(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ケーブル被覆剥離工具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20240905BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20240905BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20240905BHJP
B24D 13/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02G1/12 068
H02G1/12 026
B26B27/00 G
B26D3/00 603Z
B24D13/14 A
(21)【出願番号】P 2023075587
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2018085568の分割
【原出願日】2018-04-26
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
(72)【発明者】
【氏名】當麻 将弘
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 翔
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-060849(JP,A)
【文献】特開平11-098639(JP,A)
【文献】特開平11-332048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26B 27/00
B26D 3/00
B24D 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線の周囲に被覆が設けられたケーブルの該被覆を刃体により螺旋状に切断しながら剥ぎ取るケーブル被覆剥離工具であって、
軸方向の一端に前記ケーブルを挿入するための挿入口を有し、側面に該ケーブルから剥ぎ取られた被覆を排出する排出口を有する中空の本体部と、
前記本体部の側面に設けられる前記刃体と、
前記本体部に設けられ、被覆が剥ぎ取られた前記導線の外周を研磨するブラシと、
前記排出口に取り付けられ、前記排出口からの前記被覆の排出を前記本体部の後端側に向けて案内するガイド部材と、を有
し、
前記ガイド部材が、略三角形の板状部材であることを特徴とするケーブル被覆剥離工具。
【請求項2】
前記ガイド部材が、ネジを用いて前記刃体とともに前記本体部に固定されている、請求項
1に記載のケーブル被覆剥離工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの導線の周囲に設けられた被覆を剥離するケーブル被覆剥離工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力会社から分電盤までの間の幹線ケーブルには、例えば、CVケーブル、CVDケーブル、CVTケーブル、CVQケーブルなど、導線の周囲に被覆層を形成したケーブルが用いられる。CVケーブルとは、架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルの略称であり、
図5に示すように、CVケーブル2は、導線2aと、導線2aの周囲に設けられた架橋ポリエチレン等の絶縁体及びビニルシース等の層を含む被覆2bと、を備えるケーブルである。
【0003】
これらのケーブルは、施工時には、ビニルシース、及び架橋ポリエチレン等の被覆を剥ぎ取り、導線を露出させて必要箇所に接続される。被覆のうち、特に架橋ポリエチレンの層は硬く厚みがあり、剥ぎ取り難いことから、カッター、電工ナイフなどによる作業では効率が悪いのみならず、作業員の怪我も発生しやすいという問題があった。
【0004】
また、アルミ製の導線を使用する場合、アルミ表面に絶縁性の酸化被膜が形成されているため、ケーブルの被覆を剥離した後に、当該酸化被膜の除去作業を行わなければならず、手間が掛かってしまう。このため、様々なケーブル被覆剥離工具が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ケーブル(被覆線)を導入する導入口及びケーブルの被覆を導出する排出口が設けられた本体部(筒状本体)と、被覆を剥取る刃体と、導線(芯線)を所定位置で停止させる接当部と、導線の外周を磨く研磨部材とを備え、刃体をケーブル回りに回転させることによりケーブルの被覆を剥取るように構成したことを特徴とする被覆剥取装置が提案されている。
【0006】
