(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】感染対策装置、感染隔離室および感染隔離室設置方法
(51)【国際特許分類】
F24F 9/00 20060101AFI20240905BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240905BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20240905BHJP
【FI】
F24F9/00 G
F24F7/06 C
F24F11/72
F24F9/00 E
(21)【出願番号】P 2021182498
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】510068183
【氏名又は名称】株式会社セオコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】相馬 一貴
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-101730(JP,U)
【文献】特開2020-054791(JP,A)
【文献】特開2010-240282(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1043967(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0331109(US,A1)
【文献】特開2007-003091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
F24F 7/06
F24F 11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病室、治療室、診察室等室に設けられている出入口に
、該出入口に設置されている扉に並ぶように設置される感染対策装置であって、
該感染対策装置は、吸通気ユニットと、送風ユニットとを有し、
該吸通気ユニットは、前記室の内気が吸い込まれる吸気部と、該吸気部から吸い込まれた前記内気が通る通気部とを有し、かつ前記出入口の高さ方向に沿った構造を有し、
さらに、該吸通気ユニットの全体が前記扉よりも前記室の内側に設置され、かつ前記出入口から前記室の内側に向かって前記扉の厚さよりも大きく張り出す張出幅を備えた構造を有し、
該送風ユニットは、前記吸通気ユニットの前記出入口の高さ方向に沿った上端部または下端部に接続され、かつ前記出入口の幅方向に沿った横長構造で前記吸通気ユニットの前記通気部と連通している筐体を有し、該筐体に、前記吸通気ユニットの前記吸気部から吸い込まれた前記内気を濾過するフィルタと、該フィルタによって濾過された清浄空気を前記室の外側に排出させる送風機とが収容されている感染対策装置。
【請求項2】
前記吸通気ユニットは、前記吸気部から前記上端部まで貫通し、前記筐体と連通している貫通孔が前記通気部として形成されている中空構造を有し、かつ前記出入口の幅方向左側または右側のいずれか少なくとも一方に設置されている請求項1記載の感染対策装置。
【請求項3】
前記吸通気ユニットは、前記吸気部と前記通気部とを有し、前記出入口の前記室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、該第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ前記出入口の高さである出入口高に応じた高さ
と、前記吸気部から前記上端部まで貫通し、前記筐体と連通している貫通孔が前記通気部として形成されている中空構造を有し、
かつ前記扉および前記室の壁とは別の部材によって形成され、
前記送風ユニットが前記第1のユニットおよび第2のユニットの上端部に接続された逆U字状ゲート構造を有する請求項1記載の感染対策装置。
【請求項4】
前記吸通気ユニットは、前記吸気部と前記通気部とを有し、前記出入口の前記室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、該第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ前記出入口の高さである出入口高に応じた高さ
と、前記吸気部から前記上端部まで貫通し、前記筐体と連通している貫通孔が前記通気部として形成されている中空構造を有し、
かつ前記扉および前記室の壁とは別の部材によって形成され、
前記送風ユニットが該第1のユニットおよび第2のユニットの上端部に接続された逆U字状ゲート構造を有し、
前記第1のユニットと、前記第2のユニットとは、それぞれの前記吸気部が向かい合わせに
なり、かつ、それぞれの間に前記扉の配置されないスペースが前記張出幅に応じた大きさで形成されるように配置され、
前記室の内側の前記出入口に臨む
前記スペースを形成する領域であって、前記第1のユニット、第2のユニットおよび前記送風ユニットに囲まれた出入口ゾーンが前記室の内側の該出入口ゾーンとは別領域よりも陰圧で、かつ前記室の外側よりも陰圧になった拡張陰圧に設定される請求項1記載の感染対策装置。
【請求項5】
前記送風ユニットは、前記出入口の上端部と前記室の天井との間に配置される高さを有し、かつ該天井と対面する天端面に排気口が形成され、
該排気口は、前記送風機によって送り出された前記清浄空気が通る部分であって、前記筐体内に設けられた清浄通気部と、前記清浄空気を前記室の外部に排出させる清浄排気部とに接続されている請求項1~4のいずれか一項記載の感染対策装置。
【請求項6】
前記室に前記出入口を形成する一対の入口壁が形成され、
該一対の入口壁のうちの前記室の内側から向かって右側に配置される第1の入口壁と、向かって左側に配置される第2の入口壁とにそれぞれ前記吸気部と前記通気部とが形成され、該第1の入口壁および第2の入口壁によって、前記吸通気ユニットが形成されている請求項1記載の感染対策装置。
【請求項7】
病室、治療室、診察室等室に設けられている出入口に
、該出入口に設置されている扉に並ぶように感染対策装置が該室の内側に設置されている感染隔離室であって、
該感染対策装置は、吸通気ユニットと、送風ユニットとを有し、
該吸通気ユニットは、前記室の内気が吸い込まれる吸気部と、該吸気部から吸い込まれた前記内気が通る通気部とを有し、かつ前記出入口の高さ方向に沿った構造を有し、
さらに、該吸通気ユニットの全体が前記扉よりも前記室の内側に設置され、かつ前記出入口から前記室の内側に向かって前記扉の厚さよりも大きく張り出す張出幅を備えた構造を有し、
該送風ユニットは、前記吸通気ユニットの前記出入口の高さ方向に沿った上端部または下端部に接続され、かつ前記出入口の幅方向に沿った横長構造で前記吸通気ユニットの前記通気部と連通している筐体を有し、該筐体に、前記吸通気ユニットの前記吸気部から吸い込まれた前記内気を濾過するフィルタと、該フィルタによって濾過された清浄空気を前記室の外側に排出させる送風機とが収容され、
前記室の内側の前記出入口に臨む領域であって、前記吸通気ユニットおよび前記送風ユニットに囲まれた出入口ゾーンが前記室の内側の該出入口ゾーンとは別領域よりも陰圧で、かつ前記室の外側よりも陰圧になった拡張陰圧に設定されている感染隔離室。
【請求項8】
前記吸通気ユニットは、前記出入口の前記室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、該第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ前記出入口の高さである出入口高に応じた高さ
と、前記吸気部から前記上端部まで貫通し、前記筐体と連通している貫通孔が前記通気部として形成されている中空構造を有し、
かつ前記扉および前記室の壁とは別の部材によって形成され、
前記第1のユニットと、前記第2のユニットとは、それぞれの前記吸気部が向かい合わせになり、かつ、それぞれの間に前記扉の配置されないスペースが前記張出幅に応じた大きさで形成されるように配置され、
前記送風ユニットが該第1のユニットおよび第2のユニットの上端部に接続された逆U字状ゲート構造を有し、
