加工が施される。
【0040】
トリコット織布のテープ状布地24は、制菌加工処理によって、繊維上の細菌の増殖が効果的に抑制される。また、染色機を用いて布の繊維表面に抗菌剤を付着させているため、加工されたトリコット織布のテープ状布地24は、繰り返しの洗濯に対しても、制菌性能を長く保持することができる。
【0041】
さらに、テープ状布地24の生地となるトリコット織布は、製造時、布に消臭作用を付す消臭加工が施され、さらに耐久撥水性を布に付す耐久撥水加工が施される。布の消臭加工は、例えばパディング加工により実施し、消臭剤を含む処理液を入れた浸漬槽内に、ウエブ(布)を通しながら浸漬させ、その後、ロールを通して余分の液を布から絞り出し、消臭剤を布に均一に含浸させ、乾燥を経て消臭剤が布に確実に付着する。
【0042】
布の耐久撥水加工は、同様に、パディング加工により行い、撥水剤を含む処理液を入れた浸漬槽内に、ウエブ(布)を通しながら浸漬させ、その後、ロールを通して余分の液を布から絞り出しながら、撥水剤を布に均一に含浸させ付着させる。
【0043】
このようなトリコット織布は、バイアステープ状に裁断されてテープ状布地24となり、
図8、
図9に示すように、テープ状布地24を用いたパイピングによって、バイアス襟の立ち襟23が、円形開口部27の周縁をくるみ縫着される。また、立ち襟23には、テープ状布地24をパイピングによって円形開口部27の周縁に縫着する際、パイピングされたテープ状布地24の、身頃側縁部25に沿ってステッチ26が付され、テープ状布地24の開放側縁部は折り曲げただけで、ステッチは入らない。このようなバイアス襟の立ち襟23は、比較的柔らかく、高さの低い立ち襟23としてケープの円形開口部27に形成される。
【0044】
このように、
図9に示す如く、立ち襟23は、パイピングによって、円形開口部27の周縁をくるむように、バイアステープ状のテープ状布地24を縫着して形成され、立ち襟23のテープ状布地24は、前布21、後布22の上端部を包むように縫着される。
【0045】
縫製された理容美容用ケープは、
図8に示すように、後開きのケープとして、後布2が両側に分かれて二分割され、立ち襟23の後部が開口し、立ち襟23の一方が外側合せ部となり、立ち襟23の他方が内側合せ部となる。
【0046】
さらに、立ち襟23の開口部を合せて閉じるように、
図7、
図8に示す如く、立ち襟23の外側合せ部の内側に第1面ファスナ28が縫着され、立ち襟23の内側合せ部の外側に、第1面ファスナ28と重合付着する第2面ファスナ29が縫着される。第1面ファスナ28と第2面ファスナ29は、対をなしており、重合付着する。
【0047】
上記構成の理容美容用ケープは、美容院や理髪店等で、利用者のヘアカット、シャンプーなどの際に、利用者に着用される。利用者にケープを着ける場合、ケープの後布2を両側に開放した状態で、後方から着用者の両側の肩部にケープを被せ、立ち襟23に、着用者の首を入れ、両側の後布2を着用者の後ろ側で閉じ、立ち襟23の第1面ファスナ28を第2面ファスナ29に重ね合わせて止める。
【0048】
理容美容用ケープの着用者の首元には、立ち襟23が触れるが、立ち襟23はそれを形成するテープ状布地24が、制菌加工を施したトリコット織布で縫製されているため、着用者の首に、立ち襟23が直接触れても、着用者には衛生的であり、また、柔らかい弾力のある良好な感触を生じさせる。さらに、立ち襟23のテープ状布地24がバイアステープ状に形成されるので、特に柔らかい良好な感触を生じさせる。また、立ち襟23のテープ状布地24のトリコット織布には、制菌作用が生じており、細菌の増殖が効果的に抑制され、美容院或いは理髪店では、理容美容用ケープを繰り返し衛生的に使用することができる。
【0049】
また、制菌加工に加え、消臭加工及び耐久撥水加工を施した布地は、製造時に時間や工数がかかり、布地の製造コストがアップしやすい。しかるに、本理容美容用ケープは、立ち襟23のみに限って制菌加工等を施した布地を使用し、ケープの前布21、後布22は、通常の防水性の布地を使用している。これにより、比較的低コストで必要な襟部のみに制菌性能等を保持した衛生的なケープを製造することができる。また、制菌加工のテープ状布地24の使用によって、細菌の増殖が抑制されるため、ケープを繰り返し使用した際の臭いの発生を抑え、防臭効果を出すことができる。
【0050】
さらに、立ち襟23のトリコット織布には消臭加工が施されているため、着用者の汗などが立ち襟に付着し、その汗などから臭気が生じた場合、立ち襟23の消臭作用により臭気の発生は抑制され、美容院や理髪店の利用者には、ケープを快適に着用してもらうことができる。
【0051】
また、着用者の洗髪時に、立ち襟23が濡れた場合、立ち襟23には耐久撥水加工を施したテープ状布地24が使用されるため、立ち襟23への水の吸収は抑制され、利用者は快適にケープを着用することができる。また、立ち襟23のテープ状布地24の撥水加工は、耐久撥水加工であるため、ケープを繰り返し洗濯した場合でも、高い撥水性能を保持することができる。
【0052】
一般に、理容美容用ケープを製造するメーカーでは、ケープの襟部を縫製する場合、ケープの身頃を作る布の一部から布をテープ状に切り出し、襟部を縫製している。このため、ケープの襟部に、制菌加工、消臭加工、及び耐久撥水加工を施す場合であっても、ケープ全体の布地に、制菌加工、消臭加工、及び耐久撥水加工を施す必要性が生じ、製造コストが大幅に増大しやすい。
【0053】
しかるに、このような場合、上記構成の立ち襟10,23を共通部品として、襟用のトリコット織布を用いて予め製造しておき、それらを各種ケープの身頃上部の円形開口部に縫着する。これにより、各種デザイン、色、大きさの理容美容用ケープを大量に製造する場合、共通部品として予め縫製された立ち襟10、23を、各ケープの襟部用の円形開口部7,27に縫着するのみで、制菌加工、消臭加工、及び耐久撥水加工を施した衛生的な立ち襟10、23の理容美容用ケープを、比較的低コストで製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 前布
2 後布
3 袖部
4 内側合わせ部
5 外側合わせ部
7 円形開口部
8 第1面ファスナ
9 第2面ファスナ
10 立ち襟
11 テープ状布地
12 身頃側縁部
13 開放側縁部
14 第1ステッチ
15 第2ステッチ
21 前布
22 後布
23 立ち襟
24 テープ状布地
25 身頃側縁部
26 ステッチ
27 円形開口部
28 第1面ファスナ
29 第2面ファスナ