当該被覆剥取装置によれば、ケーブルの端部を導入口に挿入し、本体部を電線に押し当てながら一方向に回転させることにより、刃体によりケーブルの被覆を螺旋状に切断して剥ぎ取ることができる。また、特許文献1の被覆剥取装置にあっては、本体部の内部に導線の外周を磨く研磨部材が設けられており、刃体で被覆を剥取った後の導線に残留した被覆や、導線に設けられた被膜を除去することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の被覆剥取装置では、本体部の内周面の全周にわたって、研磨部材のブラシ線材が放射状に配置されているため、導線の挿入時及び取外し時、並びに本体部の回転時の抵抗が大きくなってしまう。また、導線の外周がブラシ線材によって周方向に取り囲まれるため、ブラシ線材に接触して押圧力を受けた導線に逃げ場がなく、ブラシ線材が導線に食い込み過ぎて研磨にばらつきが生じたりする虞がある。
【0009】
それゆえ本発明は、ケーブルの被覆を剥離すると共に、簡単且つ確実に導線の外周を磨くことができるケーブル被覆剥離工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のケーブル被覆剥離工具は、導線の周囲に被覆が設けられたケーブルの該被覆を刃体により螺旋状に切断しながら剥ぎ取るケーブル被覆剥離工具であって、
軸方向の一端に前記ケーブルを挿入するための挿入口を有し、側面に該ケーブルから剥ぎ取られた被覆を排出する排出口を有する中空の本体部と、
前記本体部の側面に設けられる前記刃体と、
前記本体部に設けられ、被覆が剥ぎ取られた前記導線の外周を研磨するブラシと、
前記排出口に取り付けられ、前記排出口からの前記被覆の排出を前記本体部の後端側に向けて案内するガイド部材と、を有し、
前記ガイド部材が、略三角形の板状部材であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のケーブル被覆剥離工具にあっては、前記ガイド部材が、ネジを用いて前記刃体とともに前記本体部に固定されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケーブルの被覆を剥離すると共に、簡単且つ確実に導線の外周を磨くことができるケーブル被覆剥離工具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るケーブル被覆剥離工具の側面図である。
【
図2】
図1のケーブル被覆剥離工具のA-A断面を示す断面図である。
【
図3】
図1のケーブル被覆剥離工具におけるカッターの斜視図である。
【
図4】
図1のケーブル被覆剥離工具におけるブラシの斜視図である。
【
図7】
図1のケーブル被覆剥離工具にガイド部材を取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るケーブル被覆剥離工具1を示しており、
図2は、
図1に示すケーブル被覆剥離工具1のA-A断面を示している。本実施形態のケーブル被覆剥離工具1は、中空の本体部10と、本体部10に装着された刃体としてのカッター20と、本体部10に装着されたブラシ30と、を備えている。
【0016】
本体部10は、軸線Cを中心とする筒状の部材であり、断面が円形となるように構成されている。本体部10は、軸線Cに沿う軸方向の一端(前端)に、ケーブル2を挿入するための挿入口11を有する。また、本体部10の側面(周面)には、ケーブル2から剥ぎ取られた被覆2bを排出する排出口12が形成されている。排出口12は、本体部10の内部空間Sに連通している。挿入口11の内径は、対応するケーブル2の外径(被覆2bの外径)よりも僅かに大きくなっている。
【0017】
また、本体部10の側面には、カッター20を取り付けるための刃体取付け部13が設けられている。刃体取付け部13には、カッター20を所定の位置及び角度に取付けることができるようにネジ孔が形成されている。なお、図示は省略するが、刃体取付け部13とカッター20との間にスペーサ等の他の部材を挟むことにより、カッター20の位置、角度等を調整することも可能である。例えば、カッター20の角度を傾けることで、被覆2bを、導線2aの先端側に向けて徐々に先細りとなるように切削する、所謂ペンシリングと呼ばれる加工を行うことも可能である。
【0018】
また、本体部10の側面には、ブラシ30を取り付けるためのブラシ取付け部14が設けられている。本例では、本体部10における周方向の2箇所にブラシ取付け部14が設けられているが、1箇所のみでもよいし、3箇所以上でもよい。ここで、ブラシ取付け部14は、
図2に示すように、本体部10の軸方向から見て、カッター20の先端Eを通り該カッター20の延在方向(
図2における水平方向であり、カッター20を取付ける刃体取付け部13の上面の延在方向に一致する方向)に垂直な仮想平面Vに対して、カッター20と逆側となる範囲(
図2における二点鎖線(V)の左側)のみに配置されている。それぞれのブラシ取付け部14には、ブラシ30を所定の位置及び角度に取付けることができるように2つのネジ孔が形成されている。ブラシ取付け部14には、本体部10の内部空間Sに連通するブラシ挿入孔14aが形成されている。