前記出入口ゾーンが前記張出幅に応じた大きさに形成されている請求項7記載の感染隔離室。
【請求項9】
前記室に前記出入口を形成する一対の入口壁が形成され、
該一対の入口壁のうちの前記室の内側から向かって右側に配置される第1の入口壁と、向かって左側に配置される第2の入口壁とにそれぞれ前記吸気部と前記通気部とが形成され、該第1の入口壁および第2の入口壁によって、前記吸通気ユニットが形成されている請求項7記載の感染隔離室。
【請求項10】
感染対策装置
と、病室、治療室、診察室等室を用い
て感染隔離室が設置される感染隔離室設置方法であって、
前記感染対策装置は、前記室に設けられている出入口に、該出入口に設置されている扉に並ぶように設置され、
前記感染対策装置は、吸通気ユニットと、送風ユニットとを有し、
該吸通気ユニットは、前記室の内気が吸い込まれる吸気部と、該吸気部から吸い込まれた前記内気が通る通気部とを有し、かつ前記出入口の高さ方向に沿った構造を有し、
さらに、該吸通気ユニットの全体が前記扉よりも前記室の内側に設置され、かつ前記出入口から前記室の内側に向かって前記扉の厚さよりも大きく張り出す張出幅を備えた構造を有し、
該送風ユニットは、前記吸通気ユニットの前記出入口の高さ方向に沿った上端部に接続され、かつ前記出入口の幅方向に沿った横長構造で前記吸通気ユニットの前記通気部と連通している筐体を有し、該筐体に、前記吸通気ユニットの前記吸気部から吸い込まれた前記内気を濾過するフィルタと、該フィルタによって濾過された清浄空気を前記室の外側に排出させる送風機とが収容され、
前記出入口に沿って
前記室の内側の該出入口の幅方向左側または右側のいずれか少なくとも一方に前記吸通気ユニットが設置され、かつ前記出入口の上側端部に沿って前記送風ユニットが設置されることによって、前記室を用い
て感染隔離室が設置される感染隔離室設置方法。
【請求項11】
前記吸通気ユニットは、前記吸気部と前記通気部とを有し、前記出入口の前記室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、
該第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ前記出入口の高さである出入口高に応じた高さと、前記吸気部から前記上端部まで貫通し、前記筐体と連通している貫通孔が前記通気部として形成されている中空構造を有し、かつ前記扉および前記室の壁とは別の部材によって形成され、
該第1、第2のユニットがそれぞれの前記吸気部が向かい合わせにな
り、かつ、それぞれの間に前記扉の配置されないスペースが前記張出幅に応じた大きさで形成されるように、それぞれ前記出入口の幅方向右側、左側に設置される請求項10記載の感染隔離室設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病室、治療室、診察室、会議室等室の内側に設置され、その病室、治療室、診察室、会議室等室を感染症患者が収容される感染隔離室として使用可能にする感染対策装置、その感染対策装置が設置されている感染隔離室、感染対策装置を用いた感染隔離室設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感染症患者が収容される病室に関する技術が知られていた。この種の病室では、感染症患者が保有している病原菌が室外に流出することを防止するため、病室に隣接する前室が設けられ、室外、前室、病室の順番に気圧が低くなる(陰圧になる)ように気圧が制御されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。なお、以下、本願では、病室と前室とを備えた感染症法の規定に基づき、感染症患者が収容される病室を「感染症病室」ともいう。
【0003】
また、病室の中に他の部分から仕切られた領域が形成され、その領域内の気圧が陰圧または陽圧に切り替え可能な無菌病室に関する技術も知られていた(例えば、特許文献3参照)。さらに、病室として利用される隔離室と、隔離室に隣接する減圧室と、減圧室に隣接する一般室とが設けられ、隔離室と一般室とが等気圧に保たれ、かつ減圧室が隔離室および一般室よりも低気圧に保たれるように、気圧制御を行う技術もあった(特許文献4参照)。そのほか、病室と前室との間に遮断室が配置され、それぞれの室内の気圧が、前室よりも病室が低く、かつ病室よりも遮断室が低い特殊陰圧になるように、保持されている感染症病室に関する技術もあった(特許文献5参照)。
【0004】
一方、感染症病室では、病室や前室の気圧を制御することが必要である。この場合、例えば、特許文献2に開示されているように、差圧調整ダンパが用いられて、病室や前室の気圧が制御されている。また、室圧を制御する技術に関しては、給気バルブ、排気バルブを用いて室内への給気風量や排気風量を制御する技術や、ドアを介して隣接する二室のドア開度を検出して二室を所定圧力に維持する技術もあった(特許文献6、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-24396号公報
【文献】特開2003-50031号公報
【文献】特開2004-159730号公報
【文献】特開2010-240282号公報
【文献】特開2020-054791号公報
【文献】特開2016-161156号公報
【文献】特開2016-169874号公報
【文献】特開2003-185204号公報
【文献】特開2011-234929号公報
【文献】特許第4420922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、従来、感染症病室に関する様々な技術が知られていた。
しかし、いずれの感染症病室においても、病室や前室等の各室の気圧が陰圧に保たれるように、気圧を制御する必要があった。そのため、一般病室や治療室に備えられている空調設備とは別に、給気風量や排気風量を制御する装置や、給気や排気用のバルブ、それらをつなぐ配管設備が必要であった。そのため、従来技術による感染症病室は、一般病室や治療室に比べて設備が大型化されてしまい、設置に多大な時間と費用を要するという課題があった。また、従来技術では、感染症病室を一般病室として使用できても、一般病室を感染症病室として使用することはできないため、設置された後の各室の用途が固定され、柔軟性に乏しいという課題もあった。
【0007】
一方、新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が大流行し、その感染症の患者が急増する場面では、その急増に併せて感染症病室を急遽増やす等して、できるだけ多くの感染症患者に適切な医療が提供されることが求められる。
【0008】
しかし、上記従来技術では、短期間に感染症病室を準備することができないため、急増する感染症患者が感染症病室に入室できずに適切な治療を受けられない、という事態が起こり得た。
【0009】
この点、特許文献8には、循環用ファンと、陰圧保持用ファンとを備えた可搬性の陰圧型空気清浄機と、係る陰圧型空気清浄機が病室内に設置されて係る病室が陰圧に保たれることが開示されている。係る陰圧型空気清浄機はキャスターを備えた可搬式であり、比較的簡易な配管工事によって設置可能である。そのため、係る陰圧型空気清浄機を用いれば、一般病室を比較的短期間で感染症病室に転用できるため、係る陰圧型空気清浄機は特に感染症患者が急増する場面で有用である。
【0010】
しかし、係る従来の陰圧型空気清浄機が設置される病室では、入退室に伴う扉の開閉に伴い、室内が陰圧であるがために、室外から外部の空気(外気)が室内に入り込む事態が避けられない。すると、その外気の進入に伴い、空気中に浮遊している一般の雑菌(一般細菌ともいう)や塵、埃などがその外気とともに病室内部に混入し、病室内の一般の雑菌が増えてしまう。すると、その病室に収容されている感染症患者がその感染症とは別の病原菌に感染するおそれが高くなる。その上、患者の体力が感染症によって衰えていたり、患者が免疫不全を併発しているおそれもあるため、感染症患者は健常者よりも重症化しやすい。
【0011】
一方、特許文献9,10には、簡易に設置可能な感染対策に関する技術が開示されている。
【0012】