【0019】
また、本体部10には、ケーブル2の被覆2bの切断幅を規制する規制壁15が設けられている。本例の規制壁15は、内部空間Sにおいて、本体部10の内周面から突出する凸部で構成されている。規制壁15は、ケーブル2の被覆2bの先端面を突き当ててケーブル2の挿入を規制出来れば特に形状は限定されない。なお、規制壁15と、後述する切刃部21の刃先21aとの軸方向の距離が、被覆2bの切断幅となる。
【0020】
図3は、本体部10から取り外した状態のカッター20を示している。カッター20は、切刃部21及び掬刃部22が互いに垂直に配置され、断面が略L字状となるように形成されている。また、本例では、掬刃部22側に、ネジ24を通すための貫通孔23が形成されている。カッター20は、
図1に示すように、本体部10の排出口12に隣接して設けられた刃体取付け部13に、ネジ24によって着脱可能に固定することができる。カッター20は、切刃部21の刃先21a及び掬刃部22の刃先22aが内部空間Sに突出するように配置され、切刃部21が挿入口11側(前方)に位置している。
【0021】
図4は、本体部10から取り外した状態のブラシ30を示している。ブラシ30は、本体部10に着脱可能に取付けられ、被覆2bが剥ぎ取られた導線2aの外周を研磨するよう構成されている。本例のブラシ30は、所謂チャンネルブラシと呼ばれるものであり、金属製又は樹脂製のブラシ線材31と、多数本(複数本)のブラシ線材31が束ねられて植設された長尺状のベース部32と、を備える。ベース部32は、長手方向に直線状に延在している。また、本例のブラシ30は、ベース部32を固定保持して本体部10に取付けるための取付け金具33を備えている。取付け金具33の長手方向の両端部には、ネジ35を通すための貫通孔34が形成されている。
【0022】
なお、ブラシ線材31の材質としては、例えばSUS等のステンレス鋼とすることができるが、これに限られない。また、ブラシ線材31の材質としては、電食(電蝕)を防ぐ観点から、例えば、アルミよりもイオン化傾向の低いマグネシウム、チタン等の金属、あるいは、樹脂等の非金属製であることが好ましい。
【0023】
ブラシ30は、
図2に示すように、本体部10の軸方向から見て、カッター20の先端Eを通り該カッター20の延在方向に垂直な仮想平面Vに対して、カッター20と逆側となる範囲に配置される。
【0024】
また、ブラシ30は、ブラシ線材31が、軸線Cに向かう方向(本体部10の径方向)に延在するように配置されるとともに、ブラシ線材31の先端が内部空間Sに突出するように配置される。また、ブラシ30は、ベース部32の長手方向が軸線Cと平行になるように配置される。また、
図1に示すように、本体部10の軸方向におけるブラシ30の配設位置は、本体部10の軸方向におけるブラシ線材31の端部31aがカッター20の先端Eと同一の軸方向位置、または当該先端Eよりも本体部10の後端側となるように配置される。これは、被覆2bを剥離して露出した導線2aの外周のみを研磨するためである。
【0025】
ここで、ケーブル被覆剥離工具1を使用可能なケーブル2は、例えば、
図5に示すように、アルミ製等の導線2aの周囲を、架橋ポリエチレン等の絶縁体、及びビニルシース等からなる被覆2bで覆ったものとすることができる。導線2a及び被覆2bの材質は特に限定されず、例えば導線2aを銅製としてもよい。また、被覆2bは、1層であっても2層以上の構造であってもよい。なお、被覆2bを含むケーブル2の外径(直径)は、例えば13mm~34mmとすることができ、また導線2aのみの外径(直径)は、例えば7mm~24mmとすることができるが、これらに限られるものではない。
【0026】
本実施形態のケーブル被覆剥離工具1は、ケーブル2から被覆2bを剥離する軸方向の長さ、つまり導線2aの露出長さL(
図5参照)を規制するための、露出長さ規制手段40を備えている。
【0027】
露出長さ規制手段40は、本体部10の内部空間Sに配置されている。露出長さ規制手段40は、被覆2bが剥離された導線2aの先端が、先端面41に当接することで、それ以上のケーブル2の挿入を抑制するものである。これにより、導線2aの露出長さLを予め設定した長さに規制することができる。
【0028】
露出長さ規制手段40は、本体部10内に固定されていてもよいが、軸方向に位置調整可能とされていることが好ましい。これによれば、導線2aの露出長さLを適宜調整することができる。
【0029】
また、本実施形態のケーブル被覆剥離工具1は、電動式のドリルドライバー等の回転工具(図示省略)に接続することができるように構成されている。具体的に、ケーブル被覆剥離工具1は、本体部10の軸方向の他端(後端)側に設けられ、軸方向に延在するビット状部分50を有する。ビット状部分50は、露出長さ規制手段40と一体に設けられていてもよいし、本体部10に着脱可能に取付けられていてもよい。