しかし、特許文献9,10に開示されている従来技術では、感染症患者の病床を取り囲むように、各病床の周囲に樹脂製の板材やシート等の部材が設置されて隔離室が設けられ、その内部が陰圧化されている。すると、浄化装置等の設備が隔離室ごとに必要とされ、係る設備を患者数の増加に伴い増やさねばならないから、従来技術では、迅速な対応が困難であり、特に患者急増時には対応ができない。
【0013】
また、係る従来技術によって一般病室等室を感染隔離室とする場合、収容される患者一人のためにその室で比較的大きな面積が専有される格好となる。すると、一般病室等室を感染隔離室としたことによって、収容できる患者数を本来収容できる人数よりも減らさざるを得ないから、患者急増時に収容不能な患者が現れる事態が想定される。
【0014】
しかも、医師、看護師等の医療従事者が治療のたびに隔離室の外から樹脂製の板材やシート等を超えて患者一人一人にアクセスしなければならないから、医療行為の効率低下が避けられない。
【0015】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡易迅速かつ低コストで感染隔離室を設けられるうえに、室を本来の用途に加えて感染隔離室として使用可能にするといった室の使用に柔軟性、拡張性を持たせる一方、効率的な医療行為を可能とし、しかも、感染症患者が保有しているウィルスや病原菌が外部に漏れ出る事態を無くすだけでなく、感染症患者が一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを無くすことができる感染対策装置、感染隔離室および感染対策室設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、病室、治療室、診察室等室に設けられている出入口に、その出入口に設置されている扉に並ぶように設置される感染対策装置であって、その感染対策装置は、吸通気ユニットと、送風ユニットとを有し、その吸通気ユニットは、室の内気が吸い込まれる吸気部と、その吸気部から吸い込まれた内気が通る通気部とを有し、かつ出入口の高さ方向に沿った構造を有し、さらに、その吸通気ユニットの全体が扉よりも室の内側に設置され、かつ出入口から室の内側に向かって扉の厚さよりも大きく張り出す張出幅を備えた構造を有し、その送風ユニットは、吸通気ユニットの出入口の高さ方向に沿った上端部または下端部に接続され、かつ出入口の幅方向に沿った横長構造で吸通気ユニットの通気部と連通している筐体を有し、その筐体に、吸通気ユニットの吸気部から吸い込まれた内気を濾過するフィルタと、そのフィルタによって濾過された清浄空気を室の外側に排出させる送風機とが収容されている感染対策装置を特徴とする。
【0017】
上記感染対策装置の場合、吸通気ユニットは、吸気部から上端部まで貫通し、筐体と連通している貫通孔が通気部として形成されている中空構造を有し、かつ出入口の幅方向左側または右側のいずれか少なくとも一方に設置されていることが好ましい。
【0018】
また、吸通気ユニットは、吸気部と通気部とを有し、出入口の室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、その第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ出入口の高さである出入口高に応じた高さと、吸気部から上端部まで貫通し、筐体と連通している貫通孔が通気部として形成されている中空構造を有し、かつ扉および室の壁とは別の部材によって形成され、送風ユニットが第1のユニットおよび第2のユニットの上端部に接続された逆U字状ゲート構造を有するようにすることができる。
【0019】
さらに、吸通気ユニットは、吸気部と通気部とを有し、出入口の室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、その第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ出入口の高さである出入口高に応じた高さと、吸気部から上端部まで貫通し、筐体と連通している貫通孔が通気部として形成されている中空構造を有し、かつ扉および室の壁とは別の部材によって形成され、送風ユニットがその第1のユニットおよび第2のユニットの上端部に接続された逆U字状ゲート構造を有し、第1のユニットと、第2のユニットとは、それぞれの吸気部が向かい合わせになり、かつ、それぞれの間に扉の配置されないスペースが張出幅に応じた大きさで形成されるように配置され、室の内側の出入口に臨むスペースを形成する領域であって、第1のユニット、第2のユニットおよび送風ユニットに囲まれた出入口ゾーンが室の内側の該出入口ゾーンとは別領域よりも陰圧で、かつ室の外側よりも陰圧になった拡張陰圧に設定されるようにすることができる。
【0020】
さらにまた、送風ユニットは、出入口の上端部と室の天井との間に配置される高さを有し、かつその天井と対面する天端面に排気口が形成され、その排気口は、送風機によって送り出された清浄空気が通る部分であって、筐体内に設けられた清浄通気部と、清浄空気を室の外部に排出させる清浄排気部とに接続されているようにすることができる。
【0021】
また、室に出入口を形成する一対の入口壁が形成され、その一対の入口壁のうちの室の内側から向かって右側に配置される第1の入口壁と、向かって左側に配置される第2の入口壁とにそれぞれ吸気部と通気部とが形成され、その第1の入口壁および第2の入口壁によって、吸通気ユニットが形成されているようにすることもできる。
【0022】
そして、本発明は、病室、治療室、診察室等室に設けられている出入口に、その出入口に設置されている扉に並ぶように感染対策装置がその室の内側に設置されている感染隔離室であって、その感染対策装置は、吸通気ユニットと、送風ユニットとを有し、その吸通気ユニットは、室の内気が吸い込まれる吸気部と、その吸気部から吸い込まれた内気が通る通気部とを有し、かつ出入口の高さ方向に沿った構造を有し、さらに、吸通気ユニットの全体が扉よりも室の内側に設置され、かつ出入口から室の内側に向かって扉の厚さよりも大きく張り出す張出幅を備えた構造を有し、その送風ユニットは、吸通気ユニットの出入口の高さ方向に沿った上端部または下端部に接続され、かつ出入口の幅方向に沿った横長構造で吸通気ユニットの通気部と連通している筐体を有し、その筐体に、吸通気ユニットの吸気部から吸い込まれた内気を濾過するフィルタと、そのフィルタによって濾過された清浄空気を室の外側に排出させる送風機とが収容され、室の内側の出入口に臨む領域であって、吸通気ユニットおよび送風ユニットに囲まれた出入口ゾーンが室の内側のその出入口ゾーンとは別領域よりも陰圧で、かつ室の外側よりも陰圧になった拡張陰圧に設定されている感染隔離室を提供する。
【0023】
上記感染隔離室の場合、吸通気ユニットは、出入口の室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、その第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ出入口の高さである出入口高に応じた高さと、吸気部から上端部まで貫通し、筐体と連通している貫通孔が通気部として形成されている中空構造を有し、かつ扉および室の壁とは別の部材によって形成され、第1のユニットと、第2のユニットとは、それぞれの吸気部が向かい合わせになり、かつ、それぞれの間に扉の配置されないスペースが張出幅に応じた大きさで形成されるように配置され、送風ユニットがその第1のユニットおよび第2のユニットの上端部に接続された逆U字状ゲート構造を有し、出入口ゾーンが張出幅に応じた大きさに形成されていることが好ましい。
【0024】
また、上記感染隔離室の場合、室に前記出入口を形成する一対の入口壁が形成され、その一対の入口壁のうちの室の内側から向かって右側に配置される第1の入口壁と、向かって左側に配置される第2の入口壁とにそれぞれ吸気部と通気部とが形成され、その第1の入口壁および第2の入口壁によって、吸通気ユニットが形成されているようにすることができる。
【0025】
さらに、本発明は、感染対策装置と、病室、治療室、診察室等室を用いて感染隔離室が設置される感染隔離室設置方法であって、感染対策装置は、室に設けられている出入口に、その出入口に設置されている扉に並ぶように設置され、感染対策装置は、吸通気ユニットと、送風ユニットとを有し、その吸通気ユニットは、室の内気が吸い込まれる吸気部と、その吸気部から吸い込まれた内気が通る通気部とを有し、かつ出入口の高さ方向に沿った構造を有し、さらに、その吸通気ユニットの全体が扉よりも室の内側に設置され、かつ出入口から室の内側に向かって扉の厚さよりも大きく張り出す張出幅を備えた構造を有し、その送風ユニットは、吸通気ユニットの出入口の高さ方向に沿った上端部に接続され、かつ出入口の幅方向に沿った横長構造で吸通気ユニットの通気部と連通している筐体を有し、その筐体に、吸通気ユニットの吸気部から吸い込まれた内気を濾過するフィルタと、そのフィルタによって濾過された清浄空気を室の外側に排出させる送風機とが収容され、出入口に沿って室の内側のその出入口の幅方向左側または右側のいずれか少なくとも一方に吸通気ユニットが設置され、かつ出入口の上側端部に沿って送風ユニットが設置されることによって、室を用いて感染隔離室が設置される感染隔離室設置方法を提供する。
【0026】
上記感染隔離室設置方法の場合、吸通気ユニットは、吸気部と通気部とを有し、出入口の室の内側から向かって右側に配置される第1のユニットと、向かって左側に配置される第2のユニットとを有し、その第1のユニットおよび第2のユニットは、それぞれ出入口の高さである出入口高に応じた高さと、吸気部から上端部まで貫通し、筐体と連通している貫通孔が通気部として形成されている中空構造を有し、かつ扉および室の壁とは別の部材によって形成され、その第1、第2のユニットがそれぞれの吸気部が向かい合わせになり、かつ、それぞれの間に扉の配置されないスペースが張出幅に応じた大きさで形成されるように、それぞれ出入口の幅方向右側、左側に設置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上詳述したように、本発明によれば、簡易迅速かつ低コストで感染隔離室を設けられるうえに、室を本来の用途に加えて感染隔離室として使用可能にするといった室の使用に柔軟性、拡張性を持たせる一方、効率的な医療行為を可能とし、しかも、感染症患者が保有しているウィルスや病原菌が外部に漏れ出る事態を無くすだけでなく、感染症患者が一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを無くすことができる感染対策装置、感染隔離室および感染対策室設置方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態に係る感染対策装置の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る感染対策装置の第2のユニットの右側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る感染対策装置が設置されている感染隔離室の要部を示した斜視図である。
【
図5】感染隔離室の出入口および感染対策装置を感染隔離室の室内から見た場合の要部を示した正面図である。
【
図6】送風ユニットの筐体の要部を示した平面図である。
【
図7】送風ユニットの筐体およびその内部構造の要部を示した正面図である。
【
図8】送風ユニットの筐体の要部を示した底面図である。
【
図9】送風ユニットの筐体の要部を示した右側面図である。
【
図10】感染隔離室およびその隣接する室を天井を省略して示した平面図である。
【
図11】(a)は扉が閉鎖されている状態の感染対策装置および感染隔離室の動作内容を模式的に示した平面図、(b)は扉が全面開放されている状態の感染対策装置および感染隔離室の動作内容を模式的に示した平面図である。
【
図12】感染隔離室の要部を模式的に示した正面図である。
【
図13】変形例1に係る感染隔離室の要部を模式的に示した平面図である。
【
図14】変形例2に係る感染対策装置を室内からみた斜視図である。
【
図15】(a)は
図14の15a-15a線断面図、(b)は
図14の15b-15b線断面図である。
【
図16】変形例3に係る感染対策装置を室内からみた正面図である。
【
図17】(a)は変形例4にかかる感染対策装置が設置されている診察室および感染隔離室を示す平面図、(b)は診察室の内側からみた感染対策装置の要部を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(感染対策装置の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る感染対策装置1について、
図1~
図10を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る感染対策装置1の正面図である。
図2は、感染対策装置1の第2のユニット21の右側面図、
図3は
図2の3-3線断面図である。
図4は感染対策装置1が設置されている感染隔離室100の要部を示した斜視図、
図5は感染隔離室100の出入口105および感染対策装置1を感染隔離室100の室内から見た場合の要部を示した正面図である。
図6~
図9は、送風ユニット30の筐体31またはその内部構造の要部を示した図で、
図6は平面図、
図7は正面図、
図8は底面図、
図9は右側面図である。
図10は、感染隔離室100およびその隣接する室を天井を省略して示した平面図である。
【0030】
本発明の実施の形態に係る感染対策装置1は、病室、治療室、診察室等室に設けられている出入口の外周に沿ってその室の内側に設置される。
図4に詳しく示すように、図示した感染対策装置1は、室の一例としての病室99の内側に設置されている。
図5にも示すように、病室99には出入口105が設けられており、その出入口105の外周に沿って(図示の場合は、出入口105をその左右両側と上側の三方向から出入口105を狭めることなく取り囲むように)感染対策装置1が設置されている。本実施の形態では、感染対策装置1が病室99に設置されることによって、病室99を用いた感染隔離室100が設置されている。
【0031】
そして、
図4、
図10に示すように、病室99は正面壁101,横壁102a,102b,102c、床103および天井104に囲まれた閉鎖的な空間である。病室99は正面壁101に出入口105が設けられ、その出入口105にスライド式の扉(引戸)106が配置されている。感染対策装置1は、病室99のその出入口105を取り囲むように設置されている。病室99は、すでに設置済であって、通常は図示しない病床が配置されているが、その既存の病室99に感染対策装置1が後付けで設置されている。
【0032】
図1に示すように、感染対策装置1は、吸通気ユニット10と、送風ユニット30とを有している。吸通気ユニット10は、後述する第1のユニット11および第2のユニット21を有し、そのそれぞれの上端部14,24(出入口105の高さ方向に沿った上側の端部)に送風ユニット30が接続されている。感染対策装置1は、病室99の内側からみた正面視で、アルファベットの"U"が上下逆さまになった概ね逆U字状を示すゲート型(門型)構造(本実施の形態では、「逆U字状ゲート構造」ともいう)を有している。
図5に示すように、吸通気ユニット10と、送風ユニット30とが接続されている部分内側の角部29、29が出入口105の内側の上角部105aと一致して、両者にずれが生じないように(ずれが生じると、出入口105を狭めたり、病室99の室内スペースを狭めるおそれがあるため)感染対策装置1が設置されることが好ましい。上角部105aは、出入口105の上側端部105bと側部105cとが交差する部分である。角部29は後述する筐体31の底面37と、対向面11a、21aとが交差する部分である。
【0033】
吸通気ユニット10は、出入口105の病室99の内側から向かって右側に配置される第1のユニット11と、向かって左側に配置される第2のユニット21とを有している。第1のユニット11および第2のユニット21は、例えば、金属または樹脂製であり、共通する構造を有している。すなわち、第1のユニット11および第2のユニット21は、ともに、出入口105の高さ方向に沿った縦長構造を有している。また、
図4,