【0030】
ケーブル被覆剥離工具1を用いてケーブル2から被覆2bを剥離し導線2aを研磨する場合には、例えば、予めケーブル被覆剥離工具1を回転工具に取付けた状態で使用する。そして、一方の手で把持したケーブル2の先端部をケーブル被覆剥離工具1の挿入口11に挿入する。ケーブル2の被覆2bの先端面が規制壁15に当接するまでケーブル2を挿入し、回転工具を起動してケーブル被覆剥離工具1を回転させる。ケーブル2の周囲を本体部10が回転することにより、ケーブル2の被覆2bを、カッター20の切刃部21が螺旋状に切断し、また掬刃部22が導線2aから剥ぎ取る。同時に、被覆2bが剥離されて露出した導線2aの周囲をブラシ30が回転することで、導線2aの外周をブラシ線材31が研磨する。なお、螺旋状に切断され剥離された被覆2b(切り屑)は、排出口12から排出される。
【0031】
ここで、本実施形態のケーブル被覆剥離工具1にあっては、ブラシ30の配設位置を所定の範囲(本体部10の軸方向から見て、カッター20の先端Eを通り該カッター20の延在方向に垂直な仮想平面Vに対して、カッター20と逆側となる範囲)内に限定している。このように、導線2aの外周がブラシ線材31によって全周にわたって取り囲まれないため、導線2aの挿入時及び取外し時、並びに本体部10の回転時の抵抗が大きくなり過ぎることを防止することができる。また、上記の範囲にブラシ30を配置することで、カッター20によりケーブル2から被覆2bの剥離する際の剥離性能の低下も抑制することができる。すなわち、例えば上記の範囲ではなく、仮想平面Vに対して、カッター20側となる範囲(
図2における二点鎖線(V)よりも右側)にブラシ30を配置した場合、当該ブラシ30によってケーブル2がカッター20から逃げる方向(図の左側)に押されて、カッター20の刃先(切刃部21の刃先21a及び掬刃部22の刃先22a)が所期したようにケーブル2に当たらず、剥離性能が低下する虞がある。しかしながら、本実施形態のケーブル被覆剥離工具1では、仮想平面Vに対して、カッター20の逆側となる範囲にブラシ30を配置したので、このような虞もない。また、上記の範囲にブラシ30を配置することで、カッター20を固定するネジ24の位置を制限することもない。
【0032】
また、導線2aを研磨する過程において、ブラシ線材31に接触して押圧力を受けた導線2aは、ブラシ30が設けられていない領域に適度に逃げる(変位する)ことができるので、ブラシ線材31が導線2aに食い込み過ぎて研磨にばらつきが生じるといった虞もない。
【0033】
したがって、本実施形態のケーブル被覆剥離工具1によれば、簡単且つ確実に導線2aの外周を磨くことができる。そして、例えばアルミ製の導線2aを有するケーブル2に用いた場合、被覆2bを剥離すると共に、簡単且つ確実に導線2aの表面に形成された絶縁性の酸化被膜を除去することができる。また、アルミ製の導線2aは、例えば銅製の導線に比べて軽量で低価格であるため、アルミ製の導線2aが使用可能となることで、ケーブル設置の作業時間及び材料コストを削減することができる。
【0034】
本実施形態のケーブル被覆剥離工具1にあっては、ブラシ30が、本体部10の周方向における複数箇所に設けられていることが好ましく、これによれば、より効率的、且つ適度に導線2aの外周を研磨することができる。同様の観点から、ブラシ30の設置個数は本例のように2個であることが望ましい。さらに、ブラシ30を2個設置する場合、
図2に示すように、軸線C周りにおける2個のブラシ30の周方向の間隔Rは、30°~150°の範囲内であることが好ましく、これによれば、より効果的に導線2aを研磨することができる。
【0035】
また、本体部10の軸方向におけるブラシ30の配設位置は、
図1に示すカッター20の先端Eから前方側のブラシ線材31の端部31aまでの軸方向の距離が、5mm以内となるように配置されていることが好ましい。このように、カッター20の先端Eに近い軸方向位置にブラシ線材31を配置することで、被覆2bを剥離した直後から、露出した導線2aの外周を研磨することが可能となる。また、カッター20とブラシ線材31との上記軸方向の距離を小さくすることで、本体部10が軸方向の長さを小さくすることができるので、本体部10の小型化を図ることができる。同様の観点から、ブラシ線材31の端部31aが、先端Eと同一の軸方向位置に配置されていることが最も望ましい。
【0036】
また、本体部10の軸方向におけるブラシ30のブラシ線材31の設置範囲は、カッター20の先端Eの位置から露出長さ規制手段40の先端面41までの範囲の30%以上であることが好ましい。
【0037】
なお、本例のブラシ30において、ブラシ線材31が設けられているベース部32の長手方向の長さWは25mmであり、ベース部32の短手方向の長さDは5mmであるが、これに限られない。
【0038】
また、