図5に示すように、第1のユニット11および第2のユニット21は、出入口105の高さである出入口高105hに応じた高さ11hと、出入口105から病室99の内側に向かって張り出す張出幅11dとを有している。張出幅11dは、人が出入口105を通って病室99の内側に入るときの歩幅(例えば、成人男性で概ね70cm程度)と同程度か、それよりも小さい大きさ(例えば、60cm程度)とすることが好ましい。
【0034】
また、第1のユニット11および第2のユニット21は、横幅11eを有している。この横幅11eは、張出幅11dよりも小さい大きさである。
図1にも示すように、第1のユニット11および第2のユニット21は、床103に沿った方向の断面が矩形状であり(
図3参照)、かつ病室99の内側からみた正面視で薄型の板状構造を有している。
【0035】
さらに、第1のユニット11および第2のユニット21は、それぞれ吸気部12,22を有し、内側が中空となった中空構造を有している。
図3に示すように、第2のユニット21については、貫通孔23が本発明に係る通気部として形成されている。貫通孔23は、吸気部22から上端部24まで貫通し、送風ユニット30の筐体31と連通している。また、貫通孔23は、第2のユニット21の断面形状と相似(寸法が小さい)の断面矩形状に形成されている。断面矩形状の第1のユニット11も、第2のユニット21と共通する中空構造を有している。第1のユニット11は貫通孔13が通気部として形成されている。その貫通孔13が吸気部12から上端部14まで貫通し、筐体31と連通していて、貫通孔23と同様の断面矩形状に形成されている。
【0036】
吸気部12,22は、病室99の内気が吸い込まれる部分である。吸気部12,22は、
図1、
図4に示すように、それぞれ第1、第2のユニット11、21の互いに向かい合った対向面11a,21aに形成されている。吸気部12,22は、互いに向かい合わせになるように(床103からの高さおよび正面壁101からの奥行が等しくなる位置に)形成されている。吸気部12,22には、それぞれの表面にプレフィルタ12a,22aが装着されている(吸気部22については
図2参照)。
【0037】
図6~
図9に詳しく示すように、送風ユニット30は、筐体31を有している。筐体31は、例えば、金属または樹脂製であり、
図1に示すように、出入口105の幅方向に沿った横長構造を有する箱状の部材である。筐体31および後述する排気口39を含む部分が、出入口105の上側端部105bと、病室99の天井104との間に配置される高さを有している(
図5参照)。筐体31の天井104と対面する天端面36に排気口39が形成されている(
図6参照)。
【0038】
筐体31は、第1のユニット11の上端部14および第2のユニット21の上端部24に接続されている。筐体31は、幅方向両側の側面31a,31bと、天端面36および底面37を有し、その内側に後述するHEPAフィルタ32と、送風機33が収容されている。その底面37が上端部14,24に接続されている。
【0039】
また、
図6~
図9に示すように、筐体31の幅方向両側の側面31a,31bにそれぞれ吸気口38a,38bが形成されている。
図1に示すように、筐体31には、その側面31a,31bを覆うように、それぞれカバー部材35a,35bが装着されている。そして、カバー部材35a,35bは、それぞれ第1のユニット11、第2のユニット21側の下端部がそれぞれ上端部14,24に接続されている。その下端部は、第1のユニット11および第2のユニット21の上端部14,24に応じた外形寸法を有し、その内側にそれぞれ貫通孔13,23に対応した開口部が形成されている。
【0040】
カバー部材35a,35bの装着によって、カバー部材35a,35bで囲まれる閉鎖スペース35c、35dが筐体31の幅方向両側に確保されている。その閉鎖スペース35c、35dにそれぞれ吸気口38a,38bが配置されている。そして、貫通孔13,23がそれぞれ上端部14,24と、カバー部材35a,35bの下端部の開口部を介してその閉鎖スペース35c、35dに接続されており、これによって、閉鎖スペース35c、35dが通路となって、貫通孔13,23がそれぞれ筐体31(吸気口38a,38b)と連通している。底面37は閉鎖面であり、天端面36は排気口39を除いた閉鎖面である。
【0041】
HEPAフィルタ32は、筐体31の内側に取り込まれた空気を濾過する高性能フィルタである。筐体31には、病室99の内気が取り込まれる。その内気は、第1のユニット11、第2のユニット21の吸気部12,22から吸い込まれて、貫通孔13,23を通って上端部14,24に到達し、そこから閉鎖スペース35c、35dを通って吸気口38a,38bから筐体31の中に取り込まれる。送風機33は、HEPAフィルタ32によって濾過された清浄空気caを病室99の外側に排出させる装置である。本実施の形態では、送風機33として、両吸込みシロッコファン(多翼送風機)が用いられている。
【0042】
筐体31の内部には通気部34が設けられている。通気部34は送風機33によって送り出される前の清浄空気caが通る第1の清浄通気部34aと、送風機33によって送り出された清浄空気caが通る第2の清浄通気部34bと、HEPAフィルタ32によって濾過される前の内気が通る内気通路34cとを有している。内気通路34cが吸気口38a,38bと、HEPAフィルタ32とに接続されていて、吸気口38a,38bから取り込まれた内気をHEPAフィルタ32に導入し得る構造を有している。第1の清浄通気部34aは、HEPAフィルタ32と、送風機33とに接続されている。第2の清浄通気部34bは、送風機33と、排気口39に接続されている。
【0043】
そして、
図10に示すように、送風ユニット30の排気口39には、清浄排気部40が接続されている。清浄排気部40は、室外導出部40aと、排気ダクト40bとを有している。室外導出部40aは、排気口39と、排気ダクト40bとに接続され、排気口39から排出される清浄空気caを天井104の裏側の排気ダクト40bに導いて病室99の外部に排出させる。排気ダクト40bは、天井104の裏側に設置されている管状部材で、室外導出部40aと、横壁102cとに接続されている。清浄排気部40は排気口39から排出される清浄空気caを天井104の裏側に導いたうえで、横壁102cから病室99の外側(図示しない廊下など)に排出させる。
【0044】
さらに、
図12に示すように、病室99には、天井104の埋め込み型の空気調和機70が設置されている。空気調和機70の吹出口71が天井104に設けられている。空気調和機70は、内気を循環させながら内気の温度および/または湿度の調整を行い、その調整後の内気afを吹出口71から病室99の室内に吹き降ろす。
【0045】
(感染対策装置1の動作内容)
以上のような構成を有する感染対策装置1は、図示しないスイッチが投入される(オンにされる)と動作を開始する。動作開始後、送風機33が作動して、空気の吸い込み、および排出を行う。すると、送風機33が作動することに伴い、送風ユニット30において、吸気口38a,38bから空気が取り込まれる。吸気口38a,38bは、カバー部材35a,35bで囲まれる閉鎖スペース35c、35dに納められ、その閉鎖スペース35c、35dに第1のユニット11および第2のユニット21の貫通孔13,23が接続されているから、貫通孔13,23の内部の空気が吸気口38a,38bから筐体31の中に取り込まれ、続いて新たな空気が貫通孔13,23から閉鎖スペース35c、35dに取り込まれる。この動作と並行して、吸気部12,22から病室99の内気の吸い込みが行われる。その内気が吸気部12,22から吸い込まれる際、内気がプレフィルタ12a,22aを通過するので、内気に含まれる塵や埃等の浮遊物がプレフィルタ12a,22aによって除去される。
【0046】
病室99の内気は、筐体31の中に取り込まれたあと、内気通路34cを通ってHEPAフィルタ32に導入される。それから、その内気がHEPAフィルタ32で濾過されると、清浄空気caとなって第1の清浄通気部34aを通る。また、清浄空気caは、送風機33による送風パワーによって押し出されたあと第2の清浄通気部34bを通り、排気口39から排出される。さらに、清浄空気caは、室外導出部40aと、排気ダクト40bを通って横壁102cから病室99の外側に排出される。