図6に示すように、ブラシ30は、ブラシ線材31の先端部31bの形状が全体として、導線2aの外周面に沿うように円弧状の凹部となっていることが好ましい。これによれば、導線2aに対する接触面積を増大させて、ブラシ線材31による研磨効率を高めることができる。
【0039】
また、切刃部21の軸線Cに垂直な平面に対する傾斜角度θ1(
図1参照)は、2.5°~5°であることが好ましい。傾斜角度θ1を2.5°以上とすることで、ケーブル2の被覆2bに切刃部21が食い込み易くなり、剥離作業が容易となる。また、傾斜角度θ1を5°以下とすることで、ケーブル2の被覆2bを剥離するための回転数を適度に多くして、ブラシ30による導線2aの研磨を十分に行うことができる。
【0040】
ここで、ケーブル2から被覆2bを剥離する過程において、排出口12から排出される被覆2b(切り屑)が、剥離前のケーブル2に巻き付いて絡まり、ケーブル2対する本体部10の回転を阻害してしまう虞がある。
【0041】
これに対して、本実施形態のケーブル被覆剥離工具1にあっては、ケーブル2から剥離させた被覆2bの排出方向を規制すること等により、当該被覆2bがケーブル2に巻き付いて絡まることを防止する絡まり防止手段を設けている。具体的に、
図1に示す排出口12の側壁内面12aの、軸線Cに垂直な平面に対する傾斜角度θ2が、2.5°~45°となるように構成されている。なお、
図1に示す排出口12の側壁内面12aとは、排出口12において本体部10の後端側に位置する側壁の内面である。傾斜角度θ2を上記の範囲とすることで、排出口12から本体部10の後端側に向けて被覆2bがスムーズに排出されるようになるため、排出口12から排出される被覆2bが、剥離前のケーブル2側に移動し難くなり、当該被覆2bがケーブル2に巻き付いて絡まることを防止することができる。すなわち、本例では、側壁内面12aが、絡まり防止手段として機能する。
【0042】
また、
図7に示すように、排出口12からの被覆2bの排出を本体部10の後端側に向けて案内するガイド部材60を排出口12に取り付けてもよい。この場合、ガイド部材60をカッター20の上方に重ねるように配置した状態で、ネジ24を用いてガイド部材60及びカッター20を共に本体部10に固定することができる。図示例のガイド部材60は、略三角形の板状部材であり、その側面61が、排出口12からの排出する被覆2bを本体部10の後端側に案内する絡まり防止手段としてのガイド面となっている。すなわち、排出口12からの被覆2bは、ガイド部材60の側面61と排出口12の側壁内面12aとの間を通って排出されることとなる。なお、ガイド部材60の形状及び本体部10への取付け方法は図示例に限定されず、適宜変更可能である。
【0043】
なお、カッター20の切刃部21の、軸線Cに垂直な平面に対する傾斜角度θ1が2.5°以上であり、これに応じて、排出口12の前端側の側壁内面12bの傾斜角度も2.5°以上となっている場合には、上記のようなガイド部材60を設けることなく、排出口12からの被覆2bの排出を本体部10の後端側に向けて案内することができる。すなわち、この場合には、排出口12の前端側の側壁内面12bが絡まり防止手段として機能する。
【0044】
また、排出口12から排出される被覆2bが、剥離前のケーブル2に側に移動しないように、本体部10の外周面から突出するフランジを設けて絡まり防止手段としてもよいし、あるいは、排出口12から排出される被覆2bが適度な長さで切断されるように、カッター20に絡まり防止手段としてのチップブレーカの機構を設けてもよい。
【0045】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、先の実施形態においてケーブル被覆剥離工具1は、回転工具を用いて回転させる構成としていたが、回転工具に取付けずに、直接手で持った状態でケーブル被覆剥離工具1を回転させて剥離作業を行ってもよい。また、ブラシ30は、上記のようなチャンネルブラシに限らず、例えば金属製の針を基布に植設した針布、または、ブラシ線材を筒状の巻き芯の内周面にスパイラル状に配置したチャンネルロールブラシ等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1:ケーブル被覆剥離工具
2:ケーブル
2a:導線
2b:被覆
10:本体部
11:挿入口
12:排出口
12a:側壁内面(絡まり防止手段)
12b:側壁内面(絡まり防止手段)
13:刃体取付け部
14:ブラシ取付け部
15:規制壁
20:カッター(刃体)
21:切刃部
22:掬刃部
23:貫通孔
24:ネジ
30:ブラシ
31:ブラシ線材
31a:ブラシ線材の端部
32:ベース部
33:取付け金具
34:貫通孔
35:ネジ
40:露出長さ規制手段
41:先端面
50:ビット状部分
60:ガイド部材
61:ガイド面(絡まり防止手段)
C:軸線
E:刃体の先端
L:露出長さ
V:仮想平面
S:内部空間