【0047】
以上のような感染対策装置1の動作によって、病室99の内側の出入口ゾーン108で内気の吸い込みが行われる。ここで、
図11(a)、
図11(b)に示すように、出入口ゾーン108は、病室99の内側の出入口105に臨む領域であって、第1、第2のユニット11,21および送風ユニット30に囲まれた領域である。
図11(a)、
図11(b)において、ドットが付された部分が出入口ゾーン108に相当する。
【0048】
感染対策装置1の動作が継続していると、出入口ゾーン108における内気の吸い込みが継続して行われる。そのため、
図11(a)に示すように、病室99(感染隔離室100)において、扉106が閉鎖されている状態では、出入口ゾーン108が病室99の内側のその他の領域(
図11(a)、
図11(b)の斜線が付されている部分)よりも気圧が低い陰圧の状態となる。
【0049】
この場合、病室99では、感染対策装置1と並行して、空気調和機70が作動している。そのため、
図12に示すように、空気調和機70の動作による内気afの吹き降ろしがあるが、それによる内気の気圧の変動はないし、内気afの吹き降ろしによる内気の補充があっても、出入口ゾーン108における内気efの吸い込み(送風機33の動作による内気の排出)の方が多くなるように、送風機33の風量等が設定されている。好ましくは、病室99に図示しない差圧計を設置し、その計測結果にしたがい送風機33の風量調節を行ってもよいし、係る風量調節を行う制御手段が設けられてもよい。すると、感染対策装置1の動作が継続していることによって、病室99の内側からみて、出入口ゾーン108が病室99の内側のその他の領域よりも陰圧になった状態が継続する。
【0050】
一方、扉106が開放されたときは、
図11(b)に示すように、それに伴い、病室99の外側から、主に扉106外側の周辺領域109(
図11(b)の網目が付された部分)の外気gfが扉106を通って病室99の内部に入り込む。
【0051】
しかしながら、感染対策装置1によって、扉106の内側に、陰圧になった出入口ゾーン108があり、その出入口ゾーン108では、吸気部12,22における内気efの吸い込みが継続している。そのため、入り込んだ外気gfは、出入口105を通った後に第1、第2のユニット11,21(吸気部12,22)から吸い込まれてしまい、出入口ゾーン108よりも、病室99の内側には入り込むことができない。そのため、感染隔離室100では、病室99の外側からみても、出入口ゾーン108が陰圧になった状態が得られる。
【0052】
したがって、病室99に感染対策装置1が設置されていることによって、出入口ゾーン108が病室99の内側の出入口ゾーン108とは別領域(
図11(a)、
図11(b)の斜線が付されている部分)よりも陰圧であり、かつ病室99の外側(特に、外側の周辺領域109で、
図11(b)の網目が付された部分)よりも陰圧になった状態が形成される。このように、感染対策装置1によって、病室99を用いた感染隔離室100が設置される。その感染隔離室100では、出入口ゾーン108に形成されている陰圧が病室99の出入口ゾーン108以外の領域よりも陰圧で、かつ病室99の外側よりも陰圧であり、陰圧であることの比較対象となる領域が従来技術よりも拡張されている。そのため、このような感染隔離室100における陰圧を本実施の形態では、「拡張陰圧」ともいう。感染隔離室100では、感染対策装置1が病室99に設置されていることによって、拡張陰圧に設定された出入口ゾーン108がその病室99の中に形成されている。
【0053】
(感染対策装置1の作用効果)
以上のように、本実施の形態では、病室99を用いた感染隔離室100が設置されている。感染隔離室100が設置されるにあたって、感染対策装置1が用いられている。前述したように、その感染対策装置1は、出入口105の外周に沿って病室99の内側に設置されている。感染対策装置1は、吸通気ユニット10と、送風ユニット30とを主体とした逆U字状ゲート構造を有しており、その感染対策装置1が設置されることで、感染隔離室100の設置が完了する。そのため、感染隔離室100が設置されるときは、従来技術に係る感染症病室が設置されるための設備に比べて、設備全体の大きさや部品数が少ない。したがって、感染隔離室100では、設置に要する時間も費用も大幅に削減することができる。
【0054】
すると、感染対策装置1が用いられることによって、感染症患者を収容するための感染隔離室を短時間で設置することができる。そのため、感染症患者が急増し、その急増した感染症患者を一人でも多く収容するための臨時医療施設が求められる場面でも、病室99を用いて感染隔離室100を設置することによる迅速な対応が可能となる。これによって、感染症患者が急増するときにも、感染症患者が医療にアクセスできなくなって適切な治療が受けられないといった事態を防止できる。
【0055】
また、病室99のような室に感染対策装置1が設置された場合、その病室99で感染症患者を収容する必要がないときは、その動作(送風ユニット30の動作)を停止しておくことができる。こうすると、病室99は、平常時は感染症とは別の患者を収容する本来の病室として用いることができる。その一方、感染症患者が急増する場合には、感染対策装置1を作動させることで、病室99の出入口ゾーン108が拡張陰圧に設定され、すぐさま、病室99を感染隔離室100として使用できる。
【0056】
つまり、感染対策装置1が設置されるときは、病室99のような室をそのもの本来の用途で使用することはもちろんのこと、感染隔離室100として使用することも可能であるから、感染対策装置1によって、室の用途を拡大でき、室の使用に柔軟性、拡張性を持たせることができる。また、それらの用途の切り替えは、感染対策装置1を作動させるかどうかで実行できるから簡便であるし、病室から感染隔離室への転用またはその逆も簡易迅速に行える。
【0057】
また、感染対策装置1は、出入口105の外周に沿って設置される。感染対策装置1の第1のユニット11および第2のユニット21が張出幅11dを有し、その大きさで病室99の内側に張り出しているが、張出幅11dが、人が出入口105を通って病室99の内側に入るときの歩幅と同程度か、それよりも小さい大きさであり、出入口105を通って人や物(例えば、病床など)が入り込む際に要する進入幅を感染対策装置1が超えない大きさになっている。したがって、感染対策装置1が病室99等の室の中に設置されていても、出入口105を通って人や物が入る場合も出る場合にも感染対策装置1はほとんど邪魔にならない。感染対策装置1が設置されていても、出入口105を通じた人や物の出入りには影響がないから、その室の通常の用途での使用を妨げることもない。
【0058】
しかも、病室99の内側に配置される第1のユニット11および第2のユニット12それぞれの正面視の幅11eが張出幅11dよりも狭いので、感染対策装置1が病室99の室内スペースに占める大きさはあまり大きくはならない。そのため、感染対策装置1が設置されていても、その室本来のスペースを有効活用できる。すると、感染症患者が急増してできるだけ多くの感染症患者を収容する必要がある場合にも、その室本来のスペースが有効に活用されることによって、最大限の人数で患者を収容できる。
【0059】
さらに、感染対策装置1が一台設置されることで、その室全体が感染隔離室100となるから、前述した特許文献9,10に開示されている従来技術のように、病床ごとに隔離スペースが設置される場合に比べて遥かに効率的な医療提供が可能となる。そのうえ、病室99に一台の感染対策装置1を設置すれば感染隔離室100が得られるので、この点でも、感染隔離室100の設置にかかる費用および時間を大幅に削減できる。
【0060】
そして、感染対策装置1が一台設置されることで、出入口ゾーン108が拡張陰圧に設定されている。すると、病室99の内気が出入口ゾーン108で吸引されてしまい、外部に漏れ出すことがなくなる。そのため、病室99に感染症患者が収容されていても、その患者が保有するウィルスや病原菌が空気中を浮遊して、病室99の外に出ることがなくなる。しかも、病室99の内側(出入口ゾーン108)と、その外側の関係でみると、出入口ゾーン108が病室99の外側よりも陰圧になっているから、外側の空気(外気)は、病室99に入った途端、出入口ゾーン108で吸引される。そのため、その外気に含まれている一般細菌が病室99の内側において、出入口ゾーン108よりも内側に入り込むこともなくなる。したがって、感染対策装置1が設置されることで、感染症患者が保有しているウィルスや病原菌が外部に漏れ出る事態を無くすだけでなく、その感染症患者が一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを無くすこともできる。
【0061】
(変形例1)
図13は、変形例1に係る感染隔離室180を示す平面図である。感染隔離室180は、感染対策装置1が会議室179に設置されることによって設置されたもので、感染症患者を収容する感染隔離を目的とした臨時医療施設として使用される。
【0062】
会議室179は、横壁160,161,162,163と、床164および図示しない天井によって囲まれた閉鎖的な空間である。各横壁160,161,162,163には、それぞれ出入口165a,166a,167a,168aが設けられ、そのそれぞれに開閉式の扉165b,166b,167b,168bが配置されている。そのすべての出入口165a,166a,167a,168aの外周に沿って、そのそれぞれの内側に前述した感染対策装置1が設置され、全部で四台の感染対策装置1が後付けされている。
【0063】
感染隔離室180では、すべての出入口165a,166a,167a,168aの外周に沿って感染対策装置1が設置されており、その各出入口165a,166a,167a,168aの出入口ゾーン160a,161a,162a,163aが感染隔離室100と同様の拡張陰圧に設定されている。そのため、出入口ゾーン160a,161a,162a,163aが、感染隔離室180の内側の出入口ゾーン160a,161a,162a,163aとは別領域よりも陰圧であり、かつ感染隔離室180の外側よりも陰圧になった状態が形成される。
【0064】
会議室179に感染対策装置1が設置されていることによって、会議室179を用いた感染隔離室180が設置されている。その感染隔離室180はすべての出入口165a,166a,167a,168aの外周に沿って感染対策装置1が設置されているから、人や物の出入りがどの出入口165a,166a,167a,168aを介して(どの扉165b,166b,167b,168bを用いて)行われようが、会議室179の外気が出入口ゾーン160a,161a,162a,163aよりも内側に入り込むことがないし、内気が会議室179の外部に漏れ出すこともない。そのため、外気に含まれている一般細菌が会議室179の内側において、出入口ゾーン160a,161a,162a,163aよりも内側に入り込むことがないし、会議室179に感染症患者が収容されても、その患者が保有するウィルス、病原菌が空気中を浮遊して、会議室179の外に出ることもない。
【0065】
会議室179は、通常、例えば、デスクや椅子が並べられており、それらを用いた会議に使用される。また、設置済みの感染対策装置1を作動させれば、出入口ゾーン160a,161a,162a,163aが拡張陰圧に設定されるので、会議室179をすぐさま感染隔離室180に転用して、感染隔離を目的とした臨時医療施設として使用することができる。その感染隔離室180は、感染症患者が急増し、できるだけ多くの感染症患者を収容する必要が生じた場合に迅速な対応(患者の受け入れ)が可能である。会議室179は、感染対策装置1が設置されることによって、会議室としての本来の用途で使用することはもちろん、感染隔離室として使用することも可能であるから、用途が拡大され、室の使用に柔軟性、拡張性を持たせることができる。その他、会議室179(感染隔離室180)は、病室99(感染隔離室100)と同様の作用効果を奏する。
【0066】
なお、図示の会議室179では、すべての出入口165a,166a,167a,168aに感染対策装置1が設置されているが、すべてではなく、一部(例えば、出入口165a,166aにのみ)に感染対策装置1が設置され、ほかの出入口167a,168aには感染対策装置1が設置されなくてもよい。感染対策装置1が設置されない出入口167a,168aでは、扉167b,168bが閉鎖されてそれを通じた入退室が不可とされることで、外気の進入をなくし、感染隔離室とすることができる。
【0067】
(変形例2)
図14は、変形例2にかかる感染対策装置201を示す斜視図である。感染対策装置201は、前述した感染対策装置1と比べて、吸通気ユニット10の代わりに吸通気ユニット10Aを有する点、送風ユニット30が吸通気ユニット10Aの下端部に接続され、床103に組み込まれている点、吸通気ユニット10Aの上端部に連結部材202が接続されている点で相違している。
【0068】
吸通気ユニット10Aは吸通気ユニット10と比較して、第1のユニット11および第2のユニット21の代わりに第1のユニット11Aおよび第2のユニット21Aを有する点で相違している。
【0069】
第1のユニット11Aおよび第2のユニット21Aは第1のユニット11および第2のユニット21と比較して、貫通孔13,23と長さの異なる(断面形状は共通)貫通孔13A,23Aが形成されている点で相違している。前述した貫通孔13,23は、吸気部12,22から上端部14,24まで貫通しており、第1のユニット11および第2のユニット21の高さ方向ほぼ全体に形成されていた。
【0070】
これに対し、貫通孔13A,23Aは、吸気部12,22から下端部14A,24Aまで貫通している。送風ユニット30が床103に組み込まれて筐体31が床103の一部となり(または床103に開閉式の図示しないメンテナンス用の扉が設けられ、それよりも下側に筐体31が配置されてもよい)、その送風ユニット30の筐体31に第1のユニット11Aおよび第2のユニット21Aの下端部14A,24Aが接続されている。そのため、貫通孔13A,23Aは、吸気部12,22から筐体31までの(貫通孔13,23よりも)短い区間に形成されているので、貫通孔13,23に比べて長さは短いが、貫通孔13,23と同様に筐体31と連通している。
【0071】
第1のユニット11Aおよび第2のユニット21Aは、吸気部12,22よりも上側には、貫通孔が形成されていないので、吸気部12,22よりも上側が中実状に形成されている。
図15(a)に示すように、吸気部12,22から下側(床103側)には貫通孔13A,23Aが形成される一方、
図15(b)に示すように、吸気部12,22よりも上側は中身の詰まった中実状に形成されている。
【0072】
連結部材202は第1のユニット11Aおよび第2のユニット21Aの上端部に接続され、その両者を連結一体化する部材である。第1のユニット11Aおよび第2のユニット21Aが連結部材202によって連結一体化されていることによって、感染対策装置201も、感染対策装置1と同様の逆U字状ゲート構造を有している。
【0073】
感染対策装置201の送風ユニット30は、床103に組み込まれている点で感染対策装置1の送風ユニット30とは異なるが、動作内容は共通である。そのため、感染対策装置201が室に設置されたときは、その室に感染対策装置1が設置された場合と同様の作用効果を奏する。特に、感染対策装置201の場合、送風ユニット30が床103に組み込まれていることによって、連結部材202の上側のスペースに余裕ができる。そのため、感染対策装置201は特に天井の低い室に設置するうえで好ましい。また、感染対策装置201は、既存の室に後付けで設置することもできるが、送風ユニット30が床103に組み込まれる関係で、後付けで設置されるよりも、室が新規に設置される場合や室の建て替えなどが行われる際に、そのための工事で設置されることが好ましい。
【0074】
(変形例3)
図16は、変形例3にかかる感染対策装置211を感染隔離室209(治療室199)の室内から見た場合の要部を示した正面図である。感染対策装置211は、治療室199の出入口105Aの外周に沿って、治療室199の内側に設置されている。感染対策装置211が治療室199に設置されていることによって、治療室199を用いた感染隔離室209が設置されている。
【0075】
感染対策装置211は、前述した感染対策装置1と比べて、吸通気ユニット10の代わりに吸通気ユニット10Bを有する点、送風ユニット30が天井104の上に埋め込まれている点で相違している。吸通気ユニット10Bは、吸通気ユニット10と比べて、第2のユニット21を有する点では一致しているが、第1のユニット11の代わりに第1のユニット11Xを有する点で相違している。前述した第1のユニット11は横壁とは別部材であったが、第1のユニット11Xは治療室199の横壁122に組み込まれており、横壁122と一体化されている。横壁122に吸気部22と、貫通孔23が形成されている。
【0076】
感染対策装置211の送風ユニット30は、天井104の上に埋め込まれている点で感染対策装置1の送風ユニット30とは異なるが、その他の点では一致している。感染対策装置211が治療室199に設置されることによって、治療室199が感染隔離室209として設置される。そのため、治療室199が通常は感染症患者とは別の患者の治療に用いられるところ、感染対策装置211が設置されていることですぐさま感染隔離室209に転用して、感染隔離を目的とした臨時医療施設として使用できる。
【0077】
感染隔離室209も、出入口105Aに臨む出入口ゾーンが拡張陰圧に設定されるため、外気がその出入口ゾーンよりも内側に入り込むことがないし、内気が感染隔離室209の外部に漏れ出すこともない。そのため、感染隔離室209に感染症患者が収容されても、その患者が保有するウィルスや病原菌が空気中を浮遊して、感染隔離室209の外に出ることがないし、外気に含まれている一般細菌が感染隔離室209の内側において、出入口ゾーンよりも内側に入り込むことがない。そのため、治療室199に感染対策装置211が設置される場合も、感染対策装置1が設置される場合と同様の作用効果を奏する。
【0078】
特に、感染対策装置211の場合、送風ユニット30が天井104の上に埋め込まれていることによって、送風ユニット30が天井104の下に配置されることがなくなり、治療室199の室内空間に余裕を持たせることができる。そのため、感染対策装置211は、特に天井の低い室に設置されることが好ましい。また、第1のユニット11Xが横壁122に組み込まれて一体化されているため、第1のユニット11のようなその横壁122から張り出す部材がなくなり、感染対策装置211の設置に要するスペースが、感染対策装置1が設置される場合よりも小さくなる。さらに、送風ユニット30が天井104の上に埋め込まれて、さらに第1のユニット11Xが横壁122に組み込まれている関係で、感染対策装置211は、既存の室に後付けで設置するよりも、室が新規に設置される場合や室の建て替えなどが行われる際に、そのための工事で設置されることが好ましい。
【0079】
(変形例4)
図17(a)は、変形例4に係る感染隔離室300を示す平面図である。
図17(b)は診察室299の内側からみた感染対策装置251の要部を示した正面図である。感染隔離室300は、感染対策装置251が診察室299に設置されることによって設置されたもので、感染症患者を収容する感染隔離を目的とした臨時医療施設として使用される。
【0080】
前述した病室99は、出入口105と正面壁101の大きさとが異なり、前者の大きさよりも後者の大きさが大きく形成されていた。そのため、後付けタイプの感染対策装置1が病室99の内側から、出入口105を取り囲むように設置されている。
【0081】
一方、診察室299は、
図17(a)に示すように、正面壁240,横壁241,242,243、床245と、図示しない天井とを有する閉鎖的な空間である。診察室299では、横壁241よりも横壁243が小さく、それらの大きさの相違に応じた大きさで正面壁240から外側に張り出すように、第1の入口壁239aが形成されている。その第1の入口壁239aと、これと同じ寸法を備えた向かい側の第2の入口壁239b(横壁241の一部)とが一対になっていて、ともに図示しない天井につながっている。そのそれぞれに吸気部12,22と、断面矩形状の貫通孔13,23が形成されている。第1、第2の入口壁239a、239bは同じ寸法を有し、かつ対向するように設置されていて、そのそれぞれによって、吸通気ユニット201が形成されている(
図17(a)には図示せず、
図17(b)参照)。
【0082】
診察室299では、第1の入口壁239aと、第2の入口壁239b(および図示しない天井)とによって出入口246が形成されており、その出入口246に開閉式の扉247が設けられている。また、送風ユニット30は、図示しない天井の裏側に組み込まれており、第1の入口壁239aと、第2の入口壁239bの上端部に送風ユニット30が接続されるように、天井の一部が開口されている。
図17(a)、(b)には図示しない筐体31は、出入口246の幅方向に沿った横長構造で、貫通孔23,13と連通しており、HEPAフィルタ32,送風機33が収容されている(
図17(a)、(b)には図示せず)。
【0083】
診察室299に感染対策装置251が設置されていることによって、診察室299を用いた感染隔離室300が設置されている。感染隔離室300では、診察室299の内側の出入口246に臨む領域であって、入口壁239aと、入口壁239bとの間の出入口ゾーン261が拡張陰圧に設定される。そのため、診察室299の外気が出入口ゾーン261よりも内側に入り込むことがないし、内気が出入口ゾーン261よりも外に漏れ出すこともない。そのため、感染隔離室300は、感染隔離室100と同様の作用効果を奏する。
【0084】
感染対策装置251も、入口壁239aと、入口壁239bとに第2のユニット21、第1のユニット11に相当する構成が組み込まれているから、室が新規に設置される場合や室の建て替えなどが行われる際に、そのための工事で設置されることが好ましい。
【0085】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。例えば、吸通気ユニットとは別に送風ユニットを有している場合に加え、感染対策装置1の送風ユニットにも通気部を形成して、出入口ゾーンの上部から内気を吸引するようにしてもよい。また、第1のユニット11、第2のユニット21の両方を有する場合だけでなく、そのいずれか一方だけにし、第1のユニット11、第2のユニット21のいずれか一方が出入口の幅方向左側または右側のいずれか一方に設置されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明を適用することにより、簡易迅速かつ低コストで感染隔離室を設けられるうえに、室を本来の用途に加えて感染隔離室として使用可能にするといった室の使用に柔軟性、拡張性を持たせる一方、効率的な医療行為を可能とし、しかも、感染症患者が保有しているウィルス、病原菌が外部に漏れ出る事態を無くすだけでなく、感染症患者が一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを無くすことができる感染対策装置、感染隔離室および感染隔離室設置方法が得られる。本発明は、感染対策装置、感染隔離室および感染隔離室設置方法の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1,201,211,251…感染対策装置、10,10A,10B,201…吸通気ユニット、11,11A,11X…第1のユニット、11d…張出幅、12,22…吸気部、13,23,13A,23A…貫通孔、14,24…上端部、14A,24A…下端部、21,21A…第2のユニット、30…送風ユニット、31…筐体、32…HEPAフィルタ、33…送風機、34…通気路、34a…第1の清浄通気部、34b…第2の清浄通気部、39…排気口、99…病室、100,180,300…感染隔離室、105,105A,165a,166a,167a,168a,246…出入口、105h…出入口高、108,160a,161a,162a,163a,261…出入口ゾーン、179…会議室、199…治療室、239a…第1の入口壁、239b…第2の入口壁、299…診察室。